(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5804808
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器及びその燃焼振動減衰方法
(51)【国際特許分類】
F23R 3/18 20060101AFI20151015BHJP
F23R 3/42 20060101ALI20151015BHJP
F23R 3/60 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
F23R3/18
F23R3/42 Z
F23R3/60
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-151310(P2011-151310)
(22)【出願日】2011年7月7日
(65)【公開番号】特開2013-19567(P2013-19567A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】赤松 真児
(72)【発明者】
【氏名】岸田 宏明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼山 剣太郎
(72)【発明者】
【氏名】松山 敬介
(72)【発明者】
【氏名】高島 崇嘉
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−527761(JP,A)
【文献】
特開2001−254634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/24
F23R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから噴射された燃料の燃焼によって生成される燃焼ガスが内部を流れる内筒と、
前記内筒の外表面に装着される第1共鳴装置と、
前記第1共鳴装置よりも燃焼ガス流れの下流側に位置し、高周波の燃焼振動が生じるときの火炎位置に近い前記内筒の外表面に装着され、前記第1共鳴装置よりも高周波の燃焼振動を減衰する第2共鳴装置とを備え、
前記第1共鳴装置および前記第2共鳴装置は、前記内筒の外表面に取り付けられるハウジングを有する音響ライナであり、
前記ハウジングと前記内筒の外表面とで囲まれる共鳴空間が前記内筒に形成された複数の音響孔を介して前記内筒の内部空間に連通していることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
ノズルから噴射された燃料の燃焼によって生成される燃焼ガスが内部を流れる内筒と、
前記内筒の外表面に装着される第1共鳴装置と、
前記第1共鳴装置よりも燃焼ガス流れの下流側に位置するように前記内筒の外表面に装着され、前記第1共鳴装置よりも高周波の燃焼振動を減衰する第2共鳴装置とを備え、
前記第1共鳴装置および前記第2共鳴装置は、前記内筒の外表面に取り付けられるハウジングを有する音響ライナであり、
前記ハウジングと前記内筒の外表面とで囲まれる共鳴空間が前記内筒に形成された複数の音響孔を介して前記内筒の内部空間に連通し、
前記内筒で生成された前記燃焼ガスをタービンに導く尾筒と前記内筒とがオーバーラップしている領域に前記第2共鳴装置を設けたことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項3】
ノズルから噴射された燃料の燃焼によって生成される燃焼ガスが内部を流れる内筒と、
前記内筒の外表面に装着される第1共鳴装置と、
前記第1共鳴装置よりも燃焼ガス流れの下流側に位置するように前記内筒の外表面に装着され、前記第1共鳴装置よりも高周波の燃焼振動を減衰する第2共鳴装置とを備え、
前記第1共鳴装置および前記第2共鳴装置は、前記内筒の外表面に取り付けられるハウジングを有する音響ライナであり、
前記ハウジングと前記内筒の外表面とで囲まれる共鳴空間が前記内筒に形成された複数の音響孔を介して前記内筒の内部空間に連通し、
前記内筒の下流側端部の外周側に上流側端部が重なるように設けられて、前記内筒で生成された前記燃焼ガスをタービンに導く尾筒の上流側端部と前記内筒の前記下流側端部とを接続するスプリングクリップと、
前記スプリングクリップを前記尾筒の前記上流側端部側に押し付けるバギークリップとをさらに備え、
前記バギークリップと前記内筒の前記下流側端部の外表面とで囲まれるスペースに前記第2共鳴装置を収納したことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項4】
前記第2共鳴装置の共鳴空間の高さは、前記第1共鳴装置の共鳴空間の高さよりも低いことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項5】
前記ノズルは、前記内筒の中心軸上に設けられるパイロットノズルと、該パイロットノズルの外周に設けられる複数のメインノズルとからなり、
前記第2共鳴装置の装着位置における前記内筒の直径をD2とし、前記メインノズルを取り囲むメインノズル外筒の後流端部から前記第2共鳴装置の装着位置までの距離をL2としたとき、0.8≦L2/D2≦1.1の関係式が成立することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項6】
前記第2共鳴装置の装着位置における前記内筒の直径をD2とし、前記内筒の長手方向における前記第2共鳴装置の共鳴空間の幅をW2としたとき、0.05≦W2/D2≦0.3の関係式が成立することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項7】
前記第2共鳴装置の装着位置における前記内筒の直径をD2とし、前記第2共鳴装置の共鳴空間の高さをh2としたとき、0.005≦h2/D2≦0.02の関係式が成立することを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項8】
ノズルから噴射された燃料の燃焼によって生成される燃焼ガスが内部を流れる内筒を備えるガスタービン燃焼器における燃焼振動を減衰する方法であって、
前記内筒の外表面に装着される第1共鳴装置により、燃焼振動を減衰する工程と、
前記第1共鳴装置よりも燃焼ガス流れの下流側に位置するように前記内筒の外表面に装着され、前記内筒で生成された前記燃焼ガスをタービンに導く尾筒と前記内筒とがオーバーラップしている領域に設けられた第2共鳴装置を用いて、前記第1共鳴装置よりも高周波の燃焼振動を減衰する工程と、を備えることを特徴とするガスタービン燃焼器の燃焼振動減衰方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成するガスタービン燃焼器
及びその燃焼振動減衰方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃焼振動を抑制するために、音響ライナと称される共鳴装置を燃焼器内筒の外周に取り付けたガスタービン燃焼器が知られている。
例えば、特許文献1には、空洞(共鳴空間)を有する音響ライナを燃焼器筒体の外周に装着し、該空洞を燃焼器筒体に形成された吸音孔(音響孔)に連通させたガスタービン燃焼器が開示されている。また、燃焼振動を効果的に抑制する観点から、燃焼領域の近傍、すなわち火炎の近傍に吸音孔及び音響ライナを配置することも開示されている(段落0011参照)。
【0003】
一方、複数の共鳴装置を取り付けたガスタービン燃焼器が知られている。
例えば、特許文献2及び3には、燃焼筒の燃焼ガスの流れ方向に2つの音響ライナを装着したガスタービン燃焼器が記載されている(特許文献2の
図1、および、特許文献3の
図2参照)。また、特許文献4には、燃焼筒に音響ライナと該音響ライナに接続される音響ダンパとを燃焼筒に装着したガスタービン燃焼器が記載されている(
図6参照)。さらに、特許文献5には、音響ライナ及びこれに接続される音響ダンパからなる減衰装置を尾筒に複数個取り付けたガスタービン燃焼器が記載されている(
図17参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−174427号公報
【特許文献2】特開2006−97981号公報
【特許文献3】特開2008−20095号公報
【特許文献4】特開2007−132640号公報
【特許文献5】特開2006−266671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来から、幅広い周波数範囲(例えば、1.5〜5kHz程度)の燃焼振動を抑制可能な音響ライナを燃焼器内筒に一つだけ装着すれば、燃焼振動に起因するクラックの発生等の問題を十分に解消できると考えられていた。
【0006】
ところが、本発明者らが鋭意検討した結果、ガスタービンの運転条件によっては上記音響ライナの周波数帯を外れた特定の高周波(例えば5.5kHz程度)の燃焼振動も生じうることが確認された。これは、ガスタービンの運転条件(負荷の大きさ)が常に一定ではないことから、燃焼器内筒の内部空間に形成される火炎の長さが変動し、この火炎の長さに依存して燃焼振動の特性が変化するためと考えられる。そして、本発明者らによるさらなる検討によって、上記特定の高周波の燃焼振動は、上記音響ライナで抑制可能な周波数帯に対応する火炎位置に比べて燃焼ガス流れ方向の下流側に火炎位置がずれると共に、燃焼器内筒の壁面近傍で燃焼が生じたときに起こることが明らかになった。
【0007】
そこで、特許文献1に開示された内容を参考にして、燃焼領域(火炎)の近傍に音響ライナを配置すべく、従来に比べて音響ライナを幅広にして、上記特定の高周波の燃焼振動に対応する火炎位置まで音響ライナの設置エリアを拡大することが考えられる。
しかし、音響ライナの幅を広げると、その分だけ、音響ライナのハウジングに設けられたパージ孔の数が増えることになり、パージ孔を介したハウジング内への圧縮空気の流入量が増えて、燃焼に用いられる圧縮空気の量が減ってしまう。
【0008】
一方、特許文献2〜5には、2つの共鳴装置を取り付けることが開示されているものの、上記特定の高周波の燃焼振動をも効果的に抑制するために各共鳴装置をどのような位置関係で配置するかについては何ら開示されていない。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、燃焼用の圧縮空気の供給量低下を抑制しつつ高周波の燃焼振動を低減することができるガスタービン燃焼器
及びその燃焼振動減衰方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るガスタービン燃焼器は、ノズルから噴射された燃料の燃焼によって生成される燃焼ガスが内部を流れる内筒と、前記内筒の外表面に装着される第1共鳴装置と、前記第1共鳴装置よりも
燃焼ガス流れの下流側に位置するように前記内筒の外表面に装着され、前記第1共鳴装置よりも高周波の燃焼振動を減衰する第2共鳴装置とを備え、前記第1共鳴装置および前記第2共鳴装置は、前記内筒の外表面に取り付けられるハウジングを有する音響ライナであり、前記ハウジングと前記内筒の外表面とで囲まれる共鳴空間が前記内筒に形成された複数の音響孔を介して前記内筒の内部空間に連通していることを特徴とする。
【0011】
上記ガスタービン燃焼器では、第1共鳴装置に加えて、第1共鳴装置よりも高周波の燃焼振動を減衰する第2共鳴装置を設けたので、第1共鳴装置の周波数帯を外れた特定の高周波の燃焼振動を第2共鳴装置によって減衰できる。しかも、第1共鳴装置よりも
燃焼ガス流れの下流側に第2共鳴装置を配置したので、第1共鳴装置の周波数帯を外れた特定の高周波の燃焼振動が生じる際の火炎位置に第2共鳴装置が近づいて、第2共鳴装置による上記高周波の燃焼振動の減衰効果が増大する。また、幅広の共鳴装置を一つだけ用いるのではなく、第1共鳴装置および第2共鳴装置を用いるようにしたので、共鳴装置の設置エリアの増加を抑制し、共鳴装置が通常有するパージ孔の数を最小限にして、燃焼用の圧縮空気の供給量低下を防止できる。
【0012】
上記ガスタービン燃焼器において、前記第2共鳴装置の共鳴空間の高さは、前記第1共鳴装置の共鳴空間の高さよりも低いことが好ましい。
このように、第2共鳴装置の共鳴空間の高さを相対的に小さくすることで、第2共鳴装置による高周波の燃焼振動の減衰を効果的に行うことができる。また、第2共鳴装置がコンパクト化されて、第2共鳴装置のレイアウトが容易になる。
【0013】
上記ガスタービン燃焼器は、前記内筒の下流側端部の外周側にその上流側端部(尾頭の上流側端部)が重なるように設けられて、前記内筒で生成された前記燃焼ガスをタービンに導く尾筒と、弾性力によって前記尾筒の前記上流側端部と前記内筒の前記下流側端部とを接続するスプリングクリップと、前記スプリングクリップを前記尾筒の前記上流側端部側に押し付けるバギークリップとをさらに備え、前記バギークリップと前記内筒の前記下流側端部の外表面とで囲まれるスペースに前記第2共鳴装置を収納してもよい。
このように、バギークリップと内筒の下流側端部の外表面とで囲まれるスペースに第2共鳴装置を収納することで、バギークリップ下のスペースを有効利用できる。
【0014】
上記ガスタービン燃焼器において、前記ノズルは、前記内筒の中心軸上に設けられるパイロットノズルと、該パイロットノズルの外周に設けられる複数のメインノズルとからなり、前記第2共鳴装置の装着位置における前記内筒の直径をD
2とし、前記メインノズルを取り囲むメインノズル外筒の後流端部から前記第2共鳴装置の装着位置までの距離をL
2としたとき、0.8≦L
2/D
2≦1.1の関係式が成立することが好ましい。
これにより、第1共鳴装置の周波数帯を外れた特定の高周波の燃焼振動を、第2共鳴装置によって効果的に抑制できる。
【0015】
上記ガスタービン燃焼器において、前記第2共鳴装置の装着位置における前記内筒の直径をD
2とし、前記内筒の長手方向における前記第2共鳴装置の共鳴空間の幅をW
2としたとき、0.05≦W
2/D
2≦0.3の関係式が成立することが好ましい。
これにより、第2共鳴装置のコンパクト化を図りながら、第1共鳴装置の周波数帯を外れた特定の高周波の燃焼振動を第2共鳴装置によって効果的に抑制できる。
【0016】
上記ガスタービン燃焼器において、前記第2共鳴装置の装着位置における前記内筒の直径をD
2とし、前記第2共鳴装置の共鳴空間の高さをh
2としたとき、0.005≦h
2/D
2≦0.02の関係式が成立するが好ましい。
これにより、第2共鳴装置のコンパクト化を図りながら、第2共鳴装置による高周波の燃焼振動の大きな減衰効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1共鳴装置に加えて、第1共鳴装置よりも高周波の燃焼振動を減衰する第2共鳴装置を設けたので、第1共鳴装置の周波数帯を外れた特定の高周波の燃焼振動を第2共鳴装置によって減衰できる。しかも、第1共鳴装置よりも
燃焼ガス流れの下流側に第2共鳴装置を配置したので、第1共鳴装置の周波数帯を外れた特定の高周波の燃焼振動が生じる際の火炎位置に第2共鳴装置が近づいて、第2共鳴装置による上記高周波の燃焼振動の減衰効果が増大する。また、幅広の共鳴装置を一つだけ用いるのではなく、第1共鳴装置および第2共鳴装置を用いるようにしたので、共鳴装置の設置エリアの増加を抑制し、共鳴装置が通常有するパージ孔の数を最小限にして、燃焼用の圧縮空気の供給量低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ガスタービン燃焼器の構成例を示す断面図である。
【
図2】共鳴装置周辺のガスタービン燃焼器の詳細構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0020】
図1は、ガスタービン燃焼器の構成例を示す断面図である。
図2は、共鳴装置周辺のガスタービン燃焼器の詳細構造を示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、ガスタービン燃焼器(以下、単に「燃焼器」という)1は、燃料を噴射するノズル(2,3)と、燃料の燃焼によって生成される燃焼ガスが内部を流れる内筒(燃焼器ライナ)4と、内筒4に接続された尾筒(トランジションピース)6とを備える。
燃焼器1は、圧縮機及びタービンとともにガスタービンを構成する。ガスタービンでは、圧縮機で生成された圧縮空気が燃焼用空気として燃焼器1に供給され、燃焼器1で生成された燃焼ガスが内筒4から尾筒6を経てタービンに供給される。そして、この燃焼ガスによってタービンが駆動される。
【0022】
燃焼器1は、パイロットノズル2及びメインノズル3を組み合わせたマルチノズル形式の予混合燃焼器である。パイロットノズル2は、内筒4の中心軸上に設けられている。また、パイロットノズル2の外周には、パイロットノズル2を取り囲むように複数のメインノズル3が配置されている。メインノズル3の先端部はメインノズル外筒5によって覆われている。
パイロットノズル2から噴射された燃料は圧縮空気と混合されて着火され、パイロットノズル2の下流に火炎が形成される。メインノズル3から噴射された燃料はパイロットノズル2の下流に形成された火炎によって着火され、各メインノズル3の下流に火炎が形成される。これにより、内筒4の内部空間には、尾筒6へと向かう高温の燃焼ガスの流れが形成される。
【0023】
内筒4への尾筒6の接続は、スプリングクリップ8を用いて行われる。内筒4の下流側端部と、尾筒6の上流側端部は、尾筒6が内筒4の外周側になるようにオーバーラップしている。スプリングクリップ8は、一端が内筒4の下流側端部の外周面に固定されており、他端は自由端になっている。そのため、内筒4と尾筒6とは、スプリングクリップ8の弾性力によって固定される。また、スプリングクリップ8と内筒4との間にはバギークリップ9が設けられており、このバギークリップ9によってスプリングクリップ8は尾筒6の内壁面に押し付けられ、内筒4と尾筒6の接続がより確実に行えるようになっている。
【0024】
内筒4の外表面には、燃焼振動を低減するために、第1共鳴装置10及び第2共鳴装置20が装着されている。第1共鳴装置10及び第2共鳴装置20は、内筒4の全周に亘って設けてもよいし、内筒4の周方向に部分的に設けてもよい。
【0025】
図2に示すように、第1共鳴装置10は、内筒4の外表面に溶接で取り付けられた第1ハウジング12を有する音響ライナである。第1ハウジング12と内筒4の外表面とで囲まれる第1共鳴空間14は、内筒4に形成された複数の音響孔16を介して、内筒4の内部空間に連通している。そのため、内筒4内で発生した燃焼振動による空気振動(圧力波)が音響孔16に捕捉されて共鳴する。具体的には、第1共鳴空間14内の空気と音響孔16内の空気とは、第1共鳴空間14内の空気がバネとして働くことにより共鳴系を構成している。そして、この共鳴系の共鳴周波数の振動に対して音響孔16内の空気が激しく共鳴し、その際の摩擦によって燃焼振動の振幅が減衰される。
なお、第1共鳴装置10で減衰可能な燃焼振動の周波数帯は、音響孔16の直径(断面積)、第1共鳴空間14の大きさ(第1共鳴空間14の高さh
1及び幅W
1)等を調節することで任意に設定可能である。
【0026】
また、第1ハウジング12にはパージ孔18が設けられており、内筒4の外部を流れる圧縮空気(燃焼用空気)の一部が第1共鳴空間14に流入するようになっている。これにより、高温の燃焼ガスとの接触による第1ハウジング12の損傷が防止される。なお、圧縮空気が流れる方向は、
図2に示すように、内筒4の内部空間を流れる燃焼ガスの流れとは逆方向である。
【0027】
第1共鳴装置10の装着位置は、第1共鳴装置10の装着位置における内筒4の直径(内径)をD
1(
図1参照)とし、メインノズル外筒5の後流端部から第1共鳴装置10の装着位置までの距離をL
1(
図2参照)としたとき、0.4≦L
1/D
1≦0.7の関係式が成立するように決定してもよい。なお、第1共鳴装置10の装着位置とは、第1共鳴装置10の内筒4の長手方向における幅の中心位置をいう。
また、第1共鳴空間14の内筒4の長手方向における幅W
1(
図2参照)は、第1共鳴装置10の装着位置における内筒4の直径をD
1としたとき、0.3≦W
1/D
1≦0.6の関係式が成立するように決定してもよい。
また、第1共鳴空間14の高さh
1(
図2参照)は、第1共鳴装置10の装着位置における内筒4の直径をD
1としたとき、0.03≦h
1/D
1≦0.1の関係式が成立するように決定してもよい。
【0028】
一方、第2共鳴装置20は、第1共鳴装置10よりも燃焼ガス流れの下流側に配置される。例えば、内筒4と尾筒6とがオーバーラップしている領域に第2共鳴装置20を設けてもよい。
【0029】
第2共鳴装置20の装着位置は、第2共鳴装置20の装着位置における内筒4の直径(内径)をD
2(
図1参照)とし、メインノズル外筒5の後流端部から第2共鳴装置20の装着位置までの距離をL
2(
図2参照)としたとき、0.8≦L
2/D
2≦1.1の関係式が成立するように決定されることが好ましい。これにより、第2共鳴装置20の装着位置が、高周波の燃焼振動が生じるときの火炎位置に近づいて、第2共鳴装置20によって効果的に抑制できる。
なお、第2共鳴装置20の装着位置とは、第2共鳴装置20の内筒4の長手方向における幅の中心位置をいう。
【0030】
第2共鳴装置20もまた、第1共鳴装置10と同様に、内筒4の外表面に取り付けられた第2ハウジング22を有する音響ライナである。第2ハウジング22と内筒4の外表面とで囲まれる第2共鳴空間24は、内筒4内に形成された複数の音響孔26を介して、内筒4の内部空間に連通している。そのため、第2共鳴装置20は、第1共鳴装置10と同様なメカニズムで、所定の周波数の燃焼振動を減衰可能である。なお、第2ハウジング22にはパージ孔28が設けられており、内筒4の外部を流れる圧縮空気の一部が第1共鳴空間24に流入するようになっている。
第2共鳴装置20で減衰可能な燃焼振動の周波数帯は、音響孔26の直径(断面積)、第2共鳴空間24の大きさ(第2共鳴空間24の高さh
2及び幅W
2)等を調節することで任意に設定可能であり、第1共鳴装置10で減衰可能な燃焼振動の周波数帯よりも高周波に設定されている。
【0031】
第2共鳴空間24の内筒4の長手方向における幅W
2(
図2参照)は、第2共鳴装置20の装着位置における内筒4の直径をD
2としたとき、0.05≦W
2/D
2≦0.3の関係式が成立するように決定することが好ましい。
これにより、第2共鳴装置20のコンパクトを図りながら、第1共鳴装置10の周波数帯を外れた特定の高周波の燃焼振動を第2共鳴装置20によって効果的に抑制できる。
【0032】
また、第2共鳴空間24の高さh
2(
図2参照)は、第2共鳴装置20の装着位置における内筒4の直径をD
2としたとき、0.005≦h
2/D
2≦0.02の関係式が成立するように決定することが好ましい。
これにより、第2共鳴装置20のコンパクト化を図りながら、第2共鳴装置20による高周波の燃焼振動の大きな減衰効果を得ることができる。
【0033】
また、第2共鳴空間24の高さh
2は、第1共鳴空間14の高さh
1よりも小さいことが好ましい。
このように、第2共鳴装置20の第2共鳴空間24の高さh
2を相対的に小さくすることで、第2共鳴装置20における高周波の燃焼振動の減衰を効果的に行うことができる。また、第2共鳴装置20がコンパクト化されて、第2共鳴装置20のレイアウトが容易になる。例えば、バギークリップ9と内筒4の外表面とで囲まれるスペースに第2共鳴装置20を収納して、バギークリップ9下のスペースを有効利用することも可能になる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、第1共鳴装置10に加えて、第1共鳴装置10よりも高周波の燃焼振動を減衰する第2共鳴装置20を設けたので、第1共鳴装置10の周波数帯を外れた特定の高周波の燃焼振動を第2共鳴装置20によって減衰できる。しかも、第1共鳴装置10よりも
燃焼ガス流れの下流側に第2共鳴装置20を配置したので、第1共鳴装置10の周波数帯を外れた特定の高周波の燃焼振動が生じる際の火炎位置に第2共鳴装置20が近づいて、第2共鳴装置20による上記高周波の燃焼振動の減衰効果が増大する。また、幅広の共鳴装置を一つだけ用いるのではなく、第1共鳴装置10および第2共鳴装置20を用いるようにしたので、共鳴装置(10,20)の設置エリアの増加を抑制し、共鳴装置が通常有するパージ孔(18,28)の数を最小限にして、燃焼用の圧縮空気の供給量低下を防止できる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1 ガスタービン燃焼器(燃焼器)
2 パイロットノズル
3 メインノズル
4 内筒
5 メインノズル外筒
6 尾筒
8 スプリングクリップ
9 バギークリップ
10 第1共鳴装置
12 第1ハウジング
14 第1共鳴空間
16 音響孔
18 パージ孔
20 第2共鳴装置
22 第2ハウジング
24 第2共鳴空間
26 音響孔
28 パージ孔