特許第5804228号(P5804228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5804228
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20151015BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20151015BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20151015BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20151015BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20151015BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20151015BHJP
   C02F 1/04 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   C02F1/44 C
   C02F1/44 H
   B01D65/02 520
   B01D65/02 530
   B01D65/06
   B01D63/02
   B01D61/58
   C02F1/42 B
   C02F1/04 A
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-518692(P2015-518692)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(86)【国際出願番号】JP2014081910
【審査請求日】2015年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-248874(P2013-248874)
(32)【優先日】2013年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅英
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 世人
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−330916(JP,A)
【文献】 特開平04−271818(JP,A)
【文献】 特開2004−130307(JP,A)
【文献】 特開昭61−249592(JP,A)
【文献】 特開2001−087780(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0194315(US,A1)
【文献】 米国特許第04898667(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00−71/82
C02F1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質分離膜を収容した膜ろ過装置に被処理水を供給し、前記被処理水を前記多孔質分離膜によって全量ろ過処理することでろ過水を得るろ過工程と、
前記多孔質分離膜で分離された、前記膜ろ過装置内の濃縮された被処理水を、前記膜ろ過装置外に排出する排水工程と、
前記多孔質分離膜を、物理洗浄及び化学洗浄のうち少なくとも一つの処理により洗浄する洗浄工程とを含み、
前記ろ過工程、前記排水工程及び前記洗浄工程を組み合わせたサイクルを複数回繰り返すことによってろ過水を得る水処理方法であって、
1回のサイクル内において、前記ろ過工程と前記排水工程とを複数回繰り返した後に前記洗浄工程を実施する水処理方法。
【請求項2】
多孔質分離膜を収容した膜ろ過装置に被処理水を供給し、前記被処理水を前記多孔質分離膜によってろ過処理するとともに前記多孔質分離膜の上流に返送することでろ過水を得るクロスフローろ過方式のろ過工程と、
前記多孔質分離膜で分離された、前記膜ろ過装置内の濃縮された被処理水を、前記膜ろ過装置外に排出する排水工程と、
前記多孔質分離膜を、物理洗浄及び化学洗浄のうち少なくとも一つの処理により洗浄する洗浄工程とを含み、
前記ろ過工程、前記排水工程及び前記洗浄工程を組み合わせたサイクルを複数回繰り返すことによってろ過水を得る水処理方法であって、
1回のサイクル内において、前記ろ過工程と前記排水工程とを複数回繰り返した後に前記洗浄工程を実施する水処理方法。
【請求項3】
前記洗浄工程が、以下の(a)〜(d)の工程のうちの少なくとも1つを具備する請求項1または請求項2に記載の水処理方法。
(a)前記多孔質分離膜の下方部に設置した散気部から生起される気泡を前記多孔質分離膜に接触させる空気洗浄
(b)前記被処理水のろ過を停止し、前記多孔質分離膜の二次側から一次側に通液する逆圧洗浄
(c)前記多孔質分離膜の一次側に液体を、前記多孔質分離膜の表面と略平行に移動させ、前記多孔質分離膜の一次側を洗浄するフラッシング洗浄
(d)前記被処理水のろ過を停止し、前記多孔質分離膜の一次側もしくは二次側から薬液を供給する薬液洗浄
【請求項4】
前記洗浄工程を、ろ過開始から3時間以上1ヶ月以下おきに行う請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記ろ過工程において、ろ過流束、または、前記膜ろ過装置への被処理水流入量を調整する請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記ろ過工程におけるろ過流束が30L/m/h以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項7】
前記ろ過工程におけるろ過差圧が50kPa以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項8】
前記ろ過水の濁質濃度指標を測定し、前記濁質濃度指標が前記ろ過工程開始後の測定値の2倍以上になった場合に、前記ろ過工程を終了し、前記排水工程に移行する請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項9】
前記ろ過水の有機物濃度指標を測定し、前記有機物濃度指標が前記ろ過工程開始後の測定値の2倍以上になった場合に、前記ろ過工程を終了し、前記洗浄工程に移行する請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項10】
前記ろ過水中に含まれる溶存酸素量が前記ろ過工程で供給される被処理水中に含まれる溶存酸素量よりも低くなるように、ろ過流束、前記膜ろ過装置への被処理水流入量および前記排水工程を行う間隔のうちの少なくとも1つを制御する請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項11】
前記多孔質分離膜が、中空糸膜であり、前記被処理水が前記多孔質分離膜の外側に接して前記多孔質分離膜の内側にろ過される請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項12】
前記多孔質分離膜が筒状の膜収容ケースに収容され、該筒状の膜収容ケースの中心軸が略水平となるように設置されている請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項13】
前記排水工程で排水された濃縮された被処理水中に含まれる微生物濃度が、前記ろ過工程で供給される被処理水中に含まれる微生物濃度より高い請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項14】
前記ろ過水の酸化還元電位が350mV以下である請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項15】
前記洗浄工程が、前記被処理水のろ過を停止し、前記多孔質分離膜の二次側から一次側に通液する逆圧洗浄工程を具備し、
前記逆圧洗浄工程に用いる洗浄水の酸化還元電位が500mV以下である請求項〜請求項14のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項16】
前記被処理水が、溶解性有機物濃度除去率50%未満の、前記多孔質分離膜よりもろ過精度の低いろ過処理を行った処理水である請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項17】
請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の水処理方法で得られたろ過水を、脱塩処理する淡水製造方法。
【請求項18】
前記脱塩処理が、半透膜処理、イオン交換処理、晶析処理及び蒸留処理からなる群から選ばれる少なくとも1つの処理である請求項17に記載の淡水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水を多孔質分離膜で前処理した後に、逆浸透膜で淡水を得るための造水方法に用いるための水処理方法、および造水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水資源の枯渇が深刻であり、これまで利用されてこなかった水資源の活用が検討されており、逆浸透膜を用いて海水やかん水などを脱塩して淡水を得たり、下廃水処理水や工業排水などを浄化して再利用水を得たりする膜ろ過技術が注目されている。
【0003】
しかしながら、逆浸透膜を用いた膜ろ過プロセスにおいて、透水性能や除去性能の低下を生じさせるファウリングが運転上問題となっている。逆浸透膜のファウリングは、被処理水中の微粒子やコロイドが膜表面に付着したり、被処理水中の微生物の付着増殖が膜表面で起こったり、被処理水中に含まれる無機物の濃縮に伴って発生する析出物が膜表面に付着堆積したりして起こり、特に、被処理水中の微生物の付着増殖によるファウリング、所謂バイオファウリングの発生が大きな問題となっている。このバイオファウリングの発生を抑制するためには、適切な前処理により“微生物”と“微生物の栄養源(エサ)”となる有機物などを低減することが有効である。
【0004】
微生物を低減する方法としては、逆浸透膜の供給水に次亜塩素酸ナトリウム等の殺菌剤を連続または間欠で添加し殺菌を行うことが知られている。しかし、膜材質がポリアミド系の逆浸透膜については塩素系殺菌剤と接触すると分離機能層の化学的劣化が起こるため、例えば特許文献1では遊離塩素剤で殺菌した後、逆浸透膜の手前でチオ硫酸ナトリウムや亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を添加することによって還元中和し、逆浸透膜の化学的劣化を防止している。しかし、この方法では硫黄酸化細菌の増殖を促進したり、殺菌処理された微生物の死骸などを栄養源として逆浸透膜の表面で微生物が増殖したりするため、バイオファウリングの発生を抑制することができず、逆浸透膜の透水性能が低下するという問題があった。更に、薬品薬液を用いるので、ランニングコストが増大となった。
【0005】
ここで、逆浸透膜のバイオファウリングの発生を抑制するために、前処理で微生物の栄養源(エサ)となる有機物などを低減する方法に関わる特許文献には、次のようなものがある。
【0006】
特許文献2には、粒状ろ材の表面上にバイオフィルムを形成させ、微生物の栄養源となる有機物を除去し、逆浸透膜におけるバイオファウリングの発生を抑制する方法が開示されている。しかし、この方法では、粒状ろ材では運転条件や被処理水の水質によっては、シルトなどの懸濁物質(懸濁態)、微生物および微生物の栄養源となる有機物などを確実に除去できず、逆浸透膜の透過性能が低下するという問題があった。
【0007】
また、特許文献3には、高ろ過流束で30分〜60分毎に洗浄を行い、精密ろ過や限外ろ過膜を用いて徐濁や微生物を除去する膜前処理では、微生物の栄養源となるような溶解性有機物を十分に除去できないため、生物活性炭と膜ろ過を組み合わせて溶解性有機物を低減し、逆浸透膜におけるバイオファウリングの発生を抑制する方法が開示されている。しかし、この方法では、微生物の栄養源(エサ)となる溶解性有機物と微生物除去を異なる2つのプロセスで実施していることから、設備費が高く経済的に不利であると共に、維持管理が複雑化してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国特開昭59−213495号公報
【特許文献2】日本国特開2013−111559号公報
【特許文献3】国際公開第2006/057249号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、被処理水を精密ろ過膜、限外ろ過膜及びナノろ過膜のいずれかから成る多孔質分離膜で前処理した後に、逆浸透膜で淡水を得るための造水方法において、逆浸透膜のバイオファウリング発生を抑制しつつ、効率よく逆浸透膜で淡水を得るための水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の(1)〜(19)の構成をとる。
(1)多孔質分離膜を収容した膜ろ過装置に被処理水を供給し、前記被処理水を前記多孔質分離膜によってろ過処理することでろ過水を得るろ過工程と、前記多孔質分離膜で分離された、前記膜ろ過装置内の濃縮された被処理水を、膜ろ過装置外に排出する排水工程と、前記多孔質分離膜を物理洗浄及び化学洗浄のうち少なくとも一つの処理により洗浄する洗浄工程とを含み、前記ろ過工程、前記排水工程及び前記洗浄工程を組み合わせたサイクルを複数回繰り返すことによってろ過水を得る水処理方法であって、1回のサイクル内において、前記ろ過工程と前記排水工程とを複数回繰り返した後に前記洗浄工程を実施する水処理方法。
(2)前記洗浄工程が、以下の(a)〜(d)の工程のうちの少なくとも1つを具備する(1)に記載の水処理方法。
(a)前記多孔質分離膜の下方部に設置した散気部から生起される気泡を前記多孔質分離膜に接触させる空気洗浄
(b)前記被処理水のろ過を停止し、前記多孔質分離膜の二次側から一次側に通液する逆圧洗浄
(c)前記多孔質分離膜の一次側に液体を、前記多孔質分離膜の表面と略平行に移動させ、前記多孔質分離膜の一次側を洗浄するフラッシング洗浄
(d)前記被処理水のろ過を停止し、前記多孔質分離膜の一次側もしくは二次側から薬液を供給する薬液洗浄
(3)前記洗浄工程を、ろ過開始から3時間以上1ヶ月以下おきに行う(1)または(2)に記載の水処理方法。
(4)前記ろ過工程において、ろ過流束、または、前記膜ろ過装置への被処理水流入量を調整する(1)〜(3)のいずれか1つに記載の水処理方法。
(5)前記ろ過工程におけるろ過流束が30L/m/h以下である(1)〜(4)のいずれか1つに記載の水処理方法。
(6)前記ろ過工程におけるろ過差圧が50kPa以下である(1)〜(5)のいずれか1つに記載の水処理方法。
【0011】
(7)前記ろ過水の濁質濃度指標を測定し、前記濁質濃度指標が前記ろ過工程開始後の測定値の2倍以上になった場合に、前記ろ過工程を終了し、前記排水工程に移行する(1)〜(6)のいずれか1つに記載の水処理方法。
(8)前記ろ過水の有機物濃度指標を測定し、前記有機物濃度指標が前記ろ過工程開始後の測定値の2倍以上になった場合に、前記ろ過工程を終了し、前記洗浄工程に移行する(1)〜(7)のいずれか1つに記載の水処理方法。
(9)前記ろ過水中に含まれる溶存酸素量が前記ろ過工程で供給される被処理水中に含まれる溶存酸素量よりも低くなるように、ろ過流束、前記膜ろ過装置への被処理水流入量および前記排水工程を行う間隔のうちの少なくとも1つを制御する(1)〜(8)のいずれか1つに記載の水処理方法。
(10)前記ろ過工程が、全量ろ過である(1)〜(9)のいずれか1項に記載の水処理方法。
(11)前記多孔質分離膜が、中空糸膜であり、前記被処理水が前記多孔質分離膜の外側に接して前記多孔質分離膜の内側にろ過される(1)〜(10)のいずれか1つに記載の水処理方法。
(12)前記多孔質分離膜が筒状の膜収容ケースに収容され、該筒状の膜収容ケースの中心軸が略水平となるように設置されている(1)〜(11)のいずれか1つに記載の水処理方法。
【0012】
(13)前記排水工程で排水された濃縮された被処理水中に含まれる微生物濃度が、前記ろ過工程で供給される被処理水中に含まれる微生物濃度より高い(1)〜(12)のいずれか1つに記載の水処理方法。
(14)前記ろ過水の酸化還元電位が350mV以下である(1)〜(13)のいずれか1つに記載の水処理方法。
(15)前記逆圧洗浄に用いる洗浄水の酸化還元電位が500mV以下である(2)〜(14)のいずれか1つに記載の水処理方法。
(16)前記被処理水が、溶解性有機物濃度除去率50%未満の、前記多孔質分離膜よりもろ過精度の低いろ過処理を行った処理水である(1)〜(15)のいずれか1つに記載の水処理方法。
(17)前記ろ過水のバイオフィルムフォーメーションレートが、被処理水のバイオフィルムフォーメーションレートの5分の1以下である(1)〜(16)のいずれか1つに記載の水処理方法。
(18)(1)〜(17)のいずれか1つに記載の水処理方法で得られたろ過水を、脱塩処理する淡水製造方法。
(19)前記脱塩処理が、半透膜処理、イオン交換処理、晶析処理及び蒸留処理からなる群から選ばれる少なくとも1つの処理である(18)に記載の淡水製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、多孔質分離膜の固液分離機能で被処理水中の微生物や微生物が付着するための懸濁態や微生物の栄養源(エサ)となる有機物などのうちサイズの大きなコロイド成分を多孔質分離膜の一次側(供給側)に保持し、多孔質分離膜の表面に形成されたバイオフィルムや多孔質分離膜の一次側(供給側)に保持された懸濁態からなるバイオマスの浄化機能によって、微生物の栄養源(エサ)となる有機物などのうちサイズの小さな溶解性成分を前処理で低減することで、逆浸透膜におけるバイオファウリングの発生を抑制することができる。また、多孔質分離膜が外側から内側にろ過する外圧式ろ過方式であると共に、該多孔質分離膜の洗浄工程を実施する間隔を3時間以上1ヶ月以下とすることで、前述した2つの機能を効率的に発現させることができ、逆浸透膜のバイオファウリング発生を抑制しつつ、効率よく逆浸透膜で淡水を得るための造水方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の造水装置の一実施態様を示す模式図である。
図2図2は、本発明の造水装置の別の実施態様を示す模式図である。
図3図3は、本発明の造水装置の別の実施態様を示す模式図である。
図4図4は、本発明の造水装置の別の実施態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示す実施形態に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明に係る造水装置には、例えば、図1に示すように、被処理水を貯留する被処理水貯留槽1と、被処理水を供給する被処理水供給ポンプ2と、被処理水を多孔質分離膜の外側から内側にろ過する外圧式ろ過方式の膜(外圧式多孔質分離膜)を充填した外圧式多孔質分離膜モジュール3と、外圧式多孔質分離膜でろ過したろ過水を貯留するろ過水貯留槽4と、逆浸透膜ユニット5と、ろ過水(処理水)を逆浸透膜ユニット5に供給するブースターポンプ6と、更に外圧式多孔質分離膜モジュール3のろ過水を逆浸透膜ユニット5で透過水31と濃縮水32に分離するために昇圧する昇圧ポンプ7、ろ過水を供給して外圧式多孔質分離膜モジュール3を逆圧洗浄する逆洗ポンプ8から構成されている。
【0017】
また、被処理水貯留槽1と外圧式多孔質分離膜モジュール3は被処理水配管9で、外圧式多孔質分離膜モジュール3とろ過水貯留槽4はろ過水配管10で、ろ過水貯留槽4と逆浸透膜ユニット5は逆浸透膜供給水配管11で接続されている。更に、外圧式多孔質分離膜モジュール3の運転制御のために、被処理水供給時に開となる被処理水供給弁12と、外圧式多孔質分離膜モジュール3の逆圧(逆流)洗浄や空気洗浄する場合に開となるエア抜き弁13と、ろ過時に開となるろ過水弁14と、逆圧洗浄する場合に開となる逆洗弁15と、外圧式多孔質分離膜モジュール3の一次側(供給側)の水を排水する場合に開となる排水弁16と、圧縮空気を外圧式多孔質分離膜モジュール3の下部に供給し空気洗浄する場合に開となる空気弁17が備えられている。
【0018】
本造水装置において、通常のろ過工程では、被処理水供給弁12が開の状態で被処理水貯留槽1に貯留されている被処理水が被処理水供給ポンプ2によって外圧式多孔質分離膜モジュール3の一次側(供給側)に供給され、ろ過水弁14を開にすることで外圧式多孔質分離膜の加圧ろ過が行われる。
【0019】
多孔質分離膜によりろ過されたろ過水は、一時的にろ過水貯留槽4に貯留された後、ブースターポンプ6によって昇圧ポンプ7に供給され、昇圧ポンプ7で昇圧された後、逆浸透膜ユニット5に供給され、塩分などの溶質が除去された透過水31と、塩分などの溶質が濃縮された濃縮水32に分離される。
【0020】
本発明は、多孔質分離膜の固液分離機能と、多孔質分離膜の表面に堆積したバイオフィルムおよび多孔質分離膜の一次側(供給側)に保持された懸濁態からなるバイオマスの浄化機能によって、被処理水中の微生物と微生物の栄養源(エサ)を前処理で低減することで、逆浸透膜におけるバイオファウリングの発生を抑制する。
前述した浄化機能を効率的に発現させるために、本発明は、多孔質分離膜を収容した膜ろ過装置(図1の外圧式多孔質分離膜モジュール3)に被処理水を供給し、該被処理水を該多孔質分離膜によってろ過処理することでろ過水を得るろ過工程と、多孔質分離膜で分離された、膜ろ過装置内の濃縮された被処理水を、膜ろ過装置外に排出する排水工程と、多孔質分離膜を、物理洗浄及び化学洗浄のうち少なくとも一つの処理により洗浄する洗浄工程と、とを含み、ろ過工程、排水工程、洗浄工程を組み合わせたサイクルを複数回繰り返すことによってろ過水を得る水処理方法であって、1回のサイクル内において、ろ過工程と排水工程とを複数回繰り返した後に洗浄工程を実施することを特徴とする。排水工程は、膜ろ過装置の一次側の液体を排出することにより懸濁態やファウリング成分を十分に除去できるため、多孔質分離膜の表面に堆積したバイオフィルムを剥がす効果が低く、実施時間も短くて済むため、排水工程を積極的に実施することは本発明に好適である。
【0021】
多孔質分離膜の洗浄工程とは、ろ過継続に伴って、多孔質分離膜の表面や内部に蓄積した無機物や有機物からなる汚れ(ファウリング)を洗浄する工程で、所定のろ過圧力まで達した場合や、所定のろ過継続時間まで達した場合に定期的に実施される。
【0022】
洗浄工程における処理方法としては、例えば、被処理水のろ過を停止し、外圧式多孔質分離膜モジュール3のろ過方向とは逆方向から、すなわち、二次側(透過側)から一次側(供給側)に向けて、洗浄水(例えば、多孔質分離膜のろ過水)を通液(いわゆる、逆流)させて、多孔質分離膜内部に蓄積したファウリング成分を除去する逆圧(逆流)洗浄(逆洗)や、コンプレッサー18などの散気部を用いて外圧式多孔質分離膜モジュール3の下部から圧縮空気を供給して、散気部から生起される気泡を多孔質分離膜に接触させて多孔質分離膜表面に堆積したファウリング成分を除去する空気(気泡)洗浄(いわゆる、空洗)や、被処理水などをろ過膜の一次側に高流束で流して多孔質分離膜の表面と略平行に移動させ、多孔質分離膜表面に堆積したファウリング成分を除去したり、多孔質分離膜の一次側に保持されていた懸濁態を排出したりするフラッシング洗浄や、逆圧洗浄時に次亜塩素酸ナトリウムなどの薬液を添加した洗浄水を用いる薬液強化逆圧洗浄や、薬液を添加したろ過膜の被処理水やろ過水を外圧式多孔質分離膜モジュールの一次側又は二次側から供給し、多孔質分離膜を浸漬する薬液洗浄等が挙げられる。なお、逆圧洗浄に用いる洗浄水の酸化還元電位は500mV以下であることが好ましく、0〜200mVがより好ましく、100〜200mVがさらに好ましい。洗浄水の酸化還元電位を500mV以下とすることで、微生物の酸化ストレスを軽減できると共に、0mV以上とすることで嫌気状態による微生物のストレスを軽減することができる。洗浄水の酸化還元電位は、洗浄水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位計(ORP計)19を設置し、被処理水の酸化還元電位を監視することが好ましい。
【0023】
これらの洗浄工程は、各洗浄工程を単独で実施しても構わないし、複数の洗浄工程を組み合わせて実施しても構わない。また、複数の洗浄工程を組み合わせて行う場合、各工程を同時に実施しても構わないし、順次実施しても構わない。本発明において、薬液強化逆圧洗浄や薬液洗浄のような薬液を使用する洗浄工程によって、多孔質分離膜の表面に堆積したバイオフィルムとろ過膜の一次側に保持された懸濁態からなるバイオマスの浄化機能が低下するのを防止するためにも、前述した逆圧洗浄、空気洗浄又はフラッシング洗浄のような薬液を使用しない物理洗浄が好ましい。ただし、ファウリングを過度に蓄積した場合などにおいては、薬液を使用する洗浄工程を実施することで多孔質分離膜の差圧上昇を抑制することができるので、薬液を使用する洗浄工程を、物理洗浄よりも実施頻度を低くして該物理洗浄と組み合わせることが好ましい。
【0024】
本発明では、多孔質分離膜の洗浄工程は、ろ過工程、排水工程及び洗浄工程を組み合わせたサイクルの1サイクル内において、ろ過工程と排水工程を複数回繰り返した後に実施する。ろ過工程と排水工程を複数回繰り返した後に洗浄工程を行うことで、過度なファウリングの蓄積を防止することができる。
【0025】
多孔質分離膜の洗浄工程を実施する間隔については、ろ過開始から3時間以上1ヶ月以下おきに洗浄工程を行うことが好ましく、1日以上1ヶ月以下がより好ましい。例えば、海水中に浮遊している微生物は初めの3時間程度で急激にろ過膜や懸濁態に付着し、その後、緩やかに付着継続する傾向があるため、多孔質分離膜や懸濁態の表面にバイオフィルムを付着形成させ、効率良く浄化機能を発現させるためには、3時間以上ろ過を継続させることが好ましい。さらに、多孔質分離膜や懸濁態の表面にバイオフィルムを定着させるためにも、昼夜の水温変化、潮の満ち引きなどの日変動を考慮する必要があり、1日以上ろ過を継続させることがより好ましい。また、多孔質分離膜や懸濁態の表面に形成されたバイオフィルムに微生物が過度に増殖したり、被処理水中の非バイオマス系懸濁物質が過度に蓄積したり、バイオフィルムの代謝物が蓄積し過ぎたり、被処理水中の懸濁態が吸着してバイオフィルムが厚くなり過ぎて、バイオフィルム内が嫌気化し易くなったりするのを防止するためにも、1ヶ月に1回は多孔質分離膜を洗浄することが好ましい。
【0026】
また、被処理水の水質にもよるが、多孔質分離膜への滞留時間が十分にあると浄化機能が進行し易いことから、多孔質分離膜の表面に形成されたバイオフィルムや多孔質分離膜の一次側(供給側)に保持された懸濁態からなるバイオマスの浄化機能をより安定化させるためにも、多孔質分離膜は低流束が好ましく、具体的には0.5m/d以下に設定することが好ましい。
【0027】
また、被処理水中の微生物や微生物の栄養源(エサ)の中には、圧力が掛かり過ぎると剪断されて、ろ過膜を通過することが報告されているので、多孔質分離膜の供給圧が設定値以上となった場合には、該ろ過膜の洗浄工程を実施することが好ましい。薬液を使用しない物理洗浄を実施する場合においても、外圧式多孔質分離膜モジュール3の多孔質分離膜の一次側(供給側)に存在するバイオフィルムが付着した懸濁態は外圧式多孔質分離膜モジュール3から排出されたり、多孔質分離膜の表面に堆積したバイオフィルムは空気洗浄や逆圧洗浄などの物理洗浄によって除去され、外圧式多孔質分離膜モジュール3から排出されたりするため、一時的に浄化機能が低下することが懸念される。そのため、多孔質分離膜の洗浄工程直後の一定期間、多孔質分離膜の流束を0.5m/dより高くし、且つ、多孔質分離膜のろ過水をろ過水貯留槽4へ送水せずに系外へ排出したり、多孔質分離膜の逆圧洗浄時に使用する洗浄水として使用したりすることが好ましい。つまり、ろ過膜の流束を高くすることで、多孔質分離膜の表面に微生物や微生物の栄養分(エサ)となる有機物などを速やかに必要量供給することができると共に、多孔質分離膜の一次側にバイオフィルムが付着するための懸濁態を補充することができ、浄化機能が低下したバイオマスを速やかに回復させることができる。一方、多孔質分離膜の流束が低い方がより浄化機能が安定していることから、多孔質分離膜の流束が高い時のろ過水は系外へ排出したり、多孔質分離膜の逆圧洗浄時に使用する洗浄水として使用したりすることが好ましい。
【0028】
また、薬液を使用しない洗浄工程時の排水の少なくとも一部を回収し、外圧式多孔質分離膜モジュール3の一次側に供給しても構わないし、被処理水貯留槽1へ返送しても構わない。このようにすることで、多孔質分離膜の一次側にバイオフィルムが付着するための懸濁態を補充することができ、浄化機能が低下したバイオマスを速やかに回復させることができる。
【0029】
また、配管や装置内の微生物汚染を防止するために次亜塩素酸ナトリウムなどを取水時に添加する場合が多く、ろ過膜の表面に堆積したバイオフィルムやろ過膜の一次側に保持された懸濁態からなるバイオマスを保護するためにも、図1のように被処理水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位計(ORP計)19を設置し、被処理水の酸化還元電位を監視することが好ましい。被処理水の酸化還元電位が500mV以上の場合には、還元剤を貯留する還元剤貯留槽20から還元剤添加ポンプ21を用いて還元剤を添加することが好ましい。あるいは、図示していないが、酸化還元電位計(ORP計)19の代替として塩素計を設置し、被処理水の塩素濃度を監視し、例えば、塩濃度が0.2mg/l以上の場合に、還元剤を添加しても構わない。前述したような低濃度範囲であれば、多孔質分離膜の表面に堆積したバイオフィルムや多孔質分離膜の一次側(供給側)に保持された懸濁態からなるバイオマスの浄化機能が低下することはほとんどない。
【0030】
多孔質分離膜の回収率とは、多孔質分離膜の供給水に対するろ過水の比率のことである。多孔質分離膜の表面に微生物および微生物の栄養分(エサ)となる有機物などを、多孔質分離膜の圧力が上昇し過ぎない範囲で可能な限り溜め込んで処理するためには、多孔質分離膜の回収率は95%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。
【0031】
多孔質分離膜のろ過流束が低い方がより浄化機能が安定することから、ろ過工程において、多孔質分離膜のろ過流束又は膜ろ過装置(外圧式多孔質分離膜モジュール3)への被処理水流入量を調整することが好ましい。具体的には、多孔質分離膜のろ過流束を抑えつつ、洗浄間隔を長くして運転条件を設定することが好適である。
【0032】
本発明においては、全量ろ過方式で実施しても、図2のようにエア抜き弁13の開度調整を行い、排水を多孔質分離膜の上流に返送するクロスフローろ過方式で実施しても構わない。クロスフローろ過方式の場合は、多孔質分離膜の表面に付着したバイオフィルムが剥離したり、浄化機能を有した懸濁態が多孔質分離膜の一次側から排出するのを防止するためにも、膜面流束が極力小さい流束で運転することが好ましい。多孔質分離膜の表面に堆積したバイオフィルムや多孔質分離膜の一次側に保持された懸濁態からなるバイオマスへの栄養分(エサ)の供給、且つ、バイオフィルムの剥離抑制の観点から、ろ過工程におけるろ過流束は、30L/m/h以下であることが好ましく、15L/m/h以下がより好ましい。
【0033】
本発明において、ろ過工程におけるろ過差圧を50kPa以下とすることが好ましい。ろ過差圧とは多孔質分離膜の一次側のろ過圧と二次側のろ過圧の差であり、ろ過差圧が50kPa以下であると多孔質分離膜の表面に微生物および微生物の栄養分(エサ)が加圧によって細分化されることがなく、多孔質分離膜の表面で保持することができる。ろ過差圧は、40kPa以下であることがより好ましい。
【0034】
図2に示すように、外圧式多孔質分離膜モジュール3に充填されている多孔質分離膜よりもろ過精度の大きな前ろ過処理ユニット22を組み合わせることで、多孔質分離膜の差圧上昇を抑制できるので、本発明の浄化機能をより安定して継続することができ好ましい。
【0035】
前ろ過処理ユニット22は、多孔質分離膜と多孔質分離膜の一次側に保持された懸濁物質にバイオフィルムを付着形成させて、本発明の浄化機能を発現させるため、ある程度の懸濁物質などのファウリング成分を除去でき、且つ、微生物および微生物の栄養分となる有機物などを完全阻止しないものが好適である。水中の浮遊細菌は最短で0.2〜0.3μm、最長は10μm以上程度の形状をなしていることから、前ろ過処理ユニット22としては、例えば、ろ過精度10μm以下のフィルターや平均粒径0.5mm以下のメディアフィルターが好ましく、いずれかもしくは両方を組み合わせても構わない。
【0036】
平均粒径0.5mm以下のメディアフィルターは、自然に流下する方式の重力式ろ過を適用することも可能であり、加圧タンクの中に砂を充填した加圧式ろ過を適用することも可能である。前ろ過処理ユニット22に充填するメディアも、単一成分の砂を適用することが可能であるが、例えば、アンスラサイト、珪砂、ガーネット、軽石、活性炭などを組み合わせて、ろ過効率を高めることが可能である。中でも、メディアの表面にバイオフィルムが形成し易い多孔質系のメディアを用いることが好ましい。また、ろ過精度10μm以下のフィルターとしては、糸巻きフィルター、不織布フィルター、精密濾過膜、限外ろ過膜や溶解物質の分離が可能なナノろ過膜を挙げることができる。
【0037】
図3に示すように、多孔質分離膜によりろ過されたろ過水を貯留するろ過水貯留槽4(中間槽)を省き、外圧式多孔質分離膜モジュール3のろ過水を直接逆浸透膜ユニット5に供給することで、中間槽での微生物増殖による後段のROバイオファウリングを抑制できると共に、ろ過水貯留槽4(中間槽)やブースターポンプ6を省くことができる。よって、設備費削減や省スペース性に繋がるため好適である。ろ過水貯留槽(中間槽)4とブースターポンプ6を省く場合は、昇圧ポンプ7でキャビテーションが発生しないように、多孔質分離膜のろ過水に0.05〜0.2MPaの圧力を持たせて、昇圧ポンプ7に供給することで、該ろ過水を逆浸透膜ユニット5で透過水と濃縮水に分離する。よって、ろ過水貯留槽4とブースターポンプ6を省く場合は、多孔質分離膜を複数本並列に設置し、一部の多孔質分離膜を洗浄している場合は他の多孔質分離膜で逆浸透膜ユニット5に必要な水量と圧力を補い、淡水製造装置全体として連続運転可能な状態にすることが好ましい。
【0038】
更に、前ろ過処理ユニット22のろ過水を貯留する前ろ過処理水貯留槽23も省くことで、被処理水を供給する被処理水供給ポンプ2bを省いて、被処理水供給ポンプ2aのみで外圧式多孔質分離膜モジュール3と前ろ過処理ユニット22のろ過を実施すると、更に設備費削減や省スペース性に繋がるため好適である。また、図示していないが、逆浸透膜ユニット5の直前に設置されることが多い保安フィルターも省くことができ、設備費削減に繋がるため好適である。
【0039】
本発明を適用して逆浸透膜のバイオファウリングを抑制できたとしても、被処理水中の微粒子やコロイドが逆浸透膜の表面に付着したり、被処理水中に含まれる無機物の濃縮に伴って発生する析出物が逆浸透膜の表面に付着堆積したり、被処理水中の微生物の付着増殖が少なからず逆浸透膜の表面で起こったりして、逆浸透膜がファウリングした場合には、薬液で洗浄するなどして回復させる方法が適用されている。しかし、薬液洗浄は、一般に運転を停止する必要があり、薬液コスト、薬液による逆浸透膜の劣化など、可能な限り実施しないことが好ましい。そこで、薬液洗浄に至る前に、被処理水や透過水を逆浸透膜の供給側に高流束で流すフラッシング洗浄や、逆浸透膜の透過水側から逆圧力をかけて透過水を逆浸透膜の供給側に逆流させて付着ファウリング物質を浮き上がらせて除去する逆圧洗浄といった物理洗浄と呼ばれる手法が適用されていることが多い。
【0040】
図4に示すように、一般的に、これら物理洗浄の洗浄排水は系外へ排出されるが、物理洗浄排水中には逆浸透膜の表面に付着していたバイオフィルムが多く浮遊していることから、被処理水を外圧式多孔質分離膜モジュール3および/または前ろ過処理ユニット22に供給してろ過することで、逆浸透膜の表面に付着し易い微生物を外圧式多孔質分離膜モジュール3や前ろ過処理ユニット22の内部に補充することができ、浄化機能UPに繋がるため好適である。さらに、外圧式多孔質分離膜モジュール3や前ろ過処理ユニット22の洗浄工程直後は一時的に機能低下していることから、洗浄工程直後に逆浸透膜の物理洗浄排水を外圧式多孔質分離膜モジュール3や前ろ過処理ユニット22に供給する方がより好適である。逆浸透膜のフラッシング洗浄や逆圧洗浄などの物理洗浄排水は、逆浸透膜濃縮水ライン24を経由し、逆浸透膜濃縮水切替バルブ25aを閉とし、逆浸透膜濃縮水切替バルブ25bを開とし、逆浸透膜物理洗浄供給水ライン26に供給し、外圧式多孔質分離膜モジュール3へ供給する場合は、逆浸透膜物理洗浄水供給バルブ27aを開とし、前ろ過処理ユニット22へ供給する場合は、逆浸透膜物理洗浄水供給バルブ27bを開として制御する。
【0041】
本発明の多孔質分離膜の洗浄工程を実施する間隔については、被処理水、多孔質分離膜の一次側に濃縮された被処理水および/またはろ過水の水質を監視し、設定値を逸脱した場合は、洗浄工程を実施する方が逆浸透膜ユニット5により安定して良質なろ過水を供給することができ好ましい。
【0042】
監視する水質項目は、総有機炭素濃度(TOC)、同化可能有機炭素(AOC)、溶解性有機炭素濃度(DOC)、化学的酸素要求量(COD)、生物学的酸素要求量(BOD)、紫外線吸収量(UV)、透明細胞外高分子粒子(TEP)、アデノシン三リン酸(ATP)、バイオフィルム形成速度(BFR)、溶存酸素量(DO)、濁質濃度、有機物濃度等を挙げることができる。
この中でも、逆浸透膜の表面におけるバイオファウリングの形成し易さを監視する上でバイオフィルム形成速度(BFR)が、多孔質分離膜の供給圧力が高くなった場合に、多孔質分離膜の二次側(透過側)にリークした細分化された微生物を監視するには透明細胞外高分子粒子(TEP)が、ろ過膜の一次側が過度な嫌気状態にならないように監視するためには溶存酸素量(DO)がそれぞれ好適である。
【0043】
溶存酸素量(DO)については、ろ過水中に含まれる溶存酸素量がろ過工程で供給される被処理水中に含まれる溶存酸素量よりも低くなるように、ろ過流束、膜ろ過装置への被処理水流入量および排水工程間隔のうちの少なくとも1つを制御することが好適である。ろ過水中に含まれる溶存酸素量がろ過工程で供給される被処理水中に含まれる溶存酸素量よりも1mg/L以上低くなるように制御することがより好ましく、2mg/L以上低くなるように制御することが更に好ましい。
【0044】
濁質濃度については、ろ過水中に含まれる濁質の濁質濃度指標が、ろ過工程開始後の測定値の2倍以上になった場合に、ろ過工程を終了し、排水工程に移行するように制御することが好適である。ろ過水の濁質濃度は、ろ過水を通過した透過光の強度を測定し、標準液を用いて作成した検量線で求める透過光濁度や、ろ過水中の粒子によって散乱した光の強度を測定し、標準液を用いて作成した検量線から求める散乱光濁度や、ろ過水中の粒子による散乱光の強度と透過光の強度との比を求め、標準液を用いて作成した検量線から求める積分球濁度などにより測定でき、水質管理に通常使用される濁度計(JIS K 0101)をセンサーとして使用することが好ましい。
【0045】
有機物濃度については、ろ過水中に含まれる有機物の有機物濃度指標が、ろ過工程開始後の測定値の2倍以上になった場合に、ろ過工程を終了し、洗浄工程に移行するように制御することが好適である。ろ過水の有機物濃度は、ろ過水中の総有機炭素濃度(TOC)、同化可能有機炭素(AOC)、溶解性有機炭素濃度(DOC)、化学的酸素要求量(COD)、生物学的酸素要求量(BOD)、紫外線吸収量(UV)、透明細胞外高分子粒子(TEP)、により測定できる。具体的に、TOCとDOCは、ろ過水を完全燃焼させて発生した二酸化酸素を測定する燃焼触媒酸化方式や、ろ過水に酸化剤を添加し、発生した二酸化炭素を赤外線ガス分析部で検出し測定する湿式酸化方式で測定できる。また、CODはろ過水中の有機物を強力な酸化剤で酸化し消費された酸素量を測定し、BODはろ過水を20℃で5日間放置し微生物によって分解された酸素量を測定できる。また、紫外線吸収量(UV)
はろ過水に254nmの紫外線を照射し吸収量から、ろ過水中の芳香族環、不飽和二重結合を有する成分を測定でき、TEPはろ過水中の多糖類をAlcian Blueなどで染色可視化し定量化できる。
【0046】
これらの水質項目の監視は、各洗浄工程を単独で実施して構わないし、複数の洗浄工程を組み合わせて実施しても構わない。また、前述したろ過水の水質測定方法の中でも、的確なタイミングでろ過工程と洗浄工程にフィードバックできるように、オンライン測定できるものが好ましい。
【0047】
薬液強化逆洗や薬液浸漬洗浄といった洗浄工程に使用される薬液としては、酸やアルカリ、酸化剤や還元剤、キレート剤、界面活性剤などのいずれであっても構わないが、使用後に中和処理できるもの、例えば、酸やアルカリ、酸化剤や還元剤が好ましい。中和処理できない薬液の場合は、希釈するために膨大な希釈水(例えば、ろ過膜のろ過水など)が必要であったり、薬液廃水の処理費用が高くなったりするので好ましくない。
【0048】
本発明における外圧式多孔質分離膜モジュール3としては、図1に示すような加圧型以外にも、被処理水の入った浸漬槽にろ過膜を浸漬させてポンプやサイフォン等で吸引ろ過する浸漬型でも構わない。また加圧型の場合、内圧式ではバイオフィルムが付着するための懸濁物質を多孔質分離膜の一次側(供給側)に保持することが困難なため外圧式多孔質分離膜が好適である。
また、多孔質分離膜は筒状の膜収容ケースに収容され、筒状膜の収容ケースの中心軸が略水平となるように設置されることが好ましい。
【0049】
また、多孔質分離膜は、精密ろ過膜、限外ろ過膜及びナノろ過膜のいずれかからなり、外圧式多孔質分離膜の形状としては、バイオフィルムが付着するために必要な膜の表面積が大きいものが好ましく、中空糸膜又は管状膜がより好ましく、膜表面に付着したバイオフィルムが剥離しないように、クロスフローによるせん断応力が比較的発生し難い中空糸膜が更に好ましい。
【0050】
多孔質分離膜の材質としては、セラミック等の無機素材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種類を含んでいるのが好ましい。さらに、多孔質分離膜の材質は、膜強度や耐薬品性の点からはポリフッ化ビニリデン(PVDF)がより好ましく、親水性が高く耐汚れ性が強いという点からはポリアクリロニトリルがより好ましい。
【0051】
中空糸膜表面の細孔径については特に限定されず、MF膜であってもUF膜であっても構わず、0.01μm〜10μmの範囲内で便宜選択することができる。
【0052】
ここで、外圧式多孔質分離膜モジュール3や前ろ過処理ユニット22のろ過流量制御方法としては、定流量ろ過であっても定圧ろ過であっても差し支えはないが、ろ過水の生産水量の制御のし易さの点から定流量ろ過である方が好ましい。
【0053】
膜ろ過装置である外圧式多孔質分離膜モジュール3の多孔質分離膜で分離されたろ過水は、図1に示したように、ろ過水貯留槽4に貯水され、逆浸透膜ユニット5に移送されて透過水31と濃縮水32が得られる。外圧式多孔質分離膜モジュール3内の一次側に残った、濃縮された被処理水は、排水工程にて外圧式多孔質分離膜モジュール3外に排出される。排出方法としては、排水弁16やエア抜き弁13を開として実施すればよい。
本発明において、排水工程で排水された濃縮された被処理水中に含まれる微生物濃度が、ろ過工程で供給される被処理水中に含まれる微生物濃度より高いことが好ましい。濃縮された被処理水中に含まれる微生物濃度がろ過工程に供給される被処理中に含まれる微生物濃度よりも高くすることで、バイオファウリングの発生抑制精度がより高くなる。被処理水中の微生物濃度は、排水弁16やエア抜き弁13を開として、一部抜き出した濃縮された被処理水の有機物濃度基づいて制御することができる。
【0054】
本発明において、ろ過水の酸化還元電位は350mV以下であることが好ましく、200〜100mVであることがより好ましい。ろ過水の酸化還元電位が350mV以下であれば、多孔質分離膜の表面に蓄積した微生物にストレスを与えることなく、ろ過継続できる。ろ過水の酸化還元電位は、被処理水の酸化還元電位を測定する酸化還元電位計(ORP計)19を設置し、被処理水の酸化還元電位を監視し、被処理水の酸化還元電位に基づいて還元剤を添加することにより制御することができる。
【0055】
また、本発明において、ろ過水のバイオフィルムフォーメーションレートが、被処理水のバイオフィルムフォーメーションレートの5分の1以下であることが好ましい。バイオフィルムフォーメーションレートとはバイオフィルム量の増加速度の指標であり、ろ過水のバイオフィルムフォーメーションレートが前記範囲であるとバイオファウリングの発生を抑制できるため好ましい。ろ過水のバイオフィルムフォーメーションレートが、被処理水のものの10分の1以下であることがより好ましい。更には、ろ過水のバイオフィルムフォーメーションレートが20pg/cm/d以下であればバイオファウリングが発生し難く、10pg/cm/d以下であればより好ましい。
【0056】
本発明の水処理方法により得られたろ過水は、逆浸透膜ユニット5により脱塩処理され、透過水31として所望の淡水を製造する。脱塩処理は、半透膜処理、イオン交換処理、晶析処理及び蒸留処理からなる群から選ばれる少なくとも1つの処理であることが好ましい。
【0057】
逆浸透膜とは被処理水中の一部の成分、例えば溶媒を透過させ他の成分を透過させない半透性を有する膜であり、逆浸透膜(RO膜)を包含する。その素材には酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材がよく費用されている。またその膜構造は膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い分離機能層を有する複合膜などを適宜使用できる。膜形態には中空糸膜、平膜がある。また、膜素材、膜構造や膜形態によらず実施することができいずれも効果があるが、代表的な膜としては、例えば酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系、ポリ尿素系の分離機能層を有する複合膜などがあり、造水量、耐久性、塩排除率の観点から、酢酸セルロース系の非対称膜、ポリアミド系の複合膜を用いることが好ましい。
【0058】
逆浸透膜ユニット5の供給圧力は0.1MPa〜15MPaであり、被処理水の種類、運転方法などで適宜使い分けられる。かん水や超純水などの浸透圧の低い水を供給水とする場合には比較的低圧で、海水淡水化や廃水処理、有用物の回収などの場合には比較的高圧で使用される。
【0059】
また、本発明において、逆浸透膜ユニット5としては、特に制約はないが、取り扱いを容易にするため中空糸膜状や平膜状の半透膜を筐体に納めて流体分離素子(エレメント)としたものを耐圧容器に充填したものを用いることが好ましい。流体分離素子は、平膜で形成する場合、例えば、多数の孔を穿設した筒状の中心パイプの周りに、半透膜を流路材(ネット)とともに円筒状に巻回したものが一般的であり、市販品としては、東レ(株)製逆浸透膜エレメントTM700シリーズやTM800シリーズを挙げることができる。これら流体分離素子は1本でも、また複数本を直列あるいは並列に接続して半透膜ユニットを構成することも好ましい。
【0060】
本発明において、淡水を得るために用いる被処理水は、溶解性有機物濃度除去率50%未満の、多孔質分離膜よりもろ過精度の低いろ過処理を行った処理水であることが好ましい。膜ろ過装置で処理するよりも先に多孔質分離膜よりもろ過精度の低いろ過処理を行い、溶解性有機物濃度除去率50%未満とすることで、多孔質分離膜の表面に微生物や微生物の栄養源(エサ)を供給することができる。このろ過処理の方法としては、例えば、砂ろ過、糸巻きフィルター、不織布フィルターろ過、膜ろ過等が挙げられる。
【0061】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2013年12月2日出願の日本特許出願(特願2013−248874)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、被処理水を精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜のいずれかから成る多孔質分離膜で前処理した後に、逆浸透膜で淡水を得るための造水方法において、逆浸透膜のバイオファウリング発生を抑制しつつ、効率よく逆浸透膜で淡水を得るための水処理方法、および造水装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:被処理水貯留槽
2:被処理水供給ポンプ
3:外圧式多孔質分離膜モジュール
4:ろ過水貯留槽
5:逆浸透膜ユニット
6:ブースターポンプ
7:昇圧ポンプ
8:逆洗ポンプ
9:被処理水配管
10:ろ過水配管
11:逆浸透膜供給水配管
12:被処理水供給弁
13:エア抜き弁
14:ろ過水弁
15:逆洗弁
16:排水弁
17:空気弁
18:コンプレッサー
19:酸化還元電位計(ORP計)
20:還元剤貯留槽
21:還元剤添加ポンプ
22:前ろ過処理ユニット
23:前ろ過処理水貯留槽
24:逆浸透膜濃縮水ライン
25a、25b:逆浸透膜濃縮水切替バルブ
26:逆浸透膜物理洗浄供給水ライン
27a、27b:逆浸透膜物理洗浄水供給バルブ
31:透過水
32:濃縮水
【要約】
本発明は、多孔質分離膜で前処理した後に逆浸透膜で淡水を得るための造水方法に用いる水処理方法であって、多孔質分離膜を収容した膜ろ過装置に被処理水を供給し、ろ過処理してろ過水を得るろ過工程と、多孔質分離膜で分離された、膜ろ過装置内の濃縮された被処理水を排出する排水工程と、多孔質分離膜を、物理洗浄及び化学洗浄のうち少なくとも一つにより洗浄する洗浄工程とを含み、ろ過工程、排水工程及び洗浄工程を組み合わせたサイクルを複数回繰り返してろ過水を得る。1回のサイクル内において、ろ過工程と排水工程とを複数回繰り返した後に洗浄工程を実施する。
図1
図2
図3
図4