特許第5803592号(P5803592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5803592
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】発泡樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20151015BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   B29C45/00
   B29C45/26
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-248724(P2011-248724)
(22)【出願日】2011年11月14日
(65)【公開番号】特開2013-103404(P2013-103404A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2014年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100110939
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100110940
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 高久
(74)【代理人】
【識別番号】100113262
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 祐二
(74)【代理人】
【識別番号】100115059
【弁理士】
【氏名又は名称】今江 克実
(74)【代理人】
【識別番号】100117581
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克也
(74)【代理人】
【識別番号】100117710
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124671
【弁理士】
【氏名又は名称】関 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100131060
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 靖也
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100131901
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 雅典
(74)【代理人】
【識別番号】100132012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩下 嗣也
(74)【代理人】
【識別番号】100141276
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 康二
(74)【代理人】
【識別番号】100143409
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100157093
【弁理士】
【氏名又は名称】間脇 八蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 裕吉
(74)【代理人】
【識別番号】100163197
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100163588
【弁理士】
【氏名又は名称】岡澤 祥平
(72)【発明者】
【氏名】宮本 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】小川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】金子 満晴
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−226784(JP,A)
【文献】 特開2006−243678(JP,A)
【文献】 特開2006−35660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層がスキン層で覆われ、且つそのスキン層の一部が発泡層内に打ち抜かれ当該打抜き孔の内周面に発泡層が露出してなる発泡樹脂成形体の製造方法であって、
上記発泡樹脂成形体成形用のキャビティを形成する固定型及び可動型の少なくとも一方は型本体とピン部材とを備え、該ピン部材はその先端面が当該型本体の成形面と共に上記キャビティを形成しており、
上記ピン部材の先端面の熱伝導率、又は上記ピン部材の先端面及び該ピン部材の先端面を囲む上記成形面の環状部分の熱伝導率が、そのまわりの上記成形面の熱伝導率よりも低く、
原料樹脂に発泡剤を含ませてなる溶融状態の発泡性樹脂を上記キャビティに充填することにより、上記発泡層がスキン層で覆われてなる発泡樹脂成形体をそのキャビティ内に成形した後、
上記ピン部材を上記キャビティ内に突き入れることにより、上記スキン層を打ち抜いて当該打抜き孔の内周面に上記発泡層を露出させることを特徴とする発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記原料樹脂はポリプロピレンであり、
上記ピン部材を上記キャビティ内に突き入れる速度を15mm/s以上19mm/s以下とし、
上記キャビティ内に、上記速度でのスキン層のせん断強さτfが13.8N/mm以上18.0N/mm以下、発泡層の圧縮降伏強さσcが2.0N/mm以上2.6N/mm以下であり且つ上記スキン層の最大せん断荷重が上記発泡層の最大圧縮降伏荷重よりも小さい発泡樹脂成形体を成形することを特徴とする発泡樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車用部品などの種々の工業用部品の分野において、軽量性、断熱性及び防音性等の優れた特性を有する発泡樹脂成形体が幅広く採用されている。このような発泡樹脂成形体は、使用される目的及び用途などに応じて好適な樹脂材料を選定し、また、成形体内部の気泡の形態や発泡倍率などの諸条件を設定して成形されている。
【0003】
その成形方法の一例として、樹脂に発泡剤を含有させた溶融状態の発泡性樹脂を固定型と可動型とでなる成形型のキャビティに充填した後に、可動型を型開き方向に移動させてキャビティの容積を拡大することにより、発泡性樹脂の発泡を促進させるようにした所謂コアバック法が知られている。このコアバック法によれば、キャビティに充填した発泡性樹脂が成形型によって表面から冷却されることにより、発泡樹脂成形体の表面に表皮層として非発泡のスキン層が形成され、該スキン層の内側にコアバックによる発泡促進によって得られた発泡層が形成される。つまり、非発泡の表皮層間に発泡層が一体的に挟まれた形態の成形体が得られる。
【0004】
このような発泡樹脂成形体を断熱材や防音材(吸音材)としてそのまま使用すると、表面に非発泡のスキン層があるため、内部の発泡層が有する断熱効果や防音効果が十分に発揮されないと言う問題がある。すなわち、表面のスキン層の熱伝導率が大きいためまわりに熱が伝わりやすくなり、或いはスキン層によって音が反射され易くなる。
【0005】
これに対して、断熱効果や防音効果を高めるべく、表面に形成されたスキン層を取り除き、内部の発泡層を露出させることが考えられる。
【0006】
発泡樹脂成形体のスキン層を除去することに関して、例えば、特許文献1には、断熱効果や防音効果の向上を狙いとするものではないが、片面に接着性シートを積層したシート状発泡体を成形し、このシート状発泡体の反対側の面に形成されているスキン層全体をスライス刃によって除去することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、可動型にピン部材を組み込んでおき、溶融状態の発泡性樹脂をキャビティに充填した後、ピン部材を可動型と共にコアバックさせ、次いでピン部材を前進させてキャビティ内に押し込むことにより、発泡樹脂成形体に凹部を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−344459号公報
【特許文献2】特開2009−226784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載された方法では、発泡樹脂成形体の成形工程とは別にスキン層除去工程を設ける必要があり、工数が多くなるとともに、スライス刃及びスライス刃を受けるロールを設ける必要があって装置全体も大掛かりになる。また、この方法は、発泡樹脂成形体のスキン層全体をスライスするというものであり、スキン層を所望位置及び所望形態で部分的に除去するという要望には応えることができない。
【0010】
また、上記特許文献2に記載された方法は、発泡樹脂成形体の表面に形成されたスキン層をピン部材にて凹状に変形させて発泡層内部に押し込むものであり、期待する断熱効果及び吸音効果の向上が望めず、さらに、吸音性に関しては、ピン部材によってスキン層表面に形成された凹部が逆に異音(空力音)の発生源になるおそれもある。
【0011】
そこで、本発明は、表面のスキン層が部分的に打ち抜かれて内部の発泡層が露出した発泡樹脂成形体を得る方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、発泡層がスキン層で覆われてなる発泡樹脂成形体をキャビティ内に成形した後、固定型及び可動型の少なくとも一方に設けられたピン部材を上記キャビティ内に突き入れることにより、上記スキン層を打ち抜くようにした。
【0013】
すなわち、ここに提示する発泡樹脂成形体の製造方法は、発泡層がスキン層で覆われ、且つそのスキン層の一部が発泡層内に打ち抜かれ当該打抜き孔の内周面に発泡層が露出してなる発泡樹脂成形体を得る方法であって、
上記発泡樹脂成形体成形用のキャビティを形成する固定型及び可動型の少なくとも一方は型本体とピン部材とを備え、該ピン部材はその先端面が当該型本体の成形面と共に上記キャビティを形成しており、
上記ピン部材の先端面の熱伝導率、又は上記ピン部材の先端面及び該ピン部材の先端面を囲む上記成形面の環状部分の熱伝導率が、そのまわりの上記成形面の熱伝導率よりも低く、
原料樹脂に発泡剤を含ませてなる溶融状態の発泡性樹脂を上記キャビティに充填することにより、上記発泡層がスキン層で覆われてなる発泡樹脂成形体をそのキャビティ内に成形した後、
上記ピン部材を上記キャビティ内に突き入れることにより、上記スキン層を打ち抜いて当該打抜き孔の内周面に上記発泡層を露出させることを特徴とする。
【0014】
従って、本発明によれば、スキン層をスライスすることなく、ピン部材によるスキン層の打ち抜きによって簡単に、発泡樹脂成形体の発泡層を所望の位置で且つピン部材の断面形状に対応する所望の形態で露出させることができる。
【0015】
また、上記ピン部材の先端面の熱伝導率を上記型本体の成形面の熱伝導率よりも低くし、或いは、上記ピン部材の先端面及び該ピン部材の先端面を囲む上記成形面の環状部分の熱伝導率を、そのまわりの上記成形面の熱伝導率よりも低くしたことにより、当該熱伝導率が低い部位では発泡性樹脂の冷却速度が緩慢になってスキン層がそのまわりよりも薄くなり、ピン部材によるスキン層の打ち抜きが容易になる。
【0016】
好ましい実施形態では、上記原料樹脂をポリプロピレンとし、上記ピン部材を上記キャビティ内に突き入れる速度を15mm/s以上19mm/s以下とし、上記キャビティ内に、上記速度でのスキン層のせん断強さτfが13.8N/mm以上18.0N/mm以下、発泡層の圧縮降伏強さσcが2.0N/mm以上2.6N/mm以下であり且つ上記スキン層の最大せん断荷重が上記発泡層の最大圧縮降伏荷重よりも小さい発泡樹脂成形体を成形する。これにより、スキン層を確実に打ち抜いて発泡層を露出させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、ピン部材の先端面の熱伝導率、又はピン部材の先端面及び該ピン部材の先端面を囲む上記成形面の環状部分の熱伝導率を、そのまわりの上記成形面の熱伝導率よりも低くし、発泡性樹脂を成形型のキャビティに充填することにより、発泡層がスキン層で覆われてなる発泡樹脂成形体を成形した後、ピン部材を上記キャビティ内に突き入れることにより、上記スキン層を打ち抜いて当該打抜き孔の内周面に上記発泡層を露出させるようにしたから、上記熱伝導率が低い部位では発泡性樹脂の冷却速度が緩慢になってスキン層がそのまわりよりも薄くなり、そのため、ピン部材によるスキン層の打ち抜きが容易になり、簡単に、発泡樹脂成形体の発泡層を所望位置で且つピン部材の断面形状に対応する所望の形態で露出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】発泡樹脂成形体の製造装置の全体構成を示す図である。
図2】コアバック途中の成形型の状態を示す断面図である。
図3】コアバック終了後にピン部材を発泡樹脂成形体の発泡層に突き入れた状態を示す断面図である。
図4】ピン部材を発泡樹脂成形体の発泡層に突き入れた状態を示す拡大断面図である。
図5】発泡樹脂成形体の一部を示す断面図である。
図6】スキン層の打ち抜き不良例を示す断面図である。
図7】スキン層の打ち抜き不良の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
<発泡樹脂成形体の製造装置の構成>
図1に示す発泡樹脂成形体の製造装置において、1は発泡樹脂成形体の成形型、2は成形型1のキャビティ3に溶融状態の発泡性樹脂を充填する充填手段としての射出装置である。成形型1は、固定型4と、該固定型4に向かって進退するように設けられた可動型5とを備えてなり、固定型4と可動型5とによってキャビティ3が形成されている。固定型4にスプルー6が設けられている。
【0021】
可動型5は、可動型本体7とピン部材8とを備えてなる。ピン部材8は、固定型4に向かって進退できるように、可動型本体7に形成されたピン孔9に挿入されている。すなわち、ピン部材8は、その先端面が可動型本体7と共にキャビティ3を形成するように且つ固定型4の成形面に対向するように設けられている。
【0022】
成形型1には、可動型本体7を固定型4に向かって進退させる可動型本体駆動手段11と、ピン部材8を固定型4に向かって進退させるピン部材駆動手段12とが接続されている。それら駆動手段11,12はコントローラ13によって制御される。なお、図1ではピン部材8が1本のみ示されているが、防音用又は断熱用の発泡樹脂成形体の成形においては複数のピン部材8を可動型5に設けることになる。
【0023】
射出装置2は、内部にスクリュー15が回転自在に挿入され外周面に加熱用ヒータが設けられたシリンダ16を備え、シリンダ16の先端のノズルが固定型4のスプルー6に接続されている。シリンダ16の基端側には、PP(ポリプロピレン)樹脂等の原料樹脂17を供給するためのホッパ18と、スクリューの回転及び進退を行なうためのスクリュー駆動手段19とが設けられている。シリンダ16の中間部には、物理発泡剤として超臨界状態の流体を注入するノズル21が接続されている。ノズル21には、ボンベ22から送られる不活性ガス(二酸化炭素、窒素等)が超臨界状態発生装置23にて超臨界状態にされて供給される。この場合、原料樹脂17は、ヒータによる加熱とスクリュー15による練りとによって溶融し、さらに上記発泡剤と共に混練されて、溶融状態の発泡性樹脂24となってスプルー6から成形型1のキャビティ3に供給される。
【0024】
なお、化学発泡剤(例えば、三協化成株式会社製セルマイクMB3274(NaHCO))を含有する発泡性樹脂を用いて成形を行なう場合には、その発泡剤を原料樹脂13と共にホッパ18に投入する。繊維強化発泡樹脂成形体を得る場合は、補強用繊維を予め原料樹脂17に混入させておけばよい。
【0025】
<発泡樹脂成形体の製造>
コントローラ13は、発泡性樹脂24を固定型4と可動型5との間のキャビティ3に充填した後、駆動手段11,12を制御して、図2及び図3に示すように可動型5を固定型4から後退させるコアバックを行なう。これにより、キャビティ3を成形すべき発泡樹脂成形体27に応じた容積に拡張させる。このコアバックにおいては、ピン部材8は可動型本体7と共に同じ速度で同じ距離後退する。
【0026】
そうして、コントローラ13は、キャビティ3内に形成された発泡樹脂成形体27の冷却中に、図3及び図4に示すように、ピン部材8を前進させてその先端面を発泡樹脂成形体27の発泡層26内に入るようにキャビティ3内に突き入れる。これにより、図5に示すように、ピン部材8に対応する部位に打抜き孔28が開き、この打抜き孔28の内周面に発泡層26が露出した発泡樹脂成形体27が得られる。
【0027】
よって、得られた発泡樹脂成形体27では、打抜き孔28の内周面に露出した発泡層26が音を吸収するため、防音効果が高くなる。また、断熱性に関しても、発泡樹脂成形体27のスキン層25に打抜き孔28があいているから、スキン層25を伝わる表面の熱伝導率が低くなり、断熱効果が高くなる。
【0028】
スキン層25を打ち抜くためのピン部材8の前進突き入れは、理論的には次の式1及び式2を満足する条件で行なうことになる。
【0029】
Qf max(v)<Cc max(v)+Cgas max(v) ……式1
Cpin(v)>Qf max(v)+Cc max(v)+Cgas max(v) ……式2
Cpin(v)はピン部材8がスキン層25に与える圧縮力、Qf max(v)はスキン層25の最大せん断荷重、Cc max(v)は発泡層26の最大圧縮降伏荷重、Cgas max(v)は発泡ガスの最大圧縮荷重である。ピン部材8が円柱状であるとき、その直径をd、スキン層25のせん断強さをτf(v)、スキン層25の厚みをtf、発泡ガス圧力をPgas(v)、発泡層26の圧縮降伏強さをσc(v) とすると、次のようになり、いずれも、ピン部材8の前進速度vに依存する(速度vが大きくなるほどそれら荷重は大きくなる。)。
【0030】
スキン層25の最大せん断荷重;Qf max(v)=π・d・tf・τf(v)
発泡層26の最大圧縮降伏荷重;Cc max(v)=π・d/4・σc(v)
発泡ガスの最大圧縮荷重; Cgas max(v)=π・d/4・Pgas(v)
ここに、式1に関し、仮に「Qf max(v)≧Cc max(v)+Cgas max(v)」であれば、式2を満足する条件でピン部材8をキャビティ3に突き入れても、図6に示すように、スキン層25がせん断されることなく発泡層26が圧縮されて、スキン層25に肩だれ25aを生じ、或いは、図7に示すように、ピン部材8によるスキン層25の発泡層26内への引き込み25bを生じる。すなわち、スキン層25を確実に打ち抜くこと(発泡層26を露出させること)が難しくなる。特に、ピン部材8の前進速度vを低下させたときにスキン層25の打ち抜きが難しくなる。
【0031】
<実施例>
次に示す発泡性樹脂材料条件、射出成形装置条件及び成形手順にて発泡樹脂成形体を得た。
【0032】
−材料・装置条件−
原料樹脂:住友化学株式会社製ポリプロピレン
発泡剤:N
射出成形装置:株式会社日本製鋼所製,型締力=850トン
成形条件:発泡性樹脂温度=200℃、型温度=60℃
射出速度:200mm/s(射出圧力:100MPa)
キャビティ容量:型閉じ状態で336cm(縦60cm×横40cm×幅0.14cmの直方体)
ピン部材8の直径:10mm
−成形手順−
イ.成形型1を閉じた状態で、シリンダ16から幅1.4mmのキャビティ3に発泡性樹脂(原料樹脂+発泡剤)24を射出充填する。
【0033】
ロ.可動型本体7をピン部材8と共に4.2mm後退(コアバック)させる。
【0034】
ハ.コアバック完了後、ピン部材8を圧縮力Cpin(v)=650N、前進速度17mm/sでキャビティ3内に4.5mm突き入れ、40秒間冷却して発泡樹脂成形体27を取り出す。
【0035】
−結果−
図5に示すように、スキン層25が打ち抜かれ、その打抜き孔28の内面に発泡層26が露出した発泡樹脂成形体27を得ることができた。
【0036】
上記ピン部材8の突き入れにおいて、スキン層25の最大せん断荷重Qf max(v)は150N、発泡層26の最大圧縮降伏荷重Cc max(v)は180N、発泡ガスの最大圧縮荷重Cgas max(v)は0Nであった。すなわち、発泡層26の発泡ガス圧力Pgas(v)が零になった後にピン部材8の前進突き入れを行なっている。
【0037】
実施例の場合、ピン部材8の直径dは10mm、スキン層25の厚さは0.3mmである。従って、スキン層25のせん断強さτf(v)は15.9N/mmであり、発泡層26の圧縮降伏強さσc(v)は2.3N/mmである。これらはピン部材8の前進速度が17mm/sのときの値であるが、発泡樹脂成形体に対して静的に荷重が加えられた場合のせん断強さτf及び圧縮降伏強さσcも殆ど同じ値になる。
【0038】
型温度、射出速度、コアバック速度、ピン部材8の前進速度等を適宜変化させてスキン層2の打ち抜きを行なったところ、スキン層25のせん断強さτfが13.8N/mm以上18.0N/mm以下であり、発泡層26の圧縮降伏強さσcが2.0N/mm以上2.6N/mm以下であり、且つスキン層25の最大せん断荷重Qf max(v)が発泡層26の最大圧縮降伏荷重Cc max(v)よりも小さいときは、ピン部材8の前進速度を15mm/s以上19mm/s以下とすると、スキン層25を確実に打ち抜いて発泡層26を露出させることができた。
【0039】
<スキン層の薄肉化>
以上から明らかなように、スキン層25の最大せん断荷重Qf max(v)はスキン層25の厚さtfに比例する。従って、スキン層25のピン部材8で打ち抜かれる部分のみをまわりよりも薄くすると、得られる発泡樹脂成形体27の表面強度を損なうことなく、ピン部材8によるスキン層25の打ち抜きが容易になる。
【0040】
この薄肉化は、ピン部材8の先端面の熱伝導率を可動型本体7の成形面の熱伝導率よりも小さくすることで成すことができる。例えば、ピン部材8の先端面の熱伝導率を0.1W/m・K以上0.5W/m・K以下とし、可動型本体7の成形面の熱伝導率を16W/m・K以上220W/m・K以下とすればよい。これにより、ピン部材8の先端面では発泡性樹脂の冷却速度が緩慢になり、該ピン部材8との接触によって形成されるスキン層は薄くなる。例えば、金型材料として熱伝導率60.5W/m・Kのクロム・モリブデン鋼を用い、ピン部材8の先端面に熱伝導率0.3W/m・Kのポリイミド樹脂の被覆層を設けると、スキン層25の厚さは、可動型本体7に接触する部分が0.3mm程度になり、ピン部材8に接触する部分が0.2mm程度になる。すなわち、ピン部材8に接触する部分のスキン層厚さはそのまわりの厚さの2/3程度になる。
【0041】
上記金型材料としては、クロム・モリブデン鋼の他に、ステンレス鋼(例えば、SUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼)、アルミニウム合金等を採用することもでき、上記被覆層に関しては、ポリイミド等の合成樹脂に代えて無機酸化物(例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア等)を採用することもできる。
【0042】
また、ピン部材8の先端面だけでなく、このピン部材8の先端面を囲む成形面の環状部分を含めて低熱伝導率の被覆層を設けるようにしてもよい。
【0043】
なお、上記実施形態では可動型5にピン部材8を設けたが、固定型4にピン部材を設けてもよい。
【0044】
また、ピン部材8の断面形状は、円形に限る必要はなく、三角形、その他の多角形、或いは瓢箪型など適宜の形状にすることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 成形型
2 射出装置
3 キャビティ
4 固定型
5 可動型
6 スプルー
7 可動型本体
8 ピン部材
25 スキン層
26 発泡層
27 発泡樹脂成形体
28 打抜き孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7