特許第5803334号(P5803334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5803334
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】有機EL照明装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/26 20060101AFI20151015BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20151015BHJP
   H05B 33/06 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   H05B33/26 Z
   H05B33/14 A
   H05B33/06
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-142429(P2011-142429)
(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公開番号】特開2013-12303(P2013-12303A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 行生
【審査官】 越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−259413(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/062645(WO,A1)
【文献】 特開2010−123397(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/2884147(US,A1)
【文献】 特開2009−301013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/26
H01L 51/50
H05B 33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第一電極と有機層と第二電極とを備え、前記有機層は前記第一電極の陽極部と前記第二電極の陰極部とによって挟持されてなる有機EL照明装置であって、
前記第二電極は、金属からなる陰極配線部及び前記陰極部を有し、前記陰極配線部は前記陰極部よりも幅狭な電子印加部を有し、
前記電子印加部の幅は、前記第一電極の正孔印加部の幅の半分以下であることを特徴とする有機EL照明装置。
【請求項2】
前記第一電極の陽極配線部上に形成された低抵抗配線部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の有機EL照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状に発光する有機EL照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL表示装置及び有機EL照明装置に用いられる有機EL素子が自発光素子として脚光を浴びている。有機EL表示装置は、液晶表示装置に比して、視野角依存性が少ない、コントラスト比が高い、薄膜化が可能である等の利点から、各所で次世代のフラットパネルディスプレイとして研究開発が行われている。また、有機EL照明装置の開発も進んでおり、例えば特許文献1に開示されている。有機EL照明装置の特徴として、発光ダイオード等の点光源と違い、面光源であることから、高い期待が寄せられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−198980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有機EL照明装置の発光面内において、輝度の高い箇所と、低い箇所とが発生する虞があった。有機EL照明装置は、面光源であることから、発光面内の発光輝度のバラつきを示す均斉度が重要視されているが、この均斉度が低い場合、発光面内での温度バラつきにも影響を及ぼすことがあるため、問題であった。
本発明は、この問題に鑑みなされたものであり、均斉度が高い有機EL照明装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1に記載したように、少なくとも第一電極2と有機層4と第二電極3とを備え、前記有機層4は前記第一電極2の陽極部2aと前記第二電極3の陰極部3aとによって挟持されてなる有機EL照明装置であって、前記第二電極3は、金属からなる陰極配線部3b及び前記陰極部3aを有し、前記陰極配線部3bは前記陰極部3aよりも幅狭な電子印加部3cを有し、前記電子印加部3cの幅W4は、前記第一電極2の正孔印加部2cの幅W1の半分以下であるものである。
【0007】
また、本発明は、請求項に記載したように、前記第一電極2の陽極配線部2b上に形成された低抵抗配線部7を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
電子印加部を陰極部よりも幅狭にしたことにより、有機EL照明装置の均斉度が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態を示す有機ELパネルAの正面図。
図2】同上実施形態を示す正面図。
図3】同上実施形態を示す正面図。
図4】同上実施形態を示す正面図。
図5】第一比較例を示す有機ELパネルBの正面図。
図6】第二比較例を示す有機ELパネルCの正面図。
図7】有機ELパネルA,B,Cの輝度値を示す表図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づいて、ボトムエミッション方式の有機ELパネルAに本発明を適用した一実施形態を説明する。有機ELパネルAは、基板1,第一電極2,第二電極3,発光部(有機層)4,低抵抗配線部7を備えている。
【0011】
基板1は、矩形のガラス板からなるものである。基板1は、0.7mm厚の無アルカリガラスからなるものであるが、他のガラス基板(アルカリガラス等)を用いても構わない。また、ガラス厚についても、その他のガラス厚のものを用いても構わない。
【0012】
第一電極2は、スパッタリング法にて基板1に形成されたITO(Indium Tin Oxide)からなるものである。第一電極2は、ITOでなくても良く、IZO(Indium Zinc Oxide)或いはAZO(Aluminum
Zinc Oxide)等であっても構わない。第一電極2は、陽極部2a及び陽極配線部2bを有している(図2参照)。第一電極2の陽極部2aは、発光部4が形成される矩形領域である。第一電極2の陽極配線部2bは、発光部4に正孔を印加する正孔印加部2cを有しており、この正孔印加部2cは所定幅W1を有している。
【0013】
発光部4は、正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層,電子注入層を順次積層した有機膜層からなるものである。発光部4は、横幅W2,縦幅W3の矩形になっており、第一電極2の陽極部2a上に形成される(図3参照)。低抵抗配線部7は、モリブデン(Mo),アルミニウム(Al),モリブデン(Mo)の3層構造になっているが、クロム(Cr)配線等の低抵抗配線であっても構わない。低抵抗配線部7は、第一電極2の陽極配線部2b上に形成されている。
【0014】
第二電極3は、蒸着法にて形成されたアルミニウム層からなるものである。第二電極3は、陰極部3a及び陰極配線部3bを有している(図4参照)。第二電極3は、アルミニウム(Al)からなるものであるが、マグネシウム(Mg),コバルト(Co),金(Au),銅(Cu),亜鉛(Zu)等の金属や、それらの合金を用いても構わない。陰極配線部3bは、所定幅W4を有する電子印加部3cを有している。
【0015】
有機ELパネルAは、封止部材(図示しない)を備えている。封止部材は、1.1mm厚の板状の基材をサンドブラスト法によって0.5mm削って凹部を形成したものである。封止部材は、UV硬化型の接着剤にて、基板1に接着されている。封止部材は、アルカリガラスからなるものであるが、他のガラス基板や、ステンレス等の金属からなるものであっても構わない。また、凹部の形成方法は、ドライエッチング等のその他掘削手法を用いても構わない。封止部材の凹部には、酸化ストロンチウム(SrO)タイプのシート吸湿剤を設置し、水分対策を行っている。なお、酸化ストロンチウムタイプ以外の酸化カルシウム(CaO)タイプや、酸化バリウム(BaO)タイプであっても構わない。
【0016】
図5は、第一比較例を示すものである。有機ELパネルBは、基板1,第一電極2,第二電極13,発光部4を備えている。
【0017】
有機ELパネルBの基板1,第一電極2,発光部4は、有機ELパネルAと同一である。有機ELパネルBの第二電極13は、矩形になっている。有機ELパネルBは、有機ELパネルAとは異なり、低抵抗配線部7を備えていない。
【0018】
図6は、第二比較例を示すものである。有機ELパネルCは、基板1,第一電極2,第二電極13,発光部4,低抵抗配線部7を備えている。
【0019】
基板1,第一電極2,第二電極13,発光部4は、有機ELパネルBと同一である。低抵抗配線部7は、有機ELパネルAと同一である。
【0020】
図7は、有機ELパネルA,B,Cの所定位置[1]〜[9]における発光輝度を示すものである。有機ELパネルA,B,Cは、位置[5]における初期輝度を約3000cd/mとして、直流駆動により発光部4が有機発光される。
なお、本明細書における所定位置[1]〜[9]とは、図1図5図6における丸1〜丸9を示している。
【0021】
第一比較例では、隅箇所(位置[1],[3],[7],[9])における輝度が6000cd/m以上あり、中央箇所(位置[5])の2倍以上になっている。第二比較例では、低抵抗配線部7があるため、第一比較例に比べると、輝度差が小さくなっている。しかし、隅箇所(位置[1],[3],[7],[9])における輝度が4500cd/m以上あり、中央箇所(位置[5])の1.5倍以上になっている。
【0022】
このように、有機ELパネルB,Cに輝度ムラが発生するのは、陽極配線部2bからの電流の流れ込みによる発熱が原因であると考えられる。つまり、発熱によって、低抵抗化した陽極配線部2bに電流が集中してしまい、高輝度発光する個所と、低輝度発光する箇所に分かれてしまい、有機ELパネルB,Cの発光ムラとなっていると考えられる。
【0023】
本実施形態の有機ELパネルAでは、陰極配線部3bに幅狭部(電子印加部3c)を設けているため、第一比較例,第二比較例に比べると、輝度ムラが小さい。本実施形態では、陰極配線部3bの幅狭部(電子印加部3c)に温度上昇が発生しており、この温度上昇が有機ELパネルAの輝度安定性に寄与していると考えられる。つまり、第一比較例,第二比較例のように陽極配線部2b側に発生した高輝度化を、陰極配線部3b側へも発生させることによって、有機ELパネルAの輝度の均一化を図っている。
【0024】
有機ELパネルB,Cの輝度ムラの原因は、陽極配線部2b側の発熱であるが、本実施形態では、陰極配線部3b側も発熱させることによって、有機ELパネルAの外周部全体から比較的安定な発熱が生じる。有機ELパネルA,B,Cの外周部は、熱の逃げ場とのなるため、比較的放熱され易く、中央部は、熱が逃げにくい傾向がある。この傾向から、外周部は冷却され、中央部は、冷却されにくいため、有機ELパネルA全体で熱的に安定になりやすく、また輝度も安定しやすいものと考えられる。電子印加部3cの幅W4は、第一電極2の正孔印加部2cW1の幅の半分以下であることが望ましい。
【0025】
なお、本実施形態の有機ELパネルAは、ボトムエミッション方式であったが、トップエミッション方式であっても良い。
【符号の説明】
【0026】
2 第一電極
2a 陽極部
2c 正孔印加部
3 第二電極
3a 陰極部
3c 電子印加部
4 有機層(発光部)
7 低抵抗配線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7