特許第5804009号(P5804009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5804009
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20151015BHJP
【FI】
   F24F11/02 N
   F24F11/02 103C
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-190510(P2013-190510)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-55447(P2015-55447A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2014年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東山 伸
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋記
(72)【発明者】
【氏名】岡内 正樹
(72)【発明者】
【氏名】上中 俊一
(72)【発明者】
【氏名】池田 基伸
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−137135(JP,A)
【文献】 特開2009−079811(JP,A)
【文献】 特開昭60−226646(JP,A)
【文献】 特開2004−044935(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0077990(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02042819(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源(40)からの交流を送電する電力配線(L)と、信号を伝送する信号線(S)と、交流の送電と信号の伝送に共用される共通線(N)とを含む複数本の電気配線(L,N,S)で接続される室内機(20)及び室外機(10)を備えている空気調和装置であって、
前記室内機(20)に、交流電源(40)から電力が供給されて起動する室内側電源回路(22)と、前記室内側電源回路(22)から電力が供給されて起動する室内側制御回路(23)と、前記室内側制御回路(23)によりオンオフ制御されかつ前記電力配線(L)と前記信号線(S)とを接続するオン状態と当該接続を遮断するオフ状態とに切り換える第1スイッチ(K2R)と、が設けられ、
前記室外機(10)に、前記室内側制御回路(23)の起動後に前記第1スイッチ(K2R)がオンされることにより前記交流電源(40)から電力が供給されて起動する室外側電源回路(12)と、前記室外側電源回路(12)から電力が供給されて起動する室外側制御回路(13)と、前記室外側制御回路(13)によってオンオフ制御されるとともに、前記室外側制御回路(13)の起動後にオンされる第2スイッチ(K14R)とが設けられ、
いずれかの前記電気配線が互い違いに誤配線されたことを検知する検知手段(11a)と、
前記検知手段(11a)により前記誤配線が検知されたときに、前記室内側制御回路(23)の起動を制限することによって、前記第1スイッチ(K2R)のオン動作に伴う前記交流電源(40)の相間短絡を防止する保護手段と、をさらに備えており、
前記信号線(S)と前記共通線(N)とが互い違いに誤配線されたとき、前記室外側電源回路(12)は、前記第1スイッチ(K2R)がオンされることなく前記交流電源(40)からの電力供給により起動し、前記室内側電源回路(22)は、前記室外側制御回路(13)の起動後に前記第2スイッチ(K14R)がオンされることによって前記交流電源(40)からの電力供給により起動して前記室内側制御回路(23)に電力を供給するように構成され、
前記保護手段は、前記検知手段(11a)によって前記誤配線が検知されたとき、前記室内側制御回路(23)の起動後に前記第1スイッチ(K2R)がオンされる前に、前記室外側制御回路(13)が前記第2スイッチ(K14R)をオフする制御を実行することにより構成されていることを特徴とする、空気調和装置。
【請求項2】
前記室外機(10)に、前記信号線(S)及び前記共通線(N)を介して前記室内機(20)と通信する室外機伝送回路(11)が設けられ、
前記検知手段(11a)は、前記室外機伝送回路(11)内の電圧信号波形から前記誤配線を検知する、請求項1に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置として、例えば特許文献1に記載されているように、交流を送電する電力配線と、信号を伝送する信号線と、交流の送電と信号の伝送に共用される共通線とによって室外機と室内機とを接続したものが知られている。また、この特許文献1には、電力線、信号線、及び共通線のうち少なくとも2本が互い違いに接続(誤配線)された場合に、室内機に設けられた伝送回路が誤配線検知処理を実行することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−137135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、信号線と共通線とが誤配線された場合に、室内機の伝送回路による誤配線検知処理では直接的に誤配線を検知することができず、当該誤配線に伴うその他の要因を検知することによって間接的に誤配線を検知していた。そのため、当該誤配線を検知する確実性が低くなる欠点があった。
【0005】
一方、特許文献1の空気調和装置は、待機電力を低減するために、商用交流電源から室内機の電源回路には電力を供給するが、室外機の電源回路には電力を供給しないサスペンド状態が設定されており、このサスペンド状態から運転状態(又はその前段階の状態)へと移行するために、室内機には、室外機の電源回路に電力を供給するためのスイッチが設けられている。
【0006】
しかし、特許文献1の空気調和装置は、前記誤配線がある状態で前記スイッチがオンされると交流電源に相間短絡が生じる構成となっている。そして、前記誤配線検知処理によって誤配線を検知できなかった場合、前記スイッチがオンされてしまうので、交流電源に相間短絡が生じ、その回路中に配置された部品の故障を招く可能性がある。
【0007】
本発明は、室外機と室内機とを接続する電気配線が誤配線された場合に、交流電源の相間短絡を防止することができる空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、交流電源からの交流を送電する電力配線と、信号を伝送する信号線と、交流の送電と信号の伝送に共用される共通線とを含む複数本の電気配線で接続される室内機及び室外機を備えている空気調和装置であって、
前記室内機に、交流電源から電力が供給されて起動する室内側電源回路と、前記室内側電源回路から電力が供給されて起動する室内側制御回路と、前記室内側制御回路によりオンオフ制御されかつ前記電力配線と前記信号線とを接続するオン状態と当該接続を遮断するオフ状態とに切り換える第1スイッチと、が設けられ、
前記室外機に、前記室内側制御回路の起動後に前記第1スイッチがオンされることにより前記交流電源から電力が供給されて起動する室外側電源回路と、前記室外側電源回路から電力が供給されて起動する室外側制御回路と、前記室外側制御回路によってオンオフ制御されるとともに、前記室外側制御回路の起動後にオンされる第2スイッチとが設けられ、
いずれかの前記電気配線が互い違いに誤配線されたことを検知する検知手段と、
前記検知手段により前記誤配線が検知されたときに、前記室内側制御回路の起動を制限することによって、前記第1スイッチのオン動作に伴う前記交流電源の相間短絡を防止する保護手段と、をさらに備えており、
前記信号線と前記共通線とが互い違いに誤配線されたとき、前記室外側電源回路は、前記第1スイッチがオンされることなく前記交流電源からの電力供給により起動し、前記室内側電源回路は、前記室外側制御回路の起動後に前記第2スイッチがオンされることによって前記交流電源からの電力供給により起動して前記室内側制御回路に電力を供給するように構成され、
前記保護手段は、前記検知手段によって前記誤配線が検知されたとき、前記室内側制御回路の起動後に前記第1スイッチがオンされる前に、前記室外側制御回路が前記第2スイッチをオフする制御を実行することにより構成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、検知手段により誤配線が検知されたときに、室内側制御回路の起動を制限することによって、当該室内側制御回路の起動後に第1スイッチがオンされるのを防止し、当該第1スイッチのオン動作に伴う交流電源の相間短絡を好適に防止することができる。
【0011】
また、上記構成によれば、信号線と共通線とが誤配線されると、まず、室外側電源回路が起動し、この室外側電源回路から電力が供給されて室外側制御回路が起動する。また、室内側制御回路は、室外側制御回路の起動後の第2スイッチのオン動作で室内側電源回路が起動することによって起動する。したがって、検知手段によって誤配線が検知された場合には、第2スイッチをオンからオフに切り換えることによって、室内側制御回路の起動を制限し、第1スイッチがオンされるのを防止することができる。
【0012】
)前記室外機に、前記信号線及び前記共通線を介して前記室内機と通信する室外機伝送回路が設けられ、前記検知手段は、前記室外機伝送回路内の電圧信号波形から前記誤配線を検知することが好ましい。
この構成によれば、室内側制御回路が起動しない状態であっても室外機側で誤配線を検知することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、室外機と室内機とを接続する電気配線が誤配線された場合に、交流電源の相間短絡を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る空気調和装置の電装系統のブロック図である。
図2】空気調和装置における室外側電源回路の平滑コンデンサに充電される回路が形成された時点の各リレーの状態を示す電装系統のブロック図である。
図3】充電状態からウエイト状態への移行完了時における各リレーの状態を示す電装系統のブロック図である。
図4】誤配線時の電装系統のブロック図である。
図5】正常配線時の各リレー及び回路の動作を示すタイムチャートである。
図6】誤配線時の各リレー及び回路の動作を示すタイムチャートである。
図7】空気調和装置の状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔全体構成〕
図1は、本発明の一実施の形態に係る空気調和装置1の電装系統のブロック図である。
この空気調和装置1は、運転停止中に室外機10への電力供給を遮断することができる空気調和装置である。空気調和装置1は、図1に示されるように、室外機10、室内機20、及びリモートコントローラ30を備えている。
【0016】
なお、図示は省略するが、室外機10は、電動圧縮機、室外熱交換器、室外ファン、膨張弁などの機器が設けられ、室内機20には、室内熱交換器、室内ファンなどの機器が設けられている。空気調和装置1では、これらの機器によって、冷凍サイクルを行う冷媒回路(図示は省略)が構成されている。
【0017】
空気調和装置1は、室外機10において商用交流電源40(以下、単に交流電源とも言う)から交流(この例では200Vの三相交流)を受電する。交流電源40の電力は、室外機10内の回路や電動圧縮機に供給され、さらにこの三相交流の2相分が室内機20に給電されるようになっている。また、室外機10と室内機20とは、室内機20側から室外機10を制御するため等の目的で、信号の通信を行うようになっている。そのため、室外機10と室内機20との間には、交流電源40からの交流電力を送電する電力配線Lと、信号を伝送する信号線Sと、交流電力の送電と前記信号の伝送に共用する共通線Nとの3線(内外配線)が設けられている。
【0018】
本実施の形態では、電力配線Lは、室外機10において交流電源40のR相に接続され、共通線Nは、室外機10において交流電源40のS相に接続されている。したがって、室内機20は、交流電源40のR相及びS相に接続されて単相交流が供給されている。信号線Sは、信号の送受信の他に、後述するように、交流電力の送電にも使用される。
【0019】
〔室外機10の構成〕
室外機10は、電装系統として、第1室外側電源回路14、第2室外側電源回路12、室外機伝送回路11、室外側制御回路13、リレーK13R,K14R,K15Rを備えている。
【0020】
(第1室外側電源回路14)
第1室外側電源回路14は、交流電源40から受電した3相交流を直流に変換し、いわゆるインテリジェントパワーモジュール(Intelligent Power Module、図中では「IPM」と略記)や室外ファンモータに供給する。なお、インテリジェントパワーモジュールは、入力された直流を所定の周波数及び電圧の交流に変換し、電動圧縮機のモータに給電する。本実施の形態では、第1室外側電源回路14は、ノイズフィルタ14a、2つのメインリレー14b、2つのダイオードブリッジ回路14c、リアクトル14d、及び平滑コンデンサ14eを備えている。
【0021】
ノイズフィルタ14aは、コンデンサとコイルで形成されている。2つのメインリレー14bは、三相交流のR相、T相の供給ラインにそれぞれ設けられている。2つのダイオードブリッジ回路14cのうち、一方は、三相交流のR相及びS相を入力とし、もう一方は、三相交流のS相及びT相を入力とし、入力された交流をそれぞれ全波整流する。これらのダイオードブリッジ回路14cの出力は、リアクトル14dを介して平滑コンデンサ14eに入力され、平滑コンデンサ14eで平滑化される。平滑コンデンサ14eで平滑化された直流は、インテリジェントパワーモジュールや室外ファンモータに供給される。
【0022】
(第2室外側電源回路12)
第2室外側電源回路12は、三相交流のR相及びS相の2相を直流(この例では5V)に変換し、室外側制御回路13に供給する。本実施の形態では、第2室外側電源回路12は、ダイオードブリッジ回路12a、平滑コンデンサ12b、及びスイッチング電源12cを備えている。ダイオードブリッジ回路12aは、一方の入力が、後に詳述するリレーK13Rに接続され、もう一方の入力が、三相交流のS相に接続されている。ダイオードブリッジ回路12aの出力は、平滑コンデンサ12bで平滑化された後に、スイッチング電源12cに入力されている。スイッチング電源12cは、例えばDC−DCコンバータで構成され、入力された直流を所定の電圧(例えば、5V)に変換して室外側制御回路13に出力する。
【0023】
(室外機伝送回路11)
室外機伝送回路11は、室内機伝送回路21との間で信号の通信を行う。この通信では、信号線Sと共通線Nとの間の電位差に基づいて、ハイレベル及びローレベルの2値のデジタル信号の通信を行う。室外機伝送回路11内の通信回路(図示は省略)は、一端が共通線Nに接続され、通信回路の他端はリレーK14Rを介して信号線Sに接続されている。
【0024】
(リレーK13R)
リレーK13Rは、第2室外側電源回路12への交流供給の経路を切り替えるリレーである。リレーK13Rは、いわゆるC接点リレーで構成されている。詳しくは、リレーK13Rは、2つの固定接点と、ひとつの可動接点を有し、リレーK13Rのコイルに通電されていない場合は、一方の固定接点(ノーマルクローズ接点とよぶ)と可動接点とが接続され、該コイルに通電されると、もう一方の固定接点(ノーマルオープン接点とよぶ)と可動接点とが接続される。リレーK13Rの切換え(コイルへの通電の有無)は、室外側制御回路13が制御する。
【0025】
本実施の形態では、リレーK13Rの可動接点は、ダイオードブリッジ回路12aの入力に接続されている。また、ノーマルクローズ接点は、信号線Sに接続され、ノーマルオープン接点は、前記三相交流のR相に接続されている。したがって、リレーK13Rのコイルに通電されていない場合は、ノーマルクローズ接点と可動接点とが接続されて、ダイオードブリッジ回路12aの一方の入力は信号線Sに接続される。リレーK13Rのコイルに通電されると、可動接点とノーマルオープン接点とが接続されて、第2室外側電源回路12のダイオードブリッジ回路12aに交流が入力される状態になる。
【0026】
(リレーK14R)
リレーK14Rは、信号線Sと室外機伝送回路11との接続及び非接続を切り替えるリレーである。リレーK14Rのオンオフは、室外側制御回路13が制御する。
【0027】
(リレーK15R)
リレーK15Rは、室外機伝送回路11への電力供給の有無を切り替えるリレーである。リレーK15Rをオンにすれば、交流電源40から室外機伝送回路11に電力供給され、リレーK15Rをオフにすれば、交流電源40から室外機伝送回路11への給電が断たれる。リレーK15Rのオンオフは、室外側制御回路13が制御する。
【0028】
(室外側制御回路13)
室外側制御回路13は、マイクロコンピュータと、それを動作させるプログラムを格納したメモリー等を含んでいる。室外側制御回路13は、例えば室外機伝送回路11が室内機伝送回路21から受信した信号に応じて電動圧縮機等の制御を行う他、室外機10の起動時の制御(後述)も行う。室外側制御回路13は、空気調和装置1がサスペンド状態(詳しくは後述)の場合には、電力供給が断たれて動作を停止する。
【0029】
〔室内機20の構成〕
室内機20は、電装系統として、室内側電源回路22、室内機伝送回路21、室内側制御回路23、リレーK2R、第1ダイオードD1、及び第2ダイオードD2を備えている。
【0030】
(室内側電源回路22)
室内側電源回路22は、ノイズフィルタ22a、ダイオードブリッジ回路22b、平滑コンデンサ22c、及びスイッチング電源22dを備えている。室内側電源回路22は、電力配線L及び共通線Nを介して交流電源40から供給された交流を直流(例えば、5Vの直流)に変換し、室内側制御回路23に供給する。
【0031】
本実施の形態では、ノイズフィルタ22aは2つのコイルで形成されている。ダイオードブリッジ回路22bは、ノイズフィルタ22aを介して電力配線L及び共通線Nから入力された交流を全波整流する。平滑コンデンサ22cは、例えば電解コンデンサで形成され、ダイオードブリッジ回路22bの出力を平滑化する。スイッチング電源22dは、例えばDC−DCコンバータなどで構成され、平滑コンデンサ22cが平滑化した直流を所定の電圧(5V)に変換して室内側制御回路23に出力する。なお、平滑コンデンサ22cは、第2室外側電源回路12における平滑コンデンサ12bよりも静電容量が大きくなっている。例えば、第2室外側電源回路12の平滑コンデンサ12bを30μF程度とし、室内側電源回路22の平滑コンデンサ22cを180μF程度とすることができる。
【0032】
(室内機伝送回路21)
室内機伝送回路21は、既述の通り、室外機伝送回路11との間で信号の通信を行う。この通信では、信号線Sと共通線Nとの間の電位差に基づいて、デジタル信号の通信を行うので、室内機伝送回路21の通信回路の一端は、第2ダイオードD2を介して信号線Sに接続され、通信回路の他端は共通線Nに接続されている。
【0033】
(リレーK2R)
リレーK2Rは、電力配線Lと信号線Sとを結ぶバイパス線25に設けられており、電力配線Lと信号線Sとの接続及び非接続を切り換えるスイッチとして機能する。すなわち、このリレーK2Rをオンにすれば、電力配線Lと信号線Sとが接続され、リレーK2Rをオフにすれば、電力配線Lと信号線Sとが切断される。リレーK2Rのオンオフは、室内側制御回路23が制御する。このリレーK2Rは、本発明における第1スイッチの一例であり、電力供給が遮断された室外機10に対して電力供給を開始する起動手段としての機能を有する。
【0034】
(第1ダイオードD1)
第1ダイオードD1は、電力配線Lと信号線Sとを結ぶバイパス線25にリレーK2Rと直列に設けられている。具体的には、第1ダイオードD1は、アノードがバイパス線25と信号線Sとの接続ノードND1に接続され、カソードがリレーK2Rに接続されている。第1ダイオードD1は、室内機伝送回路21へ流入する方向の交流電流を阻止する機能を有する。
【0035】
(第2ダイオードD2)
第2ダイオードD2は、アノードが信号線Sの接続ノードND1に接続され、カソードが室内機伝送回路21における信号入力ノードND2に接続されている。この第2ダイオードD2は、室内機伝送回路21から流出方向の交流電流を阻止する機能を有する。
【0036】
(室内側制御回路23)
室内側制御回路23は、マイクロコンピュータと、それを動作させるプログラムを格納したメモリーを含んでいる。室内側制御回路23は、リモートコントローラ30からの指令を受けて、空気調和装置1の運転状態を制御する。室内側制御回路23は、リモートコントローラ30からの指令を受信するために、常に室内側電源回路22によって給電されている。
【0037】
(リモートコントローラ30)
リモートコントローラ30は、ユーザーの操作を受け付けるとともに、ユーザーの操作に応じた信号を室内側制御回路23に送信する。ユーザーは、例えば、リモートコントローラ30のボタン操作により、空気調和装置1の運転開始、停止、設定温度調整などを行えるようになっている。リモートコントローラ30は、信号線で室内側制御回路23と結線されたいわゆるワイヤードリモコンとして構成してもよいし、赤外線や電波を用いて室内側制御回路23と通信を行う、いわゆるワイヤレスリモコンとして構成してもよい。
【0038】
〔空気調和装置1の動作〕
本実施の形態の空気調和装置1は、図7に示されるように、サスペンド状態、充電状態、ウエイト状態、及び運転状態の4つの状態を遷移する。そして、空気調和装置1の運転を開始する場合には、図7に実線矢印で示した順で、サスペンド状態から運転状態に遷移し、運転停止する場合には、同図に破線矢印で示した順で、運転状態からサスペンド状態に遷移するようになっている。
なお、以下において、待機電力とは「機器が非使用状態、若しくは何らかの入力(命令指示等)待ちの時に定常的に消費している電力」をいう。具体的に、空気調和装置1では、リモートコントローラ30の待ち受けのみを行うのに必要な電力が待機電力である。
【0039】
(1)サスペンド状態
サスペンド状態とは、室内機20には電力が供給され、室外機10には電力が供給されていない状態である。
本実施の形態のサスペンド状態は、一例として、空気調和装置1全体として消費電力が最小になる状態となっている。具体的に、本実施の形態のサスペンド状態では、室外機10は電力を受電してそれを室内機20へ供給はするが、室外機10内部の各回路や電動圧縮機などには電力が供給されていない状態である。このように、サスペンド状態では、室外機10の各回路への電力供給が断たれ、待機電力の低減を図ることができる。
【0040】
一方、室内機20は、待機電力が最小となる状態であり、室内側制御回路23においてリモートコントローラ30からの信号受信にかかわる部分は、室内側電源回路22から電力を受けて動作している。なお、リモートコントローラ30も、待機電力が最小となる状態であるが、ボタン操作の受け付けは可能な状態である。なお、室内機20及びリモートコントローラ30の消費電力(待機電力)の程度はこれに限らない。
【0041】
(2)充電状態
充電状態とは、室外機10では、第2室外側電源回路12の平滑コンデンサ12bに充電される回路が形成され、室外機伝送回路11と室内機伝送回路21の間の信号伝送が開始されるまでの期間における状態をいう。このとき、室内機20の電力消費は、サスペンド状態と同様である。
【0042】
(3)ウエイト状態
ウエイト状態とは、運転開始時には前記充電状態を抜けた状態であり、運転停止時には運転状態(後述)から遷移する状態である。何れも、室外機10が、即時、運転状態(後述)へ移行可能な状態をいう。ウエイト状態では、室外機伝送回路11及び室外側制御回路13の動作も可能である。特に、運転停止時のウエイト状態は、電動圧縮機における冷媒圧力を均圧させるためや、運転開始と運転停止を繰り返すスケジュール運転が設定されている場合などのために設けられており、その時間は例えば10分である。なお、室内機20の電力消費はサスペンド状態と同様である。なお、図7において、ウエイト状態からサスペンド状態に戻った後は、リモートコントローラ30の操作による運転開始の指示等により、再び充電状態〜ウエイト状態への遷移がなされる。
【0043】
(4)運転状態
運転状態とは、メインリレー14bをオンにして、電動圧縮機や室外ファンが運転可能な状態、若しくは運転している状態をいう。いわゆる欠相通電やサーモオフ状態もこれにあたる。なお、室内機20では、室内ファン等が運転状態となり、電力消費は、上記の各状態よりも増える。
【0044】
図5は、正常配線時の各リレーや回路の動作を示すタイムチャートである。特に、図5には、電源投入後におけるサスペンド状態〜ウエイト状態の各リレーや回路の動作が示されている。図5において、電源ブレーカーがオンされると、室内機20の室内側電源回路22は、交流電源40から給電されて起動し、さらに、室内側制御回路23は、室内側電源回路22から給電されて起動する。これによってサスペンド状態となる。その後、所定時間経過後に充電状態となり、室外機10における第2室外側電源回路12は、平滑コンデンサ12bが充電されることによって起動し、さらに、室外側制御回路13が、第2室外側電源回路12から給電されて起動する。さらに、所定時間経過後に、室外機伝送回路11が、室内機伝送回路21と通信可能なウエイト状態となる。
【0045】
〔サスペンド状態における電装系統〕
サスペンド状態における電装系統の状態を説明する。
図1において、サスペンド状態では、室外機10は、メインリレー14bがオフの状態であり、第1室外側電源回路14からインテリジェントパワーモジュールや室外ファンモータには電力が供給されていない。また、リレーK14R及びリレーK15Rもオフ状態である。そのため、室外機伝送回路11は、信号線Sとの接続が断たれるとともに、電力の供給も断たれている。また、室内側電源回路22における平滑コンデンサ22cは、交流電源40からの電力により充電され、スイッチング電源22dが立ち上がった状態となり、室内側制御回路23は、室内側電源回路22からの給電により起動した状態となる。
【0046】
リレーK13Rは、ノーマルクローズ接点と可動接点とが接続された状態である。したがって、第2室外側電源回路12のダイオードブリッジ回路12aは、一方の入力が信号線Sに接続されている。この状態では、第2室外側電源回路12に電力が供給されず、室外側制御回路13への給電も行われない。したがって、サスペンド状態では、室外機10は電力の供給が遮断されている。
【0047】
サスペンド状態における室内機20では、リレーK2Rがオフ状態であり信号線Sと電力配線Lとの間のバイパス線25が非接続状態になっている。
【0048】
〔サスペンド状態から充電状態への移行〕
図2は、第2室外側電源回路12の平滑コンデンサ12bに充電される回路が形成された時点の各リレーの状態を示す電装系統のブロック図である。
図2及び図5に示されるように、例えば、電源投入後に室内側制御回路23が起動してから所定時間t1が経過した後や、サスペンド状態からユーザーがリモートコントローラ30を操作して空気調和装置1の運転開始(例えば冷房運転の開始)を指示した場合等に、室内側制御回路23は、リレーK2Rをオン状態にする。そうすると、三相交流のR相から、電力配線L、リレーK2R、第1ダイオードD1、信号線S、及びリレーK13Rを介してダイオードブリッジ回路12aの一方の入力に到る送電経路が形成される。ダイオードブリッジ回路12aの他方の入力は、三相交流のS相に接続されているので、ダイオードブリッジ回路12aには単相交流が供給される。これにより、平滑コンデンサ12bを充電する回路が形成された状態になる。
【0049】
そして、三相交流のR相の電位がS相の電位よりも高い場合には、第1ダイオードD1によって、電力配線Lから室内機伝送回路21及び室外機10へ流入する方向の交流電流が阻止される。また、室内機伝送回路21は、室内側電源回路22を介してR相とつながるが、室内機伝送回路21から信号線Sへ流出する方向の交流電流は、第2ダイオードD2によって阻止される。逆に、三相交流のS相の電位がR相の電位よりも高い場合は、ダイオードブリッジ回路12aに電流が流れる。
【0050】
平滑コンデンサ12bへの充電が開始されてスイッチング電源12cへの入力が安定すると、スイッチング電源12cが規定の直流電圧(この例では5V)を出力できるようになる。つまり、スイッチング電源12cが起動する。これにより、スイッチング電源12cから室外側制御回路13に電力が供給され、室外側制御回路13が起動する。
【0051】
室外側制御回路13は、起動から所定時間t5が経過すると、リレーK13Rのコイルに通電させて、ノーマルオープン接点と可動接点とを接続する状態(オン状態)に切り換える(図3参照)。これにより、ダイオードブリッジ回路12aの一方の入力は、三相交流のR相に、室外機10内の送電経路を介して接続される。すなわち、室外側制御回路13は、信号線Sを経由せずに交流電源40から給電される状態に切り換わる。また、室外側制御回路13は、同時にリレーK15Rもオンにする(図3参照)。これにより、室外機伝送回路11に電力が供給される。以上により、充電状態への移行が完了する。
【0052】
〔充電状態からウエイト状態への移行〕
図3は、充電状態からウエイト状態への移行完了時における各リレーの状態を示す電装系統のブロック図である。
図3及び図5に示されるように、室内機20において、室内側制御回路23は、リレーK2Rをオンにしてから所定の時間(少なくとも室外側制御回路13が起動するに十分な時間)t2が経過した後に、リレーK2Rをオフにする。これにより、信号線Sを信号の送受信に使用できるようになる。
【0053】
室外機10において、室外側制御回路13は、自己が起動してから所定時間t6が経過した後にリレーK14Rをオンにする。これにより、室外機伝送回路11内の通信回路が、信号線S及び共通線Nを介して室内機伝送回路21と接続され、室内機伝送回路21と通信可能な状態になる。所定時間t6は、リレーK2Rがオフに切り替わった後にリレーK14Rがオンになるように設定されている。
【0054】
そして、室外機伝送回路11は、室外側制御回路13が起動してから所定時間t4が経過すると、室内機伝送回路21と通信を開始する。
以上により、空気調和装置1は、充電状態を抜け、即時運転状態へ移行可能な状態(すなわちウエイト状態)となる。
なお、図5において、電源投入後の少なくとも1回はウエイト状態への移行前に、室外機伝送回路11が、室外側制御回路13が起動してから所定時間t3経過後に誤配線の検知処理を実行する。この誤配線の検知処理について後に詳述する。
【0055】
〔ウエイト状態から運転状態への移行〕
図3に示されるウエイト状態から運転状態へ移行する際には、室外側制御回路13は、2つのメインリレー14bをオンにする。これにより、第1室外側電源回路14によって、前記インテリジェントパワーモジュールや室外ファンモータに電力が供給されて、電動圧縮機などが運転状態になり、例えば冷房が行われる。
【0056】
〔誤配線検知の詳細〕
以上のように構成された空気調和装置1では、誤配線が生じていなければ、室内機20の電源端子T、共通端子T、信号端子Tがそれぞれ、室外機10の電源端子T、共通端子T、信号端子Tに結線される(図1参照)。
【0057】
しかし、据付時に作業者が結線を誤って誤配線する場合がある。このような誤配線が生じていると、三相交流に相関短絡が生じて回路部品が損傷する可能性がある。したがって、誤配線が生じている場合にはユーザーが配線をやり直すなどの対策を講じる必要がある。
本実施の形態の空気調和装置1では、室外機伝送回路11内における電気信号(本実施の形態では、電圧信号)を監視し、当該電気信号に基づく誤配線検知処理を実行するとともに、この誤配線検知処理によって誤配線が検知された場合には、三相交流の相間短絡を防止する処理を実行するように構成されている。
【0058】
具体的に、本実施の形態では、図4に示されるように、室内機20の共通端子Tと、室外機10の信号端子Tとが接続され、室外機10の共通端子Tと室内機20の信号端子Tとが接続される誤配線が生じた場合に、この誤配線を検知する検知手段11aと、この検知手段11aによって当該誤配線が検知された場合に、三相交流の相間短絡を防止する保護手段とを備えている。
【0059】
図6は、誤配線時の各リレー及び回路の動作を示すタイムチャートである。
図4に示すような誤配線が生じている状態では、三相交流のR相が、電力配線L、室内側電源回路22、端子T,T間の誤配線電路、リレーK13R、及び第2室外側電源回路12を介してS相に繋がる通電経路が形成され、室内側電源回路22と第2室外側電源回路12とが直列に接続される。したがって、図6に示されるように電源ブレーカーがオンされると、室内側電源回路22の平滑コンデンサ22cだけでなく、第2室外側電源回路12の平滑コンデンサ12bに対しても充電が開始され、各スイッチング電源22d、12cが起動する。しかし、室内側電源回路22の平滑コンデンサ22cは、第2室外側電源回路12の平滑コンデンサ12bよりも静電容量が大きくなっているので、スイッチング電源22dの動作を継続させるのに十分な電荷が供給できず、電圧の低下により当該スイッチング電源22dが停止してしまう。そのため、室内側制御回路23は起動しなくなる。
【0060】
一方、第2室外側電源回路12の平滑コンデンサ12bには、スイッチング電源12cを動作させるのに十分な電荷を供給することができ、スイッチング電源12cの起動後に室外側制御回路13も起動する。
【0061】
室外側制御回路13が起動してから所定時間t5が経過すると、正常配線時と同様に、リレーK13R及びK15Rがオンされ、さらに所定時間t6が経過すると、リレーK14Rがオンされる。そして、リレーK14Rがオンされることによって、室外機伝送回路11を経由し、室内側電源回路22の平滑コンデンサ22cへ給電する経路が形成される。そのため、スイッチング電源22dが再度起動するとともに室内側制御回路23も起動する。
【0062】
その後、室外機伝送回路11の検知手段11aは、室外側制御回路13が起動してから所定時間t3経過後に誤配線を検知する処理を実行する。この誤配線検知処理の結果は、室外側制御回路13に入力される。そして、誤配線が検知されると、室外側制御回路13は、リレーK14Rをオフする制御を行う。これは次の理由による。
【0063】
図5に示されるように、室内側制御回路23は、起動してから所定時間t1経過後に、第2室外側電源回路12の平滑コンデンサ12bを充電するために、リレーK2Rをオンする。しかし、図4の誤配線時にリレーK2Rがオンされると、三相交流のR相が、電力配線L、バイパス線25上のリレーK2R及び第1ダイオードD1、端子T,T間の誤配線電路を介してS相に繋がる通電経路が形成され、R相とS相との間で相間短絡が生じ、回路内の部品の損傷等を招く可能性がある。そのため、図6に示されるように、検知手段11aが誤配線を検知すると、室内側制御回路23の起動後にリレーK2Rがオンされる前(図5における所定時間t1が経過する前)に、室外側制御回路13がリレーK14Rをオフする。これにより、室内側電源回路22への電力供給が停止し、室内側電源回路22及び室内側制御回路23の起動が制限され、リレーK2Rがオンされないようになっている。そのため、リレーK2Rがオンされることに起因する三相交流の相間短絡を防止することができる。
【0064】
したがって、本実施の形態では、検知手段11aが誤配線を検知したときに室外側制御回路13がリレーK14Rをオフし、室内側制御回路23の起動を制限することによって交流電源40の相間短絡を防止する、保護手段が構成されている。
【0065】
検知手段11aは、一例として、室外機伝送回路11の通信用の受信ポートに入力される電圧信号波形から誤配線を検知する構成とすることができる。すなわち、誤配線が生じているときと生じていないときとで室外機伝送回路11の受信ポートに入力される電圧信号波形を互いに異なる形態としておき、この電圧信号波形を検出することによって誤配線の有無を検知するように構成することができる。本実施の形態では、正常配線時における電圧信号波形が、例えばDC60Vの直流電圧波形となるが、誤配線時における電圧信号波形が電源周波数と同一の交流波形となっている。そして、この電圧信号波形をフォトカプラ等を利用した検出素子により検出することで、誤配線の有無を検知することが可能となっている。
【0066】
また、誤配線の検知を室外機10における室外機伝送回路11において行うことで、室内側電源回路22が起動していなくても誤配線の検知を好適に行うことができる。
【0067】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば、誤配線の検知は、室外機伝送回路11内に限らず、室外機10内の他の回路において行ってもよく、誤配線専用の検知回路を別途設けてもよい。また、誤配線が生じた場合に、空気調和装置の設置作業者等に報知する手段を設けてもよい。
また、リレーK2R、K14Rの代わりに半導体スイッチ(例えばトランジスタなど)を用いてもよい。
商用交流電源40には単相交流を用いてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 :空気調和装置
10 :室外機
11 :室外機伝送回路
11a :検知手段
12 :室外側電源回路
13 :室外側制御回路
20 :室内機
21 :室内機伝送回路
22 :室内側電源回路
23 :室内側制御回路
40 :交流電源
K2R :リレー(第1スイッチ)
K14R :リレー(第2スイッチ)
L :電力配線
N :共通線
S :信号線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7