(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の携帯端末において、操作者が操作を行うための操作部やスイッチ等の入力装置として、タッチパネルやタッチスイッチ等のタッチセンサを備える入力装置が採用されているものがある。携帯端末以外に、電卓、券売機等の情報機器や、電子レンジ、テレビ、照明器具等の家電製品、産業用機器(FA機器)等にも、タッチセンサを備える入力装置は広く使用されている。
【0003】
このようなタッチセンサには、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の種々の方式が知られている。特に、携帯電話などの小型の端末装置は、例えばテンキーなどのキーやアイコン等をオブジェクトとして表示部に表示して、当該オブジェクトに対する操作者の接触をタッチセンサにより検出する、タッチパネルを備えることが多い。
【0004】
このようなタッチパネルを備えた端末装置は、起動するアプリケーションソフトウェアに応じて、種々のユーザインタフェースを、オブジェクトの表示によって構成することができる。したがって、操作者にとっては操作がわかり易く使い勝手が良いため、タッチパネルを備えた端末装置は急速に普及している。
【0005】
しかしながら、いずれの方式のタッチセンサにおいても、指やスタイラスによるタッチ操作を受け付けるものであって、タッチセンサ自体は、タッチされても、機械式の押しボタンスイッチのようには物理的に変位しない。したがって、操作者は、タッチ操作が受け付けられても、当該操作に対するフィードバックを得ることができない。このため、操作者は、操作を行う際のキーやボタンを「押下した/押下を解除した」という操作感が得られず、同じ位置を何度もタッチする等の操作の繰り返しが生じ易く、操作者にストレスを与える場合がある。
【0006】
そこで、タッチセンサが接触を検知すると、タッチセンサを振動させるようにしたフィードバック方法も提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えば静電容量方式のタッチセンサにおいては、透明な導電膜に微弱な電流を流すことでタッチセンサの表面全体に電界を形成し、その導電膜に操作者の指等が接触した位置の表面電荷の変化をとらえて位置検出を行う。この際、人体の静電容量を経由して流れる微弱な電流の変化に基づいて、その接触の位置を求めている。
【0009】
このような静電容量方式のタッチセンサを備えた触感呈示装置において、タッチセンサを振動させて操作者に触感のようなフィードバックを提供するには、振動を発生するための駆動機構を、タッチセンサの傍に設置しなければならない。しかも、このような駆動機構をタッチセンサの傍に設置する場合、その駆動機構がタッチセンサに接する程度に、可能な限り近接させて設置する必要がある。さもないと、駆動機構の発生する振動がタッチセンサに十分に伝達せず、また、そのような場合、タッチセンサの振動にかかる電力の一部が浪費されるという不都合が生じるからである。また、特に携帯電話のような小型の端末装置においては、内部スペースの制約などからも、振動を発生する駆動機構をタッチセンサに近接させて設置しなければならないという事情もある。
【0010】
しかしながら、タッチセンサを振動させるために、例えば圧電素子のような触感呈示部をタッチセンサの近傍に設置すると、圧電素子を振動させる際に印加する電圧による電場が発生する。上述したように、タッチセンサは微弱な電流の変化に基づいて接触の位置を求めるものである。そのため、このような電場が発生すると、それが仮に微弱なものであっても、タッチセンサに対する接触の位置の検出に悪影響を及ぼしてしまうという問題がある。すなわち、操作者にフィードバックを提供するために、触感呈示部を駆動するための電圧を印加すると、タッチセンサが影響を受けてしまうため、接触の位置を正確に検出することができなくなるおそれがある。
【0011】
このため、近年の研究により、フィードバックを提供する際に触感呈示部が発生する電場によるノイズに対してある程度の耐性を有しつつ、接触の位置を検出できる検出機構を備えるタッチパネルの開発が進められている。また、例えば接触の位置を検出するために電流を流す走査線の形状を工夫する等して、ノイズをキャンセルするような技術などの研究も進められている。さらに、液晶表示パネルなどの表示部をタッチセンサに重ねて使用する場合、この表示部からもノイズが発生するが、適切な静電容量デジタル変換器や雑音抑制アルゴリズムを使用することにより、ある程度のノイズは排除することができる。
【0012】
しかしながら、これらのようなタッチセンサであっても、圧電素子のような触感呈示部をタッチセンサのごく近傍に設ける場合、電場の悪影響を受けないようにするのに十分と言えるものではない。なぜなら、タッチセンサは、そもそも外部からの影響(作用)を受けて、それを検出するものであるため、接触の位置を検出する精度を良好にするには、タッチセンサをある程度敏感にすることが求められるからである。
【0013】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、触感の呈示がタッチセンサの位置検出に与える影響を低減することのできる触感呈示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する第1の観点に係る触感呈示装置の発明は、
タッチセンサと、
前記タッチセンサに近接して配置され、当該タッチセンサを振動させる触感呈示部と、
前記タッチセンサに走査信号を送信するとともに、当該タッチセンサから前記走査信号を受信することにより、前記タッチセンサに対する接触の位置を検出するタッチセンサ制御部と、
前記タッチセンサと前記タッチセンサ制御部との間で走査信号を伝達する信号線と、
前記タッチセンサ制御部が検出する前記接触の位置に応じて、前記タッチセンサを振動させるように前記触感呈示部を制御する触感制御部と、
を備え、
前記触感呈示部は、前記信号線に重ならない箇所に配置されるようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に掛かる触感呈示装置において、
前記タッチセンサを、静電容量方式のタッチセンサとするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、触感呈示部が、タッチセンサと制御部との間で走査信号を伝達する経路に重ならない箇所に配置される。したがって、本発明によれば、触感の呈示がタッチセンサの位置検出に与える影響は低減され、タッチセンサは高い精度で接触の位置の検出を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る触感呈示装置の概略構成を示す図である。本実施の形態に係る触感呈示装置は、例えば携帯電話やゲーム機などの携帯端末や、銀行に設置されるATM、駅に設置される券売機など、タッチセンサにより操作者のタッチ操作に基づいて動作を行うものであれば、任意の装置に適用することができる。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係る触感呈示装置1は、基板10、タッチセンサ11、触感呈示部12、信号線13および14、タッチセンサ制御部20、および、触感制御部30を備える。なお、タッチセンサ制御部20は、走査信号発生部22および位置検出部24を含んで構成される。また、触感制御部30は、駆動信号発生部32を含んで構成される。
【0021】
本実施の形態において、基板10は、後述する液晶パネルなどで構成される表示部の前面に配置する。当該表示部の表示を視認可能にするために、基板10において、表示部の表示がなされる部位に対応する部分は、透過性を有するようにする。基板10の前面において、この透過性を有する部分に、典型的にはシート状で透過性を有するタッチセンサ11を配置する。
【0022】
タッチセンサ11は、タッチ面を有するセンサであり、操作者の指などがタッチ面に接触(タッチ)したことを検出する。このタッチセンサ11は、一般的には、例えば抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の公知の方式のもので構成することができるが、本実施の形態では静電容量方式のものを採用する。タッチセンサ11が静電容量方式の場合、通常、格子状のX電極およびY電極からなるセンサ部を備えており、このセンサ部は、電極間に電気エネルギーを蓄えることができる。タッチセンサ11に対して接触がなされていない状態では、センサ部の2つの電極は安定した電界を構成する。しかしながら、人間の指が近接または接触すると、人体の持っている導電性により指がアースの役割を果たすため、電界が変化して、指が触れた部分の静電容量値が減少する。この静電容量値の変化に基づいて、触感呈示装置1は、タッチセンサ11に対する接触の位置を検出することができる。なお、
図1においては、タッチセンサ11のX電極およびY電極の一部のみを示している。
【0023】
また、タッチセンサ11は、タッチ面を透過型にして、図示しない表示部の前面に配置することにより、表示部に表示したキーやボタン等のオブジェクトに対して操作者がタッチ(接触)したことを検出するセンサとしても使われる(いわゆるタッチパネル)。ここで、図示しない表示部は、ボタンやキーまたはアイコン等のオブジェクトを描画して表示するもので、例えば、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等を用いて構成する。このように、触感呈示装置1は、表示部にキーやボタンなどのオブジェクトを表示して、当該オブジェクトに対する操作者の接触が行われる際に、当該オブジェクトに対応するタッチセンサ11上の位置において当該接触を検出する。なお、本実施の形態において、触感呈示装置1が、表示部の前面にタッチセンサ11を配置して、表示部に表示したオブジェクトの位置に対する接触に基づいて動作を行うことについては、公知の技術によるものと特に変わるところがないため、図示および詳細な説明を省略する。
【0024】
触感呈示部12は、タッチセンサ11を振動させるもので、一般的には種々のものを用いることができるが、本実施の形態においては圧電振動子(圧電素子)を用いて構成する。本実施の形態において、触感呈示部12は、タッチセンサ11に対する振動を十分に伝達することができるように、タッチセンサ11に十分近接させて配置するのが好適である。この際、触感呈示部12は、基板10の透過性を有しない部分、すなわち基板10においてタッチセンサ11の接触検出領域および上述した表示部が重なる領域以外の部分に、例えば接着などにより固定して配置する。
図1において、触感呈示部12は、基板10において、タッチセンサ11の上部に近接させて配置してある。このようにすれば、触感呈示部12の発生する振動はタッチセンサ11に十分に伝達する。つまり、触感呈示部12の発生する振動がタッチセンサ11に十分に伝達しないことによる電力の無駄を抑えることができる。
【0025】
タッチセンサ制御部20は、タッチセンサ11に対する操作者による接触の位置の検出を全般的に制御する。タッチセンサ制御部20は、タッチセンサ11に対する接触の位置の検出を行うために、走査信号発生部22から、タッチセンサ11の電極に走査信号を供給して走査を行う。位置検出部24は、走査信号発生部22からタッチセンサ11の電極に供給された走査信号の静電容量の変化を検知する。この時、位置検出部24は、タッチセンサ11から前記走査信号を受信する。これにより、タッチセンサ制御部20は、タッチセンサ11に対する接触の位置を検出して、その結果として位置情報を出力することができる。このような静電容量センシング技術も公知のものを用いることができるため、より詳細な説明は省略する。
【0026】
本実施の形態においては、
図1に示すように、タッチセンサ制御部20(より詳細には走査信号発生部22)からタッチセンサ11に向けて、信号線13が走査信号を伝達する。さらに、タッチセンサ11からタッチセンサ制御部20(より詳細には位置検出部24)に向けて、信号線14が走査信号を伝達する。このような信号線13および14は、例えばフレキシブル配線(フレキシブルケーブル)などを用いることができる。なお、
図1においては、信号線13および14を簡略化して示してある。
【0027】
触感制御部30は、触感呈示部12が触感を呈示する動作を全般的に制御する。具体的には、触感制御部30は、触感呈示の指示を受信すると、駆動信号発生部32から触感呈示部12に駆動信号を供給する。この駆動信号に応じて、触感呈示部12は、タッチセンサ11を振動させることにより所定の触感を呈示する。本実施の形態において、触感制御部30は、タッチセンサ制御部20が検出するタッチセンサ11に対する接触の位置に応じて、タッチセンサ11を振動させるように触感呈示部12を制御する。例えば、表示部に表示されたオブジェクトに対応するタッチセンサ11の位置に対する操作者の接触が検出されたら、当該オブジェクトに対応付けられた所定の動作が開始することを操作者に知らせるために、触感制御部30は、タッチセンサ11を振動させるように触感呈示部12を制御する。
【0028】
上述したように、タッチセンサ11を振動させるために、触感呈示部12をタッチセンサ11の近傍に設置すると、触感呈示部12を振動させる際に印加する電圧による電場が発生して、タッチセンサ11における接触の位置を検出する精度が悪化する。したがって、本実施の形態においては、
図1に示すように、触感呈示部12が、上述した信号線13および14に重ならない箇所に配置されるようにする。
【0029】
このように、触感呈示部12が、信号線13にも信号線14にも重なることなく、ある程度離間した配置構成にすることにより、触感呈示部12が触感の呈示(つまり振動の発生)を行っても、それによって発生する電界がタッチセンサの位置検出に与える影響は低減される。したがって、触感呈示装置1は、タッチセンサ11に対する接触の位置を高い精度で検出することができる。
【0030】
図2は、本実施の形態に係る触感呈示装置における触感呈示部の配置の他の例を示す図である。
図2に示す触感呈示装置2は、
図1において説明した第1実施の形態に係る触感呈示装置1において、触感呈示部の配置を変更するものである。その他の概略構成は、第1実施の形態に係る触感呈示装置1と同様の構成とすることができる。
【0031】
図2においては、触感呈示部を2つ配置した構成の触感呈示装置を示してある。
図2に示す触感呈示装置2は、タッチセンサ11の左側に触感呈示部12Aを配置するとともに、タッチセンサ11の右側に触感呈示部12Bを配置してある。したがって、
図1に示した構成よりも、タッチセンサ11に対して強力な触感を呈示できる。
【0032】
この配置構成において、信号線14は、触感呈示部12Bに重らないように配置してある。したがって、このような配置構成においても、触感呈示部12Bの振動によって発生する電界がタッチセンサの位置検出に与える影響は低減される。したがって、触感呈示装置2も、タッチセンサ11に対する接触の位置を高い精度で検出することができる。
【0033】
(第2実施の形態)
次に、本発明の第2実施の形態に係る触感呈示装置について説明する。第2実施の形態は、
図1および
図2において説明した第1実施の形態に係る触感呈示装置において、触感呈示部または信号線13,14の配置を変更するものである。その他の概略構成は、第1実施の形態に係る触感呈示装置1と同様の構成とすることができる。したがって、本実施の形態において、第1実施の形態にて説明した内容と同じになる説明は、適宜省略する。
【0034】
一般的に、触感呈示装置を構成する装置の筐体内部の構造によっては、第1実施の形態において
図1または
図2で説明したような、信号線13および14が触感呈示部12に完全に重ならないような配置にはできない場合も想定される。また、触感呈示装置を設計する際に用いる各構成要素の大きさや形状などの仕様による制約によっても、信号線13および14が触感呈示部12に完全に重ならないような配置にはできない場合が想定される。したがって、第2実施の形態においては、第1実施の形態のような信号線13および14が触感呈示部12に完全に重ならないような配置にはできない場合に講じる策について説明する。
【0035】
上述した第1実施の形態においては、静電容量方式のタッチセンサ11を用いて、このタッチセンサ11を流れる微弱な電流による信号の変化に基づいて、タッチセンサ11に対する操作者の接触の位置の検出を行った。具体的には、走査信号発生部22からは信号線13を経てタッチセンサ11に走査信号を伝達し、またタッチセンサ11からは信号線14を経て位置検出部24に走査信号を伝達することによって、タッチセンサ11に対する接触を検出するための信号の走査を行った。
【0036】
この際、走査信号発生部22から信号線13を経てタッチセンサ11に伝達される走査信号は、走査信号発生部22により生成されてから他の電界などの影響をほとんど受けていない、信号強度の高いものであることが想定できる。その一方、タッチセンサ11から信号線14を経て位置検出部24に伝達される走査信号は、すでにタッチセンサ11の走査を終えているため、人体の静電容量を経由することで変化している。また、タッチセンサ11から信号線14を経て位置検出部24に伝達される走査信号は、比較的長い経路にわたって伝達されてきたため、機器内部の各要素から種々の電磁波等による影響を受けていることが想定される。
【0037】
例えば、
図3に示す触感呈示装置5においては、タッチセンサ11からタッチセンサ制御部20に向けて走査信号を伝達する信号線14が、タッチセンサ11の右側に配置された触感呈示部12Bに重なっている。このような配置構成にすると、種々の影響を受けた後で信号線14を経て伝達されている走査信号が、触感呈示部12Bの発生する電界の影響をさらに受けて、タッチセンサ11に対する接触の位置を高い精度で検出することができないことが想定される。しかしながら、装置の筐体内部の構造上の制約などの要因により、信号線13および14の両方が触感呈示部12に完全に重ならないような配置にはできない場合も想定される。
【0038】
したがって、第2実施の形態においては、各構成要素の仕様などの制約により、信号線13または信号線14のどちらかを触感呈示部12に重ねて配置せざるを得ない場合、信号線14が触感呈示部12に重ならないように配置する。
【0039】
例えば、
図4に示す触感呈示装置3においては、タッチセンサ制御部20からタッチセンサ11に向けて走査信号を伝達する信号線13は、触感呈示部12Bに重なっている。しかしながら、タッチセンサ11からタッチセンサ制御部20に向けて走査信号を伝達する信号線14は、触感呈示部に重なっていない。このような配置構成にすれば、種々の影響を受けた後で信号線14を経て伝達されている走査信号が、触感呈示部12Bの発生する電界の影響をさらに受けることはない。したがって、触感呈示装置3においては、タッチセンサ11に対する接触の位置の検出における精度が大きく劣化することはない。
【0040】
次に、第2実施の形態において、信号線13および14が触感呈示部12に完全に重ならないような配置にはできない場合に講じる策の、他の例について説明する。
【0041】
図5に示す触感呈示装置6においては、タッチセンサ11からタッチセンサ制御部20に向けて走査信号を伝達する信号線14が、タッチセンサの下側に配置された触感呈示部12に重なっている。このような配置構成にすると、種々の影響を受けた後で信号線14を経て伝達されている走査信号が、触感呈示部12の発生する電界の影響をさらに受けて、タッチセンサ11に対する接触の位置を高い精度で検出することができないことが想定される。しかしながら、装置の筐体内部の構造上の制約などの要因により、触感呈示部12をこのような配置にせざるを得ない場合も想定される。
【0042】
このような場合、第2実施の形態においては、信号線14が触感呈示部12に重ならないように配置する。
【0043】
例えば、
図6に示す触感呈示装置4においては、タッチセンサ制御部20からタッチセンサ11に向けて走査信号を伝達する信号線13は、触感呈示部12に重なっている。しかしながら、タッチセンサ11からタッチセンサ制御部20に向けて走査信号を伝達する信号線14は、触感呈示部12に重なっていない。このような配置構成にすれば、種々の影響を受けた後で信号線14を経て伝達されている走査信号が、触感呈示部12の発生する電界の影響をさらに受けることはない。したがって、触感呈示装置4においては、タッチセンサ11に対する接触の位置の検出における精度が大きく劣化することはない。
【0044】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、上述した第1および第2実施の形態において、タッチセンサ制御部20と触感制御部30とは別個の構成要素として説明した。しかしながら、本発明による触感呈示装置は、このような構成態様に限定されるものではなく、例えば、タッチセンサ制御部20と触感制御部30とをワンチップ構成としたコントローラとすることも当然可能である。その他の構成要素も、適宜、複数の要素を併合させて単一の要素にする構成としたり、あるいは単一の要素を分離して複数の要素にする構成としたりすることもできる。
【0045】
上述した第1および第2実施の形態においては、タッチセンサ11に対する接触が、表示部に表示した触感を呈示すべきオブジェクトに対応する位置に検出された時点で、触感呈示部12が触感を呈示する態様について説明した。しかしながら、このように接触を検知した時点で触感を呈示すると、操作者がタッチセンサ11に意図せず軽く接触してしまった場合であっても触感を呈示することになる。このような装置は、操作者の意図しない操作も受け付けてしまうだけでなく、実際のキーやボタンなどを押下した際に得られるようなリアルな触感(ボタンが押し下がった触感)を操作者に与えることができない。
【0046】
そこで、上述した各実施の形態の触感呈示装置において、タッチセンサ11に対する押圧の荷重を検出する荷重検出部をさらに備えるようにすることも考えられる。この場合、本発明の触感呈示装置は、以下のような動作を行うことにより、操作者の圧覚を刺激した状態で触覚を刺激することで、操作者に対してリアルな触感(ボタンが押し下がった触感)を呈示するようにできる。
【0047】
すなわち、この場合の触感呈示装置は、荷重検出部により検出されるタッチセンサ11に加わる荷重が、触感を呈示する基準(例えば1N)を満たすまでは、圧覚を刺激するようにし、荷重が当該基準を満たすと、触感呈示部12を構成する圧電振動子を所定の駆動信号で駆動してタッチセンサのタッチ面を振動させて触覚を刺激する。これにより、この触感呈示装置は、押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)のようなボタンスイッチを押した際に得られるのと同様な触感を、操作者に呈示することができる。したがって、操作者は、タッチセンサ上(の表示部)に描画されたオブジェクトの押しボタンスイッチであっても、現実の押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなボタンの押し下がった触感を得ながら、タッチセンサ11に対して押圧操作を行うことができるので、違和感を覚えることがない。また、タッチセンサ11を「押した」という意識との連動で操作を行うことができるので、操作ミスも防止することができる。
【0048】
上述した触感を呈示する際の駆動信号、すなわち触覚を刺激する一定周波数、周期(波長)、波形、振幅は、呈示する触感に応じて適宜設定することができる。例えば携帯端末に使用されているメタルドームスイッチに代表される触感を呈示する場合、例えば、140Hz以上の一定周波数からなる1/4〜5/4の何れかの周期分の駆動信号により触感呈示部12を駆動する。このような駆動信号により触感呈示部12を駆動させて、タッチセンサ11のタッチ面を、基準の押圧荷重が加わった状態で、約15μm振動させる。これにより、実際のキーを押し下げた場合のような、リアルな触感を操作者に呈示することができる。
【0049】
以上説明したような動作を行う際、本発明の触感呈示装置において、触感呈示部を圧電振動子(圧電素子)とする場合、この触感呈示部が、タッチセンサ11に対する押圧の荷重を検出する荷重検出部を兼ねる構成とすることもできる。このようにすれば、装置の筐体内部に配置しなければならない構成要素を低減させることができる。