(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記積層体が、光を吸収可能に層面に沿って配列された光吸収部と、前記光吸収部間に光を透過可能に配列された光透過部と、を有する光線制御層を含む、請求項1に記載の背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーンの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0013】
《A》第1の実施形態
先ず、
図1を参照して、本発明の背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーンの製造方法の第1の実施形態を説明する。
本実施形態では、入光面側から入射した映像光を出光面側に透過させ曲面形状を成すと共に出光面側にハードコート層を有
する背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーンを製造する。
そこで、本実施形態では、光拡散層、光線制御層、及びフレネルレンズ層等を有する平板状の積層体を、三次元曲面に成形したのち、ハードコート層を転写箔から転写により形成して、背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーンを製造する。
【0014】
以下、工程順に、積層体準備工程から説明する。
【0015】
《積層体準備工程》
図1(A)に示すように、積層体準備工程では、平板状の積層体10として、光線制御層30及びフレネルレンズシート40が積層されたものを準備する。
図1(A)では図示は省略してあるが、この積層体10には、光拡散層11等も積層されている。
【0016】
図2(A)の断面図は、本実施形態で準備する積層体10の層構成の詳細である。積層体10は、出光面側Loutから順に、光拡散層11、光学制御層30、補強層14、フレネルレンズシート40が、それぞれ間に接合層13を介して積層された構成である。フレネルレンズシート40が備えるフレネルレンズ層41が最外層であり、入光面側Linとなる。
【0017】
以下、本積層体10の各層について更に説明する。
【0018】
〔光拡散層11〕
光拡散層11は、入光面側Linから入射した映像光を、等方拡散して出光面側Loutから出射させて観察者に届ける層である。光拡散層11は公知の材料及び形成法によるものを用いることができる。例えば、光拡散層11は、透明樹脂からなる母材と、この母材中に分散された拡散成分とから構成される。光拡散層11は、母材と拡散成分間の屈折率差、或いは、拡散成分自体が有する反射性、によって、光を等方的に拡散する。
本発明においては、光拡散層11は、光を等方拡散する態様以外に、光を異方拡散する態様もあり得る。例えば、拡散成分の形状や母材中での分布を調整して異方拡散にする。
本発明においては、半硬化のハードコート層21Aが積層された後の状態で、積層体10は、少なくともこの光拡散層11と半硬化のハードコート層21A及び剥離性支持体22が積層されたものであることが好ましい。
【0019】
前記母材には、例えば、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。
【0020】
前記拡散成分には、樹脂ビーズ、気泡が挙げられ、なかでも樹脂ビーズが好適で、特に透明度が高いものが好ましい。こうした樹脂ビーズは、例えば、アクリルビーズ、メラミンビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ等があり、中でもアクリルビーズが好ましい。
【0021】
光拡散層11の形成は、例えば、上記母材中に上記拡散成分を分散させた樹脂組成物を、押し出し成形して形成することができる。
光拡散層11の厚みは、0.1〜2mm、より好ましくは0.2〜1.5mmである。厚みがこの範囲未満では、光拡散層11の光拡散能が不足することがあり、厚みがこの範囲を超えると、背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーンが表示する映像の解像性が低下しぼやけることがある。
【0022】
〔接合層13〕
接合層13は、その両側の層を接合するための層である。接合層13は接合層13の必要性に応じて設けられる。
本実施形態では、接合層13は、転写箔20を接着時の半硬化のハードコート層21Aと光拡散層11との接合、光拡散層11と光学制御層30との接合、光学制御層30と補強層14との接合、補強層14とフレネルレンズシート40との接合に、使われている。
接合層13は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を用いることができる。
接合層13は、粘着剤層、接着剤層等として用いられ得る。
【0023】
〔光学制御層30〕
光学制御層30は、入光面側Linから入射した映像光の光路を制御するとともに、迷光や外光を適切に吸収する機能を有する層である。光学制御層30によって、映像のコントラストを向上させることができる。光学制御層30は、光学制御の必要性に応じて設けられる。光学制御層30は、は公知の材料及び形成法によるものを用いることができる。
光学制御層30は、光を吸収可能に層面に沿って配列された多数の光吸収部31と、前記光吸収部31同士の間に光を透過可能に配列された光透過部32と、を有する。
図2の断面図では、光吸収部31は紙面に垂直な方向に延在し、紙面左右方向に一定の周期で配列されている。本実施形態での光吸収部31の断面形状は、同図のように二等辺三角形形状であり、その底面側を出光面側Loutに向けて形成される。また、本実施形態では、同図のように、光吸収部31同士の間のそれぞれの光透過部32は、二等辺三角形形状の光吸収部31の頂点側で相互に連結して形成される。
本発明において、光吸収部31の断面形状及び、光透過部32の断面形状は、これ以外にも、例えば、光線制御仕様に応じて、台形形状など各種形状をとり得る。
また、光吸収部31の屈折率Nbと、光透過部32の屈折率Npとの関係は、要求される光学制御仕様に応じて決定される。通常、屈折率Nbと光透過部32の屈折率Npとの屈折率差は、0より大きく0.06以下である。
【0024】
[光吸収部31]
光吸収部31は、光吸収粒子と、光吸収粒子を分散させたバインダーから構成されている。光吸収粒子が迷光や外光を吸収するように作用する。光吸収部31は、光吸収粒子をバインダー中に分散させた光吸収部形成組成物によって形成することができる。
【0025】
光吸収粒子としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。
こうした光吸収粒子としては、具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましい。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましい。
こうした着色粒子は、通常、上記の光吸収部形成組成物中に3〜30質量%含有させる。着色粒子の平均粒子径は1.0〜20μmが好ましい。
【0026】
なお、本発明においては、光吸収部31は、光吸収作用を付与する為に、光吸収粒子の他、染料により光吸収部全体を光吸収性にしても良い。
【0027】
バインダーとしては、紫外線などの光によって硬化される樹脂が好ましく、例えば、アクリレート系などの電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、モノマー、プレポリマー、光重合開始剤などを含む組成物が好ましく用いられる。
【0028】
[光透過部32]
光透過部32は、前記した光吸収部31を構成する光吸収部形成組成物から、光吸収粒子を除いた成分のバインダーによって、構成することができる。用いるバインダーは光吸収部31と同じでよい。
【0029】
[光吸収部31及び光透過部32の形成方法]
光吸収部31を形成するは、いわゆるワイピング法によって、着色粒子を含有する光吸収部形成組成物を光透過部32の表面に形成された溝に充填しつつ、ドクターブレードを用いて余剰分の光吸収部形成組成物を掻き取って形成することができる。
光透過部32の溝は、電離放射線硬化性樹脂と成形型を用いたフォトポリマー法(2P法とも言う)によって形成することができる。この時、成形型として円筒形状の型を用い、電離放射線硬化性樹脂を型と基材層12とで挟んだ状態で電離放射線硬化性樹脂を硬化させることによって、基材層12上に連続的に光透過部32を形成することができる。
【0030】
〔基材層12〕
基材層12は、各種の層を形成するときに基材として利用された層である。本実施形態では、基材層12は、上記光学制御層30に対してと、後述するフレネルレンズ層41に対して使われている。
こうした基材層12は、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィン系樹脂等の透明樹脂を用いることができる。なかでも、ポリカーボネート系樹脂は、入手の容易性、コスト、密着性等の点で好ましい樹脂の一種である。ここで、ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネートを主ポリマーとする樹脂であり、劣化防止剤、可塑剤、軟化剤等の充填剤を含み得る他、アクリル系樹脂等との複合体でも良い。
【0031】
基材層12と隣接する層との密着性を強化する目的で、基材層12の表面は、プライマー層の形成などの公知の密着強化処理を施したものとしてもよい。
基材層12の厚みは、対象とする層に応じて設定され、例えば、25〜200μmである。
【0032】
〔補強層14〕
補強層14は、製造する背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100としての機械的強度が不足して、所定の曲面形状を維持できず映像に歪みがでる場合、或いは、製造工程中に積層体10が不本意に変形し取り扱いや品質に支障を来たす場合などにおいて、剛性を増してこれらを解消する為に設ける層である。
補強層14は、こうした剛性が得られる様に、材料及び厚みを設定する。
補強層14の材料としては、透明な樹脂、例えば、ポリカーボネート系樹脂、或いは、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)等のアクリル系樹脂を用いることができ、なかでも、耐熱性等の観点からは、ポリカーボネート系樹脂は好ましい樹脂の一種である。
補強層14の厚みは、例えば、3〜5mmとすることができる。厚みが厚過ぎると、映像光の透過率が低下したり、ゴースト(二重像)が発生したり、光学性能が低下することがある。
【0033】
〔フレネルレンズシート40〕
フレネルレンズシート40は、フレネルレンズ層41を基材層12上に形成したシートである。
【0034】
[基材層12]
基材層12は、フレネルレンズ層41を形成するための基材となる層である。基材層12については、既に述べたので説明は省略する。
【0035】
ただ、本発明においては、フレネルレンズ層41に対して基材層12は必須ではない。フレネルレンズ層41に隣接する基材層12が省略されフレネルレンズ層41のみを、背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100として備えた構成でもよい。例えば、
図2(B)に示す積層体10は、フレネルレンズ層41が補強層14に直接、隣接して積層された構成である。
図2(B)に示す積層体10の他の層部分は
図2(A)と同じである。こうした構成は、例えば、補強層14を、フレネルレンズ層41形成時の基材12の代わりに用いることによって形成される。
【0036】
[フレネルレンズ層41]
フレネルレンズ層41は、複数の単位レンズを備えることによってフレネルレンズを構成する層である。フレネルレンズ層41は、映像光源から発散光束として入光面側Linから入射した映像光を、背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100の観察者側である出光面側Loutに向けて進む平行光束に変換する。映像光をスクリーン面に略垂直な
光束に変換することにより、映像の明るさのムラが抑制される。
フレネルレンズ層41は、単位レンズが同心円状又は円弧状に配列するサーキュラーフレネルレンズでもよいし、直線状に伸びる単位レンズが平行に配列するリニアフレネルレンズでもよい。
【0037】
フレネルレンズ層41は公知の材料及び形成法によるものを用いることができる。
フレネルレンズ層41は、透明樹脂から構成される。透明樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等を用いることができる。
【0038】
フレネルレンズ層41の形成方法は特に限定されない。例えば、上述した光透過部32と同様にして基材層12上に単位レンズをフォトポリマー法(2P法)によって形成することによって、フレネルレンズ層41を形成することができる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂を用いてフォトポリマー法で形成すれば、アクリル系樹脂からなるフレネルレンズ層41が形成される。
【0039】
〔その他の層〕
本発明においては、積層体10は上記した層以外に、適宜、従来公知の背面透過型スクリーンにおける、その他の層を含むことができる。例えば、反射防止層、帯電防止層、着色層などである。
【0040】
《第1の曲面成形工程》
図1(B)に示すように、第1の曲面成形工程は、前記積層体準備工程で準備した平板状の積層体10を、成形して三次元曲面をなすように曲げる工程である。
本実施形態では、積層体10は、光拡散層11側(図面上方)が観察者側に向く出光面側Loutであり、この出光面側Loutが凸となる様に三次元曲面に成形する。
【0041】
三次元曲面とは、互いに傾斜した複数の軸をそれぞれ中心として、部分的または全体的に曲がっている面を意味する。一方、二次元曲面とは、単一の軸を中心に二次元的に曲がっている面を意味する。
本実施形態では、三次元曲面として球体の球面の一部の面の形状に成形する。ただ、本発明においては、三次元曲面とは、球面に限らず、楕円球、断面が放物線を成す曲面など、任意である。三次元曲面の曲面形状は、背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーンを適用する用途に応じたものとなる。
本発明における背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100は、曲率半径が200cm以下、好ましくは25〜150cmの曲面を有するものとすることができる。
【0042】
本発明においては、出光面側Loutを凹曲面となる様に曲面成形してもよい。出光面側Loutを、凸曲面とするか凹曲面とするかは、背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100が組み込まれる機器による。
【0043】
曲面成形は、積層体10が加熱された状態で、真空成形、圧空成形、真空圧空成形などの空気圧を利用する成形法によることができる。
成形型Mは、
図4(A)で示す型面が凸曲面(オス)のもの、
図4(B)で示す凹曲面(メス型)のものどちらでもよい。
ただ、本実施形態の様に、積層体10がフレネルレンズ層41を有する形態では、フレネルレンズ層41が曲面成形時に型面に接触してレンズが変形しない様に、フレネルレンズ層41側の入光面側Linとなる面は型面に接触させない形式で成形するのが好ましい。
したがって、本実施形態では、出光面側Loutを型面に接触させる形態で行う。よって、型面が凹曲面の型を用いる。
本発明においては、積層体10がフレネルレンズ層41を含まないときは、
図4(B)で示す凹曲面(メス型)の成形型M、あるいは、
図4(C)で示す、機械的圧力を利用して積層体10の両側面に型面を接触させて加圧するプレス成形を利用することもできる。
【0044】
積層体10の加熱温度は、積層体10を構成する層のうち、最もガラス転移温度Tgが高い層のガラス転移温度Tg以上、例えば、120℃以上180℃以下であることが好ましい。
【0045】
こうして第1の曲面成形工程によって、ハードコート層を転写箔20によって形成する前に、積層体10を三次元曲面をなすように成形して曲げておく。
【0046】
《転写箔接着工程》
図1(C)に示すように、転写箔接着工程は、前記第1の曲面成形工程の後、三次元曲面をなすように曲げられた積層体10の出光面側Loutに、ハードコート層が剥離性支持体22上に形成された転写箔20を接着する工程である。
【0047】
〔転写箔20〕
転写箔20は、
図3に示すように、ハードコート層として半硬化のハードコート層21Aと、この半硬化のハードコート層21Aが積層された剥離性支持体22とから少なくとも構成される。半硬化のハードコート層21Aを構成する主要な樹脂は電離放射線硬化性樹脂である。
転写箔接着工程におけるハードコート層を半硬化のハードコート層21Aとすることによって、三次元曲面に転写箔が追従して成形されるときに、ハードコート層21Aにクラックが発生するのが防止される。
【0048】
[半硬化のハードコート層21A、乃至はハードコート層21]
半硬化のハードコート層21Aは、その硬化を進行させた後にハードコート層21となって、
図2(C)に示す如く、背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100の出光面側Loutの表面層となり、表面の傷付きを防止する層である。
本発明において、「ハードコート」とは、JISK5600−5−4(1994)で規定される鉛筆硬度試験で「HB」以上の硬度を示すことを意味する。
半硬化のハードコート層21A乃至はハードコート層21の厚みは、用途、要求仕様に応じるが、例えば、5〜50μm程度とすることができる。
【0049】
半硬化のハードコート層21Aは、後工程の硬化進行工程によって樹脂の硬化が進行して、最終的に充分に硬化したハードコート層21となる。ハードコート層21は、背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100の映像表示面を構成する。このため、ハードコート層21には、他の物との接触による傷付きに対する耐擦傷性を備えさせる為に、なお且つより優れた耐擦傷性を備えさせる為に、透明な硬化性樹脂で構成される。前記硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂に比べてより優れる電離放射線硬化性樹脂を主要な樹脂に用いる。電離放射線硬化型樹脂は紫外線や電子線などの電離放射線で硬化する樹脂であり、光硬化性樹脂とも呼ばれている。
【0050】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、各種用い得るが、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレートなどのアクリレート系プレポリマー、多官能性アクリレート系モノマー、ビニル系モノマー等の重合性化合物の一種以上からなる樹脂組成物を用いることができる。
この樹脂組成物は、これらの重合性化合物に、更に紫外線で硬化させる場合は光重合開始剤を含む。また、この樹脂組成物は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂、その他安定剤などの各種公知の添加剤を含むことができる。
【0051】
電離放射線硬化性樹脂の半硬化は、電離放射線硬化性樹脂を硬化させるために照射する電離放射線の照射線量を完全硬化しない量に抑えて、硬化反応を半硬化状態に留めると良い。半硬化とは、硬化が半分の50%進んだ状態に限定されず、半硬化のハードコート層21Aの表面がタックフリー(指触乾燥状態)なる硬化進行度合い以上で、硬化が残っている状態を意味する。
また、より安定した半硬化状態を成す為には、電離放射線硬化性樹脂中の硬化成分の硬化機構に、2種類の硬化機構を有する樹脂組成物を用いるのが好ましい。具体的には、例えば、ラジカル重合反応を利用した電離放射線による硬化機構と、イソシアネートの付加重合反応を利用した熱による硬化機構との組み合わせである。
こうした電離放射線硬化性樹脂は、ラジカル重合反応成分と付加重合反応成分とを有する樹脂組成物である。例えば、ラジカル重合反応成分として、前記した重合性化合物を用い、付加重合反応成分として、ポリイソシアネート、或いは、ポリイソシアネートと前記重合性化合物とを付加重合させたイソシアネート基含有のラジカル重合性化合物、或いは両方を用いる。
前記ポリイソシアネートは、例えば、トリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、或いは、これらの3量体などである。
また、ポリイソシアネートと付加重合反応させる反応成分として、ヒドロキシル基、カルボキシル基などの対イソシアナート活性基を有する化合物、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリオール化合物、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレート等のアクリレート化合物、などのイソシアナート活性化合物を併用することができる。
【0052】
前記2種類の硬化機構を有する樹脂組成物を用いる場合、半硬化は何れか一方の硬化機構で行うことで、安定した半硬化が行える。半硬化を何れの硬化機構で行うかは任意であるが、熱重合可能な付加重合反応成分で行い、後工程の硬化進行工程でラジカル重合反応成分を硬化させるのが、半硬化後に付加重合反応成分を残すよりも硬化状態が安定的な点で、好ましい。
本実施形態では、このイソシアネートの付加重合反応で半硬化させ、曲面に成型後にラジカル重合反応で硬化進行させる。
【0053】
[剥離性支持体22]
剥離性支持体22としては、熱可塑性樹脂フィルム(乃至シート)が用いられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等である。半硬化のハードコート層21A側の面が、硬化を進行させたハードコート層21とした後に剥離性支持体22を剥離するときに離型性が不足して、剥離性支持体22をハードコート層21から容易に剥離し難い場合は、半硬化のハードコート層21A側の面に離型処理を施しておくのが好ましい。離型処理は、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂等の塗膜を形成する。
【0054】
[転写箔の作成]
転写箔20は、塗工機によって、剥離性支持体22上に半硬化のハードコート層21Aと、さらに本実施形態においては、接合層13を順次、ロールコートなどの塗工法で塗布した後、塗膜を加熱乾燥させることで、容易に生産性よく、また塵の付着もなく作製することができる。この際、加熱乾燥と同時に、半硬化のハードコート層21Aとして、層中の電離放射線硬化性樹脂中の熱重合可能な付加重合反応成分の硬化を進めることで半硬化状態に、容易にすることができる。
【0055】
[転写箔の接着]
転写箔20は接合層13を介して光拡散層11に接着される。転写箔20の接着は、曲面への接着であるので、前記第1の曲面成形工程で説明した成形法、つまり、転写箔20が加熱された状態で、真空成形、圧空成形、真空圧空成形などの空気圧を利用する成形法によることができる。接合層13の材料等については、すでに述べたので、さらなる説明は省略する。
ただ、本発明においては、半硬化のハードコート層21Aを転写箔20として光拡散層11に接着し積層するには、半硬化のハードコート層21A自体が、加熱により接着性が発現する熱融着性を有する場合は、接合層13は省略できる。
【0056】
半硬化のハードコート層21Aと光拡散層11との接合の為の接合層13は、本実施形態では、転写箔20の構成層として形成される。半硬化のハードコート層21Aに接する接合層13は、転写時の加熱により容易に転写箔20を熱接着させるためには、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましいが、最終製品時の耐熱性など耐久性を考慮するときは、アクリル系樹脂などの接着時は熱融着可能な後硬化型の硬化性樹脂を用いるのが好ましい。ただ、本発明においては、半硬化のハードコート層21Aに対する接合層13は、光拡散層11側に施して接着しても良い。
【0057】
《硬化進行工程》
図1(D)に示すように、硬化進行工程は、前記転写箔接着工程の後に、前記半硬化のハードコート層21A中の電離放射線硬化性樹脂の残りの硬化を進める工程である。
本実施形態では、硬化を進めるために電離放射線Eを用いる。ここでは電離放射線Eとして紫外線を用いる。電離放射線Eは、積層体10に対して、半硬化のハードコート層21Aがより表面に近い出光面側Loutから照射するのがエネルギーロスが少ない点で好ましい。
【0058】
硬化進行工程で、半硬化のハードコート層21Aを構成する電離放射線硬化性樹脂の硬化を完了させることができる。なお、本発明では、硬化進行工程において、完全に硬化を完了させることは必須ではない。例えば40〜60℃程度の温度で1日〜7日程度の条件で、時間をかけて後硬化を進行させるいわゆるエージング処理を、さらに行ってもよい。
【0059】
《支持体剥離工程》
図1(E)に示すように、支持体剥離工程は、前記硬化進行工程の後、前記転写箔20中の剥離性支持体22を剥離する工程である。支持体剥離工程によって、転写箔20の転写が完了する。剥離性支持体22を、硬化進行して形成されたハードコート層21から剥離することによって、前記硬化進行したハードコート層21が表面層となった、目的とする構成の背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100が製造される。
なお、本発明では、剥離性支持体22の剥離は、硬化進行工程の後に行うが、硬化進行工程の前であって第1の曲面成形工程の後に行うよりは、硬化を更にある程度進行させた後の方が、剥離性支持体22の剥離が容易である点で好ましい。この点で、前記エージングを行う場合は、支持体剥離工程はエージングの後でも良い。
【0060】
以上のような本実施形態によって、表面にハードコート層21を有する背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100を、ハードコート層21のクラック発生を抑制して、製造することができる。しかも、ハードコート層21はスプレー塗装によらず転写箔で形成している為に、塵の噛み込みも防げ、乾燥時間も不要で生産性が良い。
【0061】
《B》第2の実施形態
図5を参照して、本発明の背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーンの製造方法の第2の実施形態を説明する。
図5に示す本実施形態では、前述した
図1に示した第1の実施形態に対して、特に異なる点は、積層体10がフレネルレンズシート40を含まないことと、この積層体10とフレネルレンズシート40とを別々に曲面成形した後で、両者を積層すること、及び、
図7に示す背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100の如く、フレネルレンズシート40のフレネルレンズ層41が出光面側Loutを向くこと、である。
【0062】
《積層体準備工程》
図5(A)で示す積層体準備工程で準備する積層体10は、本実施形態では
図6(A)に示す様に、フレネルレンズシート40及びこれを積層する為に隣接配置されている接合層13がない点以外は、前記第1の実施形態と同じである。よって、積層体準備工程に関する更なる説明は省略する。
【0063】
《第1の曲面成形工程》
図5(B)で示す第1の曲面成形工程は、本実施形態では積層体10がフレネルレンズシート40を含まないため、フレネルレンズ層41が曲面成形時に型面に接触してレンズが変形しない様に、フレネルレンズ層41側の入光面側Linとなる面は型面に接触させない形式で成形する工夫は必要がない。したがって、本実施形態では、積層体10のどちらの面も型面に接触させてもよく、機械的な熱プレス成形を利用することもできる。
ただ、成形型Mは、
図4(A)で示す型面が凸曲面(オス)の方が、
図4(B)で示す凹曲面(メス型)の方に比べて、好ましい。その理由は、凸曲面(オス)の場合、積層体10の中央部が最初に凸曲面の頂部に接触するので、この部分の積層体10は変形が他の部分に比べて少なく他の部分よりは薄くならないからである。積層体10が背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100となったときに、このスクリーンの中心となる部分が薄くなると、映像の明度や視野角に大きな影響を与える虞があるためである。
【0064】
《転写箔接着工程》
図5(C)で示す転写箔接着工程は、前記第1の実施形態と同じである。よって、更なる説明は省略する。
【0065】
《硬化進行工程》
図5(D)で示す硬化進行工程は、前記第1の実施形態と同じである。よって、更なる説明は省略する。
【0066】
《フレネルレンズシート準備工程》
図5(E)で示すフレネルレンズシート準備工程は、平板状のフレネルレンズシート40を準備する工程である。本工程で準備するフレネルレンズシート40は、第2の曲面成形工程で曲面成形する際の取り扱い性を勘案して、ある程度の剛性を有することが好ましい。
そこで、本実施形態では、フレネルレンズシート40として、
図6(B)で示す様に、基材層12上にフレネルレンズ層41が積層されたものに、更に接合層13を介して補強層14を積層して、剛性を増した構成のものを用いる。
本フレネルレンズシート40を構成する各層については、既に述べたので更なる説明は省略する。
本発明においては、フレネルレンズシート準備工程で準備する平板状のフレネルレンズシート40は、適度な剛性があり取り扱い性がよければ良く、基材層12及び補強層14は必須ではない。
【0067】
《第2の曲面成形工程》
図5(F)で示す第2の曲面成形工程は、前記フレネルレンズシート準備工程で準備した平板状のフレネルレンズシート40を、三次元曲面をなすように成形して曲げる工程である。
本実施形態では、フレネルレンズ層41は出光面側Loutとなる様に且つ凸側となる様に曲げられる。このため、補強層14側が成形型の凸曲面の型面に接触する形式で成形される。このため、本実施形態では、本第2の実施形態での第1の曲面成形工程と同様に、中央部の伸び、変形を、凹凸が逆の場合に比べて少なくでき、製造される背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100中央部の映像の明度や視野角に大きな影響を与えることなく、成形できる。
【0068】
《積層工程》
図5(G)で示す積層工程は、前記第1の曲面成形工程で三次元曲面をなすように曲げられた積層体10と、前記第2の曲面成形工程で三次元曲面をなすように曲げられたフレネルレンズシート40とを、積層する工程である。積層工程より、積層体10とフレネルレンズシート40が積層した三次元曲面をなす積層体10aが作製される。
本実施形態では、硬化進行工程の後に積層工程を実施する。ただ、本発明においては、積層工程の後に硬化進行工程を実施してもよい。
【0069】
積層体10とフレネルレンズシート40とは、積層する前に、それぞれを適切な大きさ及び形状に裁断しておいてもよい。
なお、最終的に背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100となったときの、平面視形状は、背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100が組み込まれる機器の組み込み部分に応じた形状となり、例えば、矩形、円形、楕円形など任意である。
【0070】
本実施形態においては、フレネルレンズシート40のフレネルレンズ層41を積層体10側にして、フレネルレンズシート40と積層体10とが積層される。
ただ、フレネルレンズ層41が積層体10と擦れて、積層体10に傷を付ける虞があるため、積層体10のフレネルレンズ層41に接触する面にはシリコーンオイルなどのスリップ剤を塗布しておくことが好ましい。
また、フレネルレンズ層41と積層体10との間の隙間が大きくなると、背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100において、ゴースト(二重像)が発生する虞があるため、積層体10とフレネルレンズ層41とは接触させておくことが好ましい。
こうした積層体10とフレネルレンズシート40との積層法は特に限定されないが、例えば、フレネルレンズシート40と積層体10とを重ね、それらの周辺部を金属製のクリップによって挟んで固定する方法が挙げられる。
【0071】
《支持体剥離工程》
図5(H)で示す支持体剥離工程は、前記積層工程で得られた積層体10aから、転写箔20として形成された部分のうち剥離性支持体22を剥離する工程である。支持体剥離工程によって、転写箔20の転写が完了する。剥離性支持体22を、硬化進行して形成されたハードコート層21から剥離することによって、既に硬化進行しているハードコート層21が表面層となった、目的とする構成の背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100が製造される。
【0072】
以上のような本実施形態によって、表面にハードコート層21を有する背面透過型ディスプレイ用曲面スクリーン100を、ハードコート層21のクラック発生を抑制して、製造することができる。しかも、ハードコート層21はスプレー塗装によらず転写箔で形成している為に、塵の噛み込みも防げ、乾燥時間も不要で生産性が良い。また、積層体10とフレネルレンズシート40とを、それぞれ別々に成形しているので、フレネルレンズ層41が成形型の型面に接触しない様にして成形する為の成形方式の制約が少ない。
【0073】
《C》その他
以上、前記第1の実施形態、及び第2の実施形態により本発明を説明したが、曲面に転写箔が追従するように成形され接着する時に、ハードコート層のクラック発生が生じない程度の緩い曲面であれば、本発明には属さないが、転写箔接着工程のときにハードコート層は半硬化に留めておかなくてもよい。こうした製造方法としても、ハードコート層はスプレー塗装によらず転写箔で形成している為に、塵の噛み込みを防げ、乾燥時間も不要で生産性が良い。転写箔の採用により、この場合は、転写箔接着工程における転写箔には、ハードコート層が半硬化ではなく硬化完了した樹脂硬化物からなるハードコート層を用い、後工程の硬化進行工程は省略される。ハードコート層の樹脂には前記第1の実施形態で説明した樹脂を用いてもよい。
但し、本発明によれば、スクリーンが曲面であっても、ハードコート層のクラック発生を安定的に防いで製造できる。