(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5805005
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】高電圧で作業する電気機械の巻線ヘッドのための絶縁キャップ及びこのような絶縁キャップを備える電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 3/38 20060101AFI20151015BHJP
H02K 3/40 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
H02K3/38 A
H02K3/40
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-104961(P2012-104961)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2012-235684(P2012-235684A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】00732/11
(32)【優先日】2011年4月29日
(33)【優先権主張国】CH
(31)【優先権主張番号】00861/11
(32)【優先日】2011年5月20日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】513128235
【氏名又は名称】アルストム・リニューワブル・テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マークス フヴュラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ケプフラー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クラムト
【審査官】
宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−086448(JP,A)
【文献】
特開昭62−104449(JP,A)
【文献】
特表2001−504677(JP,A)
【文献】
実開昭56−080645(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/30−3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧で作業する電気機械の巻線ヘッド(10)のための絶縁キャップ(16a,b)であって、前記巻線ヘッド(10)が、巻線溝から突出する絶縁された複数の巻線バー(11,12)を有しており、該巻線バー(11,12)が端部においてペア状に導電性に互いに接続されており、該電気的な接続部(15)の領域がそれぞれ、開口(23)でもって前記電気的な接続部(15)に被せられる絶縁キャップ(16a,b)により外部に対して絶縁されている絶縁キャップ(16a,b)において、該絶縁キャップ(16a,b)は内部(17)に、前記電気的な接続部の領域における高い電界を、該絶縁キャップ(16a,b)のアース電位にある外面(21)に向かって漸減することを可能にする手段(19)を有し、該漸減手段が、傾斜材料からなる傾斜層(19)を有しており、該傾斜層(19)が、前記絶縁キャップ(16a,b)を被せたときに、前記電気的な接続部(15)の領域から前記絶縁キャップ(16a,b)の開口(23)まで達し、
さらに、前記絶縁キャップ(16a,b)が、中央の絶縁層(20)を有しており、該中央の絶縁層(20)が、外面に外側の導体又は半導体層(21)を有しており、該中央の絶縁層(20)の内面には、前記電気的な接続部(15)の領域に、内側の導体又は半導体層(18)が配置されており、前記傾斜層(19)は、該内側の導体又は半導体層(18)から前記絶縁キャップ(16a,b)の開口(23)まで達することを特徴とする絶縁キャップ。
【請求項2】
前記傾斜層(19)が、前記内側の導体又は半導体層(18)と、限られたオーバラップゾーン(22)において重畳する、請求項1記載の絶縁キャップ。
【請求項3】
前記傾斜層(19)が、大部分、前記絶縁キャップ(16a)の前記中央の絶縁層(20)内に埋設されている、請求項1又は2記載の絶縁キャップ。
【請求項4】
前記傾斜層(19)が、大部分、前記絶縁キャップ(16b)の前記中央の絶縁層(20)上に配置されている、請求項1又は2記載の絶縁キャップ。
【請求項5】
高電圧で作業する電気機械であって、巻線ヘッド(10)を備える巻線を備える電気機械において、前記巻線ヘッド(10)は、請求項1から4までのいずれか1項記載の絶縁キャップ(16a,b)を有していることを特徴とする、電気機械。
【請求項6】
前記巻線ヘッド(10)の少なくとも1つの絶縁キャップ(16a,b)が、外面においてアースされている、請求項5記載の電気機械。
【請求項7】
前記巻線ヘッド(10)のすべての絶縁キャップ(16a,b)が、外面においてアースされている、請求項6記載の電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械の技術分野に関し、高電圧で作業する電気機械の巻線ヘッドのための絶縁キャップであって、巻線ヘッドが、巻線溝から突出する絶縁された複数の巻線バーを有しており、巻線バーが端部においてペア状に導電性に互いに接続されており、電気的な接続部の領域がそれぞれ、開口でもって電気的な接続部に被せられる絶縁キャップにより外部に対して絶縁されている絶縁キャップに係る。
【0002】
さらに本発明は、高電圧で作業する電気機械であって、巻線ヘッドを備える巻線を備える電気機械に関する。
【背景技術】
【0003】
高電圧で作業する電気機械、例えば発電機又は電動機、特にスリップリングモータの(回転子又は固定子の)電気的な巻線は、端部に巻線ヘッド(Wickelkopf)を有している。巻線ヘッドにおいて、金属薄板積層体(Blechpaket)の溝から突出した巻線バー(Wicklungsstab)がペア状に互いに導電性に接続される。電気的な接続は、しばしば、巻線バーの、絶縁材から解放された導体端部にろう接されるラグあるいはアイを介して実施される。接続箇所は、その後、特別な絶縁キャップの被せ嵌めにより電気的に絶縁される。このような巻線ヘッドの例は、以下の刊行物、すなわちドイツ連邦共和国特許第1281015号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第4237079号明細書、欧州特許出願公開第1821389号明細書又は米国特許第4309636号明細書において公知である。
【0004】
従来技術において、高電圧電位にある、高電圧で作業する電気機械の巻線ヘッドのための絶縁キャップが公知である。この種の絶縁キャップは、外面においてアースされ得ない。
【0005】
さらに、絶縁キャップの内部の電界強度を低減するために、絶縁ヘッドの内面に傾斜材料(Gradientenmaterial:例えば国際公開第2004038735号パンフレット「Field grading material」参照)を設けることが公知である。しかし、この型式の絶縁キャップは、外面において依然として高電圧にあり、その結果、外面はアースされ得ない。
【0006】
しかしながら、様々な電気的かつ機械的な理由から、このような絶縁キャップの外面をアース可能とすることが好ましい場合がある。このためには、内面において高電圧にあり、外面において高電圧とアース電位との間の任意の電圧電位をとることが可能な絶縁キャップが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第1281015号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4237079号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1821389号明細書
【特許文献4】米国特許第4309636号明細書
【特許文献5】国際公開第2004038735号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ本発明の課題は、外面のアースを可能にする、冒頭で述べた形式の絶縁キャップを提供することである。
【0009】
さらに本発明の課題は、この種の絶縁キャップを備える巻線ヘッドを備える電気機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る高電圧で作業する電気機械の巻線ヘッドのための絶縁キャップでは、絶縁キャップが内部に、電気的な接続部の領域における高い電界を、絶縁キャップのアース電位にある外面に向かって漸減(gradueller Abbau)することを可能にする手段を有しているようにした。
【0011】
さらに上記課題を解決するために、本発明に係る高電圧で作業する電気機械では、巻線ヘッドが、上述の絶縁キャップを有しているようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、高電圧で作業する電気機械の巻線ヘッドのための絶縁キャップであって、巻線ヘッドが、巻線溝から突出する絶縁された複数の巻線バーを有しており、巻線バーが端部においてペア状に導電性に互いに接続されており、電気的な接続部の領域がそれぞれ、開口でもって電気的な接続部に被せられる絶縁キャップにより外部に対して絶縁されている絶縁キャップから出発する。本発明に係る絶縁キャップは、絶縁キャップが内部に、電気的な接続部の領域における高い電界を、絶縁キャップのアース電位にある外面に向かって漸減することを可能にする手段を有していることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様は、漸減手段が、傾斜材料からなる傾斜層(Gradientenschicht)を有しており、傾斜層が、絶縁キャップを被せたときに、電気的な接続部の領域から絶縁キャップの開口まで達することを特徴とする。
【0014】
この態様の変化態様は、絶縁キャップが、中央の絶縁層を有しており、中央の絶縁層が、外面に外側の導体又は半導体層を有しており、中央の絶縁層の内面には、電気的な接続部の領域に、内側の導体又は半導体層が配置されており、傾斜層は、内側の導体又は半導体層から絶縁キャップの開口まで達することを特徴とする。
【0015】
特に傾斜層は、内側の導体又は半導体層と、限られたオーバラップゾーンにおいて重畳する。
【0016】
別の態様は、傾斜層が、大部分、絶縁キャップの中央の絶縁層内に埋設されていることを特徴とする。
【0017】
さらに別の態様は、傾斜層が、大部分、絶縁キャップの中央の絶縁層上に配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る高電圧で作業する電気機械は、巻線ヘッドを備える巻線を備える電気機械において、巻線ヘッドが、本発明に係る絶縁キャップを有していることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、巻線ヘッドの少なくとも1つの絶縁キャップが、外面においてアースされている。
【0020】
特に、巻線ヘッドのすべての絶縁キャップが、外面においてあるいは巻線ヘッド全体においてアースされている。
【0021】
以下に、本発明について、図面を参照しながら実施の形態に基づいて詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】端部において互いに電気的に接続されており、被せられる絶縁キャップにより外部に対して絶縁される、巻線ヘッドの2つの巻線バーの概略斜視側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る絶縁キャップの断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態に係る絶縁キャップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に、概略斜視側面図で、巻線ヘッド10の2つの巻線バー11,12を示す。巻線バー11,12は、端部で互いに電気的に接続されており、被せられる絶縁キャップ16により外部に向かって絶縁される。巻線バー11,12は、巻線バー11,12を格納する溝を備える金属薄板積層体(図示せず)に対して絶縁するために、外側の絶縁材13により被覆されている。絶縁材13は、巻線バー11,12の端部において、電気的な接続のため、巻線バー11,12の中央の電気的な導体14を露出させるために除去されている。この電気的な接続のために、特別なラグあるいはアイ15が使用される。ラグあるいはアイ15は、巻線バー11,12の露出された導体端部に例えばろう接されている。電気的な接続部14,15を絶縁するために、絶縁キャップ16が設けられている。
【0024】
本発明において、絶縁キャップ16は、電気的な接続部14,15が高電圧電位にあることができる一方で、絶縁キャップ16の外側がアース電位にか、又はアース電位と高電圧電位との間にある任意の電位に維持されることができるように形成されている。このことは、絶縁キャップ16の内部に設けられる特別な手段により達成される。これらの特別な手段は、種々異なる形式で絶縁キャップ16の内部に配置可能な傾斜層を有している。このアッセンブリの2つの実施の形態は、
図2及び
図3に縦断面図で示してある。
【0025】
図2は、絶縁キャップ16aを示している。絶縁キャップ16aは、縦断面図で見て、内室17を形成するU字形の輪郭を有しており、一方側に開口23を有している。絶縁キャップ16aは、中央の絶縁層20を有している。中央の絶縁層20は、外面において全面的に外側の導体又は半導体層21により被覆されている。中央の絶縁層20の内面には、電気的な接続部14,15を収容する領域に、内側の導体又は半導体層18が配置されている。さらに傾斜層19が設けられており、傾斜層19は、内側の導体又は半導体層18から絶縁キャップ16aの開口23まで達している。傾斜層19は、本実施の形態では大部分、絶縁キャップ16aの中央の絶縁層20内に埋設されている。傾斜層は、内側の導体又は半導体層18と、限られたオーバラップゾーン22において重畳している。
【0026】
図3の実施の形態において、絶縁キャップ16bの傾斜層19は、大部分、絶縁キャップ16bの中央の絶縁層20の表面上に配置されている。本実施の形態でも、内側の導体又は半導体層18との限られたオーバラップゾーン22が設けられている。
【0027】
傾斜層19は、(運転中)傾斜電界(elektrisches Gradientenfeld)を生じる。傾斜電界は、電気的な接続部14,15の領域における高電圧から絶縁キャップ16a,bの外面21まで達し、これにより外面21における自由に選択可能な電位を実現する。傾斜層19のための材料としては、例えば傾斜材料、例えば冒頭に挙げた刊行物、国際公開第2004038735号パンフレットに開示されているような傾斜材料が考慮される。
【0028】
この種の絶縁キャップ16a,bにより、個々のキャップのアースが可能となるが、巻線ヘッド全体のアースも可能となる。例えば巻線バーの表面が機械内部においてアースされていると、これにより、空気中の望ましくない部分放電の危険は、軽減されるか、又は完全に排除される。
【0029】
別の利点は、アースされた絶縁キャップが機械のアースされたパーツへの機械的な固定を可能にすることにある。これにより、機械的な安定性はさらに改善され、巻線ヘッドの構造は簡単になる。
【0030】
別の利点は、まさに高電圧機械、例えばジェネレータ、モータ又はスリップリングモータとの関連において、効率の改善、利用可能性の向上、及びスリップリングモータにおける臨界的な周辺条件下での運転信頼性の向上にある。機械の型式次第で、本発明に係る絶縁キャップは、回転子巻線及び/又は固定子巻線において使用可能である。
【0031】
本発明に係る絶縁キャップの別の利点は、この絶縁キャップの使用により巻線ヘッド全体がアース可能であることにある。
【0032】
多くの電気機械において、運転中、巻線ヘッド内にダスト及びオイルからなる混合物が溜まって、沿面経路(Kriechstrecke)、ひいては絶縁エラーに至らしめる恐れがある。
【0033】
一般に、高電圧巻線は、金属薄板体(Blechkoerper)の領域において外部にアースされている。金属薄板体の溝から個々の巻線バーの電気的な接続箇所まで、外面における電圧は、機械の高電圧まで上昇する。この巻線の外面における高電圧は、巻線エレメント自体、及びアース電位にあるか、又は他の相に属する巻線エレメント間に気中に十分な間隔を必要とする。機械及び特に巻線が汚損されていると、部分放電及び巻線上の沿面経路についての危険が生じる。このことは、絶縁のエラー及び破壊に至らしめる場合がある。
【0034】
本発明により巻線ヘッドが全体的にアースされると、巻線エレメント間の気中の間隔は、別のパラメータ、特に冷却に関して最適化可能である。機械のアースされたパーツに対する巻線エレメントのエアギャップは、消去可能であるか、又は少なくとも大幅に低減可能である。こうして、電気機械のダスト及び湿気に対するエラー許容性は高まる。
【0035】
巻線ヘッド全体のアースは、好ましくは本発明に係る絶縁キャップの使用下で実現可能である。しかし、全体的なアースの利点を特別な絶縁キャップなしに別の方法で達成することも考えられる。
【符号の説明】
【0036】
10 巻線ヘッド
11,12 巻線バー
13 絶縁材
14 導体
15 ラグあるいはアイ
16,16a,b 絶縁キャップ
17 内室
18 内側の導体又は半導体層
19 傾斜層
20 絶縁層
21 外側の導体又は半導体層
22 オーバラップゾーン
23 開口(絶縁キャップ)