特許第5803669号(P5803669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5803669
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】シート搬送装置、及び画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/00 20060101AFI20151015BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20151015BHJP
   B65H 31/26 20060101ALI20151015BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   B65H31/00 B
   B65H3/06 B
   B65H31/26
   H04N1/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-287876(P2011-287876)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-136428(P2013-136428A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高畑 宗晃
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−68982(JP,A)
【文献】 特開2010−23932(JP,A)
【文献】 実開平4−68050(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H1/00−3/68、31/00−31/40
H04N1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口から排出口に至る搬送経路に沿って配置された複数のローラを有し、前記ローラを作動させた際には、前記導入口から導入したシートを前記搬送経路に沿って搬送するとともに、当該搬送経路に沿って搬送されたシートを前記排出口から排出する搬送手段と、
前記搬送手段の上側を覆うカバー部と、
前記排出口から排出されたシートが積載されるシート積載部と
を備え、
前記シート積載部は、
第一の回動位置と第二の回動位置との間で回動する構造とされていて、前記第一の回動位置へ回動させた際には、少なくとも一部が前記カバー部の上側に重なる位置において装置上面側の外装の一部となる一方、前記第二の回動位置へ回動させた際には、前記第一の回動位置において下方に向けられていた面が斜め上方に向けられてシートの積載面として利用される回動部材と、
前記回動部材を前記第二の回動位置へ回動させた際に前記積載面の上端側となる箇所に突設され、前記排出口から前記積載面上へと送出されたシートの送出方向先端に当接することにより、その当接したシートが更に前記送出方向へと送出されるのを規制する規制部と
を有し、
前記カバー部は、前記回動部材を前記第一の回動位置へ回動させた際に前記規制部が入り込む凹部を備え
前記搬送手段が有する複数の前記ローラのうちの一つは分離ローラであって、当該分離ローラは、前記搬送経路の搬送方向に直交する幅方向の中央に設けられており、
前記凹部は、前記幅方向の中央に設けられた前記分離ローラを挟む前記幅方向両側の位置にそれぞれ形成されることにより、装置上方から見たときに前記分離ローラとは重ならない位置に形成され、
前記規制部は、前記凹部に対応する位置それぞれに形成されている
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記規制部は、前記回動部材に一体成形されている
ことを特徴とする請求項に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記凹部は、底部を有する形状とされている
ことを特徴とする請求項1又は請求項に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記カバー部の下面側には、下方に向かって突設されて、その下端によって前記搬送経路となる領域を画定するリブが形成されており、
前記凹部の底部は、上下方向について前記リブの下端と同じ位置又は前記リブの下端よりも上方となる位置に形成されている
ことを特徴とする請求項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記搬送手段によって前記排出口から排出される前記シートは、前記凹部が形成された前記カバー部の上面側を通って、前記シート積載部へと送出される構造になっており、
前記凹部の内面をなす側壁のうち、前記搬送方向の下流側にある側壁は、下方にある底部側から上方にある開口側に向かうほど前記搬送方向の下流側に位置する傾斜が付与されている
ことを特徴とする請求項又は請求項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
導入口から排出口に至る搬送経路に沿って配置された複数のローラを有し、前記ローラを作動させた際には、前記導入口から導入したシートを前記搬送経路に沿って搬送するとともに、当該搬送経路に沿って搬送されたシートを前記排出口から排出する搬送手段と、
前記搬送手段の少なくとも一部を上側から覆うカバー部と、
前記排出口から排出されたシートが積載されるシート積載部と、
前記搬送手段によって搬送されるシートの画像を読み取る読取手段と
を備え、
前記シート積載部は、
第一の回動位置と第二の回動位置との間で回動する構造とされていて、前記第一の回動位置へ回動させた際には、少なくとも一部が前記カバー部の上側に重なる位置において装置上面側の外装の一部となる一方、前記第二の回動位置へ回動させた際には、前記第一の回動位置において下方に向けられていた面が斜め上方に向けられてシートの積載面として利用される回動部材と、
前記回動部材を前記第二の回動位置へ回動させた際に前記積載面の上端側となる箇所に突設され、前記排出口から前記積載面上へと送出されたシートの送出方向先端に当接することにより、その当接したシートが更に前記送出方向へと送出されるのを規制する規制部と
を有し、
前記カバー部は、前記回動部材を前記第一の回動位置へ回動させた際に前記規制部が入り込む凹部を備え
前記搬送手段が有する複数の前記ローラのうちの一つは分離ローラであって、当該分離ローラは、前記搬送経路の搬送方向に直交する幅方向の中央に設けられており、
前記凹部は、前記幅方向の中央に設けられた前記分離ローラを挟む前記幅方向両側の位置にそれぞれ形成されることにより、装置上方から見たときに前記分離ローラとは重ならない位置に形成され、
前記規制部は、前記凹部に対応する位置それぞれに形成されている
ことを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送経路に沿ってシートを搬送するシート搬送装置と、そのようなシート搬送装置と同等な構成を備えた画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動原稿送り装置(Automatic Document Feeder;以下、ADFと略称する。)を備える画像読取装置において、装置を使用しないときに、給紙トレイや排紙トレイを外装カバーとして利用可能なものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような構造とすることで、装置を使用しないときには、装置上面側における高さ方向の突出量を抑制することができ、給紙トレイや排紙トレイが邪魔にならず、また、給紙口や排紙口が塞がれるので、装置本体内に異物が侵入するのを防ぐことができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−145457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のようなADFで複数枚の原稿を搬送する場合、原稿は1枚ずつ搬送されて、それらの原稿が順に排出トレイ上へと排出されてゆく。その際、先に排出された原稿は、後から排出される原稿との間に作用する摩擦力により、排出トレイ上においても更に搬送方向下流側へと押し出されることがある。
【0006】
また、このような状態は原稿が1枚排出されるたびに繰り返されることがあり、例えば、3枚目の原稿が排出される場合に、2枚目の原稿が3枚目の原稿に押し出されると、その2枚目の原稿によって1枚目の原稿が更に押し出されることがある。そのため、より早い時点で排出を終えた原稿ほど押し出される量が大きくなる傾向があり、場合によっては、排出トレイから原稿の一部が大きくはみ出して、最悪、原稿が排出トレイから脱落するなどの問題を招くおそれがある。
【0007】
こうした問題に対し、排出トレイの先端にストッパーとなる突設物を形成するのは一案である。このような突設物を設ければ、排出トレイ上で原稿が押し出された際には、原稿の先端に突設物が当接するので、それ以上、排出トレイ上で原稿が送り出されてしまうのを阻止することができる。
【0008】
しかし、このような突設物を排出トレイ上に設けると、その分だけ排出トレイ上における上方への突出量が増えるので、同等な突設物がない場合に比べ、装置全体の高さ方向寸法が高くなって、装置の薄型化を妨げる、という問題があった。
【0009】
また、上記特許文献1に記載の給紙トレイのように、トレイの上面側が下方を向くようにトレイを折り畳む構造とすれば、トレイの上面にあった突設物を下方へ向かって突出する状態にすることはできる。
【0010】
しかし、この場合でも、装置本体側の構造物と突設物が干渉しては困るので、このような干渉が起きない程度の高さ位置にトレイを配置しようとすると、同等な突設物がない場合に比べ、より高い位置にトレイが配設されることになり、やはり、装置全体の高さ方向
寸法が高くなって、装置の薄型化を妨げてしまう、という問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、排出口から排出されたシートが積載される積載面上に突設物が設けてあるにもかかわらず、その突設物が原因で装置全体の高さ方向寸法が高くなるのを抑制可能なシート搬送装置と、そのようなシート搬送装置と同等な構成を備えた画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明のシート搬送装置は、導入口から排出口に至る搬送経路に沿って配置された複数のローラを有し、前記ローラを作動させた際には、前記導入口から導入したシートを前記搬送経路に沿って搬送するとともに、当該搬送経路に沿って搬送されたシートを前記排出口から排出する搬送手段と、前記搬送手段の上側を覆うカバー部と、前記排出口から排出されたシートが積載されるシート積載部とを備え、前記シート積載部は、第一の回動位置と第二の回動位置との間で回動する構造とされていて、前記第一の回動位置へ回動させた際には、少なくとも一部が前記カバー部の上側に重なる位置において装置上面側の外装の一部となる一方、前記第二の回動位置へ回動させた際には、前記第一の回動位置において下方に向けられていた面が斜め上方に向けられてシートの積載面として利用される回動部材と、前記回動部材を前記第二の回動位置へ回動させた際に前記積載面の上端側となる箇所に突設され、前記排出口から前記積載面上へと送出されたシートの送出方向先端に当接することにより、その当接したシートが更に前記送出方向へと送出されるのを規制する規制部とを有し、前記カバー部は、前記回動部材を前記第一の回動位置へ回動させた際に前記規制部が入り込む凹部を備えることを特徴とする。
【0013】
このように構成されたシート搬送装置によれば、回動部材を第一の回動位置へ回動させれば、シートの積載面として利用される面を下方に向けた状態で、回動部材が装置上面側の外装の一部となるので、装置上面側における高さ方向の突出量を抑制することができる。また、回動部材を第二の回動位置へ回動させれば、斜め上方に向けられた積載面上へ搬送手段による搬送を終えたシートを排出することができる。
【0014】
さらに、その積載面の上端側となる箇所に突設された規制部は、シートの送出方向先端に当接することで、シートがそれ以上送出方向へと送出されるのを規制するので、シートが過剰に送出方向へと押し出されて積載面から落下してしまうのを防止ないし抑制することができる。しかも、そのような規制部が設けられているにもかかわらず、回動部材を第一の回動位置に移動させた際、規制部はカバー部に形成された凹部に入り込むので、このような凹部がない場合に比べ、回動部材の位置をカバー部側へ接近させることができ、これにより、装置の高さ方向寸法を低くすることができる。
【0015】
ところで、本発明のシート搬送装置において、前記凹部は、装置上方から見たときに前記ローラと一部又は全部が重ならない位置に形成されているものであると好ましい。
このように構成されたシート搬送装置によれば、ローラと干渉しない位置に凹部が設けられることになるので、ローラと重なる位置に凹部が設けられている場合に比べ、カバー部の位置をより下方にすることができ、装置の高さ方向寸法を低くする上で、より効果的である。
【0016】
また、本発明のシート搬送装置において、前記規制部は、前記回動部材に一体成形されているものであると好ましい。
このように構成されたシート搬送装置によれば、規制部が回動部材に一体成形されているので、別体の規制部を回動部材に取り付けてある構造に比べ、部品点数を削減でき、組み立て工数の削減を図ることができる。
【0017】
また、前記搬送手段において、少なくとも一つの前記ローラは、前記搬送経路の搬送方向に直交する幅方向の中央に設けられており、前記凹部は、前記幅方向の中央に設けられた前記ローラを挟む前記幅方向両側の位置にそれぞれ形成され、前記規制部は、前記凹部に対応する位置それぞれに形成されているものであると好ましい。
【0018】
このように構成されたシート搬送装置によれば、互いに離間した位置それぞれに規制部が突設されることになるので、同等な寸法の規制部が1箇所だけに設けられている場合に比べ、幅方向についてより広い範囲でシートに当接して、シートの動きを適切に規制することができる。
【0019】
また、本発明のシート搬送装置において、前記凹部は、底部を有する形状とされているものであると好ましい。
このように構成されたシート搬送装置によれば、凹部が底部を有する形状とされているので、底部のない貫通した凹部とは異なり、凹部を介して装置内に塵埃が入り込むのを防止することができる。
【0020】
また、本発明のシート搬送装置において、前記カバー部の下面側には、下方に向かって突設されて、その下端によって前記搬送経路となる領域を画定するリブが形成されており、前記凹部の底部は、上下方向について前記リブの下端と同じ位置又は前記リブの下端よりも上方となる位置に形成されているものであると好ましい。
【0021】
このように構成されたシート搬送装置によれば、凹部が底部を有する形状とされているものの、その底部の高さ位置(上下方向の位置)は、カバー部の下面側にあるリブの下端と同じ位置又はリブの下端よりも上方となる位置にあるので、リブの下端によって画定される搬送経路をシートが搬送されても、凹部の底部はシートの搬送を妨げる障害物にならず、シートを適正に搬送することができる。
【0022】
また、本発明のシート搬送装置において、前記搬送手段によって前記排出口から排出される前記シートは、前記凹部が形成された前記カバー部の上面側を通って、前記シート積載部へと送出される構造になっており、前記凹部の内面をなす側壁のうち、前記搬送方向の下流側にある側壁は、下方にある底部側から上方にある開口側に向かうほど前記搬送方向の下流側に位置する傾斜が付与されているものであると好ましい。
【0023】
このように構成されたシート搬送装置によれば、凹部の内面をなす側壁のうち、搬送方向の下流側にある側壁は、下方にある底部側から上方にある開口側に向かうほど搬送方向の下流側に位置する傾斜が付与されているので、仮にシートの先端が凹部に引っ掛かったとしても、シートの先端は傾斜に沿ってスムーズに凹部を脱するので、凹部がシートの搬送を妨げる障害物になるのを防止ないし抑制することができる。
【0024】
さらに、本発明の画像読取装置は、導入口から排出口に至る搬送経路に沿って配置された複数のローラを有し、前記ローラを作動させた際には、前記導入口から導入したシートを前記搬送経路に沿って搬送するとともに、当該搬送経路に沿って搬送されたシートを前記排出口から排出する搬送手段と、前記搬送手段の少なくとも一部を上側から覆うカバー部と、前記排出口から排出されたシートが積載されるシート積載部と、前記搬送手段によって搬送されるシートの画像を読み取る読取手段とを備え、前記シート積載部は、第一の回動位置と第二の回動位置との間で回動する構造とされていて、前記第一の回動位置へ回動させた際には、少なくとも一部が前記カバー部の上側に重なる位置において装置上面側の外装の一部となる一方、前記第二の回動位置へ回動させた際には、前記第一の回動位置において下方に向けられていた面が斜め上方に向けられてシートの積載面として利用され
る回動部材と、前記回動部材を前記第二の回動位置へ回動させた際に前記積載面の上端側となる箇所に突設され、前記排出口から前記積載面上へと送出されたシートの送出方向先端に当接することにより、その当接したシートが更に前記送出方向へと送出されるのを規制する規制部とを有し、前記カバー部は、前記回動部材を前記第一の回動位置へ回動させた際に前記規制部が入り込む凹部を備えることを特徴とする。
【0025】
このように構成された画像読取装置によれば、上述のシート搬送装置と同様の構成を備えているので、搬送手段によって搬送されるシートの画像を読み取るとともに、画像の読み取りを終えたシートをシート積載部に排出することができる。また、回動部材を第一の回動位置へ回動させれば、シートの積載面として利用される面を下方に向けた状態で、回動部材が装置上面側の外装の一部となるので、装置上面側における高さ方向の突出量を抑制することができる。また、回動部材を第二の回動位置へ回動させれば、斜め上方に向けられた積載面上へ搬送手段による搬送を終えたシートを排出することができる。
【0026】
さらに、その積載面の上端側となる箇所に突設された規制部は、シートの送出方向先端に当接することで、シートがそれ以上送出方向へと送出されるのを規制するので、シートが過剰に送出方向へと押し出されて積載面から落下してしまうのを防止ないし抑制することができる。しかも、そのような規制部が設けられているにもかかわらず、回動部材を第一の回動位置に移動させた際、規制部はカバー部に形成された凹部に入り込むので、このような凹部がない場合に比べ、回動部材の位置をカバー部側へ接近させることができ、これにより、装置の高さ方向寸法を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】複合機を示す斜視図であり、(a)は読取ユニットの上部にある原稿搬送ユニットが閉じられた状態を示す斜視図、(b)は同原稿搬送ユニットが開かれた状態を示す斜視図。
図2】原稿搬送ユニットの内部構造を示す縦断面図。
図3】原稿搬送ユニットを示す斜視図であり、(a)はシート積載部を構成する可動積載部が閉じられた状態を示す斜視図、(b)は同可動積載部が開かれた状態を示す斜視図。
図4】可動積載部が閉じられた状態を示す縦断面図であり、(a)は規制部及び凹部のない箇所を示す縦断面図、(b)は規制部及び凹部のある箇所を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
[複合機の構造]
図1(a)及び同図(b)に示すように、複合機1は、本体ユニット2と、本体ユニット2の上側に搭載された読取ユニット3と、読取ユニット3の上側に搭載された原稿搬送ユニット4(本発明でいうシート搬送装置の一例に相当。)を備えている。
【0029】
本体ユニット2は、画像形成部、制御部、及び電源部等を内蔵しており、本体ユニット2、読取ユニット3、及び原稿搬送ユニット4に配設された各種機構は、本体ユニット2が備える制御部によって制御される。
【0030】
読取ユニット3は、本体ユニット2及び読取ユニット3の後端付近において左右方向へと延びる軸線を回動中心として、本体ユニット2に対し回動可能な構造とされている。読取ユニット3を回動させて読取ユニット3の前端側を上方へ変位させると、本体ユニット2の上面の開口部が開放され、本体ユニット2に内蔵された各部(画像形成部、制御部、及び電源部等)のメンテナンス作業等を実施可能な状態になる。
【0031】
原稿搬送ユニット4は、読取ユニット3及び原稿搬送ユニット4の後端付近において左右方向へと延びる軸線を回動中心として、読取ユニット3に対し回動可能な構造とされている。この回動に伴って、原稿搬送ユニット4は、閉位置(図1(a)参照。)及び開位置(図1(b)参照。)へ変位する。
【0032】
原稿搬送ユニット4を開位置へ変位させると、読取ユニット3の上面にある原稿載置面が露出する。また、原稿搬送ユニット4を閉位置へ変位させると、原稿搬送ユニット4は、原稿載置面を覆うカバーとして機能する。
【0033】
本体ユニット2の前面上側には、利用者によって操作される操作パネル7が設けられている。また、本体ユニット2において、操作パネル7の下方には、印刷後の被記録媒体を排出する被記録媒体排出口8が形成され、更にその下方には、印刷前の被記録媒体が収納される給紙カセット9などが装着されている。
【0034】
[読取ユニット及び原稿搬送ユニットの内部構造]
図2に示すように、読取ユニット3には、第一イメージセンサ21(本発明でいう読取手段の一例に相当。)が設けられ、原稿搬送ユニット4には、第二イメージセンサ22(本発明でいう読取手段の一例に相当。)が設けられている。本実施形態において、第一イメージセンサ21及び第二イメージセンサ22としては、双方とも密着イメージセンサ(Contact Image Sensor)が採用されている。
【0035】
第一イメージセンサ21は、図示しないモータによって駆動されて、読取ユニット3の内部を左右方向(副走査方向)へ往復移動する構造とされている。また、第二イメージセンサ22は、原稿搬送ユニット4内のフレームに固定されている。
【0036】
また、読取ユニット3側には、第一イメージセンサ21の往復移動経路の上方となる位置に、静止原稿用透明部25及び搬送原稿用第一透明部27が設けられている。また、原稿搬送ユニット4側には、第二イメージセンサ22の下方となる位置に、搬送原稿用第二透明部28が設けられている。
【0037】
静止原稿用透明部25及び搬送原稿用第一透明部27は、双方とも読取ユニット3の上面をなす位置にあり、本実施形態においては、これら静止原稿用透明部25及び搬送原稿用第一透明部27が、単一のガラス板を利用して構成されている。また、搬送原稿用第二透明部28は、本実施形態においては、静止原稿用透明部25及び搬送原稿用第一透明部27とは別のガラス板を利用して構成されている。
【0038】
なお、静止原稿用透明部25及び搬送原稿用第一透明部27は、それぞれが別のガラス板を利用して構成されていてもよい。また、静止原稿用透明部25、搬送原稿用第一透明部27、及び搬送原稿用第二透明部28の材質は、第一イメージセンサ21及び第二イメージセンサ22による原稿の読み取りが可能な透明な材質であれば、ガラス以外の材質であってもよい。
【0039】
また、原稿搬送ユニット4側には、搬送原稿用第一透明部27の上方となる位置に、第一原稿押さえ部31が配設され、読取ユニット3側には、搬送原稿用第二透明部28の下方となる位置に、第二原稿押さえ部32が配設されている。
【0040】
第一原稿押さえ部31は、圧縮ばね(図示せず)によって下方へと付勢されており、これにより、第一原稿押さえ部31は搬送原稿用第一透明部27の上面側を軽く押圧する状態になっている。また、第二原稿押さえ部32は、圧縮ばね(図示せず)によって上方へと付勢されており、これにより、第二原稿押さえ部32は搬送原稿用第二透明部28の下
面側を軽く押圧する状態になっている。
【0041】
また、原稿搬送ユニット4には、原稿を搬送するための搬送機構40(本発明でいう搬送手段の一例に相当。)が設けられている。この搬送機構40は、供給ローラ41、分離ローラ42、搬送ローラ43、Uターン搬送ローラ44などのローラ群を備え、これらのローラ群により、図2中に二点鎖線で示す搬送経路に沿って原稿を搬送可能に構成されている。
【0042】
また、原稿搬送ユニット4には、搬送機構40の一部(供給ローラ41、分離ローラ42、及び搬送ローラ43)を上側から覆うカバー部47が設けられている。搬送機構40へ原稿を導入するための原稿導入口40Aは、カバー部47の下方となる位置にあり、搬送機構40から原稿を排出するための原稿排出口40Bは、カバー部47の上方となる位置にある。
【0043】
[シート積載部の構造]
原稿搬送ユニット4の上面には、図3(a)及び同図(b)に示すように、シート積載部50が設けられている。このシート積載部50は、可動積載部51(本発明でいう回動部材の一例に相当。)及び固定積載部52によって構成される。搬送機構40によって搬送された原稿が原稿排出口40Bから排出されると、その原稿はカバー部47の上面側を通ってシート積載部50へと送出される。
【0044】
可動積載部51は、前後方向へと延びる軸線を回動中心として、原稿搬送ユニット4に対し回動可能な構造とされている。この回動に伴って、可動積載部51は、閉位置(図3(a)参照。)及び開位置(図3(b)参照。)へ変位する。
【0045】
可動積載部51を閉位置へ変位させた際には、可動積載部51は、上面側が略水平な状態となって、原稿搬送ユニット4の上面を覆う外装カバーとして機能する。一方、可動積載部51を開位置へ変位させた際には、可動積載部51は、閉位置において下面側となっていた面が斜め上方に向けられて傾斜面をなす配置状態とされる。
【0046】
このような配置状態とされた際に、閉位置にある可動積載部51によって覆われていた箇所には固定積載部52が露出し、これら隣り合う位置に配置された可動積載部51及び固定積載部52によってシート積載部50が構成される。この状態において、可動積載部51は、固定積載部52を挟んで原稿導入口40A及び原稿排出口40Bとは反対側となる位置に配置され、可動積載部51と固定積載部52との境界部分を挟む両側にわたる範囲がシートの積載面として利用される。
【0047】
固定積載部52には、一対のサイドガイド53が設けられている。このサイドガイド53は、双方とも前後方向へスライド可能で、しかも、一方に連動して他方が一方とは逆方向へスライドする仕組みになっている。そのため、一対のサイドガイド53の間隔を変更する際には、一方を操作するだけで、双方を互いに接近又は離間する方向へスライドさせることができる。
【0048】
また、各サイドガイド53には、各サイドガイド53の上端から互いに対向する方向へ板状体を略水平に延出させてなる仕切り板54が設けられている。搬送対象となる原稿は、この仕切り板54の下方にセットされ、この状態でサイドガイド53を原稿における搬送方向に平行な端面に当接させることにより、原稿の搬送方向を規制する。また、後述する搬送経路に沿って原稿が搬送された場合、搬送済みの原稿は、仕切り板54の上方に排出され、その後は、固定積載部52の上面側を経て可動積載部51の上面側に至る位置へと送出されることとなる。
【0049】
また、可動積載部51は、搬送機構40による搬送方向と同方向に延びる複数(本実施形態では15本)のリブ55を備え、これらのリブ55の上端で積載面を形成している。このようなリブ55を設けることにより、原稿と積載面との間に空隙を設けて原稿と積載面との接触面積を低減し、原稿に作用する摩擦抵抗を低減することができる。
【0050】
また、可動積載部51を開位置へ回動させた際に可動積載部51の積載面の上端側となる箇所には、規制部57が突設されている。この規制部57は、可動積載部51に一体成形されており、原稿が原稿排出口40Bから可動積載部51の積載面上へと送出された際には、原稿の送出方向先端に当接することにより、その原稿が更に送出方向へと送出されるのを規制する。
【0051】
さらに、カバー部47の上面側には凹部58が形成されている。図2に示すように、カバー部47の下方で、搬送経路の搬送方向に直交する幅方向(装置の前後方向)中央には、分離ローラ42が設けられており、上述の凹部58は、分離ローラ42を避けて、分離ローラ42を挟む幅方向両側の位置にそれぞれ形成されている。そのため、図4(a)に示すように、分離ローラ42のある前後方向中央の従断面には、分離ローラ42が表れるものの、凹部58は表れず、一方、図4(b)に示すように、凹部58がある位置の縦断面には、凹部58が表れるものの、分離ローラ42は表れない。
【0052】
また、凹部58は、図4(b)に示すように、底部58Aを有する形状(すなわち、上下方向に貫通しない形状)とされ、可動積載部51を閉位置へ回動させた際には、上述の規制部57が凹部58に入り込むようになっている。すなわち、規制部57は、凹部58に対応する位置それぞれに形成されている。
【0053】
カバー部47の下面側には、ガイドリブ59が形成されている。ガイドリブ59は、下方に向かって突設されており、その下端によって搬送経路となる領域を画定している。上述の凹部58の底部58Aは、ガイドリブ59の下端よりも上方となる位置に形成されており、これにより、ガイドリブ59の下端に沿って案内される原稿が、凹部58の底部58Aに接触しないようにされている。
【0054】
さらに、凹部58を形成する側壁のうち、搬送方向の下流側にある側壁58Bは、下方にある底部58A側から上方にある凹部58の開口側に向かうほど搬送方向の下流側に位置する傾斜(すなわち、図4(b)において左下から右上に向かって上り勾配となる傾斜)が付与されている。
【0055】
[効果]
以上のように構成された複合機1によれば、可動積載部51を閉位置へ回動させれば、原稿の積載面として利用される面を下方に向けた状態で、可動積載部51が装置上面側の外装の一部となる。したがって、可動積載部51相当物が開位置相当の位置に固定されているものに比べ、装置上面側における高さ方向の突出量を抑制することができる。
【0056】
また、可動積載部51を開位置へ回動させれば、斜め上方に向けられた積載面上へ、搬送機構40による搬送を終えた原稿を排出することができる。しかも、規制部57は、原稿の送出方向先端に当接することで、原稿がそれ以上送出方向へと送出されるのを規制するので、原稿が過剰に送出方向へと押し出されて積載面から落下してしまうのを防止ないし抑制することができる。
【0057】
さらに、可動積載部51を閉位置に移動させた際、規制部57はカバー部47に形成された凹部58に入り込むので、このような凹部58がない場合に比べ、可動積載部51の
位置をカバー部47側へ接近させることができ、これにより、複合機1の高さ方向寸法を低くすることができる。
【0058】
また、凹部58は、装置上方から見たときに分離ローラ42と重ならない位置に形成されているので、分離ローラ42などのローラ類と重なる位置に凹部58が設けられている場合に比べ、カバー部47の位置をより下方にすることができ、この点でも装置の高さ方向寸法を低くすることができる。
【0059】
また、規制部57は、可動積載部51に一体成形されているので、別体の規制部57相当物を可動積載部51に取り付けてある構造に比べ、部品点数を削減でき、組み立て工数の削減を図ることができる。
【0060】
また、凹部58は、分離ローラ42を挟む幅方向両側の位置にそれぞれ形成され、規制部57は、凹部58に対応する位置それぞれに形成されている。そのため、二つの規制部57が互いに離間した位置に突設されることとなり、同等な寸法の規制部57が1箇所だけに設けられている場合に比べ、幅方向についてより広い範囲で原稿に当接して、原稿の動きを適切に規制することができる。
【0061】
また、凹部58が底部58Aを有する形状とされているので、底部58Aのない貫通した凹部58相当部分とは異なり、凹部58を介して装置内に塵埃が入り込むのを防止することができる。
【0062】
また、凹部58の底部58Aは、カバー部47の下面側にあるガイドリブ59の下端よりも上方にあるので、ガイドリブ59の下端によって画定される搬送経路を原稿が搬送されても、凹部58の底部58Aは原稿の搬送を妨げる障害物にならず、原稿を適正に搬送することができる。
【0063】
また、凹部58の側壁58Bには、上述のような傾斜が付与されている。そのため、仮に原稿の先端が凹部58に引っ掛かったとしても、原稿の先端は側壁58Bの傾斜に沿ってスムーズに凹部58を脱するので、凹部58が原稿の搬送を妨げる障害物になるのを防止ないし抑制することができる。
【0064】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0065】
例えば、上記実施形態では、凹部58の底部58Aが、カバー部47の下面側にあるガイドリブ59の下端よりも上方にある例を示したが、底部58Aは、ガイドリブ59の下端よりも下方へ突き出ていなければよい。したがって、例えば、底部58Aが、上下方向についてガイドリブ59の下端と同じ位置にあってもよく、この場合でも、底部58Aは原稿の搬送を妨げる障害物にならず、原稿を適正に搬送することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、シート搬送装置の一例として、画像読取装置に組み込まれたシート搬送装置を例示したが、本発明のシート搬送装置は、原稿に対して画像を形成(記録)する画像形成装置において採用することもできる。例えば、画像形成装置が備える搬送機構において、本発明のシート搬送装置を採用すれば、画像形成後の被記録媒体が過剰に送出方向へと押し出されて積載面から落下してしまうのを防止ないし抑制することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、本発明の画像読取装置の一例として、複合機として構成され
た画像読取装置を例示したが、複合機として構成されているか否かは任意であり、単機能の画像読取装置や画像形成装置において、本発明のシート搬送装置を採用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1・・・複合機、2・・・本体ユニット、3・・・読取ユニット、4・・・原稿搬送ユニット、7・・・操作パネル、8・・・被記録媒体排出口、9・・・給紙カセット、21・・・第一イメージセンサ、22・・・第二イメージセンサ、25・・・静止原稿用透明部、27・・・搬送原稿用第一透明部、28・・・搬送原稿用第二透明部、31・・・第一原稿押さえ部、32・・・第二原稿押さえ部、40・・・搬送機構、40A・・・原稿導入口、40B・・・原稿排出口、41・・・供給ローラ、42・・・分離ローラ、43・・・搬送ローラ、44・・・Uターン搬送ローラ、47・・・カバー部、50・・・シート積載部、51・・・可動積載部、52・・・固定積載部、53・・・サイドガイド、54・・・仕切り板、55・・・リブ、57・・・規制部、58・・・凹部、58A・・・底部、58B・・・側壁、59・・・ガイドリブ。
図1
図2
図3
図4