特許第5804008号(P5804008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5804008
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】エキシマランプ点灯装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 41/24 20060101AFI20151015BHJP
【FI】
   H05B41/24
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-189411(P2013-189411)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-56302(P2015-56302A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2014年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】小池 一宇
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−15287(JP,A)
【文献】 特開2007−294140(JP,A)
【文献】 特開2010−27255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 41/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキシマランプと、当該エキシマランプに給電する給電部と、当該給電部を制御する制御部とを備えたエキシマランプ点灯装置において、
前記エキシマランプに入力される電圧を検出する電圧検出部を備えており、
前記制御部は、前記電圧検出部により検出される電圧値が予め設定された部分不点灯電圧領域内にあることによりエキシマランプが部分不点灯状態であることを検出する機能を有することを特徴とするエキシマランプ点灯装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電圧検出部により検出される電圧値が前記部分不点灯電圧領域内にある状態が設定時間以上継続していることを検出したときに、エキシマランプの点灯動作を停止する機能、または、部分点灯状態を外部に報知する機能を有することを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ点灯装置。
【請求項3】
前記部分不点灯電圧領域は、エキシマランプの定格電圧の60〜80%の大きさの範囲に設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエキシマランプ点灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプ点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば金属、ガラス、その他の材料よりなる被処理体に、波長200nm以下の真空紫外光を照射することにより、真空紫外光およびこれにより生成される活性酸素やオゾンの作用によって、被処理体の表面に付着した有機汚染物質を除去する光洗浄処理技術や、被処理体の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成処理技術が開発され、実用化されている。
このような真空紫外光を照射する光源としては、エキシマ放電によってエキシマ分子を形成し、当該エキシマ分子から放射される光を利用するエキシマランプが知られている。
【0003】
各種の光照射装置において用いられるエキシマランプにおいては、真空紫外光の安定的な放射が求められており、エキシマランプの点灯状態を検出するために、エキシマランプからの紫外光の光量をモニターすることが行われている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−243435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、このようなエキシマランプの点灯装置においては、エキシマランプは、光量検出手段によって検出された紫外光の光量に基づいて、例えば、エキシマランプに供給される電力が一定の大きさとなるよう、エキシマランプに供給される電圧が制御される。
このような点灯制御においては、エキシマランプが制御された適正な大きさの電圧で点灯されている状態であれば、当該エキシマランプを備えた光照射装置によって被処理物に対して所期の処理が行われるはずであるが、被処理物の処理を十分に行うことができないことがあることが判明した。
このような問題に対して、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、エキシマランプにおいては、その長手方向において局所的に不点灯となる領域が生ずることがあり、部分不点灯の現象が生じているときは、ランプ入力電圧が一定以上低下していることを見出した。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、エキシマランプの部分不点灯状態を検出することができ、光照射装置の光源として用いられた場合に、被処理物について不十分な処理が行われることを回避することのできるエキシマランプ点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエキシマランプ点灯装置は、エキシマランプと、当該エキシマランプに給電する給電部と、当該給電部を制御する制御部とを備えた構成のものにおいて、
前記エキシマランプに入力される電圧を検出する電圧検出部を備えており、
前記制御部は、前記電圧検出部により検出される電圧値が予め設定された部分不点灯電圧領域内にあることによりエキシマランプが部分不点灯状態であることを検出する機能を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のエキシマランプ点灯装置においては、前記制御部は、前記電圧検出部により検出される電圧値が前記部分不点灯電圧領域内にある状態が設定時間以上継続していることを検出したときに、エキシマランプの点灯動作を停止させる機能、または、部分点灯状態を外部に報知する機能を有する構成とされていることが好ましい。
【0009】
さらにまた、本発明のエキシマランプ点灯装置においては、前記部分不点灯電圧領域は、エキシマランプの定格電圧の60〜80%の大きさの範囲に設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエキシマランプ点灯装置によれば、電圧検出部によって検出されるエキシマランプに対する入力電圧値が予め設定された部分不点灯電圧領域内であることを検出することにより、エキシマランプの部分不点灯状態を確実に検出することができる。
従って、光照射装置の光源として用いられた場合において、部分不点灯の検出により、エキシマランプの点灯動作を停止させることによって、あるいは、部分点灯状態を外部に報知することによって、被処理物について不十分な処理が行われることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のエキシマランプ点灯装置の一例における構成の概略を示すブロック図である。
図2】本発明のエキシマランプ点灯装置を構成するエキシマランプの一例における構成の概略を示す説明用断面図である。図2(a)は、エキシマランプの放電容器の長手方向に沿った断面図であり、図2(b)は、図2(a)におけるA−A線断面図である。
図3】本発明のエキシマランプ点灯装置における給電部の一例における構成を示す回路構成図である。
図4】本発明のエキシマランプ点灯装置によるエキシマランプの点灯動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のエキシマランプ点灯装置の一例における構成の概略を示すブロック図である。
このエキシマランプ点灯装置は、エキシマランプ10と、このエキシマランプ10に高周波高電圧を供給する給電部20と、エキシマランプ10に対するランプ入力電圧を検出する電圧検出部60と、エキシマランプ10に供給される入力電流を検出する電流検出部65と、電圧検出部60により検出される電圧値および電流検出部65により検出される電流値に基づいて、エキシマランプ10の点灯状態を制御する制御部50と、エキシマランプ10に固有の電気的特性値が記録された記憶部70と、計時部71と、表示部72とを備えている。
【0013】
図2は、本発明のエキシマランプ点灯装置を構成するエキシマランプの一例における構成の概略を示す説明用断面図である。図2(a)は、エキシマランプの放電容器の長手方向に沿った断面図であり、図2(b)は、図2(a)におけるA−A線断面図である。
このエキシマランプ10は、両端が気密に封止されて内部に放電空間Sが形成された、断面矩形状の扁平な中空長尺状の放電容器11を備えている。
放電容器11は、真空紫外光を良好に透過するシリカガラス、例えば合成石英ガラスよりなり、誘電体としての機能を有する。
この放電容器11の内部には、放電用ガスとして、例えばキセノンガスや、アルゴンと塩素とを混合したガスが封入されている。
【0014】
放電容器11における長辺面の外表面には、一対の格子状の電極、すなわち、高電圧供給電極として機能する一方の電極12および接地電極として機能する他方の電極13が長尺な方向に伸びるよう対向して配置されており、これにより、一対の電極12,13間に誘電体として機能する放電容器11が介在された状態とされている。
このような電極は、例えば、金属よりなる電極材料を放電容器11にペースト塗布することにより、あるいは、プリント印刷や蒸着することによって形成することができる。
【0015】
このエキシマランプ10においては、一方の電極12に点灯電力が供給されると、誘電体として機能する放電容器11の壁を介して両電極12,13間に放電が生成され、これにより、エキシマ分子が形成されると共にこのエキシマ分子から真空紫外光が放射されるエキシマ放電が生ずるが、このエキシマ放電によって発生する真空紫外光を効率良く利用するために、放電容器11の内表面に、紫外線反射膜15が設けられている。ここに、放電用ガスとしてキセノンガスを用いた場合は、波長172nmにピークを有する真空紫外線が放出され、放電用ガスとしてアルゴンと塩素とを混合したガスを用いた場合には、波長175nmにピークを有する真空紫外線が放出される。
【0016】
紫外線反射膜15は、例えば、放電容器11における長辺面の、高電圧供給電極として機能する一方の電極12に対応する内表面領域とこの領域に連続する短辺面の内表面領域の一部にわたって形成されている。そして、放電容器11における長辺面の、接地電極として機能する他方の電極13に対応する内表面領域において紫外線反射膜15が形成されていないことによって光出射部(アパーチャ部)18が構成されている。
紫外線反射膜15の膜厚は、例えば10〜100μmである。
【0017】
給電部20は、交流電源21と、例えば電磁接触子により構成された電源スイッチ部22と、交流電源21よりの交流電流を直流電圧に変換して出力する整流部25と、整流部25からの直流電圧を昇圧して平滑化された直流電圧を出力するチョッパ部30と、チョッパ部30からの直流電圧を矩形波状の交流電圧に変換するインバータ部40と、インバータ部40からの交流電圧を昇圧してエキシマランプ10に供給するトランス46による昇圧部45とにより構成されている。
【0018】
整流部25は、ダイオードブリッジ26と、このダイオードブリッジ26の出力側に接続された平滑コンデンサ27とにより構成されている。図3における28は、チョッパ部30の充電電荷を放電するための放電抵抗である。
【0019】
チョッパ部30は、整流部25に接続された例えばFETよりなるスイッチング素子32と、このスイッチング素子32のソース(端子)に接続されたインダクタ33と、それぞれ、インダクタ33の入力側において並列に接続されたダイオード34および平滑コンデンサ35とにより構成されている。スイッチング素子32におけるゲート(端子)には、制御部50からの制御信号が入力されてゲート信号を生成するチョッパゲート信号発生回路37およびこのチョッパゲート信号発生回路37からのゲート信号に基づいてスイッチング素子32を駆動するゲート駆動回路38が接続されている。
チョッパ部30においては、スイッチング素子32のスイッチング周波数およびスイッチング素子32のON/OFF期間が調整されることにより、インバータ部40に出力される直流電圧の大きさが調整される。
【0020】
インバータ部40は、各々例えばFETよりなる4つのスイッチング素子Q1〜Q4がブリッジ状に接続されてなるフルブリッジ型インバータ回路を備えている。各スイッチング素子Q1〜Q4のゲート(端子)には、スイッチング素子Q1〜Q4をゲート信号に基づいて駆動するゲート駆動回路G1〜G4が接続されていると共に、制御部50からの制御信号によりゲート信号を生成し、当該ゲート信号を各ゲート駆動回路G1〜G4に出力するインバータゲート信号発生回路41が接続されている。
インバータ部40においては、各スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング周期を調整することにより、昇圧部45に出力される交流電圧の周波数が調整される。
【0021】
制御部50は、CPU(演算処理手段)51と、電源スイッチ部22における接点を開閉制御する電源スイッチ制御回路52と、チョッパ部30に対する電圧制御信号およびインバータ部40に対する周波数制御信号をアナログ信号に変換するD/A変換回路53,53と、電圧検出部60による電圧検出信号および電流検出部65による電流検出信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路54,54とを備えている。
D/A変換回路53およびA/D変換回路54の各々は、フォトカプラ55を備えており、これにより、制御部50と給電部20とが電気的に絶縁(分離)されている。
【0022】
電圧検出部60は、抵抗R1,R2による直列回路を備えており、エキシマランプ10に対する入力電圧が分圧により検出される。この例においては、電圧検出部60は、チョッパ部30とインバータ部40との間に接続されており、昇圧部45に対する入力電圧がランプ入力電圧として検出される。
電流検出部65は、チョッパ部30におけるダイオード34のアノード側に接続された電流検出抵抗により構成されている。電流検出部65により検出された電流値は、電流電圧変換回路66により電圧信号に変換されて電流検出信号として制御部50に出力される。
図3における68は、給電部20におけるランプ点灯用の主回路の電圧信号および電流信号を、A/D変換回路54で使用するための絶縁された信号に変換するフォトカプラである。なお、図3中の一点鎖線は、電気的に分離された状態であることを示している。
【0023】
記憶部70に記録されたエキシマランプ10に固有の電気的特性値としては、例えば、初期電圧目標値、初期周波数目標値、定常電圧目標値、定常周波数目標値、初期点灯タイマ値、部分不点灯電圧値、電圧低下タイマ値、電圧補正テーブル、周波数補正テーブルなどを挙げることができる。
ここに、初期電圧目標値とは、エキシマランプ10に固有の点灯初期ランプ印加電圧値であり、初期周波数目標値とは、エキシマランプ10に固有の点灯初期ランプ印加周波数である。また、定常電圧目標値とは、エキシマランプ10に固有の定常点灯時のランプ印加電圧値であり、定常周波数目標値とは、エキシマランプ10に固有の定常点灯時のランプ印加周波数である。初期点灯タイマ値とは、初期点灯状態を維持すべき時間である。部分不点灯電圧値とは、後述するように、定常電圧(定常点灯時のランプ印加電圧)より一定以上低下した、エキシマランプ10が部分不点灯状態であると判断される電圧値であり、電圧低下タイマ値とは、エキシマランプ10が部分不点灯状態である判断される基準となる部分不点灯電圧値の継続時間である。また、電圧補正テーブルは、ランプ印加電圧値と補正値の対応テーブルであり、周波数補正テーブルは、ランプ印加周波数と補正値の対応テーブルである。
【0024】
而して、上記のエキシマランプ点灯装置においては、制御部50による例えば定電力フィードバック制御によって、エキシマランプ10の点灯制御が行われるが、制御部50におけるCPU51は、ランプ入力電圧を監視することによりエキシマランプ10の部分不点灯状態を検出する機能を有する。
具体的には、CPU51は、電圧検出部60によって検出されたランプ入力電圧値が予め設定された部分不点灯電圧領域内にあることを検出することによりエキシマランプ10の部分不点灯状態を検出する機能を有する。実際には、外乱による電圧低下の可能性を排除するために、電圧検出部60により検出されるランプ入力電圧値が部分不点灯電圧領域内にある状態が予め設定された時間、すなわち電圧低下タイマ値以上継続していることが検出されたときに、CPU51によって、エキシマランプ10の部分不点灯状態が検出される。
【0025】
そして、CPU51は、エキシマランプ10の部分不点灯状態を検出することにより、例えば、電源スイッチ部22を遮断(接点の開成)してエキシマランプ10の点灯動作を停止する機能を有する。また、表示部72を備えた構成のものにおいては、CPU51は、エキシマランプ10が部分不点灯状態にあることを検出したとき、表示部72にその旨を表示することにより外部に報知する機能を有していてもよい。
以上において、部分不点灯電圧領域は、例えば定格電圧の60〜80%の大きさの電圧範囲に設定されており、上述したように、記憶部70に記録されている。また、電圧低下タイマ値は、外乱による電圧低下の可能性を排除することのできる値に設定されていればよく、例えば1〜10秒間の時間範囲内で設定することができる。
【0026】
以下、上記のエキシマランプ点灯装置の動作について説明する。
図4は、本発明のエキシマランプ点灯装置によるエキシマランプの点灯動作の一例を示すフローチャートである。
エキシマランプ点灯装置の主電源が投入されると、記憶部70に記録された部分不点灯電圧値(部分不点灯電圧領域)に係るデータがCPU51によって読み出された後(S1)、エキシマランプ10の初期点灯動作が行われる(S2)。このエキシマランプ10の初期点灯動作においては、先ず、記憶部70に記録された、初期電圧目標値および初期周波数目標値に係るデータがCPU51によって読み出され、これらのエキシマランプ10に固有の初期点灯条件に応じた電圧制御信号がチョッパゲート信号発生回路37に出力されると共に周波数制御信号がインバータゲート信号発生回路41に出力される。また、電源スイッチ制御回路52より電源スイッチ部22に制御信号が出力され、エキシマランプ10が初期点灯される。そして、記憶部70に記録された初期点灯タイマ値(T0)に係るデータがCPU51によって読み出され、計時部71による初期点灯タイマのカウントダウンが開始される(S3)。
この初期点灯動作は、定常点灯よりも大きな電力(過度の投入電力)を入れてエキシマランプ10を強制的に点灯させるものである。
【0027】
エキシマランプ10を初期点灯条件で点灯させてから所定時間(T0)が経過した後(S4)、エキシマランプ10の点灯条件が初期点灯条件より定常点灯条件に変更されてエキシマランプ10が定格電圧で点灯される定常点灯状態に移行される(S5)。
エキシマランプ10の定常点灯動作においては、記憶部70に記録された、定常電圧目標値および定常周波数目標値に係るデータがCPU51によって読み出され、これらのエキシマランプ10に固有の定常点灯条件に応じた電圧制御信号がチョッパゲート信号発生回路37に出力されると共に周波数制御信号がインバータゲート信号発生回路41に出力される。
【0028】
エキシマランプ10の定常点灯においては、電圧検出部60により検出される電圧検出信号および電流検出部65により検出される電流検出信号に基づいて、エキシマランプ10に供給される電力が一定の大きさとなるよう、インバータ部40による出力における周波数の大きさが調整される(S6)。
また、エキシマランプ10の部分不点灯監視動作が電圧検出部60により検出される電圧検出信号に基づいて行われる。
【0029】
エキシマランプ10の部分不点灯監視動作においては、CPU51によって、電圧検出部60により検出されるランプ入力電圧値(検出電圧)が部分不点灯電圧領域内であるか否かの判定処理が行われる(S7)。ランプ入力電圧値が部分不点灯電圧領域内であることが検出された場合には、計時部71による電圧低下タイマのカウントダウンが開始される(S8)。そして、電圧検出部60により検出されるランプ入力電圧値が部分不点灯電圧領域内にある状態が電圧低下タイマ値(Tv)以上継続していることが検出されたときには(S9,S10)、エキシマランプ10が部分不点灯状態にあることが検出され(S11)、異常処理が行われる(S12)。この異常処理においては、例えば電源スイッチ制御回路52より制御信号が出力されて電源スイッチ部22が遮断されてエキシマランプ10の定常点灯動作(給電)が停止、あるいは、エキシマランプ10が部分不点灯状態にあることが表示部72に表示されて外部に報知される。また、これらの処理が共に行われてもよい。
一方、ランプ入力電圧値が部分不点灯電圧領域内にある状態が継続する時間が電圧低下タイマ値(Tv)以内の時間である場合には、電圧低下タイマのカウントがリセットされ(S13)、再び、電圧検出部60により検出されるランプ入力電圧値が部分不点灯電圧領域内であるか否かの判定処理が行われる(S7)。
【0030】
以上において、エキシマランプ10に対するランプ入力電圧が低下する理由としては、例えば、制御部50におけるフォトカプラ55、電圧検出部60および電流検出部65よりの検出信号が入力されるフォトカプラ68の故障(経年劣化を含む)や誤動作などが考えられる。
【0031】
而して、後述する実験例の結果に示されるように、エキシマランプ10の部分不点灯の現象が生じているときには、ランプ入力電圧が一定以上低下した状態、具体的には、ランプ入力電圧がエキシマランプ10の定格電圧の60〜80%の大きさ(部分不点灯電圧領域内)となっている。
従って、ランプ入力電圧に基づく部分不点灯監視動作が行われる上記構成のエキシマランプ点灯装置によれば、電圧検出部によって検出されるランプ入力電圧値が予め設定された部分不点灯電圧領域内であることを検出することにより、エキシマランプ10の部分不点灯状態を確実に検出することができる。その結果、光照射装置の光源として用いられた場合には、エキシマランプ10の部分不点灯の検出により、例えばエキシマランプ10に対する給電が停止されることによって、エキシマランプ10の部分不点灯に起因する被処理物の不十分な処理が行われることを確実に回避することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、電圧検出部によるランプ入力電圧の検出は、昇圧部を構成するトランスの入力側の電圧を検出するよう構成されていても、出力側の電圧を検出するよう構成されていても、いずれでもよい。
また、エキシマランプは、真空紫外光(エキシマ光)を励起光として蛍光体に照射し、その蛍光体が励起することによって得られる光を放射する構成のものであってもよい。このようなエキシマランプにおいては、例えば、放電容器の内表面に、誘電体バリア放電によって生成されるエキシマから放出される光を励起光として可視光を放射する蛍光体を含有する蛍光体層が設けられた構成とされる。蛍光体層を構成する蛍光体としては、誘電体バリア放電によって生成されるエキシマから放出される光を励起光として受けることによって所定の波長の光を放射する公知のものを、エキシマランプの使用用途などに応じて適宜に用いることができる。また、エキシマランプにおける紫外線反射膜が、例えばアルミナを含むもの、具体的には例えば、シリカとアルミナとの混合物またはシリカとアルミナとの積層体により構成され、エキシマ光の照射により紫外線反射膜におけるアルミナから蛍光(可視光)が発せられる構成とされていてもよい。
【0033】
<実験例1>
図2に示す構成を参照して、互いに同一の基本構成を有する5つのエキシマランプ(以下、「ランプA1」〜「ランプA5」という。)を作製した。これらのエキシマランプにおける放電容器の内表面には、誘電体バリア放電によって生成されるエキシマから放出される光により励起されて可視光を発する蛍光体層を設けた。ランプA1〜ランプA5の基本構成は以下に示すとおりである。
放電容器(11):長手方向寸法1400mm、幅方向(図2(b)における上下方向)寸法43mm、高さ方向(図2(b)における左右方向)寸法14mm、放電空間(ギャップ):10mm、
放電用ガス:キセノンガス、封入圧:53kPa、
有効発光長:1340mm
定格電圧:2800V
【0034】
ランプA1〜ランプA5の各々を、あらかじめ下記表1に従って調整した大きさのランプ入力電圧、初期周波数70kHzの初期点灯条件で初期点灯させた後、ランプ入力電力が350W(一定)となるようランプ入力電圧を下記表1に従って調整して点灯させ、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(定格電圧(100%)に対する相対値)を調べた。結果を下記表1に示す。エキシマランプの点灯状態の確認は、エキシマランプが初期点灯から点灯状態が変更されてから5秒間の時間が経過した時点において、蛍光体層からの可視光を目視にて確認することにより行った。評価は、ランプの長手方向全域で点灯している場合を「○」、ランプの長手方向において不点灯領域が存在(部分不点灯)する場合を「△」、ランプが不点灯となる場合を「×」とした。
【0035】
【表1】
【0036】
以上の結果より、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(部分不点灯電圧)は、定格電圧の65〜80%の大きさの電圧範囲であることが確認された。
【0037】
<実験例2>
上記実験例1において作製したランプA1〜A5において、放電容器の長手方向寸法を1600mm、ランプの有効発光長を1540mmとしたことの他は、ランプA1〜ランプA5と同一の構成を有する5つのエキシマランプ(以下、「ランプB1」〜「ランプB5」という。)を作製した。ランプB1〜ランプB5の定格電圧は2800Vである。そして、これらのランプB1〜ランプB5の各々を、実験例1と同様の方法により、初期点灯させた後、ランプ入力電力が400W(一定)となるようランプ入力電圧を調整して点灯させ、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(定格電圧(100%)に対する相対値)を調べた。その結果、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(部分不点灯電圧)は、定格電圧の65〜80%の大きさの電圧範囲であることが確認された。
【0038】
<実験例3>
上記実験例1において作製したランプA1〜A5において、放電容器の長手方向寸法を850mm、ランプの有効発光長を790mmとしたことの他は、ランプA1〜ランプA5と同一の構成を有する5つのエキシマランプ(以下、「ランプC1」〜「ランプC5」という。)を作製した。ランプC1〜ランプC5の定格電圧は2800Vである。そして、これらのランプC1〜ランプC5の各々を、実験例1と同様の方法により、初期点灯させた後、ランプ入力電力が205W(一定)となるようランプ入力電圧を調整して点灯させ、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(定格電圧(100%)に対する相対値)を調べた。その結果、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(部分不点灯電圧)は、定格電圧の65〜80%の大きさの電圧範囲であることが確認された。
【0039】
<実験例4>
上記実験例1において作製したランプA1〜A5において、基本構成を次に示すように変更したことの他は、ランプA1〜ランプA5と同一の構成を有する5つのエキシマランプ(以下、「ランプD1」〜「ランプD5」という。)を作製した。
放電容器(11):長手方向寸法2790mm、幅方向(図2(b)における上下方向)寸法71mm、高さ方向(図2(b)における左右方向)寸法16mm、放電空間(ギャップ):12mm、
放電用ガス:キセノンガス、封入圧:53kPa、
有効発光長:2730mm、
定格電圧:3000V
【0040】
これらのランプD1〜ランプD5の各々を、実験例1と同様の方法により、初期点灯させた後、ランプ入力電力が1820W(一定)となるようランプ入力電圧を調整して点灯させ、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(定格電圧(100%)に対する相対値)を調べた。その結果、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(部分不点灯電圧)は、定格電圧の60〜75%の大きさの電圧範囲であることが確認された。
【0041】
<実験例5>
上記実験例4において作製したランプD1〜D5において、放電容器の長手方向寸法を2440mm、ランプの有効発光長を2380mmとしたことの他は、ランプD1〜ランプD5と同一の構成を有する5つのエキシマランプ(以下、「ランプE1」〜「ランプE5」という。)を作製した。ランプE1〜ランプE5の定格電圧は3000Vである。そして、これらのランプE1〜ランプE5の各々を、実験例4と同様の方法により、初期点灯させた後、ランプ入力電力が1500W(一定)となるようランプ入力電圧を調整して点灯させ、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(定格電圧(100%)に対する相対値)を調べた。その結果、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(部分不点灯電圧)は、定格電圧の60〜75%の大きさの電圧範囲であることが確認された。
【0042】
<実験例6>
上記実験例4において作製したランプD1〜D5において、放電容器の長手方向寸法を940mm、ランプの有効発光長を880mmとしたことの他は、ランプD1〜ランプD5と同一の構成を有する5つのエキシマランプ(以下、「ランプF1」〜「ランプF5」という。)を作製した。ランプF1〜ランプF5の定格電圧は3300Vである。そして、これらのランプF1〜ランプF5の各々を、実験例4と同様の方法により、初期点灯させた後、ランプ入力電力が560W(一定)となるようランプ入力電圧を調整して点灯させ、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(定格電圧(100%)に対する相対値)を調べた。その結果、ランプが部分不点灯状態となるランプ入力電圧(部分不点灯電圧)は、定格電圧の60〜75%の大きさの電圧範囲であることが確認された。
【0043】
以上の結果より、ランプが部分不点灯状態となりうるランプ入力電圧(部分不点灯電圧)は、定格電圧の60〜80%の大きさの電圧範囲であり、特に、ランプ入力電圧(部分不点灯電圧)が定格電圧の65〜70%の大きさの電圧範囲である場合には、ランプの仕様に拘らず、ランプが部分不点灯状態となることが確認された。
【符号の説明】
【0044】
10 エキシマランプ
11 放電容器
12 一方の電極
13 他方の電極
15 紫外線反射膜
18 光出射部(アパーチャ部)
S 放電空間
20 給電部
21 交流電源
22 電源スイッチ部
25 整流部
26 ダイオードブリッジ
27 平滑コンデンサ
28 放電抵抗
30 チョッパ部
32 スイッチング素子
33 インダクタ
34 ダイオード
35 平滑コンデンサ
37 チョッパゲート信号発生回路
38 ゲート駆動回路
40 インバータ部
41 インバータゲート信号発生回路
Q1〜Q4 スイッチング素子
G1〜G4 ゲート駆動回路
45 昇圧部
46 トランス
50 制御部
51 CPU(演算処理手段)
52 電源スイッチ制御回路
53 D/A変換回路
54 A/D変換回路
55 フォトカプラ
60 電圧検出部
R1,R2 抵抗
65 電流検出部
66 電流電圧変換回路
68 フォトカプラ
70 記憶部
71 計時部
72 表示部
図1
図2
図3
図4