特許第5805777号(P5805777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5805777溶融スラグ微粒化装置、有価金属回収装置、及び、溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5805777
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】溶融スラグ微粒化装置、有価金属回収装置、及び、溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/04 20060101AFI20151021BHJP
   C21C 5/28 20060101ALI20151021BHJP
   C21B 3/06 20060101ALI20151021BHJP
   F27D 15/00 20060101ALI20151021BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   C22B7/04 A
   C21C5/28 C
   C21B3/06
   F27D15/00 B
   F27D15/00 C
   F27D17/00 102
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-537592(P2013-537592)
(86)(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公表番号】特表2014-500908(P2014-500908A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】KR2011006426
(87)【国際公開番号】WO2012060547
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2013年5月2日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0109416
(32)【優先日】2010年11月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】510273880
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】キ、ジュン‐ソン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュン‐ホ
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、ジン‐イル
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−528783(JP,A)
【文献】 特開2004−238233(JP,A)
【文献】 特開平10−029830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 7/04,
C21C 5/28,5/52−5/54,
C21B 3/06−3/10,
C04B 5/00,
F27D 15/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間部が形成されたスラグポットと;
前記スラグポットの上部に配置され、上部がホッパー状に形成され、供給された溶融スラグを渦流形成によって前記スラグポット内に供給する渦流形成部材と;
高炉、転炉または電気炉の溶融スラグをスラグ注入コップから受けて一時保存した後、前記渦流形成部材に一定流速で供給するスラグ供給ポットと;
前記渦流形成部材に供給される溶融スラグに還元剤を投入する還元剤供給管部材と;を含むことを特徴とする、有価金属回収装置。
【請求項2】
前記渦流形成部材は、上部から下部に行くほど内径が徐々に小さくなるホッパーの形状を持ち、下部が直線管形状を持つことを特徴とする、請求項1に記載の有価金属回収装置。
【請求項3】
前記スラグ供給ポットは、上部一側に注入口が形成され、下部一側に前記渦流形成部材の上部に伸びた排出口が形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の有価金属回収装置。
【請求項4】
前記還元剤供給管部材は、還元剤が溶融スラグの渦流形成中心部と縁部の間に投入されるように、端部が前記渦流形成部材の上部中心と縁部の間に向かって配置されることを特徴とする、請求項1に記載の有価金属回収装置。
【請求項5】
内部に空間部が形成されたスラグポットと;
前記スラグポットの上部に配置され、ホッパー状に形成され、供給された溶融スラグを渦流形成及び微粒化によって前記スラグポット内に供給する渦流形成部材と;
高炉、転炉または電気炉の溶融スラグをスラグ注入コップから受けて一時保存した後、前記渦流形成部材に一定流速で供給するスラグ供給ポットと;
前記渦流形成部材を通じて前記スラグポット内に供給される溶融スラグを冷却させる冷却手段を含むことを特徴とする、溶融スラグ微粒化装置。
【請求項6】
前記渦流形成部材は、上部入口から下部出口に行くほど内径が徐々に小さくなるホッパー形状であることを特徴とする、請求項5に記載の溶融スラグ微粒化装置。
【請求項7】
前記冷却手段は、前記スラグポット内にスチームを流入させるスチーム供給部、及び前記スラグポット内にガスを流入させるガス供給部の中から選ばれた1種以上を含むことを特徴とする、請求項5に記載の溶融スラグ微粒化装置。
【請求項8】
前記スラグポット内には、前記渦流形成部材の直下部に落下しながら凝固するスラグを回収するための回収管部材が備えられることを特徴とする、請求項5に記載の溶融スラグ微粒化装置。
【請求項9】
前記スラグポットの下部一側に、前記空間部に連通し、冷却されて固相化したスラグが外部に排出される固相スラグ排出口が形成され、
前記空間部に、前記固相スラグ排出口に向かって伸びた案内傾斜板が備えられたことを特徴とする、請求項5に記載の溶融スラグ微粒化装置。
【請求項10】
前記スラグポットの上部一側に、溶融スラグの冷却時に発生した高温の蒸気及び高温の空気を排出する廃熱排出管が備えられ、
前記廃熱排出管に前記高温の蒸気及び高温の空気の熱を回収して温水を生産する熱交換器が配置されたことを特徴とする、請求項5に記載の溶融スラグ微粒化装置。
【請求項11】
内部に空間部が形成されたスラグポットと;
前記スラグポットの上部に配置され、ホッパー状に形成され、供給された溶融スラグを渦流形成によって前記スラグポット内に供給する渦流形成部材と;
高炉、転炉または電気炉の溶融スラグをスラグ注入コップから受けて一時保存した後、前記渦流形成部材に一定流速で供給するスラグ供給ポットと;
前記渦流形成部材を通じて前記スラグポット内に供給される溶融スラグを冷却させる冷却手段を含み、
前記渦流形成部材に供給される溶融スラグに還元剤を投入する還元剤供給管部材をさらに含むことを特徴とする、溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置
【請求項12】
前記還元剤供給管部材は、還元剤が溶融スラグの渦流形成中心部と縁部の間に投入されるように、端部が前記渦流形成部材の上部中心と縁部の間に向かって配置されることを特徴とする、請求項11に記載の溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置に係り、より詳しくは高炉、転炉または電気炉の溶融スラグを微粒化して有価金属を回収するための溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置に関する。
【0002】
本発明は2010年11月4日付で出願された大韓民国特許出願第10−2010−0109416号の出願日の利益を主張し、その内容の全部はこの明細書に引用される。
【背景技術】
【0003】
スラグは鉄鋼製錬工程で不可避に発生する生成物である。スラグは、製銑過程において鉄鉱石やコークスの脈石成分から、製鋼過程で溶銑または溶鋼の酸化及び脱酸の際に生成する酸化物、あるいは精錬を目的で添加される副原料などによって不可避に生成する。
【0004】
スラグはSiOとCaOを基本系とし、精錬反応の種類によってAl、FeO、MgO、P及びCaSなどを含む。
【0005】
製銑スラグはCaO−SiO−Alを基本系とし、溶銑または溶鋼の酸化反応による製鋼スラグはCaO−SiO−FeOを基本系としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高炉、転炉または電気炉の溶融スラグの微粒化が可能であり、有価金属の回収及びスラグの顕熱回収が容易な溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明の特徴によれば、内部に空間部が形成されたスラグポットと;前記スラグポットの上部に配置され、上部がホッパー状に形成され、供給された溶融スラグを渦流形成によって前記スラグポット内に供給する渦流形成部材と;高炉、転炉または電気炉の溶融スラグをスラグ注入コップから受けて一時保存した後、前記渦流形成部材に一定流速で供給するスラグ供給ポットと;前記渦流形成部材に供給される溶融スラグに還元剤を投入する還元剤供給管部材と;を含む。
【0008】
前記渦流形成部材は、上部が下部に行くほど内径が徐々に小さくなるホッパーの形状を持ち、下部が直線管形状を持つ。
【0009】
前記スラグ供給ポットは、上部一側に注入口が形成され、下部一側に前記渦流形成部材の上部に伸びた排出口が形成される。
【0010】
前記還元剤供給管部材は、還元剤が溶融スラグの渦流形成中心部と縁部の間に投入されるように、端部が前記渦流形成部材の上部中心と縁部の間に向かって配置される。
【0011】
また、前記目的を達成するための本発明の特徴によれば、内部に空間部が形成されたスラグポットと;前記スラグポットの上部に配置され、ホッパー状に形成され、供給された溶融スラグを渦流形成によって前記スラグポット内に供給する渦流形成部材と;高炉、転炉または電気炉の溶融スラグをスラグ注入コップから受けて一時保存した後、前記渦流形成部材に一定流速で供給するスラグ供給ポットと;前記渦流形成部材を通じて前記スラグポット内に供給される溶融スラグを冷却させる冷却手段を含む。
【0012】
前記渦流形成部材は、上部入口から下部出口に行くほど内径が徐々に小さくなるホッパー形状である。
【0013】
前記冷却手段は、前記スラグポット内にスチームを流入させるスチーム供給部、及び前記スラグポット内にガスを流入させるガス供給部の中で選ばれた1種以上を含む。
【0014】
前記スラグポット内には、前記渦流形成部材の直下部に落下しながら凝固するスラグを回収するための回収管部材が備えられる。
【0015】
前記スラグポットの下部一側に、前記空間部に連通し、冷却されて固相化したスラグが外部に排出される固相スラグ排出口が形成され、前記空間部に、前記固相スラグ排出口に向かって伸びた案内傾斜板が備えられる。
【0016】
前記スラグポットの上部一側に、溶融スラグの冷却時に発生した高温の蒸気及び高温の空気を排出する廃熱排出管が備えられ、前記廃熱排出管に前記高温の蒸気及び高温の空気の熱を回収して温水を生産する熱交換器が配置される。
【0017】
前記渦流形成部材に供給される溶融スラグに還元剤を投入する還元剤供給管部材をさらに含む。
【0018】
前記還元剤供給管部材は、還元剤が溶融スラグの渦流形成中心部と縁部の間に投入されるように、端部が前記渦流形成部材の上部中心と縁部の間に向かって配置される。
【発明の効果】
【0019】
本発明は渦流を用いて溶融スラグ中の有価金属を効率よく回収することができ、固相化過程で微粒化が可能なので、還元したスラグの追加の破砕作業が不要であり、微粒化したスラグから顕熱を回収するので顕熱回収効率が増大する効果がある。
【0020】
また、顕熱を回収して熱交換に用いるので、温水またはスチームを得るためのエネルギーコストの節減の効果がある。
【0021】
このように、本発明は、製鉄工場で不可避に生成する溶融スラグから有価金属の回収率を高めることができ、スラグ微粒化によって破砕エネルギーを減少させ、有価金属と還元したスラグの分別性能が向上し、固相化過程での溶融スラグの廃熱、還元したスラグの顕熱回収が可能なので、エネルギー節減の面でも向上した効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置の一実施例を示す構成図である。
図2】本発明による溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置の他の実施例を示す構成図である。
図3】本発明による溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置のさらに他の実施例を示す構成図である。
図4図3のさらに他の実施例によって有価金属を回収してスラグの顕熱を回収する過程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明による溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置について説明する。
【0024】
本発明の溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置は、溶融スラグを渦流形成によってスラグポット内に供給することで、還元剤の混合効率を高めて有価金属回収率を高め、さらに溶融スラグを微粒化することに特徴がある。
【0025】
(一実施例)
一実施例は、溶融スラグを渦流形成によってスラグポット内に供給することで、還元剤の混合効率を高めて有価金属を容易に回収することを基本原理とする。
【0026】
一実施例による溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置は、スラグポット10、渦流形成部材20、スラグ供給ポット30、及び還元剤供給管部材40を含む。
【0027】
図1に示すように、スラグポット10は、内部に空間部11が形成され、下部に排出口13が形成され、上部がスラグポットカバー15によって選択的に開閉される構造を持つ。
【0028】
排出口13は後述する有価金属の排出のために備えられ、スラグポットカバー15は溶融スラグmの温度低下を防止するために備えられることができる。しかし、排出口13及びスラグポットカバー15は必要によって備えないこともある。
【0029】
渦流形成部材20はスラグポット10の上部に配置され、上部がホッパー状に形成され、供給された溶融スラグmを渦流形成によってスラグポット10内に供給する。渦流形成部材20は下部に行くほど内径が徐々に小さくなるように形成されたホッパー状のもので、下部が直線管状を持つ。
【0030】
本実施例において、渦流形成部材20は、上部がスラグポットカバー15に貫通して定着され、上部のホッパー状部が空間部11の外部に配置され、直線管状部が空間部11内に配置される。
【0031】
渦流形成部材20は、溶融スラグmをスラグポット10に供給するとき、渦流を伴う流れを誘導して還元剤Sと溶融スラグmの混合効率を高める。
【0032】
スラグ供給ポット30は、溶融スラグmをスラグ注入コップ50から受けて一時保存した後、渦流形成部材20に供給する。渦流を形成するためには、一定の流速を持ち、渦流形成部材20に溶融スラグmが供給されなければならないので、溶融スラグmを一定の流速で渦流形成部材20に供給するためにスラグ供給ポット30が備えられる。
【0033】
スラグ供給ポット30は、上部一側に注入口31が形成され、下部一側に渦流形成部材20の上部に向かって伸びた排出口33が形成された構造を持つ。溶融スラグmを一定の流速で渦流形成部材20に供給するために、注入口31は排出口33より大きく形成されることが好ましく、排出口33から排出される溶融スラグmの流速を調節するために、排出口33に開閉調節バルブ35が設置されることもできる。
【0034】
開閉調節バルブ35は別の制御部60によって開閉位が調節され、スラグ供給ポット30から渦流形成部材20に排出される溶融スラグmの流速を制御する。
【0035】
このようなスラグ供給ポット30は、渦流形成部材20に一定の流速で溶融スラグmを供給することができるものであればいずれの多様な形状及び容量のものであっても採用可能である。
【0036】
溶融スラグmは、高炉、転炉または電気炉の溶融スラグmがあり、この外にも製鉄所、製鋼工場、非鉄製錬、廃棄物処理場などで発生するすべての種類の溶融スラグと、これら施設で発生する廃棄物を2次加工した後に発生するスラグなどのいずれのスラグも含む。
【0037】
製鉄所及び製鋼工程で発生するスラグ中には、鉄、クロム、マンガンなどの多量の有価金属が含まれるので、そのままで排出する場合、経済的損失とともに環境汚染を引き起こすことになる。したがって、有価金属を回収し、有価金属が回収されたスラグは顕熱の回収によってリサイクルすることでエネルギーを低減する。
【0038】
一実施例の場合、有価金属を容易に回収することに目的があるので、例えば、有価金属を多量含有した電気炉の溶融スラグが好適であろう。
【0039】
スラグ注入コップ50は溶融スラグmを受けてスラグ供給ポット30に供給するための一種のポットである。
【0040】
還元剤供給管部材40は、渦流形成部材20に供給される溶融スラグmに還元剤Sを投入するためのものである。還元剤供給管部材40は、還元剤Sが溶融スラグmの渦流形成中心部と縁部の間Aに投入されるように、端部が渦流形成部材20の上部中心と縁部の間Aに向かうように配置される。
【0041】
渦流形成中心部は流速が高いため、還元剤Sが投入されれば、溶融スラグmと混合せずにすぐ渦流形成中心部に沿って下部に排出され、縁部は流速が低いため、還元剤が溶融スラグと混合するのに過多な時間がかかるので、有価金属の回収効率性の面で好ましくない。
【0042】
したがって、還元剤Sと溶融スラグmの混合効率を高めるために、還元剤Sが溶融スラグmの渦流形成中心部と縁部の間Aに投入されるものである。
【0043】
還元剤供給管部材40は上部の還元剤貯蔵部41に連結され、一定量の還元剤Sが供給できるように構成される。還元剤供給管部材40には、還元剤の供給量を調節することができる調節バルブ43が備えられ、調節バルブは別の制御部によって制御される。その他に、還元剤貯蔵部から還元剤供給管部材を通じて還元剤を供給する構造は本発明の要旨ではないのでその詳細な説明は省略する。
【0044】
還元剤Sは溶融スラグm中の有価金属を還元することができるすべての物質を意味し、アルミニウムドロス、炭素、ブラックカーボン、廃カーボン、微粉炭、コークス、石炭などが含まれることができる。また、有価金属の還元は、例えば溶融スラグ中のFeO、CrOなどをFe、Crなどに還元させることを意味することができる。還元剤は、反応効率を高めるために微分状の還元剤を投入することが好ましい。
【0045】
一方、図示されてはいないが、スラグポット10に熱を供給してスラグポット10内部のスラグを溶融状態で維持するための補助加熱装置(図示せず)を備えることができる。補助加熱装置は、還元剤供給による還元反応が終わった後、過度な吸熱反応によって溶融スラグ及び有価金属の温度が低下する場合を防止する。
【0046】
一実施例の作用を説明する。
【0047】
説明の便宜上、有価金属を多量含有した電気炉の溶融スラグを例として説明する。しかし、必ずしも一実施例が電気炉の溶融スラグに限定されるものではない。
【0048】
まず、電気炉の溶融スラグmをスラグ注入コップ50内に排出する。溶融スラグmは、電気炉を傾けるか、あるいはドアを備えている場合にはドアを開放してスラグ注入コップ50内に排出する。
【0049】
スラグ注入コップ50に排出された溶融スラグmをスラグ供給ポット30上部の注入口31を通じてスラグ供給ポット30に供給する。スラグ供給ポット30に供給された溶融スラグmは下部の排出口33を通じて渦流形成部材20に投入され、渦流を形成しながらスラグポット10内に供給される。
【0050】
この際、還元剤供給管部材40を通じて還元剤Sを溶融スラグmに供給するにあたり、端部が渦流形成部材20の上部中心と縁部の間Aに向かうように配置することにより、還元剤Sが溶融スラグmの渦流形成中心部と縁部の間Aに投入されるようにする。
【0051】
渦流形成部材20の上部は渦流を形成することにより、還元剤Sが投入されれば、還元剤Sと溶融スラグmが均一に混合され、均一に混合された溶融スラグmが渦流を形成しながら渦流形成部材20の直線管を通じてスラグポット内に供給される。
【0052】
スラグポット10内に供給された溶融スラグmは有価金属m2と残部の溶融スラグm1に分離され、高比重の有価金属m2がスラグポット10の下部に分離され、その上部に残部の溶融スラグm1が位置する。
【0053】
すると、上部の残部の溶融スラグm1を排出した後、スラグポット10の下部に位置する有価金属m2を回収すれば良い。もし、スラグポット10の下部に排出口13が備えられた場合には、スラグポット下部の排出口13を開放して有価金属を回収した後、残部の溶融スラグm1を回収することもできる。
【0054】
この際、還元剤Sの投入による過度な吸熱反応によって溶融スラグmの温度が低下すれば、補助加熱装置によってスラグポット10に追加の熱を供給することにより溶融スラグmを溶融状態で維持することができる。補助加熱装置は、スラグポット10の内部温度を高める装置であればどんな形態のものでも採用することができる。
【0055】
このような一実施例による装置は、溶融スラグに還元剤が均一に混合するようにするので、スラグに含まれた有価金属の回収が容易である。
【0056】
(他の実施例)
他の実施例は、溶融スラグをスラグポット内に供給するとき、渦流を形成して微粒化することを基本原理とする。
【0057】
図2に示すように、他の実施例の溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置は、スラグポット110、渦流形成部材120、スラグ供給ポット130、及び冷却手段140を含む。
【0058】
スラグポット110は、内部に空間部111が形成され、上部がスラグポットカバー113によって選択的に開閉される構造を持つ。ここで、スラグポットカバー113は必要によって備えないこともある。
【0059】
渦流形成部材120はスラグポット110の上部に配置され、ホッパー状に形成され、供給された溶融スラグmを渦流形成によってスラグポット110内に供給する。渦流形成部材120は、上部入口から下部出口に行くほど内径が徐々に減少するホッパー状となる。
【0060】
本実施例による渦流形成部材120は、上部がスラグポットカバー113に装着され、入口部が空間部111の外部に配置され、出口部が空間部111に配置される。このような渦流形成部材120は、渦流を形成することで、溶融スラグmがスラグポット110に供給されるとき、溶融スラグmの液滴がばらばらに分散されることにより、溶融スラグmが微粒化するようにする。
【0061】
具体的に、渦流形成部材120のホッパー形状が渦流を形成し、下部の直線管を備えないことにより、スラグポット110に供給されるとき、溶融スラグmが高速気流によってばらばらの液滴を形成し、この液滴がすぐ凝固することにより、溶融スラグmが微粒化するものである。
【0062】
このような渦流形成部材120は、渦流形成部材120の出口に接線方向の運動モメンタムを付与することで、微粒化したスラグm粒子が連続的に得られるようにする。
【0063】
スラグ供給ポット130は、溶融スラグmをスラグ注入コップ150から受けて一時保存した後、渦流形成部材120に供給する。渦流を形成するためには、一定の流速で渦流形成部材120に溶融スラグmを供給しなければならないので、溶融スラグmを一定の流速で渦流形成部材120に供給するためにスラグ供給ポット130を備える。
【0064】
スラグ供給ポット130は、上部一側に注入口131が形成され、下部一側に渦流形成部材120の上部に伸びた排出口133が形成された構造を持つ。溶融スラグmを一定の流速で渦流形成部材120に供給するために、注入口131は排出口133より大きく形成されることが好ましく、排出口133に排出される溶融スラグmの流速を調節するために、開閉調節バルブ135が設置されることもできる。開閉調節バルブ135は別の制御部160によって開閉程度が調節される。
【0065】
このようなスラグ供給ポット130は、渦流形成部材120に一定の流速で溶融スラグmを供給することができるものであれば、多様な形状及び容量のものが採用できる。
【0066】
溶融スラグmは、高炉、転炉または電気炉の溶融スラグであることができる。この外にも、製鉄所、製鋼工場、非鉄製錬、廃棄物処理場などで発生するすべての種類の溶融スラグ、及びこれら施設で発生する廃棄物を2次加工した後に発生するすべてのスラグを含む。
【0067】
他の実施例の場合、溶融スラグmを固相化する過程で微粒化させることに目的があるので、例えば有価金属をほぼ含有していない高炉の溶融スラグが好適であろう。微粒化した固相のスラグからは保有顕熱を回収することができる。
【0068】
有価金属を多量含有した溶融スラグの場合、有価金属の回収を先に行うことが好ましい。これは、有価金属を多量含有した溶融スラグは固相化して微粒化しても熱回収過程で有価金属が酸化するので、顕熱の回収に使用し難いからである。
【0069】
スラグ注入コップ150は溶融スラグmを受けてスラグ供給ポット130に供給するための一種のポットである。
【0070】
冷却手段140は、スラグポット110内に供給される液滴状の溶融スラグを冷却させるためのものである。冷却手段140は、スラグポット110内にスチームを流入させるスチーム供給部、及びスラグポット内にガスを流入させるガス供給部の中で選ばれた1種以上を含むことができる。
【0071】
スチーム供給部またはガス供給部は、スラグポット110の内壁一側に形成されて空間部111にスチームまたはガスを噴射するスチームまたはガス噴射口を含み、スチームまたはガス噴射口には多孔性プラグあるいはスチームまたはガスパイプを配設することができる。
【0072】
また、スチームまたはガスの外にも、溶融スラグmを冷却させることができる流体または気体であればどの種のものでも採用できる。
【0073】
一方、スラグポット110内には、渦流形成部材の直下部に落下しながら凝固するスラグを回収するための回収管部材170が備えられる。回収管部材170は上部が開放した管状のもので、開放した上部に凝固した固相のスラグを受ける案内部171が形成される。
【0074】
溶融スラグmを渦流形成部材120に供給しても、渦流の形成までは多少の時間がかかり、渦流形成前の溶融スラグmはスラグポット内に供給されるときに比較的大きな固相スラグm3に凝固する。このような固相スラグm3は渦流形成後に微粒化して凝固する微粒のスラグm4に含まれると通気性を損ない、スラグ微粒化のためのスチームまたはガスの噴霧に影響を及ぼし得る。
【0075】
渦流形成前に回収された比較的大きな形態の固相スラグm3は一定大きさの骨材で製造することができる。このような骨材として使われるスラグ量を最少化するために、図示されてはいないが、渦流形成部材にストッパーを設置することもできる。
【0076】
また、回収管部材170は、排出口173が後述する案内傾斜板180の下部で開口することで、渦流形成前に固相化した固相スラグm3を案内傾斜板180の下部に回収することができるようにする。
【0077】
スラグポット110の下部一側には、空間部111に連通し、冷却されて固相化した微粒のスラグm4を外部に排出させる固相スラグ排出口115が形成され、空間部111内で固相スラグ排出口115に向かって伸びた案内傾斜板180が備えられる。案内傾斜板180は、固相化した微粒のスラグm4を受けて固相スラグ排出口115に案内する役目をする。
【0078】
スラグポットカバー113の上部一側には、廃熱排出管117が備えられる。廃熱排出管117は、溶融スラグmの冷却の際に発生した高温の蒸気及び高温の空気が排出される管である。廃熱排出管117に熱交換器190が配置されることができる。熱交換器190は、高温の蒸気及び高温の空気の熱を回収して温水を生産するかあるいは他の目的に用いることができる。
【0079】
他の実施例の作用を説明する。
【0080】
説明の便宜上、有価金属をほぼ含有していない高炉の溶融スラグを例として説明する。しかし、必ずしも他の実施例が高炉の溶融スラグに限定されるものではない。
【0081】
他の実施例は、一実施例によって回収された溶融スラグに適用することもでき、有価金属をほぼ含有していない製鉄、製鋼、製錬などの溶融スラグに適用することもできる。
【0082】
まず、高炉の溶融スラグmをスラグ注入コップ150内に排出する。スラグ注入コップ150に排出された溶融スラグmをスラグ供給ポット130上部の注入口131を通じてスラグ供給ポット130内に供給する。スラグ供給ポット130に供給された溶融スラグmは下部の排出口133を通じて渦流形成部材に投入され、渦流を形成しながらスラグポット110内に供給される。この過程で、スラグポット110の内部にはスチームまたはガスを供給することにより、溶融スラグmがスラグポット110内に供給される過程で凝固することができるようにする。
【0083】
この際、渦流形成部材120に投入された溶融スラグmは、初期には渦流の形成作用が強くないので比較的大きな固相スラグm3となり、その後に流速が高くなって渦流が形成されれば、渦流形成部材120の出口に接線方向の運動モメンタムを付与することにより、四方に分散された円錐状の微細な液滴を形成しながらスラグポット110内に供給される。
【0084】
渦流の形成作用が強くない初期の溶融スラグmは渦流形成部材の直下部に落下するので、回収管部材170によって案内傾斜板180の下部に回収され、その後に渦流が形成された溶融スラグmは微粒化し、すぐ凝固して案内傾斜板180の上部に落下する。案内傾斜板180の上部に落下した固相化した微粒のスラグm4は案内傾斜板180の傾斜によって自然に移送され、固相スラグ排出口115を通じて外部に排出される。
【0085】
この過程で発生した高温の蒸気及び高温の空気の熱は廃熱排出管117に備えられた熱交換器190が回収し、固相スラグ排出口115を通じて外部に排出された微粒のスラグm4は追加の破砕過程なしにも図4の顕熱回収装置に送られ、顕熱を回収することができる。
【0086】
例えば、顕熱の回収は、スチーム供給部及び顕熱回収熱交換器が備えられた顕熱排出管を含む顕熱回収装置に微粒化した固相のスラグを装入し、スチーム供給部によってスチームまたは高温の空気を注入して、固相化した微粒のスラグm4が低温で溶融するようにすることにより、スラグが保有した熱を顕熱熱交換器が回収するようにする。
【0087】
顕熱の回収において、スラグの微粒化は低熱量の供給によってもより高温の熱を熱交換器が回収するようにして顕熱の回収効率を増大させる。
【0088】
(さらに他の実施例)
さらに他の実施例は、溶融スラグを渦流形成によってスラグポット内に供給することで還元剤の混合効率を高め、混合された溶融スラグをスラグポット内に供給するとき、渦流形成によってスラグを微粒化することを原理とする。
【0089】
微粒化した固相のスラグは還元剤投入によって還元反応した後に微粒化するので、有価金属と有価金属を含有していない微粒の固相スラグが混在している状態である。したがって、別途の破砕過程なしにも、磁性、磁場を用いて有価金属のみを回収することができる。
【0090】
さらに他の実施例は有価金属を多量含有した溶融スラグに適用することができ、他の実施例に比べ、一実施例の還元剤供給管部材をさらに含むことに違いがある。
【0091】
図3に示すように、さらに他の実施例による溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置は、スラグポット110、渦流形成部材120、スラグ供給ポット130、冷却手段140、及び還元剤供給管部材210を含む。さらに他の実施例は他の実施例に一実施例の還元剤供給管部材210が付け加わったものなので、その構成についての詳細な説明は省略する。
【0092】
さらに他の実施例において、還元剤供給管部材210が付け加えることは、有価金属を多量含有した溶融スラグの場合、有価金属の回収が先行されることが好ましいからである。何故ならば、有価金属を多量含有した溶融スラグは固相化して微粒化しても熱回収過程で有価金属が酸化するので、顕熱の回収に使用し難いからである。
【0093】
図4に基づいてさらに他の実施例の作用を説明する。
【0094】
説明の便宜上、有価金属を多量含有した電気炉の溶融スラグを例として説明する。しかし、必ずしもさらに他の実施例が電気炉の溶融スラグに限定されるものではない。
【0095】
例えば、さらに他の実施例は一実施例を適用しにくい場合に適用可能である。還元剤の中でアルミニウムドロスはFeより融点が高いため、一実施例を適用する場合にアルミニウムドロスが溶解しなくて有価金属と溶融スラグの分離が難しいことがある。
【0096】
図3及び図4を参照して説明すれば、まず電気炉の溶融スラグmをスラグ注入コップ150内に排出する。スラグ注入コップ150に排出された溶融スラグmをスラグ供給ポット130上部の注入口131を通じてスラグ供給ポット130内に供給する。スラグ供給ポット130に供給された溶融スラグmは下部の排出口133を通じて渦流形成部材120に投入され、渦流を形成しながらスラグポット110内に供給される。
【0097】
この際、還元剤供給管部材210を通じて微粒の還元剤Sを溶融スラグmに供給するにあたり、均一な混合のために端部が渦流形成部材120の上部中心と縁部の間Aに向かうように配置することにより、還元剤Sが溶融スラグの渦流形成中心部と縁部の間Aに投入されるようにする。
【0098】
渦流形成部材120は渦流を形成することにより、投入された還元剤Sと溶融スラグmを均一に混合させ、均一に混合された溶融スラグmが渦流を形成しながらスラグポット110の内部に供給されるようにする。
【0099】
また、この過程でスラグポット110の内部にはスチームまたはガスを供給することで、溶融スラグmがスラグポット110内に供給される過程で凝固するようにする。
【0100】
渦流形成部材120に投入された溶融スラグmは還元剤Sと均一に混合して還元反応するとともに、初期には渦流形成作用が強くないので、落下しながら比較的大きな固相のスラグm3となり、その後に流速が高くなって渦流が形成されれば、渦流形成部材120の出口に接線方向の運動モメンタムを付与することにより、四方に分散された微細な円錐状液滴が形成され、溶融スラグmがスラグポット110内に供給される。
【0101】
渦流形成作用が強くない初期の溶融スラグmは渦流形成部材の直下部に落下するので、回収管部材170を通じて案内傾斜板180の下部に回収され、その後、渦流が形成された溶融スラグmは微粒化しながらすぐ凝固して案内傾斜板180の上部に落下する。
【0102】
図4の(a)に示すように、案内傾斜板180の上部に落下した微粒化した固相のスラグm4は案内傾斜板180の傾斜によって固相スラグ排出口115を通じて外部に排出される。
【0103】
この過程で発生した高温の蒸気及び高温の空気の熱は廃熱排出管117に備えられた熱交換器190が回収するようにし、固相スラグ排出口115を通じて外部に排出された微粒化した固相のスラグm4は別途の破砕過程なしにも顕熱回収装置に送られて顕熱が回収されることができる。
【0104】
一方、案内傾斜板180の下部に回収された固相のスラグm3は骨材状に製造し、図4の(b)及び図4の(c)に示すように、案内傾斜板の傾斜によって外部に排出された固相のスラグ(m2、m4)は微粒化した固相のスラグで、有価金属m2を含むので、磁場をかけて有価金属を回収する。
【0105】
図4の(d)に示すように、有価金属が回収されてから残った微粒化した固相のスラグm4は顕熱回収装置220に送られ、顕熱が回収される。
【0106】
顕熱の回収は、スチーム供給部221及び顕熱回収熱交換器225が備えられた顕熱排出管223を含む顕熱回収装置220に有価金属を含まない微粒化した固相のスラグm4を装入し、スチーム供給部221によってスチームまたは高温の空気を注入して固相のスラグを低温で溶融させることにより、スラグが保有した熱を顕熱熱交換器が回収するようにする。
【0107】
顕熱の回収において、スラグ微粒化は低熱量の供給によっても高い熱量を熱交換器が回収するようにして顕熱回収効率を高める。
【0108】
このような本発明の基本的な技術的思想の範疇内で当業界の通常の知識を持った者によって他の多くの変形が可能であり、本発明の権利範囲は添付の特許請求範囲に基づいて解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、高炉、転炉または電気炉の溶融スラグを微粒化して有価金属を回収するための溶融スラグ微粒化及び有価金属回収装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0110】
10、110 スラグポット
11、111 空間部
13 排出口
15、113 スラグポットカバー
20、120 渦流形成部材
30、130 スラグ供給ポット
31、131 注入口
33、133 排出口
35、135 開閉調節バルブ
40、210 還元剤供給管部材
41、211 還元剤貯蔵部
43、213 調節バルブ
50、150 スラグ注入コップ
60、160 制御部
115 固相スラグ排出口
117 廃熱排出管
140 冷却手段
170 回収管部材
171 案内部
173 排出口
180 案内傾斜板
190 熱交換器
220 顕熱回収装置
221 スチーム供給部
223 顕熱排出管
225 顕熱回収熱交換器
図1
図2
図3
図4