特許第5803394号(P5803394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許5803394-加飾成形部材 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5803394
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】加飾成形部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20151015BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   B32B27/00 E
   B32B7/02 103
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-170174(P2011-170174)
(22)【出願日】2011年8月3日
(65)【公開番号】特開2013-35125(P2013-35125A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】桂 大詞
(72)【発明者】
【氏名】山根 貴和
(72)【発明者】
【氏名】中野 さくら
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健太
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−314737(JP,A)
【文献】 特開2003−247320(JP,A)
【文献】 特開2011−131597(JP,A)
【文献】 特開2009−061626(JP,A)
【文献】 特開2004−216684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明の樹脂層からなる表面層と、表面層の表面側及び/又は裏面側に形成された複数の微細孔を有する金属光沢層とを備えるフイルム構造体が、表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)が0〜80である基材の表面側に形成されている加飾成形部材。
【請求項2】
表面層の表面側の表面粗さが、Ra2μm以下、かつRmax4μm以下又はSm50μm以上であり、
金属光沢層のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)が10000以上であり、平面視での微細孔の面積が10−3〜10μmであり、平面視での単位面積当たりの微細孔の面積率が1〜80%である請求項1に記載の加飾成形部材。
【請求項3】
金属光沢層の微細孔の面積率が1〜60%である請求項2に記載の加飾成形部材。
【請求項4】
表面層の表面側の表面粗さが、Ra1μm以下、かつRmax2μm以下又はSm100μm以上である請求項2又は3に記載の加飾成形部材。
【請求項5】
金属光沢層のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)が20000以上である請求項2から4のいずれか1項に記載の加飾成形部材。
【請求項6】
基材表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)が0〜50である請求項1から5のいずれか1項に記載の加飾成形部材。
【請求項7】
基材は樹脂成形部材である請求項1から6のいずれか1項に記載の加飾成形部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装部品等に使用され得る加飾成形部材の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えばドアハンドル等の自動車内装部品に高級感を演出するための金属調意匠が要求されることがある。そのため、光沢に優れるクロムめっきや、いぶし銀調のサテンめっき等が知られている。しかし、クロムめっきは鏡面性が高すぎて自動車室内の雰囲気に調和しない場合がある。一方、サテンめっきは落ち着いた質感であるが工程が複雑である。
【0003】
そこで、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を容易に実現する技術が求められている。そのための1つの方策として、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材が提案される。そのような加飾成形部材は、例えば転写フイルムのベース材に各機能を有する層を印刷や塗装等し、あるいは、表面層となるクリアフイルムに各機能を有する層を印刷や塗装等し、そして、得られたフイルム構造体を基材表面に転写や接着等することによって容易に得ることができる。得られた加飾成形部材は、基材の表面側にフイルム構造体が形成され、基材が金属研磨面調に加飾されたものである。もしくは、基材表面に直接フイルム構造体の各機能を有する層を印刷や塗装等してもよい。
【0004】
特許文献1には、高屈折率薄膜層、低屈折率薄膜層及び/又は純金属薄膜層からなる光吸収層を備える光学薄膜層を基材上に設けることによって、反射明度及び反射彩度が十分に大きい金属光沢を有する光吸収層を備える光学薄膜積層体を得ることが開示されている。しかし、この技術は、反射明度が大きい金属光沢を基材に付加する技術であって、光沢が抑制された金属研磨面調意匠を基材に付加するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−83183号公報(要約、図1図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材を提供し、もって、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を容易に実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一局面は、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層と、表面層の表面側及び/又は裏面側に形成された複数の微細孔を有する金属光沢層とを備えるフイルム構造体が、表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)が0〜80である基材の表面側に形成されている加飾成形部材である。
ここで、JIS−Z−8729で規定される基材表面のCIE1976明度(L)は、JIS−Z−8729に従い、JIS−Z−8722に規定される幾何条件a(試料面の法線方向に対する照明光軸角度:−45±2°、受光反射光軸角度:0±2°)で測定したものである。
【0016】
この構成によれば、表面層側から加飾成形部材に入射した光は、表面層の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、基材の表面によって一部が吸光され、表面層の表面側及び/又は裏面側の金属光沢層(微細孔以外の部分)によって一部が正反射(鏡面反射)する。また、金属光沢層の微細孔の周縁部によっても光の一部が拡散反射する。このような光の拡散反射、吸光、正反射があいまって、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材が得られる。
【0017】
前記加飾成形部材においては、表面層の表面側の表面粗さが、Ra2μm以下、かつRmax4μm以下又はSm50μm以上であり、金属光沢層のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)が10000以上であり、平面視での微細孔の面積が10−3〜10μmであり、平面視での単位面積当たりの微細孔の面積率が1〜80%であることが好ましい。
ここで、JIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における金属光沢層の刺激値(Y45°)は、試料面の法線方向に対する照明光軸角度を−45±2°とし、受光反射光軸角度を45±2°として、JIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における反射による物体色の三刺激値の定義に従ってY値を計算したものである。
【0018】
この構成によれば、表面層の表面側の表面粗さとして、Ra(算術平均粗さ)を2μm以下とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。Rmax(最大高さ)を4μm以下又はSm(凹凸の平均間隔)を50μm以上とすることによっても、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。金属光沢層のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)を10000以上とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢が確実に得られる。平面視での微細孔の面積を10−3μm以上とすることにより、微細孔が小さくなりすぎず、微細孔を通して露出する基材表面による吸光が確実に達成される。平面視での微細孔の面積を10μm以下とすることにより、微細孔が大きくなりすぎず、金属光沢層(微細孔以外の部分)による正反射が確実に行われる。また、平面視での単位面積当たりの微細孔の面積率を一定としたときに、微細孔の数が増えるから、微細孔の周縁長が長くなり、微細孔の周縁部による拡散反射が確実に行われる。平面視での単位面積当たりの微細孔の面積率を1%以上、つまり平面視での単位面積当たりの基材表面の面積率を1%以上とすることにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が確実に達成される。平面視での単位面積当たりの微細孔の面積率を80%以下、つまり平面視での単位面積当たりの基材表面の面積率を80%以下とすることにより、吸光が過剰になりすぎず、加飾成形部材の過度の明度及び/又は刺激値の低下が抑制される。
【0019】
前記加飾成形部材においては、金属光沢層の微細孔の面積率が1〜60%であることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、吸光が過剰になりすぎず、加飾成形部材の過度の明度及び/又は刺激値の低下がより一層抑制される。
【0021】
前記加飾成形部材においては、表面層の表面側の表面粗さが、Ra1μm以下、かつRmax2μm以下又はSm100μm以上であることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射がより一層確実に得られる。
【0023】
前記加飾成形部材においては、金属光沢層のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)が20000以上であることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢がより一層確実に得られる。
【0025】
前記加飾成形部材においては、基材表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)が0〜50であることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光がより一層確実に達成される。
【0027】
前記加飾成形部材においては、基材は樹脂成形部材であることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材の形状の自由度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材が提供されるから、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る加飾成形部材の層構成を示す縦断面図であって、(A)は複数の微細ドットからなる金属光沢層が表面層の表面側に形成されたもの、(B)は複数の微細ドットからなる金属光沢層が表面層の裏面側に形成されたもの、(C)は複数の微細ドットからなる金属光沢層が表面層の裏面側に形成され、かつ充填層が形成されたものである。
図2】本発明の他の一実施形態に係る加飾成形部材の層構成を示す縦断面図であって、(A)は複数の微細孔を有する金属光沢層が表面層の表面側に形成されたもの、(B)は複数の微細孔を有する金属光沢層が表面層の裏面側に形成されたもの、(C)は複数の微細孔を有する金属光沢層が表面層の裏面側に形成され、かつ充填層が形成されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者等は、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を、複数の層を積層した構成のフイルム構造体によって実現することを目標として検討を重ねた。その結果、金属研磨面調意匠の実現のためには、フイルム構造体に入射した光の拡散反射と、吸光と、正反射(鏡面反射)とが重要な要素であることに着目した。そして、拡散反射は、フイルム構造体の表面層の表面粗さによって再現が可能、吸光は、明度が相対的に低い基材の表面によって再現が可能、正反射は、刺激値が相対的に高い金属光沢層によって再現が可能であることを見出した。また、後述するように、金属光沢層をドットで構成した場合、又は、微細孔を有する構成とした場合に、拡散反射は、金属光沢層のドットの周縁部、又は、微細孔の周縁部によっても再現が可能であることを見出した。
【0032】
しかしながら、表面層を透明又は半透明としても、単に金属光沢層を基材表面の上に積層しただけでは、光の拡散反射と吸光と正反射とがあいまった外観を得ることは困難である。すなわち、金属光沢層を基材表面の上に配置すると、基材表面が金属光沢層の下に隠れて見え難くなるため、光の吸光が実現され難くなる。
【0033】
そこで、本発明者等は、金属光沢層を複数の微細ドットからなる構成とし、又は、金属光沢層を複数の微細孔を有する構成とし、前者においては、ドット間の間隙から基材表面が観察できるようにし、後者においては、微細孔を通して基材表面が観察できるようにした。本発明は、このような知見と創意工夫とに基いて完成されたものである。
【0034】
すなわち、図1(A)に示すように、本実施形態に係る加飾成形部材20は、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層1と、表面層1の表面側に形成された複数の微細ドットからなる金属光沢層2とを備えるフイルム構造体10が、表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)が0〜80である基材4の表面側に形成されたものである。
【0035】
また、図1(B)に示すように、本実施形態に係る別の加飾成形部材20は、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層1と、表面層1の裏面側に形成された複数の微細ドットからなる金属光沢層2とを備えるフイルム構造体10が、表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)が0〜80である基材4の表面側に形成されたものである。
【0036】
また、図1(C)に示すように、本実施形態に係るさらに別の加飾成形部材20は、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層1と、表面層1の裏面側に形成された複数の微細ドットからなる金属光沢層2と、金属光沢層2のドット間を埋めるように表面層1の裏面側に形成された透明又は半透明の充填層5とを備えるフイルム構造体10が、表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)が0〜80である基材4の表面側に形成されたものである。
【0037】
ここで、表面層1は拡散反射機能を有し、金属光沢層2は正反射機能及び拡散反射機能を有し、基材4表面は吸光機能を有する。
【0038】
これらの加飾成形部材20においては、金属光沢層2を複数の微細ドットからなる構成としたことにより、ドット間の間隙から基材4表面が観察される。そのため、この加飾成形部材20を拡散反射機能を有する表面層1側から見たときには、正反射機能を有する金属光沢層2が吸光機能を有する基材4表面の中に細かく点在している。
【0039】
このような構成により、表面層1側から加飾成形部材20に入射した光は、表面層1の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、基材4の表面によって一部が吸光され、表面層1の表面側又は裏面側の金属光沢層2のドットによって一部が正反射(鏡面反射)し、またドットの周縁部によって一部が拡散反射する。このような光の拡散反射、吸光、正反射があいまって、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材20が得られる。
【0040】
なお、図1(C)は、金属光沢層2のドットの裏面側にも充填層5が存在し、金属光沢層2のドット間の間隙に充填層5の一部が配置された構成であったが、これに限らず、金属光沢層2のドットの裏面側には充填層5が存在せず、金属光沢層2のドット間の間隙に充填層5の全部が配置された構成でもよい。
【0041】
本実施形態において、拡散反射機能とは、外部から入射角45度で入射された可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)を反射するとき、反射光強度の20%以上を正反射角±3度以内の方向以外の方向に反射する機能をいう。あるいは、外部から入射角90度で入射された可視光(波長:380〜780nm、広がり角:実質零度)を透過するとき、透過光強度の5%以上を正透過方向角±3度以内の方向以外の方向に変角する機能をいう。
【0042】
本実施形態において、吸光機能とは、外部から入射角90度で入射された可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)の強度の20%以上を吸収又は透過する機能をいう。好ましくは、入射された可視光を反射するとき、波長ごと(420〜670nm)の反射率の差が±10%以内である。
【0043】
本実施形態において、正反射機能とは、外部から入射角45度で入射された可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)を反射するとき、反射光強度の90%以上を正反射角±3度以内の方向に反射する機能をいう。
【0044】
本実施形態においては、表面層1の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)、金属光沢層2の刺激値(Y45°)、金属光沢層2のドットの面積、金属光沢層2のドットの面積率、基材4表面の明度(L)を調整することによって、加飾成形部材20の金属研磨面調意匠における光の拡散反射の程度、光の正反射の程度、光の吸収の程度をそれぞれ独立して所望の値に調整することができる。
【0045】
本実施形態においては、表面層1の表面側の表面粗さは、Ra2μm以下、かつRmax4μm以下又はSm50μm以上である。Ra(算術平均粗さ)を2μm以下とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。Rmax(最大高さ)を4μm以下又はSm(凹凸の平均間隔)を50μm以上とすることによっても、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。
【0046】
表面層1の表面側の表面粗さは、より好ましくは、Ra1μm以下、かつRmax2μm以下又はSm100μm以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射がより一層確実に得られる。
【0047】
本実施形態においては、金属光沢層2のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)は10000以上である。金属光沢層2の刺激値(Y45°)を10000以上とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢が確実に得られる。
【0048】
金属光沢層2の刺激値(Y45°)は、より好ましくは、20000以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢がより一層確実に得られる。
【0049】
本実施形態においては、平面視でのドットの面積は10−3〜10μmである。ドットの面積を10−3μm以上とすることにより、ドットが小さくなりすぎず、ドットによる正反射が確実に行われる。ドットの面積を10μm以下とすることにより、平面視での単位面積当たりのドットの面積率を一定としたときに、ドットの数が増えるから、ドットの周縁長が長くなり、ドットの周縁部による拡散反射が確実に行われる。また、ドットが大きくなりすぎず、フイルム構造体10の見栄えの低下が抑制される。
【0050】
本実施形態においては、平面視での単位面積当たりのドットの面積率は20〜99%である。ドットの面積率を20%以上とすることにより、平面視での単位面積当たりの基材4表面の面積率が80%以下となり、吸光が過剰になりすぎず、加飾成形部材20の過度の明度及び/又は刺激値の低下が抑制される。ドットの面積率を99%以下とすることにより、平面視での単位面積当たりの基材4表面の面積率が1%以上となり、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が確実に達成される。
【0051】
金属光沢層2のドットの面積率は、より好ましくは、40〜99%である。これにより、吸光が過剰になりすぎず、加飾成形部材20の過度の明度及び/又は刺激値の低下がより一層抑制される。
【0052】
本実施形態においては、基材4表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)は0〜80である。基材4表面の明度(L)を80以下とすることにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が確実に達成される。
【0053】
基材4表面の明度(L)は、より好ましくは、0〜50である。これにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光がより一層確実に達成される。
【0054】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
【0055】
すなわち、図2(A)に示すように、本実施形態に係る加飾成形部材20は、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層1と、表面層1の表面側に形成された複数の微細孔を有する金属光沢層2とを備えるフイルム構造体10が、表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)が0〜80である基材4の表面側に形成されたものである。
【0056】
また、図2(B)に示すように、本実施形態に係る別の加飾成形部材20は、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層1と、表面層1の裏面側に形成された複数の微細孔を有する金属光沢層2とを備えるフイルム構造体10が、表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)が0〜80である基材4の表面側に形成されたものである。
【0057】
また、図2(C)に示すように、本実施形態に係るさらに別の加飾成形部材20は、透明又は半透明の樹脂層からなる表面層1と、表面層1の裏面側に形成された複数の微細孔を有する金属光沢層2と、金属光沢層2の微細孔を埋めるように表面層1の裏面側に形成された透明又は半透明の充填層5とを備えるフイルム構造体10が、表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)が0〜80である基材4の表面側に形成されたものである。
【0058】
ここで、表面層1は拡散反射機能を有し、金属光沢層2は正反射機能及び拡散反射機能を有し、基材4表面は吸光機能を有する。
【0059】
また、金属光沢層2は、複数の微細孔を有するため、微細孔以外の部分は、例えばメッシュ状、網目状、あみだくじ状、クモの巣状等の形状を呈している。
【0060】
これらの加飾成形部材20においては、金属光沢層2を複数の微細孔を有する構成としたことにより、微細孔を通して基材4表面が観察される。そのため、この加飾成形部材20を拡散反射機能を有する表面層1側から見たときには、吸光機能を有する基材4表面が正反射機能を有する金属光沢層2の中に細かく点在している。
【0061】
このような構成により、表面層1側から加飾成形部材20に入射した光は、表面層1の表面側の表面粗さによって一部が拡散反射し、基材4の表面によって一部が吸光され、表面層1の表面側又は裏面側の金属光沢層2(微細孔以外の部分)によって一部が正反射(鏡面反射)し、また微細孔の周縁部によって一部が拡散反射する。このような光の拡散反射、吸光、正反射があいまって、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠が実現し、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材20が得られる。
【0062】
なお、図2(C)は、金属光沢層2の裏面側にも充填層5が存在し、金属光沢層2の微細孔に充填層5の一部が配置された構成であったが、これに限らず、金属光沢層2の裏面側には充填層5が存在せず、金属光沢層2の微細孔に充填層5の全部が配置された構成でもよい。
【0063】
本実施形態においては、表面層1の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)、金属光沢層2の刺激値(Y45°)、金属光沢層2の微細孔の面積、金属光沢層2の微細孔の面積率、基材4表面の明度(L)を調整することによって、加飾成形部材20の金属研磨面調意匠における光の拡散反射の程度、光の正反射の程度、光の吸収の程度をそれぞれ独立して所望の値に調整することができる。
【0064】
本実施形態においては、表面層1の表面側の表面粗さは、Ra2μm以下、かつRmax4μm以下又はSm50μm以上である。Ra(算術平均粗さ)を2μm以下とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。Rmax(最大高さ)を4μm以下又はSm(凹凸の平均間隔)を50μm以上とすることによっても、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射が確実に得られる。
【0065】
表面層1の表面側の表面粗さは、より好ましくは、Ra1μm以下、かつRmax2μm以下又はSm100μm以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な拡散反射がより一層確実に得られる。
【0066】
本実施形態においては、金属光沢層2のJIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における刺激値(Y45°)は10000以上である。金属光沢層2の刺激値(Y45°)を10000以上とすることにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢が確実に得られる。
【0067】
金属光沢層2の刺激値(Y45°)は、より好ましくは、20000以上である。これにより、金属研磨面調意匠を実現するために十分な正反射ないし金属光沢がより一層確実に得られる。
【0068】
本実施形態においては、平面視での微細孔の面積は10−3〜10μmである。微細孔の面積を10−3μm以上とすることにより、微細孔が小さくなりすぎず、微細孔を通して露出する基材4表面による吸光が確実に達成される。微細孔の面積を10μm以下とすることにより、微細孔が大きくなりすぎず、金属光沢層2(微細孔以外の部分)による正反射が確実に行われる。また、平面視での単位面積当たりの微細孔の面積率を一定としたときに、微細孔の数が増えるから、微細孔の周縁長が長くなり、微細孔の周縁部による拡散反射が確実に行われる。
【0069】
本実施形態においては、平面視での単位面積当たりの微細孔の面積率は1〜80%である。微細孔の面積率を1%以上とすることにより、平面視での単位面積当たりの基材4表面の面積率が1%以上となり、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が確実に達成される。微細孔の面積率を80%以下とすることにより、平面視での単位面積当たりの基材4表面の面積率が80%以下となり、吸光が過剰になりすぎず、加飾成形部材20の過度の明度及び/又は刺激値の低下が抑制される。
【0070】
金属光沢層2の微細孔の面積率は、より好ましくは、1〜60%である。これにより、吸光が過剰になりすぎず、加飾成形部材20の過度の明度及び/又は刺激値の低下がより一層抑制される。
【0071】
本実施形態においては、基材4表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度(L)は0〜80である。基材4表面の明度(L)を80以下とすることにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光が確実に達成される。
【0072】
基材4表面の明度(L)は、より好ましくは、0〜50である。これにより、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠を実現するために十分な吸光がより一層確実に達成される。
【0073】
以上の実施形態においては、表面層1、金属光沢層2及び充填層5の厚みは、特に限定されない。状況に応じて、例えば1μm〜1mmの範囲内の厚みとすることができる。
【0074】
表面層1は、透明又は半透明である限り、無色でも有色でもよい。表面層1の色を調整することによって、加飾成形部材20の金属研磨面調意匠における金属の種類(例えばアルミニウム等)を所望のものに調整することができる。
【0075】
金属光沢層2の材料は、特に限定されない。例えば樹脂や金属が好ましい。金属光沢層2の色を調整することによっても、加飾成形部材20の金属研磨面調意匠における金属の種類(例えばアルミニウム等)を所望のものに調整することができる。
【0076】
充填層5も、透明又は半透明である限り、無色でも有色でもよい。充填層5の色を調整することによっても、加飾成形部材20の金属研磨面調意匠における金属の種類(例えばアルミニウム等)を所望のものに調整することができる。
【0077】
本実施形態においては、フイルム構造体10は、例えば転写フイルムのベース材(図示せず)に各層1,2,5を印刷や塗装等することによって容易に得ることができる。あるいは、フイルム構造体10の表面層1となるクリアフイルムに各層2,5を印刷や塗装等することによっても容易に得ることができる。そして、得られたフイルム構造体10を表面のJIS−Z−8729で規定されるCIE1976明度が0〜80である基材4の表面に転写や接着等することによって容易に基材4を金属研磨面調に加飾することができる。もしくは、基材4の表面に直接フイルム構造体10の各層1,2,5を印刷や塗装等してもよい。
【0078】
このようにして、フイルム構造体10が基材4の表面側に形成されてなる加飾成形部材20が得られる。この加飾成形部材20は、光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材20である。加飾成形部材20は、例えばドアハンドル等の自動車内装部品、家電部品、パーソナルコンピュータ部品、携帯電話部品、事務用部品、スポーツ用具部品、計測機器部品、雑貨部品等に好適である。
【0079】
基材4は樹脂成形部材であることが好ましい。光学特性が金属研磨面に近く、外観が金属研磨面調意匠を呈する加飾成形部材20の形状の自由度を高くすることができるからである。
【0080】
なお、図1図2において、符号3は、充填層5を表面層1に押え付けるための裏打ち層及び/又はフイルム構造体10を基材4に接着するための接着層である。さらに、充填層5や金属光沢層2が裏打ち層(接着層)3によって侵食されあるいは腐食するのを防ぐための保護層(図示せず)を充填層5や金属光沢層2と裏打ち層(接着層)3との間に設けてもよい。この場合、裏打ち層(接着層)3や保護層は、基材4表面が金属光沢層2を介して良好な状態で観察できるように、透明又は半透明のものを用いる。
【0081】
また、本発明の作用効果を損なわない範囲で、フイルム構造体10の外表面、あるいは、加飾成形部材20の外表面に、透明又は半透明の、無色又は有色の、保護層を設けてもよい。この保護層は、例えば、表面層1の上に直接設けられる。この保護層は、フイルム構造体10あるいは加飾成形部材20の表面保護のために設けられる。また、この保護層は、表面層1の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)を調整するために設けられるものであってもよい。したがって、本発明でいう、表面層1の表面側の表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)には、この保護層で調整された表面粗さ(Ra、Rmax、Sm)が包含される。
【実施例】
【0082】
以下、実施例を通して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何等限定されるものではない。
【0083】
[加飾成形部材の作製]
(試験番号1〜10、12〜14)
図1(C)に示した構成の加飾成形部材20を表1に示す仕様により作製した。表面層1として、帝人化成社製のポリカーボネートシート「PC1151」(板厚0.5mm)を用い、この片面にスクリーン印刷にて金属光沢層2(厚み3μm)を形成した。金属光沢層2の形成には、帝国インキ製造社製のインキ「MIR−51000ミラーシルバー」を用いた。次に、金属光沢層2の上にスクリーン印刷にて充填層5(厚み2μm:金属光沢層2の上の厚みとして)を形成した。充填層5の形成には、セイコーアドバンス社製のUVインキを用いた。次に、充填層5の上にスクリーン印刷にて裏打ち層(接着層)3(厚み10μm)を形成した。裏打ち層(接着層)3の形成には、セイコーアドバンス社製のUVインキを用いた。得られたフイルム構造体10を裏打ち層(接着層)3を介して基材4の表面に接着した。基材4としては、無彩色のABS樹脂板を用いた。以上により、表面層1側から観察したときにアルミニウムの研磨面調の外観を呈する加飾成形部材20が得られた。
【0084】
(試験番号11)
金属光沢層2を全面ベタの枚葉形状としドット形状とはしなかった他は、試験番号1〜10、12〜14と同様にして加飾成形部材を作製した。
【0085】
(試験番号16、17)
金属光沢層2の形成に、日本ビー・ケミカル社製の高輝度シルバーインキを用いた他は、試験番号1〜10、12〜14と同様にして加飾成形部材20を作製した。
【0086】
(試験番号15)
金属光沢層2を全面ベタの枚葉形状としドット形状とはしなかった他は、試験番号16、17と同様にして加飾成形部材を作製した。
【0087】
[加飾成形部材の外観評価]
作製した加飾成形部材20の外観を光学的に評価した。すなわち、表面層1側から加飾成形部材20に入射角45度で可視光(波長:420〜670nm、広がり角:実質零度)を照射し、正反射角の刺激値Y、つまり正反射(鏡面反射)の刺激値(Y45°)と、正反射角−5度の刺激値Y、つまり拡散反射の刺激値(Y40°)とを村上色彩技術研究所製の変角分光光度計を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0088】
ここで、正反射の刺激値(Y45°)は、試料面の法線方向に対する照明光軸角度を−45±2°とし、受光反射光軸角度を45±2°として、JIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における反射による物体色の三刺激値の定義に従ってY値を計算したものである。また、拡散反射の刺激値(Y40°)は、試料面の法線方向に対する照明光軸角度を−45±2°とし、受光反射光軸角度を40±2°として、JIS−Z−8701で規定されるXYZ表色系における反射による物体色の三刺激値の定義に従ってY値を計算したものである。
【0089】
なお、本物のアルミニウムの研磨面及びサテンめっきの正反射の刺激値(Y45°)及び拡散反射の刺激値(Y40°)を同様にして測定したところ、アルミニウムの研磨面の正反射の刺激値(Y45°)は35000〜55000の範囲(例えば38306)、拡散反射の刺激値(Y40°)は900〜1300の範囲(例えば925)であり、サテンめっきの正反射の刺激値(Y45°)は10000〜75000の範囲(例えば31977)、拡散反射の刺激値(Y40°)は900〜2600の範囲(例えば1784)であった。
【0090】
表1から明らかなように、金属光沢層2をドット形状としなかった試験番号11、15に比べて、試験番号1〜10、12〜14、16、17の加飾成形部材20は、正反射の刺激値(Y45°)、拡散反射の刺激値(Y40°)、及び/又は、正反射刺激値(Y45°)に対する拡散反射刺激値(Y40°)の比(拡散反射刺激値(Y40°)/正反射刺激値(Y45°))が、本物のアルミニウムの研磨面のそれに近い値であった。
【0091】
なお、正反射刺激値(Y45°)に対する拡散反射刺激値(Y40°)の比(拡散反射刺激値(Y40°)/正反射刺激値(Y45°))は、0.007以上、あるいは0.008以上、あるいは0.01以上が好ましく、0.25以下、あるいは0.13以下、あるいは0.06以下が好ましい。この比が小さすぎると、鈍く光る質感に対して光沢が強すぎる傾向となる。逆に、この比が大きすぎると、鈍く光る質感が過剰となり光沢が弱すぎる傾向となる。
【0092】
また、正反射刺激値(Y45°)は、4000以上、あるいは7000以上、あるいは10000以上が好ましく、100000以下、あるいは75000以下、あるいは50000以下が好ましい。この値が小さすぎると、暗すぎ、光沢が弱すぎる傾向となる。逆に、この値が大きすぎると、明るすぎ、光沢が強すぎる傾向となる。
【0093】
特に、光沢が強すぎず、鈍く光る質感の金属研磨面調意匠の実現のためには、正反射刺激値(Y45°)に対する拡散反射刺激値(Y40°)の比(拡散反射刺激値(Y40°)/正反射刺激値(Y45°))が小さすぎないこと(例えば0.007未満でないこと)が重要因子の1つである。
【0094】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、自動車内装部品等に使用され得る加飾成形部材の技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0096】
1 表面層
2 金属光沢層
3 裏打ち層(接着層)
4 基材
5 充填層
10 フイルム構造体
20 加飾成形部材
図1
図2