【実施例】
【0017】
図5は、本発明の実施例に係るフラッシュメモリの構成を示すブロック図である。但し、ここに示すフラッシュメモリの構成は、例示であって、本発明は、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。
【0018】
本実施例のフラッシュメモリ100は、行列状に配列された複数のメモリセルが形成されたメモリアレイ110と、外部入出力端子I/Oに接続され入出力データを保持する入出力バッファ120と、入出力バッファ120からのアドレスデータを受け取るアドレスレジスタ130と、入出力されるデータを保持するデータレジスタ140、入出力バッファ120からのコマンドデータおよび外部制御信号(図示されないコマンドラッチイネーブル(CLE)信号やアドレスラッチイネーブル(ALE)信号等)に基づき各部を制御する制御信号C1、C2、C3等を供給するコントローラ150と、アドレスレジスタ130からの行アドレス情報Axをデコードしデコード結果に基づきブロックの選択およびワード線の選択等を行うワード線選択回路160と、ワード線選択回路160によって選択されたページから読み出されたデータを保持したり、選択されたページへの書込みデータを保持するページバッファ/センス回路170と、アドレスレジスタ130からの列アドレス情報Ayをデコードし当該デコード結果に基づきページバッファ170内の列データを選択する列選択回路180と、データの読出し、プログラムおよび消去等のために必要な電圧(プログラム電圧Vpgm、パス電圧Vpass、読出しパス電圧Vread、消去電圧Versなど)を生成する内部電圧発生回路190とを含んで構成される。
【0019】
メモリアレイ110は、列方向に配置された複数のブロックBLK(0)、BLK(1)、・・・、BLK(m)を有する。ブロックの一方の端部には、ページバッファ/センス回路170が配置される。但し、ページバッファ/センス回路170は、ブロックの他方の端部、あるいはの両側の端部に配置されるものであってもよい。1つのブロックには、例えば、
図1に示すように、複数のメモリセルを直列に接続したNANDストリングユニットNUが複数形成される。
【0020】
メモリセルMCiのコントロールゲートは、ワード線WLiに接続され、ダミーメモリセルDMCのコントロールゲートは、ダミーワード線DWLに接続され、選択トランジスタTD、TSのゲートは、ワード線WL/ダミーワード線DWLと並行する選択ゲート線SGD、SGSに接続される。ワード線選択回路160は、行アドレスAxに基づきブロックの選択、ワード線WL/ダミーワード線DWLの選択を行い、また、選択ゲート信号SGS、SGDを介して選択トランジスタTD、TSを選択的に駆動する。
【0021】
メモリセルは、典型的に、Pウエル内に形成されたN型の拡散領域であるソース/ドレインと、ソース/ドレイン間のチャンネル上に形成されたトンネル酸化膜と、トンネル酸化膜上に形成されたフローティングゲート(電荷蓄積層)と、フローティングゲート上に誘電体膜を介して形成されたコントロールゲートとを含むMOS構造を有する。Pウエルは、例えば、P型のシリコン基板内に形成されたNウエル内に形成される。フローティングゲートに電荷が蓄積されていないとき、つまりデータ「1」が書込まれているとき、しきい値は負状態にあり、メモリセルは、ノーマリオンである。フローティングゲートに電子が蓄積されたとき、つまりデータ「0」が書込まれているとき、しきい値は正にシフトし、メモリセルは、ノーマリオフである。また、メモリセルは、2値データを記憶するものであってもよいし、多値データを記憶するものであってもよい。
【0022】
次に、本実施例のフラッシュメモリの消去動作について説明する。
図6は、消去シーケンスを示すフローチャート、
図7は、消去時の各部の電圧遷移を示すグラフ、
図8は、NANDストリングの概略断面図である。
【0023】
好ましい態様では、コントローラ150は、図示しないホスト側から消去コマンド等を受け取ると、消去動作を実行する。先ず、ワード線選択回路160は、コントローラ150の制御の下で、行アドレス情報Axに基づき消去すべきブロックを選択し、選択したブロック内のメモリセルMCiのワード線WL0〜WL63およびダミーメモリセルDMSのダミーワード線DWLに0Vを印加し(S200)、選択されたブロックのビット線選択トランジスタTDおよびソース線選択トランジスタTSの選択ゲート線SGD、SGSに0Vを印加する(S210)。また、ソース線SLおよびビット線は、フローティングである。ステップS200とステップS210の動作は、同時に行われてもよいし、ステップS210がステップS200よりも先に実行されてもよい。ステップS200およびS210の印加は、
図7の時刻t0で実行される。
【0024】
次に、Pウエル200(
図8を参照)に、消去電圧Versが印加される(S220)。消去電圧Versは、内部電圧発生回路190によって発生され、図示しない回路によってPウエルに印加される。好ましい態様では、電圧が徐々に大きくなる消去パルスが複数回Pウエルに印加され、Pウエルが消去電圧Versに昇圧される。この消去電圧Versの印加は、
図7の時刻t1で開始される。時刻t1のとき、選択ゲート線SGD、SGS、ワード線WLi、ダミーワード線DWLには0Vが印加されているので、ビット線選択トランジスタTD、ソース線選択トランジスタTS、メモリセルMCi、ダミーメモリセルDMCのコントロールゲートは、Pウエルと容量結合されず、0Vに固定されたままである。
【0025】
次に、時刻t1から一定時間経過後の時刻t2で、ビット線選択トランジスタTD、ソース線選択トランジスタTSの選択ゲート線SGD、SGSをオープンし、選択トランジスタTD、TSがフローティングにされる(S230、S240)。これにより、ビット線選択トランジスタTDおよびソース線選択トランジスタTSのゲート210(
図8)がPウエル200と容量的に結合され、選択トランジスタTD/TSの昇圧が開始される。
図7の破線は、選択トランジスタTD/TSの電圧V
TD、V
TSが、容量結合によって、Pウエル電圧V
PWに比例して上昇することを示している。
【0026】
次に、時刻t2から一定時間経過後の時刻t3で、ダミーメモリセルDMCのダミーワード線DWLをオープンし、ダミーメモリセルDMCがフローティングにされる(S250、S260)。これにより、ダミーメモリセルDMCのコントロールゲート220がPウエル200と容量的に結合され、昇圧を開始される。
図7の破線は、ダミーワード線DWLが、容量結合によって、Pウエル電圧V
PWに比例して上昇することを示している。次に、Pウエル電圧V
PWが消去電圧Versに到達した時刻t4から時刻t5まで消去のために必要な一定時間が経過するのを待ち(S270)、消去シーケンスの一部または全部が終了される。
【0027】
図7に示すように、Pウエル200に消去電圧Vesrが印加された時刻t0のとき、選択トランジスタTD、TSのゲート電圧V
TD、V
TSは0Vに固定されており、時刻t1から遅延した時刻t2のとき、選択トランジスタTD、TSがフローティングにされる。その結果、選択トランジスタTD/TSがPウエル200と容量結合される時間が遅延され、ゲート電圧V
TD、V
TSの昇圧電位が抑制される。例えば、ゲート電圧V
TD、V
TSは、約13V程度に昇圧され、
図4に示す従来のときの電圧17Vよりも小さくなる。
【0028】
選択トランジスタTD、TSのゲート電圧V
TD、V
TSが、従来のように17V程度にまで大きくなると、選択トランジスタTD、TSとの容量結合によってダミーメモリセルDMCのコントロールゲート220が昇圧され、フローティングゲートに一定の電界が生じ、ダミーメモリセルDMCの消去が不十分となり、しきい値が十分に負にシフトされないことがある。ダミーメモリセルDMCは、選択トランジスタTD、TSによるメモリセルMCへの電界の影響を緩和し、メモリセルの過消去または過プログラムを抑制するものであり、ダミーメモリセルDMCのしきい値はメモリセルMCのしきい値と等しいのが理想的であり、このずれが大きくなると、読み出し、プログラム、あるいはベリファイの動作が不安定になる。本実施例では、選択トランジスタTD、TSのゲート電圧V
TD、V
TSの昇圧を抑制するため、選択トランジスタTD、TSによるダミーメモリセルDMCへの影響が抑制され、ダミーメモリセルDMCのしきい値が十分に負の方向へシフトされるようにすることができる。
【0029】
他方、選択トランジスタTD、TSのゲート電圧V
TD、V
TSが小さくなり、ゲート電圧V
TD、V
TSとPウエル電圧V
PWの電位差Vaが大きくなりすぎると、Va<V
PW−TDDBを満足することができなくなり、選択トランジスタTD、TSがTDDBにより破壊されてしまう。Va=V
TW−(V
TD、V
TS)<V
PW−TDDBであるから、(V
TD、V
TS)>TDDBを満足すればよい。仮に、TDDBが約5Vであれば、ゲート電圧V
TD、V
TSは、5V以上に昇圧されればよいことになる。
【0030】
ゲート電圧V
TD、V
TSの昇圧は、選択トランジスタTD、TSをフローティングにする時刻t2によって調整可能である。
図7に示すように、選択トランジスタTD、TSが時刻t2よりも遅い時刻t2’でフローティングにした場合、選択トランジスタTD、TSのPウエルとの容量結合する開始時刻が遅れるため、ゲート電圧電圧V
TD、V
TSの昇圧が抑制され、時刻t2で昇圧されたときよりもV1だけ小さくなる。こうして、選択トランジスタTD、TSをフローティングする時刻を調整することで、TDDBに応じたゲート電圧V
TD、V
TSの昇圧を設定することができる。
【0031】
さらに本実施例では、時刻t3でダミーワード線DWLを0Vからフローティング状態にすることで、ダミーメモリセルDMCのコントロールゲート220を選択トランジスタTD、TSの昇圧電位よりも小さい一定電位にまで昇圧させることができる。これにより、隣接するメモリセルMC63、MC0が幾分容量的に結合され、メモリセルMC63、MC0のコントロールゲートの電位を若干上昇させることで、メモリセルMC63、MC0が過消去されないようにし、しきい値のばらつきの変動を抑制する。好ましくは、ダミーワード線DWLは、選択トランジスタTD、TSがフローティングにされた後(時刻t2の後)であって、Pウエルの電圧V
PWが消去電圧Vers(18V)に到達する前(時刻t3の前)にフローティングにされることが望ましい。これにより、ダミーワード線DWLをPウエルの電圧V
PWと比例するよう
に昇圧させることができる。また、上記したように、ダミーワード線DWLのフローティングを、時刻t3からt3’に遅延させれば、Pウエルと容量結合する開始時刻が遅くなるので、時刻t3のときの昇圧電圧よりもV2だけ低い昇圧電圧になる。
【0032】
このように本実施例では、選択トランジスタTD、TSをフローティング状態にする時刻t2を、消去電圧が印加される時刻t1から遅延させることで、選択トランジスタTD、TSがPウエルと容量結合する開始時刻が遅延され、消去時の選択トランジスタTD、TSの昇圧電位を一定以下に抑制し、ダミーメモリセルDMCへの影響を少なくすることができる。さらに、選択トランジスタTD、TSは、容量結合によってPウエル電圧V
PWに比例して昇圧されるため、選択トランジスタTD、TSへの昇圧によるダメージを小さくすることができる。
【0033】
選択トランジスタTD、TSの選択ゲート信号SDG、SGS、ダミーメモリセルDMCのダミーワード線DWLの駆動制御は、ワード線選択回路160によって行われる。ワード線選択回路160は、公知の回路技術、例えばクロック制御あるいは遅延回路等を用いて、選択トランジスタTD、TSやダミーワード線DWLのフローティング時間を、予め決められた設定に基づき正確に制御することが可能である。
【0034】
図9は、ワード線駆動回路の内部構成例を示す図である。同図に示すように、駆動回路162は、選択ゲート線SGD、SGS、ダミーワード線DWL、ワード線WLに、nMOS構造の転送トランジスタM1〜M68を介して所定の電圧を供給する。選択回路164は、転送トランジスタM1〜M68のゲートに選択制御信号を供給し、転送トランジスタM1〜M68のオン、オフを制御する。
【0035】
メモリアレイの選択されたブロックの消去が行われるとき、駆動回路162は、選択ゲート線SGD、SGS、ダミーワード線DWL、ワード線WLに0Vを供給し、選択回路164は、Hレベルの選択制御信号を転送トランジスタM1〜M68に供給し、転送トランジスタM1〜M68をオンさせる。次に、時刻t1のとき、図示しない回路によってPウエル200に消去電圧Versの印加が開始される。次に、時刻t2のとき、選択回路164は、選択ゲート線SGD、SGSに接続された転送トランジスタM1、M68がオフされるようにLレベルの選択制御信号を供給する。次に、時刻t3のとき、選択回路164は、ダミーワード線DWLに接続された転送トランジスタM2、M67がオフされるようにLレベルの選択制御信号を供給する。
【0036】
上記実施例では、NANDストリングが両端側にダミーメモリセルを含む例を示したが、本発明は、必ずしもダミーメモリセルを含まないNANDストリングであってもよい。すなわち、本発明は、ビット線選択トランジスタTDにメモリセルMC63が接続され、ソース線選択トランジスタTSにメモリセルMC0が接続されるNANDストリングにも適用することができる。さらに上記実施例では、Pウエル領域に消去電圧を印加する前に、選択トランジスタTD、TSの選択ゲート線SGD、SGSまたはそのゲートに0Vを印加するようにしたが、選択トランジスタTD、TSは、Pウエルとの容量結合によって昇圧されないような電圧に固定されれば十分である。さらに上記実施例では、P型の半導体基板上にNウエル領域を形成し、Nウエル領域内にPウエル領域を形成したが、これは一例であって、P型半導体基板上にNANDストリングが形成されてもよい。
【0037】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。