(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5803263
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】気液分離器
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20151015BHJP
【FI】
F25B43/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-111523(P2011-111523)
(22)【出願日】2011年5月18日
(65)【公開番号】特開2012-241962(P2012-241962A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年4月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150441
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】大西 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】高野 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】安嶋 賢哲
(72)【発明者】
【氏名】土屋 敏章
【審査官】
柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第03/033106(WO,A1)
【文献】
特開2005−098664(JP,A)
【文献】
特開平06−205917(JP,A)
【文献】
特開2009−174836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
B01D 45/12
B04C 5/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒型の本体容器に供給された気液混相体を旋回流によって気体と液体に分離する気液分離器において、
前記本体容器の下部に前記旋回流を整流する整流部を備え、該整流部の上端から前記旋回流領域にはガイド壁を設け、
前記ガイド壁の上端は、分離された気体を流出させる気体流出パイプの上端より若干低い位置に解放され、該ガイド壁の下端と前記整流器の接続部である旋回流部液溜から下方には流体が流れ込まないように密封構造にしてあることを特徴とする気液分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置などで使用される気液二相冷媒(気液混相体)を気相冷媒(気体)と液相冷媒(液体)に分離する気液分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置などで使用されている気液分離器は、気液二相冷媒の中の液滴を気相冷媒と液相冷媒に分離する。分離する方式としては、主に、遠心力分離、表面張力分離、重力分離の3つの方式がある。
【0003】
遠心力分離方式による気液分離器は、タンクなどの本体容器の容器側面から気液二相冷媒の流体を容器内壁接線方向から流入させ、容器内壁を周方向に流して旋回流とする。本体容器内を周方向に旋回しながら流れる気液二相冷媒は、旋回流の遠心力により、気体と液体の密度の差から、内側に密度の小さい気相冷媒、外側に密度の大きい液相冷媒に分離する(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、表面張力分離方式による気液分離器は、蛇腹状の溝付き体の流路に気液二相冷媒を流すことにより、液相冷媒は表面張力を利用し、溝付き体内に付着して流れ、気相冷媒と分離する(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、遠心力分離方式と表面張力分離方式を組み合わせ、気液二相冷媒を気相冷媒と液相冷媒に分離する気液分離器も知られている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−246216号公報
【特許文献2】特開2010−185644号公報
【特許文献3】特開2005−98664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、旋回流を用いた遠心力分離方式は、旋回流により、気液分離器底部液溜の液相冷媒表面が波打つことや、液相冷媒の入口での気泡の吸い込みを避けることができなかった。また、液相冷媒表面が波打つことによる再液滴化(再ミスト化)や、気相冷媒流出パイプの気相冷媒の入口が気液二相冷媒流入パイプの冷媒の吐出口に近いことによる直接の液滴(ミスト)の吸い込みなどの課題がある。さらに、旋回流の遠心力により外側の液相冷媒化、内側の気相冷媒化により、気液二相冷媒が分離され、重力によって液相冷媒が下方に流れていくが、この状態では冷媒の流速が速く、液相冷媒の流体に気泡も含まれてしまうという課題もある。
【0008】
また、表面張力分離方式は、すべての気液二相冷媒を蛇腹状の溝付き体を通す必要があり、冷媒の通過抵抗が大きくなるという課題がある。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、高い気液分離効率を維持しつつ、通過抵抗の小さい気液分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る気液分離器は、円筒型の本体容器に供給された気液混相体を旋回流によって気体と液体に分離する気液分離器において、
前記本体容器の下部に前記旋回流を整流する整流部を備え、該整流部の上端から前記旋回流領域にはガイド壁を設け、
前記ガイド壁の上端は、分離された気体を流出させる気体流出パイプの上端より若干低い位置に解放され、該ガイド壁の下端と前記整流器の接続部である旋回流部液溜から下方には流体が流れ込まないように密封構造にしてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、円筒型の本体容器に供給された気液混相体を旋回流によって気体と液体に分離する気液分離器において、前記本体容器の下部に前記旋回流を整流する整流部を備え、該整流部
の上端から前記旋回流領域にはガイド壁を設け、前記ガイド壁
の上端は、分離された気体を流出させる気体流出パイプの上端より若干低い位置に解放され、該ガイド壁の下端と前記整流器の接続部である旋回流部液溜から下方には流体が流れ込まないように密封構造にしてあることにより、旋回流による気液分離器底部液溜の液相冷媒表面が波打つことや、液相冷媒の入口での気泡の吸い込みが避けられる。また、液相冷媒表面が波打つことによる再液滴化(再ミスト化)や、気相冷媒流出パイプの気相冷媒の入口が気液二相冷媒流入パイプの冷媒の吐出口に近いことによる直接の液滴(ミスト)の吸い込みや、液相冷媒の流体に気泡も含まれることを防ぐことができる。さらに、すべての気相冷媒を蛇腹状の溝付き体に通す必要がなくなるので、冷媒の通過抵抗が小さくなり、高い気液分離効率を維持しつつ、通過抵抗の小さい気液分離器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る気液分離器の断面側面図である。
【
図2】
図1に示した気液分離器の冷媒流動図である。
【
図3】
図1に示した気液分離器のA−A方向の断面平面図である。
【
図4】
図1に示した気液分離器のB−B方向の断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る気液分離器の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
この実施の形態の気液分離器は、冷凍サイクル装置などで使用されている気液二相冷媒(気液混相体)の中の液滴を気相冷媒(気体)と液相冷媒(液体)に分離する装置である。
【0016】
図1は、本発明に係る気液分離器の実施の形態の断面側面図である。
【0017】
図1に示すように、気液分離器は、気液二相冷媒を流入させる気液二相冷媒流入パイプ(気液混相体流入パイプ)1、分離された気相冷媒を流出させる気相冷媒流出パイプ(気体流出パイプ)2、分離された液相冷媒を流出させる液相冷媒流出パイプ(液体流出パイプ)3、これらのパイプが挿入される本体容器4、金属板を蛇腹状に加工し、本体容器4の内壁を一周するように配設されている整流器(整流部)5、気相冷媒流出パイプ2の周囲に配設されている円筒形のガイド壁6などから構成されている。
【0018】
本体容器4は、頂部4a、底部4c、および、頂部4aと底部4cの間を連結する中空円筒型の胴部4bとから構成されている。気液二相冷媒流入パイプ1は、胴部4bの上方側面に接線方向に内壁面を貫通して取付けられ、胴部4bの接線方向から本体容器4内に流入された気液二相冷媒は、その内部で旋回流となる。
【0019】
気相冷媒流出パイプ2は、頂部4aから胴部4bの軸心方向に内壁面を貫通して装入され、気液二相冷媒から分離された気相冷媒を気相冷媒入口2aから取り込み、本体容器4の外部へと流出させる。液相冷媒流出パイプ3は、底部4cの下方側面の内壁面を貫通して取付けられ、気液二相冷媒から分離されて底部4cの整流器液溜8に溜まった液相冷媒を液相冷媒入口3aから取り込み、本体容器4の外部へと流出させる。
【0020】
整流器(整流部)5は、本体容器4の下部で、
図4に示すように、胴部4bの内壁を一周するように配設されている。この整流器5は、溝付き体のように金属板を蛇腹状に加工したものを用いている。ガイド壁6は、円筒形の形をしており、気相冷媒流出パイプ2の周囲に配設してある。また、ガイド壁6の上端は気相冷媒流出パイプ2の上端の気相冷媒入口2aより若干低い位置に解放され、ガイド壁6の下端は整流器5の上端まで設けられている。さらに、ガイド壁6の下端と整流器5の接続部である旋回流部液溜7から下方には流体が流れ込まないように密封構造にしてある。
【0021】
上述した実施の形態である気液分離器で、気液二相冷媒を気相冷媒と液相冷媒に分離させる動作を説明すると、
図2の気液分離器の冷媒流動図、および、
図3の気液分離器のA−A方向の断面平面図で示しているように、気液二相冷媒は、気液二相冷媒流入パイプ1の冷媒吐出口1aから、本体容器4内を周方向(矢印参照)に流入し、流入した気液二相冷媒は本体容器4内壁を沿うように案内されて流れ、旋回流となる。このようにして、本体容器4内壁を周方向に旋回しながら流れる気液二相冷媒は、旋回流の遠心力により、気体と液体の密度の差から、内側に密度が小さい気相冷媒、外側に密度が大きい液相冷媒に分離される。気相冷媒と液相冷媒とに分離されると、重力により、密度の小さい気相冷媒は内側を上方に、密度の大きい液相冷媒は外側を下方に分かれる。
【0022】
そして、本体容器4の内壁とガイド壁6との間を上方に向かった気相冷媒は、本体容器4の頂部4aに上昇すると、気相冷媒入口2aから気相冷媒流出パイプ2に取り込まれ、気相冷媒流出パイプ2内を矢印方向に流出する。
【0023】
また、本体容器4の内壁とガイド壁6との間を下方に向かった液相冷媒には気泡などが含まれているが、下方に向かった液相冷媒は、整流器5によって流速を低下させながら下方に流れていく。そして、整流器5で整流されることにより、液相冷媒は表面張力を利用して付着して流れ、液相冷媒に含まれていた気泡が液相冷媒から分離される。この整流器5で分離された気相冷媒はガイド壁6と気相冷媒流出パイプ2との間を通り、上方に向かい、気相冷媒入口2aから気相冷媒流出パイプ2に取り込まれ、気相冷媒流出パイプ2内を矢印方向に流出する。また、整流器5で分離した気泡を含まない液相冷媒は、整流器液溜8に溜まり、液相冷媒入口3aから液相冷媒流出パイプ3に取り込まれ、液相冷媒流出パイプ3内を矢印方向に流出する。
【0024】
これにより、旋回流を用いた遠心力分離方式で課題となっていた気相冷媒と液相冷媒を通過抵抗を少なくして効率的に完全に分離することができ、旋回流による気液分離器底部液溜の液相冷媒表面が波打つことや、液相冷媒の入口での気泡の吸い込みが避けられる。また、液相冷媒表面が波打つことによる再液滴化(再ミスト化)や、気相冷媒流出パイプ2の気相冷媒入口2aが気液二相冷媒流入パイプ1の冷媒吐出口1aに近いことによる直接の液滴(ミスト)の吸い込みや、液相冷媒の流体に気泡も含まれることを防ぐことができる。さらに、すべての気相冷媒を蛇腹状の溝付き体に通す必要がなくなるので冷媒の通過抵抗が小さくなり、高い気液分離効率を維持しつつ、通過抵抗の小さい気液分離器を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1 気液二相冷媒流入パイプ(気液混相体流入パイプ)
2 気相冷媒流出パイプ(気体流出パイプ)
3 液相冷媒流出パイプ(液体流出パイプ)
4 本体容器
4a 頂部
4b 胴部
4c 底部
5 整流器(整流部)
6 ガイド壁
7 旋回流部液溜
8 整流器液溜