(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電力量とは、現時点から第4時間だけ遡った時点との間において第1設備にて使用された電力の積算値、(b)現時点から第5時間だけ遡った時点と、現時点から第5時間よりも短い第6時間遡った時点との間において第1設備にて使用された電力の積算値のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
前記監視部は、前記電力量の計測対象となる期間を対象期間として、この対象期間を互いに等しい複数の所定期間に区切り、所定期間毎の第1設備の使用電力の積算値を期間積算値とし、対象区間に属する各所定期間の各期間積算値のうち、所定値未満の期間積算値を除外して所定値以上の期間積算値のみを積算し、この積算にて得られる値を前記電力量とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態1]
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る製造ラインの概略構成を示す模式図である。
【0019】
本実施形態の製造ライン10(ライン)は、設備A〜Dを有しており、搬送されるワークに対して設備A〜Dの各々が順に処理を施すようになっているラインである。なお、ワークとはラインにおける処理対象物を意味し、本実施形態の製造ライン10におけるワークは電子回路に用いられる部品であるものとする。
【0020】
製造ライン10においては、
図1に示すように、設備A、設備B、設備C、設備Dのうち、設備Aが前記ワークの搬送方向の上流側に最も近い位置に配置されている。設備Bは、前記搬送方向において設備Aの下流側に配置され、設備Cは、前記搬送方向において設備Bの下流側に配置され、設備Dは、前記搬送方向において設備Cの下流側に配置されている。
【0021】
すなわち、製造ライン10のワークは、まず、設備Aに搬入されて設備Aにて処理が施され、設備Aでの処理後に設備Bに搬入されて設備Bにて処理が施され、設備Bでの処理後に設備Cに搬入されて設備Cにて処理が施され、設備Cでの処理後に設備Dに搬入されて設備Dにて処理が施されるのである。
【0022】
設備Aは、ワークに対してプレス加工を実施するための設備であり、金属加工プレス100と、金属加工プレス100に部材を供給するためのロールフィーダ等の周辺装置とを備えている。設備Bは、設備Aにて加工されたワーク(例えば金属端子)を樹脂材と伴にインサート成形するための射出成型機である。設備Cは、設備Bによる処理が施された後のワークに対して曲げ加工を施すための金属曲げプレスである。設備Dは、設備Cによる処理が施された後のワークに接着剤を塗布・乾燥するための塗布・乾燥装置である。
【0023】
また、製造ライン10において、設備Aへのワークの搬入は人手(作業員)によって行われる。さらに、設備Aから設備Bへのワークの搬送、設備Bへのワークの搬入、設備Bからのワークの搬出も人手によって行われる。
【0024】
これに対し、設備Cに対するワークの搬入、設備Cから設備Dへのワークの搬送、設備Dからのワークの搬出はコンベヤによって行われるようになっている。つまり、設備Bから搬出されたワークを作業員がコンベヤに載置すると、このワークはコンベヤによって自動的に設備Cに搬入され、その後、設備Dから搬出されるまでの当該ワークに対する搬送処理はコンベヤによって自動的に行われる。
【0025】
また、以上にて説明した製造ライン10は設備A〜設備Dの電源を制御する制御装置を備えている。以下、
図2を参照して制御装置について説明する。
図2は、制御装置20の概略構成を示すブロック図である。
【0026】
制御装置20は、製造ライン10における設備A〜設備Dの各々の電源を制御するための情報処理装置であり、設備A〜設備Dの各々の電源に接続されている他、表示装置30および入力装置40に接続されている。また、制御装置20は、製造ライン10に設置されている電力計11〜14にも接続されている。
【0027】
制御装置20は、例えばPC(Personal Computer)ベースのコンピュータによって構成される。そして、制御装置20における制御処理は、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現される。このプログラムは例えばCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などのリムーバブルメディアに記録され、制御装置20が前記リムーバブルメディア(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)から前記プログラムを読み込んで使用する形態であってもよい。また、ハードディスク(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)などにインストールされたプログラムを制御装置20が読み込んで使用する形態であってもよい。なお、制御装置20が実行する制御処理の詳細については後述する。
【0028】
表示装置30は、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレィ)、有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等の表示手段であり、制御装置20から受信した表示データに基づいて文字や画像などの各種の情報を表示出力するものである。
【0029】
入力装置40は、製造ライン10の作業員から各種の入力を受け付けるものであり、入力用ボタン、キーボード、マウスなどのポインティングデバイス、その他の入力デバイスによって構成されている。入力装置40は、オペレータから入力された情報を入力データに変換して制御装置20に送信する。
【0030】
電力計11〜14は、設備の通算電力量を計測(出力)する積算電力計である。具体的に、電力計11は設備Aの通算電力量を計測し、電力計12は設備Bの通算電力量を計測し、電力計13は設備Cの通算電力量を計測し、電力計14は設備Dの通算電力量を計測する。なお、通算電力量とは、設備設置時から計測時点までの通算の電力量(消費される電力の積算値)を意味する。
【0031】
つぎに、制御装置20が実行する制御処理の詳細について説明する。制御装置20は、
図2に示すように、監視部21、電源制御部22、演算部23、表示制御部24を備えている。なお、演算部23および表示制御部24は、本実施形態にて用いられる構成ではなく実施の形態3で用いられる構成であるため、本実施形態ではその説明を省略して実施の形態3において説明する。
【0032】
監視部21は、電力計11〜14にアクセスして、設備A〜Dの各々の第1電力量を監視するブロックである。なお、第1電力量とは、設備の電源がオンになった時点と現時点との間において当該設備にて使用された電力の積算値である。つまり、設備Aの第1電力量とは、設備Aの電源がオンになった時点から現時点までの間にて設備Aに使用された電力の積算値であり、設備Bの第1電力量とは、設備Bの電源がオンになった時点から現時点までの間に設備Bにて使用された電力の積算値であり、設備Cの第1電力量とは、設備Cの電源がオンになった時点から現時点までの間に設備Cにて使用された電力の積算値であり、設備Dの第1電力量とは、設備Dの電源がオンになった時点から現時点までの間に設備Dにて使用された電力の積算値である。
【0033】
なお、監視部21は、設備Aの電源をオンにした時の電力計11の計測値(通算電力量)と現時点の電力計11の計測値との差分の絶対値を求め、この絶対値を、設備Aの第1電力量として監視している。また、設備B〜設備Dの第1電力量の監視手法についても設備Aの場合と同様である(但し、設備Bの場合、現時点の電力計12の計測値と、設備Bの電源をオンにした時の電力計12の計測値とを用いて前記差分を求め、設備Cの場合、現時点の電力計13の計測値と、設備Cの電源をオンにした時の電力計13の計測値とを用いて前記差分を求め、設備Dの場合、現時点の電力計14の計測値と、設備Dの電源をオンにした時の電力計14の計測値とを用いて前記差分を求めている点で、設備Aの場合と異なる)。
【0034】
電源制御部22は、利用者のコマンドおよび監視部21にて監視されている第1電力量に基づいて、設備A〜設備Dの各々の電源をオフからオンに切り替える制御を行うブロックである。以下では、電源制御部22による処理について説明する。
【0035】
まず、製造ライン10は非稼動の状態であり、設備A〜設備Dの電源がオフになっているものとする。この状態において、製造ライン10の稼動開始を指示する開始コマンドを利用者が入力装置40を介して制御装置20へ入力すると、この開始コマンドは電源制御部22へ送られるようになっている。
【0036】
電源制御部22は、当該開始コマンドを入力すると、設備A〜設備Dのなかでワークに対して最初に工程を実行する設備Aの電源をオフからオンに切り替える(設備A〜設備Dのなかで最もワーク搬送方向上流側に位置する設備Aの電源をオンにする)。具体的に、電源制御部22は、利用者から前記開始コマンドを入力すると、電源をオフからオンに切り替えるための制御信号を設備Aに送信し、これにより設備Aの電源はオフからオンに切り替わる。
【0037】
設備Aの電源がオフからオンに切り替わった後、電源制御部22は、監視部21にて監視されている設備Aの第1電力量が閾値Aより低い値から閾値A以上の値に増加したか否かの判定を行い続ける。そして、電源制御部22は、設備Aの第1電力量が閾値Aより低い値から閾値A以上に増加したことを検出すると、設備Aによる工程よりも後の工程を実行する設備Bの電源をオフからオンに切り替える(設備Aよりもワーク搬送方向の下流側に位置する設備Bの電源をオンにする)。具体的に、電源制御部22は、設備Aの第1電力量が閾値Aより低い値から閾値A以上に増加したことを検出すると、電源をオフからオンに切り替えるための制御信号を設備Bに送信し、これにより設備Bの電源はオフからオンに切り替わる。なお、閾値Aは、設備Bの電源をオンにできる状態にまで設備Aの工程が進捗しているものと推定される値であり、各設備のスペック、ライン10の設計内容およびワークの種類等から経験的に定められる値である。また、閾値Aは試験運転を行うことで定められても構わない。
【0038】
設備Bの電源がオフからオンに切り替わった後、電源制御部22は、監視部21にて監視されている設備Bの第1電力量が閾値Bより低い値から閾値B以上の値に増加したか否かの判定を行い続ける。そして、電源制御部22は、設備Bの第1電力量が閾値Bより低い値から閾値B以上の値に増加したことを検出すると、設備Bによる工程よりも後の工程を実行する設備Cの電源と設備Dの電源とを、オフからオンに切り替える(設備Bよりもワーク搬送方向の下流側に位置する設備C、Dの電源をオンにする)。具体的に、電源制御部22は、設備Bの第1電力量が閾値Bより低い値から閾値B以上の値に増加したことを検出すると、電源をオフからオンに切り替えるための制御信号を設備C、Dに送信し、これにより設備C、Dの電源はオフからオンに切り替わるようになっている。なお、閾値Bは、設備C、Dの電源をオンにできる状態にまで設備Bの工程が進捗しているものと推定される値であり、各設備のスペック、ライン10の設計内容およびワークの種類等から経験的に定められる値である。また、閾値Bは試験運転を行うことで定められても構わない。
【0039】
以上のようにして、製造ライン10における設備A〜Dは電源がオフからオンに切り替わるようになっている。
【0040】
つぎに、
図3を用いて、設備A〜Dの電源がオフからオンに切り替わるタイミングを説明する。
図3は、実施の形態1の設備A〜Dの各々にて使用される電力(消費電力)を示したグラフである。
図3の各グラフは、横軸が時間を示し、縦軸が各設備の消費電力(瞬時値)を示している。
【0041】
図3に示す時点t
0において、稼動開始を指示する開始コマンドが利用者から入力され、設備Aの電源がオフからオンにされたものとする。この場合、電源制御部22は、設備Aの第1電力量が閾値A以上の値になったか否かを判定し続ける。例えば、現時点が
図3に示すt
1である場合、電源制御部22は、時点t
0からt
1までの区間の設備Aの消費電力の積算値(第1電力量)が閾値A以上の値であるか否かを判定する。なお、
図3に示す設備Aのグラフにおける時点t
0からt
1までの区間の積分値が前記積算値に相当する。
【0042】
図3の例では、時点t
0から時点t
1までの区間の設備Aの消費電力の積算値(第1電力量)は閾値Aよりも少ないものとする。それゆえ、電源制御部22は、時点t
1において設備Bの電源をオフに維持している。そして、
図3の例では、現時点がt
2になった時、時点t
0からt
2までの区間の設備Aの消費電力の積算値が閾値A以上になるものとする。したがって、電源制御部22は、現時点がt
2になった時、設備Aの第1電力量が閾値A以上の値になったと判定し、設備Bの電源をオンにしている。これにより、設備Bは、時点t
2から電源がオンになって起動する。
【0043】
時点t
2において設備Bの電源がオンになった後、電源制御部22は、設備Bの第1電力量が閾値以上の値になったか否かを判定し続ける。例えば、現時点がt
3である場合、電源制御部22は、時点t
2からt
3までの区間の設備Bの消費電力の積算値(第1電力量)が閾値B以上の値であるか否かを判定する。
図3の例では、時点t
2から時点t
3までの区間の設備Bの消費電力の積算値(第1電力量)は閾値Bよりも少ないものとする。それゆえ、電源制御部22は、時点t
3において設備Cおよび設備Dの電源をオフに維持している。そして、
図3の例では、現時点がt
4になった時、時点t
2からt
4までの区間の設備Bの消費電力の積算値(第1電力量)が閾値B以上の値になるものとする。したがって、電源制御部22は、現時点がt
4になった時、時点t
2からt
4までの区間の設備Bの消費電力の積算値(第1電力量)が閾値B以上の値になったものと判定し、設備Cおよび設備Dの電源をオンにしている。
【0044】
以上示したように、本実施形態の制御装置20は、設備A(第1設備)における第1電力量を監視し、設備Aの第1電力量に基づいて設備B(第2設備)の電源を制御している。また、制御装置20は、設備B(第1設備)における第1電力量を監視し、設備Bの第1電力量に基づいて設備C(第2設備)の電源および設備D(第2設備)の電源を制御している。
【0045】
特に、制御装置20は、設備A(第1設備)における第1電力量が閾値A(第1閾値)より低い値から閾値A以上の値に増加した場合、設備B(第2設備)の電源をオフからオンに切り替えている。また、制御装置20は、設備B(第1設備)における第1電力量が閾値B(第1閾値)より低い値から閾値B以上の値に増加した場合、設備C(第2設備)の電源および設備D(第2設備)の電源をオフからオンに切り替えている。つまり、以上の実施形態は、上流側の設備の第1電力量(使用された電力の積算値)に応じて下流側の設備の電源をオンにするタイミングを定める構成である。ここで、上流側の設備の第1電力量は上流側の設備における工程の進捗状況を示していることから、以上の実施形態では、上流側の設備における工程の進捗状況に応じて下流側の設備の電源をオンに切り替えるタイミングを定めることになる。
【0046】
そして、下流側の設備において電源をオンにする最適タイミング(待機状態や空運転の期間ができるだけ少なくなるようなタイミング)は、上流側の設備の工程の進捗状況から定まるものである。それゆえ、上流側の設備における工程の進捗状況に応じて下流側の設備の電源をオンに切り替えるタイミングを定めることができる本実施形態によれば、下流側の設備における待機状態や空運転の期間を必要最小限に抑えることができ、無駄な消費電力を抑制できる。
【0047】
また、本実施形態では、設備Aの第1電力量が閾値A以上になった時に設備Bの電源をオンにし、設備Bの第1電力量が閾値B以上になった時に設備CおよびDの電源をオンにしている。しかし、設備Aの第1電力量が閾値A以上になった時に、設備Bだけではなく、設備Cおよび設備Dの電源もオンにするようになっていてもよい。
【0048】
また、例えば、監視部21は、各設備の第1電力量の算出を以下のように行うようになっていてもよい。なお、以下では設備Aの第1電力量の算出について例示するが、設備B〜Dについても同様とする。
まず、設備Aの第1電力量の算出対象(計測対象)となる期間を対象期間とする。つまり、この対象期間とは、設備Aの電源オン時から現時点までの期間である。そして、監視部21は、対象期間を複数の等しい所定期間に区切り、所定期間毎の設備Aの消費電力(使用電力)の積算値を期間積算値として計測する(つまり、所定期間は対象期間より必ず短くなる)。さらに、監視部21は、対象区間に属する各所定期間の各期間積算値のうち、所定値未満の期間積算値を除外して所定値以上の期間積算値のみを積算する。そして、この積算で得られる値を第1電力量とする。
このような第1電力量の算出手法の場合、設備Aにて実行される工程(例えば加工処理)とは関係のない微小な消費電力(例えば工程非実行時の無負荷状態のモータの消費電力)を積算しないように設定できる。したがって、設備Aの電源をオンにしたものの、何らかの理由で最初のワークが設備Aに投入されていない状況が続いて設備Aが工程を実施していない状況が続いている場合、設備Bの電源をオンにしてもよいタイミングになってないのに、設備Aの第1電力量が閾値A以上になってしまうというような不具合の発生を抑制できる。
【0049】
なお、以上では、設備の電源がオンになった時点と現時点との間に使用された電力の積算値を第1電力量とする形態であったが、このような形態に限定されるものではない。例えば、現時点と現時点から一定の第1時間(例えば10秒)だけ遡った時点との間に使用された電力の積算値を第1電力量として、設備Aの当該第1電力量が閾値以上になった時に設備Bの電源をオンにし、設備Bの当該第1電力量が閾値以上になった時に設備Cや設備Dの電源をオンにするようになっていてもよい。この場合、前述した対象期間は、現時点と現時点から一定の第1時間だけ遡った時点との間の期間になる。
また、現時点から一定の第2時間(例えば15秒)だけ遡った時点と現時点から第2時間よりも短い一定の第3時間(例えば5秒)だけ遡った時点との間に使用された電力の積算値を第1電力量として、設備Aの当該第1電力量が閾値以上になった時に設備Bの電源をオンにし、設備Bの当該第1電力量が閾値以上になった時に設備Cや設備Dの電源をオンにするようになっていてもよい。この場合、前述した対象期間は、現時点から一定の第2時間だけ遡った時点と現時点から第2時間よりも短い一定の第3時間だけ遡った時点との間の期間になる。
【0050】
(変形例)
また、以上にて説明した実施形態では、ある設備(例えば設備A)の第1電力量に応じて、当該設備よりもワークの搬送方向の下流側に位置する設備(例えば設備B)の電源をオフからオンに切り替える構成であるが、当該構成に限定されるものではない。すなわち、ある設備(例えば設備B)の第1電力量に応じて、当該設備よりもワークの搬送方向の上流側に位置する設備(例えば設備A)の電源をオフからオンに切り替える構成であってもよい。以下ではこの構成について説明する。
【0051】
例えば、
図1に示す設備Bが、内部温度を予め待機温度にまで上昇させておかなければワークに処理を施せない装置であり、仮に設備Aと設備Bとで運転を同時に開始させた場合、最初に処理されるワークが設備Aから出力されるタイミングでは設備Bの内部温度が待機温度に到達しておらず、設備Aの運転開始前から設備Bを空運転(ワークの処理前に予め待機温度に維持するための運転)させておかなければならないような変形例を想定する。このような変形例において、無駄な電力消費を抑制するためには、設備Bの空運転の期間を必要なだけ確保し、不必要な空運転の期間を削除することが要求される。
【0052】
ここで、設備Bの不必要な空運転の期間を削除するには、設備Bの空運転の進捗状況に応じた適切な出力タイミングで設備Aから最初のワークを出力する必要があり、そのためには、設備Bの空運転の進捗状況に応じた適切な開始タイミングで設備Aの運転を開始させる必要がある。つまり、設備Aの適切な運転開始タイミングは設備Bの空運転の進捗状況によって定まるものである。また、設備Bの第1電力量(設備Bの電源オン時から現時点までの消費電力の積算値)は設備Bの空運転の進捗状況を表す値であるといえる。
【0053】
そこで、本変形例において、電源制御部22は、製造ライン10が非稼動状態(設備A〜設備Dの電源がオフである状態)である時にオペレータから開始コマンドを入力すると、まず設備Bの電源のみをオフからオンに切り替えて設備Bに空運転を実施させるようになっている。
【0054】
その後、電源制御部22は、設備Bの第1電力量(設備Bの電源オン時から現時点までの設備Bの消費電力の積算値)が閾値Xより低い値から閾値X以上の値へ増加したか否かを判定し続ける。電源制御部22は、設備Bの第1電力量が閾値X以上に増加していないと判定した場合、設備Aの電源をオフに維持し続ける。これに対し、電源制御部22は、設備Bの第1電力量が閾値X以上の値に増加したと判定した場合、設備Aの電源をオフからオンに切り替えるようになっている。
【0055】
さらに、設備Aの電源をオンにした後、電源制御部22は、設備Bの第1電力量が閾値Yより低い値から閾値
Y以上の値へ増加したか否かを判定し続ける。なお、閾値Yは、閾値Xよりも高い値であるものとする。電源制御部22は、設備Bの第1電力量が閾値Y以上に増加していないと判定した場合、設備C、Dの電源をオフに維持し続ける。これに対し、電源制御部22は、設備Bの第1電力量が閾値Y以上に増加したと判定した場合、設備C、Dの電源をオフからオンに切り替えるようになっている。
【0056】
つぎに、本変形例において設備A〜Dの電源が
オフから
オンに切り替わるタイミングを
図6に基づいて説明する。
図6は、本変形例の設備A〜Dの各々にて使用される電力(消費電力)を示したグラフである。
図6の各グラフは、横軸が時間を示し、縦軸が各設備の消費電力(瞬時値)を示している。
【0057】
現時点が
図6に示すt
15である時において、稼動開始を指示する開始コマンドが利用者から入力され、電源制御部22は、設備Bの電源をオフからオンにする。その後、電源制御部22は、現時点がt
16になった時、時点t
15からt
16までの区間の設備Bの消費電力の積算値(第1電力量)が閾値X以上になったものと判定し、設備Aの電源をオンにしている。さらに、現時点がt
16からt
17へ移行すると、電源制御部22は、時点t
15からt
17までの区間の設備Bの消費電力の積算値(第1電力量)が閾値Y以上になったものと判定し、設備Cおよび設備Dの電源をオンにしている。
【0058】
以上にて説明した変形例によれば、設備B(第1設備)の第1電力量に応じて、設備Bよりもワークの搬送方向の上流側に位置する設備A(第2設備)の電源をオフからオンに切り替えることができる。これにより、設備Bの空運転の期間を必要なだけ確保し、不必要な空運転の期間を削除できるので、無駄な消費電力を抑制できるという効果を奏する。
【0059】
なお、本実施例において、閾値X(第1閾値)は、設備Aの電源をオンにできる状態にまで設備Bの空運転が進捗しているものと推定される値であり、閾値Y(第1閾値)は、設備C、Dの電源をオンにできる状態にまで設備Bの空運転或いは工程が進捗しているものと推定される値である。いずれの閾値も、各設備のスペック、ライン10の設計内容およびワークの種類等から経験的に定められる値である。また、閾値X,Yは試験運転を行うことで定められても構わない。
【0060】
[実施の形態2]
実施の形態1では、電源をオフからオンに制御する形態について説明したが、本実施形態では、電源をオンからオフに制御する形態について説明する。本実施形態では、設備A〜Dのうちのいずれかの設備にトラブルが発生して当該設備が正常に稼動しなくなった場合、他の設備の電源をオンからオフにするものである。
【0061】
以下にて説明する実施形態は、監視部21および電源制御部22の処理内容が実施の形態1と異なるだけで、他の点については実施の形態1と同様である。したがって、以下では、監視部21および電源制御部22の処理内容を主に説明し、実施の形態1と同一の内容についての説明は省略する。
【0062】
監視部21は、電力計11〜14にアクセスして、設備A〜設備Dの各々の第2電力量を監視するブロックである。なお、第2電力量とは、現時点と現時点から一定時間(例えば15秒)だけ遡った時点との間にて使用された電力の積算値である。つまり、設備Aの第2電力量とは、現時点と現時点から一定時間遡った時点との間にて設備Aに使用された電力の積算値であり、設備Bの第2電力量とは、現時点と現時点から一定時間遡った時点との間にて設備Bに使用された電力の積算値であり、設備Cの第2電力量とは、現時点と現時点から一定時間遡った時点との間にて設備Cに使用された電力の積算値であり、設備Dの第2電力量とは、現時点と現時点から一定時間遡った時点との間にて設備Dに使用された電力の積算値である。
【0063】
なお、監視部21は、現時点の電力計11の計測値と、現時点から前記一定時間前の時点の電力計11の計測値との差分の絶対値を求め、この絶対値を、設備Aの第2電力量として監視している。また、設備B〜設備Dの第2電力量の監視手法についても設備Aの場合と同様である(但し、設備Bの場合、電力計12の計測値を用いて前記差分を求め、設備Cの場合、電力計13の計測値を用いて前記差分を求め、設備Dの場合、電力計14の計測値を用いて前記差分を求めている点で、設備Aの場合と異なる)。
【0064】
電源制御部22は、監視部21にて監視されている第2電力量に基づいて、設備A〜設備Dの各々の電源をオンからオフに切り替える制御を行うブロックである。以下では、電源制御部22による処理について説明する。
【0065】
電源制御部22は、製造ライン10の稼動中(設備A〜設備Dの電源がオンであって設備A〜設備Dが正常に稼動している状態)、監視部21の監視結果を参照して、設備A〜Dの各々の第2電力量について閾値処理を行う。具体的に、電源制御部22は、設備Aの第2電力量が閾値aより高い値から閾値a以下の値に減少したか否かの判定を行い続け、設備Bの第2電力量が閾値bより高い値から閾値b以下の値に減少したか否かの判定を行い続け、設備Cの第2電力量が閾値cより高い値から閾値c以下の値に減少したか否かの判定を行い続け、設備Dの第2電力量が閾値dより高い値から閾値d以下の値に減少したか否かの判定を行い続ける。
【0066】
ここで、閾値a〜d(第2閾値)は、各々、設備A〜Dが完全停止してしまったものと推定できる値である。いずれの閾値も、各設備のスペック、ライン10の設計内容およびワークの種類等から経験的に定められる値である。また、閾値a〜dは試験運転を行うことで定められても構わない。
【0067】
そして、電源制御部22は、設備A〜設備Dのうちのいずれかの設備(第1設備)の第2電力量が閾値以下の値に減少したことを検出すると、第2電力量が閾値以下になった設備以外の各設備(第2設備)の電源をオンからオフに切り替える制御を行う。例えば、電源制御部22は、設備Aの第2電力量が閾値aより高い値から閾値a以下に減少したことを検出すると、電源をオンからオフに切り替えるための制御信号を設備B〜Dの各々に送信し、これにより設備B〜設備Dの電源はオンからオフに切り替わる。
【0068】
つぎに、
図4を用いて電源をオンからオフに切り替えるタイミングを説明する。
図4は、実施の形態2の設備A〜Dの各々にて使用される電力(消費電力)を示したグラフである。
図4の各グラフは、横軸が時間を示し、縦軸が各設備の消費電力(瞬時値)を示している。
【0069】
図4に示す時点t
5において、設備A〜設備Dの各々は、正常に稼動しており、搬送されてくるワークに対して処理(工程)を施している。電源制御部22は、製造ライン10に属する設備A〜設備Dが正常に稼動している間、設備A〜設備Dの各々の第2電力量に対して閾値処理を行い続ける。つまり、電源制御部22は、設備Aの第2電力量が閾値aより高い値から閾値a以下の値に減少したか否かの判定を行い続ける。また、電源制御部22は、設備B〜Dの各々についても同様に、各々の第2電力量が各々に対応する閾値よりも高い値から閾値以下の値に減少したか否かの判定を行い続ける。
【0070】
例えば、現時点が
図4に示すt
6に移行しており、t
6から前記一定時間遡った時点がt
5である場合、t
6からt
5までの区間の消費電力の積算値が第2電力量に相当する。したがって、現時点がt
6の時、電源制御部22は、設備Aについて時点t
6からt
5までの区間の消費電力の積算値(第2電力量)が閾値a以下であるか否かを判定し、設備B〜Dの各々についても同様に、時点t
6からt
5までの区間の消費電力の積算値(第2電力量)が各々に対応する閾値以下であるか否かを判定する。
【0071】
なお、
図4に示す各グラフにおいて、時点t
6からt
5までの区間の積分値が、時点t
6からt
5までの区間の消費電力の積算値に相当する。
【0072】
また、
図4の例では、時点t
6から時点t
5までの区間において、各設備A〜Dの消費電力の積算値(第2電力量)は各々に対応する閾値よりも高くなっているものとする。それゆえ、電源制御部22は、現時点がt
6の場合、設備A〜設備Dの各々の電源をオンに維持している。
【0073】
そして、
図4に示す時点t
8において、設備Aにてトラブルが発生したとする。さらに、時点t
8の後の時点t
9に到達するまでの間において、設備Aの第2電力量(現時点と現時点から一定時間遡った時点との間の消費電力の積算値)は閾値aより高いものの、現時点がt
9になった時、前記の停止に起因して設備Aの第2電力量が閾値a以下になったものとする。なお、現時点がt
9の時の設備Aの第2電力量は、現時点t
9と、現時点t
9から一定時間遡った時点t
7との間の設備Aの消費電力の積算値である。
【0074】
電源制御部22は、現時点がt
9に到達するまでの間、設備Aの第2電力量が閾値a以下ではないと判定するため、設備B〜設備Dの電源の切り替えを行わない。しかし、現時点がt
9になると、電源制御部22は、設備Aの第2電力量が閾値a以下であると判定するため、設備B〜設備Dの各々の電源をオンからオフに切り替えるようになっている。これにより、
図4に示すように、設備B〜設備Dは、時点t
9において一斉に稼動を停止し、時点t
9以降において消費する電力がゼロになる。
【0075】
以上示したように、本実施形態の制御装置20は、設備Aにおける第2電力量が閾値aより高い値から閾値a以下の値に減少した場合に設備B〜設備Dの各々の電源をオンからオフに切り替える制御を行っている。
ここで、設備が正常に稼動し続けている場合、当該設備の第2電力量(現時点と、現時点から一定時間遡った時点との間の電力の積算値)は、ほぼ一定値で推移するものの、設備にトラブルが生じた場合、前記第2電力量は減少する。そして、前記第2電力量が、ある値(閾値a〜d)以下になるまで減少した場合、当該設備は前記トラブルによって完全停止してしまったものと判断できる。
【0076】
それゆえ、設備Aにおける第2電力量が閾値aより高い値から閾値a以下の値に減少した場合に設備B〜設備Dの各々の電源をオンからオフに切り替える制御を行っている本実施形態では、設備Aがトラブルによって停止したものと認定できる状況になると、直ちに設備B〜設備Dの電源をオフにしていることになる。
【0077】
よって、トラブルによる設備Aの停止後、直ちに設備B〜設備Dの電源をオフにできるので、無駄な電力消費を抑制できるという効果を奏する。この効果について以下詳細に説明する。
急なトラブルによって設備Aが停止した場合、設備Aからワークが出力されなくなるため、設備Aよりもワーク搬送方向の下流側に位置する設備B〜Dは、そのまま電源オン状態を維持した場合、不必要な待機状態(ワークに対する処理を実行せずに電力を消費している状態)を継続することになる。したがって、トラブルによって設備Aが停止した場合、直ちに設備B〜設備Dの電源をオフにしなければ、不必要な待機状態による無駄な電力消費が生じてしまうことになる。この点、本実施形態の構成によれば、設備Aがトラブルによって停止したものと認定できる状況になると、直ちに設備B〜設備Dの電源をオフにすることになるため、不必要な待機状態による無駄な電力消費を抑制できるのである。
【0078】
また、
図4に示す例では、最も上流側に位置する設備(設備A)にトラブルが生じているので、トラブルの生じた設備の第2電力量に応じて、トラブルの生じた設備よりも下流側にある設備の電源がオフにされているが、ある設備の下流側にある設備にトラブルが生じた場合、トラブルの生じた設備の第2電力量に応じて、トラブルの生じた設備よりも上流側にある設備の電源をオフにすることになる。
【0079】
例えば、
図5に示すように、時点t
10において、設備A,C,Dが正常に稼動している一方で、設備Bにトラブルが生じたものとする。
図5に示す例においては、現時点がt
11になるまでの間において設備Bの第2電力量が閾値bより高いものの、現時点がt
11になると、設備Bの第2電力量が閾値b以下に減少するものとする。それゆえ、電源制御部22は、現時点が
t11に到達するまでの間、設備Bの第2電力量が閾値b以下ではないと判定するため、設備A,C,Dの電源の切り替えを行わない。しかし、現時点がt
11になると、電源制御部22は、設備Bの第2電力量が閾値b以下であると判定するため、設備Bよりもワークの搬送方向の上流側に位置する設備Aの電源をオンからオフに切り替え、且つ設備Bよりもワークの搬送方向の下流側に位置する設備Cおよび設備Dの電源をオンからオフに切り替える。
【0080】
これにより、ある設備がトラブルによって停止した場合、トラブルによって停止した設備よりもワーク搬送方向の設備の上流側に位置する設備の電源を直ぐにオフにできるため、無駄な電力消費を抑制できるという効果を奏する。この効果について以下詳細に説明する。
急なトラブルによって設備Bが停止した場合、設備Bよりもワークの搬送方向の上流側に位置する設備Aが処理を継続しても、設備Bは設備Aから出力されるワークを処理できない。それゆえ、設備Aの処理を継続させても無駄になり、無駄な電力消費を招来することになる。これに対し、本実施形態の構成によれば、設備Bがトラブルによって停止したものと認定できる状況になると、設備Bよりも上流側に位置する設備Aの電源を直ぐにオフにしているため、無駄な電力消費を抑制できるのである。
【0081】
なお、以上では、現時点と現時点から一定時間(第4時間)だけ遡った時点との間にて使用された電力の積算値を第2電力量とする形態であったが、このような形態に限定されるものではない。例えば、現時点から一定時間a(第5時間)だけ遡った時点と、現時点から一定時間aよりも短い一定時間b(第6時間)だけ遡った時点との間において使用された電力の積算値を第2電力量として、ある設備の第2電力量が閾値より高い値から閾値以下の値になった時に他の設備の電源をオンからオフに切り替えるようになっていてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、ある設備にトラブルが生じた場合に、当該設備の第2電力量が閾値以下になるケースを想定して説明した。これに対し、例えば、何らかの理由で、設備A〜Dのうちのいずれかの設備の電源を作業員が手動でオフにし、当該設備の第2電力量が閾値以下になったケースにおいても、他の設備の電源が制御装置20によってオフにされるようになっていてもよい。
【0083】
また、本実施形態の閾値処理は、設備A〜設備Dの各々について、第2電力量(現時点と現時点から一定時間遡った時点との間の消費電力の積算値)が閾値以下の値に減少したか否かを判定する形態であるが、当該形態に限定されるものではない。例えば、以下に示すような閾値処理であってもよい。
まず、ライン10を試運転することによって、設備A〜D毎に、第2電力量の算出対象となる期間(現時点と現時点から一定時間遡った時点との間)と同一長さの期間に正常に稼動した場合の電力量の積算値を正常値として予め算出しておく。つぎに、各設備A〜Dの正常値を制御装置20に備えられる記憶装置(不図示)に保存しておく。例えば、
図4に示すt
5からt
6の間の設備Aの消費電力の積算値が設備Aの正常値になり得る。
そして、ライン10の通常稼動時において、電源制御部22は、設備A〜設備Dの各々について、前記正常値から第2電力量を差し引いた差分値を求め、この差分値が閾値より少ない値から閾値以上の値に増加したか否かを判定し続ける。さらに、電源制御部22は、設備A〜設備Dのうちのいずれかの設備の差分値が閾値以上の値に増加したことを検出すると、前記差分値が閾値以上になった設備以外の各設備の電源をオンからオフに切り替える制御を行う。このような処理形態によれば、第2電力量が正常値よりも極めて低い値にまで減少した設備があると、この設備以外の各設備の電源をオフにすることになる。ここで、ある設備の第2電力量が正常値よりも極めて低い値にまで減少するという事は、当該設備がトラブル等によって停止したものと考えることができる。それゆえ、以上の処理形態によっても、ある設備がトラブルによって停止したものと認定できる状況になると、直ちに他の設備の電源をオフにでき、無駄な電力消費を抑制できるのである。
【0084】
[実施の形態3]
また、オペレータまたはシステム設計者に予め設定されている期間(以下「設定期間」と称す)の各設備の電力量を第3電力量として求め、各設備の第3電力量の合計値を表示装置に表示する形態になっていてもよい。以下では、この形態について説明する。
【0085】
制御装置20は、
図2に示すように、監視部21および電源制御部22の他、演算部23および表示制御部24を備えている。
【0086】
本実施形態の監視部21は、電力計11〜14の計測結果を参照して、設備A〜設備Dの各々について、前記設定期間にて使用された電力の積算値である第3電力量を求めるブロックである。なお、設定期間とは、上述通り、オペレータまたはシステム設計者によって予め設定されている期間であり、ここでは製造ライン10が工場に設置された時から現時点までの通算期間であるものとする。
【0087】
演算部23は、設備Aの第3電力量と、設備Bの第3電力量と、設備Cの第3電力量と、設備Dの第3電力量との合計値を求めるブロックである。表示制御部24は、演算部23にて求められた前記合計値を表示装置30に表示させるブロックである。
【0088】
以上の構成によれば、オペレータ(作業員)はライン全体で消費される電力量の管理が容易であるというメリットを有する。
【0089】
なお、以上の構成において、設定期間は前記通算期間に限られるものではない。例えば、製造ライン10の稼動開始時から現時点までの期間を設定期間としてもよいし、現時点の属する日を前記設定期間にしてもよいし、現時点の属する年を前記設定期間としてもよい。
【0090】
また、以上にて示した各実施形態において、制御装置20と電力計との間の通信手段、および、制御装置20と設備A〜Dの各々との間の通信手段は、周知の有線方式であってもよいし周知の無線方式であってもよい。但し、無線方式の場合、システム設置時に煩雑な配線作業を実施する必要がない。
【0091】
また、制御装置20は、演算部23にて求められる合計値を、作業員に所持させている携帯端末装置に送信し、携帯端末装置の表示装置が前記合計値を表示するような形態になっていてもよい。
【0092】
なお、以上の各実施形態では、製造ラインを例にして説明したが、本発明の適用範囲は製造ラインに限られるものではなく、検査ラインや、配送センタにおける荷物の仕分ライン等にも適用可能である。
【0093】
また、以上にて説明した実施の形態1〜3の構成によれば、下記の(1)〜(9)に示すメリットを有している。
(1)製造ライン10を構成する各設備の稼動状況に応じて、各設備の電源のオンとオフとの切り替えを好適なタイミングで細かく自動で操作できるので、待機状態あるいは空運転による電力消費を最小限に抑えることができる。これに対し、例えば、電力量を表示装置に表示し、且つ、表示されている電力量に応じて作業員が多数の設備の電源を切り替えるような形態では、電源のオンとオフとの切り替えを好適なタイミングで細かく操作することが不可能である。また、非熟練者においては、電力量の変化から、電源の切り替えの適切なタイミングを見極めることが困難であり、作業員が各設備の電源を切り替えるような形態では、待機状態あるいは空運転による電力消費を最小限に抑えることが困難である。
(2)電力に基づいて動作する設備は、全て、同様な形態の電源を備えている。したがって、実施の形態1〜3の構成は多種多様なラインに適用可能である。
(3)ワークの位置を検出するためのセンサの出力に基づいて電源制御を行う従来構成によれば、各設備に対するワークの搬入・搬出を詳細に監視する必要があるので、最適センサの選定、最適センサ位置の選定を装置毎にシビアに行う必要があり、設計作業が煩雑になる。これに対し、実施の形態1〜3の構成では、前記センサの出力に基づく電源制御を行っていないので、センサの選定やセンサ設置位置の選定を従来構成ほどシビアに行う必要がなく、従来構成よりも設計作業が容易である。
(4)前記従来構成では、同一ラインで多種のワークを処理する場合、ワークの種類の変更に応じてセンサを交換しなければいけない場合がある。これに対し、実施の形態1〜3の構成によれば、同一ラインで多種のワークを処理する場合、ワークの種類が変わっても、閾値を変更するだけでよく、電力計までを交換する必要はない。
(5)前記従来構成によれば、待機状態の期間や空運転期間が必要以上に確保されるので、ラインの微調整を頻繁に実施するためにラインの稼動/非稼動を細かく切り替えるような場合、無駄な消費電力が増大する。これに対し、実施形態1〜3によれば、待機状態の期間や空運転期間を必要最低限に近づけることができるため、ラインの微調整を頻繁に実施するような場合、従来構成より消費電力を削減できる。
(6)実施の形態1〜3の構成によれば、ワークの位置を検出するためのセンサの出力を電源制御に用いないため、前記従来構成と比べて、前記センサの設置数を削減でき、各センサを配線する作業も軽減されるため、コストの低下が可能となる。
(7)実施の形態3の構成によれば、電力計11〜14の測定値を、製造ライン10の電源制御にだけではなく、電力消費の管理用データ(表示装置30に表示される情報)の作成にも用いることができる。
(8)実施の形態1の変形例の構成では、下流側の設備の空運転の進捗状況に応じて上流側の設備の電源をオンにするような制御が可能である。これに対し、従来構成では、ワークの検出のみでは設備の空運転の進捗状況を把握できず、下流側の設備の空運転の進捗状況に応じて上流側の設備の電源をオンにするような制御は困難である。
(9)また、従来構成では、設備αと設備αの下流側の設備βとを有する場合、設備αと設備βとの間にセンサを設置している。そして、設備βにトラブルが生じた場合にセンサにて検出されるワークの滞留数が一定値を越えることになり、前記滞留数が一定値を超えると設備αの電源をオフにする制御が行われている。しかし、このような手法では、センサを余分に設置する必要があり、センサの種類、取り付け位置の調整、滞留判定の条件設定等が煩雑で、ライン調整に長時間を要する問題がある。これに対し、ある設備の第2電力量に基づいて他の設備の電源をオフにする実施の形態2の構成によれば、電源の制御に前記センサの出力を用いていないので、前記した問題を有しない。
【0094】
また、以上の実施形態1〜3の製造ライン10では制御装置20は一つのみであるが、このような構成に限定されない。例えば、制御装置20a〜20dを製造ライン10に設置し、制御装置20aは、設備Aの電力量に基づいて他の設備の電源を制御し、制御装置20bは、設備Bの電力量に基づいて他の設備の電源を制御し、制御装置20cは、設備Cの電力量に基づいて他の設備の電源を制御し、制御装置20dは、設備Dの電力量に基づいて他の設備の電源を制御するようになっていてもよい。この場合、制御装置20aは、電力計11の計測値に基づいて設備Aの電力量を監視し、制御装置20bは、電力計12の計測値に基づいて設備Bの電力量を監視し、制御装置20cは、電力計13の計測値に基づいて設備Cの電力量を監視し、制御装置20dは、電力計14の計測値に基づいて設備Dの電力量を監視するようになっている。また、この場合、制御装置20aは設備Aに設置される制御用集積回路であり、制御装置20bは設備Bに設置される制御用集積回路であり、制御装置20cは設備Cに設置される制御用集積回路であり、制御装置20dは設備Dに設置される制御用集積回路であってもよい。
【0095】
また、以上にて示した各実施の形態において閾値処理が行われているが、判定対象値が閾値以上か否かを判定する閾値処理は、「判定対象値≧閾値」であるか否かの判定形態であってもよいし、「判定対象値>閾値」であるか否かの判定形態であってもよい。また、同様に、判定対象値が閾値以下か否かを判定する閾値処理の場合、当該閾値処理は、「判定対象値≦閾値」であるか否かの判定形態であってもよいし、「判定対象値<閾値」であるか否かの判定形態であってもよい。
例えば、実施の形態1では、設備Aの第1電力量が閾値A以上の値であるか否かを判定する閾値処理が行われていることになるが、この閾値処理は、「第1電力量≧閾値A」であるか否かの判定形態であってもよいし、「第1電力量>閾値A」であるか否かの判定形態であってもよい。また、例えば、実施の形態2では、設備Aの第2電力量が閾値a以下の値であるか否かを判定する閾値処理が行われていることになるが、この閾値処理は、「第2電力量≦閾値」であるか否かの判定形態であってもよいし、「第2電力量<閾値」であるか否かの判定形態であってもよい。
【0096】
また、本明細書において、ラインとは、ワークに対して加工・組立・検査等の処理を行う系統・システムを意味し、1直線に沿って複数の設備が並ぶようなラインに限定されるものではない。例えば、建物の1階に設置される設備と前記建物の2階に設置される設備とによって工程全体が実現されるようなラインでもよいし、複数の設備が複数の建物に分散されており全設備によって工程全体が実現されるようなラインでもよい。
【0097】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0098】
なお、上記した各実施形態における制御装置20の各部は、CPU(Central Processing Unit)などの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボードなどの入力手段、ディスプレイなどの出力手段、あるいは、インターフェース回路などの通信手段を制御することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、本実施形態の生産ライン管理装置の各種機能および各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実現することができる。
【0099】
この記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理を行うために図示しないメモリ、例えばROMのようなものがプログラムメディアであっても良いし、また、図示していないが外部記憶装置としてプログラム読み取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することにより読み取り可能なプログラムメディアであっても良い。
【0100】
また、何れの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0101】
また、上記プログラムメディアとしては、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD/MO/MD/DVD等のディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する記録媒体等がある。
【0102】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
【0103】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。