(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5803877
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】車両用電源制御装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/027 20060101AFI20151015BHJP
B60R 21/015 20060101ALI20151015BHJP
B60R 25/045 20130101ALI20151015BHJP
B60R 22/48 20060101ALI20151015BHJP
B62D 1/14 20060101ALI20151015BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
B60R16/027 Z
B60R21/015
B60R25/045
B60R22/48 101
B62D1/14
F02D45/00 376H
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-234842(P2012-234842)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-83988(P2014-83988A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 靖人
(72)【発明者】
【氏名】名田 徹
(72)【発明者】
【氏名】野々山 祐次
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−059887(JP,A)
【文献】
特開2010−202023(JP,A)
【文献】
特開2007−191015(JP,A)
【文献】
特開2011−230547(JP,A)
【文献】
特開2007−015501(JP,A)
【文献】
特開2007−008409(JP,A)
【文献】
特開2009−274690(JP,A)
【文献】
特開2003−301764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/027
B60R 21/015
B60R 22/48
B60R 25/045
B62D 1/14
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に搭載されて、当該車両の電源(90,86)を制御する車両用電源制御装置であって、
前記電源は、アクセサリ電源(86A)と、前記車両を駆動するための車両駆動用電源(86B)とを備え、
ドア(2)の開閉を検出するドア開閉検出手段(52)、運転者の着座を検出する着座検出手段(54)、運転者がシートベルト(12)を着用していることを検出するベルト検出手段(62)、運転者がステアリング(9)を把持していることを検出する把持検出手段(59)、前記車両のブレーキペダル(7)が踏まれていることを検出するブレーキ検出手段(57)、及び、前記車両のシフト位置を検出するシフト位置検出手段(61)のうち、少なくともいずれか2つの検出手段と、
前記ドアの閉鎖を前記ドア開閉検出手段が検出した検出結果、運転者が着座したことを前記着座検出手段が検出した検出結果、運転者が前記シートベルトを着用したことを前記ベルト検出手段が検出した検出結果、運転者が前記ステアリングを把持したことを前記把持検出手段が検出した検出結果、前記ブレーキペダルが踏まれていることを前記ブレーキ検出手段が検出した検出結果、及び、前記シフト位置がP又はNであることを前記シフト位置検出手段が検出した検出結果のうち、前記少なくとも2つの検出手段に応じて予め設定された少なくとも2つの検出結果の組合せからなる電源オン条件が成立した場合に、前記アクセサリ電源をオンにする電源制御手段(83)と、
前記電源オン条件に係る前記少なくとも2つの検出手段(52,54)の群を第1検出手段群として、その第1検出手段群に含まれない他の前記検出手段(62,59,57,61)と、
を備え、
前記第1検出手段群に含まれる前記検出手段、又は前記他の検出手段として、前記ドア開閉検出手段と前記着座検出手段と前記ベルト検出手段と前記シフト位置検出手段とを備え、
前記電源制御手段は、前記アクセサリ電源がオンにされた状態から、前記他の検出手段の検出結果を含む少なくとも2つの前記検出結果の組合せからなる始動条件が更に成立した場合に、前記車両駆動用電源をオンにし、運転者が前記シートベルトを外したことを前記ベルト検出手段が検出し、かつ、前記シフト位置がPであることを前記シフト位置検出手段が検出した場合に、前記アクセサリ電源をオンにしたまま前記車両駆動用電源をオフにし、その状態から更に、ドアが開いていることをドア開閉検出手段が検出し、かつ、運転者が着座した状態から着座していない状態になったことを前記着座検出手段が検出し、かつ、運転者が前記シートベルトを外したことを前記ベルト検出手段が検出し、かつ、前記シフト位置がP又はNであることを前記シフト位置検出手段が検出した場合に、前記アクセサリ電源をオフにすることを特徴とする車両用電源制御装置。
【請求項2】
運転者が前記車両の所有者であることを認証する認証手段(69)を、
更に備え、
前記電源制御手段は、前記電源オン条件が成立し、かつ、運転者が前記所有者であることを前記認証手段が認証したときに、前記アクセサリ電源をオンにすることを特徴とする請求項1に記載の車両用電源制御装置。
【請求項3】
前記第1検出手段群に含まれる前記検出手段、又は前記他の検出手段として、前記把持検出手段を備え、
前記始動条件は、運転者が前記シートベルトを着用したことを前記ベルト検出手段が検出した検出結果、及び、運転者が前記ステアリングを把持したことを前記把持検出手段が検出した検出結果の、2つの検出結果を少なくとも含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用電源制御装置。
【請求項4】
前記始動条件は、前記シフト位置がP又はNであることを前記シフト位置検出手段が検出した検出結果も含むことを特徴とする請求項3に記載の車両用電源制御装置。
【請求項5】
前記第1検出手段群に含まれる前記検出手段、又は前記他の検出手段として、前記ブレーキ検出手段を備え、
前記始動条件は、前記ブレーキペダルが踏まれていることを前記ブレーキ検出手段が検出した検出結果も含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用電源制御装置。
【請求項6】
運転者が前記シートベルトを外したことを前記ベルト検出手段が検出した検出結果、及び、運転者が着座していないことを前記着座検出手段が検出した検出結果が、所定時間継続した場合に、前記電源制御手段は前記アクセサリ電源をオフにすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用電源制御装置。
【請求項7】
運転者が前記シートベルトを外したことを前記ベルト検出手段が検出した検出結果、及び、前記シフト位置がPであることを前記シフト位置検出手段が検出した検出結果が、所定時間継続した場合に、前記電源制御手段は前記車両駆動用電源をオフにすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用電源制御装置。
【請求項8】
車両の走行速度を検出する速度検出手段を、
更に備え、
前記電源制御手段は、前記速度検出手段が検出した速度が予め設定された所定速度以上である場合、前記車両駆動用電源をオンに維持することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用電源制御装置。
【請求項9】
前記電源オン条件は、前記ドアの閉鎖を前記ドア開閉検出手段が検出した検出結果、及び、運転者の着座を前記着座検出手段が検出した検出結果の、2つの条件を少なくとも含み、
前記電源制御手段は、前記電源オン条件が成立した場合に、前記アクセサリ電源をオンにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用電源制御装置。
【請求項10】
前記電源オン条件は、前記ドアの閉鎖を前記ドア開閉検出手段が検出した検出結果、及び、運転者の着座を前記着座検出手段が検出した検出結果の、2つの条件を少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて当該車両の電源を制御する車両用電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両において、エンジンの始動を容易にし、かつ、意図しないエンジンの始動を抑制する制御が種々提案されている。例えば、ブレーキペダルが踏み込まれたことをブレーキペダルスイッチを介して検出し、かつ、押ボタン型のスイッチが押下された場合、認証携帯機が車内にあることを検出した上で、アクセサリオン及びイグニッションオンの駆動状態とする装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−301764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、スイッチを押下するといった、車両を運転するために必要不可欠な動作とは異なる特別な動作をしなければ、運転者は車両の電源をオンにすることができない。そこで、本発明は、運転者が特別な動作をしなくても、車両の電源をオンにすることのできる車両用電源制御装置の提供を目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達するためになされた本発明は、車両に搭載されて、当該車両の電源を制御する車両用電源制御装置であって、ドアの開閉を検出するドア開閉検出手段、運転者の着座を検出する着座検出手段、運転者がシートベルトを着用していることを検出するベルト検出手段、運転者がステアリングを把持していることを検出する把持検出手段、前記車両のブレーキペダルが踏まれていることを検出するブレーキ検出手段、及び、前記車両のシフト位置を検出するシフト位置検出手段のうち、少なくともいずれか2つの検出手段を備えている。
また、前記電源は、アクセサリ電源と、前記車両を駆動するための車両駆動用電源とを備えている。そして、前記ドアの閉鎖を前記ドア開閉検出手段が検出した検出結果、運転者が着座したことを前記着座検出手段が検出した検出結果、運転者が前記シートベルトを着用したことを前記ベルト検出手段が検出した検出結果、運転者が前記ステアリングを把持したことを前記把持検出手段が検出した検出結果、前記ブレーキペダルが踏まれていることを前記ブレーキ検出手段が検出した検出結果、及び、前記シフト位置がP又はNであることを前記シフト位置検出手段が検出した検出結果のうち、前記少なくとも2つの検出手段に応じて予め設定された少なくとも2つの検出結果の組合せからなる電源オン条件が成立した場合に、電源制御手段が前記
アクセサリ電源をオンにする。
【0006】
運転者は、車両を運転するために必要不可欠な動作として、ドアを閉め、着座し、シートベルトを着用し、ステアリングを把持し、安全のためにブレーキペダルを踏む。また、通常、その時点ではシフト位置がP又はNになっている。本発明では、これらの動作又は状態のうち、予め設定された少なくともいずれか2つが検出されたときに、電源オン条件が成立して電源制御手段が車両の
アクセサリ電源をオンにする。したがって、運転者は、
アクセサリ電源をオンにするための特別な動作をしなくても車両の
アクセサリ電源をオンにすることができる。また、電源オン条件は少なくとも2つの検出結果の組合せで構成されているため、運転者の所望に反して偶発的に
アクセサリ電源がオンにされるのを良好に抑制することができる。
更に、電源制御手段は、前記アクセサリ電源がオンにされた状態から、前記他の検出手段の検出結果を含む少なくとも2つの前記検出結果の組合せからなる始動条件が更に成立した場合に、前記車両駆動用電源をオンにする。また、電源制御手段は、運転者が前記シートベルトを外したことを前記ベルト検出手段が検出し、かつ、前記シフト位置がPであることを前記シフト位置検出手段が検出した場合に、前記アクセサリ電源をオンにしたまま前記車両駆動用電源をオフにし、その状態から更に、ドアが開いていることをドア開閉検出手段が検出し、かつ、運転者が着座した状態から着座していない状態になったことを前記着座検出手段が検出し、かつ、運転者が前記シートベルトを外したことを前記ベルト検出手段が検出し、かつ、前記シフト位置がP又はNであることを前記シフト位置検出手段が検出した場合に、前記アクセサリ電源をオフにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明が適用された自動車を運転席斜め後方からみた斜視図である。
【
図2】その自動車を一部省略して助手席側方からみた斜視図である。
【
図3】その自動車の制御系の構成を表すブロック図である。
【
図4】その自動車の電源系統の構成を表すブロック図である。
【
図5】前記制御系の制御装置における処理を表すフローチャートである。
【
図6】その処理に対応する電源状態の変化を表す状態遷移図である。
【
図7】他の実施形態の処理に対応する電源状態の変化を表す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の構成]
次に、本発明が適用された実施形態を図面と共に説明する。なお、以下の実施形態では、車両としての自動車1に本発明を適用した場合について説明する。
図1に示すように、自動車1は、ドアミラー2Aを外側に備えたドア2を開閉可能に備えており、ボディ3には、そのドア2の開閉を検出するドア開閉検知装置52が設けられている。また、ドア2の内側には、ウインドウ開閉用スイッチ等の各種スイッチ2Bが設けられている。
【0009】
自動車1の車室内前方には、運転席4と助手席5(
図2参照)とが設けられ、運転席4の前方には、アクセルペダル6,ブレーキペダル7,ステアリング9等が設けられている。そして、運転席4の着座部内には、運転者の着座を検出する着座検知装置54が設けられている。また、ブレーキペダル7には、そのブレーキペダル7が踏まれていることを検出するブレーキペダルスイッチ57(
図3,
図4参照)が設けられている。更に、ステアリング9にはステアリングホイール9Aが把持されたことを検出するステア把持検知装置59(
図3,
図4参照)が設けられている。
【0010】
また、
図2に示すように、運転席4と助手席5との間にはシフトレバー11が設けられ、そのシフトレバー11の位置(シフト位置)はシフト位置検出装置61(
図3,
図4参照)によって検出されている。運転者を運転席4に固定するシートベルト12は、運転席4の助手席5側に隣接して配置されたバックル12Aに先端を挿入して着用され、そのバックル12Aには、シートベルト12の着用状態を検出するベルト着用検知装置62(
図3,
図4参照)が設けられている。更に、
図1に示すように、運転者は自身が自動車1の所有者であることを示すID認証携帯機19を所持しており、運転席4の前方には、そのID認証携帯機19と通信してIDの適否を認証するID認証車載機69が設けられている。なお、ID認証車載機69は、ルームミラー110等に設けられてもよい。
【0011】
次に、
図3に示すように、自動車1の制御系において、前述のID認証車載機69,ドア開閉検知装置52,着座検知装置54,ベルト着用検知装置62,ステア把持検知装置59は、ボデー系ECU81に接続されている。また、前述のシフト位置検出装置61,ブレーキペダルスイッチ57は、走行系ECU82に接続されている。なお、ボデー系ECU81は、ドアロックECU,ウインドウECU,エアコンECU,オーディオECU等の車両装備に関連するECUから構成されるECU群である。また、走行系ECU82は、エンジンECU,AT−ECU,ブレーキECU等の走行に関連するECUから構成されるECU群である。そして、ボデー系ECU81と走行系ECU82とによって取得された各種信号に基づき、制御装置83は、エンジンシステム85,電源制御部86,表示器87を制御している。
【0012】
続いて、制御装置83が実行する処理のうち、主として電源制御部86に係る処理について説明する。先ず、
図4を用いて電源制御部86の機能について説明する。
図4に示すように、電源制御部86は、バッテリ90から常時電力が供給される+B電源に接続されており、バッテリ90から供給された電力を、アクセサリ電源86Aに供給するか否か、及び、イグニッション電源86Bに供給するか否か、を制御する。なお、以下の説明において、バッテリ90から供給された電力をアクセサリ電源86Aに供給することをアクセサリ電源86Aをオンにするといい、イグニッション電源86Bに供給することをイグニッション電源86Bをオンにするという。
【0013】
なお、+B電源には、電源制御部86の他に、前述のID認証車載機69,ドア開閉検知装置52,着座検知装置54,走行系ECU82,ブレーキペダルスイッチ57,ボデー系ECU81,シフト位置検出装置61,制御装置83が接続され、更に、ドアロック機構91,ヘッドライト92,ハザードランプ93(ハザード)が接続されている。また、イグニッション電源86B(IG)には、前述のエンジンシステム85の他、パワーウインドウ97等が接続されている。更に、アクセサリ電源86A(ACC)には、前述のベルト着用検知装置62,ステア把持検知装置59,表示器87の他、カーナビゲーション装置98(カーナビ:
図1,
図2では図示省略)、ダッシュボード120(
図2参照)に設けられたエアコン等のパネル枠を照明するイルミネーション99が接続されている。
【0014】
[実施形態における処理]
次に、
図5は、制御装置83が電源制御部86に対して実行する処理を表すフローチャートである。なお、この処理は、制御装置83のCPUによって、同じく制御装置83のROMに記憶されたプログラムに基づき、駐車中も含めて常時繰り返し実行される。
図5に示すように、この処理では、先ず、S1(Sはステップを表す:以下同様)にて、ID認証携帯機19からアンロック(UNLOCK)の指示があったか否かが判断される。アンロックの指示がない場合は(S1:なし)、処理はそのままS1にて待機し、アンロックの指示があると(S1:あり)、処理はS2へ移行する。S2では、ID認証車載機69による自動車1の内外に対するIDの認証(キー認証)がなされ、NGである場合は(S2:NG)、処理はそのままS2にて待機する。一方、キー認証がOKの場合は(S2:OK)、処理はS3へ移行し、ドアロック機構91を介してドア2がアンロックされて、処理はS4へ移行する。
【0015】
S4では、ドア2が開いているか閉じているかがドア開閉検知装置52を介して判断される。アンロックがなされた直後は、まだドア2が開いていないので(S4:閉)、処理はS5へ移行し、ドア2に対するロック指示がなされたか否かが判断される。アンロックがなされた直後はロック指示もなされないので(S5:なし)、処理は前述のS4へ移行する。そして、S4,S5からなるループ処理中に運転者がドア2を開くと(S4:開)、処理はS6へ移行し、運転者が着座したか否かが着座検知装置54を介して判断される。運転者が着座するまでは(S6:非着座)、処理はS4へ移行することによりS4,S6からなるループ処理が実行される。運転者が着座することなく(S6:非着座)、そのままドア2を閉じて(S4:閉)、更にID認証携帯機19からロック指示を行うと(S5:あり)、S7にてS2と同様のキー認証がなされる。ID認証がOKである場合は(S7:OK)、S8にてドア2がロックされた後、処理は前述のS1へ移行する。一方、キー認証がNGの場合は(S7:NG)、処理は前述のS4へ移行する。
【0016】
また、前述のS4,S5からなるループ処理中にドア2を開いて運転者が着座すると(S4:開、S6:着座)、処理はS12へ移行する。S12では、再びドア2が開いているか閉じているかが判断され、開いている場合は(S12:開)、処理はS6へ移行してS6,S12からなるループ処理が実行される。そして、このループ処理の間にドア2が閉じられると(S12:閉)、処理はS13へ移行する。
【0017】
S13では、自動車1に対応したID認証携帯機19が車内にあるか否かを判断するキー車内認証が実行され、NGの場合は処理は前述のS6へ(S13:NG)、OKの場合は処理はS14へ(S13:OK)、それぞれ移行する。
【0018】
S14では、アクセサリ電源86Aがオンにされ(ACC−ON)、続くS15にて次のような始動条件が成立しているか否かが判断される。すなわち、始動条件とは、シートベルト12を運転者が着用したことをベルト着用検知装置62が検出し、かつ、ステアリングホイール9Aが把持されたことをステア把持検知装置59が検出し、かつ、一般の自動車でも採用されている始動許可状態が成立している条件である。なお、始動許可状態とは、例えば、オートマチック車であれば、シフト位置がP又はNであることをシフト位置検出装置61が検出し、かつ、ブレーキペダル7が踏まれていることをブレーキペダルスイッチ57が検出している状態である。また、始動許可状態とは、マニュアル車であれば、クラッチが踏まれていることなどが含まれる。
【0019】
運転者が着座した直後などで、始動条件が成立していない場合は(S15:非成立)、処理はS16へ移行し、次のような停止条件が成立しているか否かが判断される。停止条件とは、ドア2が開いていることをドア開閉検知装置52が検出し、かつ、運転者が着座した状態から着座していない状態になったことを着座検知装置54が検出し、かつ、シートベルト12が外されたことをベルト着用検知装置62が検出し、かつ、シフト位置がP又はNであることをシフト位置検出装置61が検出している(オートマチック車の場合)条件である。運転者が着座した直後には、この停止条件も成立していないので(S16:非成立)、処理は前述のS15へ移行する。
【0020】
こうして、S15,S16のループ処理中に、運転者が車外に出てドア2を閉めるなどして停止条件が成立すると(S16:成立)、処理はS17へ移行し、アクセサリ電源86Aがオフにされて処理は前述のS4へ移行する。一方、S15,S16のループ処理中に、運転者が自動車1を発車しようとして前述の始動条件が成立すると(S15:成立)、S20にてイグニッション電源86Bがオンにされると共にエンジンシステム85が始動され(START)、始動後は、S21にてイグニッション電源86Bがオンの状態に維持される。続くS22では、前述のS16と同様の停止条件が成立しているか否かが判断される。始動条件が成立してエンジンシステム85が始動された直後には、停止条件は成立していないので(S22:非成立)、処理はS22にて待機する。以上の処理によって、このS22における待機中は、自動車1が走行可能になる。そして、運転者が自動車1を駐車させ、ドア2を開いて車外に出るなどして停止条件が成立すると(S22:成立)、処理はS23へ移行し、アクセサリ電源86A,イグニッション電源86Bが共にオフにされて処理は前述のS4へ移行する。
【0021】
[実施形態の効果及び他の実施形態]
以上の処理による状態遷移は、
図6に示すようになる。すなわち、運転者が車外にいるときは、アクセサリ電源86A,イグニッション電源86Bが共にオフである(S1)。この状態から、アンロックの指示やキー認証がなされた後に運転者が着座し(S6:着座)、ドア2が閉じられ(S12:閉)、車内でのキー認証がなされると(S13:OK)、アクセサリ電源86AがONになる(S14)。そして、更に、運転者がシートベルト12を装着し、ステアリングホイール9Aを把持し、その他のエンジン始動許可状態が成立すると(S15:成立)、エンジンシステム85が始動され(S20)、始動後は運転者が何も操作しなくても(None)イグニッション電源86Bがオンの状態に維持される(S21)。また、駐車後、運転者がシートベルト12を外し、着座していない状態となり、シフト位置をP又はNにしてドア2を開くと(S22:成立)、アクセサリ電源86A,イグニッション電源86Bが共にオフにされる(S23)。
【0022】
このため、運転者の着座及びドア2の閉鎖といった、少なくともカーナビゲーション装置98等の車載機器は使用可能とするのが好ましい状態となったとき、電源をオンにするための特別な動作をしなくても自動的にアクセサリ電源86Aをオンにすることができる。そして、運転者が更に、シートベルト12を装着してステアリングホイール9Aを把持するなど、運転を開始しようとする動作を行ったとき、電源をオンにするための特別な動作をしなくても、イグニッション電源86Bをオンにすることができる。したがって、本実施形態の自動車1は、運転者の所望に極めて適合した電源操作を自動的に行うことができ、極めて操作性が向上する。
【0023】
また、前記各電源をオンにするための条件は少なくとも2つの検出結果の組合せで構成されているため、運転者の所望に反して偶発的に電源がオンにされるのを良好に抑制することができる。しかも、本実施形態では、IDの認証がOKである場合にのみ電源がオンにされるので、セキュリティを一層向上させることができる。
【0024】
更に、本実施形態では、運転者が着座していない状態となってドア2が開くなど、各電源をオンにしておくのが好ましくない状態では、各電源を自動的にオフにしているので、安全性及び燃費を向上させることができる。また、各電源をオフにするための停止条件は少なくとも2つの検出結果の組合せで構成されているため、運転者の所望に反して偶発的に各電源がオフにされるのを良好に抑制することができる。
【0025】
なお、前記実施形態において、バッテリ90及び電源制御部86が電源に、ドア開閉検知装置52がドア開閉検出手段に、着座検知装置54が着座検出手段に、ベルト着用検知装置62がベルト検出手段に、ステア把持検知装置59が把持検出手段に、ブレーキペダルスイッチ57がブレーキ検出手段に、シフト位置検出装置61がシフト位置検出手段に、制御装置83が電源制御手段に、ID認証車載機69が認証手段に、イグニッション電源86Bが車両駆動用電源に、ドア開閉検知装置52及び着座検知装置54が第1検出手段群に含まれる検出手段に、それぞれ相当する。
【0026】
また、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、停止条件が成立したときに即座に各電源をオフにするのではなく、停止条件がある程度継続して成立したときに各電源をオフにしてもよい。そのような制御は、例えば、S22にて「成立」と判断されたとき、停止条件の成立から予め設定された所定時間経過したか否かを判断するステップへ移行し、YESのときはS23へ、NOのときはS22へ移行するようにすることで実現できる。こうすることで、イグニッション電源86Bが運転者の所望に反してオフにされるのを一層良好に抑制することができる。なお、前記始動条件又は停止条件を規定する前述の「かつ」は「又は」に置き換えてもよく、停止条件の「かつ」を「又は」に置き換えた場合、このようにその停止条件の成立が所定時間継続したか否かを判断する効果が一層顕著に表れる。更に、前記始動条件,停止条件を構成する各種検出結果の組合せやアクセサリ電源86Aがオンにされるための条件は、種々に変更することができる。
【0027】
また、自動車1が一般的に備えている速度センサを制御装置83に接続し、自動車1の走行速度が予め設定された所定速度以上の場合はイグニッション電源86Bがオフにされないようにしてもよい。そのような制御は、例えば、S22にて「成立」と判断されたとき、前記走行速度が所定速度未満か否かを判断するステップへ移行し、YESのときはS23へ、NOのときはS22へ移行するようにすることで実現できる。こうすることで、前記走行速度が所定速度以上であってイグニッション電源86Bをオフにするのが好ましくない状態で、そのイグニッション電源86Bがオフにされるのを抑制することができる。
【0028】
また、
図7に示すように、アクセサリ電源86A,イグニッション電源86Bが共にオンの状態(IG)から、シフト位置がPに変化し、かつ、シートベルト12が外されたときに、イグニッション電源86Bのみをオフにしてもよい。このような制御は、例えば、S22にて「非成立」と判断されたとき、シフト位置がPに変化し、かつ、シートベルト12が外されたか否かを判断するステップへ移行し、YESのときはイグニッション電源86Bのみをオフにした後にS15へ移行し、NOのときはS22へ移行するようにすることで実現できる。この場合、イグニッション電源86Bがオンにされる条件とオフにされる条件とが大きく異なり、運転者の所望に一層適合した電源操作を行うことができる場合がある。
【0029】
また更に、前記各実施形態では、内燃機関を想定したエンジンシステム85にイグニッション電源86Bから電力を供給しているが、これは、ハイブリッド車を想定したHVシステムや電気自動車を想定したEVシステムに置き換えてもよい。そして、その場合、始動条件を構成する始動許可状態も、ハイブリッド車や電気自動車に対応した状態に置き換えられる。
【0030】
また、本発明は押ボタン型のスイッチを設けることを完全に排除するものではなく、イグニッション電源86Bをオンにする場合のみそのようなスイッチを操作するようにしたり、前記制御でうまく始動できない場合に補助的にスイッチを使用したりしてもよい。また、運転者が自動車1の所有者であるか否かの認証は、運転者の顔や指紋を認証することによって行ってもよい。但し、運転者の顔を撮影するカメラ等を起動するためには、アクセサリ電源86Aをオンにする必要がある。そこで、S13の処理を顔認証等に置き換える場合、先にアクセサリ電源86Aをオンにしておき(S14)、認証がNGであれば即座にアクセサリ電源86AをオフにしてS6へ移行し、認証がOKであればそのままS15へ移行する処理形態となる。また、ID認証携帯機19は多機能携帯端末であってもよい。
【0031】
[本発明の各種態様]
なお、本発明は、前記実施形態に開示されたように、運転者が前記車両の所有者であることを認証する認証手段(69)を、更に備え、前記電源制御手段は、前記電源オン条件が成立し、かつ、運転者が前記所有者であることを前記認証手段が認証したときに、前記電源をオンにしてもよい。その場合、運転者が車両の所有者である場合にのみ電源がオンにされ、セキュリティを一層向上させることができる。
【0032】
また、前記電源オン条件に係る前記少なくとも2つの検出手段(52,54)の群を第1検出手段群として、その第1検出手段群に含まれない他の前記検出手段(62,59,57,61)を備え、前記電源は、アクセサリ電源(86A)と、前記車両を駆動するための車両駆動用電源(86B)とを備え、前記電源制御手段は、前記電源オン条件が成立した場合に、前記アクセサリ電源をオンにし、前記他の検出手段の検出結果を含む少なくとも2つの前記検出結果の組合せからなる始動条件が更に成立した場合に、前記車両駆動用電源をオンにしてもよい。その場合、電源オン条件が成立したらアクセサリ電源がオンにされ、その状態から更に始動条件が成立した場合に車両駆動用電源がオンにされる。このため、カーナビゲーション装置等の車載機器のみを使用可能にする条件と、車両を走行可能にする条件とを異ならせて、運転者の所望に一層適合した電源操作を行うことができる。
【0033】
そして、その場合、前記第1検出手段群に含まれる前記検出手段、又は前記他の検出手段として、少なくとも前記ベルト検出手段と前記把持検出手段とを備え、前記始動条件は、運転者が前記シートベルトを着用したことを前記ベルト検出手段が検出した検出結果、及び、運転者が前記ステアリングを把持したことを前記把持検出手段が検出した検出結果の、2つの検出結果を少なくとも含んでもよい。その場合、車両が運転者の所望に反して動き出すのを一層良好に抑制することができる。
【0034】
そして、更にその場合、前記第1検出手段群に含まれる前記検出手段、又は前記他の検出手段として、前記シフト位置検出手段を備え、前記始動条件は、前記シフト位置がP又はNであることを前記シフト位置検出手段が検出した検出結果も含んでもよい。その場合、車両が運転者の所望に反して動き出すのを更に一層良好に抑制することができる。
【0035】
また、前記第1検出手段群に含まれる前記検出手段、又は前記他の検出手段として、前記ブレーキ検出手段を備え、前記始動条件は、前記ブレーキペダルが踏まれていることを前記ブレーキ検出手段が検出した検出結果も含んでもよい。その場合、車両が運転者の所望に反して動き出すのを更に一層良好に抑制することができる。なお、前記始動条件は、前記各検出結果の前記以外の組合せで構成されてもよい。
【0036】
また、前記始動条件を用いる発明において、前記電源制御手段は、前記ドアの開放を前記ドア開閉検出手段が検出した検出結果、運転者が着座していないことを前記着座検出手段が検出した検出結果、運転者が前記シートベルトを外したことを前記ベルト検出手段が検出した検出結果、運転者が前記ステアリングを把持していないことを前記把持検出手段が検出した検出結果、前記ブレーキペダルが踏まれていないことを前記ブレーキ検出手段が検出した検出結果、及び、前記シフト位置がP又はNであることを前記シフト位置検出手段が検出した検出結果のうち、前記第1検出手段群に含まれる前記検出手段又は前記他の検出手段に応じて予め設定された少なくとも2つの前記検出結果の組合せからなる停止条件が成立した場合に、前記車両駆動用電源をオフにしてもよい。その場合、車両駆動用電源をオンにしておくのが好ましくない状態では、車両駆動用電源を自動的にオフにして安全性及び燃費を向上させることができる。また、停止条件は少なくとも2つの検出結果の組合せで構成されているため、運転者の所望に反して偶発的に車両駆動用電源がオフにされるのを良好に抑制することができる。
【0037】
そして、その場合、前記第1検出手段群に含まれる前記検出手段、又は前記他の検出手段として、前記ベルト検出手段と前記着座検出手段とを備え、前記停止条件は、運転者が前記シートベルトを外したことを前記ベルト検出手段が検出した検出結果、及び、運転者が着座していないことを前記着座検出手段が検出した検出結果の、2つの検出結果を少なくとも含んでもよい。その場合、車両駆動用電源が運転者の所望に反してオフにされるのを一層良好に抑制することができる。
【0038】
そして、更にその場合、前記停止条件は、運転者が前記シートベルトを外したことを前記ベルト検出手段が検出した検出結果、及び、運転者が着座していないことを前記着座検出手段が検出した検出結果が、所定時間継続したことを含んでもよい。その場合、車両駆動用電源が運転者の所望に反してオフにされるのを更に一層良好に抑制することができる。
【0039】
また、前記停止条件を用いる発明において、前記第1検出手段群に含まれる前記検出手段、又は前記他の検出手段として、前記ベルト検出手段と前記シフト位置検出手段とを備え、前記停止条件は、運転者が前記シートベルトを外したことを前記ベルト検出手段が検出した検出結果、及び、前記シフト位置がPであることを前記シフト位置検出手段が検出した検出結果の、2つの検出結果を少なくとも含んでもよい。その場合、車両駆動用電源が運転者の所望に反してオフにされるのを一層良好に抑制することができる。
【0040】
そして、更にその場合、前記停止条件は、運転者が前記シートベルトを外したことを前記ベルト検出手段が検出した検出結果、及び、前記シフト位置がPであることを前記シフト位置検出手段が検出した検出結果が、所定時間継続したことを含んでもよい。その場合、車両駆動用電源が運転者の所望に反してオフにされるのを更に一層良好に抑制することができる。
【0041】
そして、前記停止条件を用いる発明において、車両の走行速度を検出する速度検出手段を、更に備え、前記電源制御手段は、前記速度検出手段が検出した速度が予め設定された所定速度以上である場合、前記停止条件の成立/不成立に関わらず前記車両駆動用電源をオンに維持してもよい。その場合、車両の走行速度が所定速度以上であって車両駆動用電源をオフにするのが好ましくない状態で、当該車両駆動用電源がオフにされるのを抑制することができる。
【0042】
また、本発明において、前記電源は、アクセサリ電源と、前記車両を駆動するための車両駆動用電源とを備え、前記少なくとも2つの検出手段として、前記ドア開閉検出手段と前記着座検出手段とを備え、前記電源オン条件は、前記ドアの閉鎖を前記ドア開閉検出手段が検出した検出結果、及び、運転者の着座を前記着座検出手段が検出した検出結果の、2つの条件を少なくとも含み、前記電源制御手段は、前記電源オン条件が成立した場合に、前記アクセサリ電源をオンにしてもよい。その場合、運転者の着座及びドアの閉鎖といった、少なくとも車載機器は使用可能とするのが好ましい状態となったときに、自動的にアクセサリ電源をオンにすることができる。
【0043】
また、前記始動条件を用いる発明において、前記第1検出手段群に含まれる前記検出手段として、前記ドア開閉検出手段と前記着座検出手段とを備え、前記電源オン条件は、前記ドアの閉鎖を前記ドア開閉検出手段が検出した検出結果、及び、運転者の着座を前記着座検出手段が検出した検出結果の、2つの条件を少なくとも含んでもよい。その場合、運転者の着座及びドアの閉鎖といった、少なくとも車載機器は使用可能とするのが好ましい状態となったときに、自動的にアクセサリ電源をオンにすることができる。
【0044】
また、本発明は、運転者が着座し、かつ、ドアを閉じることによってアクセサリ電源をオンにする車両制御方法であってもよく、更に、シフト位置がP又はNになっている状態で、運転者がシートベルトを締め、ステアリングを把持し、ブレーキペダルを踏むことによって、車両駆動用電源をオンにする車両制御方法であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…自動車 2…ドア 6…アクセルペダル 7…ブレーキペダル
9…ステアリング 9A…ステアリングホイール 11…シフトレバー
12…シートベルト 12A…バックル 19…ID認証携帯機
52…ドア開閉検知装置 54…着座検知装置 57…ブレーキペダルスイッチ
59…ステア把持検知装置 61…シフト位置検出装置
62…ベルト着用検知装置 69…ID認証車載機
83…制御装置 85…エンジンシステム
86…電源制御部 86A…アクセサリ電源
86B…イグニッション電源 90…バッテリ