特許第5803571号(P5803571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5803571ポリマーアロイとその製造方法および成形品
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  • 特許5803571-ポリマーアロイとその製造方法および成形品 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5803571
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】ポリマーアロイとその製造方法および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20151015BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20151015BHJP
   C08L 25/10 20060101ALI20151015BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08L71/12
   C08L25/10
   C08L53/02
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-235621(P2011-235621)
(22)【出願日】2011年10月27日
(65)【公開番号】特開2012-131977(P2012-131977A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2014年8月29日
(31)【優先権主張番号】特願2010-266557(P2010-266557)
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】落合 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】秋田 大
(72)【発明者】
【氏名】小林 定之
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/028559(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0043154(US,A1)
【文献】 特開2007−186704(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/092275(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0199903(US,A1)
【文献】 特開平06−207097(JP,A)
【文献】 特開2009−235282(JP,A)
【文献】 特開2004−143242(JP,A)
【文献】 特開平07−148822(JP,A)
【文献】 米国特許第05551777(US,A)
【文献】 特表2002−531298(JP,A)
【文献】 米国特許第06132076(US,A)
【文献】 特開2005−035212(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0013192(US,A1)
【文献】 特開2009−196303(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0213683(US,A1)
【文献】 特開2010−143970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C08J 3/00 − 3/28
C08J 99/00
B29B 7/00 − 11/14
B29B 13/00 − 15/06
B29C 31/00 − 31/10
B29C 37/00 − 37/04
B29C 71/00 − 71/02
B29C 47/00 − 47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)とポリフェニレンエーテル樹脂(B)との重量比(A)/(B)が70/30〜40/60である熱可塑性樹脂成分100重量部に対し、芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)を10〜40重量部を配合してなるポリマーアロイであり、かつ該ポリマーアロイ中に分散したポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の相関長が0.001μm〜1μmの非周期構造であり、さらにポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の面積(S)、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の周囲長(L)とするとき、下記式(1)
c=4πS/L (1)
で定義される分散相のコンパクトネス(c)が、0.05≦(c)≦0.8であり、さらにポリフェニレンエーテル樹脂(B)相中に芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が分散していることを特徴とするポリマーアロイ。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度が3×10−5mol/g以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーアロイ。
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)が、α、β−不飽和ジカルボン酸またはその誘導体で変性したポリフェニレンエーテル樹脂であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のポリマーアロイ。
【請求項4】
前記芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマーアロイ。
【請求項5】
さらに、導電性付与材(D)を配合してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマーアロイ。
【請求項6】
ポリアミド樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)、芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)を、二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練する請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマーアロイの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマーアロイからなる成形品。
【請求項8】
成形品が、射出成形品、フィルムまたはシートである請求項7に記載の成形品。
【請求項9】
成形品が自動車用部品および電気・電子部品から選ばれる少なくとも1種である請求項7または8のいずれか1項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂と芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体および/またはそれらの水素添加物を配合し、特定の構造に制御したポリマーアロイとその製造方法および成形品に関するものである。更に詳しくは、耐熱性、耐衝撃性に優れ、さらに従来技術で作製した樹脂組成物よりも低温域での実用衝撃強度が大幅に優れるポリマーアロイとその製造方法および成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成形加工性および軽量化の観点から、近年、自動車部品の樹脂化が進められている。フェンダーをはじめとする自動車外装用途においてもその風潮があるが、ボディーである金属と同じタイミングで塗装する、いわゆるオンライン塗装に耐えうる耐熱性と、自動車外装用途として必要な耐衝撃性を兼備する樹脂材料が求められている。
【0003】
しかし、耐熱性と耐衝撃性は、本来、相反する性質であることから、この問題の解決に向けて、これまでに様々な検討例が報告されている。
【0004】
例えば、ポリアミド樹脂/ポリフェニレンエーテル樹脂に耐衝撃改良材を混合分散させ、耐衝撃性と耐熱性の改善を図った樹脂組成物が特許文献1に開示されている。また、ポリアミド樹脂/ポリフェニレンエーテル樹脂/耐衝撃改良材に相溶化剤を添加し、さらにポリアミド中に分散したポリフェニレンエーテル樹脂の構造を微細化し、耐衝撃性の改善を図った樹脂組成物が、特許文献2に開示されている。また、ポリアミド樹脂/ポリフェニレンエーテル樹脂/耐衝撃改良材/相溶化剤からなる組成物中にポリアミド樹脂を、ナイロン6とナイロン66とを併用することで、低温での耐衝撃性と耐熱性の改善を図った樹脂組成物が、特許文献3に開示されている。
【0005】
また、特定のポリアミド樹脂と特定のポリフェニレンエーテル樹脂を用い、相溶性を向上させ、耐衝撃改良材を添加することで、耐衝撃性と耐熱性の改善を図った樹脂組成物が、特許文献4に開示されている。
【0006】
さらに、混練方法の検討も報告されており、ポリフェニレンエーテル樹脂と耐衝撃改良材とを混練した後に、溶融したポリアミド樹脂中に添加することで、耐衝撃性と低温衝撃性の改善を図った樹脂組成物が、特許文献5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−75658号公報
【特許文献2】特開平6−207097号公報
【特許文献3】特開平5−51523号公報
【特許文献4】特開2009−235282号公報
【特許文献5】特開2004−143242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来技術で開示されている樹脂組成物において、耐衝撃性、耐熱性においては相応な改善を与えるものの、例えば、従来技術で開示されている樹脂組成物に傷を入れた状態で実用衝撃試験である高速面衝撃試験を−30℃という低温域で行うと、脆性破壊となり、自動車外装用途などで使用するには充分ではなかった。
従って、本発明は、耐熱性、耐衝撃性に優れ、さらに従来技術で作製した樹脂組成物よりも低温域での実用衝撃強度に優れるポリマーアロイを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
(1)ポリアミド樹脂(A)とポリフェニレンエーテル樹脂(B)との重量比(A)/(B)が70/30〜40/60である熱可塑性樹脂成分100重量部に対し、芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)を10〜40重量部を配合してなるポリマーアロイであり、かつ該ポリマーアロイ中に分散したポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の相関長が0.001μm〜1μmの非周期構造であり、さらにポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の面積(S)、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の周囲長(L)とするとき、下記式(1)
c=4πS/L (1)
で定義される分散相のコンパクトネス(c)が、0.05≦(c)≦0.8であり、さらにポリフェニレンエーテル樹脂(B)相中に芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が分散していることを特徴とするポリマーアロイ、
(2)前記ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度が3×10−5mol/g以上であることを特徴とする(1)に記載のポリマーアロイ、
(3)前記ポリフェニレンエーテル樹脂(B)が、α、β−不飽和ジカルボン酸またはその誘導体で変性したポリフェニレンエーテル樹脂であることを特徴とする(1)〜(2)のいずれか1項に記載のポリマーアロイ、
(4)前記芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれか1項に記載のポリマーアロイ、
(5)さらに、導電性付与材(D)を配合してなる(1)〜(4)のいずれか1項に記載のポリマーアロイであり、また、
(6)ポリアミド樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)、芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)を、二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練する(1)〜(5)のいずれか1項に記載のポリマーアロイの製造方法であり、また
(7)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のポリマーアロイからなる成形品、
(8)成形品が、射出成形品、フィルムまたはシートである(7)に記載の成形品、
(9)成形品が自動車用部品および電気・電子部品から選ばれる少なくとも1種である(7)または(8)のいずれか1項に記載の成形品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明から、耐熱性、耐衝撃性に優れ、さらに従来技術で作製した樹脂組成物よりも低温域での実用衝撃強度に優れるポリマーアロイを提供することが可能となり、例えば、自動車外装用途、電気・電子部品用途等に展開することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ポリマーアロイの相構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)とは、アミド結合を有する高分子からなる樹脂のことであり、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするものである。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0014】
特に有用なポリアミド樹脂(A)の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0015】
とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン56、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン6/6T、ナイロン66/6T、ナイロン6T/6I、ナイロン6T/12、ナイロン66/6T/6I、ナイロン6T/M5T、ナイロン6T/5Tを挙げることができる。更にこれらのポリアミド樹脂を成形性、耐熱性、耐衝撃性、靱性、表面性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適であるが、これらの中でナイロン6、ナイロン66が最も好ましい。
【0016】
ポリアミド樹脂(A)の重合度には特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、1.5〜7.0の範囲が好ましく、特に1.8〜6.0の範囲のポリアミド樹脂が好ましい。相対粘度が1.5よりも小さい場合は本発明のポリマーアロイの特徴である優れた耐衝撃性を発現することが困難となり、6.0よりも大きい場合はポリマーアロイの溶融粘度が著しく増加し、成形体を成形することが困難となるため好ましくない。
【0017】
ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度には特に制限がないが、3×10−5mol/g以上であるものが、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)との相溶性向上の点から好ましい。ここで言う末端アミノ基濃度とは85%フェノール−エタノール溶媒にサンプルを溶解、チモールブルーを指示薬として使用して、塩酸水溶液にて滴定することで測定できる。
【0018】
また、本発明のポリアミド樹脂(A)には、長期耐熱性を向上させるために銅化合物が好ましく用いられる。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2ーメルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの錯化合物などが挙げられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、通常ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0019】
本発明で用いるポリフェニレンエーテル樹脂(B)とは、次に示す一般式[1]を繰り返し単位とし、構成単位が一般式[1]の[a]及び[b]からなる単独重合体あるいは共重合体が使用できる。
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6 は炭素1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン、水素等の一価の残基であり、R5、R6 は同時に水素ではない)
【0022】
ポリフェニレンエーテル樹脂(B)の単独重合体の具体例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモポリマーが挙げられる。とりわけポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが最も好ましく用いられる。
【0023】
ポリフェニレンエーテル共重合体は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体あるいはo−クレゾールとの共重合体あるいは2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等、ポリフェニレンエーテル構造を主体としてなるポリフェニレンエーテル共重合体を含む。
【0024】
ポリフェニレンエーテル樹脂(B)は、前記したポリフェニレンエーテル単独重合体または共重合体にスチレン系重合体あるいは他の重合体がグラフトしているものも含む。
【0025】
ポリフェニレンエーテル樹脂(B)は、0.5g/dlクロロホルム溶液中、30℃で測定した還元粘度が、0.15〜0.70の範囲にあるものが好ましく用いられる。
【0026】
ポリフェニレンエーテル樹脂(B)は、α、β−不飽和ジカルボン酸およびその誘導体で変性したポリフェニレンエーテル樹脂であることが、前記したポリアミド樹脂(A)との相溶性向上の点から好ましい。α、β−不飽和ジカルボン酸およびその誘導体としては、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および無水マレイン酸が好ましく、無水マレイン酸が最も好ましい。変性ポリフェニレンエーテル樹脂の作製方法に特に制限はないが、代表的にはポリフェニレンエーテル樹脂100重量部とα、β−不飽和ジカルボン酸およびその誘導体0.1〜10重量部、ラジカル発生剤0.01〜1重量部をドライブレンドし、シリンダー温度300〜320℃にて溶融混練することにより作製することができる。
【0027】
また、ポリアミド樹脂(A)とポリフェニレンエーテル樹脂(B)との重量比(A)/(B)は、70/30〜40/60の範囲であり、耐熱性、耐衝撃性の点から、70/30〜45/55であることが好ましく、より好ましくは65/35〜50/50である。
【0028】
本発明で用いる芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)とは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o,p−ジクロルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体と、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンなどの共役ジエンから得られるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物である。これらの中でも、スチレンと1,3−ブタジエンあるいはイソプレンから得られるブロック共重合体およびその水素添加物が好ましい。
【0029】
また、芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)は酸変性されていてもよく、酸変性するには、ラジカル発生剤の存在下、カルボキシル基または酸無水物基を有する化合物を反応させることにより得られる。
【0030】
また、芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)とポリフェニレンエーテル樹脂(B)の合計量100重量部に対して10〜40重量部の範囲であり、好ましくは10〜35重量部の範囲、より好ましくは15〜35重量部の範囲、さらに好ましくは15〜30重量部の範囲である。芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体および/またはそれらの水素添加物(C)が10重量部未満では、得られる組成物の耐衝撃性に劣る傾向にあり、40重量部を超えると耐熱性が低下する傾向にある。
【0031】
本発明は、ポリアミド樹脂(A)とポリフェニレンエーテル樹脂(B)との重量比(A)/(B)が70/30〜40/60である熱可塑性樹脂成分100重量部に対し、芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)を10〜40重量部を配合してなるポリマーアロイであり、かつ該ポリマーアロイ中に分散したポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の相関長が0.001μm〜1μmの非周期構造であり、さらにポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の面積(S)、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の周囲長(L)とするとき、下記式(1)
c=4πS/L (1)
で定義される分散相のコンパクトネス(c)が、0.05≦(c)≦0.8であり、さらにポリフェニレンエーテル樹脂(B)相中に芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が分散していることを特徴とするポリマーアロイである。
【0032】
ポリマーアロイは、各々の原料となる樹脂の長所を引き出し、短所を補い合うことで、単一の樹脂に比べて優れた特性を発現する。このとき重要となるのが、ポリマーアロイの分散相の相関長である。相関長が大きすぎると、機械特性が著しく低下し、また相関長が小さすぎると、原料樹脂の特性が失われるため好ましくない。したがって、非周期構造における相関長は、0.001μm〜1μmが好ましく、0.01μm〜0.7μmがより好ましく、0.02μm〜0.5μmがさらに好ましく、最も好ましくは、0.05μm〜0.3μmである。
【0033】
相関長とは、上記規則的な周囲構造がみられない構造体での分散相のサイズを表す指標のことである。相関長は、光散乱や小角X線散乱において得られた散乱プロファイルを元に、波数に対し、散乱強度の逆数としたDebyeプロットを行い、Debyeプロットにおいて、その傾きを切片で割った平方根から求めることができる。相関長が0.001μm〜0.1μm未満のポリマーアロイの場合は小角X線散乱測定により、相関長が0.1μm以上1μm以下のポリマーアロイの場合は光散乱測定により評価することが可能である。小角X線散乱と光散乱は、分析可能な構造サイズが異なるので、分析するポリマーアロイの構造サイズに応じて適宜使い分けする必要がある。
【0034】
光散乱測定、小角X線回折測定において、サンプルは薄膜状とする必要がある。薄膜化はミクロトーム等による切片切り出しや、加熱プレスにより可能である。光散乱装置の場合は、厚さ0.1mm程度のカバーガラスにポリマーアロイを挟み込み、加熱プレスすることで簡便に薄膜状試料を得ることが可能である。小角X線回折の場合、カバーガラスによるX線吸収があるため注意が必要である。加熱プレスの場合、熱を加え過ぎたり、プレス時間が長いと、サンプルによっては構造が粗大化する場合があるので、プレス条件の決定は慎重に行う必要がある。また、結晶性樹脂の場合、結晶化によりアロイ構造が変化する可能性があるため加熱プレス後は速やかに急冷し、構造を固定化する。
【0035】
薄膜状に調製したサンプルは、中心部分を測定する。サンプルが測定装置の試料ホルダーサイズに対して大きすぎる場合は、サンプルを中心部分から切り出し測定する。サンプルの厚さは、可能な限り大きなシグナル強度が得られるように複数のサンプルを重ねて最適な厚さに調節する。シグナル強度はサンプル厚さに比例して増加するが、測定光の吸収もLanbert-Beerの法則に従い試料厚さに対して指数関数的に増加し、その分シグナル強度が減少するので、両者のバランスに応じて試料厚さを決定する必要がある。
本発明のポリマーアロイは、該ポリマーアロイ中に分散したポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の面積(S)、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の周囲長(L)とするとき、下記式(1)
c=4πS/L (1)
で定義される分散相のコンパクトネス(c)が、0.05≦(c)≦0.8の構造を指す。
【0036】
分散相のコンパクトネス(c)とは、分散相の構造を表す指標のことであり、コンパクトネス(c)が1に近づくと球形となり、逆に0に近づくと分散相の変形が大きいことを表している。コンパクトネス(c)は、
0.05≦(c)≦0.6
であることがより好ましく、さらには
0.1≦(c)≦0.5
であることがより好ましい。コンパクトネス(c)が小さくなると、分散相と連続相の接触界面積が大きくなることから、分散相の持つ優れた特性を最大限に発揮し、ポリマーアロイとして、著しく優れた特性を得ることが可能となる。
【0037】
ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の面積(S)、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の周囲長(L)は、ポリマーアロイで構成される塊状物の表面から1mmの深さの部位で、超薄切片を切り出し、これを透過型電子顕微鏡にて12万倍に拡大して観察することにより求めることができる。本発明では、上記測定法により観察される分散相を任意に100箇所選択し、画像解析ソフトScionImageを用いて、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の面積(S)及びポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の周囲長(L)から各々のコンパクトネス(c)を求め、その平均値から求めた。
【0038】
本発明のポリマーアロイは、該ポリマーアロイ中に分散したポリフェニレンエーテル樹脂(B)相中に芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が分散している構造を指す。
【0039】
ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相中に芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が分散している構造は、ポリマーアロイで構成される塊状物の表面から1mmの深さの部位で、超薄切片を切り出し、これを透過型電子顕微鏡にて12万倍に拡大して観察することができる。ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相中に芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が分散することで、より優れた特性を得ることが可能となる。
【0040】
本発明のポリマーアロイにおいては、自動車外装部品のオンライン塗装時に必要な静電塗装可能な導電性を得る目的で、導電性付与材(D)を添加することができる。導電性付与材(D)とは本発明のポリマーアロイの導電性を改良する成分を意味する。その特性としては、体積固有抵抗1×1010Ω・cm未満、表面固有抵抗1×1012Ω未満のいずれか、または両方を満足する材料が好ましい。
【0041】
このような導電性付与材(D)としては、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブに代表される炭素フィブリル、カーボンナノファイバー、炭素繊維、グラファイト、カーボンで被覆された無機フィラー、アルミニウムでドープされた金属酸化物、アンチモンでドープされた金属酸化物で被覆された無機フィラー等が挙げられる。
【0042】
これらの導電性付与材(D)の中でも、導電性カーボンブラックがより好ましく使用される。
【0043】
導電性カーボンブラックとは、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が250ml/100g以上のものが好ましく、より好ましくはDBP吸油量が300ml/100g以上、更に好ましくは350ml/100g以上のカーボンブラックである。ここで言うDBP吸油量とはASTM D2414に定められた方法で測定した値である。また、導電性カーボンブラックはBET比表面積が400m/g以上のものが好ましく、更には600m/g以上のものがより好ましい。市販されているものを例示すると、ライオン(株)のケッチェンブラックECやケッチェンブラックEC−600JD等が挙げられるが導電性付与材はこれに限られるものではない。
【0044】
導電性付与材(D)の配合割合はポリマーアロイ100重量部に対して、0.5〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15重量部であり、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。0.5重量部未満では導電性が発現せず、また、20重量部を超えると耐衝撃性、流動性に劣るためである。
【0045】
導電性付与材(D)の添加方法について特に制限はないが、ポリアミド樹脂と予め溶融混練してなる導電性マスターバッチとして添加することが好ましい。導電性マスターバッチとして添加することで、ポリアミド樹脂(A)中に導電性付与材(D)が分散されやすくなり、特に導電性に優れたポリマーアロイを得ることができる。
【0046】
前記導電性マスターバッチの製造方法に特に制限はないが、押出機を使用した溶融混練が好ましい。導電性マスターバッチ中の導電性付与材(D)の好ましい配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して3〜30重量部であり、より好ましくは5〜25重量部である。
【0047】
本発明の特定範囲の相関長とコンパクトネス(c)、およびポリフェニレンエール樹脂(B)中に芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が分散した構造を有するポリフェニレンエーテル樹脂(B)相を形成させるためには、二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練することで得ることができる。
【0048】
カオス混合について説明する。2つの流体の混合を考えた場合、初期の2流体の境界面上のすべての点に対して、その位置を初期値として流体粒子の運動を支配する方程式を解くと、境界面の時間発展を求めることができる。2流体がすみやかに混合するためには,この境界面は小さい間隔で折りたたまれていく必要があることから、境界面の面積は急激に増加しなければならず、最初に、ごく近くにいた境界面上の2点間の距離は、急激に増大する必要がある。この様に、流体の運動を支配する方程式の解で、2点間の距離が、時間と共に指数関数的に増大するカオス解をもつ混合のことをカオス混合と呼ぶ。カオス混合は、例えば、Chaos, Solitons & Fractals Vol.6 p425-438に記載されている。
【0049】
カオス混合で溶融混練させる方法としては、通常使用されている公知の二軸押出機を用い、樹脂の溶融混練時に、混練温度を下げ、溶融粘度を上げること、及び、カオス混合状態を発生させることに有効なスクリューを用いることにより、アロイ成分の引き伸ばし及び折り畳みを繰り返すカオス混合を生じさせることができる。
【0050】
本発明では、カオス混合の混練温度は、ポリフェニレンエーテル樹脂のガラス転移温度より、ポリマー溶融部以降ダイヘッドまでの混練温度を1〜70℃、高く設定することが好ましく、1〜50℃、高く設定することがより好ましく、1〜30℃、高く設定することがさらに好ましい。混練温度を、ポリフェニレンエーテル樹脂のガラス転移温度より、1℃未満の温度範囲で高く設定した場合、粘度が高すぎ溶融混練することが難しく、また70℃超す温度範囲で高く設定した場合、アロイ成分の引き伸ばしが十分にできずカオス混合状態とならない場合があるため好ましくない。
【0051】
本発明では、カオス混合は、粒子追跡法(particle tracking method)において、線長さ(L)、初期線長さ(L)とするとき、仮想的な線の伸びの対数(lnL/L)が、2以上となるカオス混合であることが好ましい。仮想的な線の伸びの対数(lnL/L)が大きい場合、流体の運動を支配する方程式の解で、2点間の距離が、時間と共に指数関数的に増大しやすいことを意味している。かかる粒子追跡法は、時間t=0で評価するスクリューの上流面の断面内に1000個の粒子の初期位置をランダムに決め、解析によって求めた評価するスクリューの速度場に伴う移動をシミュレーションにより追跡する方法であり、各粒子の座標の履歴の記録から、線長さ(L)、初期線長さ(L)とするときの仮想的な線の伸びの対数(lnL/L)を求めることができる。粒子追跡法は、例えば、Journal of Non-Newtonian Fluid Mechanics Vol.91, Issues 2-3, 1 July 2000, p273-295に記載されている。
【0052】
本発明での、カオス混合状態に有効なスクリューとは、粒子追跡法において、線長さ(L)、初期線長さ(L)とするとき、仮想的な線の伸びの対数(lnL/L)が、2以上となるスクリューであることが好ましく、さらには3以上となるスクリューであることが好ましく、最も好ましくは4以上となるスクリューであることが好ましい。
【0053】
かかるカオス混合状態を発生させることに有効な2軸押出機のスクリューとしては、ニーディングディスクからなり、かかるニーディングディスクのディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの反回転方向に0°<θ<90°の範囲内にあるツイストニーディングディスクや、ニーディングディスクからなり、かかるニーディングディスクがフラクショナルロブ形状を基盤とし、軸が偏心したフラクショナルロブニーディングブロックや、ローターからなり、かかるローターがフラクショナルロブ形状を基盤とし、軸が偏心したフラクショナルミキシングエレメントや、フライトスクリューからなり、かかるフライトスクリューのフライト部にスクリュー先端側から後端側に向けて樹脂通路が形成されているバックミキシングスクリューが挙げられる。これらの中から選ばれる2種以上のスクリューを交互に組み合わせることでカオス混合をより効果的に生じることができる。
【0054】
本発明では、二軸押出機のスクリューの全長に対する、カオス混合しつつ溶融混練するゾーン(カオス混合ゾーン)の合計の長さの割合が、5〜80%の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜70%、さらに好ましくは、15〜60%の範囲である。また、本発明において、二軸押出機のカオス混合しつつ溶融混練するゾーン(カオス混合ゾーン)は、スクリュー内の特定の位置に偏在することなく、全域に渡って配置されることが好ましい。
【0055】
本発明では、原料の混合順序には特に制限はないが、全ての原材料を配合後、二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、一般的な溶融混練し更に残りの原材料を配合し二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練し更に残りの原材料を配合し二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練し更に残りの原材料を配合し一般的な溶融混練する方法など、いずれの方法を用いてもよいが、一部の原材料を配合後、一般的な溶融混練し更に残りの原材料を配合し二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練し更に残りの原材料を配合し二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練する方法を用いることが好ましく、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)と芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体および/またはそれらの水素添加物(C)を配合後、一般的な溶融混練し更にポリアミド樹脂(A)を配合し二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練する方法、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)と芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体および/またはそれらの水素添加物(C)を配合後、二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練し更にポリアミド樹脂(A)を配合し二軸押出機を用いたカオス混合により溶融混練する方法を用いることがより好ましい。
【0056】
本発明のポリマーアロイにおいては、ポリアミド樹脂(A)とポリフェニレンエーテル樹脂(B)との相溶性を向上させる目的で、その製造過程で相溶化剤を添加することができる。相溶化剤の具体的な例としては、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、水酸基、イソシアネート基、メルカプト基、オキサゾリン基、スルホン酸基、ウレイド基の中から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する高分子化合物、低分子化合物が好ましく用いられ、この中でもエポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、オキサゾリン基を有する高分子化合物、低分子化合物は、反応性が高く、しかも分解、架橋などの副反応が少ないため、より好ましく用いられる。
【0057】
相溶化剤の配合割合はポリマーアロイ100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜7重量部である。0.01重量部以下の添加量においては十分な相溶性向上効果が得られない傾向があり、10重量部を超える場合はポリマーアロイの溶融粘度が著しく増加し流動性が低下するため好ましくない。
【0058】
本発明のポリマーアロイにおいては、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、ポリアミド樹脂(A)、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)、芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体および/またはそれらの水素添加物(C)以外のその他の成分を添加しても構わない。その他の成分としては、充填剤、熱可塑性樹脂類、ゴム類、各種添加剤類を挙げることができる。
【0059】
例えば、充填剤は、強度及び寸法安定性等を向上させるため、必要に応じて用いてもよい。充填材の形状としては繊維状であっても非繊維状であってもよく、繊維状の充填材と非繊維状充填材を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
かかる充填材としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械特性を得る意味において好ましい。
【0061】
強度および寸法安定性等を向上させるため、かかる充填剤を用いる場合、その配合量は特に制限はないが、ポリマーアロイ100重量部に対して30〜400重量部配合することが好ましい。
【0062】
また本発明のポリマーアロイ中においては、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂類を配合することができる。
【0063】
かかる熱可塑性樹脂類としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアルキレンオキサイド樹脂等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂類は2種類以上併用することも可能である。かかる熱可塑性樹脂類を用いる場合、その配合量は、特に制限はないが、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、1〜400重量部配合されることが好ましい。
【0064】
さらに本発明のポリマーアロイ中においては、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、各種添加剤類を配合することができる。
【0065】
本発明のポリマーアロイに添加することが可能な各種添加剤類は、好ましくは、結晶核剤、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどの離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などが挙げられる。
【0066】
これらの各種添加剤類は、本発明のポリマーアロイを製造する任意の段階で配合することが可能である。
【0067】
本発明のポリマーアロイの成形方法は、任意の方法が可能であり、成形形状は、任意の形状が可能である。成形方法としては例えば、押出成形、射出成形、中空成形、カレンダ成形、圧縮成形、真空成形、発泡成形等が可能であり、ペレット状、板状、繊維状、ストランド状、フィルム又はシート状、パイプ状、中空状、箱状等の形状に成形することができる。
【0068】
本発明のポリマーアロイから繊維を製造する場合には、公知の紡糸・延伸技術を使用することができる。延伸・紡糸技術としては、例えば、溶融紡糸した糸や押出機から吐出されたストランドを、一旦巻き取ってから延伸する方法や、溶融紡糸した糸や押出機から吐出されたストランドを一旦巻き取ることなく連続して延伸する方法等が利用される。
【0069】
本発明のポリマーアロイからフィルムを製造する場合には、公知のフィルム成形技術を使用することができる。例えば、押出機にTダイを配置してフラットフィルムを押し出す方法や、さらにこのフィルムを一軸または二軸方向に延伸して延伸フィルムを得る方法や、押出機にサーキュラーダイを配置して円筒状フィルムをインフレートするインフレーション法などの方法が利用される。
【0070】
本発明のポリマーアロイの成形品の用途は、コネクター、コイルをはじめとして、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電子部品用途に適している他、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品用途、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク、DVD等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・冷却系・ブレーキ系・ワイパー系・排気系・吸気系各種パイプ・ホース・チューブ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、電池周辺部品、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクター等の各種コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、インストルメントパネル、エアバッグ周辺部品、ドアパッド、ピラー、コンソールボックス、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアパネル、ルーフパネル、フードパネル、トランクリッド、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプベゼル、ドアハンドル、ドアモール、リアフィニッシャー、ワイパー等の自動車・車両関連部品等に好適に使用される。
【0071】
また本発明のポリマーアロイは、自動車用部品として好適であり、特に自動車のオンライン塗装に耐えうる耐熱性と自動車外装用途で要求される耐衝撃性と低温域での実用衝撃特性を兼備するため、自動車外装部品、自動車外板部品等に好適に使用される。
【0072】
また本発明のポリマーアロイは、耐熱性と耐衝撃性を兼備しているため、電気・電子部品としても好適に使用される。
【0073】
本発明のポリマーアロイは、フィルムおよびシート用途として好適であり、包装用フィルムおよびシート、自動車部材用フィルムおよびシート、工業用フィルムおよびシート、農業・土木用フィルムおよびシート、医療用フィルムおよびシート、電気・電子機器部材用フィルムおよびシート、生活雑貨用フィルムおよびシート等に好適に使用される。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0075】
透過型電子顕微鏡写真
ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出したサンプルについて、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡を用いて12万倍に拡大して相構造の観察を行った。ポリフェニレンエーテル樹脂(B)中に芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が分散しているか確認し、分散しているものは○、分散していないものは×で表1、2に記載した。
【0076】
光散乱スペクトルから測定した相関長
厚さ0.1mmのカバーガラスにポリマーアロイを挟み込み、加熱プレスすることで、薄膜状試料を作製し、カバーガラスに挟んだ状態で光散乱測定を行った。光散乱は、大塚電子社製DYNA−300を用いて、CCDカメラに1分間露出して得られた2次元データを円環平均により、1次元の散乱プロファイルに変換し、このようにして得られた散乱プロファイルを元に、波数に対し、散乱強度の逆数としたDebyeプロットを行い、Debyeプロットにおいて、その傾きを切片で割った平方根から相関長を求めた。
【0077】
コンパクトネス(c)、相構造の形状
分散相を任意に100箇所選択し、画像解析ソフトScionImageを用いて、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の面積(S)及びポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の周囲長(L)から各々のコンパクトネス(s)を求めた。表には、コンパクトネス(C)の平均値から求めた値を記載した。図1に、ポリアミド樹脂(A)相中に分散したポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の模式図を記載した。実施例、比較例で観察された相構造の形状を、図1の(a)、(b)で示した。例えば、実施例1では、図1(a)の相構造であったことを示す。
【0078】
耐熱性(DTUL)
ASTM D648に準拠し、荷重0.46MPaにおける荷重たわみ温度の測定を行った。
【0079】
耐衝撃性
ASTM D256に従い23℃にて耐衝撃性(ノッチ付きIzod衝撃強度)を評価した。7本測定した平均の値を耐衝撃性とした。
【0080】
高速面衝撃試験
島津製作所製サーボパルサーEHF−U2H−20L型高速面衝撃試験機を用い、80mm四方の厚み3mmの角板に厚み0.38mmのカッターを用いて、深さ0.5mm、縦横2cmの傷を十字に入れたものを試料として、傷の中心部に撃芯を併せ、−30℃、撃芯径1/2インチ(先端は半球状)、受け台穴径2インチ、最大荷重1トン、衝突速度10m/sでASTM D3763法に従って測定した。本試験において、撃芯貫通後、試料が破壊して飛び散る、あるいは試料が破壊しなくても貫通部が変形せずに割面がシャープな状態を示すものを脆性破壊、撃芯貫通後、試料が破壊せずに残っていて、変形部は一様に突出して残っている状態を示すものを延性破壊とした。
【0081】
体積固有抵抗
厚さ1/8インチASTM D−638 準拠の引張試験片の両端を精密カットソーで切断し、長さ50mmで両端に均一な断面積(12.4mm×3.2mm)の切断面を持つ、短冊状試験片を得た。この試験片の両端の切断面に銀ペーストを塗布し、充分乾燥させた後、テスターを用いて両端間の抵抗値を500Vの電圧で測定し、下式を用いて体積固有抵抗として算出した。
体積固有抵抗(Ω・cm)=抵抗値×(断面積/長さ)
なお、この測定は5個の異なる試験片に対して実施し、その加算平均をもって体積固有抵抗とした。
【0082】
なお、使用樹脂は、以下に示すものを使用した。
N66:ポリアミド66樹脂(融点265℃、末端アミノ基濃度11.5×10−5mol/g、98%硫酸1g/dlでの相対粘度2.65であるポリアミド66樹脂)。
N6:ポリアミド6樹脂(融点225℃、末端アミノ基濃度4.5×10−5mol/g、98%硫酸1g/dlでの相対粘度3.40であるポリアミド6樹脂)。
HPPE:ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製:“ユピエース” PX−100F)100重量部と無水マレイン酸1.2重量部とラジカル発生剤(“パーヘキシン”25B:日油(株)製)0.1重量部をドライブレンドし、シリンダー温度320℃で溶融混練して得た無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ガラス転移温度205℃。
NHPPE:前記HPPE100重量部にp−キシレン1000重量部を加え、窒素気流下溶解し、この溶液を、90℃に加熱したトリエチレンテトラミンのp−キシレン溶液(濃度10重量%)1000重量部に滴下し90分間反応した後室温まで冷却し、この反応混合物を多量のメタノール中に加えた後、沈澱物として得たアミノ基含有変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ガラス転移温度205℃。
SEBS:スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体水素添加物「クレイトンG1651」(クレイトンポリマージャパン社製)。
SEP:スチレン−イソプレンジブロック共重合体水添物「クレイトンG1701」(クレイトンポリマージャパン社製)。
変性エラストマー:酸変性エチレン−プロピレン共重合体「T7741」(JSR(株)製)、酸基含有量0.5%。
相溶化剤(1):クエン酸
相溶化剤(2):エポキシ変性ポリエチレン−g(グラフト)−ポリスチレン「モディパーA4100」(日油(株)製)、メタクリル酸グリシジル含有量10.5質量%。
導電性付与材:導電性カーボンブラック「ケッチェンブラックEC−600JD」(ライオン(株)製)
導電性MB:ポリアミド66樹脂(融点265℃、末端アミノ基濃度11.5×10−5mol/g、98%硫酸1g/dlでの相対粘度2.65であるポリアミド66樹脂)100重量部と導電性付与材(ライオン(株)製:導電性カーボンブラック(ケッチェンブラックEC−600JD)10重量部をドライブレンドし、シリンダー温度280℃で溶融混練して得た導電性マスターバッチ。
【0083】
[実施例1〜6、比較例1〜7]
実施例1〜5と比較例1〜6は、表1記載の組成からなる全原料を、スクリュー回転数100rpmとした二軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(尚、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給し、また、ポリマー溶融部以降ベントまでのバレル温度を表1記載の温度で調整した。ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した後ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た(一括)。一方、実施例6と比較例7はHPPEとSEBSを、スクリュー回転数100rpmとした二軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(尚、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給し、また、ポリマー溶融部以降ベントまでのバレル温度を表1記載の温度で調整し、ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した後ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た後に、得られたペレットとN66を再度、スクリュー回転数100rpmとした二軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(尚、ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給し、また、ポリマー溶融部以降ベントまでのバレル温度を表1記載の温度で調整し、ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した後ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。尚、実施例1〜4、6と比較例1〜2は、ニーディングディスクよりなり、かかるニーディングディスクのディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に0°<θ<90°の範囲内にあるツイストニーディングディスクと、フライトスクリューからなり、かかるフライトスクリューのフライト部にスクリュー先端側から後端側に向けて樹脂通路が形成されているバックミキシングスクリューとを交互に組み合わせてカオス混合しつつ溶融混練するゾーン(カオス混合ゾーン)とし、押出機のスクリューの全長に対するカオス混合ゾーンの合計の長さの割合が、50%となるように、全域に渡って配置したスクリュー構成(Aタイプ)を用いた。実施例5は、ニーディングディスクからなり、かかるニーディングディスクがフラクショナルロブ形状を基盤とし、軸が偏心したフラクショナルロブニーディングブロックとローターからなり、かかるローターがフラクショナルロブ形状を基盤とし、軸が偏心したフラクショナルミキシングエレメントとを交互に組み合わせてカオス混合ゾーンとし、押出機のスクリューの全長に対するカオス混合ゾーンの合計の長さの割合が、50%となるように、全域に渡って配置したスクリュー構成(Bタイプ)を用いた。一方比較例3〜7は、スクリュー構成として、L/D=22、28の位置から、一般のニーディングディスク(L/D=3.8)を設けたスクリュー構成(Cタイプ)を用いた。
【0084】
上記ペレットから、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて12万倍に拡大して構造の状態を観察し、その観察結果からポリフェニレンエーテル樹脂(B)相を任意に100箇所選択し、画像解析ソフトScionImageを用いて、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の面積(S)及びポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の周囲長(L)から各々のコンパクトネス(c)を求め、コンパクトネス(c)の平均値から求めた値を表1に記載した。また、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)中に芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が分散しているか確認し、分散しているものは○、分散していないものは×で表1に記載した。また、さらに上記サンプルのうち、実施例1〜6と比較例1〜2については265℃で、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し光散乱スペクトルを測定した。また、比較例3〜7については、表1記載のバレル設定温度で、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し光散乱スペクトルを測定した。このようにして得られた散乱プロファイルを元に、波数に対し、散乱強度の逆数としたDebyeプロットを行い、Debyeプロットにおいて、その傾きを切片で割った平方根から相関長を求め、表1に記載した。
【0085】
上記ペレットは、ホッパ下から先端に向かって、300℃−305℃−310℃−310℃に設定した住友重機械工業(株)製射出成形機(SG−75H−MIV)で、金型温度80℃とし、保圧12秒、冷却時間20秒の成形サイクルで、厚さ1/8インチASTM D−790準拠の曲げ試験片、及び厚さ1/8インチASTM−256準拠のノッチ付きIzod衝撃試験片、及び80mm四方の厚さ3mmの角板(フィルムゲート)を成形した。得られた成形品について以上の通り評価し、その結果を表1に記載した。
【0086】
【表1】
【0087】
以上の結果から、ポリアミド樹脂(A)とポリフェニレンエーテル樹脂(B)との重量比(A)/(B)が70/30〜40/60である熱可塑性樹脂成分100重量部に対し、芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体および/またはそれらの水素添加物(C)を10〜40重量部を配合し、二軸押出機を用いたカオス混合による溶融混練を行うことにより、相関長、及びコンパクトネス(c)が著しく減少し、微細かつ構造が入り組み、さらに分散相(B)に(C)が分散したポリマーアロイが得られた。
【0088】
相関長、及びコンパクトネス(C)が著しく減少し、微細かつ構造が入り組み、さらに分散相(B)に(C)が分散したポリマーアロイが得られ、これらのポリマーアロイは、カオス混合とならない通常の混練方法により得られたポリマーアロイと比較して、耐熱性、耐衝撃性に優れ、さらに−30℃の低温域での高速面衝撃試験時に、全てのサンプルが延性破壊となり、実用衝撃特性にも優れることがわかる。
[実施例7〜8、比較例8〜9]
実施例7〜8は、表2記載の組成からなる原料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で製造しペレットを得た。一方、比較例8〜9は、表2記載の組成からなる原料を用いた以外は、比較例3と同様の方法で製造しペレットを得た。
【0089】
上記ペレットから、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて12万倍に拡大して構造の状態を観察し、その観察結果からポリフェニレンエーテル樹脂(B)相を任意に100箇所選択し、画像解析ソフトScionImageを用いて、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の面積(S)及びポリフェニレンエーテル樹脂(B)相の周囲長(L)から各々のコンパクトネス(c)を求め、コンパクトネス(c)の平均値から求めた値を表2に記載した。また、ポリフェニレンエーテル樹脂(B)中に芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体およびこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種(C)が分散しているか確認し、分散しているものは○、分散していないものは×で表2に記載した。また、さらに上記サンプルのうち、実施例7〜8については265℃で、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し光散乱スペクトルを測定した。また、比較例8〜9については、表2記載のバレル設定温度で、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し光散乱スペクトルを測定した。このようにして得られた散乱プロファイルを元に、波数に対し、散乱強度の逆数としたDebyeプロットを行い、Debyeプロットにおいて、その傾きを切片で割った平方根から相関長を求め、表2に記載した。
【0090】
上記ペレットは、ホッパ下から先端に向かって、300℃−305℃−310℃−310℃に設定した住友重機械工業(株)製射出成形機(SG−75H−MIV)で、金型温度80℃とし、保圧12秒、冷却時間20秒の成形サイクルで、厚さ1/8インチASTM D−790準拠の曲げ試験片、及び厚さ1/8インチASTM−256準拠のノッチ付きIzod衝撃試験片、及び80mm四方の厚さ3mmの角板(フィルムゲート)、及び厚さ1/8インチASTM D−638 準拠の引張試験片を成形した。得られた成形品について以上の通り評価し、その結果を表2に記載した。
【0091】
【表2】
【0092】
以上の結果から、ポリアミド樹脂(A)とポリフェニレンエーテル樹脂(B)との重量比(A)/(B)が70/30〜40/60である熱可塑性樹脂成分100重量部に対し、芳香族ビニル系単量体と共役ジエンとからなるブロックまたはランダム共重合体および/またはそれらの水素添加物(C)を10〜40重量部を配合し、さらに導電性付与材(D)を添加し、二軸押出機を用いたカオス混合による溶融混練を行うことにより、相関長、及びコンパクトネス(c)が著しく減少し、微細かつ構造が入り組み、さらに分散相(B)に(C)が分散したポリマーアロイが得られた。
【0093】
相関長、及びコンパクトネス(C)が著しく減少し、微細かつ構造が入り組み、さらに分散相(B)に(C)が分散したポリマーアロイが得られ、これらのポリマーアロイは、カオス混合とならない通常の混練方法により得られたポリマーアロイと比較して、耐熱性、耐衝撃性、導電性に優れ、さらに−30℃の低温域での高速面衝撃試験時に、全てのサンプルが延性破壊となり、実用衝撃特性にも優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のポリマーアロイとその製造方法および成形品は、分散相の構造を微細に制御することが可能であり、かつ分散相の構造を入り組ませる特殊なアロイ構造を形成させることが可能となり、その結果、耐熱性、耐衝撃性に優れ、さらに低温域での実用衝撃強度にも優れたポリマーアロイが得られる。本ポリマーアロイは、これらの特性を活かして成形品として広く用いることができ、特に、自動車外装用途や電気・電子部品用途として有用に用いることができる。
図1