(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、制御対象のプラントが鉄鋼業における高炉に付帯する熱風炉である場合を例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態であるプロセス制御システムの構成の一例を示す図である。
図1において、プロセス制御システム10は、情報処理装置100と、実績データベース200と、制御器300と、熱風炉400と、減算器500とを有している。
【0014】
まず、本実施形態の制御対象である熱風炉400の概略構成について説明する。
図2は、熱風炉400の概略構成の一例を示す図である。
図2において、熱風炉400は、不図示の高炉に熱風を供給するための蓄熱式熱交換器であり、高炉への送風に熱を与える蓄熱室401と、蓄熱室401を加熱するための燃焼室402とを有している。
【0015】
燃焼室402では、ガス供給ダクト403から吹き込まれるBFGガスとCOGガスとの混合ガス(燃料ガス)及び助燃空気供給ダクト404から吹き込まれる助燃用空気とを燃焼バーナ405で燃焼させ、この燃焼ガスを蓄熱室401の内部に積層された蓄熱煉瓦の間を通過させて加熱して熱を蓄える。また、蓄熱室401の上部には、ドーム温度を測定する温度計413が取り付けられている。
【0016】
図2に示す例では、この蓄熱煉瓦として、下側から順にハイアルミナ煉瓦406と、シリカを主成分とする珪石煉瓦407とが積層されており、これらのハイアルミナ煉瓦406、珪石煉瓦407には、上下方向に延びる複数の通過口が形成されている。また、ハイアルミナ煉瓦406には、ハイアルミナ煉瓦406の温度を測定する温度計406aが取り付けられ、珪石煉瓦407には、珪石煉瓦407の温度を測定する温度計407aが取り付けられている。尚、詳しくは、蓄熱煉瓦は一般的に下から順に粘土煉瓦、ハイアルミナ煉瓦、珪石煉瓦の3層構造になっているが、説明を平易にするために、熱風炉が前記の構造のものであるとして説明する。
ガス供給ダクト403には、燃料ガス流量調節弁403aが設けられており、この燃料ガス流量調節弁403aを開閉することにより、燃焼室402に流入する燃料ガスの流入量を調節することができる。
【0017】
ガス供給ダクト403の燃料ガス流量調節弁403aよりも上流側(
図2内で右側)の部分は、BFGガス供給ダクト408とCOGガス供給ダクト409とに分岐している。
BFGガス供給ダクト408は、不図示の高炉に接続されており、高炉で生成されたBFGガスを熱風炉400に送風する。
【0018】
BFGガス供給ダクト408には、BFGガス流量調節弁408a及びBFGガス流量計408bが設けられている。BFGガス流量調節弁408aを開閉することにより、熱風炉400に流入するBFGガスのガス流入量を調節することができる。また、BFGガス流量計408bの測定結果に基づき、熱風炉400に流入するBFGガスのガス流入量を監視することができる。
【0019】
COGガス供給ダクト409は、通常は不図示のコークス炉に接続されており、コークス炉で生成されたCOGガスを熱風炉400に送風する。
COGガス供給ダクト409には、COGガス流量調節弁409a及びCOGガス流量計409bが設けられている。COGガス流量調節弁409aを開閉することにより、熱風炉400に流入するCOGガスのガス流入量を調節することができる。また、COGガス流量計409bの測定結果に基づき、熱風炉400に流入するCOGガスのガス流入量を監視することができる。
【0020】
助燃空気供給ダクト404は、酸素を生成する不図示の酸素生成プラントに接続されており、この酸素生成プラントで生成された空気を熱風炉400に送風する。尚、当該酸素生成プラントは不図示の高炉にも接続されており、高炉等の操業状況に応じて、熱風炉400に供給される助燃空気の酸素濃度は変動する。また、熱風炉400に送風される助燃空気の酸素濃度は、高炉の操業状況が変化しない場合であっても、任意の値に調節することができる。
【0021】
助燃空気供給ダクト404には、助燃空気流量調節弁404a及び酸素濃度測定器404bが設けられている。助燃空気流量調節弁404aを開閉させることにより、燃焼室402に流入する助燃空気の流入量を調節することができる。また、酸素濃度測定器404bの測定結果に基づき、熱風炉400に流入する助燃空気の酸素濃度を監視することができる。
【0022】
蓄熱室401の下端部には、N
2、CO
2等を含む燃焼ガスを排出するためのガス排出ダクト410が設けられている。
ガス排出ダクト410には、ガス排出量調節弁410a、排出ガス流量計410b、及び排ガス温度計410cが設けられている。ガス排出量調節弁410aを開閉することにより、ガス排出ダクト410から排出される燃焼ガスの排出量を調節することができる。また、排出ガス流量計410bの測定結果に基づき、ガス排出ダクト410から排出される燃焼ガスのガス排出量、すなわち、排ガス量を監視することができる。本実施形態では、排出ガス流量計410bは、ガス排出ダクト410に排出されるCO
2ガスの排出量を測定することができる。また、排ガス温度計410cの測定結果に基づき、燃焼ガスの温度、すなわち、排ガス温度を監視することができる。
【0023】
また、蓄熱室401の下端部には、ガス排出ダクト410と異なる位置に常温空気導入ダクト411が接続されており、この常温空気導入ダクト411を介して蓄熱室401に常温の空気が流入する。
常温空気導入ダクト411には空気流入調節弁411aが設けられており、この空気流入調節弁411aを開閉させることにより、熱風炉400に流入する常温空気の流入量を調節することができる。
また、燃焼室402には高炉用の熱風を排出するための熱風排出ダクト412が接続されている。この熱風排出ダクト412には、熱風流量調節弁412aが設けられており、この熱風流量調節弁412aを開閉することにより、高炉に送風される熱風の流量を調節することができる。
【0024】
蓄熱室4
01に熱を蓄える場合には、空気流入調節弁411a及び熱風流量調節弁412aを完全に閉じて、ガス供給ダクト403及び助燃空気供給ダクト404を介して燃焼室402内に燃料ガス及び助燃用空気を流入させる。
これらの燃料ガス及び助燃用空気はバーナ405によって燃焼され、この燃焼ガスは蓄熱室401のハイアルミナ煉瓦406、珪石煉瓦407に形成された開口部を通ってハイアルミナ煉瓦406、珪石煉瓦407を蓄熱する。
【0025】
蓄熱室401への蓄熱が完了すると、燃料ガス流量調節弁403a、助燃空気流量調節弁404a、及びガス排出量調節弁410aを完全に閉じて、常温空気導入ダクト411を介して蓄熱室
401に常温空気を流入させる。蓄熱室401に流入した常温空気は、ハイアルミナ煉瓦406、珪石煉瓦407に形成された開口部を通過して900〜1300℃に加熱された後、高炉用の熱風として熱風排出ダクト412から排出される。
【0026】
図1の説明に戻り、本実施形態では、以上のような熱風炉400を制御対象とし、ドーム温度U1[℃]、C/B比(COGの流量とBFGの流量との比)U2[−]、及びBFG流量U3[kNm
3/h]を制御量とする場合を例に挙げて説明する。したがって、本実施形態では、制御器300は、ドーム温度U1、C/B比U2、及びBFG流量U3の測定値(すなわち実績値)が、情報処理装置100で設定された目標値になるように熱風炉400を制御する。制御器300は、PID制御等、公知の種々の制御方法で熱風炉400を制御することができる。
【0027】
また、制御器300は、熱風炉400における操業実績のデータを実績データベース200に記憶させる。本実施形態では、実績データベース200は、例えば、直近の5日分の操業実績のデータを1[min]毎に記憶するようにしている。
操業実績のデータには、例えば、熱風炉400を操業することにより熱風炉400に設置された各種の測定器より出力される出力値(操業実績値)と、その出力値が得られたときの熱風炉400に対する入力値及び目標値とが含まれる。
【0028】
前述したように情報処理装置100は、プロセス制御系における目標値を設定するためのものであり、目標値最適化装置110と、プロセスシミュレータ150とを有している。情報処理装置100は、例えば、熱風炉400に設けられた測定器や、制御器300とのインターフェースを備えたパーソナルコンピュータを用いることにより実現することができる。
【0029】
図3は、情報処理装置100の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
情報処理装置100は、多目的GA(遺伝的アルゴリズム)を用いて、多目的最適化問題を解き、複数のパレート最適解を予め求めておく。その後、操業条件が変更されると、複数のパレート最適解の中から、変更された操業条件に合うパレート最適解を1つ選択し、選択したパレート最適解に対応する目標値を制御器300に出力する。
【0030】
ここで、操業条件には、熱風炉400の状態量と、熱風炉400の操業方針とが含まれる。熱風炉400の状態量とは、熱風炉400を操業することにより、直接的に又は間接的に時々刻々と測定される量(例えば温度や送風流量)である。一方、熱風炉400の操業方針は、生産計画や生産管理に基づいてオペレータが決めるものである。
【0031】
<目標値最適化装置110、プロセスシミュレータ150の構成>
(目的関数設定部111)
目的関数設定部111は、オペレータからの操作に基づいて、目的関数ΔPを設定する。
本実施形態では、熱風炉400の性能を評価する指標である複数の評価量を目的関数ΔPとしている。具体的に本実施形態では、目的関数ΔPを以下の(1)式のようにした場合を例に挙げて説明する。
【0032】
ΔP=[ΔP1,ΔP2,ΔP3,ΔP4,ΔP5,ΔP6] ・・・(1)
ここで、(1)式のΔP1、ΔP2、ΔP3、ΔP4、ΔP5、ΔP6は、それぞれ(2)〜(7)式で表される。
ΔP1=P11−P10・・・(2)
ただし、P11:目標値を変更した後の熱効率、P10:熱効率の基準値
ΔP2=P21−P20・・・(3)
ただし、P21:目標値を変更した後の珪石煉瓦の最低温度、P20:珪石煉瓦の最低温度の基準値
【0033】
ΔP3=P31−P30・・・(4)
ただし、P31:目標値を変更した後のCO
2の排出量、P30:CO
2の排出量の基準値
ΔP4=P41−P40・・・(5)
ただし、P41:目標値を変更した後のCOGのトータル流量、P40:COGのトータル流量の基準値
ΔP5=P51−P50・・・(6)
ただし、P51:目標値を変更した後の排ガスの平均温度、P50:排ガスの平均温度の基準値
【0034】
ΔP6=P61−P60・・・(7)
ただし、P61:目標値を変更した後の投入熱量、P60:投入熱量の基準値
尚、以下の説明では、必要に応じて、ΔP1を熱効率、ΔP2を珪石
煉瓦温度、ΔP3をCO
2排出量、ΔP4をCOGトータル流量、ΔP5を排ガス平均温度、ΔP6を投入熱量と称する。
【0035】
以上より、本実施形態では、熱効率ΔP1、珪石煉瓦温度ΔP2、CO
2排出量ΔP3、COGトータル流量ΔP4、排ガス平均温度ΔP5、及び投入熱量ΔP6が目的関数ΔPであることが目的関数設定部111により設定される。
目的関数設定部111は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD(ハードディスク)等を用いることにより実現できる。
【0036】
(制約条件設定部112)
制約条件設定部112は、オペレータからの操作に基づいて、目標値を設定する際の制約条件を設定する。本実施形態では、以下の(8)〜(10)式の制約条件が制約条件設定部112により設定される。
ΔP2=0 ・・・(8)
P21≧P2min ・・・(9)
P41≦P4max ・・・(10)
ここで、P2minは、珪石煉瓦407の温度の調整可能範囲の下限値である。また、P4maxは、COGのトータル流量の調整可能範囲の上限値である。
制約条件設定部112は、例えば、情報処理装置100に設けられているHD等を用いることにより実現できる。
【0037】
(パレート最適解導出部113)
パレート最適解導出部113は、多目的GAを適用して、目的関数設定部111により設定された目的関数ΔPに対する多目的最適化問題を解いて複数のパレート最適解を導出する。以下にパレート最適解導出部113が有する機能を説明する。尚、パレート最適解導出部113は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、HD、インターフェース等を用いることにより実現される。
【0038】
個体生成部113aは、N個の個体が入る2つの集合(現世代、次世代)を設定し、現世代にN個の個体をランダムに生成する。
目標値変換部113bは、個体生成部113aで生成されたN個の個体を目標値パターンに変換する。
【0039】
図4は、目標値パターンの一例を示す図である。前述したように、ドーム温度U1、C/B比U2、及びBFG流量U3を制御量とするので、これらについての目標値パターンが必要になる。ここで、本実施形態で言う目標値パターンとは、燃焼開始から燃焼終了までの目標値の推移を表すものである。
【0040】
図4(a)は、ドーム温度U1の目標値パターン41である。
図4(a)において、U1maxは、ドーム温度U1の調整可能範囲の上限値であり、U1minは、その下限値である。ドーム温度U1の調整可能範囲(U1min〜U1max)の間にドーム温度U1の目標値パターン41が入るようにする必要がある。
【0041】
U10は、ドーム温度U1の基準値であり、例えばオペレータによって予め設定されるものである。U11は、目標値が変更される前のドーム温度である。U12は、目標値が変更された後のドーム温度である。T1maxは、ドーム温度U1の切替時刻の調整可能範囲の上限値であり、T1minは、その下限値である。ドーム温度U1の切替時刻の調整可能範囲(T1min〜T1max)の間で、ドーム温度U1が変更されるように
ドーム温度U1の目標値パターン41を設定する必要がある。
【0042】
図4(b)は、C/B比U2の目標値パターン42である。
図4(b)において、U2maxは、C/B比U2の調整可能範囲の上限値であり、U2minは、その下限値である。C/B比U2の調整可能範囲(U2min〜U2max)の間にC/B比U2の目標値パターン42が入るようにする必要がある。
【0043】
U20は、C/B比U2の基準値であり、例えばオペレータによって予め設定されるものである。U21は、目標値が変更される前のC/B比である。U22は、目標値が変更された後のC/B比である。T2maxは、C/B比U2の切替時刻の調整可能範囲の上限値であり、T2minは、その下限値である。C/B比U2の切替時刻の調整可能範囲(T2min〜T2max)の間で、C/B比U2が変更されるようにC/B比U2の目標値パターン42を設定する必要がある。
【0044】
図4(c)は、BFG流量U3の目標値パターン43である。
図4(c)において、U3maxは、BFG流量U3の調整可能範囲の上限値であり、U3minは、その下限値である。BFG流量U3の調整可能範囲(U3min〜U3max)の間にBFG流量U3の目標値パターン43が入るようにする必要がある。
【0045】
U30は、BFG流量U3の基準値であり、例えば送風温度が目標値と一致するようにオペレータによって予め設定されるものである。U31は、目標値が変更される前のBFG流量である。U32は、目標値が変更された後のBFG流量である。T3maxは、BFG流量U3の切替時刻の調整可能範囲の上限値であり、T3minは、その下限値である。BFG流量U3の切替時刻の調整可能範囲(T3min〜T3max)の間で、BFG流量U3が変更されるようにBFG流量U3の目標値パターン43を設定する必要がある。
【0046】
図5は、個体の構成の一例を示す図である。
図5において、個体50は、例えば32bitの情報であり、ドーム温度の情報51と、C/B比の情報52と、BFG流量の情報53とが含まれている。
ドーム温度の情報51には、ΔU11、ΔU12、ΔT11が更に含まれている。
ΔU11は、目標値が変更される前のドーム温度U11に対応する値であり、ドーム温度U1の調整可能範囲の下限値U1minから上限値U1maxまでの範囲を均等に16分割した点のうち、下から数えて何番目の点であるかを示すものである(
図4(a)を参照)。
【0047】
ΔU12は、目標値が変更された後のドーム温度U12に対応する値であり、ドーム温度U1の調整可能範囲の下限値U1minから上限値U1maxまでの範囲を均等に16分割した点のうち、下から数えて何番目の点であるかを示すものである(
図4(a)を参照)。
ΔT11は、ドーム温度U1の切替時刻T11に対応する値であり、ドーム温度U1の切替時刻
の調整可能範囲の下限値T1minから上限値T1maxまでの範囲を均等に16分割した点のうち、下から数えて何番目の点であるかを示すものである(
図4(a)を参照)。
【0048】
C/B比の情報52には、ΔU21、ΔU22、ΔT21が更に含まれている。
ΔU21は、目標値が変更される前のC/B比
U21に対応する値であり、C/B比U2の調整可能範囲の下限値U2minから上限値U2maxまでの範囲を均等に16分割した点のうち、下から数えて何番目の点であるかを示すものである(
図4(b)を参照)。
【0049】
ΔU22は、目標値が変更された後のC/B比
U22に対応する値であり、C/B比U2の調整可能範囲の下限値U2minから上限値U2maxまでの範囲を均等に16分割した点のうち、下から数えて何番目の点であるかを示すものである(
図4(b)を参照)。
ΔT21は、C/B比
U2の切替時刻T21に対応する値であり、C/B比U2の切替時刻
の調整可能範囲の下限値T2minから上限値T2maxまでの範囲を均等に16分割した点のうち、下から数えて何番目の点であるかを示すものである(
図4(b)を参照)。
【0050】
BFG流量の情報53には、ΔU32、ΔT31が更に含まれている。尚、本実施形態では、目標値が変更される前のBFG流量U31は、送風温度が目標温度と一致するようにプロセスシミュレータ150により自動的に調整されるものとする。したがって、個体50には、目標値が変更される前のBFG流量U31に対応する値が含まれていない。ただし、目標値が変更される前のBFG流量U31に対応する値を個体50に含めるようにしてもよい。
【0051】
ΔU32は、目標値が変更された後のBFG流量U3
2に対応する値であり、BFG流量U3の調整可能範囲の下限値U3minから上限値U3maxまでの範囲を均等に16分割した点のうち、下から数えて何番目の点であるかを示すものである(
図4(c)を参照)。
ΔT31は、BFG流量U3の切替時刻T31に対応する値であり、BFG流量U3の切替時刻
の調整可能範囲の下限値T3minから上限値T3maxまでの範囲を均等に16分割した点のうち、下から数えて何番目の点であるかを示すものである(
図4(c)を参照)。
【0052】
以上のように本実施形態では、個体生成部113aで生成された個体50のそれぞれには、目標値を特定するための情報の一例として、ΔU11、ΔU12、ΔT11、ΔU21、ΔU22、ΔT21、ΔU32、ΔT31が含まれており、これらはそれぞれ4ビットの情報である。
尚、
図4では、切替時刻T11、T21、T31において、目標値パターン41〜43が90[°]の傾きで変化しているが、必ずしもこのようにする必要はなく、90[°]以外の角度の傾きで目標値パターンが変化するようにしてもよい。このようにした場合には、その傾きの情報も目標値パターンを決定する変数として個体に設定する必要がある。
【0053】
図3の説明に戻り、目標値変換部113bは、以下の(11)式〜(18)式により算出されたU11、U12、T11、U21、U22、T21、U32、T31を用いて、個体生成部113aで生成されたN個の個体を目標値パターンに変換する。
U11=U1min+(U1max−U1min)×ΔU11/16 ・・・(11)
U12=U1min+(U1max−U1min)×ΔU12/16 ・・・(12)
T11=T1min+(T1max−T1min)×ΔT11/16 ・・・(13)
U21=U2min+(U2max−U2min)×ΔU21/16 ・・・(14)
U22=U2min+(U2max−U2min)×ΔU22/16 ・・・(15)
T21=T2min+(T2max−T2min)×ΔT21/16 ・・・(16)
U32=U3min+(U3max−U3min)×ΔU32/16 ・・・(17)
T31=T3min+(T3max−T3min)×ΔT31/16 ・・・(18)
【0054】
シミュレーション指示部113cは、プロセスシミュレータ150に対して、目標値変換部113bにより変換された目標値パターンを渡して、プロセスシミュレーションを行うことを指示する。
図3に示すようにプロセスシミュレータ150は、
図1に示した制御器300をモデル化した制御器モデル151と、熱風炉400の構成をモデル化した熱風炉の物理モデル152と、減算器500をモデル化した減算器モデル153とが含まれており、現実のプロセス制御系をソフトウェアでシミュレーション(コンピュータシミュレーション)するものである。
まず、プロセスシミュレータ150は、実績データベース200に記憶されている"熱風炉400における操業実績のデータ"を抽出する。そして、プロセスシミュレータ150は、熱風炉400における操業実績のデータに基づいて、シミュレーションを実行するための初期値を設定する。
【0055】
このようにして初期値が設定された後に、プロセスシミュレータ150は、目標値変換部113bにより変換された目標値パターンを用いて、
図1に示したプ
ロセス制御システム10の動作をシミュレーションする。このシミュレーションが終了すると、プロセスシミュレータ150は、熱風炉の物理モデル152から得られる"熱効率ΔP1、珪石煉瓦温度ΔP2、CO
2排出量ΔP3、COGトータル流量ΔP4、排ガス平均温度ΔP5、及び投入熱量ΔP6"と、それらを求めるのに使用した変数(P10、P11、P20、P21、P30、P31、P40、P41、P50、P51、P60、P61)とを目標値最適化装置110(シミュレーション結果取得部113d)に出力する。
【0056】
シミュレーション結果取得部113dは、プロセスシミュレータ150から、熱効率ΔP1、珪石煉瓦温度ΔP2、CO
2排出量ΔP3、COGトータル流量ΔP4、排ガス平均温度ΔP5、及び投入熱量ΔP6を評価量として取得する。
適応度導出部113eは、シミュレーション結果取得部113dにより得られた"熱効率ΔP1、珪石煉瓦温度ΔP2、CO
2排出量ΔP3、COGトータル流量ΔP4、排ガス平均温度ΔP5、及び投入熱量ΔP6"から適応度を導出(算出)する。尚、適応度の導出は、多目的GAにおける公知の手法で行うことができるので、その詳細な説明を省略する。
【0057】
制約条件判定部113fは、シミュレーション結果取得部113dにより得られた"珪石煉瓦温度ΔP2と、目標値を変更した後の珪石煉瓦の最低温度P21と、目標値を変更した後のCOGのトータル流量P41"が、制約条件設定部112により設定された制約条件((8)式〜(10)式)を満足するか否かを判定する。
適応度決定部113gは、制約条件判定部113fにより制約条件を満足していると判定された場合には、適応度導出部113eで導出された適応度を選択する。一方、制約条件判定部113fにより制約条件を満足してい
ないと判定された場合、適応度決定部113gは、適応度導出部113eで導出された適応度をキャンセルし、適応度として最低値を設定する。このようにすることにより、この適応度に対応する"珪石煉瓦温度ΔP2と、目標値を変更した後の珪石煉瓦の最低温度P21と、目標値を変更した後のCOGのトータル流量P41"が、パレート最適解求解部113hから出力されることが防止される。
【0058】
以上の目標値変換部113b、シミュレーション指示部113c、シミュレーション結果取得部113d、適応度導出部113e、制約条件判定部113f、及び適応度決定部113gの処理は、個体生成部113aで生成されたN個の個体のそれぞれについて個別に行われる。
パレート最適解求解部113hは、個体生成部113aで生成された個体について、交叉、突然変異、コピーの何れかを、或る確率で行い、その結果を次世代に保存する。そして、この処理により次世代の個体の数がN個になると、パレート最適解求解部113hは、現世代の個体を削除すると共に、次世代の全ての個体を現世代に移す。
【0059】
そして、以上の目標値変換部113b、シミュレーション指示部113c、シミュレーション結果取得部113d、適応度導出部113e、制約条件判定部113f、適応度決定部113g、及びパレート最適解求解部113hの動作を、最大世代数Gになるまで繰り返す。そして、パレート最適解求解部113hは、最終的に現世代に含まれている個体のうち、適応度が最も高い(複数の)個体の評価量(ΔP1、ΔP2、ΔP3、ΔP4、ΔP5、ΔP6)と、その個体に対する目標値パターンとをパレート最適解記憶部114に出力する。
【0060】
(パレート最適解記憶部114)
パレート最適解記憶部114は、パレート最適解求解部113hから出力された"個体の評価量(ΔP1、ΔP2、ΔP3、ΔP4、ΔP5、ΔP6)と、その個体に対する目標値パターン"を相互に関連付けて記憶する。
図6は、パレート最適解の一例を示す図である。尚、本実施形態では、目的関数ΔPは6個(ΔP1、ΔP2、ΔP3、ΔP4、ΔP5、ΔP6)であるが、視覚的に分かり易いように、ここでは、2つの目的関数ΔP1、ΔP2についてのパレート最適解を示す。
図6では、7個のパレート最適解Z1〜Z7が得られた場合を例に挙げて示している。したがって、
図6に示す例では、パレート最適解記憶部114は、これら7個のパレート最適解Z1〜Z7の値(ΔP1〜ΔP6の値)と、そのパレート最適解Z1〜Z7に対応する目標値パターンとを相互に関連付けて記憶することになる。
パレート最適解記憶部114は、例えば、情報処理装置100に設けられているHD等を用いることにより実現できる。
【0061】
(操業方針取得部115)
図3の説明に戻り、操業方針取得部115は、オペレータにより入力された操業方針に関する情報を入力する。
操業方針取得部115は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD(ハードディスク)等を用いることにより実現できる。
【0062】
(プラント状態・評価量取得部116)
プラント状態・評価量取得部116は、熱風炉400の状態量(の実績値)と、熱風炉400における評価量ΔP1〜ΔP6(の実績値)とを、熱風炉400に設けられている各種の測定器等から取得する。
前述したように、熱風炉400の状態量とは、熱風炉400を操業することにより、直接的に又は間接的に時々刻々と測定される量(例えば温度や送風流量)である。一方、熱風炉400における評価量ΔP1〜ΔP6は、熱風炉400の性能を評価するための指標であり、例えば、熱風炉400の状態量が取得される周期よりも長い周期(例えば1日単位)に亘って取得された熱風炉400の状態量に基づいて算出されるものである。
【0063】
尚、熱風炉400における評価量ΔP1〜ΔP6(の実績値)は、例えば、目標値最適化装置110がプロセスシミュレータ150をチューニングするために使用される。一方、熱風炉400の状態量は、操業条件変更判定部117において、操業条件が変更されたか否かを判定するために使用される。
プラント状態・評価量取得部116は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD等を用いることにより実現できる。
【0064】
(操業条件変更判定部117)
操業条件変更判定部117は、操業方針取得部115により取得された操業方針と、プラント状態・評価量取得部116により取得された熱風炉400の状態量(の実績値)とに基づいて、操業方針及び熱風炉400の状態量の少なくとも何れか一方が変更されたか否かを判定することによって、熱風炉400の操業条件が変更されたか否かを判定する。前述したように、本実施形態では、操業方針及び熱風炉400の状態量が、熱風炉400の操業条件に含まれる。したがって、操業方針及び熱風炉400の状態量の少なくとも何れか一方が変更されると、熱風炉400の操業条件が変更されたことになる。
操業条件変更判定部117は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD等を用いることにより実現できる。
【0065】
(パレート最適解候補表示部118)
パレート最適解候補表示部118は、操業条件変更判定部117により、熱風炉400の操業条件が変更されたと判定されると、最適パレート解記憶部114に記憶されている複数のパレート最適解Z1〜Z7(すなわち目標値)をオペレータに選択させるためのGUIを情報
処理装置100に接続されているディスプレイ(例えば液晶ディスプレイ)に表示する。
図7は、パレート最適解Z1〜Z7(すなわち目標値)をオペレータに変更させるためのGUIの一例を示す図である。
【0066】
図7において、GUI70には、操業条件の変更内容と、パレート最適解(の名称)Z1〜Z7と、そのパレート最適解Z1〜Z7の値を定める評価量ΔP1〜ΔP6と、その評価量ΔP1〜ΔP6の優劣とが表示される。また、現在選択されているパレート最適解(
図7に示す例では、パレート最適解Z3)は、四角で囲まれている。
ここで、評価量ΔP1〜ΔP6の優劣とは、各パレート最適解Z1〜Z7における評価量ΔP1〜ΔP6の相対的な優劣を示すものであり、例えば、パレート最適解Z3が選択された場合には、COGトータル流量ΔP4、CO
2排出量ΔP3、珪石煉瓦温度ΔP2、熱効率ΔP1、投入熱量ΔP6、排ガス平均温度ΔP5の順に優れた操業となる。
【0067】
本実施形態では、GUI70を操作することにより、パレート最適解Z1〜Z7の何れか1つをユーザが手動で選択することと、情報処理装置100が自動で選択することとの双方が行われるようにしている。
パレート最適解Z1〜Z7の何れかをユーザが手動で選択する場合、オペレータは、まず、GUI70を見ながら、現在選択されているパレート最適解をどのパレート最適解に変更すべきかを判断し、情報処理装置
100に接続されているユーザインタフェースを操作することによって、GUI70に表示されている矢印71を動かす。そうすると、オペレータが所望するパレート最適解の脇に矢印71が表示される。その後、オペレータは、ユーザインタフェースを操作して手動ボタン72を押し、変更すべきパレート最適解を確定させる。
【0068】
一方、パレート最適解Z1〜Z7の何れかを情報処理装置100が自動で選択する場合、オペレータは、自動ボタン73を押す。そうすると、後述するようにしてパレート最適解Z1〜Z7の何れかが自動的に選択される。
パレート最適解候補表示部118は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、VRAM、及びHD等を用いることにより実現できる。尚、
図7に示した情報に加えて、各パレート最適解における目標値パターンを示す情報をGUI70に表示するようにしてもよい。
【0069】
(パレート最適解取得判定部119)
パレート最適解取得判定部119は、GUI70に対するオペレータの操作によって、手動ボタン72と自動ボタン73との何れが押されたかを判定する。
パレート最適解取得判定部119は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD(ハードディスク)等を用いることにより実現できる。
【0070】
(重み係数導出部120)
重み係数導出部120は、パレート最適解取得判定部119により自動ボタン73が押されたと判定されると、変更された操業条件の情報(操業方針取得部115及びプラント状態・評価量取得部116の少なくとも何れか一方から取得された情報)に基づいて、熱効率ΔP1、珪石煉瓦温度ΔP2、CO
2排出量ΔP3、COGトータル流量ΔP4、排ガス平均温度ΔP5、及び投入熱量ΔP6のそれぞれに対する重みベクトルW(重み係数)を算出する。重みベクトルWは、以下の(19)式で表される。
【0071】
W=[W1,W2,W3,W4,W5,W6] ・・・(19)
W1は熱効率ΔP1の重みベクトル(重み係数)、W2は珪石煉瓦温度ΔP2の重みベクトル(重み係数)、W3はCO
2排出量ΔP3の重みベクトル(重み係数)、W4はCOGトータル流量ΔP4の重みベクトル(重み係数)、W5は排ガス平均温度ΔP5の重みベクトル(重み係数)、W6は投入熱量ΔP6の重みベクトル(重み係数)である。各重みベクトル(重み係数)W1〜W6の値は0以上1以下の値となり、それらの総和は1になる。例えば、熱効率ΔP1を最大化する場合には、重みベクトルWは、例えば以下の(20)式のようになる。
W=[1,0,0,0,0,0] ・・・(20)
重み係数導出部120は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD等を用いることにより実現できる。
【0072】
(評価関数導出部121)
評価関数導出部121は、重み係数導出部120で導出された重みベクトルWと、パレート最適解記憶部114に記憶されているパレート最適解Z1〜Z7の値(ΔP1〜ΔP6の値)とを用いて、以下の(21)式により評価関数Qを導出(算出)し、重みベクトル(重み係数)W1〜W6
による評価量の
加重和を求める。このとき、評価関数導出部121は、各評価量ΔP1〜ΔP6が略同じ変動範囲を持つように、各評価量ΔP1〜ΔP6に対して正規化処理を行う。したがって、(21)式におけるΔP
rは、正規化された評価量を示す。また、評価関数導出部121は、各評価量ΔP1〜ΔP6のうち、熱効率ΔP1のように最大化すべき評価量については、パレート最適解記憶部114に記憶されているパレート最適解Zの値(ΔPの値)に「−1」を乗算する。したがって、(21)式におけるΔPrのうち、最大化すべき評価量については、パレート最適解記憶部114に記憶されているものと符号(正負)が異なるものとなる。
尚、ここでは、パレート最適解記憶部114に記憶されているパレート最適解Zの値(ΔPの値)に対して正規化処理や「−1」の乗算処理を行うようにしたが、これらの処理を行ったものをパレート最適解記憶部114に記憶するようにしてもよい。
【0074】
(21)式において、sは、評価量ΔPの数である。本実施形態では、6個の評価量ΔP1〜ΔP6があるので、s=6となる。
評価関数導出部121は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD等を用いることにより実現できる。
【0075】
(パレート最適解選択部122)
パレート最適解選択部122は、評価関数導出部121により導出された7個の評価関数Qに基づいて、パレート最適解記憶部114に記憶されているパレート最適解Z1〜Z7のうち、最も適切なパレート最適解を選択する。具体的に本実施形態では、パレート最適解選択部122は、評価関数導出部121により導出された7個の評価関数Qのうち、最小の評価関数Qを選択し、当該評価関数Qに対応するパレート最適解を選択する。すなわち、本実施形態では、パレート最適解選択部122は、操業条件が変更された後の重みベクトル(重み係数)
による評価量の
加重和が最小になるパレート最適解を選択する。
パレート最適解選択部122は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD等を用いることにより実現できる。
【0076】
(目標値変更部123、目標値記憶部124)
目標値変更部123は、パレート最適解取得判定部119により手動ボタン72が押されたと判定されると、
図7に示したGUI70にてオペレータにより選択されたパレート最適解に対応する目標値パターンをパレート最適解記憶部114から読み出す。
一方、パレート最適解取得判定部119により自動ボタン73が押されたと判定されると、パレート最適解選択部122により選択されたパレート最適解に対応する目標値パターンをパレート最適解記憶部114から読み出す。そして、目標値変更部123は、目標値記憶部124に記憶されている目標値パターンを、読み出した目標値パターンに書き換える。
目標値変更部123は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD(ハードディスク)等を用いることにより実現できる。また、目標値記憶部124は、例えば、情報処理装置100に設けられているHD等を用いることにより実現できる。
【0077】
(目標値出力部125)
目標値出力部125は、目標値記憶部124に記憶されている目標値パターンが更新されると、更新された目標値パターンを制御器300に出力する。これにより、熱風炉400を制御する際の目標値が変更される。
目標値出力部125は、例えば、情報処理装置100に設けられているCPU、ROM、RAM、HD、インターフェース等を用いることにより実現できる。
【0078】
尚、
図3において、目標値パターンがまだ選択されていない場合(操業初期の場合)には、例えば、以下のようにして目標値パターンを制御器300に出力することができる。すなわち、重み係数導出部120、評価関数導出部121、パレート最適化選択部122、及び目標値変更部123を起動させて、操業条件に応じたパレート最適解を自動的に1つ選択し、そのパレート最適解に対応する目標値パターンをパレート最適解記憶部114から読み出し、目標値記憶部124に書き込む。そして、目標値出力部125は、目標値記憶部124に書き込まれた目標値パターンを制御器300に出力する。また、目標値パターンがまだ選択されていない場合(操業初期の場合)には、所定の目標値パターンを制御器300に出力するようにしてもよい。
【0079】
<パレート最適解導出処理>
次に、
図8のフローチャートを参照しながら、複数のパレート最適解を予め導出して記憶するパレート最適解導出処理を実行する際の目標値最適化装置110の動作の一例を説明する。
まず、ステップS1において、目的関数設定部111は、オペレータからの操作に基づいて、目的関数ΔPを設定する。前述したように本実施形態では、熱効率ΔP1、珪石煉瓦温度ΔP2、CO
2排出量ΔP3、COGトータル流量ΔP4、排ガス平均温度ΔP5、及び投入熱量ΔP6が目的関数ΔPであることが目的関数設定部111により設定される。
【0080】
次に、ステップS2において、制約条件設定部112は、オペレータからの操作に基づいて、目標値を設定する際の制約条件を設定する。前述したように本実施形態では、(8)〜(10)式の制約条件が制約条件設定部112により設定される。
次に、ステップS3において、個体生成部113aは、N個の個体が入る2つの集合(現世代、次世代)を設定する。
次に、ステップS4において、個体生成部113aは、ステップS3で設定した現世代にN個の個体をランダムに生成する。
このように本実施形態では、例えば、ステップS4の処理を行うことにより個体生成手段の一例が実現される。
【0081】
次に、ステップS5において、目標値変換部113bは、ステップS4で生成されたN個の個体を目標値パターンに変換する。前述したように、目標値変換部113bは、(11)式〜(18)式により算出されたU11、U12、T11、U21、U22、T21、U32、T31を用いて、N個の個体を目標値パターンに変換する。尚、目標値パターンは、
図4に示したようなものである。
このように本実施形態では、例えば、ステップS5の処理を行うことにより目標値変換手段の一例が実現される。
【0082】
次に、ステップS6において、シミュレーション指示部113cは、プロセスシミュレータ150に対して、コンピュータシミュレーションを行うことを指示する。これにより、プロセスシミュレータ150は、コンピュータシミュレーションを行い、その結果として、熱風炉の物理モデル152から得られる"熱効率ΔP1、珪石煉瓦温度ΔP2、CO
2排出量ΔP3、COGトータル流量ΔP4、排ガス平均温度ΔP5、及び投入熱量ΔP6"と、それらを求めるのに使用した変数(P10、P11、P20、P21、P30、P31、P40、P41、P50、P51、P60、P61)とを出力する。
このように本実施形態では、例えば、ステップS6の処理を行うことによりシミュレーション手段の一例が実現される。
【0083】
次に、ステップS7において、シミュレーション結果取得部113dは、プロセスシミュレータ150から前述した情報を取得するまで待機する。そして、プロセスシミュレータ150から前述した情報を取得するとステップS8に進む。
このように本実施形態では、例えば、ステップS7の処理を行うことによりシミュレーション結果取得手段の一例が実現される。
ステップS8に進むと、シミュレーション結果取得部113dは、ステップS7でプロセスシミュレータ150から取得した"熱効率ΔP1、珪石煉瓦温度ΔP2、CO
2排出量ΔP3、COGトータル流量ΔP4、排ガス平均温度ΔP5、及び投入熱量ΔP6"を評価量として適応度を導出する。
このように本実施形態では、例えば、ステップS8の処理を行うことにより適応度導出手段の一例が実現される。
【0084】
次に、ステップS9において、制約条件判定部113fは、ステップS7でシミュレーション結果取得部113dが取得した "珪石煉瓦温度ΔP2と、目標値を変更した後の珪石煉瓦の最低温度P21と、目標値を変更した後のCOGのトータル流量P41"が、ステップS2で制約条件設定部112により設定された制約条件((8)式〜(10)式)を満足するか否かを判定する。この判定の結果、制約条件を満足する場合には、後述するステップS11に進む。
一方、制約条件を満足しない場合には、ステップS10に進む。ステップS10に進むと、適応度決定部113gは、ステップS8で適応度導出部113eにより導出された適応度をキャンセルし、適応度として最
低値を設定する。そして、ステップS11に進む。
【0085】
そして、ステップS11に進むと、パレート最適解求解部113hは、ステップS4で個体生成部113aにより生成された個体について、交叉、突然変異、コピーの何れかを、或る確率で行い、その結果を次世代に保存する。
次に、ステップS12において、パレート最適解求解部113hは、次世代の個体の数がN個になったか否かを判定する。この判定の結果、次世代の個体の数がN個になっていない場合にはステップS11に戻り、次世代の個体の数がN個になるまで、ステップS11、S12を繰り返し行う。
そして、次世代の個体の数がN個になると、ステップS13に進む。ステップS13に進むと、パレート最適解求解部113hは、現世代の個体を削除すると共に、次世代の全ての個体を現世代に移す。
【0086】
次に、ステップS14において、パレート最適解求解部113hは、ステップS5〜S13の処理を最大世代数Gまで行ったか否かを判定する。この判定の結果、ステップS5〜S13の処理を最大世代数Gまで行っていない場合には、ステップS5に戻り、ステップS5〜S13の処理を最大世代数Gまで行うまでステップS5〜S13の処理を繰り返し行う。そして、ステップS5〜S13の処理が最大世代数Gまで行われると、ステップS15に進む。
【0087】
ステップS15に進むと、パレート最適解求解部113hは、最終的に現世代に含まれている個体のうち、適応度が最も高い(複数の)個体の評価量(ΔP1、ΔP2、ΔP3、ΔP4、ΔP5、ΔP6)をパレート最適解として採用する。そして、パレート最適解求解部113hは、その個体の評価量(パレート最適解)と、その個体に対応する目標値パターンとをパレート最適解記憶部114に出力する。これにより、パレート最適解求解部113hから出力された"個体の評価量(ΔP1、ΔP2、ΔP3、ΔP4、ΔP5、ΔP6)と、その個体に対する目標値パターン"とが相互に関連付けられてパレート最適解記憶部114に記憶される。
このように本実施形態では、例えば、ステップS15の処理を行うことにより、パレート最適解求解手段、パレート最適解記憶手段の一例が実現される。また、例えば、
図8のフローチャートを実行することによりパレート最適解導出手段の一例が実現される。
【0088】
<目標値変更処理>
次に、
図9のフローチャートを参照しながら、熱風炉400の操業条件が変更した場合に、目標値パターンを変更する目標値変更処理を行う際の目標値最適化装置110の動作の一例を説明する。
まず、ステップS21において、操業条件変更判定部117は、熱風炉400の操業条件が変更されたか否かを判定する。前述したように本実施形態では、操業方針取得部115により取得された操業方針と、プラント状態・評価量取得部116により取得された熱風炉400の状態量の値との少なくとも何れか一方が変更されると、熱風炉400の操業条件が変更されたと判定される。
このように本実施形態では、例えば、ステップS21の処理を行うことにより操業条件変更判定手段の一例が実現される。
【0089】
次に、ステップS22において、パレート最適解候補表示部118は、最適パレート解記憶部114に記憶されている複数のパレート最適解Z1〜Z7(すなわち目標値)をオペレータに選択させるためのGUI70をディスプレイに表示する(
図7を参照)。
このように本実施形態では、例えば、ステップS22の処理を行うことによりパレート最適解候補表示手段の一例が実現される。
次に、ステップS23において、パレート最適解取得判定部119は、オペレータによって変更後のパレート最適解が選択されたか否かを判定する。前述したように、本実施形態では、オペレータによって手動ボタン72が押された場合には、オペレータによって変更後のパレート最適解が選択されたと判定する。一方、オペレータによって自動ボタン73が押された場合には、オペレータによって変更後のパレート最適解が選択されなかったと判定する。
【0090】
この判定の結果、オペレータによって変更後のパレート最適解が選択された場合には、後述するステップS27に進む。
一方、オペレータによって変更後のパレート最適解が選択されなかった場合には、パレート最適解を自動的に選択するのでステップS24に進む。ステップS24に進むと、重み係数導出部120は、変更された操業条件に基づいて重みベクトルW(重み係数)を導出する。
このように本実施形態では、例えば、ステップS24の処理を行うことにより重み係数導出手段の一例が実現される。
【0091】
次に、ステップS25において、評価関数導出部121は、ステップS24で重み係数導出部120により導出された重みベクトルWと、
図8のステップS15の処理でパレート最適解記憶部114に記憶されたパレート最適解Z1〜Z7の値(ΔP1〜ΔP6の値)とを用いて、重みベクトル(重み係数)W1〜W6
による評価量の
加重和を求める。具体的に説明すると、評価関数導出部121は、(21)式により評価関数Qを導出する。
このように本実施形態では、例えば、ステップS25の処理を行うことにより
加重和導出手段の一例が実現される。
【0092】
次に、ステップS26において、パレート最適解選択部122は、操業条件が変更された後の重みベクトル(重み係数)
による評価量の
加重和が最小になるパレート最適解を選択する。具体的に説明すると、パレート最適解選択部122は、ステップS25で評価関数導出部121により導出された7個の評価関数Qのうち、最小の評価関数Qを選択し、当該評価関数Qに対応するパレート最適解を選択する。
以上のように本実施形態では、例えば、ステップS23、S26の処理を行うことによりパレート最適解選択手段の一例が実現される。
【0093】
以上のようにしてパレート最適解が選択されると、ステップS27に進む。ステップS27に進むと、目標値変更部123は、ステップS23で選択されたと判定されたパレート最適解、又はステップS26で選択されたパレート最適解に対応する目標値パターンをパレート最適解記憶部114から読み出し、目標値記憶部124に記憶されている目標値パターンを、読み出した目標値パターンに書き換える。
次に、ステップS28において、目標値出力部125は、ステップS27で目標値変更部123により書き換えられた(更新された)目標値パターンを制御器300に出力する。
このように本実施形態では、例えば、ステップS28の処理を行うことにより目標値出力手段の一例が実現される。
【0094】
以上のように本実施形態では、熱風炉400の性能を評価する指標である複数の評価量を目的関数ΔPとし、その目的関数ΔPに対する多目的最適化問題を多目的GAにより解き、複数のパレート最適解をオフラインで予め求めて記憶しておく。その後、操業条件の変更に応じて、記憶しておいた複数のパレート最適解の何れか
を選択し、
選択したパレート最適解に対応する目標値パターンを制御器300に設定する。したがって、操業条件が変更された場合でも最適化計算をやり直さずに可及的に適切な目標値を制御器300に設定することができる。
【0095】
また、本実施形態では、操業条件が変更されると、パレート最適解をオペレータに
選択させるためのGUI70を表示し、オペレータは、このGUI70を参照・操作して、複数のパレート最適解の何れかを選択する。このGUI70には、操業条件の変更内容と、パレート最適解(の名称)Z1〜Z7と、そのパレート最適解Z1〜Z7の値を定める評価量ΔP1〜ΔP6と、その評価量ΔP1〜ΔP6の優劣とが表示される。したがって、操業条件の変更に対してオペレータが起こすべきアクションの指針をオペレータに示すことができる。すなわち、オペレータは、パレート最適解を
選択することによって評価量ΔP1〜ΔP6がどのように変更されるのかを知ることができ、それに応じて可及的に適切なパレート最適解を選択することができる。
【0096】
また、本実施形態では、オペレータによって、パレート最適解を自動的に選択することが指定されると、変更された操業条件に対応する重みベクトル(重み係数)を求め、求めた重みベクトル(重み係数)
による評価量の
加重和が最小となるパレート最適解を複数のパレート最適解の中から選択し、選択したパレート最適解に対応する目標値パターンを制御器300に設定する。したがって、可及的に適切な目標値を自動的に制御器300に設定することができる。
【0097】
(第1の変形例)
制約条件記憶部112に記憶された制約条件によって、パレート最適解選択部122は、
図10に示すようにしてパレート最適解を自動的に選択することができる。
図10は、パレート最適解を自動的に選択する方法の変形例を概念的に説明する図である。ここでは、制約条件が、以下の(22)式であったとする。
ΔP2≦T
0 ・・・(22)
この場合、パレート最適解選択部122は、パレート最適解記憶部114に記憶されている全てのパレート最適解Z1〜Z7ではなく、(22)式を満たすパレート最適解Z1〜Z4の中から、最も適切なパレート最適解を選択する。この場合、パレート最適解Z5〜Z7については、重みベクトルWや評価関数Qを求めないようにすることができる。したがって、パレート最適解を自動的に選択する際の処理を、より簡略化することができる。
【0098】
(第2の変形例)
パレート最適解記憶部114に記憶した複数のパレート最適解を一定周期で更新するようにしてもよい。
操業条件や外乱によって、評価量ΔP1〜ΔP6の基準値P10、P20、P30、P40、P50、P60((2)式〜(7)式を参照)や、目標値U1、U2、U3の基準値U10、U20、U30が変動する。これにより、目標値U1、U2、U3の調整可能範囲(U1min〜U1max、U2min〜U2max、U3min〜U3max)や、制約条件の範囲や、目標値U1、U2、U3(制御量)の変動に対する評価量ΔP1〜ΔP6の変動の感度が変わる。したがって、目標値パターンが変更され、この目標値パターンの変更により、プロセスシミュレータ150によるシミュレーションの結果が変わり、更に適応度も変化する。よって、最終的に求まるパレート最適解も変更される。したがって、操業条件や外乱の変動に対応して、より適切なパレート最適解を選択することが可能になる。
【0099】
(第3の変形例)
複数のパレート最適解を求めるための手法は多目的GAに限定されるものではない。例えば、多目的GAの代わりに、NSGA−IIやNCGA等の種々のアルゴリズムを用いて複数のパレート最適解を求めることができる。また、複数のパレート最適解を求める時間を十分に確保することが出来る場合には、次のようにしてもよい。すなわち、複数の目的関数に対して重み係数法を適用して複数の目的関数を単一の目的関数に変換し、重み係数を変えながら山登り法等の単一目的最適化手法を用いて複数のパレート最適解を求めるようにしてもよい。
【0100】
(第4の変形例)
本実施形態では、複数のパレート最適解の何れかを、オペレータが手動で選択する場合と、情報処理装置100が自動的に選択する場合との双方を行い得る場合を示したが、これらのうち、何れか一方のみを行うようにしてもよい。
【0101】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、制御対象のプラントが熱風炉である場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、制御対象のプラントが熱間圧延設備である場合を例に挙げて説明する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、制御対象のプラントが異なることによる構成及び処理が異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、
図1〜
図10に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0102】
まず、本実施形態の制御対象である熱間圧延設備1100の概略構成について説明する。
図11は、熱間圧延設備1100の概略構成の一例を示す図である。
図11において、熱間圧延設備1100は、加熱炉1101と、粗圧延機1102と、仕上圧延入側温度計1103と、仕上圧延機1104と、スタンド間スプレー1105a〜1105fと、仕上圧延出側温度計1106と、ランアウトテーブル1107と、ストリップシャー1108と、コイル巻取装置1109と、を有している。
【0103】
加熱炉1101は、図示していない圧延鋼板製造ラインから搬送されたスラブ1110を所定の温度に加熱する。
粗圧延機1102は、加熱炉1101により加熱され、熱間圧延ラインに供給されたスラブ1110を粗圧延する。
【0104】
仕上圧延入側温度計1103は、仕上圧延機1104の手前まで搬送された被圧延材の温度を計測する
。
仕上圧延機1104は、被圧延材を連続的に仕上げ圧延する。本実施形態では、7台の圧延スタンドF1〜F7を用いて仕上圧延機1104が構成される場合を例に挙げて説明する。
スタンド間スプレー1105a〜1105fは、圧延スタンドF1〜F7の間に配設され、仕上げ圧延している被圧延材に冷却水を噴射する。
【0105】
仕上圧延出側温度計1106は、仕上圧延機1104により仕上げ圧延された被圧延材の温度を計測する。
ランアウトテーブル1107は、仕上圧延機110
4により仕上げ圧延された被圧延材を冷却する。
コイル巻取装置1109は、一般にコイラーと称されるものであり、ランアウトテーブル1107により冷却された被圧延材を巻き取る機能を有している。尚、
図11に示す例では、被圧延材を、2台のコイル巻取装置1109a、1109bによって交互に巻き取るようにしている。
【0106】
ストリップシャー1108は、コイル巻取装置1109に所定の長さの被圧延材が巻き取られたときに、被圧延材を切断する機能を有している。
尚、熱間圧延設備は、
図11に示すものに限定されない。例えば、粗圧延機1102と仕上圧延入側温度計1103との間に、被圧延材の表面に形成されたスケールを除去するデスケーリング装置が備わっていてもよい。また、被圧延材の板厚を計測する板厚計が、圧延スタンドF1〜F7の入側・出側等に備わっていてもよい。
【0107】
本実施形態のプロセス制御システムの構成は、
図1に示すプロセス制御システム10の熱風炉400を熱間圧延設備1100としたものになる。
本実施形態では、以上のような熱間圧延設備1100を制御対象とし、隣り合う圧延スタンドF1〜F7の"ロールギャップの差ΔGap
jの標準偏差σ(ΔGap
j)と、圧延荷重の差ΔLoad
jの標準偏差σ(ΔLoad
j)"を制御量とする場合を例に挙げて説明する。したがって、本実施形態では、制御器300は、隣り合う圧延スタンドF1〜F7の"ロールギャップの差ΔGap
jの標準偏差σ(ΔGap
j)と、圧延荷重の差ΔLoad
jの標準偏差σ(ΔLoad
j)"の演算値(又は実測値)が目標値になるように熱間圧延設備1100を制御する。
ここで、本実施形態では、添字の値が「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」、「7」であることは、それぞれ、圧延スタンドが「F1」、「F2」、「F3」、「F4」、「F5」、「F6」、「F7」であることを表す。
【0108】
制御器300は、熱間圧延設備1100における操業実績のデータを実績データベース200に記憶させる。本実施形態では、実績データベース200は、例えば、直近の5日分の操業実績のデータを1[sec]毎に記憶するようにしている。
操業実績のデータには、例えば、熱間圧延設備1100を操業することにより熱間圧延設備1100に設置された各種の測定器より出力される出力値(操業実績値)と、その出力値が得られたときの熱間圧延設備1100に対する入力値及び目標値とが含まれる。
【0109】
図12は、情報処理装置1200の機能的な構成の一例を示す図である。本実施形態の情報処理装置1200は、多目的GA(遺伝的アルゴリズム)を用いて、各圧延スタンドF1〜F6の出側の板厚h
1〜h
6を設計変数として多目的最適化問題を解き、その結果から複数のパレート最適解(評価量)を予め求め、その後、操業条件が変更されると、複数のパレート最適解の中から、変更された操業条件に合うパレート最適解を1つ選択し、選択したパレート最適解を目標値として制御器300に出力する。
【0110】
ここで、操業条件には、熱間圧延設備1100の状態量と、熱間圧延設備1100の操業方針とが含まれる。熱間圧延設備1100の状態量とは、熱間圧延設備1100を操業することにより、直接的に又は間接的に時々刻々と測定される量(例えば温度や圧延荷重)である。一方、熱間圧延設備1100の操業方針は、生産計画や生産管理に基づいてオペレータが決めるものである。
【0111】
<目標値最適化装置1210、プロセスシミュレータ1250の構成>
(目的関数設定部1211)
目的関数設定部1211は、オペレータからの操作に基づいて目的関数を設定する。本実施形態では、熱間圧延設備1100の性能を評価する指標である複数の評価量を目的関数としている。具体的に本実施形態では、目的関数を以下の(23)式、(24)式のようにした場合を例に挙げて説明する。
σ(ΔGap
j)→Min ・・・(23)式
σ(ΔLoad
j)→Min ・・・(24)式
【0112】
(23)式及び(24)式において、jは、圧延スタンドを特定するためのものである。本実施形態では、7スタンドによるタンデム圧延を行うので(圧延スタンドの数が7であるので)、jは、以下の(25)式のように表される。
j=2,3,・・・,7 ・・・(25)
(23)式及び(24)式において、「→Min」は、その左にある値の最小値が最適値であることを表す。
(23)式及び(24)式において、σ(X)は、X(ここでは「ΔGap
j」、「ΔLoad
j」)の標準偏差を表す。
【0113】
(23)式において、ΔGap
jは、隣り合う圧延スタンドF1〜F7のロールギャップ[mm]の差である。ΔGap
jは、具体的に以下の(26)式で表される。
ΔGap
j=Gap
j−Gap
j-1 ・・・(26)
また、(24)式において、ΔLoad
jは、隣り合う圧延スタンドF1〜F7の圧延荷重[N]の差である。ΔLoad
jは、具体的に以下の(27)式で表される。
ΔLoad
j=Load
j−Load
j-1 ・・・(27)
目的関数設定部1211は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD(ハードディスク)等を用いることにより実現できる。
【0114】
(制約条件設定部1212)
制約条件設定部1212は、オペレータからの操作に基づいて、目標値を設定する際の制約条件を設定する。本実施形態では、以下の(28)式、(29)式の制約条件が制約条件設定部1212により設定される。
ΔGap
j<0 ・・・(28)
ΔLoad
j<0 ・・・(29)
制約条件設定部1212は、例えば、情報処理装置1200に設けられているHD等を用いることにより実現できる。
【0115】
(パレート最適解導出部1213)
パレート最適解導出部1213は、多目的GAを適用して、目的関数設定部1211により設定された目的関数に対する多目的最適化問題を解いて複数のパレート最適解を導出する。以下にパレート最適解導出部1213が有する機能を説明する。尚、パレート最適解導出部1213は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、HD、インターフェース等を用いることにより実現される。
【0116】
個体生成部1213aは、N個の個体が入る2つの集合(現世代、次世代)を設定し、現世代にN個の個体をランダムに生成する。
図13は、個体1300の構成の一例を示す図である。
図13において、個体1300は、例えば32bitの情報であり、設計変数である圧延スタンドF1〜F6の出側の板厚h
1〜h
6の情報が含まれている。
【0117】
シミュレーション指示部1213bは、プロセスシミュレータ1250に対し、個体1300の情報を渡して、プロセスシミュレーションを行うことを指示する。
図12に示すようにプロセスシミュレータ1250は、制御器300をモデル化した制御器モデル1251と、熱間圧延設備1100の構成をモデル化した
熱間圧延設備の物理モデル1
252と、減算器500をモデル化した減算器モデル1
253とが含まれており、現実のプロセス制御系をソフトウェアでシミュレーション(コンピュータシミュレーション)するものである。
【0118】
プロセスシミュレータ1250は、まず、加熱炉1101の出側の被圧延材の温度[℃]の実績値を取得する。尚、このようにして実績値を取得する代わりに、加熱炉1101の出側の被圧延材の温度を、伝熱モデルにより計算してもよい。
次に、プロセスシミュレータ1250は、粗圧延機1102の出側の被圧延材の温度[℃]の予測値を算出する。例えば、加熱炉1101の出側の被圧延材の温度に、予め設定されている温度降下係数を掛けることにより、粗圧延機1102の出側の被圧延材の温度の予測値を算出することができる。
【0119】
次に、プロセスシミュレータ1250は、各圧延スタンドF1〜F7における圧延温度T
i[℃]を算出する。例えば、以下の(30)式により、各圧延スタンドF2〜F7における圧延温度T
j(j=2,3,4,5,6,7)を算出することができる。
【0121】
(30)式において、T
1は、圧延スタンドF1における圧延温度であり、前述した粗圧延機1102の出側の被圧延材の温度の予測値となる。T
Fは、仕上圧延温度の目標値であり、予め設定されているものである。nは、圧延スタンドの数であり、本実施形態では「7」になる。
【0122】
次に、プロセスシミュレータ1250は、各圧延スタンドF1〜F7における圧延荷重[N](の予測値)Load
iを算出する(i=1,2,3,4,5,6,7)。例えば、以下の(31)式〜(33)式により、各圧延スタンドF1〜F7における圧延荷重Load
iを算出することができる。
【0124】
(31)式において、bは被圧延材の板幅[mm]である。(31)〜(33)式において、h
iは、圧延スタンド
Fiの出側の被圧延材の板厚[mm]である。圧延スタンド
Fiの出側の被圧延材の板厚h
iは、シミュレーション指示部1213bから渡される個体1300の情報に含まれる情報である。H
iは、圧延スタンドF
iの入側の被圧延材の板厚[mm]であり、圧延スタンドF
i-1の出側の被圧延材の板厚h
i-1と同じ値になる。また、(31)式において、k
Pmiは、圧延スタンド
Fiにおける平均変形抵抗[kg/mm
2]であり、例えば、以下の(34)式で表される。
【0126】
(34)式において、a
0、a
1、a
2、a
3、a
4、a
5、m、nは、鋼種毎に定められる定数[−]である。また、cは、炭素含有%[−]であり定数である。また、εは対数歪[−]であり、ε´は平均歪速度[1/sec]である。また、T
iは、前述したようにして得られた各圧延スタンドF1〜F7における圧延温度T
i[℃]である。
また、(32)式、(33)式におけるR´
iは、偏平ロール半径[mm]であり、例えば、以下の(35)式で表される。
【0128】
(35)式において、Rは、ロール半径[mm]である。(35)式には、Load
iが含まれる。よって、各圧延スタンドF1〜F7における圧延荷重Load
iを計算するためには、各圧延スタンドF1〜F7における圧延荷重Load
iと偏平ロール半径R´
iとを未知数とする2次元連立方程式を解く必要がある。尚、以上のようにして各圧延スタンドF1〜F7における圧延荷重Load
iを算出する方法は、非特許文献2に記載されているので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0129】
以上のようにして各圧延スタンドF1〜F7における圧延荷重Load
iを算出すると、プロセスシミュレータ1250は、隣り合う圧延スタンドF1〜F7の圧延荷重の差ΔLoad
jを(27)式により算出する。尚、以下の説明では、「隣り合う圧延スタンドF1〜F7の圧延荷重の差ΔLoad
j」を必要に応じて「圧延荷重差ΔLoad
j」と称する。
そして、プロセスシミュレータ1250は、圧延荷重差ΔLoad
jの標準偏差σ(ΔLoad
j)を算出する。
【0130】
次に、プロセスシミュレータ1250は、各圧延スタンドF1〜F7におけるロールギャップ[mm](の予測値)Gap
iを算出する。例えば、以下の(36)式により、各圧延スタンドF1〜F7におけるロールギャップGap
iを算出することができる。
【0132】
(36)式において、h
Cは、仕上圧延後の被圧延材の板厚の目標値[mm]、すなわち、圧延スタンドF7の出側における被圧延材の板厚h
7である。また、Kは、ミル剛性係数[N/mm]であり、Gap
0は、基準となるロールギャップを0(ゼロ)として計算するためのロールギャップ零点補正項[mm]である。また、Q
iは、圧延スタンドF
iにおけるロールベンディング力[N]である。尚、以上のようにして各圧延スタンドF1〜F7におけるロールギャップGap
iを算出する方法も、非特許文献2に記載されている。
【0133】
以上のようにして各圧延スタンドF1〜F7におけるロールギャップGap
iを算出すると、プロセスシミュレータ1250は、隣り合う圧延スタンドF1〜F7のロールギャップの差ΔGap
jを(26)式により算出する。尚、以下の説明では、「隣り合う圧延スタンドF1〜F7のロールギャップの差ΔGap
j」を必要に応じて「ロールギャップ差ΔGap
j」と称する
。
そして、プロセスシミュレータ1250は、ロールギャップ差ΔGap
jの標準偏差σ(ΔGap
j)を算出する。
【0134】
以上のようにして、圧延荷重差の標準偏差σ(ΔLoad
j)と、ロールギャップ差標準偏差σ(ΔGap
j)を算出すると、プロセスシミュレータ1250は、圧延荷重差ΔLoad
j、圧延荷重差の標準偏差σ(ΔLoad
j)、ロールギャップ差ΔGap
j、及びロールギャップ差の標準偏差σ(ΔGap
j)を目標値最適化装置1210(シミュレーション結果取得部1213c)に出力する。
シミュレーション結果取得部1213cは、プロセスシミュレータ1250から、圧延荷重差ΔLoad
j、圧延荷重差の標準偏差σ(ΔLoad
j)、ロールギャップ差ΔGap
j、及びロールギャップ差の標準偏差σ(ΔGap
j)を評価量として取得する。
適応度導出部1213dは、シミュレーション結果取得部1213cで取得された"圧延荷重差の標準偏差σ(ΔLoad
j)と、ロールギャップ差の標準偏差σ(ΔGap
j)"から適応度を導出(算出)する。尚、適応度の導出は、多目的GAにおける公知の手法で行うことができるので、その詳細な説明を省略する。
【0135】
制約条件判定部1213eは、シミュレーション結果取得部1213cで取得された"圧延荷重差ΔLoad
jと、ロールギャップ差Δ
Gapj"が、制約条件設定部1212により設定された制約条件((28)式、(29)式)を満足するか否かを判定する。
適応度決定部1213fは、制約条件判定部1213eにより制約条件を満足していると判定された場合には、適応度導出部1213dで導出された適応度を選択する。一方、制約条件判定部1213eにより制約条件を満足してい
ないと判定された場合、適応度決定部1213fは、適応度導出部1213dで導出された適応度をキャンセルし、適応度として最低値を設定する。
【0136】
以上のミュレーション指示部1213b、シミュレーション結果取得部1213c、適応度導出部1213d、制約条件判定部1213e、及び適応度決定部1213fの処理は、個体生成部1213aで生成されたN個の個体のそれぞれについて個別に行われる。
パレート最適解求解部1213gは、個体生成部1213aで生成された個体について、交叉、突然変異、コピーの何れかを、或る確率で行い、その結果を次世代に保存する。そして、この処理により次世代の個体の数がN個になると、パレート最適解求解部1213gは、現世代の個体を削除すると共に、次世代の全ての個体を現世代に移す。
【0137】
そして、以上のシミュレーション指示部1213b、シミュレーション結果取得部1213c、適応度導出部1213
d、制約条件判定部1213
e、適応度決定部1213
f、及びパレート最適解求解部1213
gの動作を、最大世代数Gになるまで繰り返す。そして、パレート最適解求解部1213gは、最終的に現世代に含まれている個体のうち、適応度が最も高い(複数の)個体の評価量(圧延荷重差ΔLoad
j、圧延荷重差の標準偏差σ(ΔLoad
j)、ロールギャップ差ΔGap
j、ロールギャップ差の標準偏差σ(ΔGap
j))、及びそれらに対応する個体(h
1、h
2、h
3、h
4、h
5、h
6)を、パレート最適解記憶部1214に出力する。
尚、パレート最適解記憶部1214は、例えば、情報処理装置1200に設けられているHD等を用いることにより実現できる。
【0138】
(操業方針取得部1215)
操業方針取得部1215は、オペレータにより入力された操業方針に関する情報を入力する。
操業方針取得部1215は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD(ハードディスク)等を用いることにより実現できる。
【0139】
(プラント状態
・評価量取得部1216)
プラント状態
・評価量取得部1216は、熱間圧延設備1100の状態量(の実績値)を、熱間圧延設備1100に設けられている各種の測定器等から取得する。
前述したように、熱間圧延設備1100の状態量とは、熱間圧延設備1100を操業することにより、直接的に又は間接的に時々刻々と測定される量である。尚、熱間圧延設備1100の状態量は、操業条件変更判定部1217において、操業条件が変更されたか否かを判定するために使用される。
プラント状態
・評価量取得部1216は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD等を用いることにより実現できる。
(操業条件変更判定部1217)
操業条件変更判定部1217は、操業方針取得部1215により取得された操業方針と、プラント状態
・評価量取得部1216により取得された熱間圧延設備1100の状態量(の実績値)とに基づいて、操業方針及び熱間圧延設備1100の状態量の少なくとも何れか一方が変更されたか否かを判定することによって、熱間圧延設備1100の操業条件が変更されたか否かを判定する。本実施形態では、操業方針及び熱間圧延設備1100の状態量が、熱間圧延設備1100の操業条件に含まれる。したがって、操業方針及び熱間圧延設備1100の状態量の少なくとも何れか一方が変更されると、熱間圧延設備1100の操業条件が変更されたことになる。
操業条件変更判定部1217は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD等を用いることにより実現できる。
【0140】
(パレート最適解候補表示部1218)
パレート最適解候補表示部1218は、操業条件変更判定部1217により、熱間圧延設備1100の操業条件が変更されたと判定されると、最適パレート解記憶部1214に記憶されている複数のパレート最適解(すなわち目標値)をオペレータに選択させるためのGUIを情報処理装置1200に接続されているディスプレイ(例えば液晶ディスプレイ)に表示する。ここで表示されるGUIには、例えば、
図7に示したように、操業条件の変更内容と、パレート最適解(の名称)と、そのパレート最適解の値を定める評価量σ(ΔLoad
j)、σ(ΔGap
j)と、その評価量σ(ΔLoad
j)、σ(ΔGap
j)の優劣とが含まれる。また、
図7に示すGUIと同様に、ここで表示されるGUIでも、パレート最適解の何れか1つをユーザが手動で選択することと、情報処理装置1200が自動で選択することとの双方を行うことができるようにしている。
パレート最適解候補表示部1218は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、VRAM、及びHD等を用いることにより実現できる。
【0141】
(パレート最適解取得判定部1219)
パレート最適解取得判定部1219は、GUIに対するオペレータの操作によって、パレート最適解の選択を、手動及び自動の何れで行うことが指定されたのかを判定する。
パレート最適解取得判定部1219は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD(ハードディスク)等を用いることにより実現できる。
【0142】
(重み係数導出部1220)
重み係数導出部1220は、パレート最適解取得判定部1219により、パレート最適解の選択を自動で行うと判定されると、変更された操業条件の情報(操業方針取得部1215及びプラント状態・評価量取得部1216の少なくとも何れか一方から取得された情報)に基づいて、圧延荷重差の標準偏差σ(ΔLoad
j)と、ロールギャップ差の標準偏差σ(ΔGap
j)のそれぞれに対する重みベクトルW(重み係数)を算出する。重みベクトルWは、以下の(37)式で表される。
W=[W11,W12] ・・・(37)
W11は、圧延荷重差の標準偏差σ(ΔLoad
j)の重みベクトル(重み係数)であり、W12は、ロールギャップ差の標準偏差σ(ΔGap
j)の重みベクトル(重み係数)である。各重みベクトル(重み係数)W11、W12の値は0以上1以下の値となり、それらの総和は1になる。
重み係数導出部1220は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD等を用いることにより実現できる。
【0143】
(評価関数導出部1221)
評価関数導出部1221は、重み係数導出部1220で導出された重みベクトルWと、パレート最適解記憶部1214に記憶されている複数のパレート最適解の値(σ(ΔLoad
j)、σ(ΔGap
j)の値)とを用いて、以下の(38)式により評価関数Qをそれぞれ導出(算出)し、重みベクトル(重み係数)W11、W12
による評価量の
加重和を求める。このとき、評価関数導出部1221は、各評価量σ(ΔLoad
j)、σ(ΔGapj)が略同じ変動範囲を持つように、各評価量σ(ΔLoad
j)、σ(ΔGap
j)に対して正規化処理を行う。したがって、(38)式におけるσ(ΔLoad
j)、σ(ΔGap
j)は、正規化された評価量を示す。
【0145】
評価関数導出部1221は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD等を用いることにより実現できる。
(パレート最適解選択部1222)
パレート最適解選択部1222は、評価関数導出部1221により導出された複数の評価関数Qに基づいて、パレート最適解記憶部1214に記憶されている複数のパレート最適解(σ(ΔLoad
j)、σ(ΔGap
j))のうち、最も適切なパレート最適解(すなわち、操業条件が変更された後の重みベクトル(重み係数)
による評価量の
加重和が最小になるパレート最適解)を選択する。具体的に本実施形態では、パレート最適解選択部122
2は、評価関数導出部12
21により導出された複数の評価関数Qのうち、最小の評価関数Qを選択し、当該評価関数Qに対応するパレート最適解を選択する。
パレート最適解選択部1222は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD等を用いることにより実現できる。
【0146】
(目標値変更部1223、目標値記憶部1224)
目標値変更部1223は、パレート最適解取得判定部1219により、パレート最適解の選択を手動で行うと判定されると、パレート最適解候補表示部1218により表示されたGUIにてオペレータにより選択されたパレート最適解と、そのパレート最適解に対応する個体(h
1、h
2、h
3、h
4、h
5、h
6)をパレート最適解記憶部1214から読み出す。
一方、パレート最適解取得判定部1219により、パレート最適解の選択を自動で行うと判定されると、目標値変更部1223は、パレート最適解選択部1222により選択されたパレート最適解と、そのパレート最適解に対応する個体(h
1、h
2、h
3、h
4、h
5、h
6)をパレート最適解記憶部1214から読み出す。
そして、目標値変更部1223は、目標値記憶部1224に記憶されているパレート最適解と、そのパレート最適解に対応する個体(h
1、h
2、h
3、h
4、h
5、h
6)を、読み出した情報に書き換える。
目標値変更部1223は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、及びHD(ハードディスク)等を用いることにより実現できる。また、目標値記憶部1224は、例えば、情報処理装置1200に設けられているHD等を用いることにより実現できる。
【0147】
(目標値出力部1225)
目標値出力部1225は、目標値記憶部1224に記憶されているパレート最適解と、そのパレート最適解に対応する個体(h
1、h
2、h
3、h
4、h
5、h
6)が更新されると、更新されたパレート最適解と、そのパレート最適解に対応する個体(h
1、h
2、h
3、h
4、h
5、h
6)を目標値として制御器300に出力する。これにより、熱間圧延設備1100を制御する際の目標値が変更される。
目標値出力部1225は、例えば、情報処理装置1200に設けられているCPU、ROM、RAM、HD、インターフェース等を用いることにより実現できる。
以上のようにしても第1の実施形態で説明した効果を得ることができる。また、本実施形態においても第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0148】
尚、本実施形態では、圧延スタンド
Fiの出側の被圧延材の板厚h
iを設計変数とする場合を例に挙げて説明したが、以下の(39)式に示す配分係数α
iを設計変数として用いてもよい。
【0150】
(39)式において、h
Bは、粗圧延後の被圧延材の板厚[mm]であり、圧延スタンドF1の入側の板厚と同じ値になる。h
Cは、仕上圧延後の被圧延材の板厚の目標値[mm]であり、圧延スタンドF7の出側の板厚h
7と同じ値になる。
【0151】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。