【実施例】
【0022】
(実施例1)
上記内燃機関用のスパークプラグの実施例につき、
図1〜
図4を用いて説明する。
本例の内燃機関用のスパークプラグ1は、
図1、
図2に示すごとく、筒状のハウジング2と、ハウジング2の内側に保持された筒状の絶縁碍子3と、先端部が突出するように絶縁碍子3の内側に保持された中心電極4と、ハウジング2に接続されると共に中心電極4との間に火花放電ギャップGを形成する接地電極5とを有する。また、スパークプラグ1は、ハウジング2の先端部21から先端側へ突出した先端突起部22を有する。
【0023】
接地電極5は、ハウジング2の先端部21から先端側へ立設する立設部51と、立設部51からプラグ径方向の内側へ屈曲して中心電極4とプラグ軸方向に対向する対向部52と、対向部52における中心電極4側の面に突出形成された接地突起部53とを備えている。
【0024】
図2に示すごとく、プラグ軸方向から見て、接地電極5の立設部51のプラグ周方向における中心とプラグ中心Oとを結ぶ直線L1と、プラグ中心Oにおいて直線L1に直交する直線L2とによって区画される4つの区画領域A1、A2、A3、A4のうち、立設部51の一部が存在する2つの電極側領域A1、A2の一方(A1)に、先端突起部22の少なくとも一部が配置されている。本例においては、先端突起部22は、その全体が電極側領域A1に配置されている。
【0025】
接地突起部53は、プラグ中心Oからずれた位置であって、区画領域A1〜A4のうち、電極側領域A1、A2以外の2つの開放側領域A3、A4のいずれか、もしくは、先端突起部22の少なくとも一部が存在する電極側領域A1に配置されている。本例においては、接地突起部53は、先端突起部22が形成された電極側領域A1に隣接する開放側領域A4に配置されている。
【0026】
本例において、スパークプラグ1は、ハウジング2と絶縁碍子3と中心電極4とは、共通の中心軸を中心にした回転体の形状を有する。また、中心電極4の先端部41は、円柱状の貴金属チップからなり、母材40の先端に接合してなるが、先端部41(貴金属チップ)の中心軸も、ハウジング2等の中心軸と共通である。すなわち、ハウジング2、絶縁碍子3、及び、先端部41を含めた中心電極4の中心軸は、すべてプラグ中心Oにある。
また、
図2に示すごとく、プラグ軸方向から見たとき、接地突起部53は、中心電極4の先端部41と重ならない位置に配置されている。接地突起部53も、円柱形状の貴金属チップからなり、接地電極5の対向部52に接合されている。
【0027】
図2に示すごとく、先端突起部22は、プラグ径方向の寸法W1がハウジング2の先端部21の径方向の厚みW3以下である。本例においては、寸法W1と寸法W3は、略同等である。また、先端突起部22は、プラグ周方向の寸法W2がプラグ径方向の寸法W1よりも小さい。さらに、先端突起部22のプラグ周方向の寸法W2は、接地電極5におけるプラグ周方向の寸法W4よりも小さい。
【0028】
また、
図3に示すごとく、先端突起部22は、ハウジング2の先端部21からのプラグ軸方向への突出量H1が接地電極5の突出量H2よりも小さい。
先端突起部22は、略四角柱形状を有し、プラグ軸方向に平行に立設している。先端突起部22は、接地電極5側の側面221を含む平面がプラグ中心Oを通るか若しくはその近傍を通るように、配置されている。
【0029】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記スパークプラグ1は、ハウジング2の先端部21から先端側へ突出した先端突起部22を有する。これにより、スパークプラグ1が内燃機関に対してどのような姿勢で取付けられても、火花放電ギャップGへ向かう燃焼室内の気流が妨げられることを抑制することができる。つまり、例えば、
図3、
図4に示すごとく、接地電極5の立設部51がプラグ中心Oに対して気流Fの上流側に配置された場合において、上流側から立設部51の脇を通過した気流Fを先端突起部22によって、プラグ中心O付近へ導くことができる。すなわち、先端突起部22が気流Fのガイドとなり、気流Fをプラグ中心Oに向かって導くことができる。そのため、火花放電ギャップG付近の気流Fの停滞を防ぐことができる。
【0030】
ただし、上記のように接地電極5の立設部51が気流Fの上流側に配された場合において、立設部51の下流側であり、立設部51に近い所定の空間においては、どうしても気流Fが停滞しやすく、淀みZが生じ得る。つまり、先端突起部22によって気流Fをプラグ中心O側へ導くことはできるが、気流の淀みZを解消できるわけではない。この場合、
図3、
図4に示すごとく、気流の淀みZは、接地電極5の立設部51に近い位置であり、かつ立設部51を挟んで先端突起部22の反対側の位置に形成されやすい。すなわち、上記4つの区画領域A1〜A4のうち、先端突起部22が存在する側と反対側の電極側領域A2を中心に、淀みZが形成されることとなる。そして、特にこの電極側領域A2と対角をなす位置である開放側領域A4が、最も淀みZが生じにくい。
【0031】
そこで、
図2に示すごとく、スパークプラグ1は、接地電極5の接地突起部53を、プラグ中心Oからずれた位置であって、先端突起部22の少なくとも一部が存在する電極側領域A4に配置している。これにより、火花放電ギャップGを、気流の淀みZが生じ難い位置に配置することができる。その結果、接地電極5の立設部51が燃焼室の気流Fの上流側に配置されても、着火性を充分に確保することができる。すなわち、立設部51が気流Fの上流側に配された場合でも、火花放電ギャップGにおいては淀みZが生じにくいため、火花放電ギャップGに生じた放電火花Sが気流Fによって充分に引き伸ばされ、着火しやすくなる。
これにより、内燃機関に対するスパークプラグ1の取付姿勢に関わらず、安定した着火性を確保することができる。
【0032】
また、先端突起部22は、プラグ径方向の寸法W1がハウジング2の先端部21の径方向の厚みW3以下である。これにより、先端突起部22がハウジング2の内周面よりも中心電極4に近付くことを防ぐことができる。そのため、先端突起部22と中心電極4との間における横飛び火を防ぐことができ、安定した着火性を確保することができる。
特に本例においては、寸法W1が厚みW3と略同等であるため、先端突起部22の側面221によるガイド機能を高めつつ、横飛び火を防ぐことができる。
【0033】
また、先端突起部22は、プラグ周方向の寸法W2が、接地電極5におけるプラグ周方向の寸法W4よりも小さい。これにより、先端突起部22自身によって気流Fを遮蔽することを防ぎやすく、火花放電ギャップG付近の気流の停滞を効果的に防ぐことができる。
【0034】
また、先端突起部22は、プラグ周方向の寸法W2がプラグ径方向の寸法W1よりも小さい。これにより、上流側からスパークプラグ1の先端部付近へ向かう気流Fを、先端突起部22によって火花放電ギャップGへ効率的に導きやすく、かつ、先端突起部22が上流側からスパークプラグ1の先端部付近へ向かう気流Fを妨げにくくなる。つまり、先端突起部22は、接地電極5の立設部51が火花放電ギャップGの上流側に配された場合において、上記ガイド機能を果たすが、先端突起部22自身が火花放電ギャップGの上流側に配置された場合には、その形状によっては火花放電ギャップGへ向かう気流Fを遮蔽するおそれが考えられる。上記ガイド機能は、先端突起部22のプラグ径方向の寸法W1が大きいほど発揮されやすく、上述の火花放電ギャップGへ向かう気流Fを遮蔽する効果は、先端突起部22のプラグ周方向の寸法W2が大きいほど生じやすい。それゆえ、先端突起部22を、W1>W2となる形状とすることにより、火花放電ギャップGへ向かう気流Fの遮蔽を防ぎつつ、火花放電ギャップGへの気流Fの導入を効率的に行いやすくなる。
【0035】
また、中心電極4の先端部41の中心軸は、プラグ中心Oに配置されており、プラグ軸方向から見たとき、接地突起部53は中心電極4の先端部41と重ならない位置に配置されている。このような構成とすることにより、中心電極4の先端部41をプラグ中心Oからずらす必要がないため、スパークプラグ1の製造を容易に行うことができる。すなわち、スパークプラグ1の構造上、中心電極4の先端部41をプラグ中心Oからずらすよりも、接地電極5の接地突起部53をプラグ中心Oからずらす方が、構成を簡単にし易く、製造も容易となりやすい。
【0036】
以上のごとく、本例によれば、内燃機関に対する取付姿勢に関わらず安定した着火性を確保することができる内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
【0037】
(実施例2)
本例は、
図5、
図6に示すごとく、接地電極5の接地突起部53をプラグ中心Oに配置し、中心電極4の先端部41をプラグ中心Oからずらした例である。
中心電極4の先端部41は、4つの区画領域のうち、開放側領域A4に配置されている。
【0038】
そして、この配置を実現するために、本例においては、中心電極4の母材40の先端に中間部材42を介して貴金属チップを先端部41として接合している。中間部材42は、母材40の先端から開放側領域A4へ向かって延びるように配設されている。そして、中間部材42の延設側の端部において、プラグ軸方向の先端側へ向かって貴金属チップからなる先端部41を接合している。
その他は、実施例1と同様である。また、
図5、
図6に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素を表す。
【0039】
本例の場合にも、火花放電ギャップGを気流の淀みZが生じにくい位置に配置することができるため、安定した着火性を確保することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0040】
(実施例3)
本例は、
図7、
図8に示すごとく、絶縁碍子3の中心軸と中心電極4の先端部41の中心軸とをずらすことによって、中心電極4の先端部41をプラグ中心Oからずらした例である。
ハウジング2と絶縁碍子3とは、中心軸を共有しており、これらの中心軸は、プラグ中心Oにある。しかし、絶縁碍子3の内側に保持された中心電極4の母材40を、4つの区画領域のうちの開放側領域A4側へずらして配置している。また、さらに、中心電極4の母材40に対する先端部41の配置も、開放側領域A4側へずらしている。
その他は、実施例2と同様である。また、
図7、
図8に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素を表す。
【0041】
本例の場合には、実施例2の場合と異なり、中間部材42を母材40と先端部41との間に設ける必要がない。そのため、実施例2の場合に比べ、溶接等の接合工程を削減することができる。
その他、実施例2と同様の作用効果を有する。
【0042】
(実施例4)
本例は、
図9、
図10に示すごとく、接地突起部53及び中心電極4の先端部41の双方を、プラグ中心Oからずらした例である。
接地突起部53及び中心電極4の先端部41は、開放側領域A4に配置されている。また、接地突起部53と中心電極4の先端部41とは、互いにプラグ軸方向に重なるように対向配置されている。また、中心電極4の母材40と先端部41との間には、実施例2と同様に中間部材42を介設している。
その他は、実施例1と同様である。また、
図9、
図10に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素を表す。
【0043】
本例の場合にも、内燃機関に対する取付姿勢に関わらず安定した着火性を確保することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0044】
(実施例5)
本例も、
図11、
図12に示すごとく、接地突起部53及び中心電極4の先端部41の双方を、プラグ中心Oからずらした例である。
ただし、中心電極4の先端部41のずらし方は、実施例3と同様である。すなわち、絶縁碍子3に対して中心電極4の母材40を開放側領域A4側へずらすと共に、母材40に対して先端部41を開放側領域A4にずらしている。
【0045】
これにより、接地突起部53及び中心電極4の先端部41の双方を、開放側領域A4に配置している。
その他は、実施例4と同様である。また、
図11、
図12に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素を表す。
【0046】
本例の場合には、実施例3の作用効果と実施例4の作用効果とを奏する。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0047】
(実施例6)
本例は、
図13に示すごとく、接地突起部53を、4つの区画領域のうちの電極側領域A1に配置した例である。
すなわち、本例のスパークプラグ1は、接地突起部53を、先端突起部22が存在する電極側領域A1に配置してなる。
その他は、実施例1と同様である。また、
図13に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素を表す。
【0048】
本例の場合にも、気流の淀みZが形成されやすい電極側領域A2とは異なる区画領域である電極側領域A1に火花放電ギャップGを配置することができる。そのため、内燃機関に対する取付姿勢に関わらず安定した着火性を確保することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0049】
(実施例7)
本例は、
図14に示すごとく、接地突起部53を、4つの区画領域のうちの開放側領域A3に配置した例である。
すなわち、本例のスパークプラグ1は、接地突起部53を、先端突起部22が存在する電極側領域A1と対角をなす区画領域である開放側領域A3に配置してなる。
その他は、実施例1と同様である。また、
図14に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素を表す。
【0050】
本例の場合にも、気流の淀みZが形成されやすい電極側領域A2とは異なる区画領域である開放側領域A3に火花放電ギャップGを配置することができる。そのため、内燃機関に対する取付姿勢に関わらず安定した着火性を確保することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0051】
(比較例1)
本例は、
図15〜
図17に示すごとく、中心電極4の先端部41と接地電極5の接地突起部53とがプラグ中心Oにおいて対向配置されていると共に、実施例1〜7に示したような先端突起部22を設けていないスパークプラグ9の例である。
その他の構成は、実施例1と同様である。また、
図15〜
図17に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素を表す。
【0052】
本例の場合には、
図16、
図17に示すごとく、接地電極5の立設部51がプラグ中心Oに対して気流Fの上流側に配置されたとき、気流の淀みZが火花放電ギャップGを覆うように形成される。その結果、放電火花Sも引き伸ばされ難く、着火性が低下しやすい。
その一方で、例えば、プラグ中心Oに対する接地電極5の立設部51の位置が気流Fの方向に対して直交する位置にあるなど、気流Fの上流側に立設部51がないような取付姿勢となった場合には、火花放電ギャップGに淀みZが形成されることはなく、放電火花Sが大きく引き伸ばされ、着火性が向上する。
このように、本例のスパークプラグ9は、内燃機関への取付姿勢によって、着火性が大きく変動し、安定した着火性を確保することが困難である。
【0053】
(比較例2)
本例は、
図18に示すごとく、先端突起部22を設けており、中心電極4の先端部41と接地電極5の接地突起部53とがプラグ中心Oにおいて対向配置されているスパークプラグ90の例である。
すなわち、本例のスパークプラグ90は、実施例1と同様に、先端突起部22を設けているが、中心電極4の先端部41と接地電極5の接地突起部53とを、プラグ中心Oからずらすことなく、プラグ中心Oにおいて対向配置してなる。
その他は、実施例1と同様である。また、
図18に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素を表す。
【0054】
本例においては、接地電極5の立設部51がプラグ中心Oに対して気流Fの上流側に配置されても、先端突起部22のガイド機能により、気流Fをプラグ中心O付近へ導くことができる。そのため、放電火花Sはある程度引き伸ばされ、比較例1に対して着火性の向上が期待できる。
しかし、気流の淀みZが火花放電ギャップGを部分的に覆うように形成されるため、引き伸ばされる放電火花Sの長さは、実施例1に比べて小さくなり、着火性の向上に限界があると考えられる。
【0055】
(実験例)
本例は、
図19〜
図21に示すごとく、実施例1のスパークプラグ1、比較例1のスパークプラグ9、比較例2のスパークプラグ90を用いて、それぞれのA/F限界が、気流Fに対する接地電極5の立設部51の配置位置によってどのように変化するかを調べた例である。
【0056】
具体的には、スパークプラグを軸方向先端側から見たときに、気流Fの上流方向が、プラグ中心Oに対する接地電極5の立設部51の配置位置となす角度βを、0°〜330°まで、30°おきに変化させ、それぞれの状態で、A/F限界を測定した。つまり、角度βが0°のときは、接地電極5の立設部51がプラグ中心Oの上流側に配置され、角度βが180°のときは、接地電極5の立設部51が、プラグ中心Oの下流側に配置されていることになる。このA/F限界の測定を、実施例1のスパークプラグ1、比較例1のスパークプラグ9、比較例2のスパークプラグ90について、それぞれ行った。
【0057】
実施例1のスパークプラグ1、比較例1のスパークプラグ9、比較例1のスパークプラグ9、比較例2のスパークプラグ90のそれぞれについて、上記のように気流Fに対する向きを変化させつつ、A/F限界を測定した。ここで、気流Fの流速は14m/sとした。
測定の結果を、
図19〜
図21に示す。
図19の符号C1を付した折れ線が比較例1のスパークプラグ9の測定結果であり、
図20の符号C2を付した折れ線が比較例2のスパークプラグ90の測定結果であり、
図21の符号E1を付した折れ線が実施例1のスパークプラグ1の測定結果である。
【0058】
また、これらの図において、破線で示す同心円の中心(原点)より外側に向かうほど、A/F限界が高いことを意味する。すなわち、図中に示すグラフにおけるA/F限界の値は、破線で示される同心円の中心(原点)が24であり、最も外側の円が26である。また、その間に等間隔に存在する複数の同心円は、内側からそれぞれA/F限界の値が24.4、24.8、25.2、25.6であることを表す目盛である。
【0059】
図19に示すごとく、比較例1のスパークプラグ9におけるA/F限界を示す折れ線グラフC1は、いびつな形状となっている。これは、比較例1のスパークプラグ9のA/F限界つまり着火性が、気流Fの上流方向、換言すれば、スパークプラグ9の内燃機関への取付姿勢によって大きく変動することを意味する。また特に、角度βが0°となる部分においては、A/F限界が極めて低くなっている。このことから、接地電極5の立設部51が火花放電ギャップGに対して気流Fの上流側に配置されたときに、A/F限界が極端に低下し、着火性が大きく低下することが分かる。
このように、比較例1のスパークプラグ9は、内燃機関への取付姿勢によって、着火性能が大きく変動してしまう。
【0060】
これに対して、
図20に示すごとく、比較例2のスパークプラグ90におけるA/F限界を示す折れ線グラフC2は、原点を中心とした円形に近い形状となっている。これは、比較例2のスパークプラグ90が、気流Fに対する取付姿勢によって着火性が大きく変動せず、ある程度安定した着火性を確保できていることを意味する。しかし、折れ線グラフC2において、上記角度βが0°のとき、すなわち接地電極5の立設部51が気流Fの上流側に配置されたとき、A/F限界が低下している。このことから、先端突起部22を設けたことにより、着火性を安定化させることはできているが、まだ改善の余地が残されていることも分かる。
【0061】
そこで、
図21を見てみると、同図に示す実施例1のスパークプラグ1におけるA/F限界を示す折れ線グラフE1は、
図20の折れ線グラフC2よりも、さらに円形に近い形状をなしている。特に、上記角度βが0°のとき、すなわち接地電極5の立設部51が気流Fの上流側に配置されたときのA/F限界も、充分に大きな値を示している。これは、実施例1のスパークプラグ1が、取付姿勢に関わらず、充分な着火性を安定して確保することができていることを意味する。
以上の結果から、実施例1のスパークプラグ1を採用することにより、取付姿勢に関わらず、安定した着火性を確保することができることが分かる。
【0062】
なお、上記実施例1〜7において、先端突起部22は、その全体が電極側領域A1に配置された状態を示したが、例えば、先端突起部22が電極側領域A1と開放側領域A4とにまたがるように配置されていてもよい。すなわち、先端突起部22の側面221が電極側領域A1に存在していればよい。
また、先端突起部22、接地突起部53、中心電極4の先端部41等の配置に関して、直線L1を基準に反転させた配置としても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0063】
また、実施例1〜7においては、中心電極4の先端部41及び接地突起部53を貴金属チップによって構成した例を示したが、これらは、必ずしも貴金属チップでなくてもよい。例えば、先端部41を中心電極4の母材40と同じ材料であって、母材40を延長させたものであってもよい。また、接地電極5の対向部52の一部を突出変形させて接地突起部53を形成してもよい。
また、中心電極4の先端部41及び接地突起部53の形状についても、特に限定されるものではなく、円柱形状以外にも、例えば多角柱形状とすることもできる。