特許第5804303号(P5804303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5804303
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】送電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 17/00 20060101AFI20151015BHJP
【FI】
   H02J17/00 B
   H02J17/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-557647(P2014-557647)
(86)(22)【出願日】2013年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2013073604
(87)【国際公開番号】WO2014119035
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2014年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-14879(P2013-14879)
(32)【優先日】2013年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103056
【弁理士】
【氏名又は名称】境 正寿
(72)【発明者】
【氏名】郷間 真治
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−040206(JP,A)
【文献】 特開2006−246633(JP,A)
【文献】 特開2009−296857(JP,A)
【文献】 特開2009−089520(JP,A)
【文献】 特表昭62−501671(JP,A)
【文献】 特表2009−531009(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/114268(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続された低圧側巻線、
前記低圧側巻線と協働して昇圧トランスをなす高圧側巻線、
前記高圧側巻線の一方端に接続された一方端を有して磁界結合方式の電力伝送を行うコイル、
前記高圧側巻線の前記一方端に接続された第1電極、
前記第1電極と協働して電界結合方式の電力伝送を行う第2電極、
前記コイルの他方端および前記第2電極のうち、一方を前記高圧側巻線の他方端に選択的に接続する第1スイッチ、および
前記交流電源よりも出力側のインピーダンスに基づいて、または、受電装置の有する仕様情報に基づいて、前記受電装置の電力伝送方式を識別して前記第1スイッチの接続態様を制御する制御手段を備える、送電装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記受電装置の電力伝送方式が磁界結合方式であるとき前記コイルの他方端の選択を前記第1スイッチに要求する第1要求手段、および前記受電装置の電力伝送方式が電界結合方式であるとき前記第2電極の選択を前記第1スイッチに要求する第2要求手段を含む、請求項1記載の送電装置。
【請求項3】
前記第1電極の面積は、前記第2電極の面積より大きい、請求項1または2記載の送電装置。
【請求項4】
前記第2電極は複数の部分電極を含み、
前記複数の部分電極を前記第1スイッチに選択的に接続する第2スイッチをさらに備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の送電装置。
【請求項5】
前記受電装置の電力伝送方式に適合するように前記昇圧トランスの変圧比を調整する調整手段をさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の送電装置。
【請求項6】
前記受電装置の位置を検知する検知手段、
前記受電装置の受電方式が磁界結合方式であるとき前記コイルを前記検知手段によって検知された位置に移動させる第1移動手段、および
前記受電装置の受電方式が電界結合方式であるとき前記第2電極を前記検知手段によって検知された位置に移動させる第2移動手段をさらに備える、請求項1ないし5のいずれかに記載の送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送電装置に関し、特に送電装置から受電装置に対して無線で電力を伝送する、送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス電力伝送方式としては、たとえば特許文献1のように、磁界結合を利用して送電ユニット側の一次コイルから負荷ユニット側の二次コイルに電力を伝送する方式が一般的である。また、たとえば特許文献1〜3のように静電界を利用して送電ユニット側の結合用電極から負荷ユニット側の結合用電極に電力を伝送する方式(電界結合方式)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−40206号公報
【特許文献2】特表2009−531009号公報
【特許文献3】特開2009−296857号公報
【特許文献4】特開2009−89520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、磁界結合方式では、コイルを通る磁束の大きさが起電力に大きく影響するため、一次コイルと二次コイルの高い位置精度が要求され、かつコイルの小型化が難しい。
【0005】
また、電界結合方式では、結合用電極間の静電界を利用することから、各結合用電極の位置精度を緩和することができ、また結合用電極を小型化できるという利点があるものの、磁界結合方式とは全く異なる原理が採用されるため、1つの送電装置でいずれの方式にも対応しようとすると、回路構成の複雑化を引き起こすおそれがある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、回路構成の複雑化を抑制しつつ磁界結合方式および電界結合方式の両方に対応できる、送電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従う送電装置(10:実施例で相当する参照符号。以下同じ)は、交流電源(12~14)に接続された低圧側巻線(L1)、低圧側巻線と協働して昇圧トランス(16)をなす高圧側巻線(L2)、高圧側巻線の一方端に接続された一方端を有して磁界結合方式の電力伝送を行うコイル(L3)、高圧側巻線の一方端に接続された第1電極(E5)、第1電極と協働して電界結合方式の電力伝送を行う第2電極(E1~E4, E11)、コイルの他方端および第2電極を高圧側巻線の他方端に選択的に接続する第1スイッチ(SW1)、および交流電源よりも出力側のインピーダンスに基づいて、または、受電装置の有する仕様情報に基づいて、受電装置の電力伝送方式を識別して第1スイッチの接続態様を制御する制御手段(S1, S11~S15, S37~S41, S47)を備える。
【0008】
好ましくは、制御手段は、受電装置の電力伝送方式が磁界結合方式であるときコイルの他方端の選択を第1スイッチに要求する第1要求手段(S13~S15, S39~S41)、および受電装置の電力伝送方式が電界結合方式であるとき第2電極の選択を第1スイッチに要求する第2要求手段(S1, S13, S39, S47)を含む。
【0009】
好ましくは、第1電極および第2電極はそれぞれ大型電極および小型電極に相当する。
【0010】
好ましくは、第2電極は複数の部分電極(E1~E4)を含み、複数の部分電極を第1スイッチに選択的に接続する第2スイッチ(24)がさらに備えられる。
【0011】
好ましくは、受電装置の電力伝送方式に適合するように昇圧トランスの変圧比を調整する調整手段(S19, S23, S45, S51)がさらに備えられる。
【0012】
好ましくは、受電装置の位置を検知する検知手段(S3~S9, S35)、受電装置の受電方式が磁界結合方式であるときコイルを検知手段によって検知された位置に移動させる第1移動手段(S17, S43)、および受電装置の受電方式が電界結合方式であるとき第2電極を検知手段によって検知された位置に移動させる第2移動手段(S21, S49)がさらに備えられる。
【発明の効果】
【0013】
高圧側巻線の他方端は第1スイッチによってコイルの他方端および第2電極のいずれか一方に接続されるところ、第1スイッチの接続態様は筐体の載置面に載置された受電装置の電力伝送方式を識別して制御される。
【0014】
これによって、第1電極は、磁界結合方式が選択されたときグランド電極として機能する一方、電界結合方式が選択されたとき電力伝送用の電極の一部として機能する。第1電極をこうして共用することで、回路構成の複雑化を抑制しつつ磁界結合方式および電界結合方式の両方に対応することができる。
【0015】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の一実施例の構成を示すブロック図である。
図2】(A)は図1に示す送電装置を上から眺めた状態の一例を示す図解図であり、(B)は図1に示す送電装置を横から眺めた状態の一例を示す図解図である。
図3】磁界結合方式を採用する受電装置が送電装置に載置されたときのコイルユニットの動作の一例を示す図解図である。
図4】電界結合方式を採用する受電装置が送電装置に載置されたときの電極ユニットの動作の一例を示す図解図である。
図5図1に示す送電装置に設けられた制御回路の動作の一部を示すフロー図である。
図6】この発明の他の実施例の構成を示すブロック図である。
図7】(A)は図6に示す送電装置を上から眺めた状態の一例を示す図解図であり、(B)は図6に示す送電装置を横から眺めた状態の一例を示す図解図である。
図8】磁界結合方式を採用する受電装置が送電装置に載置されたときのコイルユニットの動作の一例を示す図解図である。
図9】電界結合方式を採用する受電装置が送電装置に載置されたときの電極ユニットの動作の一例を示す図解図である。
図10図6に示す送電装置に設けられた制御回路の動作の一部を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、この実施例の電力伝送システムは、磁界結合方式および電界結合方式の両方に対応する送電装置10と、磁界結合方式に対応する受電装置40および電界結合方式に対応する受電装置60とを備える。送電装置10は、図2(A)〜図2(B)に示す直方体状の筐体HS1を有する。ここで、筐体HS1の一方主面および他方主面がそれぞれ上面および下面に相当し、受電装置40および60は筐体HS1の一方主面に択一的に載置される。送電装置10は、受電装置40が載置されたとき磁界結合方式で電力を受電装置40に伝送する一方、受電装置60が載置されたとき電界結合方式で電力を受電装置60に伝送する。
【0018】
送電装置10において、制御回路14はPWM信号を駆動回路12に与える。駆動回路12は、直流電源Vccから供給された直流電圧を制御回路14から与えられたPWM信号に従って交流電圧に変換する。変換された交流電圧の周波数はPWM信号の周波数と一致し、変換された交流電圧のレベルはPWM信号のデューティ比に依存する。
【0019】
変換された交流電圧は昇圧トランス16を形成する一次巻線L1に印加され、昇圧トランス16を形成する二次巻線L2には変圧比に応じて異なる電圧まで昇圧された交流電圧が励起される。二次巻線L2の一方端は、コイルユニット20に設けられた磁界結合用の誘導コイルL3の一方端と接続され、さらに電界結合用のパッシブ電極(大型電極)E5と接続される。また、二次巻線L2の他方端は、スイッチSW1を形成する共通端子T1と接続される。スイッチSW1を形成する分岐端子T2およびT3はそれぞれ、誘導コイルL3の他方端およびスイッチ群24と接続される。
【0020】
なお、ここでスイッチSW1は、二次巻線L2の他方端を、誘導コイルL3の他方端およびスイッチ群24のいずれかに切り替えているが、二次巻線L2の一方端を、誘導コイルL3の一方端およびパッシブ電極E5のいずれかに切り替えてもよい。
【0021】
スイッチ群24はスイッチSW11〜SW14を有し、電極ユニット22はアクティブ電極(小型電極)E1〜E4を有する。分岐端子T3は、スイッチSW11を介してアクティブ電極E1と接続され、スイッチSW12を介してアクティブ電極E2と接続され、スイッチSW13を介してアクティブ電極E3と接続され、そしてスイッチSW14を介してアクティブ電極E4と接続される。
【0022】
スイッチSW1を形成する共通端子T1は、受電装置40が筐体HS1に載置されたとき分岐端子T2と接続される一方、受電装置60が筐体HS1に載置されたとき分岐端子T3と接続される。
【0023】
また、スイッチSW11〜SW14は、受電装置60が筐体HS1に載置されたときに択一的にオンされる。具体的には、受電装置60の載置位置がアクティブ電極E1の近傍であればスイッチSW11がオンされ、受電装置60の載置位置がアクティブ電極E2の近傍であればスイッチSW12がオンされる。また、受電装置60の載置位置がアクティブ電極E3の近傍であればスイッチSW13がオンされ、受電装置60の載置位置がアクティブ電極E4の近傍であればスイッチSW14がオンされる。
【0024】
なお、筐体HS1への受電装置40または60の載置を検出する段階では、スイッチSW1を形成する共通端子T1は分岐端子T3と接続され、スイッチSW11〜SW14は循環的かつ択一的にオンされる。受電装置40または60が筐体HS1に載置されると、駆動回路12よりも出力側のインピーダンスが増大し、かつインピーダンス値は受電装置40が載置されるときと受電装置60が載置されるときとで相違する。スイッチSW1およびスイッチ群24の設定は、このようなインピーダンスを参照して調整される。
【0025】
図2(A)〜図2(B)から分かるように、アクティブ電極E1〜E4およびパッシブ電極E5はいずれも矩形の板状に形成され、筐体HS1に収められる。また、誘導コイルL3は円盤状に形成され、これもまた筐体HS1に収められる。
【0026】
ここで、アクティブ電極E1〜E4の主面の面積は互いに共通し、かつパッシブ電極E5の主面の面積よりも格段に小さい。また、パッシブ電極E5の主面の面積は、筐体HS1の主面の面積よりも僅かに小さい。さらに、誘導コイルL3の主面をなす円の直径は、アクティブ電極E1〜E4の各々の主面をなす矩形の短辺よりも僅かに小さい。
【0027】
ここで、アクティブ電極・パッシブ電極の面積は同じでもよい。
【0028】
なお、アクティブ電極の面積がパッシブ電極より小さい場合、スイッチSW1をアクティブ電極側に設ける(二次巻線L2の他方端を、誘導コイルL3の他方端およびスイッチ群24のいずれかに切り替える)ほうが、パッシブ電極側に設ける(二次巻線L2の一方端を、誘導コイルL3の一方端およびパッシブ電極E5のいずれかに切り替える)ことと比べて、アクティブ電極の高電界が誘導コイルL3に影響を与えにくいので好ましい。
【0029】
パッシブ電極E5は、その一方主面が上を向きかつ他方主面が下を向く姿勢で、筐体HS1の高さ方向におけるほぼ中央に設けられる。また、アクティブ電極E1〜E4は、各々の一方主面が上を向きかつ各々の他方主面が下を向く姿勢で、パッシブ電極E5の上側に設けられる。上方から眺めたとき、アクティブ電極E1〜E4は、マトリクス状に配置される。
【0030】
さらに、誘導コイルL3は、その一方主面が上を向きかつ他方主面が下を向く姿勢で、パッシブ電極E5の上側に設けられる。誘導コイルL3の一方主面から筐体HS1の一方主面までの距離は、アクティブ電極E1〜E4の各々の一方主面から筐体HS1の一方主面までの距離よりも小さい。同様に、誘導コイルL3の他方主面から筐体HS1の一方主面までの距離も、アクティブ電極E1〜E4の各々の一方主面から筐体HS1の一方主面までの距離よりも小さい。
【0031】
図1に示すXYテーブル18は、誘導コイルL3の一方主面が常に上を向く姿勢でコイルユニット20を左右方向(=水平方向)に移動させ、アクティブ電極E1〜E4の一方主面が常に上を向く姿勢で電極ユニット22を左右方向に移動させる。磁界結合方式を採用する受電装置40が図3に示す位置に載置されたとき、誘導コイルL3が受電装置40の下部に配置されるように、コイルユニット20がXYテーブル18によって移動される。これに対して、電界結合方式を採用する受電装置60が図4に示す位置に載置されたときは、アクティブ電極E1〜E4のいずれか1つが受電装置40の下部に配置されるように、電極ユニット24がXYテーブル18によって移動される。
【0032】
なお、駆動回路12,制御回路14,昇圧トランス16,スイッチSW1およびスイッチ群24は、送電モジュールTM1に内蔵される。
【0033】
図1に戻って、受電装置40には、磁界結合用の誘導コイルL4が設けられる。誘導コイルL4の一方端および他方端はそれぞれ、二次巻線L6とともに降圧トランス42を形成する一次巻線L5の一方端および他方端と接続される。したがって、送電装置10の誘導コイルL3に交流電圧が印加されると、これに対応する交流電圧が誘導コイルL4に励起され、さらに降圧トランス42の降圧比に応じた電圧を示す交流電圧が二次コイルL6に励起される。
【0034】
整流平滑回路44は、二次コイルL6に励起された交流電圧に整流平滑を施す。DC−DCコンバータ46は、これによって生成された直流電圧のレベルを調整し、調整後のレベルを有する直流電圧を受電装置40と一体化されたモバイル機器50に供給する。
【0035】
受電装置60には、電界結合用のアクティブ電極E6およびパッシブ電極E7が設けられる。アクティブ電極E6およびパッシブ電極E7はそれぞれ、二次巻線L8とともに降圧トランス62を形成する一次巻線L7の一方端および他方端と接続される。
【0036】
したがって、送電装置10に設けられたアクティブ電極E1〜E4のいずれか1つおよびパッシブ電極E5に交流電圧が印加されると、これに対応する交流電圧がアクティブ電極E6およびパッシブ電極E7に励起され、さらに降圧トランス62の降圧比に応じた電圧を示す交流電圧が二次コイルL8に励起される。
【0037】
整流平滑回路64は、二次コイルL8に励起された交流電圧に整流平滑を施す。DC−DCコンバータ66は、これによって生成された直流電圧のレベルを調整し、調整後のレベルを有する直流電圧を受電装置60と一体化されたモバイル機器70に供給する。
【0038】
制御回路14は、受電装置40および60に対して択一的に電力を伝送するべく、図5に示すフロー図に従う処理を実行する。
【0039】
まずステップS1で、電力伝送方式を電界結合方式に設定するべくスイッチSW1の共通端子T1を分岐端子T3に接続する。ステップS3ではアクティブ電極E1を有効化するべくスイッチSW11をオンし、ステップS5では駆動回路12よりも出力側のインピーダンスを測定する。
【0040】
ステップS7では、有効化されたアクティブ電極E1の近傍に受電装置40または60が載置されたか否かを測定されたインピーダンスに基づいて判別する。判別結果がNOであればステップS9で他のアクティブ電極を代替的に有効化しその後にステップS3に戻る。したがって、ステップS7の判別結果がNOを維持する限り、有効化されるアクティブ電極は、“E1”→“E2”→“E3”→“E4”→“E1”→…の順序で循環的に切り換えられる。
【0041】
ステップS7の判別結果がYESであれば、筐体HS1に載置された受電装置が採用する電力伝送方式が磁界結合方式および電界結合方式のいずれであるかをステップS11〜S13で判別する。判別にあたっては、ステップS5で測定されたインピーダンスが参照される。
【0042】
筐体HS1に載置された受電装置が磁界結合方式を採用する受電装置40であれば、ステップS13からステップS15に進み、電力伝送方式を磁界結合方式に設定する。具体的には、スイッチSW1の共通端子T1を分岐端子T2に接続する。ステップS17では、XYテーブル18を制御してコイルユニット20を受電装置40の下部に移動させる。コイルユニット20つまり誘導コイルL3は、受電装置40に設けられた誘導コイルL4と対向する位置に配置される。
【0043】
ステップS19では昇圧トランス18の昇圧比を磁界結合用の比率に調整する。具体的には、昇圧トランスを巻線型トランスで構成する場合は、1次巻線または2次巻線に複数の中点タップを設け、巻数比を切り換える方式や、圧電トランスを用いて、トランスに印加する交流電圧の周波数を変化させて昇圧比を調整する方式などが考えられる。ステップS19の処理が完了すると、受電装置40への送電を開始するべく、PWM信号を駆動回路12に与える。
【0044】
これに対して、筐体HS1に載置された受電装置が電界結合方式を採用する受電装置60であれば、ステップS21に進み、XYテーブル18を制御して電極ユニット22を受電装置60の下部に移動させる。電極ユニット22は、有効化されたアクティブ電極が受電装置60のアクティブ電極E6と対向する位置に配置される。ステップS23では昇圧トランス18の昇圧比を電界結合用の比率に調整する。具体的には、昇圧トランスを巻線型トランスで構成する場合は、1次巻線または2次巻線に複数の中点タップを設け、巻数比を切り換える方式や、圧電トランスを用いて、トランスに印加する交流電圧の周波数を変化させて昇圧比を調整する方式などが考えられる。ステップS23の処理が完了すると、受電装置60への送電を開始するべく、PWM信号を駆動回路12に与える。
【0045】
以上の説明から分かるように、昇圧トランス16をなす一次巻線L1は、交流電圧を発生する駆動回路12と接続される。昇圧トランス16をなす二次巻線L2の一方端は、磁界結合用の誘導コイルL3の一方端と接続され、さらに電界結合用のパッシブ電極E5と接続される。アクティブ電極E1〜E4は、パッシブ電極E5と協働して電界結合方式の電力伝送を実現する。昇圧トランス16をなす二次巻線L2の他方端は、スイッチSW1を介して誘導コイルL3およびアクティブ電極E1〜E4と接続される。制御回路14は、筐体HS1の載置面に載置された受電装置の電力伝送方式を識別してスイッチSW1の接続態様を制御する(S1, S11~S15)。
【0046】
ここで、昇圧トランス18の昇圧比は調整することなく固定でもよい。
【0047】
このように、二次巻線L2の他方端は、スイッチSW1によって誘導コイルL3の他方端およびパッシブ電極E5のいずれか一方に接続されるところ、スイッチSW1の接続態様は受電装置の電力伝送方式を識別して制御される。
【0048】
これによって、パッシブ電極E5は、磁界結合方式が選択されたときグランド電極として機能する一方、電界結合方式が選択されたとき電力伝送用の電極の一部として機能する。パッシブ電極E5をこうして共用することで、回路構成の複雑化を抑制しつつ磁界結合方式および電界結合方式の両方に対応することができる。
【0049】
図6を参照して、他の実施例の電力伝送システムは、送電装置10の構成の一部が図1に示す送電装置10と相違し、制御回路14が図6に示すフロー図に代えて図10に示すフロー図に従う処理を実行する点を除き、上述の実施例と同様であるため、同様の構成に関する重複した説明は極力省略する。
【0050】
図6によれば、スイッチ群24が省略され、単一のアクティブ電極E11を有する電極ユニット22が電極ユニット26に置換される。スイッチSW1の分岐端子T3は、アクティブ電極E11と直接的に接続される。
【0051】
図7(A)および図7(B)をさらに参照して、位置センサ28は、筐体HS1の上面の裏側にマトリクス状に設けられた複数のセンサ素子PS1〜PS21を有する。受電装置40または60が筐体HS1のどの位置に載置されたかは、複数のセンサ素子PS1〜PS21に基づいて検出される。
【0052】
アンテナ30は、モバイル機器50または70と通信するためのアンテナに相当する。受電装置40が採用する電力伝送方式はモバイル機器50によって認識され、受電装置60が採用する電力伝送方式はモバイル機器70によって認識される。認識された電力伝送方式は、モバイル機器50または70から送電装置10に転送され、アンテナ30および通信回路32を介して制御回路14に与えられる。
【0053】
図7(A)〜図7(B)から分かるように、アクティブ電極E11は、上述したアクティブ電極E1〜E4の1つと同様の形状およびサイズを有し、その一方主面が上を向きかつ他方主面が下を向く姿勢で筐体HS1に収められる。ただし、アクティブ電極E11は、誘導コイルL3と同じ高さに配置される。なお、送電モジュールTM1には、通信回路32が追加的に内蔵される。
【0054】
磁界結合方式を採用する受電装置40が図8に示す位置に載置されたとき、誘導コイルL3が受電装置40の下部に配置されるように、コイルユニット20がXYテーブル18によって移動される。これに対して、電界結合方式を採用する受電装置60が図9に示す位置に載置されたときは、アクティブ電極E11が受電装置40の下部に配置されるように、電極ユニット26がXYテーブル18によって移動される。
【0055】
受電装置40または60への電力伝送は、図10に示すフロー図に従って実行される。ステップS31では、周辺に存在するモバイル機器との間でID認証を実行する。ステップS33では認証に成功したか否かを判別し、判別結果がNOであればステップS31〜S33の処理を繰り返す。判別結果がNOからYESに更新されるとステップS35に進み、認証された受電装置の載置位置を位置センサ28の出力に基づいて検出する。位置検出が完了すると、筐体HS1に載置された受電装置が採用する電力伝送方式が磁界結合方式および電界結合方式のいずれであるかをステップS39〜S41で判別する。判別にあたっては、ID認証の際にモバイル機器50または70から取得した仕様情報が参照される。
【0056】
筐体HS1に載置された受電装置が磁界結合方式を採用する受電装置40であれば、ステップS41からステップS43に進み、電力伝送方式を磁界結合方式に設定する。具体的には、スイッチSW1の共通端子T1を分岐端子T2に接続する。ステップS45では、XYテーブル18を制御してコイルユニット20を受電装置40の下部に移動させる。コイルユニット20つまり誘導コイルL3は、受電装置40に設けられた誘導コイルL4と対向する位置に配置される。ステップS47では昇圧トランス18の昇圧比を磁界結合用の比率に調整する。具体的には、昇圧トランスを巻線型トランスで構成する場合は、1次巻線または2次巻線に複数の中点タップを設け、巻数比を切り換える方式や、圧電トランスを用いて、トランスに印加する交流電圧の周波数を変化させて昇圧比を調整する方式などが考えられる。ステップS47の処理が完了すると、受電装置40への送電を開始するべく、PWM信号を駆動回路12に与える。
【0057】
これに対して、筐体HS1に載置された受電装置が電界結合方式を採用する受電装置60であれば、ステップS41からステップS49に進み、電力伝送方式を電界結合方式に設定する。具体的には、スイッチSW1の共通端子T1を分岐端子T3に接続する。ステップS51では、XYテーブル18を制御して電極ユニット26を受電装置60の下部に移動させる。電極ユニット22つまりアクティブ電極E11は、受電装置60に設けられたアクティブ電極E6と対向する位置に配置される。ステップS53では昇圧トランス18の昇圧比を電界結合用の比率に調整する。具体的には、昇圧トランスを巻線型トランスで構成する場合は、1次巻線または2次巻線に複数の中点タップを設け、巻数比を切り換える方式や、圧電トランスを用いて、トランスに印加する交流電圧の周波数を変化させて昇圧比を調整する方式などが考えられる。ステップS53の処理が完了すると、受電装置60への送電を開始するべく、PWM信号を駆動回路12に与える。
【0058】
この実施例においても、昇圧トランス16をなす一次巻線L1は、交流電圧を発生する駆動回路12と接続される。昇圧トランス16をなす二次巻線L2の一方端は、磁界結合用の誘導コイルL3の一方端と接続され、さらに電界結合用のパッシブ電極E5と接続される。アクティブ電極E11は、パッシブ電極E5と協働して電界結合方式の電力伝送を実現する。昇圧トランス16をなす二次巻線L2の他方端は、スイッチSW1を介して誘導コイルL3およびアクティブ電極E11と接続される。制御回路14は、筐体HS1の載置面に載置された受電装置の電力伝送方式を識別してスイッチSW1の接続態様を制御する(S37~S41, S47)。
【0059】
このように、二次巻線L2の他方端は、スイッチSW1によって誘導コイルL3の他方端およびパッシブ電極E11のいずれか一方に接続されるところ、スイッチSW1の接続態様は受電装置の電力伝送方式を識別して制御される。
【0060】
これによって、パッシブ電極E5は、磁界結合方式が選択されたときグランド電極として機能する一方、電界結合方式が選択されたとき電力伝送用の電極の一部として機能する。パッシブ電極E5をこうして共用することで、回路構成の複雑化を抑制しつつ磁界結合方式および電界結合方式の両方に対応することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 …送電装置
14 …制御回路
16 …昇圧トランス
18 …XYテーブル
20 …コイルユニット
22,26 …電極ユニット
28 …位置センサ
30 …アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10