特許第5803326号(P5803326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5803326
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】過給機付リーンバーンエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20151015BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20151015BHJP
   F02D 41/02 20060101ALI20151015BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20151015BHJP
   F02M 25/07 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   F02D45/00 301G
   F02D43/00 301H
   F02D43/00 301N
   F02D43/00 301R
   F02D41/02 301D
   F02D41/02 301E
   F02D41/04 305D
   F02M25/07 B
   F02D45/00 301E
   F02D45/00 312H
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-141448(P2011-141448)
(22)【出願日】2011年6月27日
(65)【公開番号】特開2013-7353(P2013-7353A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100110939
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100110940
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 高久
(74)【代理人】
【識別番号】100113262
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 祐二
(74)【代理人】
【識別番号】100115059
【弁理士】
【氏名又は名称】今江 克実
(74)【代理人】
【識別番号】100117581
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克也
(74)【代理人】
【識別番号】100117710
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124671
【弁理士】
【氏名又は名称】関 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100131060
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 靖也
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100131901
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 雅典
(74)【代理人】
【識別番号】100132012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩下 嗣也
(74)【代理人】
【識別番号】100141276
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 康二
(74)【代理人】
【識別番号】100143409
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100157093
【弁理士】
【氏名又は名称】間脇 八蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 裕吉
(74)【代理人】
【識別番号】100163197
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100163588
【弁理士】
【氏名又は名称】岡澤 祥平
(72)【発明者】
【氏名】辻田 周平
(72)【発明者】
【氏名】早田 光則
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−090275(JP,A)
【文献】 特開2006−220062(JP,A)
【文献】 特開2009−091995(JP,A)
【文献】 特開2006−257940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 43/00―45/00
F02D 41/00―41/40
F02M 25/06─25/07
F02B 47/08─47/10
F02D 13/00―28/00
F02B 33/00―41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
理論空燃比よりもリーンな混合気で運転される運転領域を有するように構成されたエンジン本体と、
前記エンジン本体の吸気側に配置されたコンプレッサと排気側に配置されたタービンとを含みかつ、前記エンジン本体の気筒内に導入するガスの過給を行うように構成されたターボ過給機と、
前記気筒内に既燃ガスを導入するように構成されたEGR手段と、
前記エンジン本体の運転を制御するように構成された制御器と、を備え、
前記制御器は、前記エンジン本体が少なくとも暖機後にあるときにおいて、
前記エンジン本体の回転数が所定回転数を超えかつ、エンジン負荷が所定負荷よりも低い低負荷領域にあるときには、前記ターボ過給機による過給を行って作動ガス燃料比G/Fを30以上、又は、空気燃料比A/Fを30以上に設定し、
前記エンジン本体の回転数が前記所定回転数を超えかつ、前記エンジン負荷が前記所定負荷以上の高負荷領域にあるときには、前記排気側における前記タービンの上流と前記吸気側における前記コンプレッサの下流とを互いに接続する高圧EGR通路を通じて既燃ガスを吸気側に還流させつつ、前記ターボ過給機による過給を行って前記G/Fを30以上に設定し、
前記エンジン本体の回転数が前記所定回転数以下でかつ、前記エンジン負荷が所定の高負荷領域にあるときには、前記EGR手段によって前記気筒内に既燃ガスを導入しつつ、前記空気燃料比A/Fを理論空燃比にする過給機付リーンバーンエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載の過給機付リーンバーンエンジンにおいて、
前記制御器は、前記エンジン負荷が全開負荷であるときにも、前記EGR通路を通じて既燃ガスを吸気側に還流させつつ、前記G/Fを30以上に設定する過給機付リーンバーンエンジン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の過給機付リーンバーンエンジンにおいて、
前記制御器は、少なくとも前記低負荷領域においては、圧縮着火燃焼を実行する過給機付リーンバーンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、過給機付リーンバーンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ターボ過給機付エンジンの制御に関する技術が記載されており、この技術は、エンジンの運転状態が低速低負荷から中速中負荷の運転領域にあるときには、外部EGR制御を行い、運転状態が低速高負荷から中速高負荷の運転領域にあるときには、掃気制御を行い、そして、高速高負荷の運転領域にあるときには、掃気制御と外部EGR制御とを行うようにしている。これにより高速高負荷の運転領域では、気筒内の高温の残留ガスを低減した上で、冷却された外部EGRガスを気筒内に導入して、異常燃焼を抑制しながらトルクの向上及び燃費の向上が図られる。このように特許文献1のターボ過給機付エンジンでは、冷却された外部EGRガスを気筒内に導入することによって高速かつ高負荷領域におけるノッキングを回避し、そのことによりトルクの向上を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−24974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば空気燃料比A/Fを30以上に設定するリーンバーンエンジンは、RawNOxの生成抑制と、低燃費との両立に有効である。超リーンな混合気で運転されるリーンバーンエンジンにおいて、所望のトルクを確保するためには、例えば排気エネルギによって駆動されるターボ過給機が組みあわせられる。
【0005】
しかしながら、本願発明者らは、こうしたターボ過給機付リーンバーンエンジンでは、高速領域ではターボ過給機のコンプレッサ効率が低下することにより、特に高負荷領域で、超リーンな混合気を維持しようとするとエンジンのポンピングロスが増大して、高トルクの確保が難しくなる上に燃費も大幅に悪化してしまうことに気づいた。
【0006】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高速領域におけるターボ過給機のコンプレッサ効率を向上させることによって、超リーンな混合気を維持してRawNOxの生成を抑制しつつ、エンジンのポンピングロスを低減させ、所望の高トルクの確保することと、燃費の向上との双方を達成する過給機付リーンバーンエンジンを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、前述した高速かつ高負荷領域において、超リーンな混合気を維持することにより、エンジンのポンピングロスが増大し、所望の高トルクの確保が困難になり、燃費が悪化することのメカニズムを、次のように分析した。
【0008】
すなわち、エンジン回転数が比較的高い高速領域において、高負荷領域ではそれに見合う高トルクを発生させるために、燃料噴射量が増大する。そのため、例えばA/Fが30以上の超リーンな混合気を維持しようとすれば、コンプレッサから気筒に供給する圧縮空気の流量を大幅に増大しなければならないが、このような大流量での運転はコンプレッサ効率を低下させる。
【0009】
一方、ターボ過給機のコンプレッサ効率が低下することは、コンプレッサ動力、ひいては、必要なタービン動力を大きくする。タービン動力を高めるには、タービン入口のガス温度を高めるか、又は、圧力を高めることになるが、前述の通り、エンジンをA/Fが30以上の超リーンな混合気で運転しようとすれば、排気ガス温度は比較的低くなってしまう。そのため、タービン動力を高めるためにはエンジンの排圧を高めなければならないが、排圧を高めることによって、エンジンのポンピングロスが増大するため、高トルクの確保が困難になり、さらに燃費も悪化してしまう。
【0010】
そこで、本願発明者らは、高速かつ高負荷領域でのコンプレッサ効率を高めるべく、ターボ過給機のコンプレッサの運転条件を変更する点に着目した。つまり、コンプレッサの通過流量が低流量側にスライドするように、外部EGR制御を実行する。このことでコンプレッサ効率を高め、高速かつ高負荷領域において、超リーンな混合気の維持とポンピングロスの低減を両立させることにより、高トルクの確保と燃費の改善とを実現するようにした。
【0011】
具体的に、ここに開示する過給機付リーンバーンエンジンは、理論空燃比よりもリーンな混合気で運転される運転領域を有するように構成されたエンジン本体と、前記エンジン本体の吸気側に配置されたコンプレッサと排気側に配置されたタービンとを含みかつ、前記エンジン本体の気筒内に導入するガスの過給を行うように構成されたターボ過給機と、前記気筒内に既燃ガスを導入するように構成されたEGR手段と、前記エンジンの運転を制御するように構成された制御器と、を備える。
【0012】
前記制御器は、前記エンジン本体が少なくとも暖機後にあるときにおいて、前記エンジン本体の回転数が所定回転数を超えかつ、エンジン負荷が所定負荷よりも低い低負荷領域にあるときには、前記ターボ過給機による過給を行って作動ガス燃料比G/Fを30以上、又は、空気燃料比A/Fを30以上に設定し、前記エンジン本体の回転数が前記所定回転数を超えかつ、前記エンジン負荷が前記所定負荷以上の高負荷領域にあるときには、前記排気側における前記タービンの上流と前記吸気側における前記コンプレッサの下流とを互いに接続する高圧EGR通路を通じて既燃ガスを吸気側に還流させつつ、前記ターボ過給機による過給を行って前記G/Fを30以上に設定し、前記エンジン本体の回転数が前記所定回転数以下でかつ、前記エンジン負荷が所定の高負荷領域にあるときには、前記EGR手段によって前記気筒内に既燃ガスを導入しつつ、前記空気燃料比A/Fを理論空燃比にする
【0013】
ここで、EGR手段は、排気側におけるタービンの上流と吸気側におけるコンプレッサの下流とを互いに接続するEGR通路を通じて既燃ガスを吸気側に還流させる高圧EGRシステムを含んで構成すればよい。EGR手段はまた、この高圧EGRシステムの他に、排気側におけるタービンの下流と吸気側におけるコンプレッサの上流とを互いに接続するEGR通路を通じて既燃ガスを吸気側に還流させる低圧EGRシステム、及び/又は、吸排気弁の作動制御を行うことにより既燃ガスを気筒内に導入する内部EGRシステムをさらに含むようにしてもよい。
【0014】
この構成によると、エンジンの運転状態が高速領域にあるときにおいて、エンジン負荷が所定負荷よりも低い低負荷領域にあるときには、作動ガス燃料比G/Fが30以上、又は、空気燃料比A/Fが30以上に設定される。つまり、EGR手段によって既燃ガスを気筒内に導入する場合はG/F≧30とすればよく、既燃ガスを気筒内に導入しない場合はA/F≧30とすればよい。ここで、EGR手段としては、高圧EGRシステム、低圧EGRシステム及び内部EGRシステムのいずれであってもよい。このように超リーンな混合気によりエンジン本体の運転を行うことにより、低負荷領域では、RawNOxの生成抑制と、低燃費とが両立する。
【0015】
これに対し、エンジンの運転領域が高速領域にあるときにおいて、エンジン負荷が所定負荷以上の高負荷領域にあるときには、排気側におけるタービンの上流と吸気側におけるコンプレッサの下流とを互いに接続するEGR通路を通じて既燃ガスを吸気側に還流させる。つまり、高負荷領域においては、高圧EGRシステムにより外部EGRガスを気筒内に導入する。このことにより、コンプレッサの下流に外部EGRガスが還流されて気筒内に導入されることになるから、気筒内に導入される全ガス量を同一と仮定したときに、コンプレッサの通過流量は、外部EGRガスを還流させる分だけ、それを還流させないときよりも低下する。このことは、高速領域においてコンプレッサの運転条件を低流量側に変更してコンプレッサ効率を向上させ、G/F≧30を実現する上で要求されるタービン動力を低下させるから、タービン入口のガス圧、言い換えるとエンジンの排圧を低くすることを可能にする。つまり、高速かつ高負荷領域において、G/Fが30以上の超リーンな混合気を維持してRawNOxの生成を抑制しつつ、エンジンのポンピングロスを低減させるから、所望の高トルク確保と燃費の向上にも有利になる。
【0016】
従って、エンジン本体の運転状態が高速かつ高負荷領域にあるときに、超リーンな混合気の維持とエンジンのポンピングロス低下との両立により、所望の高トルクの確保と燃費の向上とが同時に実現する。
【0017】
前記制御器は、前記エンジン負荷が全開負荷であるときにも、前記EGR通路を通じて既燃ガスを吸気側に還流させつつ、前記G/Fを30以上に設定する、としてもよい。
【0018】
前述したように、コンプレッサ効率の向上により、全開負荷であるときも所望の高トルクを確保しつつ、G/Fを30以上に設定することが実現する。
【0019】
前記制御器は、少なくとも前記低負荷領域においては、圧縮着火燃焼を実行する、としてもよい。圧縮着火燃焼は、排気エミッションの向上と熱効率の向上とを両立することを可能にする。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、この過給機付リーンバーンエンジンは、高速かつ高負荷領域においては、排気側におけるタービンの上流と吸気側におけるコンプレッサの下流とを互いに接続するEGR通路を通じて既燃ガスを吸気側に還流させることによって、コンプレッサの運転条件を変更し、コンプレッサ効率を高めるようにしたから、超リーンな混合気の維持(G/F≧30)とエンジンのポンピングロス低下との両立により、所望の高トルクの確保と燃費の向上とを同時に実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】過給機付リーンバーンエンジンの構成を示す概略図である。
図2】過給機付リーンバーンエンジンの制御に係るブロック図である。
図3】エンジンの運転領域を例示する図である。
図4】コンプレッサマップの一例を示す図である。
図5】エンジン回転数とコンプレッサ効率との関係の一例を示す図である。
図6】エンジン回転数とコンプレッサ質量流量との関係の一例を示す図である。
図7】エンジン回転数と全ガス質量流量との関係の一例を示す図である。
図8】エンジン回転数とポンピングロスとの関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、過給機付リーンバーンエンジンの実施形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、例示である。図1,2は、エンジン(エンジン本体)1の概略構成を示す。このエンジン1は、車両に搭載されると共に、少なくともガソリンを含有する燃料が供給される火花点火式ガソリンエンジンである。エンジン1は、複数の気筒18(一つのみ図示)が設けられたシリンダブロック11と、このシリンダブロック11上に配設されたシリンダヘッド12と、シリンダブロック11の下側に配設され、潤滑油が貯溜されたオイルパン13とを有している。各気筒18内には、コンロッド142を介してクランクシャフト15と連結されているピストン14が往復動可能に嵌挿されている。ピストン14の頂面には、リエントラント形のようなキャビティ141が形成されている。キャビティ141は、ピストン14が圧縮上死点付近に位置するときには、後述する直噴インジェクタ67に相対する。シリンダヘッド12と、気筒18と、キャビティ141を有するピストン14とは、燃焼室19を区画する。尚、燃焼室19の形状は、図示する形状に限定されるものではない。例えばキャビティ141の形状、ピストン14の頂面形状、及び、燃焼室19の天井部の形状等は、適宜変更することが可能である。
【0023】
このエンジン1は、理論熱効率の向上や、後述する圧縮着火燃焼の安定化等を目的として、14以上の比較的高い幾何学的圧縮比に設定されている。尚、幾何学的圧縮比は14以上20以下程度の範囲で、適宜設定すればよい。但し、エンジン1の幾何学的圧縮比は、この範囲に限定されるものではない。
【0024】
シリンダヘッド12には、気筒18毎に、吸気ポート16及び排気ポート17が形成されていると共に、これら吸気ポート16及び排気ポート17には、燃焼室19側の開口を開閉する吸気弁21及び排気弁22がそれぞれ配設されている。
【0025】
吸気弁21及び排気弁22をそれぞれ駆動する動弁系の内、排気側には、排気弁22の作動モードを通常モードと特殊モードとに切り替える、例えば油圧作動式の可変機構(図2参照。以下、VVL(Variable Valve Lift)と称する)71が設けられている。VVL71は、その構成の詳細な図示は省略するが、カム山を一つ有する第1カムとカム山を二つ有する第2カムとの、カムプロファイルの異なる2種類のカム、及び、その第1及び第2カムのいずれか一方のカムの作動状態を選択的に排気弁に伝達するロストモーション機構を含んで構成されている。第1カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22は、排気行程中において一度だけ開弁される通常モードで作動するのに対し、第2カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22が、排気行程中において開弁すると共に、吸気行程中においても開弁するような、いわゆる排気の二度開きを行う特殊モードで作動する。VVL71の通常モードと特殊モードとは、エンジンの運転状態に応じて切り替えられる。具体的に、特殊モードは、内部EGRに係る制御の際に利用される。尚、こうした通常モードと特殊モードとの切り替えを可能にする上で、排気弁22を電磁アクチュエータによって駆動する電磁駆動式の動弁系を採用してもよい。また、内部EGRの実行は、排気の二度開きのみによって実現されるのではない。例えば吸気弁21を二回開く、吸気の二度開きによって内部EGR制御を行ってもよいし、排気行程乃至吸気行程において吸気弁21及び排気弁22の双方を閉じるネガティブオーバーラップ期間を設けて既燃ガスを気筒18内に残留させる内部EGR制御を行ってもよい。
【0026】
VVL71を備えた排気側の動弁系に対し、吸気側には、図2に示すように、クランクシャフト15に対する吸気カムシャフトの回転位相を変更することが可能な位相可変機構(以下、VVT(Variable Valve Timing)と称する)72と、吸気弁21のリフト量を連続的に変更することが可能なリフト量可変機構(以下、CVVL(Continuously Variable Valve Lift)と称する)73とが設けられている。VVT72は、液圧式、電磁式又は機械式の公知の構造を適宜採用すればよく、その詳細な構造についての図示は省略する。また、CVVL73も、公知の種々の構造を適宜採用することが可能であり、その詳細な構造についての図示は省略する。VVT72及びCVVL73によって、吸気弁21は、その開弁タイミング及び閉弁タイミング、並びに、リフト量をそれぞれ変更することが可能である。
【0027】
シリンダヘッド12にはまた、気筒18毎に、気筒18内に燃料を直接噴射する直噴インジェクタ67と、吸気ポート16内に燃料を噴射するポートインジェクタ68とがそれぞれ取り付けられている。
【0028】
直噴インジェクタ67は、その噴口が燃焼室19の天井面の中央部分から、その燃焼室19内に臨むように配設されている。直噴インジェクタ67は、エンジン1の運転状態に応じた噴射タイミングでかつ、エンジン1の運転状態に応じた量の燃料を、燃焼室19内に直接噴射する。この例において、直噴インジェクタ67は、詳細な図示は省略するが、複数の噴口を有する多噴口型のインジェクタである。これによって、直噴インジェクタ67は、燃料噴霧が放射状に広がるように、燃料を噴射する。ピストン14が圧縮上死点付近に位置するタイミングで、燃焼室19の中央部分から放射状に広がるように噴射された燃料噴霧は、ピストン頂面に形成されたキャビティ141の壁面に沿って流動することにより、後述する点火プラグ25の周囲に到達するようになる。キャビティ141は、ピストン14が圧縮上死点付近に位置するタイミングで噴射された燃料噴霧を、その内部に収めるように形成されている、と言い換えることが可能である。この多噴口型のインジェクタ67とキャビティ141との組み合わせは、燃料の噴射後、点火プラグ25の周りに燃料噴霧が到達するまでの時間を短くすると共に、燃焼期間を短くする上で有利な構成である。尚、直噴インジェクタ67は、多噴口型のインジェクタに限定されず、外開弁タイプのインジェクタを、直噴インジェクタに採用してもよい。
【0029】
ポートインジェクタ68は、図1に示すように、吸気ポート16乃至吸気ポート16に連通する独立通路に臨んで配置されかつ、吸気ポート16内に燃料を噴射する。ポートインジェクタ68は、一つの気筒18に対して一つ設けてもよいし、一つの気筒18に対し二つの吸気ポート16が設けられているのであれば、二つの吸気ポート16のそれぞれに設けてもよい。ポートインジェクタ68の形式は特定の形式に限定されるものではなく、種々の形式のインジェクタを、適宜採用することが可能である。
【0030】
図外の燃料タンクと直噴インジェクタ67との間は、高圧燃料供給経路によって互いに連結されている。この高圧燃料供給経路上には、高圧燃料ポンプ63とコモンレール64とを含みかつ、直噴インジェクタ67に、相対的に高い燃料圧力で燃料を供給する高圧燃料供給システム62が介設されている。高圧燃料ポンプ63は、燃料タンクからコモンレール64に燃料を圧送し、コモンレール64は圧送された燃料を、高い燃料圧力で蓄える。直噴インジェクタ67が開弁することによって、コモンレール64に蓄えられている燃料が直噴インジェクタ67の噴口から噴射される。ここで、高圧燃料ポンプ63は、図示は省略するが、プランジャー式のポンプであり、例えばクランク軸とカム軸との間のタイミングベルトに連結されることにより、エンジン1によって駆動される。このエンジン駆動のポンプを含む構成の高圧燃料供給システム62は、40MPa以上の高い燃料圧力の燃料を、直噴インジェクタ67に供給することを可能にする。直噴インジェクタ67に供給される燃料の圧力は、エンジン1の運転状態に応じて変更される。尚、高圧燃料供給システム62は、これに限定されるものではない。
【0031】
同様に、図外の燃料タンクとポートインジェクタ68との間は、低圧燃料供給経路によって互いに連結されている。この低圧燃料供給経路上には、ポートインジェクタ68に対し、相対的に低い燃料圧力の燃料を供給する低圧燃料供給システム66が介設されている。低圧燃料供給システム66は、詳細な図示は省略するが、電動又はエンジン駆動の低圧燃料ポンプとレギュレータとを備えており、所定圧力の燃料を、各ポートインジェクタ68に供給するように構成されている。ポートインジェクタ68は、吸気ポートに燃料を噴射するため、低圧燃料供給システム66が供給する燃料の圧力は、高圧燃料供給システム62が供給する燃料の圧力に比べて、低い圧力に設定されている。尚、ここでは、直噴インジェクタ67とポートインジェクタ68との、2種類のインジェクタを備えているが、ポートインジェクタ68を省略することも可能である。
【0032】
シリンダヘッド12にはまた、燃焼室19内の混合気に点火する点火プラグ25が取り付けられている。点火プラグ25は、エンジン1の排気側から斜め下向きに延びるように、シリンダヘッド12内を貫通して配置されている。点火プラグ25の先端は、燃焼室19の中央部分に配置された直噴インジェクタ67の先端近傍で、燃焼室19内に臨んで配置されている。
【0033】
エンジン1の一側面には、各気筒18の吸気ポート16に連通するように吸気通路30が接続されている。一方、エンジン1の他側面には、各気筒18の燃焼室19からの既燃ガス(排気ガス)を排出する排気通路40が接続されている。これら吸気通路30及び排気通路40には、詳しくは後述するが、吸入空気の過給を行うターボ過給機61が配設されている。
【0034】
吸気通路30の上流端部には、吸入空気を濾過するエアクリーナ31が配設されている。また、吸気通路30における下流端近傍には、サージタンク33が配設されている。このサージタンク33よりも下流側の吸気通路30は、各気筒18毎に分岐する独立通路とされ、これら各独立通路の下流端が各気筒18の吸気ポート16にそれぞれ接続されている。
【0035】
吸気通路30におけるエアクリーナ31とサージタンク33との間には、ターボ過給機61のコンプレッサ611と、コンプレッサ611により圧縮された空気を冷却するインタークーラ34と、各気筒18への吸入空気量を調節するスロットル弁36とが配設されている。
【0036】
排気通路40の上流側の部分は、各気筒18毎に分岐して排気ポート17の外側端に接続された独立通路と該各独立通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成されている。この排気通路40における排気マニホールドよりも下流側には、ターボ過給機61のタービン612が配設されていると共に、その下流には、排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置として、直キャタリスト41とアンダーフットキャタリスト42とがそれぞれ接続されている。直キャタリスト41及びアンダーフットキャタリスト42はそれぞれ、筒状ケースと、そのケース内の流路に配置した、例えば三元触媒とを備えて構成されている。後述するように、このエンジンシステムでは、少なくとも一部の運転領域において、作動ガス燃料比G/F≧30、又は、空気燃料比A/F≧30に設定することでRawNOxの生成を抑制している。このことにより、このエンジンシステムでは、NOx浄化触媒が不要なシステムに構成されている。
【0037】
吸気通路30におけるサージタンク33とスロットル弁36との間の部分と、排気通路40におけるタービン612よりも上流側の部分とは、排気ガスの一部を吸気通路30に還流するためのEGR通路50を介して接続されている。このEGR通路50は、排気ガスをエンジン冷却水によって冷却するためのEGRクーラ52が配設された主通路51と、EGRクーラ52をバイパスするためのEGRクーラバイパス通路53と、を含んで構成されている。主通路51には、排気ガスの吸気通路30への還流量を調整するためのEGR弁511が配設され、EGRクーラバイパス通路53には、EGRクーラバイパス通路53を流通する排気ガスの流量を調整するためのEGRクーラバイパス弁531が配設されている。吸気通路30におけるコンプレッサ611よりも下流側と、排気通路40におけるタービン612よりも上流側とを連通させるEGR通路50を含むEGRシステムを、以下においては高圧EGRシステムと呼ぶ場合がある。
【0038】
このエンジン1はまた、高圧EGRシステムとは別に、低圧EGRシステムを備えている。低圧EGRシステムは、排気通路40におけるアンダーフットキャタリスト42よりも下流側部分と吸気通路30におけるターボ過給機61のコンプレッサ611よりも上流側部分とを互いに接続するL/P(Low Pressure)EGR通路54と、このL/P EGR通路54上に介設されて、排気ガスの吸気通路30への還流量を調整するためのL/P EGR弁541とを含んで構成されている。
【0039】
ターボ過給機61は、吸気通路30に配設されたコンプレッサ611と、排気通路40に配設されたタービン612とを有している。コンプレッサ611は、吸気通路30におけるエアクリーナ31とインタークーラ34との間に配設されている。一方、タービン612は、排気通路40における排気マニホールドと直キャタリスト41との間に配設されている。タービン612が排気ガス流により回転し、このタービン612の回転により、タービン612と連結されたコンプレッサ611が作動する。
【0040】
排気通路40には、タービン612をバイパスする排気バイパス通路43が接続されている。排気バイパス通路43には、排気バイパス通路43へ流れる排気量を調整するためのウエストゲートバルブ431が配設されている。
【0041】
このように構成されたエンジン1は、パワートレイン・コントロール・モジュール(以下、PCMという)10によって制御される。PCM10は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース及びこれらのユニットを接続するパスを有するマイクロプロセッサで構成されている。このPCM10が制御器を構成する。
【0042】
PCM10には、図1,2に示すように、各種のセンサSW1〜SW16の検出信号が入力される。この各種のセンサには、次のセンサが含まれる。すなわち、エアクリーナ31の下流側で、新気の流量を検出するエアフローセンサSW1及び新気の温度を検出する吸気温度センサSW2、インタークーラ34の下流側に配置されかつ、インタークーラ34を通過した後のガスの温度を検出する、第2吸気温度センサSW3、EGR通路50における吸気通路30との接続部近傍に配置されかつ、外部EGRガスの温度を検出するEGRガス温センサSW4、吸気ポート16に取り付けられかつ、気筒18内に流入する直前の吸気の温度を検出する吸気ポート温度センサSW5、シリンダヘッド12に取り付けられかつ、気筒18内の圧力を検出する筒内圧センサSW6、排気通路40におけるEGR通路50の接続部近傍に配置されかつ、それぞれ排気温度及び排気圧力を検出する排気温センサSW7及び排気圧センサSW8、直キャタリスト41の上流側に配置されかつ、排気中の酸素濃度を検出するリニアOセンサSW9、直キャタリスト41とアンダーフットキャタリスト42との間に配置されかつ、排気中の酸素濃度を検出するラムダOセンサSW10、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサSW11、クランクシャフト15の回転角を検出するクランク角センサSW12、車両のアクセルペダル(図示省略)の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサSW13、吸気側及び排気側のカム角センサSW14,SW15、及び、高圧燃料供給システム62のコモンレール64に取り付けられかつ、直噴インジェクタ67に供給する燃料圧力を検出する燃圧センサSW16である。
【0043】
PCM10は、これらの検出信号に基づいて種々の演算を行うことによってエンジン1や車両の状態を判定し、これに応じて直噴インジェクタ67、ポートインジェクタ68、点火プラグ25、吸気弁側のVVT72及びCVVL73、排気弁側のVVL71、高圧燃料供給システム62、並びに、各種の弁(スロットル弁36、EGR弁511、及びEGRクーラバイパス弁531、L/P EGR弁541、ウエストゲートバルブ431)のアクチュエータへ制御信号を出力する。こうしてPCM10は、エンジン1を運転する。
【0044】
図3は、エンジン1の運転領域の一例を示している。この運転領域は、エンジン暖機後の運転領域を示しており、このエンジン1は、RawNOxの生成抑制と、低燃費との両立を図るために、一部の運転領域である第1及び第2領域では、作動ガス燃料比G/Fが30以上に、又は、空気燃料比A/Fが30以上に設定されるリーンバーンエンジンである。一方、詳しくは後述するが、低速かつ高負荷の第3領域では、空気燃料比が理論空燃比に設定される。
【0045】
また、このエンジン1は、燃費の向上や排気エミッションの向上を目的として、エンジン1の暖機後は、一部の運転領域、具体的には第1領域において、点火プラグ25による点火を行わずに、圧縮自己着火によって燃焼を行う圧縮着火燃焼を行うように構成されている。しかしながら、圧縮着火燃焼は、エンジン1の負荷が高いときには燃焼が急峻になりすぎてしまい、燃焼騒音等の問題を引き起こすことになる。そのため、このエンジン1では、エンジン負荷が相対的に高い第2及び第3領域では、点火プラグ25を利用した火花点火燃焼を行う。尚、第2領域において所定負荷よりも低い領域では、圧縮着火燃焼を行ってもよい。以下においては、圧縮着火燃焼を行うモードを、CI(Compression Ignition)モードと呼び、火花点火燃焼を行うモードをSI(Spark Ignition)モードと呼ぶ場合がある。
【0046】
第1領域は、図3に示すように、エンジン負荷が相対的に低い領域である。正確には、エンジン回転数が所定回転数N1以下の低速側では(但し、回転数N1はエンジン1の回転数領域についての、おおよそ中間に相当する)、第1領域は、高負荷側の第3領域に相当する領域を除いた、低負荷からおおよそ中負荷にかけての領域である。但し、中速域では高負荷の領域も第1領域に含まれる。これに対し、エンジン回転数が所定回転数N1よりも高い高速側では、第1領域は、エンジン回転数が高くなるほど領域が拡大する第2領域を除く領域であって、中速域では低負荷から高負荷にかけての領域であり、高速域では低負荷に相当する領域である。第1領域は、前述したようにCIモードに設定される。CIモードでは基本的に、例えば吸気行程乃至圧縮行程中の、比較的早いタイミングで、直噴インジェクタ67又はポートインジェクタ68が燃料を噴射することにより、比較的均質なリーン混合気を形成すると共に、その混合気を圧縮上死点付近において圧縮自己着火させる。尚、第1領域において高負荷領域ではSI燃焼を行ってもよい。
【0047】
CIモードである第1領域内の、相対的に負荷の低い領域では、気筒内温度を高めて圧縮着火燃焼を安定化させる観点から、内部EGR制御が併用される。つまり、VVL71の制御によって、排気弁22を吸気行程中に開弁する排気の二度開きを行い、そのことによって内部EGRガスを気筒18内に導入する。一方、第1領域内の、相対的に負荷の高い領域では、エンジン負荷の増大に伴い、気筒内温度が高まり、圧縮着火燃焼が急峻になることから、内部EGR制御を止めて、高圧EGRシステム又は低圧EGRシステムにより、相対的に低温のEGRガスを気筒18内に導入する外部EGR制御に切り替える。尚、一部の領域、例えば中負荷の領域では、内部EGR制御と外部EGR制御とを併用してもよい。また、一部の領域では、内部EGR制御及び外部EGR制御を共に中止してもよい。
【0048】
そうして、第1領域では、ターボ過給機61による吸気の過給と共に、内部EGR制御及び/又は外部EGR制御の実行により、既燃ガスを気筒18内に導入することによって、G/Fを30以上に設定する。また、内部EGR制御及び外部EGR制御を共に中止したときには、A/Fを30以上に設定する。このように超リーンな混合気は、RawNOxの生成を抑制する上で有効であると共に、燃費の向上にも有利になる。
【0049】
第2領域は、図3に示すように、エンジン回転数がN1よりも高い高速側において、第1領域よりも負荷の高い領域であり、前述したように、第2領域は、エンジン回転数が高くなる程、負荷方向に拡大する。第2領域は、高速側における全開領域を含んでいる。第2領域は、負荷が相対的に高いため燃料噴射量が増大することから、G/F≧30又はA/F≧30にするには、気筒内に導入する全ガス量を増大しなければならない。
【0050】
ここで、図4は、縦軸を圧縮比、横軸を流量としてコンプレッサの効率を示すコンプレッサマップの一例であり、図5は、エンジン回転数と、ターボ過給機61のコンプレッサ効率との関係の一例を示す図であり、図6は、エンジン回転数と、コンプレッサを通過する質量流量との関係の一例を示す図であり、図7は、エンジン回転数と、気筒内に導入される全ガス質量流量との関係の一例を示す図である。これらの図において実線は、高圧EGRシステムによる外部EGR制御を停止してA/F=30としたときの過給限界を示し、破線は、高圧EGRシステムによる外部EGR制御を実行してG/F=30としたときの過給限界を示している。
【0051】
先ず、図5によると、エンジン回転数が相対的に高回転のときには、外部EGR制御を停止しているときの方が、外部EGR制御を実行しているときよりもコンプレッサ効率が低下する。これは、外部EGR制御を停止しているときにA/F≧30にするには、コンプレッサ611を通過する流量を増大させなければならず、図4に示すように、コンプレッサ効率が悪い状態で、ターボ過給機61を運転することになるためである。図4において、「3000」「4000」「5000」は、エンジンの回転数を示しており、特に4000〜5000rpm付近は、コンプレッサ効率が悪くなっている。コンプレッサ効率を向上させるには、図4に白抜きの矢印で示すように、コンプレッサ611の通過流量を低減することが考えられる。
【0052】
この点につき、高圧EGRシステムによる外部EGR制御を実行することは、図6に示すように、コンプレッサ611の下流側に既燃ガスが導入される分、特に高速側において、EGR制御を停止しているときよりもコンプレッサ611の通過流量を低下させることを可能にする。このように高圧EGRシステムによる外部EGR制御を実行してコンプレッサ611の運転条件を変更することによって、図4図5に示すように、エンジン回転数が相対的に高回転のときのコンプレッサ効率を向上させることが可能になる。尚、図7に示すように、高圧EGRシステムによる外部EGR制御を実行しているときも、外部EGR制御を停止しているときも、気筒内に導入される全ガス質量流量は、ほぼ同じであり、いずれにおいても、G/F≧30又はA/F≧30が達成される。
【0053】
尚、図5に示すように、エンジン回転数が相対的に低回転のときには、外部EGR制御を停止しているときの方が、外部EGR制御を実行しているときよりもコンプレッサ効率が高まる。
【0054】
このように高速かつ高負荷領域である第2領域においてコンプレッサ効率を高めることは、必要なタービン動力の低減に有利になる。このことは、タービン612の入口圧力、言い換えるとエンジン1の排圧を下げることを可能にし、ポンピングロスを低減する。図8は、エンジン回転数と、エンジン1のポンピングロスとの関係の一例を示しており、同図においても、実線は、高圧EGRシステムによる外部EGR制御を停止してA/F=30としたときの過給限界点のポンピングロスを示し、破線は、高圧EGRシステムによる外部EGR制御を実行してG/F=30としたときの過給限界点のポンピングロスを示している。これによると、エンジン回転数が相対的に高回転のときにおいて、外部EGR制御を実行しているときは、外部EGR制御を停止しているときよりもポンピングロスが低減している。
【0055】
そこで、高速かつ高負荷領域である第2領域においては、高圧EGRシステムによる外部EGR制御の実行によりコンプレッサ効率を高めて、G/F≧30の超リーン混合気の維持とエンジンのポンピングロスの低減とを両立させる。このことは、相対的に負荷の高い第2領域においても、RawNOxの生成が抑制される上に、前述の通り、高トルクの確保及び燃費の向上に有利になる。
【0056】
また、エンジン負荷が相対的に高い第2領域では、圧縮着火燃焼が急峻な燃焼になってしまう。そこで、この第2領域における、少なくとも高負荷側の領域は、第1領域とは異なり、SIモードに設定される。SIモードでは基本的に、例えば吸気行程乃至圧縮行程中に、直噴インジェクタ67が気筒18内に燃料を噴射することにより、均質乃至成層化した混合気を形成すると共に、圧縮上死点付近において点火を実行することによってその混合気に着火する。尚、第2領域における、低負荷側の領域は、SIモードとしてもよいし、CIモードとしてもよい。
【0057】
第3領域は、図3に示すように、エンジン回転数がN1以下の低速側において、第1領域よりも負荷の高い領域である。第3領域は低速側であるため、排気エネルギがそもそも低く、全開領域を含む第3領域において、所望の高トルクを確保しつつ、G/F≧30及びA/F≧30にするだけのターボ過給機61の過給能力が得られない。そのため、第3領域では、空気燃料比を理論空燃比(λ=1)に設定する。第3領域ではまた、燃焼音の制約からSIモードに設定すればよいが、第3領域をCIモードに設定してもよい。
【0058】
第3領域ではさらに、ポンピングロスの低減や、過剰なエンジントルクの低減のために、高圧EGRシステム又は低圧EGRシステムによる外部EGRガスの導入を行う。外部EGR制御の実行はまた、比較的ノッキングが発生しやすい低速かつ高負荷の第3領域において、ノッキングの回避にも有利になる。
【0059】
このように、このリーンバーンエンジンでは、エンジン回転数がN1よりも高い高速領域において、高負荷側である第2領域では、高圧EGRシステムによる外部EGR制御の実行により、既燃ガスを気筒18内に導入することによって、ターボ過給機61のコンプレッサ効率を高めるため、全開負荷を含む第2領域において、G/Fを30以上に設定することを可能にしている。つまり、RawNOxの生成抑制と所望の高トルクの確保とが両立する。また、コンプレッサ効率を高めることによって、エンジン1のポンピングロスが低減するから、燃費の向上にも有利になる。
【0060】
尚、例えばターボ過給機61に加えて、電動ブースト等の補助過給機を備えるようにして、ターボ過給機61の過給限界によって理論空燃比に制限される第3領域においても、G/F≧30又はA/F≧30の超リーンな運転を行うようにしてもよい。尚、電動ブースト等の補助過給機を備える代わりに、ターボ過給機61のシャフトに電動モータを取り付けた電動ターボ過給機を採用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン(エンジン本体)
10 PCM(制御器)
18 気筒
50 EGR通路
531 EGR弁(EGR手段)
61 ターボ過給機
611 タービン
612 コンプレッサ
図1
図2
図3
図5
図6
図7
図8
図4