【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る土壌改質
方法は、土壌中の水分によって水和反応を起こす物
質を生分解性材料または/および水溶性材料を有する被覆材によって被覆した第1改質剤と、微生物または/および栄養素
を熱溶解性材
料を有する被覆材によって被覆した第2改質
剤を用い、まず第1改質剤の被覆を解消することによって水和反応を起こす物質を土壌中に放出し、次に水和反応を起こす物質によって第2改質剤の被覆を解消することによって微生物または/および栄養素を土壌中に放出することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2に係る土壌改質
方法は
、さらにpH調整剤
を熱溶解性材
料を有する被覆材によって被覆した第3改質剤を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項3に係る土壌改質
方法は、水和反応を起こす物質
質が、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種以上の物質であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4に係る土壌改質
方法は、pH調整剤が、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムから選ばれる少なくとも1種以上の物質であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5に係る土壌改質方法は、
嫌気状態の土壌を改質の対象とすることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項6に係る土壌改質方法は
、予め汚染土壌に微生物または/および栄養素を供給しておくことを特徴とする。
【0018】
次に本発明の各構成要件について説明する。
【0019】
(第1改質剤)
本発明の土壌改質
方法に用いられる第1改質剤は、土壌中の水分によって水和反応を起こす物
質を生分解性材料または/および水溶性材料を有する被覆材によって被覆したものである。
【0020】
(水和反応を起こす物
質)
ここで、第1改質剤に用いられる内容物である、土壌中の水分によって水和反応を起こす物質とは汚染土壌中の水分と水和反応することで水和熱を発生する物質
をいう。
なお、一般的に水和反応を起こす物質は水分によって酸またはアルカリに解離するものが多いが
、これらを併用することもできる。また、これらの物質の内容量については汚染度合などに応じて適宜調節することができる。
そして、これら水和反応を起こす物
質の例としては、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムなどの過酸化物、酸化カルシウム、水酸化カルシウムなどのカルシウム塩、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウムの過酸化水素付加物などが挙げられる。
そして、これらの中でも酸素供給剤としての性質も有している点から過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムなどの過酸化物を用いることが好ましい。
【0021】
(生分解性材料、水溶性材料を有する被覆材)
第1改質剤に用いられる被覆材には生分解性材料や水溶性材料が用いられる。かかる材料で第1改質剤の被覆材が形成されることによって、土壌中において所定の期間の後に被覆状態が自然に解消されて、内容物である水和反応を起こす物
質が土壌中に供給される。
また、かかる材料で被覆材が形成されることによって、被覆材成分が土壌中に残存することによる土壌に対する二次汚染を防止することができる。
【0022】
生分解性材料としては、例えばデンプン、ポリ乳酸、脂肪族エステル、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアリルアミン(PAAm)などが挙げられる。
【0023】
水溶性材料としては、例えばポリエチレンイミンなどのアルキレンイミンポリマー、ポリリジン、ポリアルギニンなどのポリアミノ酸、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース(MC)、プルラン、水溶性大豆多糖類、ゼラチンなどが挙げられる。
【0024】
(第2改質剤)
本発明の土壌改質剤に用いられる第2改質剤は、微生物または/および栄養素
を熱溶解性材料を有する被覆材によって被覆したものである。
【0025】
(微生物、栄養素)
第2改質剤に用いられる内容物である微生物や栄養素は、改質対象とする汚染土壌の汚染物質の種類に応じて適宜決定されるものであるが、例えば微生物としてはバチルス属、アシネトバクター属、シュードモナス属、ニトロソモナス属、ロドコッカス属、ゴルドニア属、Alcanivorax属、ハロモナス属などの細菌や、キャンディダ属などの酵母などが挙げられ、栄養素としてはLB培地、酵母エキス、イーストエクストラクト、ミネラルなどの栄養剤、窒素、燐、カリウムなどが含まれている有機系または無機系肥料などが挙げられる。
【0026】
ここで、微生物や栄養素については単独で用いても併用してもよい。また、本発明に用いられる微生物や栄養素は形態を問わず、固体、液体、粉体、ゲル状体など各種の形態のものを使用することができる。なお、微生物や栄養素の内容量については汚染度合などに応じて適宜調節することができる。
【0027】
(熱溶解性材料を有する被覆材)
第2改質剤に用いられる被覆材に
は熱溶解性材
料が用いられる。かかる材料で第2改質剤の被覆材が形成されることによって、第1改質剤の被覆状態が解消された後、水和反応によって汚染土壌が加温さ
れることで、第2改質剤の被覆材が溶解し内容物である微生物や栄養素が土壌中に供給される。
【0028】
ここで、熱溶解性材料としては、例えばパラフィンやワックスなどの、加温することによって液状となる、常温で固体の硬化油などが挙げられる。
【0031】
(第3改質剤)
本発明の土壌改質
方法は第1改質剤と第2改質剤を主要な構成要件として構成されるものであるが、第1改質剤の内容物に酸性またはアルカリ性に解離する物質を用いた場合には、かかる物質の解離によって第2改質剤の被覆材が溶解して微生物や栄養素が汚染土壌中に供給された後においても、汚染土壌中には酸性またはアルカリ性の物質が残存することになり、かえって汚染度合を悪化させることになる。そこでかかる場合には、さらに第3改質剤を用いることが好ましい。
ここで本発明の土壌改質
方法に用いられる第3改質剤は、pH調整剤
を熱溶解性材
料を有する被覆材によって被覆したものである。
【0032】
(pH調整剤)
第3改質剤に用いられる内容物であるpH調整剤としては、第1改質剤の内容物に用いられる酸性またはアルカリ性に解離する物質を中和できるものであれば特に限定されず、かかる物質に応じて適宜決定されるものであるが、例えば酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液などの各種の緩衝液や、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどが挙げられる。そして、これらの中でもリン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムを用いることが好ましい。
また、これらの物質については単独で用いても併用してもよく、内容量についても酸性またはアルカリ性に解離する物質の内容量などに応じて適宜調節することができる。
【0033】
(被覆方法)
本発明
の土壌改質方法に用いられる土壌改質剤に採用される被覆方法としては、転動造粒法や流動層造粒法などの公知の造粒方法、内容物に被覆材となる物質を塗布することでコーティングする方法、内容物を被覆材となる物質で作製したマイクロカプセルの中に充填する方法、内容物と被覆材となる物質とを混合した後に粒状やペレット状などに成形する方法などが挙げられる。
【0034】
(被覆形態)
本発明
の土壌改質方法に用いられる土壌改質剤の被覆の形態としては、例えば
図2のように内容物4が被覆材5で被覆された繋ぎ目のないシームレスタイプの土壌改質剤6aや、
図3のように凹型嵌合部7を有する被覆材5aと凸型嵌合部8を有する被覆材5bを作製し、かかる被覆材5a、5bの中に内容物4を入れて嵌合するカプセルタイプの土壌改質剤6bのようなものが挙げられる。
【0035】
また、土壌改質剤の被覆の形態としては、上記した材料のみを用いた形態だけでなくこれらの材料以外の他の材料が混合されている形態でもよい。なお、その混合比率は対象とする土壌に応じて調節することができる。
具体的には、
図2のように被覆材5の全部が上記した材料で形成されている土壌改質剤6a、
図4のように上記した材料と他の材料の混合比率を変化させた混合材料9によって被覆材5の全部が形成されている土壌改質剤6c、
図5のように上記した材料と他の材料の混合比率を変化させた混合材料9a、9bを層状に配置した土壌改質剤6d、
図6のように被覆材5の一の部分10が上記した材料で形成されており、他の部分11が他の材料で形成されている土壌改質剤6e、
図7のように
図6の一の部分10に用いる上記した材料の代わりに、混合材料9を用いた土壌改質剤6fなどが挙げられる。
なお、
図4〜
図7については、図示しやすいように
図2に示すシームレスタイプによって模式したが、これに限定されず
図3のようなカプセルタイプにおいても採用することができる。
【0036】
(粒径)
本発明
の土壌改質方法に用いられる土壌改質剤の粒径については特に限定されず、汚染土壌の状況に応じて適宜設定することができるが、対象土壌への適用のし易さや被覆材が汚染土壌中にて分解した際の内容物の効率的な拡散のためには、1μm〜10000μm程度の粒径とすることが好ましい。
【0037】
(被覆材の厚み)
本発明
の土壌改質方法に用いられる土壌改質剤の被覆材の厚みについては、内容物を土壌の質や深さ、汚染度合などに応じて適正な時期に土壌中に供給できる厚みであれば特に限定されないが、強度や改質効果の発現時期などを考慮すると1mm〜25mmであることが好ましい。
その理由は、被覆材の厚みがあまりにも薄すぎると取扱い時に被覆材が壊れてしまい、土壌に投入する前に内容物が出てしまう恐れがあるからであり、逆にあまりにも厚すぎると改質効果が発現するまでに時間がかかりすぎ、改質効果が不十分になる恐れがあるからである。
【0038】
(土壌改質方法)
本発明の土壌改質方法としては、上記した土壌改質剤を用いる方法であれば特に限定されないが、汚染土壌をより完全に浄化するためには、予め汚染土壌に微生物や栄養素を供給して汚染度合を低下させてから上記土壌改質剤を供給することが好ましい。
【0039】
また、本発明の土壌改質方法としては、改質の対象となる土壌環境に応じて、内容物の量や被覆材の厚みなどを調整した各種の土壌改質剤を使い分けることもできる。
例えば、建造物などが立っておらず、かつ地表面付近に存在する土壌については、地表面から酸素の供給が多く行われることから、汚染土壌中に元来存在している微生物の活動が活発ないわゆる好気的な土壌環境にある。従って、かかる汚染土壌に対しては内容物の量が少なく被覆材の厚みが薄い土壌改質剤を用いることによって改質状態を調節する方法が挙げられる。
一方、地表面上に建造物などが立っている土壌や深度が高い土壌については、地表面からの酸素の供給がほとんど行われない、いわゆる嫌気的な土壌環境にあることから、内容物の量が多く被覆材の厚みが厚い土壌改質剤を用いることによって改質状態を調節する方法が挙げられる。
また、このような嫌気的環境の土壌では、場合によっては継続的な改質を行う必要があることから、被覆材の厚みが段階的に異なる数種の土壌改質剤を混合することによって、被覆材の被覆状態が解消される時期をずらして内容物が途切れることなく土壌中に供給されるようにして、土壌中の微生物の活動を維持する方法が挙げられる。