特許第5804927号(P5804927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5804927
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】パイプ状試験片の延長治具
(51)【国際特許分類】
   G21C 21/02 20060101AFI20151015BHJP
【FI】
   G21C21/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-272068(P2011-272068)
(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-124866(P2013-124866A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165697
【氏名又は名称】原子燃料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】岩野 健介
(72)【発明者】
【氏名】二宮 章彦
(72)【発明者】
【氏名】河西 清
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−206900(JP,U)
【文献】 特開2006−162613(JP,A)
【文献】 特開平06−249984(JP,A)
【文献】 実開昭54−015200(JP,U)
【文献】 特開2007−256164(JP,A)
【文献】 米国特許第06457922(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 21/02
G21C 3/18
G21C 3/16
G21C 3/10
G21C 3/06
G21C 3/30
G21C 3/32
F16L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ状試験片の長さを所定の長さに延長するために、前記パイプ状試験片の一端に長さ調整用ダミー棒を接続するパイプ状試験片の延長治具であって、
前記パイプ状試験片の一方の端部に抜き出し可能な状態で挿入されるパイプ状のケーシングと、
前記パイプ状試験片に挿入されると共に、前記ケーシングに挿通される棒状の中子と
を備えており、
前記中子は、外周面に雄ねじ部が形成された前記長さ調整用ダミー棒への挿通部を一端に有すると共に、Oリングが嵌め込まれた外周面と前記外周面から前記挿通部に向かって直径が漸減するテーパ部とが設けられた拡開部が形成された前記パイプ状試験片への挿入部を他端に有しており、
前記ケーシングは、ケーシング本体と、前記ケーシング本体に続いて形成された前記パイプ状試験片への挿入部と、前記パイプ状試験片への挿入部に続いて形成され、先端に向かって肉厚が漸減するように形成されると共に複数のスリットが設けられて拡径可能に構成された拡径部を有しており、
前記中子の前記拡開部を前記パイプ状試験片に挿入することにより、前記中子の拡開部の外周面と前記パイプ状試験片の内周面との間が前記Oリングで封止され、
前記中子の挿通部が前記ケーシングに挿通されると共に、前記ケーシングが前記パイプ状試験片に挿入され、
前記中子の前記雄ねじ部が、前記長さ調整用ダミー棒に形成された雌ねじ部に螺合されて螺進することにより、前記中子の前記拡開部が前記長さ調整用ダミー棒の側に引き寄せられるに従い、前記ケーシングの拡径部が、前記中子の前記拡開部の前記テーパ部によって拡径して前記パイプ状試験片の内周面に摩擦係合されるように構成されていることを特徴とするパイプ状試験片の延長治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短尺のパイプ状試験片の長さを所定の長さに延長するためのパイプ状試験片の延長治具に関する。
【背景技術】
【0002】
試験評価などに使用される試験片は、必要最小限のコストに抑えるため、できるだけ寸法を小さくして使用されることが多い。そのため、試験片がパイプ状の場合には、長さ寸法を可能な限り短くして使用される。
【0003】
反面、パイプ状試験片の試験を行うための装置の中には、実際の製品よりも短いパイプ状試験片を使用することができないものがある。そのため、このような装置については、短尺のパイプ状試験片に長さ調整用ダミー棒を接続して実際の製品の寸法に合わせる工夫が行われている。
【0004】
パイプ状試験片に長さ調整用ダミー棒を接続する方法としては、パイプ状試験片および長さ調整用ダミー棒にねじ加工を施してねじ接続する方法、溶接を用いて接続する方法、かしめ加工により接続する方法などが提案されている。
【0005】
また、パイプ状試験片の試験を行う際に、試験雰囲気を管理する場合、パイプ状試験片の一端を密閉する必要がある。例えば、原子燃料集合体の制御棒案内シンブル管をレーザ溶接で溶接する場合(例えば特許文献1)などのように、不活性雰囲気に管理する必要がある場合は、パイプ状試験片の一端を密封する必要がある。
【0006】
このようにパイプ状試験片の一端を密封しながらパイプ状試験片の長さを所定の長さに延長する技術として、図5に示す技術が提案されている。図5は従来のパイプ状試験片の延長治具による接続方法を説明する図であり、(a)は接続前の状態を、(b)は接続後の状態を説明する図である。図5に示すように従来の技術は、雄ねじ部51aを有する金属プラグ51をパイプ状試験片52の片側に溶接してパイプ状試験片内の密封を確保し、金属プラグ51を雄ねじ部51aで長さ調整用ダミー棒にねじ接続するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−346779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の技術では、専用のねじ付き金属プラグを事前に溶接等の加工を行う必要があるため、加工費用が高くなり、また、加工時間が長くなる。このため、急な試験片の数の増加などに対応することが困難であった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、パイプ状試験片の一端を密封しながらパイプ状試験片の長さを所定の長さに延長する場合、事前に溶接等の加工を行う必要がなく、加工費用を低減でき、また加工時間を短くでき、急な試験片の数の増加にも対応することができるパイプ状試験片の延長治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、以下に示す発明により、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、各請求項の発明毎に説明する。
【0011】
請求項1に記載の発明は、
パイプ状試験片の長さを所定の長さに延長するために、前記パイプ状試験片の一端に長さ調整用ダミー棒を接続するパイプ状試験片の延長治具であって、
前記パイプ状試験片の一方の端部に抜き出し可能な状態で挿入されるパイプ状のケーシングと、
前記パイプ状試験片に挿入されると共に、前記ケーシングに挿通される棒状の中子と
を備えており、
前記中子は、外周面に雄ねじ部が形成された前記長さ調整用ダミー棒への挿通部を一端に有すると共に、Oリングが嵌め込まれた外周面と前記外周面から前記挿通部に向かって直径が漸減するテーパ部とが設けられた拡開部が形成された前記パイプ状試験片への挿入部を他端に有しており、
前記ケーシングは、ケーシング本体と、前記ケーシング本体に続いて形成された前記パイプ状試験片への挿入部と、前記パイプ状試験片への挿入部に続いて形成され、先端に向かって肉厚が漸減するように形成されると共に複数のスリットが設けられて拡径可能に構成された拡径部を有しており、
前記中子の前記拡開部を前記パイプ状試験片に挿入することにより、前記中子の拡開部の外周面と前記パイプ状試験片の内周面との間が前記Oリングで封止され、
前記中子の挿通部が前記ケーシングに挿通されると共に、前記ケーシングが前記パイプ状試験片に挿入され、
前記中子の前記雄ねじ部が、前記長さ調整用ダミー棒に形成された雌ねじ部に螺合されて螺進することにより、前記中子の前記拡開部が前記長さ調整用ダミー棒の側に引き寄せられるに従い、前記ケーシングの拡径部が、前記中子の前記拡開部の前記テーパ部によって拡径して前記パイプ状試験片の内周面に摩擦係合されるように構成されていることを特徴とするパイプ状試験片の延長治具である。
【0012】
本請求項の発明に係るパイプ状試験片の延長治具は、中子の雄ねじ部を、長さ調整用ダミー棒に形成された雌ねじ部に螺合して螺進させることにより、中子の拡開部が長さ調整用ダミー棒の側に引き寄せられて、ケーシングの拡径部が、中子の拡開部の側面に設けられたテーパ部によって拡径してパイプ状試験片の内周面に摩擦係合されるように構成されている。
【0013】
また、中子の拡開部の外周面とパイプ状試験片の内周面との間がOリングで封止されるため、雰囲気制御が必要とされる場合に対応することができる。
【0014】
これにより、パイプ状試験片の一端を密封しながらパイプ状試験片の長さを容易に延長することができる。
【0015】
そして、パイプ状試験片と長さ調整用ダミー棒の接続に際して溶接などの事前の加工が不要になるため、加工に要する費用および時間を低減することができ、急な試験片の数の増加などにも容易に対応することができる。
【0016】
なお、長さ調整用ダミー棒に形成された雌ねじ部を緩めることにより、長さ調整用ダミー棒をケーシングとの間に隙間を形成した後、この隙間を埋めるように長さ調整用ダミー棒をケーシングに向けて押し付けることにより、中子の拡開部がケーシングの拡径部から離れて拡径部が縮径し、長さ調整用ダミー棒とパイプ状試験片との接続を解除することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、事前に溶接等の加工を行う必要がなく、パイプ状試験片の一端を密封しながらパイプ状試験片の長さを所定の長さに延長することができ、加工費用を低減でき、また加工時間を短くでき、急な試験片の数の増加にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は本発明の実施の形態のパイプ状試験片の延長治具の中子の断面図、(b)は本発明の実施の形態のパイプ状試験片の延長治具のケーシングの断面図である。
図2】パイプ状試験片の断面図である。
図3】長さ調整用ダミー棒の一部切欠した正面図である。
図4】(a)(b)(c)は本発明の実施の形態のパイプ状試験片の延長治具による接続方法を説明する図である。
図5】(a)(b)は従来のパイプ状試験片の延長治具による接続方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明する。
【0020】
1.パイプ状試験片の延長治具の構成
図1(a)は、本発明の実施の形態のパイプ状試験片の延長治具の中子の断面図、図1(b)は、本発明の実施の形態のパイプ状試験片の延長治具のケーシングの断面図である。また、図2は、パイプ状試験片の断面図であり、図3は、長さ調整用ダミー棒の一部切欠した正面図である。さらに、図4(a)(b)(c)は本発明の実施の形態のパイプ状試験片の延長治具による接続方法を説明する正面図である。
【0021】
パイプ状試験片の延長治具は、パイプ状試験片21の一方の端部に抜き出し可能に挿入されるパイプ状のケーシング12と、ケーシング12に挿通される棒状の中子11とを備えている。
【0022】
(1)中子
中子11は、ケーシング12より長くなるように設定されており、ケーシング12に挿通される挿通部11aと、拡開部11bとを有しており、挿通部11aの一端の外周面には雄ねじ部11eが形成されている。また、拡開部11bの直径は、パイプ状試験片21の内径よりわずかに小さい大きさに設定されている。
【0023】
拡開部11bの外周面には環状の溝11gが設けられ、溝11gにはOリング11fが嵌め込まれている。
【0024】
また、拡開部11bの挿通部側には挿通部11aに向かって直径が漸減するテーパ部11dが形成されている。
【0025】
なお、中子11の材質としては、例えば、工具鋼等が好ましい。
【0026】
(2)ケーシング
図1(b)に示すように、ケーシング12は、ケーシング本体12cと、パイプ状試験片21への挿入部12aと、挿入部12aの先端に形成される拡径部12bとを有している。拡径部12bは、先端に向かって肉厚が漸減するように形成されることにより弾性力が付与され、挿入部12aの上部側から4箇所にスリットを設けることにより拡径可能に構成されている。また、拡径部12bの外面にはローレットなどの滑り止め加工が施されている。
【0027】
なお、ケーシング12の材質としては、例えば、バネ鋼等が好ましい。
【0028】
また、中子11とケーシング12とは、互いに回転しないようにキー(図示せず)が設けられている。このため、ケーシング12を手等で保持することにより、中子11の回転も規制される。この結果、調整用ダミー棒31は中子11と共回りすることなく螺進し、中子11は調整用ダミー棒31の側に引き込まれて、ケーシング12の拡径部12bを拡径させることができる。
【0029】
2.パイプ状試験片および長さ調整用ダミー棒
図2に示すように、パイプ状試験片21は、短尺に形成されており、例えば原子燃料のシンブル管や被覆管などの試験片である。図3に示すように、長さ調整用ダミー棒31は、一端に中子11の雄ねじ部11e(図1(a)参照)と螺合する雌ねじ部31aが形成されている。なお、長さ調整用ダミー棒31の直径は、パイプ状試験片21の外径とほぼ同じ大きさである。
【0030】
3.パイプ状試験片の延長治具による接続動作の説明
パイプ状試験片21および長さ調整用ダミー棒31は次のようにして接続される。
【0031】
(1)まず、図4(a)に示すように、中子11の挿通部11aをケーシング12に挿入して中子11の雄ねじ部11eをケーシング12から突出させる。また、中子11の拡開部11bおよびケーシング12の挿入部12aをパイプ状試験片21の一端に挿入する。このとき、パイプ状試験片21の内周面と、中子11の拡開部11bとの間はOリング11fにより封止される。また、ケーシング12のケーシング本体12cはパイプ状試験片21から突出している。
【0032】
(2)次に、図4(b)に示すように、中子11の雄ねじ部11eに長さ調整用ダミー棒31の雌ねじ部31aを螺合し、パイプ状試験片21や長さ調整用ダミー棒31を回転させて中子11の雄ねじ部11eを螺進させる。これにより、長さ調整用ダミー棒31がケーシング12に係止する。
【0033】
(3)そして、図4(c)に示すように、パイプ状試験片21や長さ調整用ダミー棒31をさらに回転させることにより、中子11の雄ねじ部11eをさらに螺進させ、中子11が長さ調整用ダミー棒31の側に引き寄せられる。このため、中子11のテーパ部11dがケーシング12の拡径部12bの内周面を摺動しながら拡径部12b内に圧入される。これにより、ケーシング12の拡径部12bが拡径して拡径部12bの外周面がパイプ状試験片21の内周面に圧接して摩擦係合する。
【0034】
この結果、パイプ状試験片21と長さ調整用ダミー棒31とがパイプ状試験片の延長治具を介して接続される。
【0035】
なお、拡径部12bの外周面には滑り止め加工が施されているため、摩擦係合力が大きくなる。
【0036】
(4)このようにして長さ調整用ダミー棒31に接続されたパイプ状試験片21を用いて試験を行う場合、試験時にパイプ状試験片21の内部が加圧されると、加圧力が中子11に作用することにより、中子11がさらに移動する。このため、ケーシング12の拡径部12bがさらに押し拡げられて摩擦係合力がさらに大きくなり、パイプ状試験片21と長さ調整用ダミー棒31とを強固に接続することができる。なお、中子11のOリング11fの存在により、加圧力が抜けることはない。
【0037】
(5)次に、パイプ状試験片21と長さ調整用ダミー棒31との接続を解除する場合には、長さ調整用ダミー棒31に形成された雌ねじ部31aを緩めて、長さ調整用ダミー棒31とケーシング12との間に隙間を形成した後、長さ調整用ダミー棒31によりこの隙間を押し縮める。これにより、中子11のテーパ部11dをケーシング12の拡径部12bから離脱させることができ、ケーシング12の拡径部12bが縮径され接続が解除される。
【実施例】
【0038】
次に、実施例により具体的に説明する。本実施例は、軽水炉燃料用被覆管の溶接試験に用いるパイプ状試験片21に適用した例である。
【0039】
軽水炉用燃料は約4mの長さを有するが、パイプ状試験片21としては通常数十cmの短尺被覆管を使用する。溶接試験では、溶接機の内部雰囲気を不活性雰囲気に置換するため、装置の内部を真空に引き、その後パイプ状試験片21の内部を製品燃料棒と同等の3MPa程度まで加圧する。
【0040】
本実施例では、PWR17×17タイプおよびBWR9×9タイプについて、上記実施の形態に基づいてパイプ状試験片の延長治具を作製し、これを使用して溶接試験を実施した。
【0041】
試験の結果、両タイプ共に溶接試験中にパイプ状試験片の延長治具が外れることなく接続でき、装置内部の真空置換およびパイプ状試験片21の内部の圧力が保持されることを確認できた。
【0042】
なお、上記のタイプ以外の燃料被覆管についてもパイプ状試験片の内径に応じて使用することが可能であり、また軽水炉用燃料被覆管に限定されることなく、他の用途に用いられるパイプ状試験片21にも適用することが可能である。
【0043】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0044】
11 中子
11a 挿通部
11b 拡開部
11e 雄ねじ部
11d テーパ部
11f Oリング
11g 溝
12 ケーシング
12a (パイプ状試験片への)挿入部
12b 拡径部
12c ケーシング本体
21、52 パイプ状試験片
31 長さ調整用ダミー棒
31a 雌ねじ部
51 金属プラグ
51a 雄ねじ部
図1
図2
図3
図4
図5