特許第5805304号(P5805304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5805304
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】ゴム状重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 13/06 20060101AFI20151015BHJP
   C08F 6/00 20060101ALI20151015BHJP
   C08C 2/06 20060101ALI20151015BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20151015BHJP
【FI】
   B29B13/06
   C08F6/00
   C08C2/06
   B29K21:00
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-507794(P2014-507794)
(86)(22)【出願日】2013年3月21日
(86)【国際出願番号】JP2013058079
(87)【国際公開番号】WO2013146530
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-69570(P2012-69570)
(32)【優先日】2012年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中原 立登
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏志
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−198137(JP,A)
【文献】 特開平01−225513(JP,A)
【文献】 特表2006−526527(JP,A)
【文献】 特表2008−509831(JP,A)
【文献】 特開昭58−204002(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/054788(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/054525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 13/06
C08C 2/06
C08F 6/00
B29K 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出口に開口を具備するダイが設けられているエキスパンジョン型押出乾燥機を用いて、ゴム状重合体を押し出し乾燥する押出乾燥工程と、
前記押出乾燥工程に続いて、熱風乾燥機を用いて、前記ゴム状重合体を熱風乾燥する熱風乾燥工程と、
を有する、ゴム状重合体の製造方法であって、
前記エキスパンジョン型押出乾燥機の入口における前記ゴム状重合体の含水率が6〜25質量%であり、
前記エキスパンジョン型押出乾燥機のゴム状重合体処理量(F)を、前記ダイの開口面積(S)で除して得られるダイ流速F/Sが1〜15kg/hr/mm2であり、
前記エキスパンジョン型押出乾燥機の出口のダイの総辺長を開口面積で除して得られるダイ形状係数が1.3〜4.0mm-1であり、
前記ダイの開口部に外接する円の直径が、7mm以上であり、
前記エキスパンジョン型押出乾燥機の出口における、前記ゴム状重合体の含水率が、前記エキスパンジョン型押出乾燥機の入口における前記ゴム状重合体の含水率の20〜70%である、ゴム状重合体の製造方法。
【請求項2】
前記熱風乾燥機が振動コンベアー型熱風乾燥機である、請求項1に記載のゴム状重合体の製造方法。
【請求項3】
前記エキスパンジョン型押出乾燥機の出口のダイが、矩形又は矩形を複数個組み合わせた形状を有する、請求項1又は2に記載のゴム状重合体の製造方法。
【請求項4】
前記ダイ形状係数が1.3〜3.0mm-1である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のゴム状重合体の製造方法。
【請求項5】
前記押出乾燥工程の前工程として、
ゴム状重合体の溶液から溶剤をスチームストリッピングにより除去する脱溶媒工程と、
ゴム状重合体のスラリーからストリッピング水と分離して含水ゴム状重合体を得るスクリーニング工程と、
を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴム状重合体の製造方法。
【請求項6】
前記ゴム状重合体が、水素化されていないポリブタジエン又はブタジエン−スチレン共重合体である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のゴム状重合体の製造方法。
【請求項7】
前記ゴム状重合体が、100℃におけるムーニー粘度が30〜120であり、
MSR(ムーニーストレスリラクゼーション)が0.15〜0.5である分岐ゴム状重合体である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のゴム状重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム状重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、含水ゴム状重合体を乾燥させる方法に関しては、エキスパンジョン型押出乾燥機を用いて乾燥処理を行う方法が知られており、乾燥効率を高めるための方法についても提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−330404号公報
【特許文献2】国際公開第06/054525号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、含水ゴム状重合体の乾燥方法として、従来のエキスパンジョン型押出乾燥機を用いた乾燥工程を実施すると、エキスパンジョン型押出乾燥機の出口において粉状のゴム状重合体が飛散し、乾燥ゴム状重合体の収率が低下したり、粉状のゴム状重合体がエキスパンジョン型押出乾燥機に付着して長時間滞留したゴム状重合体が最終的に目的とする製品に混入したり、粉状のゴム状重合体同士が固まって、後工程である熱風乾燥工程での乾燥が十分に行われず、含水率にバラつきが生じたり、粉状のゴム状重合体がダクトで堆積することにより火災が発生したりする等、種々の問題がある。かかる問題は、特に分岐状ゴム状重合体において顕著であり、その解決が重要な課題となっている。
【0005】
そこで本発明においては、ゴム状重合体の製造方法において、エキスパンジョン型押出機を用いた押出乾燥工程の条件を改善することにより、粉状のゴム状重合体が飛散せず、かつ高収率で工業的に安定してゴム状重合体の製品が得られる、ゴム状重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記従来の課題を解決するため、エキスパンジョン型押出乾燥機を用いた押出乾燥工程の条件を検討し、エキスパンジョン型押出乾燥機の入口におけるゴム状重合体の含水率、ダイ流速を特定の範囲とし、出口のダイ形状を特定の形状とし、入口及び出口におけるゴム状重合体の含水率が所定の条件を満たすようにすることにより、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0007】
〔1〕
出口に開口を具備するダイが設けられているエキスパンジョン型押出乾燥機を用いて、ゴム状重合体を押し出し乾燥する押出乾燥工程と、
前記押出乾燥工程に続いて、熱風乾燥機を用いて、前記ゴム状重合体を熱風乾燥する熱風乾燥工程と、
を有する、ゴム状重合体の製造方法であって、
前記エキスパンジョン型押出乾燥機の入口における前記ゴム状重合体の含水率が6〜25質量%であり、
前記エキスパンジョン型押出乾燥機のゴム状重合体処理量(F)を、前記ダイの開口面積(S)で除して得られるダイ流速F/Sが1〜15kg/hr/mm2であり、
前記エキスパンジョン型押出乾燥機の出口のダイの総辺長を開口面積で除して得られるダイ形状係数が1.3〜4.0mm-1であり、
前記ダイの開口部に外接する円の直径が、7mm以上であり、
前記エキスパンジョン型押出乾燥機の出口における、前記ゴム状重合体の含水率が、前記エキスパンジョン型押出乾燥機の入口における前記ゴム状重合体の含水率の20〜70%である、ゴム状重合体の製造方法。
〔2〕
前記熱風乾燥機が振動コンベアー型熱風乾燥機である、前項〔1〕に記載のゴム状重合体の製造方法。
〔3〕
前記エキスパンジョン型押出乾燥機の出口のダイが、矩形又は矩形を複数個組み合わせた形状を有する、前項〔1〕又は〔2〕に記載のゴム状重合体の製造方法。
〔4〕
前記ダイ形状係数が1.3〜3.0mm-1である、前項〔1〕乃至〔3〕のいずれか一項に記載のゴム状重合体の製造方法。
〔5〕
前記押出乾燥工程の前工程として、
ゴム状重合体の溶液から溶剤をスチームストリッピングにより除去する脱溶媒工程と、
ゴム状重合体のスラリーからストリッピング水と分離して含水ゴム状重合体を得るスクリーニング工程と、
を有する、前項〔1〕乃至〔4〕のいずれか一項に記載のゴム状重合体の製造方法。
〔6〕
前記ゴム状重合体が、水素化されていないポリブタジエン又はブタジエン−スチレン共重合体である、前項〔1〕乃至〔5〕のいずれか一項に記載のゴム状重合体の製造方法。
〔7〕
前記ゴム状重合体が、100℃におけるムーニー粘度が30〜120であり、
MSR(ムーニーストレスリラクゼーション)が0.15〜0.5である分岐ゴム状重合体である、前項〔1〕乃至〔6〕のいずれか一項に記載のゴム状重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゴム状重合体の製造方法によれば、連続的形状のゴム状重合体が得られ、粉状のゴム状重合体の発生を抑制でき、エキスパンジョン型押出乾燥機による押出乾燥工程後の熱風乾燥工程における乾燥効率が高められ、乾燥ゴム状重合体の収率の向上が図られ、さらには、長時間の安定及び安全な運転が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のゴム状重合体の製造方法の一例の概略説明図を示す。
図2】クロス型ダイの開口部の平面図を示す。
図3】Y型ダイの開口部の平面図を示す。
図4】矩形型ダイの開口部の平面図を示す。
図5】星型ダイの開口部の平面図を示す。
図6】丸型ダイの開口部の平面図を示す。
図7】連続形状ゴムのイメージ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、図を参照して詳細に説明する。本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
各図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、各図面に示す位置関係に基づくものとし、さらに図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0011】
〔ゴム状重合体の製造方法〕
本実施形態のゴム状重合体の製造方法は、
出口に開口を具備するダイが設けられているエキスパンジョン型押出乾燥機を用いて、ゴム状重合体を押し出し乾燥する押出乾燥工程と、
前記押出乾燥工程に続いて、熱風乾燥機を用いて、前記ゴム状重合体を熱風乾燥する熱風乾燥工程と、
を有する。
前記エキスパンジョン型押出乾燥機の入口における前記ゴム状重合体の含水率が6〜25質量%であるものとし、
前記エキスパンジョン型押出乾燥機のゴム状重合体の処理量(F)を前記ダイの開口面積(S)で除して得られるダイ流速F/Sが1〜15kg/hr/mm2であるものとし、
前記エキスパンジョン型押出乾燥機の出口のダイの総辺長を開口面積(S)で除して得られるダイ形状係数が1.0〜4.0mm-1であり、
前記エキスパンジョン型押出乾燥機の出口における、前記ゴム状重合体の含水率が、前記エキスパンジョン型押出乾燥機の入口における前記ゴム状重合体の含水率の20〜70%であるものとする。
【0012】
図1にゴム状重合体の製造方法の一例の概略説明図を示す。
ゴム状重合体の含水クラム1を、例えばスクリュー圧縮絞り機2にフィードし、所定の脱水処理を行った後、本実施形態においては、エキスパンジョン型押出乾燥機3にフィードし、押出乾燥工程を経た後、熱風乾燥機4に供給し、熱風乾燥工程を行い、目的とする低含水率のゴム状重合体5を得る。
以下、本実施形態のゴム状重合体の製造方法について詳細に説明する。
【0013】
(ゴム状重合体)
本実施形態のゴム状重合体の製造方法において用いる、水分を含有するゴム状重合体(以下、単にゴム状重合体、クラムと記載することがある。)としては、特に限定されるものではないが、例えば、溶液重合、スラリー重合等の方法で得られるゴム状重合体溶液の溶剤をスチームストリッピングで分離除去した後、スクリーンにより、ストリッピング水と分離して含水クラムを取り出し、含水クラム(クラム形状のゴム状重合体)を、必要により、ロール、スクリュー圧縮絞り機等で脱水した、水分を含有するゴム状重合体等が挙げられる。
【0014】
前記水分を含有するゴム状重合体であって、エキスパンジョン型押出乾燥機の入口におけるゴム状重合体の含水率は6〜25質量%であり、7〜20質量%であることが好ましく、8〜18質量%であることがより好ましい。
本実施形態のゴム状重合体の製造方法においては、当該水分を含有するゴム状重合体を、先ず、エキスパンジョン型押出乾燥機に投入し、押出乾燥処理を行う。
エキスパンジョン型押出乾燥機の入口におけるゴム状重合体の含水率を上記範囲とすることにより、粉状のゴム状重合体の飛散を防止でき、高収率で工業的に安定してゴム製品が得られる。
【0015】
前記ゴム状重合体としては、室温でゴム状を呈する重合体であればよく、特に限定されるものではない。例えば、共役ジエン化合物を単独で、又は共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とを、炭化水素溶媒中で重合又は共重合して得られる共役ジエン系ゴム状重合体が挙げられる。具体的には、ポリブタジエン又はブタジエン−スチレン共重合体又はその水素化物が挙げられる。これらはランダム及びブロック共重合体のいずれの構成を具備していてもよい。
ブロック共重合体としては、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
また、ゴム状重合体は、エチレン、プロピレン及びその他のα−オレフィン化合物、さらに必要に応じて架橋用非共役ジエン単量体を加えて共重合して得られるオレフィン系ゴム状重合体であってもよい。例えば、イソブテン及びイソプレンを共重合して得られるブチルゴム系重合体等が挙げられる。
なお、前記ゴム状重合体を溶液重合で得た場合は、一般的に不純物である有機・無機の低分子化合物、すなわち開始剤残渣、乳化剤等の含有量が少ない傾向がある。一方において、ゴム状重合体を乳化重合で得た場合は、一般的に不純物である有機・無機の低分子化合物、すなわち開始剤残渣、乳化剤等の含有量が多い傾向がある。そのため、溶液重合と乳化重合とでは、本実施形態のゴム状重合体の製造方法を実施した場合、乾燥状態に差が生じる。
【0016】
前記ゴム状重合体としては、エキスパンジョン型押出乾燥機を用いた押出乾燥工程後に、連続的形状のゴム状重合体が得られ、かつ粉状のゴム状重合体の発生を効果的に抑制できるという観点から、水素化されていないポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体が好ましく、溶液重合により得られる分岐状ゴム状重合体がより好ましい。
前記分岐状ゴム状重合体としては、ゴム状重合体分子において、単量体が結合した連鎖が重合中に分岐を形成しているもの、重合中又は重合後に分岐結合を生成したもののいずれも含む。
【0017】
前記ゴム状重合体は、所定量の伸展油を混合した油展ゴム状重合体であってもよい。
油展ゴム状重合体は、上述したスチームストリッピング工程前において、必要に応じてプロセスオイルを加えることにより得られる。
前記プロセスオイルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油、さらに、IP346法により測定した場合の多環芳香族成分が3質量%以下であるアロマ代替油が挙げられる。
特に、多環芳香族成分が3質量%以下であるアロマ代替油が、環境安全上の観点とオイルブリード防止、さらにはウェットグリップ特性の観点から好ましい。
前記アロマ代替油としては、以下に限定されるものではないが、例えば、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52 (12) 799 (1999) に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts/処理留出物芳香族系抽出物)、MES(Mild Extraction Solvates/軽度抽出溶媒和物)の他、SRAE(Special Residual Aromatic Extracts/芳香族系特殊抽出物)、RAE(Residual Aromatic Extracts/残油芳香族系抽出物)等が挙げられる。
伸展油の使用量は任意であるが、通常は、ゴム状重合体100質量部に対し5〜60質量部であることが好ましく、20〜50質量部がより好ましい。
【0018】
ゴム状重合体は、100℃におけるムーニー粘度が30〜120であることが好ましい。ムーニー粘度が前記範囲であることにより、本実施形態のゴム状重合体の製造方法における乾燥工程を円滑かつ確実に実施できる。
ゴム状重合体の100℃におけるムーニー粘度は、35〜100であることがより好ましく、40〜90であることがさらに好ましい。
ゴム状重合体のムーニー粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0019】
前記ゴム状重合体として、分岐ゴム状重合体を用いる場合、当該分岐ゴム状重合体は、本実施形態の製造方法により得られるゴム状重合体を、例えばタイヤに加工する、良好な加工性を得、かつ優れた特性を得る観点から、100℃ムーニー粘度が30〜120であることが好ましく、MSR(ムーニーストレスリラクゼーション)が0.15〜0.5であることが好ましい。
分岐ゴム状重合体は、従来のエキスパンジョン型押出乾燥工程の出口において、粉状のゴム状重合体を生成しやすいため、本実施形態のゴム状重合体の製造方法において、特に粉状のゴム生成を防止する効果が高い。
100℃ムーニー粘度は35〜100であることがより好ましく、50〜85であることがさらに好ましく、MSRは0.18〜0.45であることがより好ましく、0.25〜0.35であることがさらに好ましい。
なお、ゴム状重合体のムーニー粘度が高いほど分子量が高く、MSRが低いほど分岐が多い。
【0020】
本実施形態のゴム状重合体の製造方法において用いる、エキスパンジョン型押出乾燥機に投入する前段階のゴム状重合体の製造方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
ゴム状重合体として分岐ゴム状重合体を用いる場合、当該分岐ゴム状重合体の製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、有機リチウム開始剤を用い、共役ジエン化合物を単独で、又は共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とを炭化水素溶媒中で重合又は共重合し、得られた共役ジエン系ゴム状重合体の活性末端を、重合中又は重合後に3官能以上の多官能化合物と反応させてカップリングする方法で分岐を導入することにより製造する方法が挙げられる。具体的には、特許文献WO2010/131668号公報に記載の方法が挙げられる。また、重合方法としては、連続重合でもバッチ重合でもよい。
【0021】
本実施形態において用いるゴム状重合体の重合工程においては、ビニル化剤又はランダマイザーと呼ばれる極性物質を加えてもよい。これにより、重合体として共役ジエン系化合物を用いる場合、共役ジエン単位の1,2−ビニル結合含量を10モル%から90モル%の間で制御することができる。また、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合を行う場合は、モノマー単位のランダム性を制御することができる。
前記極性物質としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エーテル化合物、3級アミン化合物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属のスルフォン酸塩等が挙げられ、具体的には、テトラヒドロフラン、2,2−ビス−2−オキソラニルプロパン、テトラメチルエチレンジアミン、ナトリウムアミラート、カリウムフェノキシド等を単独又は併用することができる。
【0022】
なお、本実施形態において用いるゴム状重合体の重合工程において、カップリング等の方法で分岐を導入したゴム状重合体はMSRが低くなる傾向がある。
ゴム状重合体の分子量を調整することによりムーニー粘度を制御でき、重合工程で分岐の数を調整することによりMSRを制御できる。
ゴム状重合体のMSRは、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0023】
前記ゴム状重合体に分岐を導入するために用いる前記3官能以上の多官能化合物とは、ゴム状重合体の活性末端と反応して結合を生成する官能基を1分子中に3個以上有する化合物である。
前記官能基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸ハロゲニド基、チオカルボニル基、チオカルボン酸エステル基、チオカルボン酸アミド基、チオカルボン酸ハロゲニド基、イソシアナート基、チオイソシアナート基、エポキシ基、チオエポキシ基、アルコキシシリル基、官能性2重結合としてビニル基、イミノ基等が挙げられる。
【0024】
前記3官能以上の多官能化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、4塩化珪素、4臭化珪素、4ヨウ化珪素、4塩化錫、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、テトラメトキシ珪素、テトラエトキシ珪素、トリメトキシメチル珪素、ヘキサエトキシジシラン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,1−ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(3−トリエトキシシリルプロビル)メチルアミン、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)プロビルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリメチルシリルアミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロビル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロビル] ピペラジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロビル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロビル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロビル]へキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロビル]へキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリブトキシシリル)プロビル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1,1−ジメトキシ−2−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−シラ−2−アザシクロペンタン、1,1−ジエトキシ−2−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−シラ−2−アザシクロペンタン、1,1−ジメトキシ−2−(3−ジメトキシメチルシリルプロビル)−1−シラ−2−アザシクロペンタン、1,1−ジメトキシ−2−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−シラ−2−アザシクロヘキサン、1,1−ジメトキシ−2−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−シラ−2−アザシクロへブタン、アジピン酸ジメチル、トリメリット酸トリメチル、トリメジン酸トリエチル、炭酸ジメチル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフエニルメタン、N,N−ジグリシジル−4−(4−グリシジル−1−ピペラジニル)アニリン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリンが挙げられる。
これらの3官能以上の多官能化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
3官能以上の多官能化合物がゴム状重合体の活性末端1モルに対し、好ましくは0.05倍モル〜10倍モルを反応することにより、分岐状のゴム状重合体が得られる。
【0025】
前記ゴム状重合体が、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体である場合、当該ゴム状重合体は、芳香族ビニルの連鎖長が30以上の成分が少ないものであるか、又は無いものであることが好ましい。
具体的には、ゴム状重合体がブタジエン−スチレン共重合体である場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)で分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量(ブロックスチレン量)を分析する公知の方法で測定した場合、ゴム状重合体全量に対し、前記ブロックスチレン量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
より詳細には、ゴム状重合体がブタジエン−スチレン共重合体である場合、田中らの方法として知られているオゾン分解による方法(Polymer,22,1721(1981))を適用し、当該ブタジエン−スチレン共重合体を分解し、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によりスチレン連鎖分布を分析したとき、単離スチレン、すなわちスチレン単位の連鎖が1のスチレンが、全結合スチレン量に対し40質量%以上であり、長鎖ブロックスチレン、すなわちスチレン単位の連鎖が8以上のスチレンが全結合スチレン量に対し10質量%以下であることが好ましい。
なお、ビニル芳香族化合物がスチレンである場合に限定されず、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との分岐ゴム状重合体を構成するビニル芳香族化合物について共通して上記数値範囲であることが好ましい。
上記数値範囲とすることにより、本実施形態の製造方法により得られるゴム状重合体を用いた加硫ゴムは、運動性能が高く、例えばゴムの変形と回復の際の発熱量の低減化において、大きな効果が得られる。
【0026】
ゴム状重合体は、酸化防止剤を含んでいてもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤と硫黄含有のフェノール系酸化防止剤とを併用したもの、また、これらにさらにリン系酸化防止剤を併用したもの、及びアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール(通称BHT)、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジターシャリーブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(通称1076)、2−ターシャリーブチル−6−(3’−ターシャリーブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(通称GM)が挙げられる。
前記硫黄含有のフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール(通称1520)が挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリスノニルフェニルフォスフェート(通称TNP)が挙げられる。
前記アミン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N’−ジ−2−オクチル−p−フェニレンジアミンが挙げられる。
ゴム状重合体と酸化防止剤との割合は、ゲル生成を防止する観点からゴム状重合体100質量部に対し、酸化防止剤0.05〜2.0質量部の割合であることが好ましく、0.1〜1.0質量部の割合であることがより好ましい。
【0027】
また、ゴム状重合体は、失活剤としてアルコール化合物を含んでいてもよく、さらに通常、スチームストリッピングに際して加えられる界面活性剤を予め添加しておいてもよい。
前記アルコール化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールが挙げられる。
前記界面活性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ノニルフェノキシポリエチレングリコールリン酸エステル又はその塩が挙げられる。
【0028】
(スチームストリッピング工程及びスクリーニング工程)
本実施形態のゴム状重合体の製造方法においては、押出乾燥工程の前に、ゴム状重合体の溶液から溶剤をスチームストリッピングにより除去する脱溶媒工程、ゴム状重合体のスラリーからストリッピング水と分離して、含水クラムを取り出すスクリーニング工程を実施することが好ましい。
押出乾燥工程の前に、ゴム状重合体の溶液から溶剤をスチームストリッピングにより除去する脱溶媒工程を実施することにより、溶剤を含まず、水分を含んだ多孔質の粒状クラムが熱水中に分散したスラリーが得られる。
ゴム状重合体のスラリーからストリッピング水と分離して含水クラムを取り出すスクリーニング工程を実施することにより、水分を含んだ多孔質の粒状クラムを得ることができる。
また、必要により、ロール、スクリュー圧縮絞り機等で脱水する絞り脱水工程を実施することが好ましい。これらの脱水工程により、押出乾燥工程の前段階で、含水率をより少なくした含水クラムを得ることができる。
【0029】
(エキスパンジョン型押出乾燥機を用いる押出乾燥工程)
本実施形態のゴム状重合体の製造方法における押出乾燥工程においては、上述した水分を含有するゴム状重合体に対し、高温、高圧条件下で、水分を蒸発させる操作を行う。
具体的には、スクリュー式の押出機により、130〜190℃の高温及び2〜8MPaの高圧にして、エキスパンジョン型押出乾燥機の出口のダイから噴出させることが好ましい。
エキスパンジョン型押出乾燥機としては、特に限定されるものではないが、一軸又は二軸のゴム用押し出し機が好ましく、例えば、Anderson社製のExpander、Welding社製のVCU、French Oil Mill社製のVented Mechanical Dryer等が挙げられる。
【0030】
本実施形態のゴム状重合体の製造方法における、押出乾燥工程においては、押出乾燥工程の、エキスパンジョン型押出乾燥機の出口のダイに関し、ゴム状重合体の処理量を(F)とし、ダイの開口面積を(S)としたとき、ダイ流速(F/S)が、1〜15kg/hr/mm2であるものとする。好ましくは1.2〜10kg/hr/mm2であり、より好ましくは1.5〜6kg/hr/mm2である。
なお、エキスパンジョン型押出乾燥機のゴム状重合体の処理量F(kg/hr)とは、エキスパンジョン型押出乾燥機を用いた押出乾燥工程で1時間あたりに得られるゴム状重合体の、後述する熱風乾燥工程を経た後の当該ゴム状重合体の質量(kg)であり、ダイの開口面積S(mm2)は、使用するダイが単数である場合及び複数である場合も含めて全てのダイの開口面積の総和であるものとする。
上記範囲とすることにより、粉状のゴム状重合体の飛散を防止でき、高収率で工業的に安定してゴム製品が得られる。
【0031】
また、押出乾燥工程を実施するエキスパンジョン型押出乾燥機の出口のダイ開口部は、総辺長を開口面積で除して得られるダイ形状係数が1.0〜4.0mm-1である。好ましくは1.2〜3.0mm-1であり、より好ましくは1.3〜2.5mm-1である。
ダイ形状係数が前記範囲であると、後述する次工程の熱風乾燥処理において、優れた乾燥性が得られ、また、粉状のゴム状重合体の飛散を防止でき、高収率で工業的に安定してゴム製品が得られる。
ダイ開口部の形状は、ダイ形状係数が上記の範囲であればよく、例えば、矩形、三角形、矩形を複数個組み合わせた種々の形状が挙げられる。
矩形を複数個組み合わせた形状としては、例えば、T字型、図2に示す2つの矩形が直交しているクロス型(十字型)、図3に示すY字型や、コの字型等が挙げられる。
また、図4に示すような縦に長い矩形、図5に示すような星型、図6に示すような丸型等も挙げられる。
さらに、ダイ開口部の形状は、辺と辺が交わる交点においては、角部となっている場合に限定されず、丸くなっていてもよい。
【0032】
ダイ開口部の形状は、粉状のゴム状重合体の発生を防止する観点から、当該ダイの開口部に外接する円の直径が、5mm以上の大きさを有していることが好ましい。より好ましくは7mm以上、さらに好ましくは9mm以上である。
また、前記円の直径の上限については、高いダイ形状係数を得るという観点から30mm以下が好ましく、22.5mm以下がより好ましく、15mm以下がさらに好ましい。
【0033】
ダイ開口部の形状は、ダイ形状係数が上記の範囲である矩形又は矩形を複数個組み合わせた形状であることがより好ましく、矩形を複数個組み合わせた形状であることがさらに好ましい。
ダイ形状係数が上記の範囲である矩形又は矩形を複数個組み合わせた形状であることにより、優れた乾燥性が得られ、粉状のゴム状重合体の飛散を防止でき、高収率で工業的に安定してゴム製品を得ることができる。
【0034】
ダイ開口部の形状が矩形又は矩形を複数個組み合わせた形状である場合、矩形の短辺は好ましくは0.5mm〜3mmであり、より好ましくは0.5mm〜2.0mmであり、さらに好ましくは0.5mm〜1.5mmである。矩形の長辺の長さは上記外接する円の直径以下とすることが好ましく、具体的には長辺は5mm〜30mmであることが好ましく、より好ましくは7mm〜30mmである。
なお、Y字型のような回転対称である場合、長辺の長さは、短辺と直交する辺の長さを表す。すなわち、矩形の角から隣接する矩形との交点までの長さとする。Y字型の長辺は中心から上記の外接する円の半径以下とすることが好ましく、具体的には2.5mm〜15mmであることが好ましく、より好ましくは3.5mm〜15mmである。
ダイ開口部の形状において、上記数値範囲を選択することにより、後述する熱風乾燥処理において優れた乾燥性が得られ、また、粉状のゴム状重合体の飛散を防止でき、高収率で工業的に安定してゴム製品が得られる。また、ダイの製造に際し加工しやすく実用的である。
ダイ開口部の形状においては、粉状のゴム状重合体の発生を防止する観点から、60度未満の尖った角が無いことが好ましい。
【0035】
特に、ダイ開口部の形状を、図2に示すようなクロス型とすることにより、粉状のゴム状重合体の飛散を効果的に防止でき、後述する次工程の熱風乾燥処理において、優れた乾燥性が得られる。
複数のダイを用いる場合、それぞれ上述した条件を満たすものであれば、同じ形状及び大きさのものに統一してもよく、異なる形状や大きさを有する複数種類のダイを組み合わせてもよい。
【0036】
ダイの厚みは0.5mm〜14mmであることが好ましい。
ダイの厚みが前記範囲であると、適正な運転温度と圧力を保持しながら、粉状のゴム状重合体の飛散を防止でき、高収率で工業的に安定してゴム製品が得られる。
【0037】
エキスパンジョン型押出乾燥機の出口においては、ゴム状重合体がひも状に繋がっている場合に、それを切るためのカッターを設けてもよい。
前記カッターとしては、回転式の刃を有するカッターが好ましい。これにより、ゴム状重合体を適度な長さに切断することができ、次の工程である熱風乾燥工程に供することができる。ゴム状重合体は、長さ10mm〜300mmに切断することが好ましく、長さ10mm〜200mmに切断することがより好ましい。カッターの回転刃は、2枚から10枚の刃が回転する構造であることが好ましく、ゴムが付着しないなめらかな形状とするか、付着しにくい材料とすることが好ましい。
【0038】
本実施形態のゴム状重合体の製造方法においては、押出乾燥工程を行うエキスパンジョン型押出乾燥機の出口におけるゴム状重合体の含水率が、入口におけるゴム状重合体の含水率の20〜70%であるものとする。好ましくは入口の含水率の30%〜60%であり、より好ましくは35〜55%である。
前記ダイ開口部の形状を選定し、また押出乾燥機の動力を制御して運転温度と圧力を最適化することにより、出口におけるゴム状重合体の含水率を調整することができる。
また、エキスパンジョン型押出機の出口におけるゴム状重合体の含水率は、1〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜14質量%、さらに好ましくは3〜12質量%である。
エキスパンジョン型押出乾燥機の出口におけるゴム状重合体の含水率の、入口におけるゴム状重合体の含水率に対する比率、及び出口におけるゴム状重合体の含水率を上記範囲とすることにより、ゴム状重合体が含有する水分が適度に蒸発し、押出乾燥機の出口先端から揮散する水蒸気の噴出速度が抑制される。このため、粉状のゴム状重合体の飛散を防止できる。また、後述するように温度と圧力を適切に制御して運転することにより、ゴム状重合体の内部に含まれる水分が適度に蒸発し、エキスパンジョン型押出乾燥機の出口先端から噴出される際に発泡状態を形成することができ、排出されるゴム状重合体を、多孔質のゴム片が連球状に連なった連続的形状とすることができ、高収率で工業的に安定したゴム製品の製造が可能となる。
【0039】
押出乾燥工程におけるエキスパンジョン型押出乾燥機の運転条件は、内温が130〜190℃であることが好ましく、140〜175℃がより好ましい。圧力が2〜8MPaであることが好ましく、2.5〜7MPaがより好ましい。温度及び圧力の条件を前記範囲とすることにより、トラブル無く安定運転が可能である。
【0040】
(熱風乾燥工程)
エキスパンジョン型押出乾燥機を用いた押出乾燥工程を経て得られたゴム状重合体は、適度な水分を有しており、次工程の熱風乾燥工程で、熱風乾燥機を用いて乾燥処理し、含水率を好ましくは1質量%以下に低減化する。
熱風乾燥工程では、熱風乾燥機により、適度な水分を有しているクラムを圧縮することなく熱風中で滞留させ、水分を乾燥除去する。
前記熱風乾燥機としては、以下に限定されるものではないが、例えば、振動コンベアー型、バンドドライヤー型、流動乾燥機等が挙げられる。
【0041】
熱風の温度は好ましくは80〜150℃であり、より好ましくは100〜120℃である。
熱風乾燥機中のクラムの滞留時間は、好ましくは90〜300秒であり、より好ましくは120〜200秒である。
これらの範囲では、ゴム状重合体の品質を劣化させることなく、効果的に熱風乾燥処理を行うことができる。
【0042】
熱風乾燥工程を実施する熱風乾燥機は、振動コンベアー型熱風乾燥機であることが好ましい。
当該振動コンベアー型熱風乾燥機においては、ゴム状重合体のクラムがコンベアー上を上下に振動しながら移動する。その際、前記ゴム状重合体のクラムは、振動により熱風乾燥機の床面に均一な高さで分散する。
振動コンベアー型熱風乾燥機としては、コンベアーの床面に小孔又はスリットを有し、それを通って熱風が噴出し、クラム中を熱風が通過するようにして乾燥処理を行う構成を有していることが好ましい。
前記振動コンベアー型熱風乾燥機により、ゴム状重合体のクラムは、好ましくは10〜100mmの積み高さで移動する。振動コンベアー型熱風乾燥機を用いることにより、少ない熱風量でゴム状重合体を効率的に乾燥させることができる。
熱風乾燥工程を経た後、ゴム状重合体は、最終的な含水率が好ましくは1質量%以下となり、より好ましくは0.75質量%以下となる。また、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上となる。含水率が前記範囲であれば、白濁や水濡れによる製品の品質トラブルの原因を回避することができ、また、過度の加熱が原因の熱履歴による劣化部分の発生を防止することができる。
【0043】
熱風乾燥機における乾燥性は、熱風乾燥工程を経て最終的に得られたゴム状重合体の含水率(最終含水率:質量%)を、エキスパンジョン型押出乾燥機の出口におけるゴム状重合体の含水率(押出乾燥機出口含水率(質量%))で除して、最終含水率/押出乾燥機出口含水率の値を算出することにより、評価することができる。
この乾燥性の評価おいては、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。また、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上である。この範囲であることにより、乾燥性が優れ、かつゲルが少ない品質に優れたゴム状重合体の製品が得られる。
【0044】
(ベール成形工程)
上述のようにして、押出乾燥工程、熱風乾燥工程を経て得られたゴム状重合体のクラムは、計量し、ベール成形して、製品化する。
【実施例】
【0045】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
先ず、実施例及び比較例に適用した、物性の測定方法、評価方法について下記に示す。
〔(1)ゴム状重合体の含水率〕
エキスパンジョン型押出乾燥機の入口のゴム状重合体の含水率を、JIS H6238−2 原料ゴム−揮発分の求め方(定量)−第2部:自動赤外線乾燥熱重量法、に記載されているA法に従い、測定した。
なお、ゴム状重合体のエキスパンジョン型押出乾燥機の入口における含水率は、下記表2中、「入口含水率(質量%)」と表記した。
エキスパンジョン型押出乾燥機の出口のゴム状重合体の含水率についても、上記と同法で測定した。
ゴム状重合体のエキスパンジョン型押出乾燥機の出口における含水率は、下記表2中、「出口含水率(質量%)」と表記した。
また、前記エキスパンジョン型押出乾燥機の入口のゴム状重合体の含水率に対する出口のゴム状重合体の含水率の割合(出口含水率/入口含水率)を算出した。
【0047】
〔(2)結合スチレン量〕
測定用の試料をクロロホルム溶液とし、島津製作所製UV−2450を用いて、スチレンのフェニル基による波長254nmの紫外線(UV)の吸収量を測定し、結合スチレン量(質量%)を測定した。
【0048】
〔(3)ブロックスチレン量、スチレン単連鎖及び長連鎖の含有率〕
Korthoffの方法に従い、測定用の試料のオスミウム酸分解生成物を得、これを用いて、メタノール中でブロックポリスチレンに相当する不溶ポリスチレンを析出させた。
この不溶ポリスチレン量を定量し、ゴム状重合体当たりの質量%としてブロックスチレン量を算出した。
また、スチレン単位が1個のスチレン単連鎖及びスチレン単位が8個以上連なったスチレン長連鎖の含有率を、田中らの方法(Polymer,22,1721(1981))に従って、スチレン−ブタジエン共重合ゴムをオゾンによって分解した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって全結合スチレン量に対する質量%として分析して求めた。ブロックスチレン量が5質量%以下であり、かつスチレン単位が1個のスチレン単連鎖の含有量が30%以上であり、スチレン単位が8個以上連なったスチレン長連鎖の含有率が10%以下である場合、スチレン分布は「ランダム」であると判断した。
【0049】
〔(4)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)〕
測定用の試料を二硫化炭素溶液とし、溶液セルを用いて、日本分光(株)製:FT−IR230により、赤外線スペクトルを600〜1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度により、ハンプトンの方法の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)を求めた。
【0050】
〔(5)平均分子量及び分子量分布〕
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラム3本連結して用いたゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を使用してクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線により得られる保持容量と分子量の関係から、常法に従い、各分子量範囲毎の全ピーク面積に対する頻度を算出し、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を計算した。
溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用した。
カラムは、ガードカラム;東ソー TSKguardcolumn HHR−H、カラム;東ソーTSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHR、オーブン温度:40℃、THF流量1.0mL/分、東ソー製:HLC−8020、検出器;RIを使用した。
測定用試料は、20mgを20mLのTHFに溶解したものを用い、200μL注入して測定した。
【0051】
〔(6)ムーニー粘度、MSR(ムーニーストレスリラクゼーション)〕
ムーニー粘度測定器として上島製作所製VR1132を用い、ISO289-1及びISO289-4(2003))に規定される方法で、温度を100℃として、ムーニー粘度及びムーニーストレスリラクゼーション(MSR)を測定した。
まず、100℃で1分間予熱し、その後、2rpmでローターを回転させ、4分後のトルクを測定してムーニー粘度(ML1+4)とした。
その後、即座にローターの回転を停止させ、停止後1.6〜5秒の0.1秒ごとのトルク(T)をムーニー単位で記録し、トルクと時間(t(秒))を両対数プロットした際の直線の傾きを求め、その絶対値をムーニーストレスリラクゼーション(MSR)とした。
ムーニー粘度が等しい場合、分岐が多いほど、ムーニーストレスリラクゼーション(MSR)が小さくなるため、分岐度の指標として用いることができる。
【0052】
〔(7)ダイ流速 F/S〕
ゴム状重合体の処理量(F(kg/hr))をダイ開口面積(S(mm2))で除して算出した。
エキスパンジョン型押出乾燥機のゴム状重合体の処理量F(kg/hr)とは、エキスパンジョン型押出乾燥機を用いた押出乾燥工程で1時間あたりに得られるゴム状重合体の、熱風乾燥工程を経た後の当該ゴム状重合体の質量(1時間あたりの処理量)であり、供給されるゴム状重合体の溶液量を質量流量計で測定して、その溶液量に溶液濃度を乗じた値をゴム状重合体処理量として算出した。
また、ダイ開口面積S(mm2)は、使用するダイが単数である場合及び複数である場合も含めて全てのダイの開口面積の総和とし、単数のダイ開口面積にダイ個数を乗じた値をダイ開口面積として算出した。
【0053】
〔(8)熱風乾燥工程の乾燥性の評価〕
熱風乾燥機における熱風乾燥工程を経た最終的なゴム状重合体の含水率(最終含水率(質量%))を測定し、さらに、当該最終含水率(質量%)をエキスパンジョン型押出乾燥機の出口のゴム状重合体の含水率(押出乾燥機出口含水率(質量%))で除して、最終含水率/押出乾燥機出口含水率の値を算出し、乾燥性を評価した。
最終的なゴム状重合体の含水率、及びエキスパンジョン型押出乾燥機の出口のゴム状重合体の含水率は、JIS H6238−2 原料ゴム−揮発分の求め方(定量)−第2部:自動赤外線乾燥熱重量法に記載されているA法に従って測定した。
乾燥性の評価は、30%以下であれば、良好であると判断した。
【0054】
〔実施例1〕
下記表1に示す単量体を用いて、n−ブチルリチウムを重合開始剤として、シクロヘキサンを溶媒として、ビニル化剤としてテトラメチルエチレンジアミンを用い、連続的にアニオン重合により溶液重合し、かつカップリング剤として4官能の多官能化合物を活性末端に反応させて分岐構造を導入し、ブタジエン−スチレンランダム共重合体を得た。
得られたブタジエン−スチレンランダム共重合体100質量部に対し、37.5質量部のTDAEオイルで油展した、100℃のムーニー粘度が55、MSRが0.391である油展分岐型のゴム状重合体を得た。
前記4官能の多官能化合物としてはテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを用いた。
前記ブタジエン−スチレンランダム共重合体のモノマー組成は、結合スチレン量33質量%、結合ブタジエン67質量%であり、ブタジエン部の1,2−ビニル結合量は36モル%であった。
スチレン連鎖はランダムであり、Korthoffの方法で前記ブタジエン−スチレンランダム共重合体当たりブロックスチレン量は0質量%、田中らの方法(Polymer,22,1721(1981))によるスチレン単位が1個のスチレン単連鎖は結合スチレン量に対し48質量%、スチレン単位が8個以上連なったスチレン長連鎖の含有率は結合スチレン量に対し3質量%であった。
前記ブタジエン−スチレンランダム共重合体の数平均分子量は31万、重量平均分子量は77万、分子量分布は、Mw/Mnが2.5であり、分子量分布は一山であった。
前記ゴム状重合体の重合溶液から、スチームストリッピング工程、スクリーン工程を経て、ゴム状重合体の含水クラムを取り出し、図1に示すように、ゴム状重合体(含水クラム)1をスクリュー圧縮絞り機2にフィードした。
スクリュー圧縮絞り機2で脱水処理を行った後、ゴム状重合体(含水クラム)をエキスパンジョン型押出乾燥機3にフィードした。
エキスパンジョン型押出乾燥機3としては、Anderson社製Expander押出乾燥機を用いた。運転条件を、下記表2に示す。
図5に示す星形のダイを使用し、具体的な寸法としては、外接する円が直径10mmである星形(五芒星形)であり、総辺長36.75mm、開口面積28mm2であり、ダイ形状係数1.31mm-1であるものを使用した。この星形ダイを33個用いた。ダイ開口総面積は、28×33=924(mm2)である。
上記エキスパンジョン型押出乾燥機3による押出乾燥工程を経た後、図1に示すように、クラムを振動コンベアー型熱風乾燥機4に供給し、熱風乾燥工程を実施した。運転条件を、下記表2に示す。
その結果、図7に示すように多孔質のゴム片が連球状に連なった連続的形状の多孔質クラムが排出され、粉ゴムの飛散が少なく、長期運転後もダクト及び熱風乾燥機壁面へのゴム状重合体の付着による火災及び異物混入等の運転トラブルは発生しなかった。また、熱風乾燥工程における乾燥性も良好で、最終的なゴム状重合体の含水率が0.7質量%と、低含水率のゴム状重合体が得られた。
【0055】
〔実施例2〜7〕
下記表1に示すように、単量体組成、ビニル化剤フィード量、カップリング剤フィード量、オイルフィード量を変更し、結合スチレン量、結合ブタジエン量、ブタジエン部の1,2−ビニル結合量、分子量、分岐度、油展量を変更した。その他の条件は、実施例1と同様にしてゴム状重合体(含水クラム)を得た。
次に、表2に示す条件に従い、また他の条件は実施例1と同様として、ゴム状重合体の乾燥工程を実施した。
重合条件、ポリマー構造、油展条件、ポリマーの物性分析値を表1に示し、エキスパンジョン型押出乾燥機の運転条件、熱風乾燥機の運転条件、及びゴム状重合体の各種測定結果を下記表2に示す。
【0056】
実施例2においては、図2に示すクロス形状のダイを使用した。具体的な寸法としては、短辺1.5mm、長辺9.5mmであり、総辺長38mm、開口面積26.25mm2であり、ダイ形状係数1.45mm-1であるものを使用した。このクロス型ダイを33個用いた。ダイ開口総面積Sは26.25×33=866(mm2)である。
その結果、図7に示すように、多孔質のゴム片が連球状に連なった連続的形状の多孔質クラムが排出され、粉ゴムの飛散が無く、長期運転後もダクト及び熱風乾燥機壁面へのゴム状重合体の付着による火災及び異物混入等の運転トラブルは発生しなかった。
また、熱風乾燥工程における乾燥性も良好で、最終的なゴム状重合体の含水率が0.5質量%と、低含水率のゴム状重合体が得られた。なお、熱風乾燥工程における乾燥性を示す、最終含水率/押出乾燥機出口含水率の比率(%)は、実施例1に比べ、熱風乾燥機滞留時間が短いにもかかわらずより低くなっており、熱風乾燥性がより優れていた。
【0057】
実施例3においては、図2に示すようなクロス型ダイを使用した。なお、短辺1.0mm、長辺9.5mmであり、総辺長38mm、開口面積18mm2であり、ダイ形状係数2.11mm-1であるものを、52個用いた。ダイ開口総面積Sは18×52=936(mm2)である。
その結果、図7に示すように多孔質のゴム片が連球状に連なった連続的形状の多孔質クラムが排出され、粉ゴムの飛散が無く、長期運転後もダクト及び熱風乾燥機壁面へのゴム状重合体の付着による火災及び異物混入等の運転トラブルは発生しなかった。また、熱風乾燥工程における乾燥性も良好で、最終的なゴム状重合体の含水率が0.5質量%と、低含水率の重合体が得られた。
【0058】
実施例4においては、図3に示すY字型ダイを使用した。なお、短辺2.0mm、長辺4.2mm、外接する円の直径が9.5mm、総辺長31.0mm、開口面積26.77mm2であり、ダイ形状係数1.16mm-1、のものを65個用いた。ダイ開口総面積Sは、26.77×65=1740mm2である。
その結果、図7に示すように多孔質のゴム片が連球状に連なった連続的形状の多孔質クラムが排出され、粉ゴムの飛散が無く、長期運転後もダクト及び熱風乾燥機壁面へのゴム状重合体の付着による火災及び異物混入等の運転トラブルは発生しなかった。また、熱風乾燥工程における乾燥性も良く、最終的なゴム状重合体の含水率が0.5質量%と、低含水率の重合体が得られた。
【0059】
実施例5においては、図2に示すクロス形状のダイを使用した。なお、短辺1.5mm、長辺9.5mmであり、総辺長38mm、開口面積26.25mm2であり、ダイ形状係数1.45mm-1であるものを、65個用いた。ダイ開口総面積Sは26.25×65=1706(mm2)である。
また、エキスパンジョン型押出乾燥機出口に2枚刃のカッターを装着し、排出されるひも状の多孔質クラムを約30mm〜100mmの長さにカットした。
その結果、図7に示すように、多孔質のゴム片が連球状に連なった連続的形状の多孔質クラムが排出され、粉ゴムの飛散が無く、長期運転後もダクト及び熱風乾燥機壁面へのゴム状重合体の付着による火災及び異物混入等の運転トラブルは発生しなかった。
また、熱風乾燥工程における乾燥性も良好で、最終的なゴム状重合体の含水率が0.3質量%と、低含水率のゴム状重合体が得られた。
実施例4と実施例5を比較すると、ダイ形状係数が1.16である実施例4よりダイ形状駅数が1.45である実施例5の方が、熱風乾燥工程における乾燥性を示す、最終含水率/押出乾燥機出口含水率の比率(%)は小さくなっており、より優れた結果が得られた。
【0060】
実施例6においては、非油展の分岐構造を導入したブタジエン−スチレンランダム共重合を用いた。また、図3に示すY型ダイを用いた。なお、短辺1.5mm、長辺4.3mm、外接する円の直径が9.5mm、総辺長30.4mm、開口面積20.4mm2であり、ダイ形状係数1.49mm-1のものを35個用いた。ダイ開口総面積Sは、20.4×35=714mm2である。
その結果、粉ゴムの飛散が無く、図7に示すように、多孔質のゴム片が連球状に連なった連続的形状の多孔質クラムが排出され、熱風乾燥工程における乾燥性も良好で、収率良く低含水率のゴム状重合体が得られた。
【0061】
実施例7は実施例5と同じブタジエン−スチレンランダム共重合を用いた。
図3に示すY型ダイを用いた。短辺2.0mm、長辺4.2mm、外接する円の直径が9.5mm、総辺長31.0mm、開口面積26.77mm2であり、ダイ形状係数1.16mm-1、のものを35個用いた。ダイ開口総面積Sは、26.77×35=936mm2である。
その結果、多孔質のゴム片が連球状に連なった連続的形状の多孔質クラムが排出された。熱風乾燥工程における乾燥性は実施例6より劣っていたが、収率良く低含水率のゴム状重合体が得られた。
【0062】
〔比較例1〕
実施例1において製造したゴム状重合体(含水クラム)を用いて、乾燥工程を実施した。
なお、図6に示す直径3mmの丸型ダイを32個用いた。総辺長9.42mm、開口面積7.065mm2であり、ダイ開口総面積Sは226mm2である。
国際公開第06/054525号の明細書中、段落〔0030〕に記載されている(乾燥装置)を使用し、当該明細書中、実施例1と同様の方法で、F/S:20.3kg/hr/mm2の条件として、その他の条件は、本願発明の実施例1と同様にゴム状重合体(含水クラム)の脱水乾燥工程を実施した。
比較例1においては、ダイ流速F/Sが大きく、1〜15kg/hr/mm2の範囲を超過するため、エキスパンジョン型押出乾燥機の出口から粉状のゴム状重合体が飛散し、熱風乾燥機壁面に付着し、一部はダクトへ排出されて堆積した。
収率が低く、運転を停止せざるを得なかった。
熱風乾燥機壁面に付着したゴム状重合体は、堆積してゲル化し、それが製品に混入することにより、製品の品質劣化を招来した。
また、ダクトに堆積したゴム状重合体は火災の原因となり得るので、作業上の危険性があった。
【0063】
〔比較例2〕
実施例1において製造したゴム状重合体(含水クラム)を用いた。
また、図4に示す矩形型ダイを72個用いた。当該ダイは、短辺3.5mm、長辺9.5mm、総辺長25.9mm、開口面積33.25mm2であり、ダイ形状係数0.78mm-1であり、ダイ開口総面積Sは、33.25×72=2394mm2である。
さらに、F/S:1.9kg/hr/mm2の条件で、その他の条件は、実施例1と同様にゴム状重合体(含水クラム)の脱水乾燥工程を実施した。
エキスパンジョン型押出乾燥機の出口から粉状のゴム状重合体の飛散は無かったが、熱風乾燥機の上でゴム状重合体のクラム同士が塊状に固まって団子状になり、乾燥性が悪く、最終的に含水率の高い不良品となった。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表中の、オイルの種類、phr、内温、内圧、処理量Fについて、下記に説明を記載する。
オイルの種類:ポリマーの油展に用いたオイルである。TDAE;ハンセン&ローゼンタール社製TDAE油、SRAE;JOMO社製SRAE油(RAE油に低粘度パラフィン油を混合したもの)
phr:油展に用いたオイルの量の単位を意味し、ポリマー100質量部に対するオイルの量(質量部)である。
内温:エキスパンジョン型押出乾燥機の出口先端内部の温度
内圧:エキスパンジョン型押出乾燥機の出口先端内部の圧力
処理量F:ゴム状重合体の処理量
【0067】
本出願は、2012年3月26日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2012−069570)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のゴム状重合体の脱水乾燥仕上げ方法は、タイヤ用ゴム、防振ゴム、履物用等に好適なゴム組成物を構成するゴム状重合体の製造技術として、産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0069】
1 ゴム状重合体(含水クラム)
2 スクリュー圧縮絞り機
3 エキスパンジョン型押出乾燥機
4 熱風乾燥機
5 ゴム状重合体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7