(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の処理対象水系は、紙パルプ製造業、自動車工場、半導体製造工業等の各種製造業の工程水、冷却水、ボイラ水、洗浄水、空調用や地域冷暖房システムの温調用冷温水等の各種用排水系を含む。
【0023】
本発明におけるスケールは、各種用排水の水系において発生するカルシウム系スケール、マグネシウム系スケール及びシリカ系スケール等の各種のスケールを包含する。従来、析出を効果的に抑制できなかったシリカ系スケールには、水中のシリカが単独で無定形シリカとして析出する一般的なシリカスケールと、水中のシリカと多価金属イオンが反応して多価金属のケイ酸塩として析出するケイ酸塩スケールが含まれる。ここでケイ酸塩とは、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸鉄、ケイ酸亜鉛など、あらゆる種類の多価金属のケイ酸塩を含む。これらのシリカ系スケールに対して、本発明の水処理用組成物は優れた抑制効果を有する。
【0024】
本発明における、水と接触する金属の腐食とは、処理対象水系に設置された装置、機器や配管に使用された鉄系金属や銅系金属等のうち、水と接触する金属面での腐食を指し、具体的には、熱交換器の通水側、通水配管の内側、水タンクや水槽の内面、水スクラバー内部等の金属腐食が挙げられる。
【0025】
本発明におけるスライムは、各種用排水の水系において発生する微生物やその死骸の集合体、微生物の分泌物とそれにより捕集された懸濁物質や土砂成分の集合体等を包含し、水中に浮遊しているものや機器・配管の水側表面に付着あるいは沈殿しているものを指す。
【0026】
本発明で使用される(イ)成分
は、(B)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテル
であって、アミノ基を有さない化合物、(C)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルの加水分解物、(D)多価アルコール及び/又は多価フェノールとポリグリシジルエーテルの付加反応物
であって、ポリグリシジルエーテルがエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルからなる群から選択される化合物、及び(E)脂肪酸モノアミド
であって一般式(1)で示される化合物から選択される。
【化1】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜22のアルキル基又はアルケニル基、炭素数1〜22のヒドロキシアルケニル基から選択されるか、あるいはR1とR2が一緒になって環状アミドの構成単位となり、R3は炭素数8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸残基である。)
【0027】
本発明で使用される(イ)成分の(A)エチレングリコール以外の多価アルコール及び/又は多価フェノールのエチレンオキシド付加物は、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(=ネオペンチルグリコール)、2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、シクロヘキサン−1,4―ジメタノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、p−キシレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ショ糖、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(=ビスフェノールF)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(=ビスフェノールB)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(=ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(=ビスフェノールAP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(=ビスフェノールS)、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,1,2,2−テトラキシ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等の単独、もしくは、これらの混合物のエチレンオキシド付加物が挙げられる。ここで、スケール抑制効果に影響を及ぼさない範囲で、エチレンオキシドの一部をプロピレンオキシドに代替しても良い。
【0028】
本発明で使用される(イ)成分の(A)エチレングリコール以外の多価アルコール及び/又は多価フェノールのエチレンオキシド付加物におけるエチレンオキシド(EO)の付加モル数は通常1〜30の範囲であるが、好ましくは2〜20の範囲である。
【0029】
本発明で使用される(イ)成分の(A)エチレングリコール以外の多価アルコール及び/又は多価フェノールのエチレンオキシド付加物において十分なスケール抑制効果を得るためには、用いられる多価アルコール及び/又は多価フェノールの分子中に炭素数が大きい疎水基を有さない方が好ましく、具体的には疎水基の炭素数は10以下であることが好ましい。
【0030】
本発明で使用される(イ)成分の(A)エチレングリコール以外の多価アルコール及び/又は多価フェノールのエチレンオキシド付加物のより好ましい例は、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ソルビタン等の3個以上の水酸基を有する多価アルコールのエチレンオキシド付加物から選択される。
【0031】
本発明で使用される(イ)成分の(A)エチレングリコール以外の多価アルコール及び/又は多価フェノールのエチレンオキシド付加物は、一般に市販されているものがそのまま使用できる。例えば、グリセリンのエチレンオキシド付加物は日油(株)よりユニオックスG−450やG−750なる商品名で、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物は日本乳化剤(株)よりTMP−30やTMP−60なる商品名で、ペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物は日本乳化剤(株)よりPNT−40なる商品名で、ネオペンチルグリコールのエチレンオキシド付加物は四日市合成(株)よりNGE−04なる商品名で、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物は、日油(株)よりユニオールDA−400あるいはDA−700なる商品名でそれぞれ市販されている。
【0032】
本発明で使用される(イ)成分の(B)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルは、例えば、多価アルコール及び/又は多価フェノールとエピハロヒドリンの反応により得られる化合物であり、その製造方法は、例えば、特開昭61−178974号公報等に開示されている。ここで用いられる多価アルコール及び/又は多価フェノールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(=ネオペンチルグリコール)、2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、シクロヘキサン−1,4―ジメタノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、p−キシレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ショ糖、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(=ビスフェノールF)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(=ビスフェノールB)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(=ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(=ビスフェノールAP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(=ビスフェノールS)、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,1,2,2−テトラキシ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等の単独、もしくは、これらの混合物が挙げられ、あるいは、それらのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキサイドの付加物であってもよい。また、ここで用いられるエピハロヒドリンは、例えば、エピブロモヒドリン、エピクロロヒドリン、エピヨードヒドリン、β−メチルエピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリン等から選ばれる。
【0033】
本発明で使用される(イ)成分の(B)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルは、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0034】
本発明で使用される(イ)成分の(B)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルの好ましい例は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0035】
本発明で使用される(イ)成分の(B)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルは、一般に市販されているものがそのまま使用できる。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルはナガセケミテックス(株)よりデナコールEX−810(エポキシ当量113)あるいはデナコールEX−811(エポキシ当量132)なる商品名で、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルはナガセケミテックス(株)よりデナコールEX−850(エポキシ当量122)あるいはデナコールEX−851(エポキシ当量150)なる商品名で、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルはナガセケミテックス(株)よりデナコールEX−821(エポキシ当量185)、デナコールEX−830(エポキシ当量268)、デナコールEX−832(エポキシ当量284)、デナコールEX−841(エポキシ当量372)、デナコールEX−861(エポキシ当量551)なる商品名でそれぞれ市販されている。
【0036】
本発明で使用される(イ)成分の(C)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルの加水分解物は、多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルに水とアルカリを加えて加熱することにより得ることができる。ここで用いられる多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルとして、前記の(B)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルとして挙げた化合物を用いることができる。
【0037】
本発明で使用される(イ)成分の(C)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルの加水分解物の好ましい例は、エチレングリコールジグリシジルエーテルの加水分解物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルの加水分解物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの加水分解物である。
【0038】
本発明で使用される(イ)成分の(D)多価アルコール及び/又は多価フェノールとポリグリシジルエーテルの付加反応物で用いられる多価アルコール及び/又は多価フェノールとして、前記の(B)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルの調製に用いられる多価アルコール及び/又は多価フェノールとして挙げた化合物、あるいは、それらの化合物のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの付加物を用いることができ、また、用いられるポリグリシジルエーテルとして、前記の(B)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルとして挙げた化合物が使用できるが、フタル酸ジグリシジルエーテル等の多塩基酸のポリグリシジルエーテルであってもよい。
【0039】
本発明で使用される(イ)成分の(D)多価アルコール及び/又は多価フェノールとポリグリシジルエーテルの付加反応物は、例えば、多価アルコール及び/又は多価フェノールにポリグリシジルエーテルを加え、酸触媒の存在下で30〜200℃に加熱することにより得ることができる。酸触媒としては、例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、ホウフッ化亜鉛、ホウフッ化カリウム、ホウフッ化スズ、塩化アルミニウム、塩化スズ等のルイス酸触媒等が挙げられる。
【0040】
本発明で使用される(イ)成分の(D)多価アルコール及び/又は多価フェノールとポリグリシジルエーテルの付加反応物を調製するための多価アルコール及び/又は多価フェノールとポリグリシジルエーテルの好ましい反応比率は、1モルの多価アルコール及び/又は多価フェノールに対してポリグリシジルエーテルが0.5〜2エポキシ当量の範囲である。この反応比率を外れると十分なスケール抑止性能を得られない場合があり、また、反応生成物がゲル化する場合もあるため好ましくない。
【0041】
本発明で使用される(イ)成分の(D)多価アルコール及び/又は多価フェノールとポリグリシジルエーテルの付加反応物の好ましい例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパンから選択される1種以上とエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテルから選択される1種以上との付加反応物である。
【0042】
本発明で使用される(イ)成分の(E)脂肪酸モノアミドは、脂肪族炭化水素鎖基と1個のカルボン酸基から構成される脂肪酸の1ないし3級アミドであり、脂肪酸は直鎖状又は分枝鎖状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよく、環状アミドであることもできる。
【0043】
本発明で使用される(イ)成分の(E)脂肪酸モノアミドのより好ましい例は、下記の一般式(1)で示される化合物である。
【化1】
(ここでR1およびR2は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜22のアルキル基又はアルケニル基、炭素数1〜22
のヒドロキシアルケニル基から選択されるか、あるいはR1とR2が一緒になって環状アミドの構成単位となり、R3は炭素数8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸残基である。)
【0044】
本発明で使用される(イ)成分の(E)脂肪酸モノアミドにおける好ましい脂肪酸残基は、植物油中や動物油中に存在する脂肪酸の置換又は無置換残基である。該植物油ならびに動物油は、トール油、パーム油、大豆油、綿実油、ヤシ油、とうもろこし油、落花生油、カノラ油、ベニバナ油、ひまわり油、ババス油、ひまし油、あまに油、オリーブ油、桐油、牛脂、豚脂、魚脂等から選ぶことができる。ここで得られた脂肪酸は、通常は異なる炭素数を有する飽和ないし不飽和脂肪酸の混合物である。
【0045】
本発明で使用される(イ)成分の(E)脂肪酸モノアミドの例として、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、パルミトレイン酸アミド、オレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、エルカ酸アミド、ウンデシレン酸アミド、アラキドン酸アミド、バクセン酸アミド、及び植物油脂肪酸や動物油脂肪酸等の飽和ないし不飽和脂肪酸アミド;N−モノメチルオレイン酸アミド、N−モノエチルリノール酸アミド、N−モノイソプロピルステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)ラウリン酸アミド(=ラウリン酸―N−イソプロパノールアミド)、N−(2−ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミド、N−(2−ヒドロキシエチル)リノール酸アミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)ステアリン酸アミド、N−(ヒドロキシオレイル)パルミチン酸アミド、N−(ヒドロキシステアリル)ステアリン酸アミド、N−(ヒドロキシステアリル)オレイン酸アミド、N−(ヒドロキシオレイル)ステアリン酸アミド、N−(ヒドロキシステアリル)エルカ酸アミド、及び植物油脂肪酸や動物油脂肪酸等の飽和ないし不飽和脂肪酸のN−置換アミド;N,N−ジメチルステアリン酸アミド、N,N−ジメチルオレイン酸アミド、N,N−ジメチルリノール酸アミド、N,N−ジメチルリノレン酸アミド、N,N−ジメチルリシノール酸アミド、N,N−ジメチルアラキドン酸アミド、N,N−ジメチルエイコサペンタエン酸アミド、N,N−ジメチルドコサヘキサエン酸アミド、N,N−ジエチルオレイン酸アミド、N,N−ジプロピルオレイン酸アミド、N,N−オレイン酸エチルラウリン酸アミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチルラウリン酸アミド、N−エチル−N−ヒドロキシエチルミリスチン酸アミド、N−エチル−N−ヒドロキシエチルステアリン酸アミド、ラウリン酸―N,N−ジエタノールアミド、オレイン酸―N,N−ジエタノールアミド、リノール酸―N,N−ジエタノールアミド、ステアリン酸―N,N−ジイソプロパノールアミド、N,N−ジ(ヒドロキシオレイル)パルミチン酸アミド、N,N−ジ(ヒドロキシステアリル)ステアリン酸アミド、N,N−ジ(ヒドロキシステアリル)オレイン酸アミド、N,N−ジ(ヒドロキシオレイル)ステアリン酸アミド、N,N−ジ(ヒドロキシステアリル)エルカ酸アミド、及び植物油脂肪酸や動物油脂肪酸等の飽和ないし不飽和脂肪酸のN,N−置換アミド;ドデカノイルモルフォリン、N−ステアラミド−3−メチルピペリジン、N−ステアラミドモルフォリン、N−ステアラミド−3,5−ジメチルピペリジン、1−ヘキサデコイルヘキサヒドロ[1H]アゼピン、ヘキサデコイル−3−メチルピペリジン等の飽和ないし不飽和脂肪酸の環状アミド等が挙げられる。
【0046】
本発明で使用される(イ)成分の(E)脂肪酸モノアミドのより好ましい例は、N,N−ジメチルオレイン酸アミド、N,N−ジメチルリノール酸アミド、N,N−ジメチルリノレン酸アミド、N,N−ジメチルリシノール酸アミド、N,N−ジメチルアラキドン酸アミド、N,N−ジメチルエイコサペンタエン酸アミド、N,N−ジメチルドコサヘキサエン酸アミド、N,N−ジメチルエルカ酸アミド、N,N−ジエチルオレイン酸アミド、N,N−ジプロピルオレイン酸アミド、ラウリン酸―N,N−ジエタノールアミド、オレイン酸―N,N−ジエタノールアミド、及び植物油脂肪酸や動物油脂肪酸等の不飽和脂肪酸のN,N−置換アミドである。
【0047】
本発明で使用される(イ)成分の(E)脂肪酸モノアミドは、公知の技術を用いて適当な脂肪酸とアミンとを反応させることによって製造することができる。例えば、トール油脂肪酸ジメチルアミドの場合は、トール油脂肪酸留分(1.0モル)にやや過剰モル量(1.1モル)のジメチルアミンを混合して反応させる。また、脂肪酸がトリグリセリドとして存在する植物油(例:大豆油、パーム油)の場合には、1.0モルの植物油に3.3モルのジメチルアミンを反応させる。該混合物を密閉容器内で、0.7MPaを超えない圧力下で徐々に170℃に加熱して反応を8時間行う。過剰のアミンは反応中に生成した水相中に除去される。トリグリセリドを含む場合は、過剰のアミンは反応後除去されるグリセリン相中に存在する。前記反応によって生成した水は、蒸留して取り出すか、又は生成物配合に組み込むことができる。脂肪酸のジエタノールアミドの合成法は、例えば、ジエタノールアミンと脂肪酸又は脂肪酸混合物とを1:1モル比で混合し、次にこの混合物を真空下において還流温度で数時間加熱し、水を除去することにより製造される。
【0048】
本発明で使用される(イ)成分の(E)脂肪酸モノアミドは、市販品をそのまま用いることができる。例えば、ラウリン酸アミドはダイヤミッドY、パルミチン酸アミドはダイヤミッドKP、ステアリン酸アミドはダイヤミッドAP−1、ベヘン酸アミドはダイヤミッドBH、ヒドロキシステアリン酸アミドはダイヤミッドKH、オレイン酸アミドはダイヤミッドO−200、エルカ酸アミドはダイヤミッドL−200という商品名でそれぞれ日本化成(株)より市販されている。牛脂脂肪酸ジエタノールアミドはスタホームT、ラウリン酸ジエタノールアミドはスタホームDL、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドはスタホームFならびにDF、オレイン酸ジエタノールアミドはスタホームDO、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドはスタホームMF、ラウリン酸イソプロパノールアミドはスタホームLIPAという商品名でそれぞれ日油(株)より市販されている。また、ヤシ油脂肪酸−N−メチル−N−エタノールアミドは、アミノーンC−11Sという商品名で花王(株)より市販されている。N,N−ジメチルオレイン酸アミドは、日本乳化剤(株)よりテクスノールODM、あるいは日本化成(株)よりニッカアマイドMBO等の商品名でそれぞれ市販されている。トール油脂肪酸のジメチルアミドを含む製品は、バックマンラボラトリーズ(株)よりDMAD、SPI−2400、DMXS、SADA等の商品名でそれぞれ市販されている。
【0049】
本発明で使用される(ロ)成分は、(F)モノエチレン性不飽和カルボン酸の重合体及びその水溶性塩、(G)有機ホスホン酸及びその水溶性塩、(H)ホスホノカルボン酸及びその水溶性塩、及び(I)ホスフィノポリカルボン酸及びその水溶性塩から選択される。
【0050】
本発明で使用される(ロ)成分の(F)モノエチレン性不飽和カルボン酸の重合体及びその水溶性塩は、モノエチレン性不飽和カルボン酸のホモ重合体及びその水溶性塩、2種以上の異なるモノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体及びその水溶性塩、モノエチレン性不飽和カルボン酸の1種以上とカルボン酸基を含まないモノエチレン性不飽和単量体の1種以上との共重合体及びその水溶性塩を含む。
【0051】
ここでモノエチレン性不飽和カルボン酸は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸及びこれらの水溶性塩が挙げられる。
【0052】
また、モノエチレン性不飽和カルボン酸のホモ重合体としては、例えば、アクリル酸重合体、メタクリル酸重合体、マレイン酸重合体、無水マレイン酸重合体の加水分解物、イタコン酸重合体、フマル酸重合体等が挙げられ、2種以上の異なるモノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体としては、アクリル酸とマレイン酸の共重合体、アクリル酸とイタコン酸の共重合体、マレイン酸とイタコン酸の共重合体、マレイン酸とフマル酸の共重合体、アクリル酸とイタコン酸とマレイン酸の三元共重合体、アクリル酸とイタコン酸とフマル酸の三元共重合体等が挙げられる。
【0053】
また、モノエチレン性不飽和カルボン酸の1種以上とカルボン酸基を含まないモノエチレン性不飽和単量体の1種以上との共重合体における、カルボン酸基を含まないモノエチレン性不飽和単量体の例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)アクリレートエステル、スルホアルキル(メタ)アリルエーテル、スルホフェノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸等のモノエチレン性不飽和スルホン酸;ブタジエン、イソプレン、シクロオクタンジエン、シクロペンタンジエン等の共役ジエンのスルホン化物;アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−アルコキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のN−アルキル置換あるいは非置換のアクリルアミド又はメタクリルアミド;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アルコキシポリエチレングリコールアクリレート等のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアクリレート等のヒドロキシ置換アルキルアクリレート又はメタクリレート;アリルグリコ−ル、3−アリロキシ−1,2−プロパンジオール、ポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル等のヒドロキシ置換アリルエーテル;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸エチル等のマレイン酸モノエステルあるいはジエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸エチル等のイタコン酸モノエステルあるいはジエステル;エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテン等の炭素数2〜8のオレフィン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルアルキルエーテル;ビニルアルコール、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、スチレン等が挙げられる。
【0054】
本発明で使用される(ロ)成分の(F)モノエチレン性不飽和カルボン酸の重合体及びその水溶性塩の好ましい例として、アクリル酸重合体、マレイン酸重合体、イタコン酸重合体等のモノエチレン性不飽和カルボン酸のホモ重合体及びその水溶性塩;アクリル酸とマレイン酸の共重合体、アクリル酸とイタコン酸の共重合体、マレイン酸とイタコン酸の共重合体、マレイン酸とフマル酸の共重合体、アクリル酸とイタコン酸とマレイン酸の三元共重合体、アクリル酸とイタコン酸とフマル酸の三元共重合体等の2種以上の異なるモノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体及びその水溶性塩;アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体、アクリル酸と3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸の共重合体、アクリル酸と共役ジエンスルホン化物の共重合体等のアクリル酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸の共重合体及びその水溶性塩;アクリル酸とN,N−ジメチルアクリルアミド共重合体、アクリル酸とアクリロイルモルホリン共重合体、アクリル酸とN−tert−ブチルアクリルアミドの共重合体等のアクリル酸とN−アルキル置換アクリルアミドの共重合体及びその水溶性塩;アクリル酸と2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシ置換アルキルアクリレート又はメタクリレートの共重合体及びその水溶性塩;アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と2−ヒドロキシプロピルアクリレートの共重合体等のアクリル酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸とヒドロキシ置換アルキルアクリレートの共重合体及びその水溶性塩;アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とN−tert−ブチルアクリルアミドの共重合体等のアクリル酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸とN−アルキル置換アクリルアミドの共重合体及びその水溶性塩;アクリル酸とN,N−ジメチルアクリルアミドと2−ヒドロキシプロピルアクリレートの共重合体等のアクリル酸とN−アルキル置換アクリルアミドとヒドロキシ置換アルキルアクリレートの共重合体及びその水溶性塩;アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とビニルアルコールの共重合体等のアクリル酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸とビニルアルコールの共重合体及びその水溶性塩;アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とN−ビニルピロリドンの共重合体等のアクリル酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸とN−ビニルピロリドンの共重合体及びその水溶性塩等が挙げられる。これらの重合体の水溶性塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0055】
本発明で使用される(ロ)成分の(F)モノエチレン性不飽和カルボン酸の重合体及びその水溶性塩は、ラジカル重合法として公知の方法で製造される。すなわち、モノエチレン性不飽和カルボン酸を含むモノマー溶液にアゾ化合物や過酸化物等の重合開始剤を加えて加熱することにより目的の重合体を製造できる。例えばマレイン酸重合体やイタコン酸重合体の製造方法は、特許第2964154号公報、特開2011−45860号公報、特開2011−45861号公報等に開示されている。また、イタコン酸ホモ重合体は、大津隆行、竹本喜一共著の「ビニル重合実験法」(共立出版)(1960)の137〜175頁や特許第3884090号公報などに記載の通常の重合性エチレン性化合物のラジカル重合方法に準じて製造できる。
【0056】
本発明で使用される(ロ)成分の(F)モノエチレン性不飽和カルボン酸の重合体及びその水溶性塩の分子量は、重量平均分子量あるいは数平均分子量として300〜100,000が好ましく、より好ましくは500〜20,000の範囲である。
【0057】
本発明で使用される(ロ)成分の(G)有機ホスホン酸及びその水溶性塩は、分子中に1個以上のホスホノ基を有する有機化合物及びその水溶性塩であり、具体的には1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸及びそれらの水溶性塩等が挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸及びその水溶性塩である。これらの有機ホスホン酸の水溶性塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0058】
本発明で使用される(ロ)成分の(H)ホスホノカルボン酸及びその水溶性塩は、分子中に1個以上のホスホノ基と1個以上のカルボキシル基を有する有機化合物及びその水溶性塩であり、具体的には2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ホスホノポリマレイン酸、ホスホンコハク酸及びそれらの水溶性塩等が挙げられ、好ましくは2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ホスホノポリマレイン酸及びそれらの水溶性塩である。これらのホスホノカルボン酸の水溶性塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0059】
本発明で使用される(ロ)成分の(H)ホスホノカルボン酸及びその水溶性塩は、例えば、中性〜アルカリ性の水性溶媒中で亜リン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸とを遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより製造することができる(例えば、特開平4−334392号公報参照)。また、次亜リン酸とカルボニル化合物やイミン化合物との反応物を反応開始剤の存在下で不飽和カルボン酸と反応させることによっても製造することができる(例えば、特許第3284318号公報参照)。また、ホスホノカルボン酸はローディア社からBRICORR288の商品名、またBWA社からBELCOR585の商品名で市販されている。
【0060】
本発明で使用される(ロ)成分の(I)ホスフィノポリカルボン酸及びその水溶性塩は、分子中に1個以上のホスフィノ基と2個以上のカルボキシル基を有する化合物及びその水溶性塩であり、具体的にはアクリル酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン酸、マレイン酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、マレイン酸とアクリル酸と次亜リン酸を反応させて得られるポリ(2−カルボキシエチル)(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、イタコン酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ[2−カルボキシ−(2−カルボキシメチル)エチル]ホスフィン酸、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と次亜リン酸の反応物等及びそれらの水溶性塩が挙げられ、好ましくはアクリル酸とマレイン酸と次亜リン酸の反応物、イタコン酸とマレイン酸と次亜リン酸の反応物及びそれらの水溶性塩である。これらのホスフィノポリカルボン酸の水溶性塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0061】
本発明で使用される(ロ)成分の(I)ホスフィノポリカルボン酸及びその水溶性塩の調製は、通常、水性溶媒中で次亜リン酸とモノエチレン性不飽和カルボン酸とを遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより行なわれ、例えば特公昭54−29316号公報、特公平5−57992号公報、特公平6−47113号公報等に開示されている。また、ホスフィノポリカルボン酸は、バイオ・ラボ社よりBELCLENE500、BELSPERSE164、BELCLENE400等の商品名で市販されている。
【0062】
本発明で使用される(ロ)成分の最も好ましい例は、マレイン酸重合体、イタコン酸重合体、有機ホスホン酸、及びホスホノカルボン酸から選択される1種以上と、アクリル酸30〜80重量%とモノエチレン性不飽和スルホン酸20〜70重量%の共重合体、アクリル酸30〜80重量%とモノエチレン性不飽和スルホン酸20〜70重量%とヒドロキシ置換アルキルアクリレート1〜40重量%の共重合体、アクリル酸30〜80重量%とモノエチレン性不飽和スルホン酸20〜70重量%とN−アルキル置換アクリルアミド1〜40重量%の共重合体、アクリル酸30〜80重量%とモノエチレン性不飽和スルホン酸20〜70重量%とビニルアルコール1〜40重量%の共重合体、及びアクリル酸30〜80重量%とモノエチレン性不飽和スルホン酸20〜70重量%とN−ビニルピロリドン1〜40重量%の共重合体から選択される1種以上の組み合わせである。
【0063】
本発明の水処理用組成物における(イ)成分と(ロ)成分の配合比率は、重量比として通常は1:99〜70:30の範囲である。この範囲を外れると、付着物に対する十分な抑制効果を示さない場合がある。好ましい(イ)成分と(ロ)成分の配合比率は、重量比として5:95〜50:50の範囲である。
【0064】
本発明の水処理用組成物は、用途に応じてこの技術分野で公知の色々な形態で製造することができる。例えば、水性の溶液、分散液、エマルジョン又は懸濁液、非水溶媒中の分散液又は懸濁液、又は有機溶媒に溶解することによる溶液として液状形態で製造することができる。また、この技術分野で公知の手段を用いて、固体形態で、例えば粉末又は錠剤として調製することもできる。ただし、分散液、エマルジョン又は懸濁液は長期の安定性に問題があり、有機溶媒の使用は排水のCODやBOD等の環境負荷を増大させ、固体形態では処理対象水系に対して連続的に安定して供給するのが困難であるため、いずれも好ましくない。このため、本発明の水処理用組成物は水性の溶液とするのが最も好ましい。
【0065】
本発明の水処理用組成物を水性の溶液として調製する場合、(イ)成分として、(A)エチレングリコール以外の多価アルコール及び/又は多価フェノールのエチレンオキシド付加物、(B)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテル、(C)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルの加水分解物、及び(D)多価アルコール及び/又は多価フェノールとポリグリシジルエーテルの付加反応物から選択される化合物の1種又は2種以上を用いる場合は調製方法に特に制限がなく、(イ)成分と(ロ)成分を水に混合溶解させることによって調製する。混合順序にも制限はないが、通常は、撹拌下の水に(イ)成分と(ロ)成分を投入する。尚、使用する水は、清浄な工業用水、軟化水及び純水などから選択できるが、硬度成分を含有しないという観点から、軟化水や純水が好ましく、更にケイ酸イオンを含有しない点で、純水が最も好ましい。
【0066】
一方、(イ)成分の(E)脂肪酸モノアミドは水に対する溶解度が非常に小さいため、数mg/Lの水溶液は調製できるが、実装置の水系に対して経済的に適用可能な含有量の水性の溶液を得ることは困難であるという問題があった。本発明者らは、この問題の解決法を検討した結果、(イ)成分としての前記一般式(1)に示された脂肪酸モノアミドと(ロ)成分に加えて、(ハ)脂肪酸モノアミドの可溶化剤と(ニ)アルカリ金属の水酸化物を更に加えることにより、経済的に適用可能な配合で、かつ製品安定性に優れた水性の溶液としての本発明の水処理用組成物を調製できることを見出した。
【0067】
本発明で使用される(ハ)成分の、脂肪酸モノアミドの可溶化剤としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸等の炭素数6〜9の芳香族スルホン酸及びその水溶性塩類;1−ヘキサンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸等の炭素数6〜9のアルカンスルホン酸及びその水溶性塩類;ヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ソルビン酸等の炭素数が6〜8の飽和又は不飽和脂肪酸及びその水溶性塩類;安息香酸、サリチル酸、tert−ブチル安息香酸等の炭素数が5〜10の芳香族カルボン酸及びその水溶性塩類;炭素数が18〜36のダイマー酸及びその水溶性塩類;2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジブチルホスフェート、クレジルホスフェート等の炭素数6〜16のリン酸エステル及びその水溶性塩類;オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等の炭素数6〜16のホスホン酸;2−エチルヘキシルイミノジプロピオン酸、2−エチルヘキシルイミノ二酢酸等のアルキルイミノ二酢酸あるいはアルキルイミノジプロピオン酸等の多塩基酸及びその水溶性塩類;1,2,3−ベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、アルキル置換−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ハロ置換−1,2,3−ベンゾトリアゾール誘導体、ハロ置換−1,2,3−メチルベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類;低級脂肪族アルコール、尿素、ニコチンアミド等が挙げられるが、その他に、可溶化剤として公知の化合物が使用可能である。これらの可溶化剤は、2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
本発明で使用される(ハ)成分の、脂肪酸モノアミドの可溶化剤として挙げられたベンゾトリアゾール類は銅や銅合金に対する腐食抑制剤としても公知であり、一般に4−メチルベンゾトリアゾールと5−メチルベンゾトリアゾールの混合物がトリルトリアゾールとして市販されている。
【0069】
本発明で使用される(ハ)成分の、脂肪酸モノアミドの可溶化剤として挙げられたダイマー酸は、2個の不飽和脂肪酸を熱重合して得られる二量体であり、通常は重合した2個の不飽和脂肪酸の合計の炭素数を有し、かつ2個のカルボキシル基を有する化合物である。ここで不飽和脂肪酸としては、例えばトール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、米糠油脂肪酸等の植物由来又は動物由来の不飽和脂肪酸、アクリル酸又はこれらの不飽和脂肪酸のエステル等の炭素数3〜24の不飽和脂肪酸等が用いられる。反応生成物には、主成分のダイマー酸とともに三量体のトリマー酸や単量体のモノマー酸が不純物として共存する。また、反応生成物の分子構造は明確でなく、種々の異性体の混合物としてダイマー酸の名称で一般に市販されている。本発明で使用される(ハ)成分の、脂肪酸モノアミドの可溶化剤としてのダイマー酸は、同種の不飽和脂肪酸を熱重合したもの、異種の不飽和脂肪酸を熱重合したもののいずれであってもよいが、前者の例としては、オレイン酸とリノール酸の熱重合により得られる炭素数36のダイマー酸及び炭素数54のトリマー酸又はこれらの混合物が挙げられ、後者の例としてはオレイン酸、リノール酸等の高級不飽和脂肪酸とアクリル酸を熱重合した化合物が挙げられる。ダイマー酸は、残存する不飽和二重結合に水素添加したものを使用しても良い。
【0070】
本発明で使用される(ハ)成分の、脂肪酸モノアミドの可溶化剤としてのダイマー酸の最も好ましい例は、リノール酸等の高級不飽和脂肪酸とアクリル酸を熱重合したダイマー酸であり、例えばトール油脂肪酸とアクリル酸をヨウ素の存在下で重合した化合物がDIACID 1550(MeadWestvaco社製、ハリマ化成から入手可能)あるいはLATOL 1550(Actrachem社製)なる商品名で市販されている。DIACID 1550の製造方法は、例えば特開昭49−66659号公報等に開示されているが、その組成は主に5−カルボキシ−4−ヘキシル−2−シクロヘキセン−1−オクタン酸と6−カルボキシ−4−ヘキシル−2−シクロヘキセン−1−オクタン酸から構成される炭素数21のダイマー酸が約60〜70%、未反応物の炭素数18の不飽和脂肪酸が約20〜25%、炭素数36のダイマー酸が5〜10%を含むといわれている。
【0071】
本発明で使用される(ハ)成分の、脂肪酸モノアミドの可溶化剤として好ましい例は、2−エチルヘキサン酸、1−オクタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ソルビン酸、クレジルホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、炭素数が18〜36のダイマー酸、1,2,3−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール及びこれらの水溶性塩類である。ここで、クレジルホスフェートはダウ・ケミカル社よりTRITON H−66、TRITON H−55なる商品名で市販されている。
【0072】
本発明で使用される(ハ)成分の、脂肪酸モノアミドの可溶化剤として最も好ましい例は、2−エチルヘキサン酸、1−オクタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ソルビン酸、クレジルホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、炭素数が18〜36のダイマー酸及びこれらの水溶性塩類から選択される1種以上と、1,2,3−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール及びこれらの水溶性塩類から選択される1種以上との組み合わせである。
【0073】
本発明の水処理用組成物中の(ハ)成分の配合量は、用いる(イ)成分としての前記一般式(1)に示された脂肪酸モノアミドの種類によって異なり、常温において透明な水性溶液が得られるのに必要な量である。一般的に、該組成物中における水の配合量が少ないほど(ハ)成分の配合必要量は少なくなる。
【0074】
本発明の水処理用組成物における(ニ)成分のアルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムから選択される1種以上が用いられる。(ニ)成分のアルカリ金属の水酸化物は、本発明の水処理用組成物の製品pHが12以上になるように配合量を調整するのが好ましく、より好ましくはpHが12.5以上になるように調整される。本発明の水処理用組成物の製品pHが12未満の場合は、水性溶液として十分な製品安定性が得られない恐れがある。
【0075】
本発明の水処理用組成物の(イ)成分として前記一般式(1)に示された脂肪酸モノアミドを用いる場合、(ロ)成分に加えて(ハ)成分と(ニ)成分を更に加えることにより、(イ)成分としての前記一般式(1)に示された脂肪酸モノアミドを10重量%程度まで配合する一液の水性溶液を調製することが可能になった。その調製方法には特に制限がなく、(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分及び(ニ)成分を水に混合溶解させることによって調製する。混合順序にも制限はないが、通常は、撹拌下の水に、(ロ)成分、(ハ)成分及び(ニ)成分を投入して混合した後、(イ)成分を投入する。この水処理用組成物の最終製品pHが12.5を下回る場合は、12.5以上になるように(ニ)成分を追加し調製する。尚、使用する水は、清浄な工業用水、軟化水及び純水などから選択できるが、硬度成分を含有しないということから、軟化水や純水が好ましく、更にケイ酸イオンを含有しない点で、純水が最も好ましい。
【0076】
本発明の水処理方法では、前記の(イ)成分と(ロ)成分をそれぞれ別個に処理対象水系に対して添加しても本発明の効果は得られるが、多機能の組成物である本発明の水処理用組成物を単独で処理対象水系に対して添加することにより、複数の各種薬剤を別個に添加する煩雑な薬注管理を無くすことができる。尚、前記の(イ)成分と(ロ)成分をそれぞれ別個に処理対象水系に対して添加する場合も、本発明の水処理用組成物における(イ)成分と(ロ)成分の配合比率と同じく、重量比として通常は1:99〜70:30の添加比率範囲である。この範囲を外れると、付着物に対する十分な抑制効果を示さない場合がある。好ましい(イ)成分と(ロ)成分の添加比率は、重量比として5:95〜50:50の範囲である。
【0077】
本発明の水処理用組成物の添加濃度は、処理対象水系の状況により一定ではないが、通常は処理対象水系水に対して(イ)成分と(ロ)成分の有効成分換算の合計で1〜1000mg/Lの濃度になるように添加され、好ましくは2〜100mg/Lの範囲である。1mg/L未満の添加量では、付着物抑制効果が十分でない場合があり、1000mg/L以上の添加では、添加濃度の増加に見合うだけの付着物抑制効果の向上が見込めないため、経済的でなく、更に、処理対象水系からの排水中のCODが高くなるため好ましくない。
【0078】
本発明の水処理用組成物の添加は、処理対象水系水中で前記の合計有効成分濃度を維持するように通常は薬注ポンプを用いて処理対象水系に連続注入する。前記の合計有効成分濃度を維持できれば、間欠注入も選択できる。
【0079】
処理対象水系水中の水処理用組成物の濃度は、配合されたモノエチレン性不飽和カルボン酸又はリン化合物の水中濃度測定結果から算出する。一般的に、モノエチレン性不飽和カルボン酸濃度は比濁法で測定し、リン化合物濃度は全リン酸濃度と無機リン酸濃度を測定した上で、全リン酸濃度から無機リン酸濃度差し引いて有機リン酸濃度を求め、水処理用組成物の濃度に換算する。
【0080】
本発明の水処理方法では、本発明の水処理用組成物に更にノニオン界面活性剤を併用することにより、付着物抑制効果を向上させる効果を得ることができる。特に(イ)成分の(E)脂肪酸モノアミドとノニオン界面活性剤の併用が好ましい。
【0081】
前記のノニオン界面活性剤としては、下記一般式(
3)で表されるノニオン界面活性剤が好ましい。
【化3】
(式中、R
7は炭素数8〜22、好ましくは10〜18の炭化水素基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、炭化水素基としては1級又は2級の高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミドを原料とするものが挙げられる。−X−は−O−、−COO−、−CONH−等の官能基を表し、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキサイド、n及びmは平均付加モル数を表し、nは3〜20、好ましくは5〜18、mは0〜6、好ましくは0〜3である。R
8は水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基又はアルケニル基から選択され、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基である。また、一般式(
3)において、−X−が−O−かつmが0かつR
8が水素のとき、ノニオン界面活性剤はアルコールエトキシレートであり、この場合において、R
7の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は10〜22、好ましくは10〜20、より好ましくは10〜18である。また、一般式(
3)において−X−が−COO−のとき、ノニオン界面活性剤は脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤である。この場合において、R
7の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は9〜21、好ましくは11〜21である。R
7は不飽和結合を有していてもよい。また、この場合において、R
8は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。)一般式(
3)で表されるノニオン界面活性剤は、随意に1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記ノニオン界面活性剤の具体例としては、例えば、炭素数12〜13の合成アルコールに対して12〜15モルのエチレンオキシドを付加したもの、天然アルコールに12〜15モルのエチレンオキシドを付加したもの、ヘキサノールをガーベット反応に供して得られるC12アルコール1モルに10モル相当のエチレンオキシドを付加したもの(商品名:ISOFOL12−10EO、CONDEA社製)、ラウリン酸メチルエステルに15モル相当のエチレンオキシドを付加したもの、ブテンを3量化して得られるC12アルケンをオキソ法に供して得られるC13アルコールに7モル相当のエチレンオキシドを付加したもの(商品名:Lutensol TO7、BASF社製)、ペンタノールをガーベット反応に供して得られるC10アルコールに7モル相当のエチレンオキシドを付加したもの(商品名 :Lutensol XL70、BASF社製)、ペンタノールをガーベット反応に供して得られるC10アルコールに6モル相当のエチレンオキシドを付加したもの(商品名 :Lutensol XA60、BASF社製)、炭素数12〜14の第2級アルコールに、9モル相当又は15モル相当のエチレンオキシドを付加したもの(商品名:ソフタノール90又はソフタノール150、(株)日本触媒製)、ヤシ脂肪酸メチル(ラウリン酸/ミリスチン酸=8/2)に対してアルコキシル化触媒を用いて15モル相当のエチレンオキシドを付加したもの、ラウリン酸メチルにアルコキシル化触媒を用いて15モル相当のエチレンオキシドと3モル相当のプロピレンオキシドを付加したもの等が挙げられる。又は、ポリオキシエチレン(付加モル数1〜20)ソルビタン脂肪酸(炭素数10〜22)エステル、ポリオキシエチレン(付加モル数1〜20)ソルビット脂肪酸(炭素数10〜22)エステル、ポリオキシエチレン(付加モル数1〜20)グリコール脂肪酸(炭素数10〜22)エステル、グリセリン脂肪酸(炭素数10〜22)エステル、アルキル(炭素数10〜22)グリコシド等が挙げられる。
【0083】
前記ノニオン界面活性剤の処理対象水系に対する添加量は、本発明の水処理用組成物の(イ)成分に対して1/20〜1/2の重量比率が好ましい。この範囲未満では付着物抑制の十分な相乗効果が得られない場合があり、この範囲を超えると添加量の増加に見合うだけの付着物抑制の相乗効果の向上が見込めず、また、処理対象水系水の発泡性が大きくなり好ましくない。尚、前記ノニオン界面活性剤を本発明の水処理用組成物に配合する場合も、その配合量は、該組成物に配合される(イ)成分に対して1/20〜1/2の重量比率が好ましい。
【0084】
本発明の水処理方法では、公知の、腐食抑制剤、微生物障害抑制剤、消泡剤などの化合物を併用して用いても良い。
【0085】
腐食防止剤の例として、ベンゾトリアゾール類、重合リン酸塩、オルトリン酸、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、亜硝酸塩などが挙げられる。処理対象水系中に銅や銅合金が存在する場合は、ベンゾトリアゾール類を併用するのが好ましく、ベンゾトリアゾール類として、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1,2,3−メチルベンゾトリアゾール、アルキル置換−1,2,3−ベンゾトリアゾール 、ハロ置換−1,2,3−ベンゾトリアゾール誘導体、ハロ置換−1,2,3−メチルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0086】
微生物障害抑制剤の例として、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、液化塩素、塩素化イソシアヌル酸類、塩素化ジメチルヒダントイン類等の、水に溶解して次亜塩素酸及び/又は次亜臭素酸を生成する化合物;次亜塩素酸及び/又は次亜臭素酸を生成する化合物とスルファミン酸(塩)との反応物;2−メチルイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−クロロイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−5−クロロイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−ジクロロイソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾリン等の、イソチアゾリン化合物;2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド等の、有機ブロム化合物;メチレンビスチオシアネート、ビス(1,4−ジブロムアセトキシ)−2−ブテン、ベンジルブロムアセテート、ソジウムブロマイド、α−ブロモシンナムアルデヒド、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)亜鉛、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、ビス(トリクロルメチル)スルホン、ジチオカーバメート、3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5,2H−チアジアジン−2−チオン、ブロム酢酸エチルチオフェニルエステル、α−クロ ルベンゾアルドキシムアセテート、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、3−ヨード−2−プロペニルブチルカルバメート、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル及びp−クロル−m−キシレノール等が挙げられる。
【0087】
最も好ましい微生物障害抑制剤は、次亜塩素酸及び/又は次亜臭素酸を生成する化合物であり、遊離残留塩素と遊離残留臭素の合計濃度として0.02〜1.0mg/L(Cl
2換算)になるように処理対象水系水に添加するのが好ましい。
【0088】
また、処理対象水系中に、ステンレス鋼やチタン等の不動態化皮膜を形成する金属が使用されている場合は、スケール付着部における隙間腐食を起因とした孔食や応力腐食割れが発生し易いが、本発明の水処理用組成物を用いて付着物を抑制することにより、炭素鋼、ステンレス鋼、銅合金、チタン等の金属の腐食を間接的に防止することができる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。また、特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0090】
下記の、スケール抑制試験(1)、スケール抑制試験(2)、(イ)成分としての(E)脂肪酸モノアミドを用いた水処理用組成物安定性試験、及び水処理用組成物性能試験に用いた化合物は次の通りである。
【0091】
(実施例
及び参考例に用いた化合物)
(イ)成分の(A)エチレングリコール以外の多価アルコール及び/又は多価フェノールのエチレンオキシド付加物
A−1:ポリオキシエチレングリセリルエーテル(分子量450、EO付加モル数8.1)(商品名:ユニオックスG−450、日油(株)製)
A−2:ペンタエリスリトールポリオキシエチレンエーテル(分子量330、EO付加モル数4.4)(商品名:PNT−40、日本乳化剤(株)製)
A−3:トリメチロールプロパントリポリオキシエチレンエーテル(分子量270、EO付加モル数3.1)(商品名:TMP−30、日本乳化剤(株)製)
【0092】
(イ)成分の(B)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテル
B−1:エチレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量113)(商品名:デナコールEX−810、ナガセケミテックス(株)製)
B−2:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量268)(商品名:デナコールEX−830、ナガセケミテックス(株)製)
【0093】
(イ)成分の(C)多価アルコール及び/又は多価フェノールのポリグリシジルエーテルの加水分解物
C−1: エチレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量132)(商品名:デナコールEX−811、ナガセケミテックス(株)製)と1mol/L−水酸化ナトリウムの1:9混合物を90℃で4時間加熱し、エチレングリコールジグリシジルエーテルの加水分解物C−1を得た。
【0094】
(イ)成分の(D)多価アルコール及び/又は多価フェノールとポリグリシジルエーテルの付加反応物
D−1:1モルのトリエチレングリコールと2エポキシ当量のエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−811)を試験管に加え、触媒としてホウフッ化亜鉛をトリエチレングリコールに対して2%加え、60℃で3時間加熱して、トリエチレングリコールとエチレングリコールジグリシジルエーテルの付加反応物D−1を得た。
D−2:1モルのトリエチレングリコールと2エポキシ当量のエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−811)に代えて、1モルのポリエチレングリコール(平均分子量200)と1エポキシ当量のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量185)(商品名:デナコールEX−821ナガセケミテックス(株)製)を使用した以外はD−1と同様にして、ポリエチレングリコール(平均分子量200)とポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの付加反応物D−2を得た。
【0095】
(イ)成分の(E)脂肪酸モノアミド
E−1:パルミチン酸アミド(商品名:ダイヤミッドKP、日本化成(株)製)
E−2:ステアリン酸アミド(商品名:ダイヤミッドAP−1、日本化成(株)製)
E−3:オレイン酸アミド(商品名:ダイヤミッドO−200、日本化成(株)製)
E−4:エルカ酸アミド(商品名:ダイヤミッドL−200、日本化成(株)製)
E−5:ラウリン酸−N,N−ジエタノールアミド(商品名:スタホームDL、日油(株)製)
E−6:ヤシ脂肪酸−N,N−ジエタノールアミド(商品名:スタホームDF、日油(株)製)
E−7:オレイン酸−N,N−ジエタノールアミド(商品名:スタホームDO、日油(株)製)
E−8:ラウリン酸−N−イソプロパノールアミド(商品名:スタホームLIPA、日油(株)製)
E−9:ヤシ脂肪酸−N−エタノールアミド(商品名:スタホームMF、日油(株)製)
E−10:N,N−ジメチルオレイン酸アミド(商品名:テクスノールODM、日本乳化剤(株)製)
E−11:トール脂肪酸−N,N−ジメチルアミド(50%以上)+脂肪族アルコールエトキシレート(10〜30%)混合物(商品名:DMAD、バックマンラボラトリーズ(株)製)
E−12:トール脂肪酸−N,N−ジメチルアミド(90.1%)+エトキシ化ドデシルフェノール(9.9%)混合物(商品名:SPI−2400、バックマンラボラトリーズ(株)製)
【0096】
(ロ)成分の(F)モノエチレン性不飽和カルボン酸の重合体及びその水溶性塩
F−1:アクリル酸重合体A;アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体〔共重合比(重量)60:40、平均分子量10,000〕
F−2:アクリル酸重合体B;アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とN−tert−ブチルアクリルアミドの共重合体〔共重合比(重量)50:40:10、重量平均分子量10,000〕
F−3:マレイン酸重合体;マレイン酸ホモ重合体(平均分子量500)(商品名:BELCLENE 200LA、BWA社製)
F−4:イタコン酸重合体;イタコン酸ホモ重合体(平均分子量1000)、大津隆行、竹本喜一共著の「ビニル重合実験法」(共立出版)(1960)の137〜175頁記載の方法に準じて製造した。分子量を調整するために適量の連鎖移動剤を加えた。
【0097】
(ロ)成分の(G)有機ホスホン酸及びその水溶性塩
G−1:HEDP;1‐ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(商品名:BELCLENE 660LA、BWA社製)
(ロ)成分の(H)ホスホノカルボン酸及びその水溶性塩
H−1:PBTC;2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(商品名:BELCLENE 650、BWA社製)
(ロ)成分の(I)ホスフィノポリカルボン酸及びその水溶性塩
I−1:ホスフィノポリカルボン酸;アクリル酸−マレイン酸−次亜リン酸(2:1:1)共重合体(平均分子量1500)、特公平6−47113号公報記載の方法に準じて製造した。
【0098】
(ハ)成分
1,2,3−ベンゾトリアゾール(商品名:BELCLENE 510、BWA社製)
トリルトリアゾール(商品名:BELCLENE 511、BWA社製)
キシレンスルホン酸(試薬:m−キシレン−4−スルホン酸n水和物、関東化学(株)製)
1−オクタンスルホン酸(試薬:1−オクタンスルホン酸ナトリウム、関東化学(株)製)
2−エチルヘキサン酸(試薬:関東化学(株)製)
ソルビン酸(試薬:関東化学(株)製)
DIACID 1550(商品名:MeadWestvaco社製);ダイマー酸
TRITON H−66(商品名:ダウ・ケミカル社製);クレジルホスフェート
【0099】
(ニ)成分
水酸化カリウム(試薬:関東化学(株)製)
水酸化ナトリウム(試薬:関東化学(株)製)
【0100】
その他の成分のノニオン界面活性剤
アデカトールLB−83(商品名:(株)ADEKA製);ラウリルアルコールエトキシレート
【0101】
(比較例に用いた化合物)
PEG:ポリエチレングリコール2000(分子量2000)(試薬:東京化成工業(株)製)
PAM:ポリアクリルアミド(分子量10000)(試薬:ポリアクリルアミド,MW10000,50%水溶液、和光純薬工業(株)製)
PEI:ポリエチレンイミン(分子量600)(商品名:エポミンSP−006、(株)日本触媒製)
【0102】
1.スケール抑制試験(1)(実施例
3〜6、参考例1,2,7、比較例1〜4)
メタケイ酸ナトリウム5水和物を水に溶解して調製したシリカ400mg/L含む溶液を、H型強酸性イオン交換樹脂を充填したカラムに通水してオルトケイ酸溶液を調製し、これに塩化カルシウム溶液、硫酸マグネシウム溶液、重炭酸ナトリウム溶液を加えて、カルシウム硬度300mgCaCO
3/L、マグネシウム硬度50mgCaCO
3/L、重炭酸イオン濃度300mgCaCO
3/L、シリカ濃度400mg/Lを含む溶液を調製した。この溶液に、表1に示す(イ)成分の化合物、(ロ)成分の化合物、及びその他の成分の化合物をそれぞれ有効成分換算で表1に示す添加濃度になるように加え、更に、ポリ塩化アルミニウムをAlとして、3mg/L加えて、水酸化ナトリウム溶液でpHを8.7に調整して試験液とした。尚、比較例4の「無添加」は(イ)成分、(ロ)成分、及びその他の成分の化合物を何も添加しなかった例である。試験液を50℃で5日間静置した後、試験液をNo.6定量用濾紙で濾過し、残留シリカ濃度と残留カルシウム硬度を測定した。残留シリカ濃度、残留カルシウム(Ca)硬度の値が高いほどスケール抑制効果が高い。ここで、残留シリカ濃度は以下の方法により測定した。また、残留カルシウム硬度はJIS K0101:1998の15.2.1項に規定されたキレート滴定法により測定した。試験結果を表1に示した。
[残留シリカ濃度測定方法]
試験液1mLをフッ素樹脂製丸底試験管に入れ、1mol/Lの水酸化ナトリウムを2mL加えた後、110℃に加温したホットブロックで20分間加熱した。次いで、1mol/L塩酸を2mL加え、試験管を20℃まで冷却後、JIS K0101のモリブデン黄法によりシリカ濃度を測定した。ここで測定される残留シリカ濃度はオルトケイ酸、オルトケイ酸イオン、ポリケイ酸イオン等の溶解性シリカとコロイダルシリカの合計濃度である。
【0103】
【表1】
【0104】
表1の結果によれば、本発明の、シリカ系スケールの抑制効果を有する(イ)成分とカルシウム系スケールの抑制効果を有する(ロ)成分を併用した場合のスケール抑制効果は、従来のシリカ系スケールの抑制剤として知られているPEG、PAM、PEIとカルシウム系スケールの抑制効果を有する(ロ)成分を併用した比較例のスケール抑制効果に比べて明らかに優れており、水中にアルミニウムイオンが存在する厳しい条件下においても、(イ)成分と(ロ)成分の併用による本発明の優れたスケール抑制効果が示された。
【0105】
2.スケール抑制試験(2)(実施例
12〜20、24〜26、参考例8〜11、21〜23、27〜30、比較例5〜29)
メタケイ酸ナトリウム5水和物を水に溶解して調製したシリカ400mg/L含む溶液を、H型強酸性イオン交換樹脂を充填したカラムに通水してオルトケイ酸溶液を調製し、これに塩化カルシウム溶液、硫酸マグネシウム溶液、重炭酸ナトリウム溶液を加えて、カルシウム硬度300mgCaCO
3/L、マグネシウム硬度50mgCaCO
3/L、重炭酸イオン濃度300mgCaCO
3/L、シリカ濃度400mg/Lを含む溶液を調製した。この溶液に、表2に示す(イ)成分の化合物、(ロ)成分の化合物、及びその他の成分の化合物をそれぞれ有効成分換算で表2に示す添加濃度になるように加え、水酸化ナトリウム溶液でpHを9.0に調整して試験液とした。尚、ポリ塩化アルミニウムは加えなかった。比較例29の「無添加」は(イ)成分、(ロ)成分、及びその他の成分の化合物を何も添加しなかった例である。試験液を50℃で5日間静置した後、試験液をNo.6定量用濾紙で濾過し、残留シリカ濃度と残留カルシウム硬度を測定した。残留シリカ濃度、残留カルシウム(Ca)硬度の値が高いほどスケール抑制効果が高い。ここで、残留シリカ濃度は以下の方法により測定した。また、残留カルシウム硬度はJIS K0101:1998の15.2.1項に規定されたキレート滴定法により測定した。試験結果を表2に示した。
[残留シリカ濃度測定方法]
試験液1mLをフッ素樹脂製丸底試験管に入れ、1mol/Lの水酸化ナトリウムを2mL加えた後、110℃に加温したホットブロックで20分間加熱した。次いで、1mol/L塩酸を2mL加え、試験管を20℃まで冷却後、JIS K0101のモリブデン黄法によりシリカ濃度を測定した。ここで測定される残留シリカ濃度はオルトケイ酸、オルトケイ酸イオン、ポリケイ酸イオン等の溶解性シリカとコロイダルシリカの合計濃度である。
【0106】
【表2】
【0107】
表2の結果によれば、本発明の(イ)成分と(ロ)成分を併用した実施例のスケール抑制効果は、(イ)成分又は(ロ)成分を単独使用する比較例のスケール抑制効果に比べて明らかに優れており、また、単独使用の結果から想定される(イ)成分と(ロ)成分の相加効果よりも優れていることから、本発明の(イ)成分と(ロ)成分の併用による特異なスケール抑制の相乗効果が示された。
【0108】
3.(イ)成分としての(E)脂肪酸モノアミドを用いた水処理用組成物安定性試験(組成物1〜14)
本発明の実施例
及び参考例として、表3に示した組成の水処理用組成物を調製した。これらの水処理用組成物の最終製品pHは12.5以上に調整した。一方、比較例として、表3の水処理用組成物1〜6において(ハ)成分を配合しない組成物、水処理用組成物1〜6において水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの量を減じて最終製品pHを11.5に調整した組成物、水処理用組成物3において炭素数8の2−エチルヘキサン酸を炭素数10のカプリン酸に置き換えた組成物、水処理用組成物3において炭素数8の2−エチルヘキサン酸を炭素数12のラウリン酸に置き換えた組成物、水処理用組成物5において炭素数8の1−オクタンスルホン酸を炭素数10の1−デカンスルホン酸に置き換えた組成物、水処理用組成物5において炭素数8の1−オクタンスルホン酸を炭素数12の1−ドデカンスルホン酸に置き換えた組成物を調製した。調製した各水処理用組成物の試料100mLをポリビンに入れ、密栓して室温にて30日間静置した後、目視にて濁り、沈殿、分離等の有無を調べた。
【0109】
【表3】
【0110】
本発明の実施例である水処理用組成物
8、9、11〜13及び参考例である水処理用組成物1〜7、10、14では、30日間室温静置後も試料に濁り、沈殿、分離は認められなかった。一方、比較例として調製した水処理用組成物の試料では、いずれも相分離が確認された。この結果から、本発明の水処理用組成物の(イ)成分として(E)脂肪酸モノアミドを用いる場合、(ハ)成分である脂肪酸モノアミドの可溶化剤と(ニ)成分であるアルカリ金属の水酸化物を加えることにより、安定な一液の水性溶液を調製できることが示された。
【0111】
4.水処理用組成物性能試験
試験装置ならびに試験方法はJIS G0593−2002『水処理剤の腐食及びスケール防止評価試験方法』のオンサイト試験法に準拠した。
(試験装置)
図1に示した試験装置を使用した。冷却水は水槽2に保有され、循環ポンプ3によって循環水として熱交換器7に送出される。その循環水量は流量計6によって計測され、流量調整バルブ5によって適正に調整される。熱交換器7において熱交換し昇温した循環水は、試験片保持器8を通過後、冷却塔1によって冷却され、水槽2に戻る。循環水の戻り水温は、水温制御装置9による冷却塔1のファン稼働の調整によって適正に維持される。一方、電気伝導率測定セル4によって測定された冷却水の電気伝導率の信号は電気伝導率制御装置11に入力され、その信号に基づいて予め設定された冷却水の電気伝導率範囲に収まるようにブローダウンポンプ10を稼働させる。ブロー開始に伴う水槽2の水位の低下に対応して補給水12が水槽2に供給され、その結果、冷却水の濃縮度が所定の範囲に維持される。また、ブロー開始と同時に水処理剤注入装置13を稼働させ、冷却水系の水処理剤濃度を適正に維持する。
【0112】
(試験条件)
(1)熱交換器7に装着する試験用伝熱管(外径12.7mm、長さ510mm)
炭素鋼鋼管STKM11A(JIS G3445)とアルミニウム黄銅C6871(JIS H3300)の管を使用した。
(2)熱交換器7の熱流束:70kW/m
2
(3)水槽2及び配管を含む系全体の保有水量:62L
(4)循環水量:210L/h(試験用伝熱管評価部の線流速0.3m/sに相当)
(5)冷却塔1の冷却能力:1.8冷却トン(誘引通風向流接触型)
(6)冷却塔入口・出口の循環水の温度差:15℃
(7)蒸発水量:4.4L/h
(8)補給水量:5.5L/h
(9)ブローダウン水量:1.1L/h
(10)濃縮度:5倍
(11)試験期間:1ヶ月
【0113】
(試験方法)
補給水12として四日市市水にメタケイ酸ナトリウムを加えてシリカ濃度を調整し、硫酸を加えてpHを調整した水を用いた。補給水の水質はpH:8、電気伝導率:260μS/cm、Ca硬度:33mg−CaCO
3/L、Mg硬度:8mg−CaCO
3/L、Mアルカリ度:46mg−CaCO
3/L、塩化物イオン:8mg/L、硫酸イオン:50mg/L、シリカ:48mg/Lであった。
初期処理として水槽2にこの補給水を張り込み、そこに、保有水量に対して下記の被試験用組成物を200mg/L、及びヘキサメタリン酸ソーダ(平均縮合度40)を12.5mg/L添加し、常温で48時間循環した。その後、熱負荷を開始し、熱負荷開始3日後に濃縮度が5倍に達したので、直ちにブローダウンを開始して濃縮度5倍を維持した。ブローダウン開始と同時に、ブローダウン量に対して下記の被試験用組成物を60mg/Lの組成物濃度になるように水処理剤注入装置13により添加した。また、循環水中のアルミニウム濃度が2mg/Lになるように、ポリ塩化アルミニウム溶液を
図1に図示しない定量ポンプを用いて水槽2に連続添加した。
濃縮度(N)は、循環水と補給水のカルシウム硬度の濃度比から算出した。また、循環水の計算シリカ濃度が240mg/Lになるように循環水の水質を維持した。ここで計算シリカ濃度(S
C:mg/L)とは、循環水の濃縮度(N)と補給水中のシリカ濃度(S:mg/L)の積(N×S)で定義され、実質的に循環水系に含まれているシリカ濃度である。
【0114】
(被試験用組成物)
(1)実施例
・参考例:表3に示された組成物5、7〜9、14、及び下記表4に示された組成物15
(2)比較例:下記表4に示された組成物16〜21
【0115】
【表4】
【0116】
試験終了後、熱交換器7から試験用伝熱管を取り外して、炭素鋼鋼管の腐食速度(平均値)及びアルミニウム黄銅管のスケール付着速度を測定した。また冷水塔1のスライム付着状況を目視観察した。腐食速度、スケール付着速度は、値が小さいほど腐食抑制効果、スケール抑制効果が高い。結果を表5に示した。尚、比較例36の「無添加」は組成物を何も添加しなかった例である。
【0117】
【表5】
【0118】
表5の結果によれば、本発明の水処理用組成物は、(イ)成分又は(ロ)成分を含有しない比較例の組成物に比べて、スケール抑制効果、腐食抑制効果、スライム抑制効果のいずれも優れており、(イ)成分と(ロ)成分を有効成分として含む本発明の水処理用組成物が、1個の組成物の添加によって、スケール生成を抑制すると共に、水と接触する金属の腐食をも抑制し、更にスライムの発生も抑制できる多機能の組成物であることが明らかになった。
【課題】各種用排水の水系において、シリカ系スケールを含むスケール生成を抑制すると共に、水と接触する金属の腐食をも抑制し、更にスライム発生の抑制効果も有する多機能の水処理用組成物及び水処理方法を提供する。
【解決手段】特定の多価アルコール及び/又は多価フェノールの誘導体や脂肪酸モノアミドから選択される1種又は2種以上と、モノエチレン性不飽和カルボン酸の重合体や有機リン系化合物から選択される1種又は2種以上とを含有する水処理用組成物及び水処理方法。