特許第5804429号(P5804429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5804429
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/715 20130101AFI20151015BHJP
   H04L 12/751 20130101ALI20151015BHJP
【FI】
   H04L12/715
   H04L12/751
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-191358(P2013-191358)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-61085(P2015-61085A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2015年3月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルティナ ラバリジョンナ
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
(72)【発明者】
【氏名】原田 博司
【審査官】 浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−030050(JP,A)
【文献】 T. Winter, Ed.,RPL: Routing Protocol for Low Power and Lossy Networks,draft-ietf-roll-rpl-00,2009年 8月 3日,URL,http://tools.ietf.org/id/draft-ietf-roll-rpl-00.txt
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04L 12/00−12/28
12/44−12/955
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信元装置の識別子と、該発信元装置の、階層構造の頂上に位置するルート装置との必要通信ホップ数を示す階層番号とを情報として少なくとも含む、該発信元装置からブロードキャストされたハローパケットである第1のハローパケットを受信する手段と、
ブロードキャストされた前記第1のハローパケットを1つ以上の発信元装置について集め、該1つ以上の発信元装置の前記階層番号のうち、もっとも小さな番号に1を加えた値として自装置の階層番号である自装置階層番号を設定する手段と、
前記1つ以上の発信元装置のうち、前記自装置階層番号より1つ小さい階層番号を有する各発信元装置のそれぞれを、親装置として登録保持する手段と、
前記1つ以上の発信元装置のうち、前記自装置階層番号と同じ階層番号を有する各発信元装置のそれぞれを、兄弟装置として登録保持する手段と、
前記1つ以上の発信元装置のうち、前記自装置階層番号より1つ以上大きい階層番号を有する各発信元装置のそれぞれを、子装置として登録保持する手段と、
前記親装置に届くように、親装置として登録保持した旨を含む情報である第1の登録済情報を送信する手段と、
前記兄弟装置に届くように、兄弟装置として登録保持した旨を含む情報である第2の登録済情報を送信する手段と、
前記子装置に届くように、子装置として登録保持した旨を含む情報である第3の登録済情報を送信する手段と、
前記第1の登録済情報、前記第2の登録済情報、および前記第3の登録済情報が他の装置から自装置に届くように送信されてきたときに、該第1の登録済情報、該第2の登録済情報、および該第3の登録済情報を、それぞれ第1の被登録済情報、第2の被登録済情報、第3の被登録済情報として受信する手段と、
前記第1の被登録済情報の発信元である各発信元装置のそれぞれを、子装置として登録保持する手段と、
前記第2の被登録済情報の発信元である各発信元装置のそれぞれを、兄弟装置として登録保持する手段と、
前記第3の被登録済情報の発信元である各発信元装置のそれぞれを、親装置として登録保持する手段と、
自装置の識別子と前記自装置階層番号とを情報として少なくとも含むハローパケットである第2のハローパケットをブロードキャストする手段と
自装置と前記親装置との接続の品質に関する情報である第1の接続品質情報および自装置と前記兄弟装置との接続の品質に関する情報である第2の接続品質情報を該親装置それぞれおよび該兄弟装置それぞれについて取得する手段と、
前記第1の接続品質情報および前記第2の接続品質情報を、前記親装置の各装置または前記兄弟装置の各装置に対応付けて登録保持する手段と、
前記第1の接続品質情報に基づいて、前記親装置それぞれにおいて接続品質が所定の必要閾値に達しているか否かの判断を行う手段と、
前記判断が前記親装置のうちの少なくとも1つの装置について真である場合に、前記第1の接続品質情報に基づいて前記親装置のうちの接続品質がもっとも上位にランクされる1つの装置を選択の上、自装置から前記ルート装置に到達させるべき情報を該1つの装置に中継させるように送出する手段と、
前記判断が前記親装置のすべてにおいて偽である場合に、前記第2の接続品質情報に基づいて前記兄弟装置のうちの接続品質がもっとも上位にランクされる1つの装置を選択の上、自装置から前記ルート装置に到達させるべき情報を該1つの装置に中継させるように送出する手段と
を具備する通信装置。
【請求項2】
前記判断が前記親装置のすべてにおいて偽である場合に選択された前記兄弟装置のうちの前記1つの装置における接続品質が、前記親装置のいずれの装置における接続品質よりも悪い場合に、前記第1の接続品質情報に基づいて前記親装置のうち接続品質がもっとも上位にランクされる1つの装置を選択の上、自装置から前記ルート装置に到達させるべき情報を該1つの装置に中継させるように送出する手段をさらに具備する請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記親装置として登録保持されたいずれの装置とも接続がつかない状態に至ったか否かを第の判断として行う手段と、
前記第の判断の結果が真であるとき、前記兄弟装置として登録保持された各装置を新たに親装置として登録保持し直す手段と、
登録し直された前記親装置が有している階層番号より1つ大きい値として前記自装置階層番号を設定し直す手段と
をさらに具備する請求項1記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1のハローパケットの中に、前記親装置、前記兄弟装置、前記子装置として登録保持された各装置が有する前記識別子のいずれとも異なる識別子でかつ前記自装置階層番号より2以上小さい階層番号を含んだ新たなハローパケットが1つ以上存在するか否かを第の判断として行う手段と、
前記第の判断の結果が真であるとき、前記新たなハローパケットが含む各階層番号のうちもっとも小さな番号に1を加えた値として前記自装置階層番号を設定し直す手段と
をさらに具備する請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
発信元装置の識別子と、該発信元装置の、階層構造の頂上に位置するルート装置との必要通信ホップ数を示す階層番号とを情報として少なくとも含む、該発信元装置からブロードキャストされたハローパケットである第1のハローパケットを受信し、
ブロードキャストされた前記第1のハローパケットを1つ以上の発信元装置について集め、該1つ以上の発信元装置の前記階層番号のうち、もっとも小さな番号に1を加えた値として自装置の階層番号である自装置階層番号を設定し、
前記1つ以上の発信元装置のうち、前記自装置階層番号より1つ小さい階層番号を有する各発信元装置のそれぞれを、親装置として登録保持し、
前記1つ以上の発信元装置のうち、前記自装置階層番号と同じ階層番号を有する各発信元装置のそれぞれを、兄弟装置として登録保持し、
前記1つ以上の発信元装置のうち、前記自装置階層番号より1つ以上大きい階層番号を有する各発信元装置のそれぞれを、子装置として登録保持し、
前記親装置に届くように、親装置として登録保持した旨を含む情報である第1の登録済情報を送信し、
前記兄弟装置に届くように、兄弟装置として登録保持した旨を含む情報である第2の登録済情報を送信し、
前記子装置に届くように、子装置として登録保持した旨を含む情報である第3の登録済情報を送信し、
前記第1の登録済情報、前記第2の登録済情報、および前記第3の登録済情報が他の装置から自装置に届くように送信されてきたときに、該第1の登録済情報、該第2の登録済情報、および該第3の登録済情報を、それぞれ第1の被登録済情報、第2の被登録済情報、第3の被登録済情報として受信し、
前記第1の被登録済情報の発信元である各発信元装置のそれぞれを、子装置として登録保持し、
前記第2の被登録済情報の発信元である各発信元装置のそれぞれを、兄弟装置として登録保持し、
前記第3の被登録済情報の発信元である各発信元装置のそれぞれを、親装置として登録保持し、
自装置の識別子と前記自装置階層番号とを情報として少なくとも含むハローパケットである第2のハローパケットをブロードキャストし
自装置と前記親装置との接続の品質に関する情報である第1の接続品質情報および自装置と前記兄弟装置との接続の品質に関する情報である第2の接続品質情報を該親装置それぞれおよび該兄弟装置それぞれについて取得し、
前記第1の接続品質情報および前記第2の接続品質情報を、前記親装置の各装置または前記兄弟装置の各装置に対応付けて登録保持し、
前記第1の接続品質情報に基づいて、前記親装置それぞれにおいて接続品質が所定の必要閾値に達しているか否かの判断を行い、
前記判断が前記親装置のうちの少なくとも1つの装置について真である場合に、前記第1の接続品質情報に基づいて前記親装置のうちの接続品質がもっとも上位にランクされる1つの装置を選択の上、自装置から前記ルート装置に到達させるべき情報を該1つの装置に中継させるように送出し、
前記判断が前記親装置のすべてにおいて偽である場合に、前記第2の接続品質情報に基づいて前記兄弟装置のうちの接続品質がもっとも上位にランクされる1つの装置を選択の上、自装置から前記ルート装置に到達させるべき情報を該1つの装置に中継させるように送出する
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階層構造でネットワークを構成する通信装置および通信方法に係り、特に、階層構造の頂上に位置するルート装置への通信の効率向上に有効な通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
階層構造によるネットワーク通信では、ルート装置を頂上に各装置はツリー構造に配置される。このようなツリー構造では、各装置は階層が1つ上位の親装置を1つのみ有する。親子関係はそれぞれの該当する装置間での制御信号の交換により築かれる。ルート装置へ到達させるべき情報は、各装置からその親となる装置を順繰りに中継しながら(=マルチホップして)パケット伝送される。
【0003】
このようなネットワーク通信では、ある子装置からその親装置へのデータ伝送において通信障害が発生すると、ルート装置につながる経路がほかに築かれていないため、その時点でパケット損失になる。このような状態がある程度続いた場合、その子装置は新たな親装置を探して新たな親子関係を築く必要がある。このような必要は、その子装置の親装置が何らかの事情でネットワークから離脱を生じた場合も同じである。すなわち、これらの場合、親装置としての機能が不全に陥るに従い、その下位に属する各装置からルート装置への通信をリカバリーする動作が発生して時間を要し、データ伝送の効率が低下する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】IEEE 802.15.4、IEEE 802.15.4g、IEEE 802.15.4e標準規格仕様書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、階層構造でネットワークを構成する通信装置および通信方法において、階層構造の頂上に位置するルート装置への通信の効率を向上できる通信装置および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様である通信装置は、発信元装置の識別子と、該発信元装置の、階層構造の頂上に位置するルート装置との必要通信ホップ数を示す階層番号とを情報として少なくとも含む、該発信元装置からブロードキャストされたハローパケットである第1のハローパケットを受信する手段と、ブロードキャストされた前記第1のハローパケットを1つ以上の発信元装置について集め、該1つ以上の発信元装置の前記階層番号のうち、もっとも小さな番号に1を加えた値として自装置の階層番号である自装置階層番号を設定する手段と、前記1つ以上の発信元装置のうち、前記自装置階層番号より1つ小さい階層番号を有する各発信元装置のそれぞれを、親装置として登録保持する手段と、前記1つ以上の発信元装置のうち、前記自装置階層番号と同じ階層番号を有する各発信元装置のそれぞれを、兄弟装置として登録保持する手段と、前記1つ以上の発信元装置のうち、前記自装置階層番号より1つ以上大きい階層番号を有する各発信元装置のそれぞれを、子装置として登録保持する手段と、前記親装置に届くように、親装置として登録保持した旨を含む情報である第1の登録済情報を送信する手段と、前記兄弟装置に届くように、兄弟装置として登録保持した旨を含む情報である第2の登録済情報を送信する手段と、前記子装置に届くように、子装置として登録保持した旨を含む情報である第3の登録済情報を送信する手段と、前記第1の登録済情報、前記第2の登録済情報、および前記第3の登録済情報が他の装置から自装置に届くように送信されてきたときに、該第1の登録済情報、該第2の登録済情報、および該第3の登録済情報を、それぞれ第1の被登録済情報、第2の被登録済情報、第3の被登録済情報として受信する手段と、前記第1の被登録済情報の発信元である各発信元装置のそれぞれを、子装置として登録保持する手段と、前記第2の被登録済情報の発信元である各発信元装置のそれぞれを、兄弟装置として登録保持する手段と、前記第3の被登録済情報の発信元である各発信元装置のそれぞれを、親装置として登録保持する手段と、自装置の識別子と前記自装置階層番号とを情報として少なくとも含むハローパケットである第2のハローパケットをブロードキャストする手段と、自装置と前記親装置との接続の品質に関する情報である第1の接続品質情報および自装置と前記兄弟装置との接続の品質に関する情報である第2の接続品質情報を該親装置それぞれおよび該兄弟装置それぞれについて取得する手段と、前記第1の接続品質情報および前記第2の接続品質情報を、前記親装置の各装置または前記兄弟装置の各装置に対応付けて登録保持する手段と、前記第1の接続品質情報に基づいて、前記親装置それぞれにおいて接続品質が所定の必要閾値に達しているか否かの判断を行う手段と、前記判断が前記親装置のうちの少なくとも1つの装置について真である場合に、前記第1の接続品質情報に基づいて前記親装置のうちの接続品質がもっとも上位にランクされる1つの装置を選択の上、自装置から前記ルート装置に到達させるべき情報を該1つの装置に中継させるように送出する手段と、前記判断が前記親装置のすべてにおいて偽である場合に、前記第2の接続品質情報に基づいて前記兄弟装置のうちの接続品質がもっとも上位にランクされる1つの装置を選択の上、自装置から前記ルート装置に到達させるべき情報を該1つの装置に中継させるように送出する手段とを具備する。
【0007】
すなわち、この通信装置では、階層構造の頂上に位置するルート装置との必要通信ホップ数を示す、各装置が有する階層番号に基づいて、自装置の階層番号よりその番号が1つ若いその親装置、階層番号が同じであるその兄弟装置、階層番号1つ多いその子装置がそれぞれ登録保持される。ブロードキャストで発信元装置の階層番号が知らされるため、ブロードキャストで届けられ得る階層番号を有するこれらの各装置、特に親装置は、1つには限られないことになる。したがって、この通信装置の、ある親装置との接続が絶たれる事態になっても別の親装置を介した、ルート装置へのデータ伝送が可能である。よって、階層構造の頂上に位置するルート装置への通信の効率を向上できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、階層構造でネットワークを構成する通信装置および通信方法において、階層構造の頂上に位置するルート装置への通信の効率を向上できる通信装置および通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態である通信装置の構成を示す機能ブロック図。
図2図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する、地理的な装置配置図および各装置における登録情報を示す表。
図3A図2に示したものの次段階である、図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する、地理的な装置配置図および各装置における登録情報を示す表(その1)。
図3B図2に示したものの次段階である、図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する、地理的な装置配置図および各装置における登録情報を示す表(その2)。
図4A図3Bに示したものの次段階である、図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する、地理的な装置配置図および各装置における登録情報を示す表(その1)。
図4B図3Bに示したものの次段階である、図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する、地理的な装置配置図および各装置における登録情報を示す表(その2)。
図5図4Bに示したものの次段階である、図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する、地理的な装置配置図および各装置における登録情報を示す表。
図6A図1に示した通信装置を複数配置したネットワーク内での階層構造を示す装置間関係図。
図6B図6Aに示した階層構造を有する各装置をそれら間の地理的な配置関係で示す関係図。
図7A図6Bに示した地理的な配置関係において一例として生じた接続障害を示す関係図。
図7B図7Aに示した接続障害をネットワーク内での階層構造で示す関係図。
図7C図7Bに示した接続障害のあと構築される、ネットワーク内での新たな階層構造を示す装置間関係図。
図7D図7Cに示した新たな階層構造での各装置における登録情報の変化を示す表。
図8A図6Bに示した地理的な配置関係において一例として生じた新規接続を示す関係図。
図8B図8Aに示した新規接続をネットワーク内での階層構造で示す関係図。
図8C図8Bに示した新規接続のあと構築される、ネットワーク内での新たな階層構造を示す装置間関係図。
図8D図8Cに示した新たな階層構造での各装置における登録情報の変化を示す表。
図9】別の実施形態である通信装置の構成を示す機能ブロック図。
図10図9に示した通信装置を複数配置したネットワークにおいて、接続品質情報を活用して選択されたデータ伝送経路を例示する説明図(親装置および兄弟装置のうち最良のものを選択した場合)。
図11図9に示した通信装置を複数配置したネットワークにおいて、接続品質情報を活用して選択された別のデータ伝送経路を例示する説明図(一定以上の接続品質を持つ親装置を兄弟装置より優先しつつ最良のものを選択した場合)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施態様として、前記親装置として登録保持されたいずれの装置とも接続がつかない状態に至ったか否かを第の判断として行う手段と、前記第の判断の結果が真であるとき、前記兄弟装置として登録保持された各装置を新たに親装置として登録保持し直す手段と、登録し直された前記親装置が有している階層番号より1つ大きい値として前記自装置階層番号を設定し直す手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0011】
これは、複数あり得る親装置のいずれとも接続が絶たれた場合に対処するための構成である。この場合には、兄弟装置として登録保持された各装置を新たに親装置として登録保持し直す。これにより、親装置のいずれとも接続が絶たれた場合であっても、これまで兄弟装置であった新たな親装置を介して、直ちに、従前と同様に、ルート装置へのデータ伝送が可能である。
【0012】
また、実施態様として、前記第1のハローパケットの中に、前記親装置、前記兄弟装置、前記子装置として登録保持された各装置が有する前記識別子のいずれとも異なる識別子でかつ前記自装置階層番号より2以上小さい階層番号を含んだ新たなハローパケットが1つ以上存在するか否かを第の判断として行う手段と、前記第の判断の結果が真であるとき、前記新たなハローパケットが含む各階層番号のうちもっとも小さな番号に1を加えた値として前記自装置階層番号を設定し直す手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0013】
これは、自装置へのブロードキャストで情報受信可能な範囲に新たな装置が存在するようになった場合に合理的に対処するための構成である。この場合には、新たなハローパケットが含む各階層番号のうち、自装置階層番号より2以上小さくてかつもっとも小さな番号に1を加えた値として自装置階層番号を設定し直すことで、この新たな装置が親装置(の1つ)として登録されることになる。
【0014】
また、実施態様として、自装置と前記親装置として登録保持された各装置との接続品質に関する情報を該各装置について取得する手段と、接続品質に関する前記情報を、前記親装置として登録保持された各装置に対応付けて登録保持する手段と、自装置から前記ルート装置に到達させるべき情報を、接続品質に関する前記情報に基づいて、前記親装置として登録保持された各装置のうち、該接続品質が上位にランクされる方から1つ以上の装置を選択の上、該1つ以上の装置に中継させるように送出する手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0015】
これは、自装置の複数の親装置のうち、ルート装置へのデータ伝送を実際にどの親装置を利用して行うかを設定するための構成である。各親装置との接続品質には一般に違いがあると考えられる。そこで、そのうちの品質が良好な方から1つ以上の親装置を選択し、これをルート装置へのデータ伝送に利用する。1つのみ選択した場合は、ルート装置へのデータ伝送の経路は1つ上位の装置までは単一のものとなり、2つ以上を選択した場合は、ルート装置へのデータ伝送の経路は複数の経路が同時に利用、または順繰りに選択されることになる。
【0016】
また、実施態様として、自装置と前記親装置として登録保持された各装置との接続の品質に関する情報である第1の接続品質情報および自装置と前記兄弟装置として登録保持された各装置との接続の品質に関する情報である第2の接続品質情報を該各装置について取得する手段と、前記第1の接続品質情報および前記第2の接続品質情報を、前記親装置または前記兄弟装置として登録保持された各装置に対応付けて登録保持する手段と、自装置から前記ルート装置に到達させるべき情報を、前記第1の接続品質情報および前記第2の接続品質情報に基づいて、前記親装置または前記兄弟装置として登録保持された各装置のうち、接続品質が上位にランクされる方から1つ以上の装置を選択の上、該1つ以上の装置に中継させるように送出する手段とをさらに具備する、とすることができる。
【0017】
この態様は、親装置のほか、兄弟装置もルート装置へのデータ伝送に活用しようとする態様である。すなわち、自装置の複数の親装置および兄弟装置のうち、品質が良好な方から1つ以上の親装置または兄弟装置を選択し、これをルート装置へのデータ伝送に利用する。兄弟装置を活用することで伝送経路の選択肢が増加し、より信頼性の高いデータ伝送が可能になると考えられる。
【0020】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態である通信装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この通信装置は、ハローパケット受信部11、自装置階層番号の設定部(更新設定部、新規親候補存否判断部)12、自装置階層番号記憶保持部12a、親装置、兄弟装置、および子装置の登録保持部(更新登録保持部)13、登録済情報送信部14、登録済情報受信部15、ハローパケット送信部16、情報送出受信部21、送出受信情報処理部22、接続状況判断部23を有する。
【0021】
以下の説明では、これらの構成について、説明の便宜のため以下のように略称する場合がある。すなわち、受信部11、設定部(場合により、更新設定部、または判断部)12、記憶保持部12a、登録保持部(場合により、更新登録保持部)13、送信部14、受信部15、送信部16、送出受信部21、処理部22、判断部23である。また、以下では、機能ブロックを示したこの図1のほか、適宜、その内容および動作説明を示している図2ないし図8Dをも参照する。
【0022】
まず、この通信装置のネットワークへの適用について概略説明する。図6Aは、図1に示した通信装置を複数配置したネットワーク内での階層構造を示す装置間関係図である。図6Aにおいて、符号A〜Nは、それぞれが、図1に示した構成を有する通信装置であり、符号Rは、ルート装置である。このようにこの階層構造によるネットワーク通信では、ルート装置Rを頂上に各装置A〜Nは複数の親装置を持ち得るツリー構造に配置される。このような階層間の親子関係の構築方法については後述する。ルート装置Rへ到達させるべき情報(データ)は、各装置A〜N等からその親となる装置を順繰りに中継(ただし別の例も後述する)しながら(=マルチホップして)パケット伝送される。各装置A〜N等は、例えば、無線センサノード装置である。
【0023】
図1を参照して、ハローパケット受信部11は、発信元装置からブロードキャストされたハローパケットを受信する。このハローパケットは、発信元装置の識別子と、その発信元装置の、階層構造の頂上に位置するルート装置Rとの必要通信ホップ数を示す階層番号とを情報として少なくとも含む。階層番号とは、図6Aに示すように、その装置A〜Nにおけるルート装置Rとの親子間の必要通信ホップ数である。他の装置による上記のブロードキャストが届く位置にこの装置が在るときに、このハローパケットを受け取ることができる。受信された、発信元装置の識別子および階層番号は、ハローパケット受信部11から自装置階層番号設定部12に送られる。
【0024】
設定部12は、自装置の階層番号である自装置階層番号を設定する。このため、発信元装置の識別子および階層番号を1つ以上の発信元装置について集め、この1つ以上の発信元装置の階層番号のうち、もっとも小さな番号に1を加えた値としてこれを設定する。「もっとも小さな番号」は、一般的には、複数の発信元装置に共通する番号である場合がある。設定された自装置階層番号は、自装置階層番号記憶保持部12aに送られ、そこで記憶保持される。また、設定された自装置階層番号のほか、集められた発信元装置の識別子および階層番号は、設定部12から登録保持部13に渡される。
【0025】
登録保持部13は、上記の自装置階層番号のほか、渡された、発信元装置の識別子および階層番号に基づいて、次の動作を行う。すなわち、自装置階層番号より1つ小さい階層番号を有する各発信元装置を親装置として登録保持し、自装置階層番号と同じ階層番号を有する各発信元装置を兄弟装置として登録保持し、自装置階層番号より1つ以上大きい階層番号を有する各発信元装置を子装置として登録保持する。ここで、自装置階層番号より1つ「以上」大きい階層番号を有する各発信元装置をすべて子装置として登録保持することにより、最終的に互いの登録情報に齟齬が生じることを回避できるとともに、ネットワーク内における通常のデータ伝達時のマルチホップ数の低減を図ることができる。
【0026】
各発信元装置について、親装置、兄弟装置、または子装置として登録保持された旨は、登録保持部13から登録済情報送信部14に渡される。そこで、送信部14は、その親装置に届くように親装置として登録保持した旨を含む登録済情報を送信し、その兄弟装置に届くように、兄弟装置として登録保持した旨を含む登録済情報を送信し、その子装置に届くように、子装置として登録保持した旨を含む登録済情報を送信する。
【0027】
これらの送信は、送信先を指定したマルチキャスト(または、送信先が1か所である場合はユニキャスト)、あるいは送信先を指定しないブロードキャストとして行うことができる。ブロードキャストとする場合は、送信部14は、実際上、ハローパケット送信部16(次に説明する)と同一視でき共通に設けることができる。つまり、ブロードキャストには、自装置識別子、自装置階層番号のほか、登録済情報が含まれるようにしてもよい。
【0028】
以上の一連の流れは、他の装置からのブロードキャストをトリガとして行われる動作である。そこで、逆にこの装置がブロードキャストする側の装置になるときも当然ながらあり得る。すなわち、そのためハローパケット送信部16は、記憶保持部12aに保持された自装置階層番号を用い、自装置の識別子とこの自装置階層番号とを情報として少なくとも含むハローパケットをブロードキャストする。そうすると、そのブロードキャストが届いた他の装置において上記のような一連の動作が生じる。
【0029】
他の装置において上記の一連の動作が生じると、この装置が、他の装置において親装置、兄弟装置、または子装置として登録保持された旨の情報(以下、被登録済情報)が他の装置で生じ、そして、その情報が他の装置の識別子とともにマルチキャスト(またはユニキャスト、あるいは上記のようにブロードキャスト)でこの装置に届くように送られてくる。そこで、この被登録済情報を被登録済情報受信部15で受信する。受信された被登録済情報は、受信部15から登録保持部13に渡される。受信部15がブロードキャストを受信する場合は、受信部15は、実際上、ハローパケット受信部11と同一視でき共通に設けることができる。
【0030】
登録保持部13は、受信部15から渡された被登録済情報に基づいて、次の動作を行う。すなわち、親装置の被登録済情報の発信元である各発信元装置を子装置として登録保持し、兄弟装置の被登録済情報の発信元である各発信元装置を兄弟装置として登録保持し、子装置の被登録済情報の発信元である各発信元装置を親装置として登録保持する。この登録保持部13での動作は、一般的には、すでに登録されている情報を再度確認するに過ぎない場合がある一方、すでに登録された情報が更新される場合もある。
【0031】
いずれにしても、ある装置において別の装置が子装置(親装置)として登録されていれば、別の装置おいてはある装置は親装置(子装置)として登録される状態に落ち着く。また、ある装置が別の装置を兄弟装置として登録していれば、別の装置においてはある装置をやはり兄弟装置として登録している、という状態に落ち着く。
【0032】
以上の動作は、図6Aに示したような、各通信装置を複数配置したネットワーク内での階層構造を構築するための動作である。すなわち、ネットワーク内の装置のそれぞれは、以上説明した動作により、自装置階層番号が設定されており、さらに、その親装置、子装置、兄弟装置がそれぞれ特定されてそれぞれに登録された状態になっている。
【0033】
つまり、図6A中に示す通信装置A〜Nでは、階層構造の頂上に位置するルート装置Rとの親子間の必要通信ホップ数を示す、各装置が有する階層番号に基づいて、自装置の階層番号よりその番号が1つ若いその親装置、階層番号が同じであるその兄弟装置、階層番号1つ多いその子装置がそれぞれ登録保持される。ブロードキャストで発信元装置の階層番号が知らされるため、ブロードキャストで届けられ得る階層番号を有するこれらの各装置、特に親装置は、一般に1つには限られないことになる。
【0034】
したがって、一般に、ある親装置との接続が絶たれる事態になっても別の親装置を介した、ルート装置Rへのデータ伝送経路が成立している。よって、親装置を新たに探すなどのリカバリー動作を大幅に減少させることができ、階層構造の頂上に位置するルート装置Rへの通信の効率を向上できる。
【0035】
ルート装置Rに到達させるべきデータの通常時の伝送は、送出受信部21が担う。すなわち、子装置から送られてきたデータを送出受信部21で受信し、さらに、今度は親装置に向けてそのデータを送出受信部21から送信する。その受信送出の際に、データ処理が必要であれば送受信情報処理部22で処理を行い、さらに加えるべき情報がある場合も処理部22でその処理を行う。また、この装置から新たにデータを伝送する場合は処理部22でその処理を行い送出受信部21から親装置に向けてデータを送信する。データを送り出す先の親装置については、登録保持部13に登録された情報を参照する。
【0036】
データを送り出す先の親装置については、より具体的に、接続状況判断部23における判断に基づいて決めることができる。接続状況判断部23は、可能性として複数登録されている親装置との各接続状況を判断するものである。例えば、2つ登録されている親装置のうちの一方をデータを送り出す親装置として使用している場合に、その親装置との接続状況に不調が生じたときには、情報送出受信部21での送出受信の状況から判断部23は不調の旨を判断できる。そこで、判断部23での判断により指示を受けた情報送出受信部21は、他方の親装置をデータを送り出す先の新たな親装置として使用するように変更ができる。
【0037】
情報送出受信部21は、常時、複数の親装置を同時に使用するように動作させるようにしてもよい。これによれば、ルート装置Rまでのデータ伝送は複数の経路で行われるので伝送の信頼性が向上すると考えられる。その場合に、すべての親装置を使用するとその台数によっては、爆発的な多さの経路でデータ伝送が生じ通信トラフィックが混雑する恐れもある。したがって、無制限にすべての親装置を使用するのではなく、限られた台数の親装置を使用するように設定してもよい。複数の親装置を同時に使用する場合も、接続状況判断部23によって、データ伝送する親装置を交代させることが有用であることは容易に理解できる。
【0038】
図2は、図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する装置配置図および各装置における登録情報を示す表である。以下では、図2以下を参照し、例示された各装置A〜Nの配置において、各装置A〜Nで行われる自装置階層番号の設定、および、その親装置、子装置、兄弟装置の登録保持を説明する。
【0039】
図2中の上側に示すように、各装置A〜Nおよびルート装置Rが地理的に配置されているとする。まず、初期状態として、各装置A〜Nには自装置階層番号が設定されていないものとする。ルート装置Rは、常に階層番号がゼロ(つまり自分自身なのでルート装置Rまでの必要通信ホップ数はゼロ)であり、ルート装置Rは、その識別子Rと自装置階層番号0と含む情報をハローパケットしてブロードキャストすることができる。
【0040】
そうすると、ルート装置Rのブロードキャストを受信可能な範囲に在る装置A、B、C、D、E、Fは、ハローパケット受信部11でこれを受け、その情報により設定部12で自装置階層番号を設定する。この場合、装置A、B、C、D、E、Fにおいて自装置階層番号は、0(ルート装置の階層番号)に1を加えて1になる(図2中の表も参照;丸付き1)。そして、登録保持部13で、ルート装置Rが親装置として登録保持される(同;丸付き2)。
【0041】
次に、各装置A、B、C、D、E、Fは、送信部14により、ルート装置Rに届くように、自装置の識別子とともに、親装置として登録された旨の登録済情報を送信(ユニキャスト)する。この情報を受けたルート装置Rでは、各装置A、B、C、D、E、Fが子装置として登録されることになる(同;丸付き3)。なお、各装置A、B、C、D、E、Fによる、ルート装置Rが親装置として登録された旨の情報送信は、ハローパケットのブロードキャスト送信として行うこともできる(この点はすでに説明した)。以下、図面上では、登録済情報の送信は、例示としてすべてマルチ/ユニキャストで行うとして説明するが、これに代えてハローパケットのブロードキャストで行うことができる点を付言しておく。
【0042】
次に、図3Aは、図2に示したものの次段階である、図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する、地理的な装置配置図および各装置における登録情報を示す表(その1)である。上記のように、装置A、B、C、D、E、Fは、階層番号が1と設定されたので、その識別子と階層番号=1と含む情報をハローパケットしてブロードキャストすることができる。
【0043】
そうすると、装置A、B、C、D、E、Fのいずれかからのブロードキャストを受信可能な範囲に在る装置A、B、C、D、E、Fは、ハローパケット受信部11でこれを受け、受けたブロードキャストですべて階層番号=1(つまり自装置階層番号と同じ)であることを了知する。よって、この場合、装置A、B、C、D、E、Fでは、ブロードキャストの発信元装置を、兄弟装置として登録保持する(図3A中の表も参照;丸付き1)。なお、図3Aにおいては、装置Aは装置B、Fのブロードキャストを受け、装置Bは装置A、Fのブロードキャストを受け、装置Cは装置Dのブロードキャストを受け、装置Dは、装置C、Eのブロードキャストを受け、装置Eが装置Dのブロードキャストを受け、装置Fは装置A、Bのブロードキャストを受けることができたものとして描いている。
【0044】
次に、各装置A、B、C、D、E、Fは、それぞれ、送信部14により、兄弟装置として登録した各装置に届くように、自装置の識別子とともに、兄弟装置として登録した旨の登録済情報を送信(マルチ/ユニキャスト)する。この情報を受信部15で受けた各装置A、B、C、D、E、Fでは、各装置A、B、C、D、E、F(の1つ以上)がすでに兄弟装置として登録されているので、これを確認するに留まる。
【0045】
次に、図3Bは、図2に示したものの次段階である、図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する、地理的な装置配置図および各装置における登録情報を示す表(その2)である。図3Bで説明する動作は、実際には図3Aで説明した動作と同じ段階として生じるが、説明の都合上、別の図示としている。
【0046】
上記のように、装置A、B、C、D、E、Fが、その識別子と階層番号=1と含む情報をハローパケットしてブロードキャストすると、図3Aにおいて説明した以外にも、図3B中の上側に示すように、例えば、装置Aからは装置I、J、Lにそのブロードキャストが届き、装置Bからは装置Gにそのブロードキャストが届き、装置Fからは装置G、H、J、Kにそのブロードキャストが届く。なお、装置C、D、Eについては、図3Aで説明したブロードキャストによる受信以外にはそのブロードキャストを受けることができる装置が存在しないものとする。
【0047】
装置A、B、C、D、E、Fからのブロードキャストにより、いずれかの1つ以上のブロードキャストを受信可能な範囲に在る装置G、H、I、J、K、Lは、それぞれ、ハローパケット受信部11でこれを受け、その情報により設定部12で自装置階層番号を設定する。この場合、伝えられた、送信元である装置A、B、Fの階層番号がすべて1であるため、自装置階層番号は、これに1を加えて2になる(図3B中の表も参照;丸付き1)。そして、登録保持部13で、各装置A、F、Bのうち識別子をブロードキャストで届けてきた装置が親装置として登録保持される(同;丸付き2)。
【0048】
次に、各装置G、H、I、J、K、Lは、送信部14により、装置A、B、Fのうち親装置として登録保持した装置に届くように、自装置の識別子とともに、親装置として登録した旨の登録済情報を送信(マルチ/ユニキャスト)する。この情報を受けた装置A、B、Fでは、各装置A、B、C、D、E、Fのうち識別子をマルチ/ユニキャストで届けてきた装置が子装置として登録されることになる(同;丸付き3)。
【0049】
次に、図4Aは、図3Bに示したものの次段階である、図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する、地理的な装置配置図および各装置における登録情報を示す表(その1)である。この図4Aにおいて説明されるべき動作については、図3Aを参照した説明を参考にすれば容易に理解できる。結果としてこの場合、装置Gは装置Hを、装置Hは装置G、Kを、装置Jは装置K、Lを、装置Kは装置J、Hを、装置Lは装置Jを、それぞれ兄弟装置として登録保持する。
【0050】
次に、図4Bは、図3Bに示したものの次段階である、図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する、地理的な装置配置図および各装置における登録情報を示す表(その2)である。この図4Bにおいて説明されるべき動作については、図3Bを参照した説明を参考にすれば容易に理解できる。図4Bで説明されるべき動作は、実際には図4Aで説明した動作と同じ段階として生じるが、説明の都合上、別の図示としている。
【0051】
結果としてこの場合、装置M、Nは、それぞれ自装置階層番号を3と設定し、装置Mは装置J、Lを親装置として登録保持し、装置Nは装置J、Kを親装置として登録し、装置Jは装置M、Nを子装置として登録保持し、装置Kは装置Nを子装置として登録保持し、装置Lは装置Mを子装置として登録保持する。
【0052】
次に、図5は、図4Bに示したものの次段階である、図1に示した通信装置を複数配置したネットワークにおける動作を説明する装置配置図および各装置における登録情報を示す表である。この図5において説明されるべき動作については、図3A図4Aを参照した説明を参考にすれば容易に理解できる。結果としてこの場合、装置Mは装置Nを、装置Nは装置Mを、それぞれ兄弟装置として登録保持する。なお、装置M、Nを親装置として登録保持するような装置がこの装置配置では存在しないので、その動作はこの場合生じない。
【0053】
以上の一連の動作により、図5中の下側の表に示すように、各装置A〜N(およびルート装置R)において、親装置、兄弟装置、および子装置の登録情報が生じこれらが登録保持された状態になる。図5中の下側の表に基づく、各装置A〜N(およびルート装置R)の階層構造(親子関係)および兄弟関係を図示すると図6Aに示すごとくになる。また、各装置A〜N(およびルート装置R)の地理的な配置関係における、それらの装置の親子関係および兄弟関係を図示すると図6Bに示すごとくになる。
【0054】
以上では、ルート装置Rによるブロードキャストを初期動作とするネットワークの階層構造の構築動作を説明した。加えて、このようにして階層構造の構築がなされた後も、各装置A〜Nは、定期的に、その識別子と階層番号とをブロードキャストする(すでに述べたように、ブロードキャストに登録済情報が含まれるようにしてもよい)。これにより他の装置A〜Nではそれに伴う動作が生じる。ネットワーク接続環境に何ら変化がなければ、各装置A〜Nにおいては登録情報に変更は生じずそれらの階層構造がそのまま維持される。ただし、以下説明するように、場合により、登録情報が変更され階層構造の変化になる場合がある。
【0055】
そこで次に、階層構造が変化する場合の一例として、図7Aないし図7Dを参照して、図6Bに示した各装置の階層構造において一例として生じた接続障害が、どのような動作によりネットワーク構造として変更(改善)がなされるかを説明する。図7Aは、図6Bに示した配置関係において一例として生じた接続障害を示す関係図である。図7Aに示すように、この例では、装置Fと装置Hとの間の親子関係の接続に障害が生じたものとする。
【0056】
図7Aに示す地理的な配置関係を、装置間の階層関係として示すと図7Bの図示になる。このような接続障害が生じると、このネットワークでは、次に示す図7Cに示すような階層関係のネットワークに自律的に変更される。このような変更は、すでに述べた点からもほぼ理解可能であるが、以下一通り説明する。
【0057】
図7Bに示すような接続障害が発生すると、装置Hは、階層番号1の装置Fからブロードキャストを受けることができなくなる。装置Hでブロードキャストを受けることができるのは装置G、Kからのみになり、装置G、Kの階層番号は2である。したがって、装置Hの自装置階層番号設定部12は、自装置の階層番号を、2に1を足した数である3に設定し直す。そうすると、自装置階層番号3より1少ない階層番号=2を有する装置G、Kは、(兄弟装置から)親装置に設定し直される。もとの親装置である装置Fの親装置としての登録は抹消される。以上、装置Hにおける変化の説明である(図7Dも参照)。
【0058】
装置G、Kでは、装置Hの上記の変化により、装置Hの送信部14からのマルチキャストを自装置G、Kの受信部15で受け、装置Hの親装置として登録された旨をそれぞれ了知する。これにより、装置G、Kでは、その更新登録保持部13において、装置Hを(兄弟装置から)子装置に登録し直す。以上、装置G、Kにおける変化の説明である(図7Dも参照)。なお、装置Fでは、そのブロードキャストに対する反応として装置Hからのユニキャストがなくなることから(または装置Hからのブロードキャストが受けられなくなることから)、装置Hの子装置としての登録が抹消される(図7Dも参照)。
【0059】
以上説明のように、このネットワークでは、少なくとも、以下の動作が行われる。すなわち、親装置として登録保持されたいずれの装置とも接続がつかない状態に至ったか否かを判断し、この判断の結果が真であるとき、兄弟装置として登録保持された各装置を新たに親装置として登録保持し直し、登録し直された親装置が有している階層番号より1つ大きい値として自装置階層番号を設定し直す。
【0060】
これにより、一般には複数あり得る親装置のいずれとも接続が絶たれた場合に対処することができる。すなわち、親装置のいずれとも接続が絶たれた場合であっても、これまで兄弟装置であった新たな親装置を介して、直ちに、従前と同様に、ルート装置へのデータ伝送が可能である。
【0061】
次に、階層構造が変化する場合の別の例として、図8Aないし図8Dを参照して、図6Bに示した地理的な配置関係において一例として生じた新規接続によるネットワーク構造の変更(改善)を説明する。図8Aは、図6Bに示した地理的な配置関係において一例として生じた新規接続を示す関係図である。図8Aに示すように、この例では、装置Aと装置Mとの間に新たに親子関係の接続が生じたものとする。
【0062】
図8Aに示す地理的な配置関係を、装置間の階層関係として示すと図8Bの図示になる。このような新規接続が生じると、このネットワークでは、次に示す図8Cに示すような階層関係のネットワークに自律的に変更される。このような変更は、すでに述べた点からもほぼ理解可能であるが、以下一通り説明する。
【0063】
図8Bに示すように新規接続が生じると、装置Mは、装置Aからのブロードキャストを受け取り、その新規親候補存否判断部12において、新規の親装置となるべき装置が存在すると判断する。これは、その時点において、自装置階層番号=3であり、登録された装置については、親装置が装置J、L、兄弟装置が装置N、子装置なしであり、まったく新たな装置である装置Aの階層番号が1(自装置階層番号3より2つ小さい)であるためである。
【0064】
そこで、装置Mの更新登録部13は、自装置階層番号を、装置Aの階層番号である1に1を加えた数として2に設定し直す。また、装置Mの更新登録部13は、装置Aを親装置として新たに登録し、親装置として登録されていた装置J、Lは、その階層番号に基づき、兄弟装置に設定し直される。さらに、これまで兄弟装置として登録されていた装置Nは、その階層番号に基づき、子装置に設定し直される。以上、装置Mにおける変化の説明である(図8Dも参照)。
【0065】
装置Mにおける登録情報の変化は、その送信部14から装置Aの受信部15にユニキャストされ、これにより装置Aでは、自装置が装置Mの親装置として新たに登録された旨を了知することができる。装置Aでは、その更新登録保持部13により、装置Mが新たに子装置として加わって登録される。以上、装置Aにおける変化の説明である(図8Dも参照)。
【0066】
また、装置Mは、その識別子およびその新たな階層番号を送信部16によりブロードキャストする。これにより、装置J、Lは、伝えられた階層番号に基づき、それぞれ、装置Mを(子装置から)兄弟装置に設定し直す。また、装置Nは、伝えられた階層番号に基づき、装置Mを(兄弟装置から)親装置に設定し直す。以上、装置J、K、Nにおける変化の説明である(図8Dも参照)。
【0067】
以上説明のように、このネットワークでは、少なくとも、以下の動作が行われる。すなわち、ハローパケットの中に、親装置、兄弟装置、子装置として登録保持された各装置が有する識別子のいずれとも異なる識別子でかつ自装置階層番号より2以上小さい階層番号を含んだ新たなハローパケットが1つ以上存在するか否かの判断を行う。この判断の結果が真であるとき、新たなハローパケットが含む各階層番号のうちもっとも小さな番号に1を加えた値として自装置階層番号を設定し直す。
【0068】
これにより、自装置へのブロードキャストで情報受信可能な範囲に新たな装置が存在するようになった場合に合理的に対処できる。すなわち、この新たな装置が親装置(の1つ)として登録されることになる。特に、例として述べたようなネットワーク構造の変更(図8C)によれば、装置Mの階層番号が若くなるように変化するので、装置Mを介するルート装置Rへのデータ伝送は一律にその効率が向上する。
【0069】
なお、まったく新たな装置が新たにこのネットワークの各装置よるブロードキャストが届く範囲に加わった場合も、上記の説明と類似の動作がその新たな装置およびネットワークの他の各装置で生じ、既存のネットワーク構造が変更されることになる。
【0070】
次に、別の実施形態である通信装置について図9を参照して説明する。図9は、別の実施形態である通信装置の構成を示す機能ブロック図である。同図において、すでに図1中に示した構成と同じものには同一符号を付し、加えて説明するべき事項がない限り、その説明は省略する。
【0071】
この実施形態では、登録保持部13Aの機能として、少なくとも親装置、加えて兄弟装置について、そのそれぞれとの接続品質の情報がそれぞれ対応付けられて登録保持されるようになっている。このような対応付けは、接続品質情報取得部31により渡された情報に基づいて行われている。
【0072】
接続品質情報取得部31は、情報送出受信部21を活用し、少なくとも親装置、加えて兄弟装置(場合によりさらに加えて子装置)との実際の通信を通して、そのそれぞれとの接続品質に関する情報を取得する。より具体的には、例えば、試験信号のやり取りを行い、アクナレッジ信号の返送頻度、試験パケットの伝送成功頻度、エラーレートなどの情報を取得する。試験信号のやり取りではなく、実際のデータ伝送である通信を活用することも考えられる。
【0073】
得られた接続品質に関する情報は、登録保持部13Aに送られ、その対応する親装置、兄弟装置、子装置に対応付けられて保持される。このような対応付けは、ネットワークの現状を常に反映するように定期的に更新されるようにするのが好ましい。なお、子装置についても接続品質に関する情報を取得する場合は、子装置が兄弟装置に登録し直されたときに直ちにその情報を利用でき、円滑なネットワークの階層構造変更に資することができる。
【0074】
図9に示した通信装置をネットワーク化した場合には、まず、次のように各装置を動作させることが考えられる。すなわち、自装置からルート装置に到達させるべき情報(データ)を、接続品質に関する情報に基づいて、親装置として登録保持された各装置のうち、接続品質が上位にランクされる方から1つ以上の装置を選択の上、その1つ以上の装置に中継させるように送出する。
【0075】
つまり、より接続品質のよい親装置を使用する方が、データ伝送には有利であるためである。そこで、品質が良好な方から1つ以上の親装置を選択し、これをルート装置へのデータ伝送に利用する態様である。ここで、1つのみ選択した場合は、ルート装置へのデータ伝送の経路は1つ上位の装置までは単一のものとなり、2つ以上を選択した場合は、ルート装置へのデータ伝送の経路は複数の経路が同時に利用されることになる。複数の親装置を同時に使用する場合の利点や注意点についてはすでに説明したとおりである。
【0076】
次に、図10は、図9に示した通信装置を複数配置したネットワークにおいて、接続品質情報を活用して選択されたデータ伝送経路を例示する説明図である。図10において、装置間の数値は接続品質を数値化したもので、この場合小ほど良品質である。この例は、ある装置からルート装置Rに向けてデータ伝送を行う場合に、その親装置に加えてその兄弟装置のうち最良のものを選択して中継させるようにした場合を示している。例として装置Mからのデータ伝送を図示している。
【0077】
すなわち、装置Mからルート装置Rに到達させるべきデータを、まず、その親装置である装置J、Lとの接続品質情報およびその兄弟装置である装置Nとの接続品質情報に基づいて、各装置J、L、Nのうち、接続品質がもっとも上位にランクされる装置Lを選択の上、この装置Lに中継させるように送出する。同様に、装置Lでは、その親装置である装置Aとの接続品質情報およびその兄弟装置である装置Jとの接続品質情報に基づいて、各装置A、Jのうち、接続品質がもっとも上位にランクされる装置Jを選択の上、この装置Jに中継させるように送出する。以下、装置Jから装置A、装置Aから装置F、装置Fから装置B、装置Bからルート装置Rへのデータ伝送のそれぞれについても同様である。
【0078】
すなわち、この態様は、親装置のほか、兄弟装置もルート装置へのデータ伝送に活用しようとする態様である。より一般的には、自装置の複数の親装置および兄弟装置のうち、品質が良好な方から1つ以上の親装置または兄弟装置を選択し、これをルート装置へのデータ伝送に利用するようにしてもよい。兄弟装置を活用することで伝送経路の選択肢が増加し、より信頼性の高いデータ伝送が可能になると考えられる。
【0079】
なお、この態様では、兄弟装置もデータ伝送に活用されるため、一般的には、兄弟装置どうしがループを構成するように接続されている場合に、データ伝送がループ内に留まり親装置に伝送されない可能性もある。これを回避するには、例えば、一度兄弟装置に送り出したデータが別の兄弟端末から送り返されてきた場合には、これを検出し、一度送り出した兄弟端末を候補から除いてそのほかの親装置および兄弟端末の中からデータ伝送に使用する装置を選択するようにすればよい。
【0080】
次に、図11は、図9に示した通信装置を複数配置したネットワークにおいて、接続品質情報を活用して選択された別のデータ伝送経路を例示する説明図である。図11において、装置間の数値は接続品質の意味については図10での説明と同様である。この例は、ある装置からルート装置に向けてデータ伝送を行う場合に、一定以上の接続品質を持つ親装置を兄弟装置より優先しつつ最良のものを選択した場合を示している。例として装置Mからのデータ伝送を図示している。
【0081】
すなわち、装置Mからルート装置Rに到達させるべきデータを、まず、その親装置である装置J、Lとの接続品質情報およびその兄弟装置である装置Nとの接続品質情報に基づいて、各装置J、L、Nのうち、接続品質がもっとも上位にランクされる装置Lを選択の上、この装置Lに中継させるように送出する。同様に、装置Lでは、その親装置である装置Aとの接続品質情報およびその兄弟装置である装置Jとの接続品質情報に基づいて、各装置A、Jのうち、接続品質がもっとも上位にランクされる装置Jを選択の上、この装置Jに中継させるように送出する。装置Jから装置Aへのデータ伝送についても同様である。
【0082】
次に、装置Aから装置Fへのデータ伝送においては、この場合、兄弟装置Fの方が、親装置Rとの接続品質よりも高品質であることに関わらず、親装置Rへのデータ伝送を選択している。これは、親装置との接続品質の必要閾値を15と設定し、親装置であるルート装置Rとの接続品質がこれを満たすためである。このような場合、この態様では、親装置が優先的に選択される。
【0083】
この態様をより一般的に規定すると次のごとくになる。すなわち、親装置との接続品質情報に基づいて、親装置として登録保持された各装置において、接続品質が所定の必要閾値に達しているか否かの判断を行い、この判断が親装置のうちの少なくとも1つの装置について真である場合に、自装置からルート装置Rに到達させるべき情報を、親装置のうちの接続品質がもっとも上位にランクされる装置を選択の上、この装置に中継させるように送出する。そして、この判断が親装置のすべてにおいて偽である場合に、兄弟装置との接続品質情報に基づいて、兄弟装置として登録保持された各装置のうちの接続品質がもっとも上位にランクされる装置を選択の上、この装置に中継させるように送出する。
【0084】
この態様も、上記の態様と同様に、兄弟装置もルート装置へのデータ伝送に活用しようとする態様である。違いは、この態様では親装置と兄弟装置とを同一視せず、親装置が優先して選択されるように構成した点にある。兄弟装置は階層的に自装置と同じ位置であり、ルート装置へのデータ伝送という意味で、親装置を優先することには合理性があると考えられる。
【0085】
なお、この態様の場合、可能性としては、親装置のどれも接続品質について必要閾値に達しておらず、仕方なく兄弟装置を使用することになった場合に、結局どの親装置より接続品質の悪い兄弟装置が選択されることもあり得る。これを回避するためには、例えば、仕方なく選択された兄弟装置の接続品質を調べ、その接続品質がどの親装置との接続品質よりも悪い場合には、親装置のうちの最良の接続品質を有するものを選択するようにすればよい。
【符号の説明】
【0086】
11…ハローパケット受信部、12…自装置階層番号の設定部(更新設定部、新規親候補存否判断部)、12a…自装置階層番号記憶保持部、13…親装置、兄弟装置、および子装置の登録保持部(更新登録保持部)、13A…親装置(接続品質情報付加)、兄弟装置(接続品質情報付加)、および子装置の登録保持部(更新登録保持部)、14…登録済情報送信部、15…被登録済情報受信部、16…ハローパケット送信部、21…情報送出受信部、22…送出受信情報処理部、23…接続状況判断部、31…接続品質情報取得部、A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N…通信装置、R…ルート装置。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11