特許第5805237号(P5805237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5805237
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】荷重検出システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20151015BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20151015BHJP
   A63B 23/04 20060101ALI20151015BHJP
   G01G 19/44 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   A61B5/10 310G
   A61H1/02 R
   A63B23/04 P
   G01G19/44 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-37728(P2014-37728)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-160018(P2015-160018A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2015年5月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503061485
【氏名又は名称】株式会社テック技販
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 和美
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】足立 渡
(72)【発明者】
【氏名】辻内 伸好
【審査官】 野田 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013-226340(JP,A)
【文献】 特開2013-59507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06−5/22
A61H 1/02
A63B 23/04
G01G 19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に設けられたフォースプレートと、
当該左右のフォースプレートを踏んだ際のそれぞれの足の荷重を検出する荷重検出センサと、
前記左右のフォースプレート上を周回するベルトと、
前記左右それぞれのフォースプレートを踏む被験者の足の位置を検出する位置検出手段と、
を備えてなる荷重検出システムにおいて、
前記位置検出手段が、左右のフォースプレートでそれぞれの足の位置を検出するとともに、左右のフォースプレートを一枚のフォースプレートとみなして足の位置を検出できるようにしたことを特徴とする荷重検出システム。
【請求項2】
被験者が歩行状態と走行状態との移行状態を検出する移行検出手段を設け、
前記移行検出手段が、歩行状態から走行状態に移行して以降、左右のフォースプレートを一枚のフォースプレートとみなして足の位置を検出するようにした請求項1に記載の荷重検出システム。
【請求項3】
前記移行検出手段が、所定のタイムサクル内に左右のフォースプレートで1回のみの荷重を検出した場合に、歩行状態から走行状態に移行したとみなすようにしたものである請求項2に記載の荷重検出システム。
【請求項4】
前記移行検出手段が、左右のフォースプレートで同時に荷重を検出しなかった場合に、歩行状態から走行状態に移行したとみなすようにしたものである請求項2に記載の荷重検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の歩行時(走行時も含む)の運動状態を解析できるようにした荷重検出システムに関するものであり、より詳しくは、左右のフォースプレートの境界部分を踏んだ場合であっても、その足の位置や荷重を検出できるようにした荷重検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者の歩行状態を解析できるようにしたシステムとして、図9に示すようなシステムが提案されている。このシステムは、右足が載せられる右側フォースプレート9Rと、左足が載せられる左側フォースプレート9Lと、その左右のフォースプレート9R、9Lのそれぞれの表裏を周回するベルト(図示せず)と、左右のフォースプレート9R、9Lの下方四隅に設けられたロードセル91とを備えてなるものであり、周回するベルト上を歩行することによって、歩行時における左右の足の位置や荷重を検出できるようにしたものである。
【0003】
このようなシステムを用いれば、歩行時における左右の足の位置や荷重を検出することができるようになり、歩行時における歩き方の癖や筋力の偏りなどを判断することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−226340公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような荷重検出システムを用いて歩行時の足の位置や荷重を検出する場合、次のような問題があった。
【0006】
すなわち、従来の荷重検出システムでは、左右のフォースプレートのうち、右側のフォースプレート9Rを右足用、左側のフォースプレート9Lを左足用としているが、このように左右に分離して設けていると、歩行状態から走行状態に移行した場合、図9に示すように、左右のフォースプレートの境界部分を踏んでしまう可能性がある。このため、従来では、このような状態を避けるために、左右のフォースプレート9R、9Lのうち、一方のフォースプレート9Rを幅広に構成して、走行時にその幅広のフォースプレート9R上を走らせるようにしているが、このように左右の幅を変えると歩行時における左右のバランスが悪くなってしまう。また、一方のフォースプレート9Rを幅広くしたとしても、左右のフォースプレート9R、9Lを跨った位置境界を踏む可能性を排除できず、このような場合には、左右のフォースプレート9R、9Lに分けた足の位置や荷重を検出してしまうため、その検出データを捨てざるを得なかった。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたものであり、左右のフォースプレートの境界部分を踏んだ場合であっても、その足の位置や荷重を正確に検出できるようにした荷重検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、左右に設けられたフォースプレートと、当該左右のフォースプレートを踏んだ際のそれぞれの足の荷重を検出する荷重検出センサと、前記左右のフォースプレート上を周回するベルトと、前記荷重検出センサを用いて左右それぞれのフォースプレートを踏む被験者の足の位置を検出する位置検出手段とを備えてなる荷重検出システムにおいて、前記位置検出手段が、左右のフォースプレートでそれぞれの足の位置を検出するとともに、左右のフォースプレートを一枚のフォースプレートとみなして足の位置を検出するようにしたものである。
【0009】
このように構成すれば、左右のフォースプレートのそれぞれに足を付いて歩行する際には、左右のフォースプレートで足の位置や荷重を検出することができるとともに、左右のフォースプレートの境界部分を踏んだ場合については、一枚のフォースプレートとして、その踏んだ位置や荷重を検出することができるようになる。
【0010】
また、このような発明において、歩行状態から走行状態への移行状態を検出する移行検出手段を設け、前記位置検出手段が歩行状態から走行状態への移行を検出した場合、左右のフォースプレートを一枚のフォースプレートとみなして足の位置を検出する。
【0011】
このように構成すれば、ゆっくりと歩行する歩行状態では左右のフォースプレートを踏むことができるため、、左右のフォースプレートでそれぞれの足の位置や荷重を検出することができ、一方、足を踏み外しやすい走行状態では、一枚のフォースプレートとして足の位置やその荷重を検出することができるようになる。
【0012】
さらに、前記移行検出手段が、所定のタイムサイクル内に左右のフォースプレートで1回の荷重を検出した場合に、歩行状態から走行状態に移行したとみなす。
【0013】
すなわち、走行時には片足ずつ着地しながら走行するため、そのタイムサイクル内で足の接地が1回となれば、これを「走行状態への移行」とみなして、その位置や荷重を検出することができるようになる。
【0014】
また、他の実施の移行検出手段として、左右のフォースプレートで同時に荷重を検出しなかった場合に、歩行状態から走行状態に移行したとみなすようにすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、左右に設けられたフォースプレートと、当該左右のフォースプレートを踏んだ際のそれぞれの足の荷重を検出する荷重検出センサと、前記左右のフォースプレート上を周回するベルトと、前記荷重検出センサを用いて左右それぞれのフォースプレートを踏む被験者の足の位置を検出する位置検出手段とを備えてなる荷重検出システムにおいて、前記位置検出手段が、左右のフォースプレートでそれぞれの足の位置を検出するとともに、左右のフォースプレートを一枚のフォースプレートとみなして足の位置を検出するようにしたもので、左右のフォースプレートのそれぞれに足を付いて歩行する際には、左右のフォースプレートで足の位置や荷重を検出することができ、また、左右のフォースプレートの境界部分を踏んだ場合は、一枚のフォースプレートとして、その踏んだ位置や荷重を検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態における荷重検出システムの概略斜視図
図2】同形態における縦長方向の断面概略図
図3図2におけるA−A断面図
図4】同形態における各フォースプレートで足の位置を検出する原理を示す図
図5】歩行状態と走行状態を示す足の接地状態を示す図
図6】同形態における左右のフォースプレートの境界部分を踏んだ状態を示す図
図7】同形態における左右のフォースプレートを一枚のフォースプレートとして足の位置を検出する状態を示す図
図8】同形態における荷重検出システムの機能ブロック図
図9】従来例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態における荷重検出システム1について説明する。
【0018】
この実施の形態における荷重検出システム1は、図1に示すように、右足が載せられる右足用フォースプレート2Rと、左足が載せられる左足用フォースプレート2Lと、これらの右足用フォースプレート2Rや左足用フォースプレート2Lの表裏を周回する無端ベルト4と、これらの右足用フォースプレート2Rや左足用フォースプレート2Lの四隅に設けられた荷重検出センサ5a〜5hを備えて構成され、右足用フォースプレート2Rに載せられた右足の位置や荷重を右足用フォースプレート2Rの荷重検出センサ5a〜5dで検出するとともに、左足用フォースプレート2Lに載せられた左足の位置や荷重を左足用フォースプレート2Lの荷重検出センサ5e〜5hを用いて検出するようにしたものである。そして、特徴的に、被験者が歩行状態から走行状態に移行した場合に、図7に示すように、右足用フォースプレート2Rと左足用フォースプレート2Lを一枚のフォースプレート2とみなして、前後左右全体の荷重検出センサ5a〜5hで足の位置や荷重を検出できるようにしたものである。以下、本実施の形態における荷重検出システム1の構成について詳細に説明する。
【0019】
まず、この荷重検出システム1を構成するフォースプレート2は、左右同じ幅の右足用フォースプレート2Rや左足用フォースプレート2Lから成るものであって、例えば、幅50cm、長さ200cmの金属製プレートなどで構成される。これらフォースプレート2は、枠体内に同一面を構成するように左右に並べて設けられ、それぞれの四隅下方に荷重検出センサ5a〜5hを設けて支持できるようになっている。この荷重検出センサ5a〜5hは、6分力ロードセルなどのようにXYZ軸方向の荷重を検出するとともに、それぞれの軸回りのモーメントを検出できるようになっている。
【0020】
これら右足用フォースプレート2Rや左足用フォースプレート2Lのそれぞれには、表裏に周回する無端ベルト4が設けられる(図2および図3参照)。この無端ベルト4は、フォースプレート2上を被験者が歩行する際に、指定された速度で周回するようになっており、駆動手段40を用いて駆動できるようになっている。この駆動手段40としては、ここでは無端ベルト4の両端にプーリー42を設けるとともに、フォースプレート2の下方に設けられたモーター41を用いてプーリー42を回転させて無端ベルト4を周回させるようになっている。なお、図2においては、フォースプレート2や駆動手段40の側面図を示しているが、これらの駆動手段40は、左右の無端ベルト4に対応してそれぞれ設けられ、図8に示すコンピューター8からの指示に従って駆動する。
【0021】
この無端ベルト4の両外側上方には、図1に示すような手摺部3が設けられる。この手摺部3は、被験者が握って身体を安定させられるようにしたものであって、被験者の身長に合わせた高さ位置に調整できるようになっている。この手摺部3については、単に被験者の体重を支えるだけのものであってもよいし、あるいは、図示しない手摺センサを設けて、人間が転倒しそうになった場合に生じる所定値以上の荷重を検出した場合に、モーター41を停止させるようにしてもよい。
【0022】
このような構成において、この実施の形態では、被験者の足の位置を検出できるような位置検出手段6を設けている。
【0023】
この位置検出手段6としては、図8に示すように、右足位置検出手段6Rや左足位置検出手段6Lや全体位置検出手段6Wが設けられる。このうち、右足位置検出手段6Rや左足位置検出手段6Lは、それぞれ同じ構成を有するものであって、フォースプレート2の前後左右の下方に設けられた荷重検出センサ5a〜5hからの出力値によって被験者の足の位置を検出する。
【0024】
このような荷重検出センサ5a〜5hによって被験者の足の位置を検出する場合の右足位置検出手段6Rや左足位置検出手段6L、全体位置検出手段6Wの検知方法について図4図5を用いて説明する。
【0025】
まず、右足位置検出手段6Rや左足位置検出手段6Lは、無端ベルト4に足を接地させた場合に、それぞれのフォースプレート2における荷重検出センサ5a〜5hにかかる荷重と前後方向のモーメントの釣り合い式<式1>から、前後方向の足の座標位置LFやLRなどを算出する。この釣り合い式は、図4(a)の足の位置を中心とするモーメントの釣り合いを示している。
【0026】
<式1>
PF×LF=PB×LB
L=LF+LB
PF:前方向の2つの荷重検出センサのZ軸方向の荷重合計値
PB:後方向の2つの荷重検出センサのZ軸方向の荷重合計値
LF:足の位置から前方の荷重検出センサまでの距離
LB:足の位置から後方の荷重検出センサまでの距離
L:前後の荷重検出センサの距離
【0027】
これらの数値のうち、PF、PBは、図4(a)に示すように、荷重検出センサ5a〜5hからの出力値であり、Lは前後の荷重検出センサ5a〜5hの距離として既知であるため、これらの値から、それぞれのフォースプレート2における前後方向の足の位置LFやLBを算出することができる。
【0028】
同様に、フォースプレート2上における左右方向の足の位置についても、それぞれのフォースプレート2における荷重検出センサ5a〜5hにかかる荷重と左右方向のモーメントの釣り合い式<式2>から、その左右方向の足の座標位置WRやWLなどを算出することができる。この釣り合い式は、図4(b)の足の位置を中心とするモーメントの釣り合いを示している。
【0029】
<式2>
PL×WL=PR×WR
W=WL+WR
PR:右方向の2つの荷重検出センサのZ軸方向の荷重合計値
PL:左方向の2つの荷重検出センサのZ軸方向の荷重合計値
WR:足の位置から右側の荷重検出センサまでの距離
WL:足の位置から左側の荷重検出センサまでの距離
W:左右の荷重検出センサの距離
【0030】
これらの数値のうち、PR、PLは、図4(b)に示すように、荷重検出センサ5a〜5hからの出力値であり、Wは左右の荷重検出センサ5a〜5hの距離として既知であるため、これらの値から、それぞれのフォースプレート2における左右方向の足の位置WRやWLなどを算出することができる。
【0031】
一方、移行検出手段7は、フォースプレート2を歩行している被験者が走行状態に移行したか否かを検出する。
【0032】
この移行検出手段7として、第一の実施の形態では、片足を踏み出した時刻から再びそのフォースプレートで同じ足を接地させる直前の時刻までを一つのタイムサイクルとし、そのタイムサイクル内に荷重の検出が2回あった場合に「歩行状態」であると判断し、そのタイムサイクル内で荷重の検出が1回のみであった場合に「走行状態」であると判断する。すなわち、歩行時においては、図5(a)に示すように、片足を上げる前にもう片方の足は接地しているため、そのタイムサイクル内での荷重の検出が2回になる。一方、走行時においては、図5(b)に示すように、飛び跳ねるように運動するため、両足が同時に接地することなく、タイムサイクル内での接地状態(荷重検出状態)が1回のみとなる。そこで、そのタイムサイクル内における荷重の検出回数に応じて「歩行状態」であるか「走行状態」であるか否かを判断し、そのタイムサイクル内での荷重の検出が2回から1回に移行したときに「歩行状態から走行状態に移行した」と判断する。
【0033】
また、他の移行検出手段7として、左右のフォースプレート2の荷重検出センサ5a〜5hで同時に荷重を検出することができなかった場合に「歩行状態から走行状態に移行した」と判断することもできる。すなわち、走行状態では飛び跳ねた状態が含まれるため、同時に荷重を検出することができないタイミングが発生する。そこで、このように同時に荷重を検出することができないタイミングが発生した場合に「歩行状態から走行状態に移行した」と判断する。
【0034】
そして、右足位置検出手段6Rや左足位置検出手段6Lは、「歩行状態」である場合に、左右のフォースプレート2において右足や左足の位置を検出するとともに、「走行状態」に移行した場合には、全体位置検出手段6Wによって、左右のフォースプレート2を一枚のフォースプレート2とみなして足の位置を検出する。
【0035】
そして、移行検出手段7で「走行状態」であると判断された場合、図7に示すように、左右のフォースプレート2R、2Lを一枚のフォースプレート2として足の位置を検出するが、このとき、モーメントの釣り合い式<式3>から、前後方向の足の位置LFやLBを算出することができる。
【0036】
<式3>
PF'×LF=PB'×LB
L=LF+LB
PF':左右のフォースプレートにおける前方4つの荷重検出センサのZ軸方向の荷重合計値
PB':左右のフォースプレートにおける後方4つの荷重検出センサのZ軸方向の荷重合計値
LF:足の位置から前方の荷重検出センサまでの距離
LB:足の位置から後方の荷重検出センサまでの距離
L:前後の荷重検出センサの距離
【0037】
これらの数値のうち、PF'やPB'は荷重検出センサ5の出力値であり、Lは前後の荷重検出センサ5の距離として既知であるため、これらの数値から前後方向の足の位置LFやLBなどを算出することができる。
【0038】
また、左右方向の足の位置については、同様にモーメントの釣り合い式で求めることができる。左右のフォースプレート2の境界部分を踏んだ場合(図6の場合)は、次の<式4>を用いて足の位置を算出する。
【0039】
<式4>
PRR'×WRR+PRL'×WRL=PLL'×WLL+PLR'×WLR
|WRR−WRL|=W
|WLL−WLR|=W
WRR+WLL≒2W
PRR':右足用フォースプレートの右2つの荷重検出センサのZ軸方向の荷重合計値
PRL':右足用フォースプレートの左2つの荷重検出センサのZ軸方向の荷重合計値
PLR':左足用フォースプレートの右2つの荷重検出センサのZ軸方向の荷重合計値
PLL':左足用フォースプレートの左2つの荷重検出センサのZ軸方向の荷重合計値
WRR:足の位置から右側フォースプレートの右側の荷重検出センサまでの距離
WRL:足の位置から右側フォースプレートの左側の荷重検出センサまでの距離
WLR:足の位置から左側フォースプレートの右側の荷重検出センサまでの距離
WLL:足の位置から左側フォースプレートの左側の荷重検出センサまでの距離
W:一枚のフォースプレートの左右の荷重検出センサの距離
【0040】
これらの数値のうち、PRR'、PRL'、PLR'、PLL'は荷重検出センサ5a〜5hの出力値であり、Wは同一フォースプレート2R(2L)の左右の荷重検出センサの幅の値として既知であるため、これらの数値から左右方向の足の位置WRR〜WLLなどを算出することができる。
【0041】
このように算出された足の位置情報は荷重検出センサ5a〜5hの出力値である荷重とともにコンピューター8に出力されるが、このとき、足の荷重については、左右で合計8つの荷重検出センサ5a〜5hの検出値のうちXYZ方向の荷重と軸回りのモーメントについてもコンピューター8に出力する。
【0042】
次に、このように構成された荷重検出システム1を用いて歩行状態や走行状態を解析する場合の動作について説明する。
【0043】
まず、被験者の歩行状態や走行状態を解析する場合、被験者に左右のフォースプレート2の上に立ってもらい、その状態で被験者の荷重(体重)を計測する。この被験者の体重の計測は、歩行時や走行時に体重の何パーセントがそれぞれの足にかかっているかなどを判断する際に用いることができる。
【0044】
そして、このように体重を計測した後に、被験者にフォースプレート2上を歩行してもらう。歩行に際しては、コンピューター8によってモーター41の回転速度を比較的低速に設定しておき、左右のフォースプレート2R、2Lを踏み外さないように被験者に歩行してもらう。そして、無端ベルト4の駆動によって歩行者にフォースプレート2R、2L上を歩行してもらい、それぞれのフォースプレート2R、2Lに設けられた荷重検出センサ5a〜5hから出力値を得る。そして、この出力値を用いて<式1>や<式2>によって足の位置情報を計算し、また、その際の右足や左足にかかった荷重とともにコンピューター8に出力する。
【0045】
一方、この被験者の走行状態を解析する場合、コンピューター8から指令を出すことによって無端ベルト4の搬送速度を徐々に上げていく。すると、被験者は歩行状態から走行状態に移行するようになる。このような移行のタイミングは、移行検出手段7によって検知され、片足を踏み出した接地時刻から再びその足を接地させる直前の時刻までの荷重検出が1回になった場合に「走行状態」になったと判断する。もしくは、ある時刻に左右のフォースプレート2で荷重を検出することができなかった場合に「走行状態」に移行したと判断する。
【0046】
このように被験者が走行状態に移行した場合、無端ベルト4の搬送速度や被験者の能力に応じて、千鳥状に足が動いてしまうため、図6に示すように左右のフォースプレート2R、2Lの境界部分を踏んでしまう可能性がある。このため、位置検出手段6(全体位置検出手段6W)では、「走行状態」に移行した場合に、左右のフォースプレート2R、2Lを図7に示すように一枚のフォースプレート2とみなし、<式3>や<式4>を用いて足の位置を算出するとともに、その際の荷重検出センサ5a〜5hの荷重をコンピューター8に出力する。
【0047】
このようにすれば、従来のように左右のフォースプレートの幅を変えることなく被験者の足の位置や荷重などを検出することができるようになるとともに、左右のフォースプレート2R、2Lの境界部分を踏んでしまった場合でも、一枚のフォースプレート2としてその位置や荷重を検出することができる。これにより、被験者がフォースプレート2の位置を気にすることなく走行することができる。
【0048】
このように本実施の形態によれば、左右に設けられたフォースプレート2R、2Lと、当該左右のフォースプレート2R、2Lを踏んだ際のそれぞれの足の荷重を検出する荷重検出センサ5a〜5hと、前記左右のフォースプレート2R、2L上を周回する無端ベルト4と、前記荷重検出センサ5a〜5hを用いて左右それぞれのフォースプレート2R、2Lを踏む被験者の足の位置を検出する位置検出手段6とを備えてなる荷重検出システム1において、前記位置検出手段6が、左右のフォースプレート2R、2Lでそれぞれの足の位置を検出するとともに、左右のフォースプレート2R、2Lを一枚のフォースプレート2とみなして足の位置を検出できるようにしたので、左右両足を同時に接地する歩行状態では左右のフォースプレート2R、2Lでそれぞれの足の位置を検出することができ、片足ずつをフォースプレート2R、2Lに接地する走行状態では一枚のフォースプレート2として足の位置を検出することができるようになる。これにより左右のフォースプレート2R、2Lの境界部分を踏んだ場合であっても、左右に分けて位置や荷重が出力されることがなく、その位置や荷重を正確に検出することができるようになる。
【0049】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく種々の態様で実施することができる。
【0050】
例えば、上記実施の形態では、走行状態に移行したことを検知されて以降、一枚のフォースプレート2として足の位置や荷重などを検出するようにしたが、無端ベルト4の搬送速度によって一枚のフォースプレート2として足の位置や荷重などを検出できるようにしてもよく、あるいは、補助者の目視確認によって走行状態に移行したと判断された場合に、一枚のフォースプレート2として足の位置や荷重などを検出するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、荷重としてXYZ軸方向の荷重やその軸回りのモーメントを出力するようにしたが、Z軸方向のみの荷重を検出値として出力するようにしてもよい。
【0052】
さらに、上記実施の形態でXYZ軸方向の荷重や軸回りのモーメントを出力するようにしているが、フォースプレート2と無端ベルト4が擦れることによって無端ベルト4の移動方向(X方向)に力が加わり、これによって、僅かながらフォースプレート2にZ方向の力が掛かってしまう可能性がある。そこで、より正確にZ方向の荷重を検出して人間の足の位置を検出できるように、X方向の摩擦力を検出し、その値からモーメントに応じたZ方向の力を演算して、Z方向の荷重を修正するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、荷重検出センサ5a〜5hとして6分力ロードセルを用いるようにしたが、荷重を検出できるようにしたものであれば、どのようなセンサを用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、歩行訓練を要する被介護者の歩行解析や、スポーツ選手の歩行もしくは走行解析などに用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・荷重検出システム
2・・・フォースプレート
2R・・・右足用フォースプレート
2L・・・左足用フォースプレート
3・・・手摺部
4・・・無端ベルト
40・・・駆動手段
41・・・モーター
42・・・プーリー
5・・・荷重検出センサ
6・・・位置検出手段
6R・・・右足位置検出手段
6L・・・左足位置検出手段
6W・・・全体位置検出手段
7・・・移行検出手段
8・・・コンピューター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9