【実施例】
【0038】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0039】
実施例1〜7および比較例1
金属濃度が既知の、硝酸イットリウム溶液と、硝酸マンガン溶液をYとMnとがMn/Y=2となるようにそれぞれ混合し、最終的に得られるYMOが50g/Lとなるようにイオン交換水で濃度調整したものを原料液とした。2.5%NH
3水溶液26.59mLと、30%過酸化水素水11.33mLとを混合した水溶液にイオン交換水を加えて265.9mLに調整し沈殿剤とした。その後原料液に沈殿剤を滴下し沈殿を生成し、得られた沈殿物をろ過し、洗浄した後、加熱して粉末を得た。
【0040】
硝酸銀0.124gに水37.5gを加え、攪拌して硝酸銀水溶液とし、さらに表1に示す過剰分Mnが含有されるように硝酸マンガンを添加して水溶液とし、各水溶液に上記で得られた粉末を1.5gずつ投入し、加熱して、実施例1〜7および、比較例1の排気ガス浄化用触媒を得た。得られた排気ガス浄化用触媒のAg担持量は金属Ag+担体の合計質量基準で5.57質量%であった。
【0041】
ここで、過剰分のMn(at%)は、Y:Mn=1:2の場合のマンガン量に対して過剰に含有されるマンガン量であり、例えば、Y:Mn=1:2.2の場合、Mn過剰量は、10at%となる。
【0042】
実施例8〜11
金属濃度が既知の、硝酸イットリウム溶液と、硝酸マンガン溶液とをそれぞれ調製し、YとMnとが表1に示すMn過剰の割合となるようにそれぞれ混合し、最終的に得られるYMOが50g/Lとなるようにイオン交換水で濃度調整したものを原料液とした。一方、2.5%NH
3水溶液26.59mLと、30%過酸化水素水11.33mLとを混合した水溶液にイオン交換水を加えて265.9mLに調製し、沈殿剤とした。
【0043】
その後、原料溶液に沈殿剤を滴下し、沈殿を生成し、沈殿物をろ過し、洗浄した後、加熱して粉末を得た。
【0044】
硝酸銀0.124gにイオン交換水37.5gを加え、攪拌して硝酸銀水溶液としたものに、上記各粉末を1.5g投入し、加熱して実施例8〜11の排気ガス浄化用触媒を得た。得られた排気ガス浄化用触媒のAg担持量は金属Ag+担体の合計質量基準で5.57質量%であった。
【0045】
<XRD測定1>
実施例1〜4、7および比較例1の排気ガス浄化用触媒について大気中、700℃で30時間の耐久処理を行った後のXRDパターンを
図1に示す。また、各実施例1〜11および比較例1のAg(220)面ピーク強度と、YMO(211)面ピーク強度との比を表1に併せて示す。
【0046】
この結果、実施例1〜4、7および比較例1の排気ガス浄化用触媒は、DyMn
2O
5構造をとる複酸化物であると同定された。実施例5、6についてのXRDは省略するが、同様にDyMn
2O
5構造をとる複酸化物であると同定された。
【0047】
また、実施例1〜4では、過剰分のMnに起因するピークが観察されず、且つDyMn
2O
5構造に起因するピークが高角度側にシフトしていることから、過剰分のMnはすべて結晶に固溶していることが確認された。組成比Mn/Y=3.2、Mn/Y=3.6の実施例5、6および、組成比Mn/Y=3.7の実施例7では、酸化マンガン(Mn
2O
3)のピークが観察され、過剰分のMnの一部が酸化マンガンとして複酸化物と共存することが確認されたが、DyMn
2O
5構造に起因するピークの高角度側へのシフトが残存していることから、少なくとも過剰分の一部のMnは複酸化物の結晶に固溶していると考えられる。よって、この場合、複酸化物においてMn/Yは配合割合より多少小さくなっている。
【0048】
さらに、実施例1〜7では、Agに帰属されるピークが同一量のAg量である比較例1のピークに比較して小さくなっており、これから、Agの少なくとも一部が結晶に固溶していると判断される。
【0049】
また、実施例8〜11と比較例1の排気ガス浄化用触媒について大気中、700℃で30時間の耐久処理を行った後のXRDパターンを
図2に示す。また、各実施例および比較例のAg(220)面ピーク強度と、YMO(211)面ピーク強度との比を表1に併せて示す。
【0050】
この結果、実施例8〜11の排気ガス浄化用触媒は、Y/Mn>2であるが、DyMn
2O
5構造をとる複酸化物であると同定された。
【0051】
また、実施例8〜11でも、過剰分のMnに起因するピークが観察されず、且つDyMn
2O
5構造に起因するピークが高角度側にシフトしていることから、過剰分のMnは結晶に固溶していることが確認された。
【0052】
さらに、実施例8〜11でも、Agに帰属されるピークが同一量のAg量である比較例1のピークに比較して小さくなっており、これから、Agの少なくとも一部が複酸化物の結晶に固溶していると判断される。
【0053】
実施例12〜20
硝酸イットリウム溶液と硝酸マンガン溶液と硝酸ランタン溶液を用いて、YとLaとが表2のa欄に示す比となると共に(Y+La)とMnとが表2のb欄に示す比となるようにそれぞれ混合した以外は、実施例1と同様にして、(Y
1−xLa
x)Mn
2+yO
5の複酸化物からなる実施例12〜20の排気ガス浄化用触媒を得た。得られた排気ガス浄化用触媒のAg担持量は金属Ag+担体の合計質量基準で5.57質量%であった。
【0054】
比較例2〜6
硝酸イットリウム溶液と硝酸マンガン溶液と硝酸ランタン溶液を用いて、YとLaとが実施例12〜16と同様になると共に(Y+La)とMnとがMn/(Y+La)=2となるようにそれぞれ混合し、硝酸銀水溶液を添加する工程では過剰分のMnを添加しない以外は、実施例12〜16と同様にして、(Y
1−xLa
x)Mn
2O
5の複酸化物からなる比較例2〜6の排気ガス浄化用触媒を得た。得られた排気ガス浄化用触媒のAg担持量は金属Ag+担体の合計質量基準で5.57質量%であった。
【0055】
<XRD測定2>
実施例12〜16および実施例4の排気ガス浄化用触媒について大気中、700℃で30時間の耐久処理を行った後のXRDパターンを
図3に示す。また、比較例1〜6の排気ガス浄化用触媒について同様に測定したXRDパターンを
図4に示す。
【0056】
この結果、Mn過剰の実施例12〜16についてDyMn
2O
5構造に起因するピークが確認された。実施例17〜20についても同様な結果が確認された。
【0057】
また、Mnが過剰ではない比較例2〜6については、DyMn
2O
5構造に起因するピークが同一La置換量の実施例12〜16と比較して小さくなることが確認され、アモルファス成分が増加することがわかった。これは、Mn過剰でないと、DyMn
2O
5構造の結晶に成長し難くなることを示している。
【0058】
さらに、実施例12〜16のDyMn
2O
5構造に起因するピークは、高角度側へのシフトが残存していることが確認された。このことから、少なくとも過剰分の一部のMnは複酸化物の結晶に固溶していると考えられる。よって、この場合、複酸化物においてMn/(Y+La)は表2の配合割合の表記より多少小さくなっている。また、実施例17〜20についても同様な結果が確認された。
【0059】
さらに、実施例12〜20では、Agに帰属されるピークが同一のAg担持量であり、かつ同一のLa置換量である比較例2〜6のピークと比較して小さくなっており、これから、Agの少なくとも一部が結晶に固溶していると判断される。
【0060】
<固定床模擬ガス浄化性能評価試験1>
実施例1〜20および比較例1、5、6の排気ガス浄化用触媒について大気中、700℃で30時間の耐久処理を行った後の排気ガス浄化用触媒の触媒活性を以下のようにして評価した。
【0061】
まず、固定床流通型反応装置を用い、反応管に触媒粉を0.1gセットし、下記表3の組成から成る模擬排気ガスを1L/minで流通させ、500℃まで昇温後10分間保持し、前処理を行った。その後、一旦冷却後、100℃〜500℃まで10℃/minで昇温し、100〜500℃における出口ガス成分をCO/HC/NO分析計を用いて測定した。得られた浄化性能評価結果より、CO及びHCの50%浄化率に到達する温度(T50)及び400℃におけるNOの浄化率を求めた。その結果は表1および表2に示す通りであった。なお、浄化されたNOのほとんどはNO
2に転化していることがわかった。
【0062】
表1および表2には、700℃で30時間の耐久処理後の比表面積(BET法で測定)をあわせて示す。
【0063】
この結果、Mnが過剰となっている実施例1〜11の排気ガス浄化用触媒は、比較例1と比較して触媒活性が向上していることがわかった。また、Mnが50at%過剰までは過剰量が大きいほど触媒活性が向上するが、60at%、80at%、85at%過剰の実施例5、6、7では、実施例4より触媒活性が低下しており、Mnの過剰量は、2〜85at%、好ましくは、5〜50at%がよいことがわかった。
【0064】
また、AサイトのYの一部をLaで置換した実施例12〜20に関しても、同一La置換量である比較例2〜比較例6と比較して触媒活性が向上していることがわかった。代表例として実施例15、16と比較例5、6の値を表2に示す。
【0065】
<スス燃焼性評価試験>
実施例1〜20の排気ガス浄化用触媒のパティキュレート燃焼性は従来使われているPt担持アルミナよりも優れていた。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
実施例21、22
Agの担持量をAg+担体の合計質量基準で0質量%、2質量%とした以外は、実施例4と同様にして実施例21、22の排気ガス浄化用触媒を得た。
【0070】
<固定床模擬ガス浄化性能評価試験2>
実施例21、22の排気ガス浄化用触媒について大気中、700℃で30時間の耐久処理を行った後、排気ガス浄化用触媒の触媒活性を固定床模擬ガス浄化性能評価試験で評価した。結果を表4に示す。この結果から、Agの担持により、排ガス浄化性能が向上することがわかった。また、Agの担持量は、Ag+担体の合計質量基準で1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%とするのがよいこともわかっている。
【0071】
【表4】