特許第5805162号(P5805162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5805162
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 16/02 20060101AFI20151015BHJP
   G11C 16/04 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   G11C17/00 612Z
   G11C17/00 622E
   G11C17/00 624
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-206243(P2013-206243)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-69690(P2015-69690A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2013年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】511062254
【氏名又は名称】ウィンボンド エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 真言
【審査官】 滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0238730(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0151646(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0181020(US,A1)
【文献】 特開2011−187152(JP,A)
【文献】 特開2009−163782(JP,A)
【文献】 特開2006−286033(JP,A)
【文献】 特表2008−525941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/02
G11C 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択トランジスタとメモリセルとの間にダミーメモリセルを含むNANDストリングを有するメモリアレイが形成された半導体記憶装置の消去方法であって、
NANDストリングの選択トランジスタのゲートおよび前記ダミーメモリセルのワード線に予め決められた電位を印加し、かつNANDストリングのメモリセルのワード線に前記予め決められた電位を印加し、
NANDストリングが形成された基板領域に第1の時刻に消去電圧を印加し、
第1の時刻から一定時間後の第2の時刻に、前記選択トランジスタのゲートをフローティングにすることで、前記選択トランジスタのゲートを前記基板領域との容量結合により第1の電位に昇圧させ、当該第1の電位が前記消去電圧よりも小さく、かつ前記選択トランジスタがTDDBにより破壊しない電圧以上となるように前記第2の時刻が調整され、
第2の時刻から一定時間後の第3の時刻に、前記ダミーメモリセルのダミーワード線をフローティングにすることで、前記ダミーメモリセルのダミーワード線を前記基板領域との容量結合により第2の電位に昇圧させ、当該第2の電位が第1の電位よりも小さくなるように前記第3の時刻が調整される、消去方法。
【請求項2】
前記予め決められた電位は0Vである、請求項1に記載の消去方法。
【請求項3】
直列に接続された複数のメモリセル、一方の側のメモリセルをビット線に接続する第1の選択トランジスタ、他方の側のメモリセルをソース線に接続する第2の選択トランジスタ、第1の選択トランジスタとメモリセルとの間に接続された第1のダミーメモリセル、および第2の選択トランジスタとメモリセルとの間に接続された第2のダミーメモリセルを含むNANDストリングが形成されたメモリアレイと、
前記メモリアレイからブロックを選択し、選択したブロック内のメモリセルのデータを消去する消去手段とを含み、
前記消去手段は、選択されたブロック内の第1および第2の選択トランジスタの選択ゲート線、第1および第2のダミーメモリセルのワード線と複数のメモリセルのワード線に予め決められた電位を印加した後の第1の時刻に、前記選択されたブロックの基板領域に消去電圧を印加し、第1の時刻から一定時間後の第2の時刻に第1および第2の選択トランジスタの選択ゲート線をフローティングにすることで、前記選択トランジスタのゲートを前記基板領域との容量結合により第1の電位に昇圧させ、当該第1の電位が前記消去電圧よりも小さく、かつ前記選択トランジスタがTDDBにより破壊しない電圧以上となるように前記第2の時刻が調整され、
第2の時刻から一定時間後の第3の時刻に、前記ダミーメモリセルのダミーワード線をフローティングにすることで、前記ダミーメモリセルのダミーワード線を前記基板領域との容量結合により第2の電位に昇圧させ、当該第2の電位が第1の電位よりも小さくなるように前記第3の時刻が調整される、半導体記憶装置。
【請求項4】
前記予め決められた電位は0Vである、請求項に記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NAND型フラッシュメモリ等の半導体記憶装置に関し、特に消去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NAND型のフラッシュメモリは、公知のように、複数のメモリセルを直列接続したNANDストリングからなるメモリセルアレイを有し、メモリセルに2値データまたは多値データをプログラムし、あるいは消去することができる。素子の微細化によりNANDストリングのビット線選択トランジスタやソース線選択トランジスタとメモリセル間の距離が小さくなると、素子間や基板との容量結合が大きくなり、不所望な動作が生じ得る。例えば、特許文献1では、書込み動作時にカップリングにより昇圧されたNANDストリングのチャンネルの電位がビット選択トランジスタに伝播させることを防止するため、ビット線選択トランジスタとメモリセルとの間にダミーメモリセルを挿入し、書込み動作時にダミーメモリセルによってビット線選択トランジスタとメモリセルとの間をカットオフする技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−192349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、ダミーメモリセルが挿入されたNANDストリングアレイの一例を示す回路図である。同図に示すように、1つのブロックには、複数のメモリセルを直列に接続したn+1個のNANDストリングNUが行方向に配列されている。1つのNANDストリングNUは、直列に接続された複数のメモリセルMCi(i=0、1、・・・、63)と、メモリセルの両端に接続された一対のダミーメモリセルDMCと、一方のダミーメモリセルDMCのドレインに接続されたビット線選択トランジスタTDと、他方のダミーメモリセルDMCのソースに接続されたソース線選択トランジスタTSとを含み、ビット線選択トランジスタTDのドレインは、対応する1つのビット線GBLに接続され、ソース線選択トランジスタTSのソースは、共通のソース線SLに接続される。ブロックを構成するNANDストリングNUは、Pウエル内に形成される。
【0005】
メモリセルMCiのコントロールゲートは、ワード線WLiに接続され、ダミーメモリセルDMCのコントロールゲートは、ダミーワード線DWLに接続され、選択トランジスタTD、TSのゲートは、ワード線WLと並行する選択ゲート線SGD、SGSに接続される。ダミーメモリセルDMCは、メモリセルMCと同様に構成され、メモリセルMCと同様にバイアス電圧が印加されるが、データのプログラムの対象からは除外される。
【0006】
図2は、フラッシュメモリの各動作時に印加されるバイアス電圧の一例を示したテーブルである。読出し動作では、ビット線に或る正の電圧を印加し、選択されたワード線に或る電圧(例えば、0V)を印加し、非選択ワード線に読み出しパス電圧(例えば4.5V)を印加し、選択ゲート線SGD、SGSに正の電圧(例えば4.5V)を印加し、ビット線選択トランジスタTD、ソース線選択トランジスタTSをオンし、共通ソース線に0Vを印加する。ダミーワード線DWLには、例えば、読出しパス電圧と等しい電圧が印加される。プログラム(書込み)動作では、選択されたワード線に高電圧のプログラム電圧Vprog(15〜20V)を印加し、非選択のワード線に中間電位(例えば10V)を印加し、ビット線選択トランジスタTDをオンさせ、ソース線選択トランジスタTSをオフさせ、「0」または「1」のデータに応じた電位をビット線GBLに供給する。ダミーワード線には、例えば、中間電位と等しい電圧が印加される。消去動作では、ブロック内の選択されたワード線に0Vを印加し、Pウエルに高電圧(例えば18V)を印加し、選択ゲート線SGD、SGSをフローティングにする。ダミーワード線DWLには、選択されたワード線と同様に0Vを印加する。これにより、フローティングゲートの電子を基板に引き抜かれ、ブロック単位でのデータ消去が行われる。
【0007】
図3に、従来のフラッシュメモリの消去シーケンスのフローを示す。選択されたブロックのダミーワード線DWL、ワード線WL0〜WL63に0Vが印加され(S100)、次に、ビット線選択トランジスタTDおよびソース線選択トランジスタTSがフローティングにされる(S110)。次に、基板内のPウエルに消去電圧が印加され(S120)、消去のために一定時間経過するのを待つ(S130)。メモリセルMCiおよびダミーメモリセルDMCのコントロールゲートとPウエル間に消去電圧が印加され、フローティングゲート中の電子がFNトンネルによりPウエル中に引き抜かれ、メモリセルMCiおよびダミーメモリセルDMCのしきい値が負にシフトされる。
【0008】
図4は、消去動作時のPウエル、選択トランジスタTD/TS、メモリセルMCおよびダミーメモリセルDMCの電圧遷移を表している。VPWは、Pウエルの電圧、VTD、VTSは、ビット線選択トランジスタTDおよびソース線選択トランジスタTSのゲート電圧である。時刻t0において、ワード線WLおよびダミーワード線DWLには0Vが印加され、ビット線選択トランジスタTDおよびソース線選択トランジスタTSはフローティング状態にされる。時刻t1において、Pウエルへ消去電圧が印加される。例えば、段階的に電圧が大きくなる消去パルスをPウエルへ印加する。消去パルスの印加に応答して、Pウエルの電圧VPWの昇圧が開始される。これと同時に、Pウエルと容量結合した選択トランジスタTD、TSのゲート電圧VTD、VTSが図中の破線に示されるように昇圧される。時刻t2において、Pウエルの電圧VPWが約18Vに昇圧され、時刻t2〜t3の期間において消去に必要な一定時間経過が保たれ(図3のS130)、フローティングゲートからPウエルへ電子が抜き出される。
【0009】
消去が行われる期間t2〜t3において、選択トランジスタTD、TSのゲート電圧VTD、VTSは、Pウエルとの結合比により、一定電位以下になるように設定される。すなわち、図4に示すように、Pウエルの電圧VPWと選択トランジスタTD、TSのゲート電圧VTD、VTSの電位差Vaを一定値以下にしないと、選択トランジスタTD、TSが時間依存性のブレークダウンTDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown:経時絶縁破壊特性)によって破壊されてしまう。TDDBは、トランジスタのゲートに高い電圧が印加されない場合でも、長時間、電圧が印加されているとトランジスタがブレークダウンしてしまう現象である。このため、Va<VPW−TDDBを満足するように、選択トランジスタTD、TSとPウエル間の結合比が設定される。例えば、選択トランジスタTD、TSのゲート電圧VTD、VTSは、約17Vに昇圧され、Va=18V−17V=1Vに設定される。
【0010】
しかしながら、選択トランジスタTD、TSのゲート電圧VTD、VTSが高くなると、これに隣接するダミーメモリセルDMCが選択トランジスタTD、TSの高電圧の影響を受けてしまう。微細化により、選択トランジスタTD、TSとダミーメモリセルDMCとの距離が小さくなると、選択トランジスタTD、TSとの容量結合によってダミーメモリセルDMCが昇圧され、消去時にダミーメモリセルDMCのしきい値が十分に負にシフトされない場合が生じる。ダミーメモリセルDMCのしきい値は、メモリセルMCのしきい値と同じであることが理想的であり、ダミーメモリセルDMCのしきい値が安定化されないと、結果的にメモリセルMCのしきい値分布のバラツキが大きくなったり、あるいは読出し動作やプログラム動作が不安定になってしまう。
【0011】
本発明は、信頼性の高いデータ消去を行うことができる半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る半導体記憶装置の消去方法は、NANDストリングの選択トランジスタのゲートに所定電位を印加し、かつNANDストリングのメモリセルのワード線に所定電位を印加し、NANDストリングが形成された基板領域に第1の時刻に消去電圧を印加し、第1の時刻から一定時間後の第2の時刻に、前記選択トランジスタのゲートをフローティングにする。好ましくは、NANDストリングは、選択トランジスタとメモリセルとの間にダミーメモリセルを含み、第2の時刻から一定時間後の第3の時刻に、ダミーメモリセルのダミーワード線をフローティングにする。好ましくは前記選択トランジスタのゲートは、前記基板領域との容量結合により第1の電位に昇圧され、第1の電位は、前記消去電圧よりも小さい。好ましくは第1の電位は、前記選択トランジスタがTDDBにより破壊しない電圧以上に昇圧される。好ましくはダミーメモリセルのダミーワード線は、前記基板領域との容量結合により第2の電位に昇圧され、第2の電位は、第1の電位よりも小さい。
【0013】
本発明に係る半導体記憶装置は、直列に接続された複数のメモリセル、一方の側のメモリセルをビット線に接続する第1の選択トランジスタ、他方の側のメモリセルをソース線に接続する第2の選択トランジスタを含むNANDストリングが形成されたメモリアレイと、前記メモリアレイからブロックを選択し、選択したブロック内のメモリセルのデータを消去する消去手段とを含み、前記消去手段は、選択されたブロック内の第1および第2の選択トランジスタの選択ゲート線および複数のメモリセルのワード線に所定電圧を印加した後の第1の時刻に、前記選択されたブロックの基板領域に消去電圧を印加し、第1の時刻から一定時間後の第2の時刻に第1および第2の選択トランジスタの選択ゲート線をフローティングにする。好ましくは、NANDストリングは、第1の選択トランジスタとメモリセルとの間に第1のダミーメモリセルを含み、かつ第2の選択トランジスタとメモリセルとの間に第2のダミーメモリセルを含み、前記消去手段は、第2の時刻から一定時間後の第3の時刻に、ダミーメモリセルのダミーワード線をフローティングにする。好ましくは第1および第2の選択トランジスタのゲートは、前記基板領域との容量結合により第1の電位に昇圧され、第1の電位は、前記消去電圧よりも小さい。好ましくは第1の電位は、第1および第2の選択トランジスタがTDDBにより破壊しない電圧以上に昇圧される。好ましくは第1および第2のダミーメモリセルのダミーワード線は、前記基板領域との容量結合により第2の電位に昇圧され、第2の電位は、第1の電位よりも小さい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来のように消去電圧を印加するときに選択トランジスタを容量結合により昇圧させる場合と比べて、選択トランジスタの昇圧電位を抑制することができ、これより、選択トランジスタに隣接するメモリセルへの電界の影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】フラッシュメモリのNANDストリングの構成を示す回路図である。
図2】フラッシュメモリの各動作時に印加される電圧の一例を示す表である。
図3】従来のフラッシュメモリの消去シーケンスを示すフローである。
図4】従来の消去時のPウエル、選択トランジスタ、メモリセル、ダミーメモリセルの各部の電圧遷移を示すグラフである。
図5】本発明の実施例に係るフラッシュメモリの一構成例を示すブロック図である。
図6】本発明の実施例に係るフラッシュメモリの消去シーケンス例を示すフローチャートである。
図7】本実施例の消去時のPウエル、選択トランジスタ、メモリセル、ダミーメモリセルの各部の電圧遷移を示すグラフである。
図8】本実施例のNANDストリングの概略断面図を示す図である。
図9】本実施例のワード線駆動回路の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面は、説明を分かり易くするために各部を強調して示してあり、実際のデバイスのスケールとは異なることに留意すべきである。
【実施例】
【0017】
図5は、本発明の実施例に係るフラッシュメモリの構成を示すブロック図である。但し、ここに示すフラッシュメモリの構成は、例示であって、本発明は、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。
【0018】
本実施例のフラッシュメモリ100は、行列状に配列された複数のメモリセルが形成されたメモリアレイ110と、外部入出力端子I/Oに接続され入出力データを保持する入出力バッファ120と、入出力バッファ120からのアドレスデータを受け取るアドレスレジスタ130と、入出力されるデータを保持するデータレジスタ140、入出力バッファ120からのコマンドデータおよび外部制御信号(図示されないコマンドラッチイネーブル(CLE)信号やアドレスラッチイネーブル(ALE)信号等)に基づき各部を制御する制御信号C1、C2、C3等を供給するコントローラ150と、アドレスレジスタ130からの行アドレス情報Axをデコードしデコード結果に基づきブロックの選択およびワード線の選択等を行うワード線選択回路160と、ワード線選択回路160によって選択されたページから読み出されたデータを保持したり、選択されたページへの書込みデータを保持するページバッファ/センス回路170と、アドレスレジスタ130からの列アドレス情報Ayをデコードし当該デコード結果に基づきページバッファ170内の列データを選択する列選択回路180と、データの読出し、プログラムおよび消去等のために必要な電圧(プログラム電圧Vpgm、パス電圧Vpass、読出しパス電圧Vread、消去電圧Versなど)を生成する内部電圧発生回路190とを含んで構成される。
【0019】
メモリアレイ110は、列方向に配置された複数のブロックBLK(0)、BLK(1)、・・・、BLK(m)を有する。ブロックの一方の端部には、ページバッファ/センス回路170が配置される。但し、ページバッファ/センス回路170は、ブロックの他方の端部、あるいはの両側の端部に配置されるものであってもよい。1つのブロックには、例えば、図1に示すように、複数のメモリセルを直列に接続したNANDストリングユニットNUが複数形成される。
【0020】
メモリセルMCiのコントロールゲートは、ワード線WLiに接続され、ダミーメモリセルDMCのコントロールゲートは、ダミーワード線DWLに接続され、選択トランジスタTD、TSのゲートは、ワード線WL/ダミーワード線DWLと並行する選択ゲート線SGD、SGSに接続される。ワード線選択回路160は、行アドレスAxに基づきブロックの選択、ワード線WL/ダミーワード線DWLの選択を行い、また、選択ゲート信号SGS、SGDを介して選択トランジスタTD、TSを選択的に駆動する。
【0021】
メモリセルは、典型的に、Pウエル内に形成されたN型の拡散領域であるソース/ドレインと、ソース/ドレイン間のチャンネル上に形成されたトンネル酸化膜と、トンネル酸化膜上に形成されたフローティングゲート(電荷蓄積層)と、フローティングゲート上に誘電体膜を介して形成されたコントロールゲートとを含むMOS構造を有する。Pウエルは、例えば、P型のシリコン基板内に形成されたNウエル内に形成される。フローティングゲートに電荷が蓄積されていないとき、つまりデータ「1」が書込まれているとき、しきい値は負状態にあり、メモリセルは、ノーマリオンである。フローティングゲートに電子が蓄積されたとき、つまりデータ「0」が書込まれているとき、しきい値は正にシフトし、メモリセルは、ノーマリオフである。また、メモリセルは、2値データを記憶するものであってもよいし、多値データを記憶するものであってもよい。
【0022】
次に、本実施例のフラッシュメモリの消去動作について説明する。図6は、消去シーケンスを示すフローチャート、図7は、消去時の各部の電圧遷移を示すグラフ、図8は、NANDストリングの概略断面図である。
【0023】
好ましい態様では、コントローラ150は、図示しないホスト側から消去コマンド等を受け取ると、消去動作を実行する。先ず、ワード線選択回路160は、コントローラ150の制御の下で、行アドレス情報Axに基づき消去すべきブロックを選択し、選択したブロック内のメモリセルMCiのワード線WL0〜WL63およびダミーメモリセルDMSのダミーワード線DWLに0Vを印加し(S200)、選択されたブロックのビット線選択トランジスタTDおよびソース線選択トランジスタTSの選択ゲート線SGD、SGSに0Vを印加する(S210)。また、ソース線SLおよびビット線は、フローティングである。ステップS200とステップS210の動作は、同時に行われてもよいし、ステップS210がステップS200よりも先に実行されてもよい。ステップS200およびS210の印加は、図7の時刻t0で実行される。
【0024】
次に、Pウエル200(図8を参照)に、消去電圧Versが印加される(S220)。消去電圧Versは、内部電圧発生回路190によって発生され、図示しない回路によってPウエルに印加される。好ましい態様では、電圧が徐々に大きくなる消去パルスが複数回Pウエルに印加され、Pウエルが消去電圧Versに昇圧される。この消去電圧Versの印加は、図7の時刻t1で開始される。時刻t1のとき、選択ゲート線SGD、SGS、ワード線WLi、ダミーワード線DWLには0Vが印加されているので、ビット線選択トランジスタTD、ソース線選択トランジスタTS、メモリセルMCi、ダミーメモリセルDMCのコントロールゲートは、Pウエルと容量結合されず、0Vに固定されたままである。
【0025】
次に、時刻t1から一定時間経過後の時刻t2で、ビット線選択トランジスタTD、ソース線選択トランジスタTSの選択ゲート線SGD、SGSをオープンし、選択トランジスタTD、TSがフローティングにされる(S230、S240)。これにより、ビット線選択トランジスタTDおよびソース線選択トランジスタTSのゲート210(図8)がPウエル200と容量的に結合され、選択トランジスタTD/TSの昇圧が開始される。図7の破線は、選択トランジスタTD/TSの電圧VTD、VTSが、容量結合によって、Pウエル電圧VPWに比例して上昇することを示している。
【0026】
次に、時刻t2から一定時間経過後の時刻t3で、ダミーメモリセルDMCのダミーワード線DWLをオープンし、ダミーメモリセルDMCがフローティングにされる(S250、S260)。これにより、ダミーメモリセルDMCのコントロールゲート220がPウエル200と容量的に結合され、昇圧を開始される。図7の破線は、ダミーワード線DWLが、容量結合によって、Pウエル電圧VPWに比例して上昇することを示している。次に、Pウエル電圧VPWが消去電圧Versに到達した時刻t4から時刻t5まで消去のために必要な一定時間が経過するのを待ち(S270)、消去シーケンスの一部または全部が終了される。
【0027】
図7に示すように、Pウエル200に消去電圧Vesrが印加された時刻t0のとき、選択トランジスタTD、TSのゲート電圧VTD、VTSは0Vに固定されており、時刻t1から遅延した時刻t2のとき、選択トランジスタTD、TSがフローティングにされる。その結果、選択トランジスタTD/TSがPウエル200と容量結合される時間が遅延され、ゲート電圧VTD、VTSの昇圧電位が抑制される。例えば、ゲート電圧VTD、VTSは、約13V程度に昇圧され、図4に示す従来のときの電圧17Vよりも小さくなる。
【0028】
選択トランジスタTD、TSのゲート電圧VTD、VTSが、従来のように17V程度にまで大きくなると、選択トランジスタTD、TSとの容量結合によってダミーメモリセルDMCのコントロールゲート220が昇圧され、フローティングゲートに一定の電界が生じ、ダミーメモリセルDMCの消去が不十分となり、しきい値が十分に負にシフトされないことがある。ダミーメモリセルDMCは、選択トランジスタTD、TSによるメモリセルMCへの電界の影響を緩和し、メモリセルの過消去または過プログラムを抑制するものであり、ダミーメモリセルDMCのしきい値はメモリセルMCのしきい値と等しいのが理想的であり、このずれが大きくなると、読み出し、プログラム、あるいはベリファイの動作が不安定になる。本実施例では、選択トランジスタTD、TSのゲート電圧VTD、VTSの昇圧を抑制するため、選択トランジスタTD、TSによるダミーメモリセルDMCへの影響が抑制され、ダミーメモリセルDMCのしきい値が十分に負の方向へシフトされるようにすることができる。
【0029】
他方、選択トランジスタTD、TSのゲート電圧VTD、VTSが小さくなり、ゲート電圧VTD、VTSとPウエル電圧VPWの電位差Vaが大きくなりすぎると、Va<VPW−TDDBを満足することができなくなり、選択トランジスタTD、TSがTDDBにより破壊されてしまう。Va=VTW−(VTD、VTS)<VPW−TDDBであるから、(VTD、VTS)>TDDBを満足すればよい。仮に、TDDBが約5Vであれば、ゲート電圧VTD、VTSは、5V以上に昇圧されればよいことになる。
【0030】
ゲート電圧VTD、VTSの昇圧は、選択トランジスタTD、TSをフローティングにする時刻t2によって調整可能である。図7に示すように、選択トランジスタTD、TSが時刻t2よりも遅い時刻t2’でフローティングにした場合、選択トランジスタTD、TSのPウエルとの容量結合する開始時刻が遅れるため、ゲート電圧電圧VTD、VTSの昇圧が抑制され、時刻t2で昇圧されたときよりもV1だけ小さくなる。こうして、選択トランジスタTD、TSをフローティングする時刻を調整することで、TDDBに応じたゲート電圧VTD、VTSの昇圧を設定することができる。
【0031】
さらに本実施例では、時刻t3でダミーワード線DWLを0Vからフローティング状態にすることで、ダミーメモリセルDMCのコントロールゲート220を選択トランジスタTD、TSの昇圧電位よりも小さい一定電位にまで昇圧させることができる。これにより、隣接するメモリセルMC63、MC0が幾分容量的に結合され、メモリセルMC63、MC0のコントロールゲートの電位を若干上昇させることで、メモリセルMC63、MC0が過消去されないようにし、しきい値のばらつきの変動を抑制する。好ましくは、ダミーワード線DWLは、選択トランジスタTD、TSがフローティングにされた後(時刻t2の後)であって、Pウエルの電圧VPWが消去電圧Vers(18V)に到達する前(時刻t3の前)にフローティングにされることが望ましい。これにより、ダミーワード線DWLをPウエルの電圧VPWと比例するよう昇圧させることができる。また、上記したように、ダミーワード線DWLのフローティングを、時刻t3からt3’に遅延させれば、Pウエルと容量結合する開始時刻が遅くなるので、時刻t3のときの昇圧電圧よりもV2だけ低い昇圧電圧になる。
【0032】
このように本実施例では、選択トランジスタTD、TSをフローティング状態にする時刻t2を、消去電圧が印加される時刻t1から遅延させることで、選択トランジスタTD、TSがPウエルと容量結合する開始時刻が遅延され、消去時の選択トランジスタTD、TSの昇圧電位を一定以下に抑制し、ダミーメモリセルDMCへの影響を少なくすることができる。さらに、選択トランジスタTD、TSは、容量結合によってPウエル電圧VPWに比例して昇圧されるため、選択トランジスタTD、TSへの昇圧によるダメージを小さくすることができる。
【0033】
選択トランジスタTD、TSの選択ゲート信号SDG、SGS、ダミーメモリセルDMCのダミーワード線DWLの駆動制御は、ワード線選択回路160によって行われる。ワード線選択回路160は、公知の回路技術、例えばクロック制御あるいは遅延回路等を用いて、選択トランジスタTD、TSやダミーワード線DWLのフローティング時間を、予め決められた設定に基づき正確に制御することが可能である。
【0034】
図9は、ワード線駆動回路の内部構成例を示す図である。同図に示すように、駆動回路162は、選択ゲート線SGD、SGS、ダミーワード線DWL、ワード線WLに、nMOS構造の転送トランジスタM1〜M68を介して所定の電圧を供給する。選択回路164は、転送トランジスタM1〜M68のゲートに選択制御信号を供給し、転送トランジスタM1〜M68のオン、オフを制御する。
【0035】
メモリアレイの選択されたブロックの消去が行われるとき、駆動回路162は、選択ゲート線SGD、SGS、ダミーワード線DWL、ワード線WLに0Vを供給し、選択回路164は、Hレベルの選択制御信号を転送トランジスタM1〜M68に供給し、転送トランジスタM1〜M68をオンさせる。次に、時刻t1のとき、図示しない回路によってPウエル200に消去電圧Versの印加が開始される。次に、時刻t2のとき、選択回路164は、選択ゲート線SGD、SGSに接続された転送トランジスタM1、M68がオフされるようにLレベルの選択制御信号を供給する。次に、時刻t3のとき、選択回路164は、ダミーワード線DWLに接続された転送トランジスタM2、M67がオフされるようにLレベルの選択制御信号を供給する。
【0036】
上記実施例では、NANDストリングが両端側にダミーメモリセルを含む例を示したが、本発明は、必ずしもダミーメモリセルを含まないNANDストリングであってもよい。すなわち、本発明は、ビット線選択トランジスタTDにメモリセルMC63が接続され、ソース線選択トランジスタTSにメモリセルMC0が接続されるNANDストリングにも適用することができる。さらに上記実施例では、Pウエル領域に消去電圧を印加する前に、選択トランジスタTD、TSの選択ゲート線SGD、SGSまたはそのゲートに0Vを印加するようにしたが、選択トランジスタTD、TSは、Pウエルとの容量結合によって昇圧されないような電圧に固定されれば十分である。さらに上記実施例では、P型の半導体基板上にNウエル領域を形成し、Nウエル領域内にPウエル領域を形成したが、これは一例であって、P型半導体基板上にNANDストリングが形成されてもよい。
【0037】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
100:フラッシュメモリ
110:メモリアレイ
120:入出力バッファ
130:アドレスレジスタ
140:データレジスタ
150:コントローラ
160:ワード線選択回路
170:ページバッファ/センス回路
180:列選択回路
190:内部電圧発生回路
BL:ビット線
SL:共通ソース線
TD:ビット線選択トランジスタ
TS:ソース線選択トランジスタ
SGD、SGS:選択ゲート線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9