(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、前記ナットの螺旋溝と前記ねじ軸の螺旋溝とで形成される軌道に配置されたボールとを備えたボールねじと、
前記ねじ軸の端部を支持する軸受装置とを有し、
その軸受装置は、前記端部に嵌合して前記ねじ軸と一体に回転する内輪と、該内輪の外周面に配設された複数の転動体を介して前記内輪を回転可能に支持する外輪とにより形成された複数の軸受と、
前記外輪の外周面と当接する内周面を有して前記ねじ軸を回転可能に支持するハウジングとを備え、
前記ハウジングの両端部を貫通し、冷却媒体を通過させる冷却用貫通孔が前記ハウジングの軸方向に沿って複数形成され、
前記冷却用貫通孔を連通する溝部が、前記ハウジングの軸方向の両端面に形成され、
前記複数の軸受のそれぞれの外輪の軸方向への移動を制限する押え蓋を有し、前記冷却用貫通孔と、前記ハウジングの軸方向の両端部にそれぞれ設けられた前記溝部及び前記押え蓋により形成された流路とから循環経路が形成され、
前記ハウジングの両端部のうち、前記ハウジングの前記ナットから軸方向に遠い側の端部には、前記ナット側にハウジング固定部材が連結されるフランジが形成され、
前記冷却用貫通孔の前記ナットから遠い側の端部に配置された前記流路の一端及び他端には、冷却管を介して冷却媒体循環装置が連結されたことを特徴とするボールねじ装置。
前記ねじ軸の一方の端部を支持する前記軸受装置に、前記ハウジングの両端部を貫通し、冷却媒体を通過させる前記冷却用貫通孔が前記ハウジングの軸方向に沿って複数形成され、
前記ねじ軸の他方の端部を支持する軸受装置には、冷却媒体を通過させる冷却用貫通孔が形成されていないことを特徴とする請求項2に記載のボールねじ装置。
前記軸受装置のそれぞれに、前記ハウジングの両端部を貫通し、冷却媒体を通過させる前記冷却用貫通孔が前記ハウジングの軸方向に沿って複数形成されたことを特徴とする請求項4に記載のボールねじ装置。
前記軸受が、単列アンギュラ玉軸受、単列円すいころ軸受、複列アンギュラ玉軸受、複列円すいころ軸受のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のボールねじ装置。
冷却媒体を通過させる冷却用通路が前記ねじ軸に穿孔され、その冷却用通路は前記ねじ軸の軸方向における前記複数の軸受に対応する位置まで穿孔されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載のボールねじ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、ボールねじ装置の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
この実施形態のボールねじ装置1は、
図1に示すように、ボールねじ10と、このボールねじ10のねじ軸110を支持する軸受装置101とを有する。
ここで、ねじ軸110の一方の端部(同図右側の軸端)には、駆動プーリ60が装着され、電動モータ(図示せず)の回転運動が動力伝達機構を介してこの駆動プーリ60に伝達されて、ボールねじ10が駆動されるようになっている。以下、駆動プーリ60に近い側(図示しない電動モータに近い側)の軸受装置101Bを「モータ側の軸受装置101B」、駆動プーリ60から遠い側(図示しない電動モータから遠い側)の軸受装置101Aを「非モータ側の軸受装置101A」ということがある。
【0012】
<ボールねじ>
ボールねじ装置1は、ねじ軸110と、ナット20と、ねじ軸110の外周面及びナット20の内周面それぞれに対向して形成された螺旋溝に転動自在に充填されたボール(図示せず)とを有してなる。そして、ボールを介してねじ軸110に螺合されているナット20とねじ軸110とを相対回転運動させると、ボールの転動を介してねじ軸110とナット20とが軸方向に相対移動するようになっている。
ボールねじ装置1は、ボールねじ10のねじ軸110の少なくとも一方の端部が軸受装置101A,101Bを介してブラケット40に回転自在に支持されるとともに、ナット20がテーブル50に対して固定されている。
【0013】
<軸受装置>
軸受装置101は、
図5に示すように、ボールねじ10のねじ軸110の少なくとも一方の端部112を回転自在に支持する二個の転がり軸受120,120と、両転がり軸受120,120の外輪123,123が内嵌されるハウジング130とを有する。また、軸受装置101は、転がり軸受120,120の内輪212,121の軸方向への移動を制限するカラー150およびロックナット140と、外輪123,123の軸方向への移動を制限する押え蓋160とを有する。さらに、軸受装置101は、
図2〜
図5に示すように、継手部材176a〜176d,177a〜177dと、複数の配管190と、押え蓋160をハウジング130に固定するボルト195とを有する。
【0014】
ねじ軸110の端部112は小径部となっていて、その段差部と一方の転がり軸受120Aの内輪121との間に、カラー150が配置されている。他方の転がり軸受120Bの内輪121の外側(他方の転がり軸受120Bを基準として一方の転がり軸受120Aが設けられた側と反対側)にもカラー150が配置され、さらにその外側にロックナット140が配置されている。転がり軸受120A,120Bの外輪123,123は、ハウジング130の内周面の大径部に配置されている。一方の転がり軸受120Aの外輪123の端面が段差面に当接し、他方の転がり軸受120Bの外輪123が押え蓋160の端面に当接している。
【0015】
図2〜
図5に示すように、ハウジング130の軸方向の一端にはフランジ132が形成されている。フランジ132には、ボルト195を螺合させる雌ねじ132aと、取付用のボルトを挿入するボルト穴132bが形成されている。ハウジング130には、また、軸方向に貫通する4本の冷却用貫通孔171〜174が、円周方向に等間隔で形成されている。各冷却用貫通孔171〜174の両端部に、管用テーパー雌ねじ部175が形成されている。
図6に示すように、押え蓋160は、ねじ軸110が遊嵌される大きさの中心穴161を有する円板状部材であって、ボルト195の頭部側を配置するボルト穴162が、円周方向の8カ所に等間隔で形成されている。これらのボルト穴162は、ハウジング130の雌ねじ132aに対応する位置に設けてある。また、押え蓋160の外周部には、ハウジング130の各冷却用貫通孔171〜174に対応する位置に、凹部163が形成されている。
【0016】
組立時には、先ず、一方のカラー150を、ねじ軸110の端部112の段差部に接触させて取り付けた後、ハウジング130とねじ軸110の端部112との間に転がり軸受120A,120Bを取り付ける。次に、押え蓋160の中心穴161をねじ軸110に通して、押え蓋160をハウジング130のフランジ132側に配置し、ボルト195を押え蓋160のボルト穴162から挿入してフランジ132の雌ねじ132aに螺合する。次に、他方のカラー150をねじ軸110の端部112に取り付けて、ロックナット140を締め付ける。これにより、転がり軸受120A,120Bの外輪123,123がハウジング130に固定され、内輪121,121がねじ軸110の端部112に固定される。
【0017】
この状態で、押え蓋160の凹部163から各継手部材176a〜176d,177a〜177dを入れて、
図5に示すように、その先端部(管用テーパー雄ねじ部)を各冷却用貫通孔171〜174の管用テーパー雌ねじ部175に螺合する。これにより、
図2〜
図4に示すように、ハウジング130の各冷却用貫通孔171〜174の両端に、各継手部材176a〜176d,177a〜177dが連結された状態となる。
そして、フランジ132側の継手部材176aと継手部材176dとを配管190で連結する。フランジ132側の継手部材176bに冷却媒体導入用配管190を接続する。フランジ132側の継手部材176cに冷却媒体排出用配管190を接続する。ハウジング130のフランジ132が形成されていない側では、継手部材177aと継手部材177bとを配管190で連結し、継手部材177cと継手部材177dとを配管190で連結する。
【0018】
この実施形態のボールねじにおいて、冷却媒体導入用配管190から導入された冷却媒体は、継手部材176b→ハウジング130の冷却用貫通孔172→継手部材177b→配管190→継手部材177a→ハウジング130の冷却用貫通孔171→継手部材176a→配管190→継手部材176d→ハウジング130の冷却用貫通孔174→継手部材177d→配管190→継手部材177c→ハウジング130の冷却用貫通孔173→継手部材176c→冷却媒体排出用配管190の順に流れる。この冷却媒体の流れによりハウジング130が冷却される。
したがって、この実施形態の軸受装置によれば、ハウジング130の円周方向で均一な冷却がなされるため、ハウジング130、転がり軸受120A,120B、ねじ軸110の端部112が周方向で均一に冷却されて、熱変形が抑制される。これに伴い、転がり軸受120A,120Bが効率良く冷却されるため、転がり軸受120A,120Bのボールの負荷分布異常や作動性の悪化を防ぐことができる。
【0019】
ここで、本実施形態の変形例として、ボールねじ装置1は、軸受装置101がねじ軸110の一方の端部を支持してもよい。そして、ボールねじ装置1は、ねじ軸110の一方の端部を支持する軸受装置101に、ハウジング130の両端部を貫通し、冷却媒体を通過させる冷却用貫通孔171〜174がハウジング130の軸方向に沿って複数形成され、かつねじ軸110の他方の端部を支持する軸受装置には、冷却媒体を通過させる冷却用貫通孔が形成されていなくてもよい。
また、ボールねじ装置1は、軸受装置101がねじ軸110の両方の端部を支持してもよい。そして、これら軸受装置101,101のそれぞれに、ハウジング130の両端部を貫通し、冷却媒体を通過させる冷却用貫通孔171〜174がハウジング130の軸方向に沿って複数形成されてもよい。
また、例えば特許文献2のように、ナットのみに冷却機構を備えたボールねじでは、ねじ軸の冷却がナットの移動範囲のみで行われ、ねじ軸の端部に対する冷却効果が期待できないため、上述した軸受装置を併用することが有用である。
【0020】
具体的には、
図7に示すように、ボールねじ装置1は、ボールねじ10と、このボールねじ10のねじ軸110を支持する上述の軸受装置101とを有する。
ここで、ボールねじ10のナット20には、ナット20を軸方向に貫通する複数の冷却用貫通孔21a〜21dが円周方向に等間隔で形成されている。ナット20の各冷却用貫通孔21a〜21dの両端には、それぞれ継手部材31a〜31d,32a〜32dが連結されている。
そして、フランジ22側の継手部材31aと継手部材31dとが配管33で連結されている。また、フランジ22側の継手部材31bに冷却液導入用配管34が接続されている。また、フランジ22側の継手部材31cには冷却液排出用配管35が接続されている。
【0021】
一方、ナット20のフランジ22が形成されていない側の端部では、継手部材32aと継手部材32b
とが配管36で連結され、継手部材32cと継手部材32dとが配管37で連結されている。
このような構成をなすボールねじ10は、冷却液導入用配管34から冷却液が導入されることによって、その冷却液が、
継手部材31b→冷却用貫通孔21b→配管36→継手部材32a→冷却用貫通孔21a→継手部材31a→配管33→継手部材31d→冷却用貫通孔21d→配管37→冷却用貫通孔21c→継手部材31c→冷却液排出用配管35の順に流れる。その結果、この冷却液の流れによりナット20が冷却される。
【0022】
(第2実施形態)
次に、ボールねじ装置の第2実施形態について図面を参照して説明する。
図8は、ボールねじ装置の第2実施形態における構成を示す正面図である。また、
図9は、ボールねじ装置の第2実施形態における構成を示す右側面図である。また、
図10は、ボールねじ装置の第2実施形態における構成を示す左側面図である。また、
図11は、ボールねじの第2実施形態における構成を示す軸方向に沿った断面図である。
図8〜
図11に示すように、軸受装置101は、ボールねじのねじ軸110を回転可能に支持する複列の転がり軸受120と、転がり軸受120を収容するハウジング130とを備えている。
【0023】
<転がり軸受>
図11に示すように、転がり軸受120は、ねじ軸110の端部に嵌合してねじ軸110と一体に回転する二つの内輪121,121を有しており、これら内輪121,121の内周面121a,121aには、複数の転動体122を介して内輪121を回転可能に支持する外輪123,123がそれぞれ設けられている。
転がり軸受120の内輪121は、ねじ軸110に形成された段部とロックナット140とにより所定位置に位置決めされている。このロックナット140はねじ軸110の端部に螺嵌されており、ロックナット140と内輪121との間のねじ軸110の外周には、例えば皿バネ又はコイルバネあるいは縦弾性係数の金属等からなるカラー150が設けられている。
また、転がり軸受120の内輪121は、ロックナット140の締付け力により前述した段部111に押圧されており、この段部111と内輪121との間のねじ軸110の外周には、例えば皿バネ又はコイルバネあるいは縦弾性係数の金属等からなるカラー150が設けられている。
なお、転がり軸受120の内輪121はねじ軸110に形成された段部111とロックナット140とにより所定位置に位置決めされている。
【0024】
<ハウジング>
ハウジング130は、例えば、円筒形状をなす。また、
図11に示すように、ハウジング130の内周面130aは、転がり軸受120の外周面(外輪123の外周面123a)に嵌合している。したがって、ハウジング130は、ねじ軸110を回転可能に支持することとなる。
また、
図11に示すように、ハウジング130の外周面は、図示しないベアリングサポートの内周面と摺動可能に嵌合している。すなわち、ハウジング130を介してベアリングサポート(図示せず)が転がり軸受120を支持している。
【0025】
<押え蓋>
転がり軸受120の外輪123は、ハウジング130の内周面130aに形成された段部131及び第2の押え蓋160Bにより所定位置に位置決めされている。この押え蓋160A,160Bは、複数のボルト200によりハウジング130の軸方向の端面130b,130bに取り付けられている(
図11参照)。
【0026】
<冷却用貫通孔>
ハウジング130には、ハウジング130の両端部(両端面)を軸方向に貫通する冷却用貫通孔170が複数形成されている。これら冷却用貫通孔170は、ハウジング130の外周面に沿って、又は同一円周上に配置されることが好ましく、均等に配置されることがさらに好ましい。なお、これら冷却用貫通孔170は、冷却媒体を通過させるために設けられるものである。冷却媒体は、複数の冷却用貫通孔170のいずれかに連結された冷却管190によって供給又は排出される。冷却管190は、冷却媒体を供給し、かつ冷却媒体を回収して再び冷却機能を備えさせて再び供給させる冷却媒体循環装置(図示せず)に連結されている。
【0027】
<溝部>
ハウジング130の端面130b,130bには、冷却用貫通孔170の開口部を連通する溝部180が端面130b,130bの外周に沿って形成されていることが好ましい。このように設けられた溝部180は、ガスケット185を介して、第1の押え蓋160A又は第2の押え蓋160Bにより密封されることで、冷却用貫通孔170に連通する流路B〜D(
図9及び
図10参照)が形成される。溝部180が形成される形態を採用することにより、ハウジング130に冷却用貫通孔170のみが形成された形態よりも冷却用貫通孔170に通過させる冷却媒体を供給するための部品点数を減少させ、結果としてコストの低減が図れる。
ここで、上述のように、流路は、溝部180と、第1の押え蓋160A又は第2の押え蓋160Bとにより形成されるが、第1の押え蓋160A及び第2の押え蓋160Bの溝部180に対向する面は平坦であることが好ましい。第1の押え蓋160A及び第2の押え蓋160Bの溝部180に対向する面に、溝部180に対応する別の溝部を形成すると、フランジの組違いなどにより流路が好適に形成されない場合があり、加工コストも低減でき、製品管理も容易であるからである。
【0028】
[冷却用貫通孔の設置位置]
複数形成される冷却用貫通孔170の設置位置としては、ハウジング130の周方向に沿って均等に配置することが好ましい。しかし、冷却用貫通孔170が2本である場合、すなわち、冷却用貫通孔170が均等配置(180°等配)では、冷却用貫通孔170から離れた部分では温度が高くなるため、温度勾配が発生し、転がり軸受120の外輪123の断面形状はラグビーボール状になる。これにより、転がり軸受120の外輪123の真円度(円筒度)が低下し、転がり軸受120への負荷が不均一となるため作動性などに影響が出やすくなってしまうので、好ましくない。
【0029】
[冷却用貫通孔の本数]
また、冷却用貫通孔170の本数を増やすことで、転がり軸受120のより大きな冷却効果が得られると共に、転がり軸受120の外輪123の真円度(円筒度)が向上すると考えられるが、無闇に冷却用貫通孔170の本数を増やすべきではない。それは、冷却用貫通孔170の本数を増やすということは、ハウジング130の強度低下も意味し、結果として、ボールねじ軸の支持剛性を低下させることにつながってしまうためである。
加えて、冷却用貫通孔170の加工は縦長比が大きいため、加工に手間がかかりコストを上昇させてしまう。
そこで、本実施形態では、
図8〜
図10に示すように、冷却用貫通孔170の本数を4本としているが、構造により冷却用貫通孔170を均等に4本設けることが難しい場合には3本でもよい。
【0030】
[冷却媒体の循環経路]
このように冷却用貫通孔170が形成された軸受装置101においては、
図8〜
図10に示すように、冷却管191から供給された冷却媒体が、「A」部分で冷却管191に連結された冷却用貫通孔171に流入し、流路「B」を経て冷却用貫通孔172に流入し、流路「C」を経て冷却用貫通孔173に流入し、流路「D」を経て冷却用貫通孔174に流入し、「E」部分で連結された冷却管192から排出される。
このように、軸受装置101では、ハウジング130に複数の冷却用貫通孔170を設け、それら冷却用貫通孔170と、溝部180及び第1の押え蓋160Aあるいは第2の押え蓋160Bによって形成される流路に冷却媒体を流すことで、発熱源である軸受の直近部を効率的に冷却することができる。その結果、転がり軸受120の発熱を抑制することができ、熱膨張によるボールねじとねじ軸110との間の伸びを減少させ、位置決め精度などを向上させることができる。
【0031】
また、冷却用貫通孔170を均等に配置することで、温度分布が均一に近づき、不均一な熱変形を抑えることができるため、転がり軸受120の内部におけるボール(転動体122)の負荷分布異常や作動性の悪化を防ぐことができる。ここで、軸受装置101においては、冷却管190(191,192)がねじ軸110の端部112側(ねじ溝が形成されていない部分)に配置されてもよい。また、軸受装置101においては、冷却管190(191,192)がフランジ132側に配置されてもよい。
冷却管190(191,192)がねじ軸110の端部112側に配置される、すなわち、冷却用貫通孔170がねじ軸110の端部112側に配置されることによって、ねじ軸110のねじ溝が形成された側に冷却用貫通孔170を配置した場合に比べて、ボールねじのナット(図示せず)の移動範囲に影響を与えないため、ボールねじのナット(図示
せず)の移動範囲を大きくできる。
【0032】
また、冷却管190(191,192)がフランジ132側に配置される、すなわち、冷却用貫通孔170がフランジ132側に配置されることによって、冷却管190(191,192)を組み付けたまま、ハウジング130を図示しないハウジング固定部材(例えば、ベアリングサポートなど)に組み付けることができる。具体的に、ハウジング130を上記ハウジング固定部材に組み付けるにあたっては、
図11において、ハウジング130に対して、矢印の向きに上記ハウジング固定部材を組み付けることとなる。すなわち、ハウジング130におけるフランジ132が形成されていない側(第1の押え蓋160Aが設けられた側)に冷却管190(191,192)を配置すると、ハウジング130を上記ハウジング固定部材に組み付けた後に、冷却管190(191,192)を組み付ける必要がある。しかし、冷却管190(191,192)がフランジ132側に配置された態様では、ハウジング130を上記ハウジング固定部材に組み付ける際に、冷却管190(191,192)が干渉しない。したがって、冷却管190(191,192)がフランジ132側に配置されることによって、冷却管190(191,192)を組み付けたまま、ハウジング130を上記ハウジング固定部材に組み付けることができる。
【0033】
(第3実施形態)
次に、ボールねじ装置の第3実施形態について図面を参照して説明する。
図12は、ボールねじの第3実施形態における構成を示す軸方向に沿った断面図である。本実施形態のボールねじ装置301は、第2実施形態と略同様の構成である。以下、第2実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略にし、異なる構成を中心に説明する。
図12に示すように、転がり軸受120は、ねじ軸110の端部に嵌合してねじ軸110と一体に回転する二つの内輪121,121を有しており、これら内輪121,121の内周面121a,121aには、複数の転動体122を介して内輪121を回転可能に支持する外輪123,123がそれぞれ設けられている。
転がり軸受120の外輪123は、ハウジング130の内周面130aに形成された段部131及び第2の押え蓋160Bにより所定位置に位置決めされている。
転がり軸受120の内輪121は、ねじ軸110に形成されたねじ軸外径部111とロックナット140とによりカラー150を介して所定位置に位置決めされている。ロックナット140はねじ軸110の端部に螺嵌されており、このロックナット140の締付け力により転がり軸受120の内輪121に軸方向の圧縮力を加えることで、転がり軸受120の予圧を与えている。
【0034】
一般的にボールねじ装置に使用される転がり軸受は、ラジアル方向(径方向)だけでなくアキシアル方向(軸方向)の荷重も負荷する必要があるため、アンギュラ玉軸受や円すいころ軸受が用いられることが多い。本実施形態では、転がり軸受120の組合せの形式を、転がり軸受120の内輪側に軸方向の圧縮力を加えることで予圧を与える方式であるDB形(背面組合せ形)としている。本実施形態では転がり軸受120にアンギュラ玉軸受を2個組み合わせて用いたものを示す。
軸受装置101では、冷却により転がり軸受120の外輪側の温度が内輪側の温度に比べ低くなる。このため、転がり軸受120の外輪側が径方向に収縮すると共に軸方向にも収縮する。DB形(背面組合せ形)では転がり軸受120の内輪側に軸方向の圧縮力を加えることで予圧を与えるが、冷却による転がり軸受120の外輪側の径方向への収縮は予圧の増加につながるものの、軸方向への収縮は予圧の減少につながる。これより、冷却によっても予圧の変化が少ないボールねじ装置が実施可能となる。
【0035】
一方、転がり軸受120の組合せの形式を、転がり軸受120の外輪側に軸方向の圧縮力を加えることで予圧を与える方式であるDF形(正面組合せ形)とした場合を説明する。冷却により転がり軸受120の外輪側の温度が内輪側の温度に比べ低くなると、転がり軸受120の外輪側が径方向に収縮すると共に軸方向にも収縮する。DF形(正面組合せ形)とした場合には、冷却による転がり軸受120の外輪側の径方向と軸方向への収縮は共に予圧の増加につながってしまう。予圧が上がると発熱量が大きくなるため冷却による効果が損なわれてしまう。
本実施形態では転がり軸受120にアンギュラ玉軸受を2個組み合わせて用いたものを示したが、軸受の組合せの形式がDB形(背面組合せ形)であれば、2個に限らずいくつ使用してもよい。また、本実施形態では転がり軸受120に単列アンギュラ玉軸受を用いたものを示したが、DB形(背面組合せ形)であれば単列円すいころ軸受など他の軸受を用いることもできる。また、内輪側に軸方向の圧縮力を加えることで予圧を与える方式(DB形)である複列アンギュラ玉軸受や複列円すいころ軸受などの複列軸受を用いることもできる。
【0036】
(第4実施形態)
次に、ボールねじ装置の第4実施形態について図面を参照して説明する。
図13は、ボールねじ装置の第4実施形態における構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。軸受装置101は、第2実施形態と略同様の構成である。以下、第2実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略にし、異なる構成を中心に説明する。
図13(a)に示すように、軸受装置101は、冷却効果を高めるため、補助冷却用貫通孔175が他の冷却用貫通孔170と同様に複数設けられている。そして、これら補助冷却用貫通孔175は、冷却媒体をその内部に流入させる冷却管193、および補助冷却用貫通孔175から冷却媒体を排出する冷却管194に連結されている。また、補助冷却用貫通孔175は、目的に応じて冷却用貫通孔171〜174に連結されてもよいし、これら冷却用貫通孔171〜174にと独立して設けられてもよい。
この冷却用貫通孔(補助冷却孔)175が設けられることにより、冷却効率がより向上する。
なお、補助冷却用貫通孔175は、
図13(b),(c)に示すように、ねじ軸110の軸を基準として点対称に位置するように設けられてもよい。
【0037】
(第5実施形態)
次に、ボールねじ装置の第5実施形態について図面を参照して説明する。
図14は、ボールねじ装置の第5実施形態における構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は放熱部の右側面図、(d)はフィンの斜視図である。軸受装置101は、第2実施形態と略同様の構成である。以下、第2実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略にし、異なる構成を中心に説明する。
図14(a)〜(d)に示すように、軸受装置101は、ハウジング130に放熱部200が設けられている。この放熱部200は、ハウジング130(例えばフランジ132)の外周面に所定の締め代をもって嵌合する枠体201と、枠体201の外周面に複数設けられたフィン202とを有する。
【0038】
フィン202は、
図14(d)に示すように、ハウジング130に蓄えられた熱を放出しやいように、ハウジング130に設置した際の軸方向に垂直な方向(ラジアル方向)を細くなる形状で設けられる。また、フィン202が空気抵抗を受けて、ナットの移動を妨げないように、フィン202の先端を細くすることが好ましい。また、フィン202は、枠体201の周方向に等配位で設けられることが好ましく、隣接するフィン202,202の設置位置と枠体201の軸方向とのなす角度θが15°〜90°の範囲で等配位に設けられることがより好ましい。
ここで、枠体201及びフィン202の材料としては、熱伝導性がよいアルミニウム、黄鋼、チタンなどが挙げられる。これらの中でも、枠体201及びフィン202の加工がし易く、かつ熱伝導率が高いアルミニウムが好ましい。
【0039】
(第6実施形態)
次に、ボールねじ装置の第6実施形態について図面を参照して説明する。
図15は、ボールねじ装置の第6実施形態における構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)はフィンを設けた枠体の右側面図である。軸受装置101は、第5実施形態と略同様の構成である。以下、第5実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略にし、異なる構成を中心に説明する。
図15(a)〜(c)に示すように、軸受装置101は、ハウジング130に放熱部200が設けられている。この放熱部200は、押え蓋160Bの外周面に所定の締め代をもって嵌合する枠体201と、枠体201の外周面に複数設けられたフィン202とを有する。
【0040】
(第7実施形態)
次に、ボールねじ装置の第7実施形態について図面を参照して説明する。
図16は、ボールねじ装置の第7実施形態において用いられるボールねじ装置の正面図である。また、
図17は、ボールねじ装置の第7実施形態における構成を示す図であり、(a)はボールねじ装置における非モータ側のボールねじ装置の正面図、(b)はねじ軸の軸方向に沿った断面図および要部拡大図、(c)はねじ軸の左側面図である。
図16に示すように、ボールねじ装置1は、ボールねじ10のねじ軸110の両軸端が軸受装置101A,101Bを介してブラケット30に回転自在に支持されるとともに、ナット20がテーブル40に対して固定されている。
【0041】
そして、ねじ軸110の一方の端部(同図右側の軸端)には、駆動プーリ50が装着され、電動モータ(図示せず)の回転運動が動力伝達機構を介してこの駆動プーリ50に伝達されて、ボールねじ10が駆動されるようになっている。以下、駆動プーリ50に近い側(図示しない電動モータに近い側)の軸受装置101Bを「モータ側の軸受装置101B」、駆動プーリ50から遠い側(図示しない電動モータから遠い側)の軸受装置101Aを「非モータ側の軸受装置101A」ということがある。また、本実施形態の軸受装置101A,101Bは、上述した軸受装置101と同様の構成をなす軸受装置である(
図17(a)参照)。
ここで、ボールねじは、ねじ軸110と、ナット20と、ねじ軸110の外周面及びナット20の内周面それぞれに対向して形成された螺旋溝に転動自在に充填されたボールとを有してなる。そして、ボールを介してねじ軸110に螺合されているナット20とねじ軸110とを相対回転運動させると、ボールの転動を介してねじ軸110とナット20とが軸方向に相対移動するようになっている。
【0042】
また、
図16及び
図17(b)に示すように、ねじ軸110における非モータ側の軸受装置101Aによって支持される側の端部近傍には、冷却媒体を通過させる冷却用通路113が穿孔されている。この冷却用通路113はねじ軸110の軸方向における非モータ側の軸受装置101Aを構成する複数の軸受に対応する位置まで穿孔されている。
具体的に、冷却用通路113は、ねじ軸110の非モータ側の軸受装置101Aの端部に開口された流入口113Aから、非モータ側の軸受装置101Aを構成する複数の軸受に対応する位置まで穿孔され、ここでねじ軸110の端部側に折り返され、その端部近傍の側面に開口された流出口113Bに連通されてなる。
そして、ねじ軸110の非モータ側の軸受装置101Aの端部には、流出側シーリング61を介して流入側シーリング60が装着されている。この流入側シーリング60には、流入口113Aに連通する流入口60A、および流出口113Bに連通する流出口60Bが形成されており、流入口60Aおよび流出口60Bが配管を介して図示しない冷却媒体循環装置に接続されている。なお、この冷却媒体循環装置が、上記冷却媒体循環装置に対応してもよい。
【0043】
このように、本実施形態では、「非モータ側の軸受装置101A」の冷却を「ナット冷却」および「ねじ軸110の内部の冷却」とし、「モータ側の軸受装置101B」の冷却を「ナット冷却」としている。これは、ねじ軸110のモータ側の端部が電動モータ(図示せず)に接続されているため、ねじ軸110のその端部に冷却用貫通孔を設けて、ねじ軸110の内部を冷却することが難しいからである。よって、本実施形態では、非モータ側の軸受装置101Aによって支持される側のねじ軸110の端部近傍に冷却用貫通孔を設けた。なお、本実施形態においては、非モータ側の軸受装置101Aの冷媒温度が低くなり、非モータ側の軸受装置101Aの固定力が落ちないように、非モータ側の軸受装置101Aの冷媒温度はモータ側より高くすることが好ましい。
【0044】
ここで、特許文献3には、ポールねじ軸の内部を貫通して形成され、冷却用流体を流動させるボールねじ軸内流路孔を備えている。
しかし、軸内流路孔を有したねじ軸は、「貫通した」中空軸であるため、中実軸に比べて、曲げモーメントによりたわみが大きくなる。そのため、軸内流路孔を有するねじ軸は、中実軸のねじ軸に比べて、回転する度に発生する繰り返しせん断応力が大きいので、軸内流路孔を有するねじ軸は中実軸のねじ軸に比べて熱を発生し、高温となる。軸内流路孔を通過する冷却用流体(冷媒)は暖められるため、冷却効果はなくなる。
これに対し、本実施形態のボールねじ装置は、冷却媒体を通過させる冷却用貫通孔がねじ軸110に穿孔され、その冷却用貫通穴はねじ軸110の軸方向における複数の軸受に対応する位置まで穿孔されている。この構成により、従来のようにねじ軸に冷却用貫通孔を「貫通させた」ものに比べて曲げモーメントに対して剛性が高くなるという効果を奏する。
したがって、本実施形態によれば、駆動時の曲げモーメントによるねじ軸のたわみを低減しつつ冷却効率を向上させるボールねじ装置を提供することができる。
【0045】
(第8実施形態)
次に、ボールねじ装置の第8実施形態について図面を参照して説明する。
図18は、ボールねじ装置の第8実施形態における構成を示す軸方向に沿った断面図である。軸受装置101は、第2実施形態と略同様の構成である。以下、第2実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略にし、異なる構成を中心に説明する。
図18に示すように、本実施形態のボールねじ装置は、軸受101の組合せをDF組合せとしている。従来では、ねじ軸110の熱膨張をキャンセルする方法としてプリテンションをかけることが挙げられる。このプリテンションは、ねじ軸110に軸受101を取付けするに際して、位置決めを精度よくするために、ねじ軸110の温度上昇が2℃〜3℃程度に相当する予張力を与える作業である。このプリテンションをかけることによって軸受101の荷重は増え、発熱することは避けられず、結果としてこの熱がねじ軸110に伝わって、ねじ軸110が再び膨張する要因となる。特に、DB組合せの軸受を冷却しただけでは、熱膨張を抑える効果は難しかった。
そこで、本実施形態のボールねじ装置は、熱膨張に発生する応力を緩和するため、軸受101の組合せをDF組合せとして冷却している。
【0046】
(第9実施形態)
次に、ボールねじ装置の第9実施形態について図面を参照して説明する。
図19は、ボールねじ装置の第9実施形態における構成を示す図であり、(a)はボールねじ装置の正面図、(b)はボールねじ装置における非モータ側のボールねじ装置の正面図、(c)はボールねじ装置におけるモータ側のボールねじ装置の正面図である。なお、
図19(a)では、流入側シーリング60を省略している。軸受装置101は、第7実施形態と略同様の構成である。以下、第7実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略にし、異なる構成を中心に説明する。
図19(a)〜(c)に示すように、本実施形態のボールねじ装置は、ボールねじを支持する両端の軸受の組合せをDB形(DB組合せ)としている。このような構成とすることにより、ねじ軸が撓まないという効果を奏する。また、モータ側の軸受装置101Bはモータの発熱によって軸受の温度が高くなるため、モータ側の軸受装置101Bの軸受の温度を低くする必要がある。よって、冷却水の冷媒の温度を非モータ側の軸受装置101Aより低くするか、あるいは、冷媒量を増加させる。
【0047】
また、軸受の組み合わせとして、モータ側の軸受装置101Bを、DB形(DB組合せ)、およびDT形(DT組合せ)とし、非モータ側の軸受装置101Aを、DB形(DB組合せ)、DT形(DT組合せ)、DF形(DF組合せ)、又は単列とする。
さらに、本実施形態のボールねじ装置において支持されるボールねじとしては、エンドデフレクタ式、チューブ式、こま式、エンドキャップ式が挙げられる。特に、モータ側の軸受装置の軸受をDB形(DB組合せ)とすることにより、ねじ軸が振れ回らないという効果を奏する。
【0048】
以上、ボールねじ装置の各実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。例えば、上述した実施形態ではボールねじのねじ軸を支持する軸受として複列転がり軸受を例示したが、これに限定されるものではなく、単列転がり軸受であってもよい。また、各実施形態のボールねじ装置は、ナットを冷却するナット冷却装置と併用されることが好ましい。ボールねじの軸芯冷却では、ねじ軸内部に冷却経路が形成されるため軸受も冷却されるが、ナット冷却の場合にはナットが移動する部分しか冷却されず、軸受に対する冷却効果は期待できない場合に有効だからである。このため、ナット冷却では軸受の冷却も必要となる。また、各実施形態を適宜組み合わせても良い。
【0049】
本発明での冷却媒体としては、流体として各種の気体、液体が使用できる。気体としては、空気あるいは圧縮空気の他、窒素、不活性ガス(アルゴン等)、炭化水素(ブタン、イソブタン等)、ヘリウム、アンモニア、二酸化炭素等、更にはこれらの混合物が使用できる。液体としては、水の他、水に防錆剤を加えたクーラント、水に各種添加剤を加えたクーラント、もしくは冷媒油として各種の油も使用できる。具体的には鉱油、動植物油、合成油が使用できる。これらは使用環境等に応じて適宜選択すれば良い。更に、冷却媒体は温度管理されており、流量も管理されていることが好ましい。特に、冷却媒体を乱流状態で使用するのが好ましい。