(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伝熱促進粒子(51)は、前記熱輸送媒体の流れ方向(FL)に沿いやすい長手方向と、この長手方向と垂直な短手方向とを有することを特徴とする請求項1に記載の熱輸送媒体。
前記熱輸送媒体は、前記電気磁気的な場がない流れの中において前記流れ方向(FL)と垂直な方向に第1の熱伝導率(THC1)を示し、前記電気磁気的な場がある流れの中において前記流れ方向(FL)と垂直な方向に第2の熱伝導率(THC2)を示し、前記第1の熱伝導率は前記第2の熱伝導率より小さい(THC1<THC2)ことを特徴とする請求項2に記載の熱輸送媒体。
前記乱流発生粒子(52、252−652)は、少なくとも前記電気磁気的な場の中において異方形状をもち、前記電気磁気的な場の方向に配向されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱輸送媒体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら開示された発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0015】
(第1実施形態)
図1において、熱輸送装置1は、高温源の熱を低温源へ輸送する。熱輸送装置1は、高温源である熱源2から発生した熱を運搬し、低温源としての空気へ放熱する。熱輸送装置1は、熱源2の冷却装置として利用することができる。また、熱輸送装置1は、熱源2の熱によって空気を加熱する加熱装置として見ることもできる。例えば、熱源2は、車両に搭載された内燃機関、電動機などの発熱機器である。この場合、熱輸送装置1は、発熱機器を冷却するための冷却装置、または発熱機器の熱を利用する暖房装置を提供する。
【0016】
熱輸送装置1は、熱源2から熱を受ける受熱側の熱交換部3を備える。熱交換部3は、熱源2から熱を受け、熱を熱輸送媒体5に伝える。熱交換部3は、熱源2と熱輸送媒体5との間の熱交換を提供する。熱交換部3は、熱輸送装置1における受熱部を提供する。
【0017】
熱輸送装置1は、熱を空気に放熱する放熱側の熱交換部4を備える。熱交換部4は、熱輸送媒体5から熱を受け、熱を空気に伝える。熱交換部4は、熱輸送媒体5と空気との間の熱交換を提供する。熱交換部3は、熱輸送装置1における放熱部を提供する。
【0018】
熱交換部3と熱交換部4とは、熱輸送媒体5が流れる通路6の上に設けられている。通路6は、熱輸送媒体5を循環させるために環状に形成されている。通路6は、熱輸送媒体5が流れる流路を提供している。高温源から低温源への熱輸送のために、熱交換部3は熱交換部4より上流側に配置されている。
【0019】
通路6には、ポンプ7が設けられている。通路6内には、熱輸送媒体5が満たされている。ポンプ7は、通路6内において熱輸送媒体5が循環するように熱輸送媒体5を圧送する。
【0020】
熱輸送装置1は、後述する第2添加物を電気磁気的に捕捉するための電気磁気的な場を発生するフィールド発生器8、9を備える。フィールド発生器8、9は、磁場を発生する磁場発生器8、9である。磁場発生器8、9は、永久磁石、または電磁石によって提供される。磁場発生器8、9は、熱交換部3、4のそれぞれに設けられている。磁場発生器8、9は、熱交換部3、4内の熱輸送媒体5のための通路を横切って通過する磁界を発生する。よって、熱交換部3、4内に熱輸送媒体5が流れるとき、熱輸送媒体5は磁場の中におかれる。
【0021】
磁場発生器8、9が発生する磁場の方向MF1、MF2は、熱交換部3、4内における熱輸送媒体5の流れ方向FL1、FL2と交差する。図示の例においては、磁場発生器8、9が発生する磁場の方向MF1、MF2は、熱輸送媒体5の流れ方向FL1、FL2と直交する。
【0022】
磁場発生器8、9は、熱交換部3、4の上流側部分に偏って配置されている。このため、磁場発生器8、9は、熱交換部3、4の上流側部分にのみ第2添加物を捕捉するための磁場を供給する。後述するように磁場によって第1添加物の配向が乱される。第1添加物の配向の乱れは、所定距離にわたって熱輸送媒体5が流れる間は持続される。この実施形態では、磁場発生器8、9は、熱交換部3、4の全体において第1添加物の配向の乱れが持続されるように配置されている。磁場発生器8、9は、熱交換部3、4の全体に磁場を供給するように配置されてもよい。
【0023】
図2は、通路6および熱交換部3、4の中における熱輸送媒体5の状態をモデル化して示している。図中において、第1添加物51および第2添加物52の微粒子は、拡大され、モデル化して示されている。図中には、通路6内における熱輸送媒体5の第1のモデルと、熱交換部3、4内における熱輸送媒体5の第2のモデルとが図示されている。
【0024】
熱輸送媒体5は、流体である主媒体50を含む。主媒体50は、例えば、水またはエチレングリコール液である。熱輸送媒体5は、第1添加物51を含む。熱輸送媒体5は、第2添加物52を含む。熱輸送媒体5は、他の追加的な添加物を含むことができる。例えば、第1添加物51および第2添加物52を分散させるための分散剤などの他の追加的な添加物が熱輸送媒体5に添加されている。
【0025】
第1添加物51は、熱輸送媒体5の熱伝導率を高めるために主媒体50に混合、添加されている。第1添加物51は、主媒体50の中に分散することができる複数の微粒子である。第1添加物51は、主媒体とともに流れることができる。第1添加物51は、長手方向と短手方向とを見出すことができる異方形状の微粒子である。第1添加物51は、熱輸送媒体5の流れによる流体的な力を受けて、その長手方向の指向方向が変化するような大きさと形状とをもつ微粒子である。第1添加物51は、熱輸送媒体5の流れ方向FLに沿いやすい長手方向と、この長手方向と垂直な短手方向とを有する。
【0026】
第1添加物51は、磁場または電場によって捕捉される性質を付与されていない。
【0027】
第1添加物51は、主媒体50より高い熱伝導率を示す材料により作られている。第1添加物51は、第1添加物51の方向に応じて異なる熱伝導率を熱輸送媒体5に与える。すなわち、熱輸送媒体5は、第1添加物51の形状により規定される方向(長手方向および短手方向)に応じて異なる熱伝導率を示す。第1添加物51の微粒子の短手方向における熱輸送媒体5の熱伝導率THC1は、第1添加物51の微粒子の長手方向における熱輸送媒体5の熱伝導率THC2より低い(THC1<THC2)。第1添加物51は、伝熱改善粒子とも呼ぶことができる。第1添加物51は、形状的な異方性を有し、主媒体50より高い熱伝導率を有する異方形状の伝熱促進粒子とも呼ぶことができる。
【0028】
第1添加物51は、熱輸送媒体5の流れの中において流れ方向FLに沿うように配向され、乱流の中において配向が乱される微粒子である。すなわち、第1添加物51は、形状異方性を有するために、熱輸送媒体5の流れの中において、その長手方向と流れ方向FLとが平行になりやすい。熱輸送媒体5の安定的な平行流の中においては、第1添加物51の複数の微粒子の長手方向は、流れ方向FLと平行に揃う。このため、第1添加物51の複数の微粒子は、流れ方向FLに沿って配向される。
【0029】
その一方で、第1添加物51は、乱流にも沿って流れる。乱流の中においては、第1添加物51の複数の微粒子の長手方向が揃わない。乱流の中においては、第1添加物51の複数の微粒子の長手方向はランダムな方向を指向する。
【0030】
この実施形態では、第1添加物51は、カーボンナノチューブである。カーボンナノチューブは、その径方向の寸法に比べて、十分に長い軸方向長さを有する。よって、顕著な形状異方性を有する。カーボンナノチューブが添加された熱輸送媒体5は、カーボンナノチューブの長手方向、すなわち軸方向に沿って高い熱伝導率を示す。
【0031】
第2添加物52は、第1添加物51の配向を制御するために主媒体50に混合、添加されている。第2添加物52は、主媒体50の中に分散することができる複数の微粒子である。第2添加物52は、主媒体に混合され主媒体とともに流れることができる。第2添加物52は、長手方向と短手方向とを見出すことができる異方形状の微粒子である。第2添加物52は、熱輸送媒体5の流れによる流体的な力を受けて、その長手方向の指向方向が変化するような大きさと形状とをもつ微粒子である。第2添加物52は、熱輸送媒体5の流れの中において、微視的な乱流を発生させることができる大きさと形状とをもつ微粒子である。
【0032】
第2添加物52は、電気磁気的な場によって遠隔的に、その運動量と姿勢とを制御可能な微粒子である。第2添加物52は、電気磁気的な場によって遠隔的に捕捉される性質を有する。電気磁気的な場によって捕捉された第2添加物52は、熱輸送媒体5の全体の流れに抗して減速される。言い換えると、第2添加物52は、熱輸送媒体5の流れの中で減速されるほどの力を電気磁気的な場によって受けるような電気磁気的な性質を有する。
【0033】
第2添加物52は、主媒体50より高い熱伝導率を示す材料により作られている。第2添加物52は、第2添加物52の方向に応じて異なる熱伝導率を熱輸送媒体5に与える。すなわち、熱輸送媒体5は、第2添加物52の形状により規定される方向(長手方向および短手方向)に応じて異なる熱伝導率を示す。ただし、第2添加物52の熱伝導率は、第1添加物51の熱伝導率より低い。このため、第2添加物52の方向に依存した熱輸送媒体5の熱伝導率の差は比較的小さい。
【0034】
第2添加物52は、熱輸送媒体5の流れの中において流れ方向FLに沿うように配向される微粒子である。すなわち、第2添加物52の微粒子は、形状異方性を有するために、熱輸送媒体5の流れの中において、その長手方向と流れ方向FLとが平行になりやすい。熱輸送媒体5の安定的な平行流の中においては、第2添加物52の複数の微粒子の長手方向は、流れ方向FLと平行に揃う。このため、第2添加物52の複数の微粒子は、流れ方向FLに沿って配向される。
【0035】
電気磁気的な場によって捕捉され、減速された第2添加物52の微粒子は、その周囲に微視的な乱流を発生させる。乱流は、第2添加物52の微粒子のまわりを回り込むように流れる。乱流は、第1添加物51を巻き込み、第1添加物51の長手方向をランダムに指向させるような大きさと強さとをもつ。第2添加物52は、電気磁気的な場に遠隔的に捕捉されて減速され、熱輸送媒体5の流れの中に微視的な乱流を発生させることができる乱流発生粒子とも呼ぶことができる。
【0036】
第2添加物52は、電気磁気的な場によって捕捉され、フィールド発生器8、9へ向けて吸引される。熱輸送媒体5の流速は十分に速いから、第2添加物52は堆積することなく押し流される。第2添加物52の粒子が吸引される過程においても、第2添加物52はその周囲に乱流を発生する。
【0037】
第2添加物52は、少なくとも電気磁気的な場の中において異方形状をもち、電気磁気的な場の方向に配向される粒子である。磁場発生器8、9(フィールド発生器)が供給する電気磁気的な場の方向は、第2添加物52の長手方向を熱輸送媒体5の流れ方向FLと直交するように配向するように設定されている。第2添加物52の形状的な方向を制御することができる。しかも、第2添加物52の長手方向を流れ方向と直交させることができる。この結果、乱流の発生効果が高められる。
【0038】
この実施形態では、第2添加物52は、磁場に捕捉される磁性体の微粒子である。第2添加物52は、強磁性体、例えば鉄、ニッケルなどを主成分とする合金の微粒子である。第2添加物52は、着磁されていない。第2添加物52は、わずかに着磁されていてもよい。
【0039】
さらに、第2添加物52は、少なくとも磁場の中において磁化される。第2添加物52は、その細長い形状に起因して、その長手方向に磁化されやすい。言い換えると、第2添加物52は、磁場の中において形状磁気異方性を発揮する。磁場の中では、第2添加物52の長手方向の両端にN極とS極とが現れる。第2添加物52は、磁場の方向に沿うように、回転モーメントを発生する。この結果、第2添加物52は、磁場の方向に沿って配向される。磁場MFは、流れ方向FLと直交するから、第2添加物52は流れ方向FLと直交するように配向される。熱輸送媒体5の全体の流れ方向FLと直交する方向へ配向された第2添加物52は、広い範囲にわたって乱流を発生する。
【0040】
第2添加物52の微粒子は、棒状、針状、または繊維状と呼びうる形状を有する。第2添加物52の微粒子は、その径方向の寸法に比べて十分に長い軸方向長さを有する。よって、第2添加物52の微粒子は、顕著な形状異方性を有する。
【0041】
図3は、熱輸送媒体5の通路6内における挙動を示す。
図4は、熱輸送媒体5の熱交換部3、4内における挙動を示す。
【0042】
通路6の部分においては、第1添加物51と第2添加物52とは、その形状異方性と、熱輸送媒体5の流れとによって、流体的な力だけを受ける。この結果、第1添加物51の長手方向は、流れ方向FLと平行に配向される。第2添加物52の長手方向も、流れ方向FLと平行に配向される。通路6の部分においては、主媒体50の流速V0と、第1添加物51の流速V1と、第2添加物52の流速V2とは、等しい(V0=V1=V2)。
【0043】
通路6の部分においては、熱輸送媒体5は、流れ方向FLと直交する方向に関して、熱伝導率THC1を示す。通路6の部分においては、第1添加物51の長手方向は、流れ方向FLとほぼ平行である。よって、第1添加物51に起因する熱伝導率の向上は小さい。この結果、流れ方向FLと直交する方向における熱輸送媒体5の熱伝導率THC1は低い値である。
【0044】
熱交換部3、4においては、磁場発生器8、9によって磁場MFが与えられる。熱交換部3、4においては、第2添加物52が磁場MFによって捕捉され、減速される。このとき、第2添加物52だけが減速されるから、第2添加物52の周囲には乱流VXが発生する。第1添加物51は、乱流VXに沿って流れるときに、流れ方向FLと異なる方向へ向けられる。この結果、磁場MFの中においては第1添加物51の長手方向はランダムに指向する。さらに、磁場MFの下流であって、第1添加物51が流体的な力によって再び流れ方向FLに配向されるまでの領域においては第1添加物51の長手方向はランダムに指向する。
【0045】
熱交換部3、4においては、第2添加物52の流速V2が磁場によって減速される。この結果、主媒体50の流速V0と、第1添加物51の流速V1は、第2添加物52の流速V2より速くなる(V0=V1>V2)。
【0046】
熱交換部3、4においては、熱輸送媒体5は、流れ方向FLと直交する方向に関して、熱伝導率THC2を示す。熱交換部3、4においては、第1添加物51の長手方向が流れ方向FLに対して交差する確率が高い。言い換えると、第1添加物51の長手方向が、流れ方向FLと直交する方向に指向する確率が高い。この状態では、第1添加物51が長い距離にわたって熱を伝達する可能性が高い。よって、第1添加物51に起因する熱伝導率の向上が大きい。よって、流れ方向FLと直交する方向における熱輸送媒体5の熱伝導率THC2は高い値となる。熱伝導率THC1は、熱伝導率THC2より小さい(THC1<THC2)。
【0047】
言い換えると、熱輸送媒体5は、電気磁気的な場がない流れの中において流れ方向FLと垂直な方向に第1の熱伝導率THC1を示す。熱輸送媒体5は、電気磁気的な場がある流れの中において流れ方向FLと垂直な方向に第2の熱伝導率THC2を示す。第1の熱伝導率は第2の熱伝導率より小さい(THC1<THC2)。
【0048】
熱輸送装置1の中においては熱輸送媒体5は流れている。熱輸送媒体5と外部との間の受熱と放熱との多くは、流れ方向FLと直交する方向への伝熱によって提供される。通路6の部分においては、熱伝導率THC1が比較的低いことにより、意図しない受熱と放熱とが抑制される。一方、熱交換部3、4においては、高い熱伝導率THC1によって熱輸送媒体5への受熱と、熱輸送媒体5からの放熱とが促進される。この結果、熱交換部3、4、すなわち受熱部と放熱部とにおいて、第1添加物51の高い熱伝導率を有効に発揮させることができる。
【0049】
(第2実施形態)
図5、
図6は、第2実施形態の熱輸送媒体5の挙動を示す。この実施形態は、先行する実施形態の変形例である。この実施形態では、第2添加物52に代えて、球形の第2添加物252が熱輸送媒体5に添加されている。すなわち、第2添加物52は形状異方性をもたない等方性の微粒子である。第2添加物252は鉄を主成分とする強磁体である。
【0050】
この実施形態でも、第2添加物252は、磁場MFに捕捉され、減速される。減速された第2添加物252は、その周囲に乱流を発生し、第1添加物51の配向を乱す。この結果、熱交換部3、4、すなわち受熱部と放熱部とにおいて、第1添加物51の高い熱伝導率を有効に発揮させることができる。
【0051】
(第3実施形態)
図7、
図8は、第3実施形態の熱輸送媒体の挙動を示す。この実施形態は、先行する実施形態の変形例である。この実施形態では、第2添加物52に代えて、不定形の第2添加物352が熱輸送媒体5に添加されている。第2添加物352は、主媒体50の中に分散された磁性流体である。この磁性流体は、主媒体50に対して疎性である。また、熱輸送媒体5には、磁性流体を微粒子状に分散させ、凝集を阻止する分散剤が添加されている。
【0052】
第2添加物352の微粒子は、磁場に捕捉されるとともに、その形状が変化する。第2添加物352の微粒子は、通路6の部分においては、球形となっている。一方、第2添加物352の微粒子は、熱交換部3、4においては、磁場MFの方向に沿って引き伸ばされ、楕円体となる。よって、第2添加物352は、少なくとも電気磁気的な場の中において異方形状をもち、電気磁気的な場の方向に配向される粒子である。磁場発生器8、9(フィールド発生器)が供給する電気磁気的な場の方向は、第2添加物352の長手方向を熱輸送媒体5の流れ方向FLと直交するように配向するように設定されている。第2添加物352の形状的な方向を制御することができる。しかも、第2添加物352の長手方向を流れ方向と直交させることができる。この結果、乱流の発生効果が高められる。
【0053】
この実施形態でも、熱交換部3、4、すなわち受熱部と放熱部とにおいて、第1添加物51の高い熱伝導率を有効に発揮させることができる。
【0054】
(第4実施形態)
図9、
図10は、第4実施形態の熱輸送媒体の挙動を示す。この実施形態は、先行する実施形態の変形例である。この実施形態では、第2添加物52に代えて、第2添加物452が熱輸送媒体5に添加されている。第2添加物452は、全体として強磁性を示す微粒子である。第2添加物452は、棒状の基材452aと、その両端に付加された付加材452bとを備える。付加材452bは、磁場に捕捉される強磁性体である。基材452aの両端に付加材452bを付加することにより、第2添加物452は、磁場MFの中において強い力で捕捉され、大幅に減速される。また、基材452aの両端に付加された付加材452bは、磁場の中において大きい回転モーメントを発生する。
【0055】
この実施形態でも、熱交換部3、4、すなわち受熱部と放熱部とにおいて、第1添加物51の高い熱伝導率を有効に発揮させることができる。
【0056】
(第5実施形態)
図11において、熱輸送装置1は、後述する第2添加物を電気磁気的に捕捉するための電気磁気的な場を発生するフィールド発生器508、509を備える。フィールド発生器508、509は、電場を発生する電場発生器508、509である。電場発生器508、509は、熱輸送媒体5を挟むように、互いに対向して配置された一対の電極によって提供される。一対の電極は、熱交換部3、4の内部の通路内に設けることができる。電場発生器508、509は、熱交換部3、4のそれぞれに設けられている。電場発生器508、509は、熱交換部3、4の上流側部分に偏って配置されている。電場発生器508、509は、熱交換部3、4内の熱輸送媒体5を横切って通過する電界EF1、EF2を発生する。よって、熱交換部3、4内に熱輸送媒体5が流れるとき、熱輸送媒体5は電場EF1、EF2の中におかれる。
【0057】
電場発生器508、509が発生する電場の方向EF1、EF2は、熱交換部3、4内における熱輸送媒体5の流れ方向FL1、FL2と交差する。図示の例においては、電場発生器508、509が発生する電場の方向EF1、EF2は、熱輸送媒体5の流れ方向FL1、FL2と直交する。電場発生器508は、熱交換部3の全体において第2添加物を捕捉するための電場を供給する。電場発生器509は、熱交換部4の全体において第2添加物を捕捉するための電場を供給する。
【0058】
図12は、熱輸送媒体5の通路6内における挙動を示す。
図13は、熱輸送媒体5の熱交換部3、4内における挙動を示す。
【0059】
熱輸送媒体5は、主媒体50、第1添加物51、および第2添加物552を含む。第2添加物552は、第1添加物51の配向を制御するために添加されている。第2添加物552は、電場に捕捉される誘電体の微粒子である。第2添加物552は、強誘電体、例えば高分子化合物を主成分とする微粒子である。
【0060】
第2添加物552は、熱輸送媒体5の流れの中において流れ方向FLに沿うように配向される微粒子である。熱輸送媒体5の安定的な平行流の中においては、第2添加物552の複数の微粒子の長手方向は、流れ方向FLと平行に揃う。
【0061】
電場によって捕捉され、減速された第2添加物552の微粒子は、その周囲に微視的な乱流を発生させる。乱流は、第2添加物552の微粒子のまわりを回り込むように流れる。乱流は、第1添加物51を巻き込み、第1添加物51の長手方向をランダムに指向させるような大きさと強さとをもつ。
【0062】
さらに、第2添加物552は、少なくとも電場の中において分極される。第2添加物552は、その細長い形状に起因して、その長手方向に分極されやすい。言い換えると、第2添加物552は、電場の中において形状電気異方性を発揮する。電場の中では、第2添加物552の長手方向の両端に+極と−極とが現れる。第2添加物552は、電場の方向に沿うように、回転モーメントを発生する。この結果、第2添加物552は、電場の方向に沿って配向される。電場EFは、流れ方向FLと直交するから、第2添加物552は流れ方向FLと直交するように配向される。熱輸送媒体5の全体の流れ方向FLと直交する方向へ配向された第2添加物552は、広い範囲にわたって乱流を発生する。
【0063】
第2添加物552の微粒子は、棒状、針状、または繊維状と呼びうる形状を有する。第2添加物552の微粒子は、その径方向の寸法に比べて十分に長い軸方向長さを有する。よって、第2添加物552の微粒子は、顕著な形状異方性を有する。
【0064】
通路6の部分においては、第1添加物51と第2添加物552とは、その形状異方性と、熱輸送媒体5の流れとによって、流体的な力だけを受ける。この結果、第1添加物51の長手方向は、流れ方向FLと平行に配向される。第2添加物52の長手方向も、流れ方向FLと平行に配向される。通路6の部分においては、熱輸送媒体5は、流れ方向FLと直交する方向に関して、熱伝導率THC1を示す。流れ方向FLと直交する方向における熱輸送媒体5の熱伝導率THC1は低い値である。
【0065】
熱交換部3、4においては、電場発生器508、509によって電場EFが与えられる。熱交換部3、4においては、第2添加物552が電場EFによって捕捉され、減速される。このとき、第2添加物552だけが減速されるから、第2添加物552の周囲には乱流VXが発生する。第1添加物51は、乱流VXに沿って流れるときに、流れ方向FLと異なる方向へ向けられる。この結果、電場EFの中においては第1添加物51の長手方向はランダムに指向する。さらに、電場EFの下流であって、第1添加物51が流体的な力によって再び流れ方向FLに配向されるまでの領域においては第1添加物51の長手方向はランダムに指向する。
【0066】
熱交換部3、4においては、熱輸送媒体5は、流れ方向FLと直交する方向に関して、熱伝導率THC2を示す。熱交換部3、4においては、流れ方向FLと直交する方向における熱輸送媒体5の熱伝導率THC2は高い値となる。熱伝導率THC1は、熱伝導率THC2より小さい(THC1<THC2)。
【0067】
この実施形態でも、熱交換部3、4、すなわち受熱部と放熱部とにおいて、第1添加物51の高い熱伝導率を有効に発揮させることができる。
【0068】
(第6実施形態)
図14、
図15は、第6実施形態の熱輸送媒体5の挙動を示す。この実施形態は、先行する実施形態の変形例である。この実施形態では、第2添加物552に代えて、球形の第2添加物652が熱輸送媒体5に添加されている。すなわち、第2添加物652は形状異方性をもたない等方性の微粒子である。第2添加物652は誘電体である。
【0069】
この実施形態でも、第2添加物652は、電場EFに捕捉され、減速される。減速された第2添加物652は、その周囲に乱流を発生し、第1添加物51の配向を乱す。この結果、熱交換部3、4、すなわち受熱部と放熱部とにおいて、第1添加物51の高い熱伝導率を有効に発揮させることができる。
【0070】
(他の実施形態)
以上、開示された発明の好ましい実施形態について説明したが、開示された発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、開示された発明の技術的範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。開示された発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0071】
例えば、上記実施形態では、第1添加物51としてカーボンナノチューブを利用した。これに代えて、流れの中において流れに沿うように配向され、乱流の中において配向が乱される粒子であって、熱輸送媒体5の中における配向方向に応じて熱輸送媒体5に異なる熱伝導率を与える種々の粒子を用いることができる。例えば、棒状、繊維状、薄板状、鱗片状といった形状異方性をもつ粒子を用いることができる。なお、薄板状、または鱗片状の微粒子の場合、その厚さ方向が短手方向とされ、平面に沿ったひとつの方向が長手方向とされる。
【0072】
また、第1添加物51の材料は、主媒体50より高い熱伝導率を示す種々の材料を用いることができる。例えば、カーボンを初めとして、金属、合金、化合物、高分子化合物から好適な材料を選定することができる。
【0073】
上記実施形態では、フィールド発生器8、9、508、509は、熱交換部3、4のそれぞれに設けた。これに代えて、フィールド発生器8、9、508、509を、熱交換部3、4のいずれか一方にのみ設けてもよい。すなわち、フィールド発生器8、9、508、509は、受熱部分および放熱部分の少なくとも一方に設けることができる。
【0074】
上記実施形態では、フィールド発生器8、9、508、509は、熱交換部3、4の一部においてのみ磁場または電場を供給した。これに代えて、フィールド発生器8、9、508、509は、熱交換部3、4の全体において磁場または電場を供給するように構成してもよい。