(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
〔実施形態1〕
(自律移動装置103(自律移動体)の構成)
図1は、実施形態1に係る自律移動装置103(自律移動体)とその移動領域102との間の関係を示す図である。
図2は、自律移動装置103の構成を示す模式図である。自律移動装置103は、移動領域102に存在する物体の位置・形状を示す環境情報を取得するセンサとして、レーザレンジファインダ208を備えており、移動領域102に関する移動マップを用いて、レーザレンジファインダ
208で取得した環境情報に基づいて自己位置を認識しつつ移動可能な自律移動装置である。
【0016】
自律移動装置103は、1対の車輪202a・202bを駆動することで平面上を自律的に移動する装置である。
図1は、床部101上の限られた移動領域102(破線に囲まれた領域)内を、車両型の自律移動装置103が移動する一実施形態を概略的に示すものである。
図1においては、床部
101上の移動領域102内には特に物体が設置されていない状態を示すものとし、自律移動装置103が移動領域102内を任意に移動することができるものとする。
【0017】
図2に示すように、自律移動装置103は、箱型の本体201と、1対の対向する車輪202a・202bと、キャスタ203とを備える対向2輪型の移動装置である。これらの車輪202a・202bと、キャスタ203とで本体201を水平に支持する。さらに、本体201の内部には、車輪202a・202bをそれぞれ駆動するモータ204a・204bと、車輪202a・202bのそれぞれの回転数を検出するためのエンコーダ205a・205b(速度センサ、作業指標検出部)と、車輪202a・202bを駆動するための制御信号を生成し、モータ204a・204bにその制御信号を送信する演算部206と、これらの構成要素に電力を供給するためのバッテリー207とが備えられている。そして、演算部206内部に備えられた記憶部としてのメモリなどの記憶領域206aには、制御信号に基づいて自律移動装置103の移動速度や移動方向、移動距離などを制御するためのプログラムとともに、移動領域102とその領域内に存在する障害物(壁)の位置および形状に関する情報を含む環境地図が記憶されている。
【0018】
さらに、本体201の前面には、移動する方向(前方)の環境情報を認識するためのレーザレンジファインダ208が設けられている。
【0019】
レーザレンジファインダ208は、詳細な構造については省略するが、本体201の前方に対して所定の広がり角度でレーザ光を照射するための光源と、光源より照射されたレーザ光の物体による反射光を受光するための受光部とを備えている。そして、レーザ光の照射した角度と、反射光を受光するまでに要した時間とに基づいて、レーザ光を反射した物体の位置を検出する、いわゆるTOF(Time of flight)の原理による物体検知(センシング)が行われる。まず、自律移動装置103のレーザレンジファインダ208から照射されたレーザ光の物体による反射光が受光されると、レーザ光を照射したときの自律移動装置103の自己位置と、レーザレンジファインダ208から照射されるレーザ光の照射方向と、レーザ光を照射してから反射光を受光するまでの時間とから、照射したレーザ光を反射した物体の地点が特定される。
【0020】
レーザレンジファインダ208によって計測されるデータは、レーザ中心からの距離d及びレーザの照射方向の角度φにより規定される極座標系として出力される。例えば、自律移動装置103の進行方向に向かう270度の範囲を計測する際の分解能を1.0度とした場合には、一度のスキャンにより271個のデータを計測する。このようなレーザレンジファインダ208によるセンシング結果が記憶領域206aに記憶される。
【0021】
図3は、自律移動装置の構成を示すブロック図である。自律移動装置103に設けられた演算部206は、自己の位置を取得するための自己位置検出部210(位置検出部、速度センサ、作業指標検出部)を備えている。この自己位置検出部210は、エンコーダ205a・205bで検知された車輪202a・202bの回転数を積算することで、自律移動装置103の移動した速度や距離などの情報を求め、これらの情報から、移動領域102内における自律移動装置103の自己位置(オドメトリ位置)を算出する。
【0022】
そして、これらの自己位置検出部210より得られた自己位置候補としての位置情報は、レーザレンジファインダ208により得られる環境情報に基づいて適宜修正される。
【0023】
このように構成された自律移動装置103は、1対の車輪202a・202bへのモータ204a・204bによる駆動量をそれぞれ独立に制御することで、直進や曲線移動(旋回)、後退、その場回転(両車輪202a・202bの中点を中心とした旋回)などの移動動作を行うことができる。そして、自律移動装置103は、移動領域102内の指定された目的地までの移動経路を自律的に作成し、その移動経路に追従するように移動することで、目的地に到達する。
【0024】
演算部
206には、走行制御部215が設けられている。走行制御部215は、自己位置検出部210により検出された移動領域102中の自律移動装置103の位置に基づいて、作業制御部216及びモータ204a・204bを制御する。作業制御部216は、走行制御部215からの制御指示に基づいて、清掃ブラシ209(作業部)の動作を制御する。モータ204a・204bは、走行制御部215からの制御指示に基づいて、車輪202a・202bを駆動する。
【0025】
演算部
206は、作業結果地図作成部211(作成部)、選択部213、及び閾値変更部214を有している。作業結果地図作成部211は、自己位置検出部210により検出された移動領域102中の清掃ブラシ209の位置の履歴と、記憶領域206aに記憶されている環境地図とに基づいて、清掃ブラシ209が移動した移動領域102内の領域を清掃実施領域(作業実施領域)として表示した作業結果地図を作成する。作業結果地図作成部211により作成された作業結果地図は、操作パネル212(表示部)に表示される。清掃実施領域は、エンコーダ205a・205bにより検知された車輪202a・202bの回転数に基づく自律移動装置103の移動速度の閾値を充足する閾値充足領域と、前記閾値を充足しない閾値非充足領域とを含む。
【0026】
選択部213は、次回清掃ブラシ209が移動して清掃作業を実施する次回移動領域として閾値非充足領域を選択する。閾値変更部214は、自律移動装置103の移動速度の閾値を使用者の入力に基づいて変更する。
【0027】
図4は、自律移動装置103に搭載される作業結果地図を作業結果地図作成部211により作成するためのグリッドマップ301を示す図である。記憶領域206aに記憶されている環境地図として、本実施形態では、移動領域102内において略一定間隔に配置された格子点を結ぶグリッド線303を仮想的に描写することで作成されるグリッドマップ301を用いる。グリッドマップ301は、移動領域102の形状を模した外枠302の内部を、一定間隔mを空けて配置された格子点を結ぶグリッド線303を描写したものである。そして、このグリッド線303で囲まれたグリッド要素304を用いて、自律移動装置103の自己位置に相当する場所、及び目的地である移動終了点、及び移動終了点における自律移動装置103の移動方向が特定される。尚、間隔mは、自律移動装置103の移動可能な曲率や絶対位置を認識する精度などの条件に応じて、適宜変更可能である。また、移動領域102内において、壁や障害物等の固定物体が存在していることが既知である場合は、それらの既知の物体の位置が予めグリッドマップ301上に登録された形で記憶領域206aに記憶されているものとする。
【0028】
図5(a)は上記グリッドマップ301上の自律移動装置103の走行経路Kを示す図であり、(b)は走行経路Kを走行した自律移動装置103の作業結果を走行速度に応じて示した作業結果地
図M1を示す図である。
【0029】
本実施形態では自律移動装置103の清掃実施領域を作業結果地図として作成する。自律移動装置103の清掃ブラシ209の形状と自己位置とを使って通過したところの作業結果地図を作成する。
図5(a)に自律移動装置103の走行経路Kを示し、
図5(b)に走行経路Kに沿って走行した際の作業結果地
図M1を示す。移動領域102に対して自律移動装置103が走行した軌跡を塗りつぶし、さらには自律移動装置103の各位置での走行速度によって塗りつぶす色を変化させることが可能である。まず、自律移動装置103の清掃ブラシ209は、移動領域102の左下隅から右下隅に向かって、遅い速度で走行領域L4を清掃しながら走行し、そして、中速で走行軌跡L5を清掃しながら走行し、次に、速い速度で走行領域L6を清掃しながら走行し、その後、中速で走行軌跡L5を清掃しながら走行する。そして、自律移動装置103の清掃ブラシ209は、移動領域102の右下隅から右上隅に向かって、遅い速度で走行領域L4を清掃しながら走行し、そして、中速で走行領域L5を清掃しながら走行し、次に、速い速度で走行領域L6を清掃しながら走行し、その後、中速で走行領域L5を清掃しながら走行する。そして、自律移動装置103は、移動領域102の右上隅から左上隅に向かって、遅い速度で走行領域L4を清掃しながら走行し、そして、中速で走行領域L5を清掃しながら走行し、次に、速い速度で走行領域L6を清掃しながら走行し、その後、中速で走行領域L5を清掃しながら走行する。次に、自律移動装置103は、移動領域102の左上隅から左下隅に向かって、遅い速度で走行領域L4を清掃しながら走行し、そして、中速で走行領域L5を清掃しながら走行し、次に、速い速度で走行領域L6を清掃しながら走行する。走行領域L4、走行領域L5、及び走行領域L6は、互いに異なる視覚的態様で表示され、例えば、互いに異なる色により表示される。
図5(b)では、例として走行速度の違いにより、走行領域を表示する色の変化を3段階としているが、より細かく連続的に変化させてもよい。視覚的態様の相違は、色彩の相違に限定されず、例えば、色彩の濃度、網目状模様の密度等、走行速度の相違を視覚的に示すことができるものであればよい。
【0030】
図6は、自律移動装置103の作業結果を清掃未実施領域R12(作業未実施領域)、清掃実施領域R11(作業実施領域)に区分して示した作業結果地
図M2を示す図である。清掃実施領域R11は、走行速度に応じて異なる視覚的態様で表示される。
【0031】
作業結果地
図M2は、清掃ブラシ209が移動した清掃領域(作業領域)内の領域を表す清掃実施領域R11と、清掃ブラシ209が移動していない清掃領域内の領域を表す清掃未実施領域R12とを表示する。清掃実施領域R11は、自律移動装置103が遅い速度で走行した複数の走行領域L4と、中速で走行した複数の走行領域L5と、速い速度で走行した複数の走行領域L6とを含む。走行領域L4、走行領域L5、及び走行領域L6は、互いに異なる色彩で表示される。
【0032】
自律移動装置103が走行しなかった清掃未実施領域R12が存在するが、そこは例えば移動マップに存在しない障害物が置かれていた場合などである。清掃作業完了後に走行されていない場所に障害物が置かれていなければ、次回その場所を再走行する等の対処が清掃作業の質を向上する上で必要になる。一方、清掃作業完了後も走行できなかった場所に障害物が置かれ続け、次回再走行時にもその障害物が存在する場合には、その領域は走行する必要はない。移動マップに存在しない障害物は自律移動装置103にとって例外的な環境になり、当該障害物に対する特別な処理が必要になる。例えば走行経路が決まっている場合に当該障害物により走行経路が通れなくなると、再度走行経路を生成しなければならない。つまり、再度の走行経路の生成処理には複雑な判断が含まれるので、場合によっては、再度走行経路を生成しなければならないことにより作業効率が下がる可能性がある。また、使用者の判断により再走行させたい領域が存在することも考えられる。そこで入力部で使用者からの作業要求の入力を受け付けることで再走行時の処理を柔軟に決定する。
【0033】
図7は、自律移動装置103に設けられた操作パネル212に表示された走行禁止領域選択のためのボタンB5を説明するための図である。
図8は、操作パネル212に表示された走行領域選択のためのボタンB4を説明するための図である。
【0034】
作業結果地
図M2は、操作パネル212に表示される。そして、操作パネル212には、自律移動装置103の次回の清掃作業の走行領域を選択するためのボタンB4と、次回の清掃作業における走行禁止領域を選択するためのボタンB5と、次回の清掃作業のための再走行を開始するためのボタンB6とが表示されている。
【0035】
特許文献1に開示された自走式掃除機は、走行時の吸引力の状態を指標とするスコアに基づくスコアマップを自走式掃除機自身が閾値に基づいて自動的に評価して次回の清掃作業を適正化するものである。しかしながら、スコアマップが生成された時点では存在しなかった障害物が置かれた場合、走行できない領域が生まれるが、走行できないのであるから、置かれた障害物が除去されない限り、次回の清掃作業を実施しても当該走行できない領域のスコアが閾値を満たすことはない。従って、スコアマップが生成された時点では存在しなかった障害物が置かれた場合に、次回の清掃作業を適正化することができない。
【0036】
実施形態1に係る
図7及び
図8では、自律移動装置103が走行されなかった清掃未実施領域R12が存在する作業結果地
図M2が操作パネル212に表示されているが、その場合の対処について設定方法の一例を示す。
図7に示すように、再走行時も移動マップに存在しない障害物が清掃未実施領域R12にある場合、走行禁止領域を選択するためのボタンB5を使用者が選択し、障害物のある清掃未実施領域R12を使用者が選択する。この選択によって、再走行時には演算部206が清掃未実施領域R12を最初から避けて走行経路を生成するので、移動マップに存在しない障害物による例外的な処理をせずに済み、作業効率を下げることなく走行することができる。
【0037】
図8に示すように、再走行時には移動マップに存在しない障害物が、清掃未実施領域R12から除去された場合、使用者は走行領域を選択するためのボタンB4を選択し、走行されなかった清掃未実施領域R12を選択する。この選択によって、走行されなかった清掃未実施領域R12を次回走行することができる。
【0038】
さらに、走行はされて一応清掃されたが、使用者の判断により、再走行させて再清掃したい領域がある場合は、当該領域も走行領域としてボタンB4により選択することで当該領域を再走行することができる。これらの走行領域や走行禁止領域はボタンB4・B5により複数個選択可能である。なお、
図7及び
図8では、走行領域、走行禁止領域を矩形で選択しているが、矩形に限らず円形など他の形で選択してもよい。
【0039】
図9は、操作パネル212に表示されたセレクタS1により選択される領域を説明するための図である。
図10は、セレクタS1により選択される他の領域を説明するための図である。
図11は、セレクタにより選択されるさらに他の領域を説明するための図である。
【0040】
操作パネル212には、自律移動装置103の移動速度の閾値を使用者の操作に基づいて変更するセレクタS1が表示されている。
図9に示す例では、セレクタS1により移動速度の閾値が最も遅い速度に変更されている。このため、走行領域L4に対応する遅い走行速度、走行領域L5に対応する中速の走行速度、及び走行領域L6に対応する速い走行速度は、いずれも、上記速度の閾値よりも速く、このため、上記速度の閾値を充足しない。従って、走行領域L4・L5・L6は、いずれも、上記速度の閾値を充足しない閾値非充足領域となり、すべて作業結果地
図M3に表示される。
【0041】
図10に示す例では、セレクタS1により移動速度の閾値が中程度の速度に変更されている。この場合、走行領域L4に対応する遅い走行速度は、上記閾値の中程度の速度よりも遅く、このため、上記速度の閾値を充足する。従って、走行領域L4は、上記速度の閾値を充足する閾値充足領域となり、作業結果地
図M4に表示されない。一方、走行領域L5に対応する中速の走行速度、及び走行領域L6に対応する速い走行速度は、上記速度の閾値よりも速く、このため、上記速度の閾値を充足しない。従って、走行領域L5・L6は、上記速度の閾値を充足しない閾値非充足領域となり、作業結果地
図M4に表示される。走行領域L5・L6は、走行速度に基づいて区分される第1指標領域・第2指標領域に相当し、互いに異なる視覚的態様で表示されている。
【0042】
図11に示す例では、セレクタS1により移動速度の閾値が最も速い速度に変更されている。この場合、走行領域L4に対応する遅い走行速度及び走行領域L5に対応する中速の走行速度は、上記閾値の最も速い速度よりも遅く、このため、上記速度の閾値を充足する。従って、走行領域L4及び走行領域L5は、上記速度の閾値を充足する閾値充足領域となり、作業結果地
図M5に表示されない。一方、走行領域L6に対応する速い走行速度は、上記速度の閾値よりも速く、このため、上記速度の閾値を充足しない。従って、走行領域L6は、上記速度の閾値を充足しない閾値非充足領域となり、作業結果地
図M6に表示される。
【0043】
なお、
図7及び
図8の作業結果地
図M2に示す清掃未実施領域R12がある場合は、例えば、
図10に示す作業結果地
図M4の走行領域L5・L6に重ねて清掃未実施領域R12を表示し、次回も例えば障害物があって、清掃未実施領域R12に
進入することができないと作業者が判断した場合にボタンB5により、次回走行領域から清掃未実施領域R12を除外することができるように構成してもよい。
【0044】
このように、作業結果地図から走行速度の閾値を調整することで、作業結果地図に表示させる作業結果の内容を変更することができる。
図9〜
図11に示すように、速度の閾値を充足しない走行速度で走行した走行領域の走行速度に基づく表示を非表示にすることができ、再走行開始ボタンB6を使用者が選択することにより、自律移動装置103は、走行速度に基づく表示を表示させている領域を再走行する。
図9では全領域を再走行し、
図10及び
図11では走行速度に基づく表示を表示させている領域が再走行される。セレクタS1により速度の閾値を調整することにより、表示させる領域を変更し、変更した表示領域の中から走行領域を選択することも可能である。
【0045】
このように、清掃のための走行速度結果を可視化し、使用者からの次回走行のための設定を受け付けることで、禁止領域の走行を回避し、再走行させたい領域の選択が可能となり、使用者にとって必要最小限の清掃作業を実現し、清掃作業の適正化及び時間短縮が可能になる。
【0046】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図12〜
図13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0047】
図12は、操作パネル212に表示された他のセレクタS2により選択される領域を説明するための図である。
図13は、他のセレクタS2により選択される他の領域を説明するための図である。
【0048】
実施形態1に記載の作業結果地図に表示させる走行領域を変更する方法は、選択した走行速度により走行した走行領域のみを表示させても良い。例えば、
図12に示すようにセレクタS2の走行速度の表示を「速」「中」「遅」の3段階に分割し、
図12に示すように「速」が選択されたら、「速」に対応する走行領域L6のみが作業結果地
図M5に表示されるように構成してもよい。
【0049】
セレクタS2の走行速度の表示のそれぞれは組み合わせ可能であり、
図13に示すように、セレクタS2の走行速度の表示「速」と「遅」とを選択した場合は、その2つに対応する走行領域L6及び走行領域L4のみを作業結果地
図M6に表示するように構成してもよい。
【0050】
実施形態1及び2では、次回走行する領域を設定する例を示したが、本発明はこれに限定されない。次回に全領域を走行するが、閾値非充足領域は重点的に複数回走行する複数回走行領域とし、閾値充足領域は1回走行する1回走行領域とするように構成してもよい。
【0051】
また、走行速度に応じて走行領域を異なる視覚的態様で表示する例を示したが、本発明はこれに限定されない。自律移動装置103の後端に、清掃ブラシ209による清掃結果を検出する清掃結果検出センサ401を設け、清掃結果検出センサ401により検出された清掃結果に基づいて、走行領域を異なる視覚的態様で表示するように構成してもよい。
【0052】
〔実施形態3〕
(自律移動装置システム)
実施形態1及び2に係る自律移動装置103は、作業結果地図を操作パネル212に表示した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。自律移動装置103に通信部を設け、使用者の有する通信端末に、作業結果地図を表すデータを送信するように構成しても良い。
【0053】
図14は実施形態3に係る自律移動装置システム501の構成を示すブロック図であり、
図15は自律移動装置システム501に設けられた自律移動装置103Aの構成を示すブロック図である。前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0054】
自律移動装置システム501は、自律移動装置103Aと通信端末502とを備えている。自律移動装置103Aは通信部504(送信部)を有している。通信部504は、作業結果地図作成部211により作成された作業結果地図を表す情報を、通信端末502に設けられた通信部503(端末受信部)に送信する。
【0055】
通信端末502は表示部505(端末表示部)を有している。表示部505は、通信部503により受信された情報に基づいて作業結果地図を表示する。
【0056】
自律移動装置103Aには選択部213及び閾値変更部214が設けられている。選択部213は、次回清掃ブラシ209が移動して清掃作業を実施する次回移動領域として閾値非充足領域を選択する。閾値変更部214は、表示部505に表示された作業結果地図に基づく、入力部506による表示部505への使用者の入力に基づいて閾値を変更する。
【0057】
〔実施形態4〕
〔ソフトウェアによる実現例〕
自律移動装置103の演算部206(特に選択部213および閾値変更部214)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0058】
後者の場合、演算部206は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0059】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る自律移動体(自律移動装置103)は、作業領域を移動しながら作業を実施する作業部(清掃ブラシ209)と、前記作業領域中の作業部(清掃ブラシ209)の位置を検出する位置検出部(自己位置検出部210)と、前記作業部(清掃ブラシ209)による作業に関連する作業指標を検出する作業指標検出部(エンコーダ205a・205b)と、前記作業部(清掃ブラシ209)の位置の履歴に基づいて、前記作業部(清掃ブラシ209)が移動した前記作業領域内の領域を作業実施領域(清掃実施領域R11)として表す作業結果地
図M1〜M6を作成する作成部(作業結果地図作成部211)とを備え、前記作業実施領域(清掃実施領域R11)は、前記作業指標の閾値を充足する閾値充足領域と、前記閾値を充足しない閾値非充足領域とを含み、次回前記作業部(清掃ブラシ209)が移動して前記作業を実施する次回移動領域として前記閾値非充足領域を選択する選択部213と、前記閾値を使用者の入力に基づいて変更する閾値変更部214とをさらに備える。
【0060】
上記の構成によれば、作業部が実施する作業に関連する作業指標の閾値が、使用者の入力に基づいて変更される。このため、次回前記作業部が移動して前記作業を実施する次回移動領域として選択される閾値非充足領域を使用者の入力に基づいて調整することができる。この結果、次回の作業を状況に応じて適正化することができる自律移動体を提供することができる。
【0061】
本発明の態様2に係る自律移動体(自律移動装置103)は、上記態様1において、前記閾値非充足領域は、前記作業指標に基づいて区分される第1指標領域と第2指標領域とを含み、前記第1指標領域及び前記第2指標領域を互いに異なる視覚的態様で表示する表示部(操作パネル212)をさらに備えてもよい。
【0062】
上記の構成によれば、自律移動体による作業結果を自律移動体の使用者が視覚的、直観的に把握することができる。
【0063】
本発明の態様3に係る自律移動体(自律移動装置103)は、上記態様1において、前記作業指標検出部は、前記作業部の移動速度を検出する速度センサ(エンコーダ205a・205b)を含んでもよい。
【0064】
上記の構成によれば、作業部が実施する清掃作業に関連する移動速度の閾値を、使用者の入力に基づいて変更することができる。
【0065】
本発明の態様4に係る自律移動体(自律移動装置103)は、上記態様1において、前記作業は清掃作業を含み、前記作業指標検出部は、前記作業部(清掃ブラシ209)による清掃結果を検出する清掃結果検出センサを含んでもよい。
【0066】
上記の構成によれば、作業部が実施する清掃結果の閾値を変更することができる。
【0067】
本発明の態様5に係る自律移動体(自律移動装置103)は、上記態様2において、前記閾値変更部は、前記表示部(操作パネル212)に表示されたセレクタS1・S2を含んでもよい。
【0068】
上記の構成によれば、セレクタにより選択した閾値に対応する領域のみを作業結果地図に表示することができる。
【0069】
本発明の態様6に係る自律移動体(自律移動装置103)は、上記態様1において、前記次回移動領域は、前記作業部(清掃ブラシ209)が1回走行する1回走行領域と前記作業部(清掃ブラシ209)が複数回走行する複数回走行領域とを含んでもよい。
【0070】
上記の構成によれば、複数回走行領域の作業をより念入りに実施することができる。
【0071】
本発明の態様7に係る自律移動体(自律移動装置103)は、上記態様1において、前記作業結果地
図M1〜M6は、前記作業実施領域(清掃実施領域R11)以外の領域である作業未実施領域(清掃未実施領域R12)を表示し、前記次回移動領域が前記作業未実施領域(清掃未実施領域R12)を含まなくてもよい。
【0072】
上記の構成によれば、
進入できなかった領域の障害物が存続し、次回も侵入不可の場合に、上記領域が次回移動領域から除外されるので、次回の作業効率が向上する。
【0073】
本発明の態様8に係る自律移動体(自律移動装置103)は、上記態様1において、前記作業結果地
図M1〜M6は、前記作業実施領域(清掃実施領域R11)以外の領域である作業未実施領域(清掃未実施領域R12)を表示し、前記選択部213は、前記次回移動領域に前記作業未実施領域(清掃未実施領域R12)を含めるか否かを選択してもよい。
【0074】
上記の構成によれば、次回移動領域に作業未実施領域を含めるか否かを状況に応じて適正に設定することができる。
【0075】
本発明の態様9に係る自律移動体(自律移動装置103)は、上記態様1において、前記作業結果地
図M1〜M6は、前記閾値非充足領域L4〜L6と、前記作業実施領域(清掃実施領域R11)以外の領域である作業未実施領域(清掃未実施領域R12)とを表示し、前記選択部213は、前記次回移動領域に前記作業未実施領域(清掃未実施領域R12)を含めるか否かを選択してもよい。
【0076】
上記の構成によれば、次回移動領域に作業未実施領域を含めるか否かを状況に応じて適正に設定することができる。
【0077】
本発明の態様10に係る自律移動体システムは、自律移動体と通信端末とを備えた自律移動体システムであって、前記自律移動体は、作業領域を移動しながら作業を実施する作業部と、前記作業領域中の前記作業部の位置を検出する位置検出部と、前記作業部による作業に関連する作業指標を検出する作業指標検出部と、前記作業部の位置の履歴に基づいて、前記作業部が移動した前記作業領域内の領域を作業実施領域として表す作業結果地図を作成する作成部と、前記作成部により作成された作業結果地図を表す情報を前記通信端末に送信する送信部とを有し、前記作業実施領域は、前記作業指標の閾値を充足する閾値充足領域と、前記閾値を充足しない閾値非充足領域とを含み、前記通信端末は、前記送信部により送信された情報を受信する端末受信部と、前記端末受信部により受信された情報に基づいて前記作業結果地図を表示する端末表示部とを有し、前記自律移動体は、次回前記作業部が移動して前記作業を実施する次回移動領域として前記閾値非充足領域を選択する選択部と、前記端末表示部に表示された作業結果地図に基づく端末表示部への使用者の入力に基づいて前記閾値を変更する閾値変更部とをさらに有する。
【0078】
本発明の各態様に係る自律移動体(自律移動装置103)の演算部206は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記演算部206が備える各手段として動作させることにより上記演算部206をコンピュータにて実現させる演算部206の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0079】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【解決手段】自律移動装置(103)は、作業結果地図を作成する作業結果地図作成部(211)を備え、作業実施領域は、作業指標の閾値を充足する閾値充足領域と、閾値を充足しない閾値非充足領域とを含み、次回移動領域として閾値非充足領域を選択する選択部(213)と、閾値を使用者の入力に基づいて変更する閾値変更部(214)とをさらに備える。