(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準線を含む領域における印刷媒体の前記搬送面からの浮き上がりを抑制する浮き上がり抑制部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0017】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図、
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置の給紙部の斜視図、
図3は、給紙部が備える駆動部の要部斜視図、
図4は、
図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部の構成図、
図5は、
図1に示すインクジェット印刷装置の平面図である。以下の説明において、ユーザが位置する
図1の紙面表方向を前方とする。また、
図1に示すように、ユーザから見て、上下左右を上下左右方向とする。左から右に向かう方向が搬送方向である。上下方向、左右方向、前後方向は、互いに略直交する方向である。以下の説明における上流、下流は、搬送方向における上流、下流を意味する。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、印刷媒体を給紙する給紙部2と、給紙された印刷媒体を搬送しつつ印刷を行う印刷部3とを備える。
【0020】
給紙部2は、
図2、
図3、
図5に示すように、給紙台21と、駆動部22と、給紙ローラユニット23と、サバキ板ユニット24と、レジストローラ25と、ガイド部26とを備える。
【0021】
給紙台21は、印刷に用いられる印刷媒体が積載されるものである。給紙台21は、底板部41と、1対のサイドフェンス42,43と、サブフェンス44と、1対の支持部材45,46とを備える。
【0022】
底板部41は、上面に印刷媒体が積載されるものである。底板部41の上面には、前後方向に延びるガイド溝47a〜47dが設けられている。ガイド溝47a,47bは、移動するサイドフェンス42,43をガイドするためのものである。ガイド溝47c,47dは、移動するサブフェンス44をガイドするためのものである。底板部41は、1対のサイドフェンス42,43を、搬送方向に略平行な中心線Cを挟んで前後対称で前後方向に連動して移動させるためのフェンス移動機構(図示せず)を有する。また、底板部41は、最上部の印刷媒体の上面の位置を調整するため、駆動機構(図示せず)により昇降可能に構成されている。
【0023】
1対のサイドフェンス42,43は、印刷媒体の前後方向の位置を規制するものである。サイドフェンス42,43は、底板部41の上面において、鉛直面に略平行に立設されている。フロント側のサイドフェンス42は、底板部41の前側に配置され、リア側のサイドフェンス43は、底板部41の後側に配置されている。サイドフェンス42,43は、中心線Cを挟んで前後対称で前後方向に、連動して移動可能に構成されている。つまり、中心線Cからサイドフェンス42が遠ざかるときはサイドフェンス43も中心線Cから遠ざかり、中心線Cにサイドフェンス42が近づくときはサイドフェンス43も中心線Cに近づくように移動する。サイドフェンス42,43は、ガイド溝47a,47bによりガイドされつつ移動する。サイドフェンス42,43は、ユーザの手動により移動する。サイドフェンス42,43は、フロント側のサイドフェンス42の内側(中心線C側)の規制面42aが、搬送方向に略平行な基準線K上に位置するように、位置決め可能に構成されている。リア側のサイドフェンス43の上部には、凹部48a,48bが形成されている。凹部48a,48bは、サブフェンス44との固定を解除するために必要なものである。サイドフェンス43は、サブフェンス44よりも低い。
【0024】
サブフェンス44は、片側基準の給紙を行う場合に、フロント側のサイドフェンス42との間で印刷媒体の前後方向の位置を規制するためのものである。本実施の形態のインクジェット印刷装置1は、片側基準の給紙と、中央基準の給紙とが選択可能に構成されている。片側基準の給紙は、給紙台21において印刷媒体の一端辺が基準線K上に位置するように規制して給紙を行う方式である。中央基準の給紙は、給紙台21において印刷媒体の中心線がほぼ中心線C上に位置するように規制して給紙を行う方式である。
【0025】
サブフェンス44は、底板部41の上面において、サイドフェンス42,43の間に配置され、鉛直面に略平行に立設されている。サブフェンス44は、前後方向に移動可能に構成されている。サブフェンス44は、後述するサブフェンス固定部材64により、リア側のサイドフェンス43に固定可能になっている。中央基準の給紙の場合、サブフェンス44は、サブフェンス固定部材64によりサイドフェンス43に固定され、サイドフェンス43とともに移動する。片側基準の給紙の場合、サブフェンス44は、サイドフェンス43との固定が解除される。サイドフェンス43との固定が解除されているときは、サブフェンス44は、サイドフェンス42,43に対して相対移動可能となる。このとき、サブフェンス44は、駆動部22により移動させられる。サブフェンス44は、ガイド溝47c,47dによりガイドされつつ移動する。
【0026】
1対の支持部材45,46は、後述する駆動部22のネジ歯車54の両端を支持するものである。フロント側の支持部材45は、底板部41の上面において右端部の前端部に立設されている。リア側の支持部材46は、底板部41の上面において右端部の後端部に立設されている。支持部材45,46にはそれぞれ、上下方向に細長い貫通穴49,50が設けられている。貫通穴49,50には、後述する駆動部22のネジ歯車53および回転防止シャフト56が挿通される。
【0027】
駆動部22は、給紙ローラユニット23、サバキ板ユニット24、およびサブフェンス44を前後方向に移動させるものである。駆動部22は、回転ダイヤル51と、ネジ歯車52,53,54と、回転防止シャフト55,56と、プーリ57,58,59と、ベルト60,61と、アイドラープーリ62と、接続部材63と、サブフェンス固定部材64とを備える。
【0028】
回転ダイヤル51は、給紙ローラユニット23、サバキ板ユニット24、およびサブフェンス44を移動させるために、ユーザが手動操作により回転させるものである。回転ダイヤル51には、ネジ歯車52の前端が固定されており、回転ダイヤル51が回転すると、ネジ歯車52が回転する。回転ダイヤル51は、フロント側の側板65の外側(前側)に設けられている。
【0029】
ネジ歯車52は、回転ダイヤル51が回転操作されることによって回転し、この回転駆動力によりサバキ板ユニット24を前後方向に移動させる。ネジ歯車52の前端部は、側板65に回転可能に支持されるとともに側板65を貫通している。ネジ歯車52の前端は回転ダイヤル51に固定されている。ネジ歯車52の後端部は、リア側の側板66に回転可能に支持されるとともに側板66を貫通している。ネジ歯車52の後端はプーリ57に固定されている。ここで、側板65,66は、インクジェット印刷装置1の筐体(図示せず)内に固定の部材である。
【0030】
ネジ歯車53は、回転ダイヤル51の回転が伝達されることによって回転し、この回転駆動力により給紙ローラユニット23を前後方向に移動させる。ネジ歯車53の前端部は、支持部材45の貫通穴49に挿通され、ネジ歯車53の前端は側板65に回転可能に支持されている。ネジ歯車52の後端部は、支持部材46の貫通穴50に挿通され、リア側の側板66に回転可能に支持されるとともに側板66を貫通している。ネジ歯車52の後端はプーリ58に固定されている。
【0031】
ネジ歯車54は、回転ダイヤル51の回転が伝達されることによって回転し、この回転駆動力により接続部材63を前後方向に移動させる。これにより接続部材63に接続されるサブフェンス固定部材64を介してサブフェンス44が前後方向に移動する。ネジ歯車54の前端は、支持部材45に回転可能に支持されている。ネジ歯車54の後端部は、支持部材46に回転可能に支持されるとともに支持部材46を貫通し、側板66に形成された上下方向に細長い貫通穴67に挿通されている。ネジ歯車52の後端はプーリ59に固定されている。
【0032】
回転防止シャフト55は、ネジ歯車52の回転によりサバキ板ユニット24が回転することを防止するためのものである。回転防止シャフト55の前端は側板65に支持され、回転防止シャフト55の後端は、側板66に支持されている。
【0033】
回転防止シャフト56は、ネジ歯車52の回転により給紙ローラユニット23が回転することを防止するためのものである。回転防止シャフト56の前端、後端はそれぞれ、側板65,66に支持されている。回転防止シャフト56は、支持部材45の貫通穴49および支持部材46の貫通穴50に挿通されている。
【0034】
プーリ57は、ネジ歯車52の回転を、ベルト60を介してプーリ58へと伝達するためのものである。プーリ57は、ネジ歯車52の後端に固定されている。
【0035】
プーリ58は、ベルト60を介して伝達されたプーリ57の回転をネジ歯車53に伝達する。また、プーリ58は、ベルト61を介してプーリ59を回転させる。プーリ58は、ネジ歯車53の後端に固定されている。プーリ58は、プーリ57と略同じ直径を有する。これにより、ネジ歯車52,53は同じ回転数で回転駆動される。この結果、サバキ板ユニット24と給紙ローラユニット23とは移動距離が同じになる。
【0036】
プーリ59は、ベルト61を介して伝達されたプーリ57の回転をネジ歯車53に伝達する。プーリ59は、ネジ歯車54の後端に固定されている。プーリ59は、プーリ58の略2倍の直径を有する。これにより、ネジ歯車54の回転数がネジ歯車52,53の回転数の略半分となる。これにより、サブフェンス44の移動距離が、サバキ板ユニット24および給紙ローラユニット23の移動距離の略半分となる。
【0037】
ベルト60は、プーリ57とプーリ58との間に掛け渡され、プーリ57の回転をプーリ58に伝達する。ベルト61は、プーリ58とプーリ59との間に掛け渡され、プーリ58の回転をプーリ59に伝達する。
【0038】
アイドラープーリ62は、ベルト61のテンションを維持するためのものである。アイドラープーリ62は、プーリ58とプーリ59との間において、側板66に回転可能に支持されている。ネジ歯車54は支持部材45,46に支持されているため、底板部41の昇降とともにプーリ59も上下動する。一方、ネジ歯車52,53は側板65,66に支持されているため、底板部41が昇降しても、プーリ57,58の位置は変わらない。つまり、プーリ59とプーリ58との間の距離は変化する。アイドラープーリ62は、プーリ59とプーリ58との間の距離が変化しても、ベルト61のテンションを一定に維持させる。
【0039】
接続部材63は、サブフェンス固定部材64を介してサブフェンス44を移動させるためのものである。接続部材63にはネジ穴が形成されており、このネジ穴にネジ歯車54が貫通され、かつ、螺合されている。これにより、ネジ歯車54が回転すると、接続部材63は前後方向に移動する。また、接続部材63には、左側面にサブフェンス固定部材64を接続するための接続用穴68が設けられている。
【0040】
サブフェンス固定部材64は、サブフェンス44をリア側のサイドフェンス43に固定するためのものである。サブフェンス固定部材64は、断面略コの字状に形成されている。
【0041】
図6(a)は、サブフェンス44をサイドフェンス43に固定した状態を後側から見た図、
図6(b)は、同じく前側から見た図である。
図6(a)に示すように、サブフェンス固定部材64の後側の側面部69には、下方に突出した凸部70a,70bが形成されている。凸部70a,70bは、サイドフェンス43の凹部48a,48bと対応する位置に配置され、凹部48a,48bより少し小さく形成されている。サイドフェンス43の上端は、サブフェンス固定部材64の側面部69の凸部70a,70b以外の部分の下端よりやや低い位置にある。
【0042】
図6(b)に示すように、サブフェンス固定部材64の前側の側面部71には、左右方向に細長い貫通穴72a,72bが形成されている。貫通穴72a,72bにはネジ73a,73bの軸が挿通される。サブフェンス44には、ネジ73a,73bに対応したネジ穴が形成されている。ユーザがネジ穴に螺入されたネジ73a,73bを締め付けることで、ネジ73a,73bの座面とサブフェンス44との間で側面部71が挟持され、サブフェンス44にサブフェンス固定部材64が固定される。
【0043】
図6(a)のように、凸部70a,70bがサイドフェンス43の凹部48a,48bに重ならない位置でサブフェンス44にサブフェンス固定部材64が固定されると、サイドフェンス43が凸部70a,70bとサブフェンス44とに挟まれる。このため、サイドフェンス43にサブフェンス44が固定された状態となり、両フェンスは一体となって動く。
【0044】
図7(a)は、サブフェンス44とサイドフェンス43との固定を解除している状態を後側から見た図、
図7(b)は、同じく前側から見た図である。ユーザがネジ73a,73bを緩めると、サブフェンス固定部材64が左右方向にスライド可能となる。サブフェンス固定部材64の右端部には、突起部74が設けられている。
図7(a)のように、接続部材63の接続用穴68に突起部74が差し込まれ、凸部70a,70bがサイドフェンス43の凹部48a,48bに重なる位置でネジ73a,73bが締め付けられると、サブフェンス44の固定が解除状態となる。この状態では、サブフェンス44が移動すると、凸部70a,70bがサイドフェンス43の凹部48a,48bを通過するので、サブフェンス44が単独で移動する。
【0045】
給紙ローラユニット23は、給紙台21上の印刷媒体を1枚ずつ取り出して搬送方向に搬送して給紙するものである。給紙ローラユニット23は、スクレーパローラ75と、ピックアップローラ76とを備える。また、給紙ローラユニット23は、スクレーパローラ75およびピックアップローラ76を回転駆動させるモータ(図示せず)を備える。スクレーパローラ75およびピックアップローラ76は、請求項の給紙ローラに相当する。
【0046】
スクレーパローラ75は、給紙台21上に積載された最上部の印刷媒体に対して所定の圧力で圧接し、その摩擦力で印刷媒体を下流側へと流す。
【0047】
ピックアップローラ76は、下方に配置されたサバキ板77との間で印刷媒体をさばいて搬送方向に搬送する。ピックアップローラ76は、スクレーパローラ75に対して下流側に配置されている。スクレーパローラ75により複数枚の印刷媒体が取り出されたとしても、ピックアップローラ76およびサバキ板77が1枚だけをさばいて搬送する。
【0048】
給紙ローラユニット23にはネジ穴が形成されており、このネジ穴にネジ歯車53が貫通され、かつ、螺合されている。また、ネジ歯車53用のネジ穴の上方に貫通穴が形成され、この貫通穴に回転防止シャフト56が挿通されている。これにより、ネジ歯車53が回転すると、給紙ローラユニット23は回転することなく前後方向に移動する。
【0049】
サバキ板ユニット24は、ピックアップローラ76との間で印刷媒体をさばくものである。サバキ板ユニット24は、上端部にサバキ板77を備える。サバキ板77は、ゴム板等の高摩擦部材からなる。サバキ板77は、ピックアップローラ76に圧接され、ピックアップローラ76との間で印刷媒体をさばく。
【0050】
サバキ板ユニット24にはネジ穴が形成されており、このネジ穴にネジ歯車52が貫通され、かつ、螺合されている。また、ネジ歯車52用のネジ穴の下方に貫通穴が形成され、この貫通穴に回転防止シャフト55が挿通されている。これにより、ネジ歯車52が回転すると、サバキ板ユニット24は回転することなく前後方向に移動する。サバキ板ユニット24は、給紙ローラユニット23とともに移動する。
【0051】
レジストローラ25は、給紙ローラユニット23から搬送されてきた印刷媒体を一旦止めた後、所定のタイミングで下流側へと送り出す。
【0052】
ガイド部26は、給紙台21から搬送されてくる印刷媒体の下面を支持してレジストローラ25へとガイドするものである。
図8(a)は、ガイド部26の構成を示す図である。
図8(a)は、ガイド部26を下側から見た図である。
図8(a)に示すように、ガイド部26は、固定ガイド板78と、可動ガイド板79,80と、バネ81,82とを備える。
【0053】
固定ガイド板78は、矩形の板状体からなる。固定ガイド板78は、給紙台21とレジストローラ25との間に配置される。固定ガイド板78は、左端部の一部が切り欠かれて形成された切欠部781を有する。切欠部781は、サバキ板ユニット24が移動する領域に形成されている。また、固定ガイド板78は、バネ81,82が取り付けられるとともに、固定ガイド板78を側板65,66に固定するための取付部材782a,782bを有する。取付部材782a,782bは、固定ガイド板78の下面に立設されている。取付部材782aは、固定ガイド板78の前側の端部に配置され、取付部材782bは、固定ガイド板78の後側の端部に配置されている。
【0054】
可動ガイド板79,80は、固定ガイド板78の切欠部781を塞ぐためのものである。可動ガイド板79,80は、矩形の板状体からなる。可動ガイド板79は、サバキ板ユニット24の前側に配置され、可動ガイド板80は、サバキ板ユニット24の後側に配置されている。可動ガイド板79は、バネ81が取り付けられる取付部材791を有する。取付部材791は、可動ガイド板79の下面における前側の端部に立設されている。可動ガイド板80は、バネ82が取り付けられる取付部材801を有する。取付部材801は、可動ガイド板80の下面における後側の端部に立設されている。
【0055】
バネ81は、可動ガイド板79にサバキ板ユニット24側への弾性力を付与する。バネ81の一端は固定ガイド板78の取付部材782aに固定され、他端は可動ガイド板79の取付部材791に固定されている。バネ82は、可動ガイド板80にサバキ板ユニット24側への弾性力を付与する。バネ82の一端は固定ガイド板78の取付部材782bに固定され、他端は可動ガイド板80の取付部材801に固定されている。
【0056】
バネ81,82の弾性力により、サバキ板ユニット24が移動しても、可動ガイド板79の後端および可動ガイド板80の前端がサバキ板ユニット24に当接している状態が維持される。これにより、
図8(b)に示すように、サバキ板ユニット24が移動しても切欠部781は塞がれているためガイド部26に隙間は生じず、ガイド部26は、印刷媒体のガイドとしての機能を果たす。
【0057】
印刷部3は、
図4、
図5に示すように、ベルト搬送部11と、24個のインクジェットヘッド12とを備える。
【0058】
ベルト搬送部11は、給紙部2から給紙された印刷媒体を保持して搬送する。ベルト搬送部11は、給紙部2の下流側に配置されている。ベルト搬送部11は、請求項の搬送部に相当する。ベルト搬送部11は、搬送ベルト31と、駆動ローラ32と、従動ローラ33,34,35と、プラテンプレート36と、チャンバ37と、サクションファン38と、8本のガイドローラ39と、印刷媒体押さえ部40とを備える。
【0059】
搬送ベルト31は、駆動ローラ32および従動ローラ33,34,35に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト31は、インクジェットヘッド12に対向して設けられている。
【0060】
図9は、搬送ベルト31およびプラテンプレート36を一部切り欠いて示す平面図である。
図9に示すように、搬送ベルト31には、印刷媒体を吸着保持するための貫通穴であるベルト穴311が多数形成されている。ベルト穴311は、平面視において、例えば、円形状に形成される。
【0061】
搬送ベルト31は、サクションファン38の駆動によりベルト穴311に発生する吸着力により、印刷媒体を吸着保持する。搬送ベルト31は、駆動ローラ32の駆動により
図4における時計回り方向に回転する。これにより、搬送ベルト31は、搬送面(上面)312に吸着保持した印刷媒体を右方向に搬送する。給紙部2で片側基準の給紙が行われた場合、つまり、給紙台21において印刷媒体の一端辺が基準線K上に位置するように規制して給紙が行われた場合、搬送ベルト31は、印刷媒体の一端辺が基準線Kに沿うように搬送する。中央基準の給紙が行われた場合、搬送ベルト31は、印刷媒体の中心線が中心線Cに沿うように搬送する。
【0062】
駆動ローラ32および従動ローラ33,34,35は搬送ベルト31が掛け渡されるものである。駆動ローラ32は、図示しないモータにより回転駆動され、搬送ベルト31を回転させる。従動ローラ33,34,35は、搬送ベルト31を介して駆動ローラ32に従動する。
【0063】
プラテンプレート36は、搬送ベルト31の下側に設けられ、搬送ベルト31の下面を搬送方向に摺動可能に支持する。
図9に示すように、プラテンプレート36は、ベルト穴311が通過する箇所において搬送ベルト31に対向する上面からそれに対向する下面に向かって掘り下げられた凹部361と、凹部361の底面の一部から下面に貫通する吸引穴362とを有する。凹部361は、左右方向に一定のピッチにより規則的に配列され、前後方向に隣り合う次段の凹部361は前段に対して半ピッチずれて左右方向に同一の一定のピッチにより規則的に配列されている。つまり、凹部361は千鳥配置になっている。吸引穴362は、ここでは、凹部361の底面の中央部に配設されている。
【0064】
チャンバ37は、プラテンプレート36の下面側に設けられる。チャンバ37は、プラテンプレート36の吸引穴362および凹部361を介して搬送ベルト31のベルト穴311に吸着力を発生させるための負圧室を形成するものである。
【0065】
サクションファン38は、チャンバ37から排気してチャンバ37内に負圧を発生させ、吸引穴362、凹部361、およびベルト穴311を介して空気を吸引し、印刷媒体を搬送ベルト31に吸着させるためのものである。サクションファン38は、チャンバ37の下面に設置される。
【0066】
ガイドローラ39は、搬送面312上に保持されて搬送される印刷媒体の上面を抑えるものである。これにより、印刷媒体のインクジェットヘッド12への接触の低減が図られている。8本のガイドローラ39は、8列のインクジェットヘッド12の各列の上流側に配置されている。
【0067】
印刷媒体押さえ部40は、片側基準の給紙が行われた場合に、基準線Kを含む領域における印刷媒体を押さえることで、搬送面312からの浮き上がりを抑えるものである。印刷媒体押さえ部40は、請求項の浮き上がり抑制部に相当する。印刷媒体押さえ部40は、環状のベルト401と、ベルト401が掛け渡されるローラ402,403とを備える。
【0068】
印刷媒体押さえ部40は、搬送ベルト31上において、基準線Kを含む領域でベルト401が搬送ベルト31と接するように配置される。ベルト401は、搬送ベルト31から伝達される力により回転するようになっている。
【0069】
インクジェットヘッド12は、搬送ベルト31により搬送される印刷媒体にインクを吐出して画像を印刷するものである。24個のインクジェットヘッド12は、前後方向に一定間隔で3個ずつ配列された8列に配置されている。24個のインクジェットヘッド12は、6個ずつ異なる色(例えば、黒、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。1色あたり前後方向に一定間隔で3個ずつのインクジェットヘッド12が左右方向に2列配置されているため、半ピッチズレを実現することができる。つまり、インクジェットヘッド12は千鳥配置になっている。
【0070】
図10は、インクジェットヘッド12の底面(吐出面)を示す図である。
図10に示すように、インクジェットヘッド12は、インクを吐出するインク吐出孔121が複数形成されたノズルプレート122と、ノズルプレート122の周囲に設けられたマスクプレート123とを有する。
【0071】
最も前側(外側)のインクジェットヘッド12の最も前側のインク吐出孔121の前側の端点を通る左右方向に平行な直線を直線Lとすると、
図5に示すように、片側基準の給紙における基準線Kは、直線Lよりも前側となっている。すなわち、基準線Kは、インクジェットヘッド12の最も外側に配置されているインク吐出孔よりも外側にある。これにより、印刷媒体のインクジェットヘッド12への接触が低減できる。
【0072】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0073】
まず、中央基準の給紙により印刷を行う場合について説明する。この場合、ユーザの作業により、サブフェンス44がリア側のサイドフェンス43に固定される。つまり、サブフェンス固定部材64が
図6(a),(b)に示した状態とされる。そして、印刷媒体が底板部41上に載置され、サイドフェンス42と、サイドフェンス43に固定されたサブフェンス44とにより、印刷媒体の位置が中央基準で規制される。
【0074】
印刷開始が指示されると、スクレーパローラ75およびピックアップローラ76が印刷媒体をレジストローラ25に向けて送り出す。レジストローラ25は、搬送されてきた印刷媒体を一旦止めた後、所定のタイミングで印刷部3に向けて搬送する。
【0075】
印刷部3では、ベルト搬送部11で搬送ベルト31に印刷媒体を吸着保持して搬送しつつ、インクジェットヘッド12からインクを吐出して印刷を行う。印刷された印刷媒体は、図示しない排紙部により排紙される。
【0076】
ここで、例えば、印刷媒体として封筒を用いる場合、その保管状況によっては、
図11に示すように、封筒Eの綴じ部85の角部85aが反って変形していることがある。このような変形のある封筒Eを、中央基準で給紙して印刷を行うと、綴じ部85の角部85aがインクジェットヘッド12に接触するおそれがある。ガイドローラ39はあるが、ガイドローラ39を通過した封筒Eが変形状態に戻り、インクジェットヘッド12に接触するおそれがある。
【0077】
そこで、本実施の形態では、封筒Eに印刷を行う場合、片側基準の給紙による印刷を行う。この場合、ユーザの作業により、サブフェンス44のサイドフェンス43への固定が解除される。つまり、サブフェンス固定部材64が
図7(a),(b)に示した状態とされる。また、フロント側のサイドフェンス42の内側の規制面42aが基準線K上に位置するように位置決めされる。次いで、封筒Eが、綴じ部85をサイドフェンス42側に向けて底板部41上に載置される。
【0078】
そして、ユーザが回転ダイヤル51を回転させると、ネジ歯車52およびプーリ57が回転し、その回転がベルト60,61を介して伝達され、プーリ58,59およびネジ歯車53,54が回転する。これにより、サバキ板ユニット24、給紙ローラユニット23、およびサブフェンス44が移動する。ユーザは回転ダイヤル51を操作することにより、
図12に示すように、サイドフェンス42、サブフェンス44により封筒Eの端辺86,87が規制される位置までサブフェンス44を移動させる。これにより、封筒Eの給紙台21へのセットが終了する。
【0079】
印刷開始が指示されると、スクレーパローラ75およびピックアップローラ76が印刷媒体をレジストローラ25に向けて送り出す。
【0080】
ここで、インクジェット印刷装置1では、前述のように、給紙ローラユニット23(スクレーパローラ75、ピックアップローラ76)の移動距離D1が、サブフェンス44の移動距離D2の略半分となる。このため、給紙ローラユニット23が、封筒Eの前後方向における略中央に配置される。これにより、スクレーパローラ75およびピックアップローラ76により封筒を取り出して搬送する際、封筒Eの斜行等を抑えて安定した給紙を行うことができる。
【0081】
レジストローラ25は、搬送されてきた印刷媒体を一旦止めた後、所定のタイミングで印刷部3に向けて搬送する。
【0082】
印刷部3では、ベルト搬送部11で搬送ベルト31に封筒Eを吸着保持して搬送しつつ、インクジェットヘッド12からインクを吐出して印刷を行う。搬送ベルト31は、封筒Eの端辺86が基準線Kに沿うように搬送する。封筒Eの綴じ部85側の端部は、印刷媒体押さえ部40により搬送面312に押さえられる。これにより、封筒Eがインクジェットヘッド12に接触することが防止できる。印刷された封筒Eは、図示しない排紙部により排紙される。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態のインクジェット印刷装置1では、印刷媒体の一端辺が基準線Kに沿うように搬送しながら、印刷媒体押さえ部40により印刷媒体を搬送面312に押さえつつ、インクジェットヘッド12からインクを吐出する。基準線Kは、インクジェットヘッド12の最も外側に配置されているインク吐出孔よりも外側にある。このため、端部に変形が生じている印刷媒体を用いても、印刷媒体がインクジェットヘッド12のインク吐出孔に接触することを防止できる。これにより、インク吐出孔が破損してインクの吐出不良が生じることを抑制できる。この結果、インクジェット印刷装置1では、印刷画質の低下を軽減できる。
【0084】
また、インクジェット印刷装置1では、サブフェンス44を用いて印刷媒体の位置を規制して給紙を行うので、さまざまなサイズの印刷媒体を、一端辺が基準線Kに沿うように規制して印刷部3に給紙できる。
【0085】
また、給紙ローラユニット23が前後方向に移動可能なので、給紙する印刷媒体の斜行等を抑え、良好な給紙性能を得ることが可能となる。本実施の形態では、給紙ローラユニット23がサブフェンス44と連動して移動可能なので、利便性にすぐれる。ここで、給紙ローラユニット23の移動距離D1が、サブフェンス44の移動距離D2の略半分となるので、給紙ローラユニット23が、印刷媒体の前後方向における略中央に自動的に配置され、良好な給紙性能が得られる。
【0086】
なお、印刷媒体押さえ部40を省略してもよい。この場合でも、基準線Kがインクジェットヘッド12の最も外側に配置されているインク吐出孔よりも外側にあるため、封筒Eの角部がインク吐出孔に接触することを抑制でき、印刷画質の低下を軽減できる。もちろん、印刷媒体押さえ部40を備える方が、インク吐出孔に封筒Eが接触することを確実に防止するためには好ましい。
【0087】
また、本実施の形態では、片側基準の給紙を行う場合、駆動部22によりサブフェンス44を給紙ローラユニット23と連動して移動させたが、片側基準の給紙を行う場合でも、サブフェンス44と給紙ローラユニット23とを別々に移動させてもよい。サブフェンス固定部材64を介したサブフェンス44と接続部材63との接続をしなければ、サブフェンス44と給紙ローラユニット23とを別々に移動させることができる。
【0088】
例えば、封筒の一部がくり抜かれてそこに透明シートが貼られた窓部を有する窓付き封筒を印刷媒体として用いる場合、給紙時に窓部がスクレーパローラ75、ピックアップローラ76を通過すると、窓部が損傷するおそれがある。そこで、サブフェンス44と給紙ローラユニット23とを別々に移動させることで、窓部がスクレーパローラ75、ピックアップローラ76を通過しないように給紙ローラユニット23の位置を調整し、窓部の損傷を回避できる。
【0089】
本実施の形態で示した片側基準の給紙は、封筒に印刷する場合に限らず、端部に変形を生じやすい印刷媒体に印刷する場合に用いることができる。
【0090】
(変形例1)
上記実施の形態におけるベルト搬送部を変更した変形例1について説明する。
【0091】
図13は、変形例1に係るインクジェット印刷装置におけるベルト搬送部の平面図である。
図13に示すように、変形例1におけるベルト搬送部11Aは、
図4に示した上記実施の形態におけるベルト搬送部11に対し、印刷媒体押さえ部40を省略し、吸着力強化領域88を設けた構成である。
【0092】
吸着力強化領域88は、基準線Kを含む所定幅の領域であり、他の領域よりも、ベルト穴311からの空気の吸引による吸着力が強化されている。例えば、吸着力強化領域88では他の領域に対して、ベルト穴311の大きさ、ベルト穴311の数、プラテンプレート36の凹部361、吸引穴362の構造等を変えることで、吸着力が強化されている。
【0093】
このようにしても、印刷媒体の搬送面312からの浮き上がりを抑制できる。なお、
図13のベルト搬送部11Aに対して、
図4に示したベルト搬送部11の印刷媒体押さえ部40を追加した構成としてもよい。
【0094】
(変形例2)
上記実施の形態における給紙部を変更した変形例2について説明する。
【0095】
図14は、変形例2に係るインクジェット印刷装置における給紙部の平面図である。
図14に示すように、変形例2における給紙部2Aは、
図2に示した上記実施の形態における給紙部2に対し、給紙台21、駆動部22を、給紙台21A、駆動部22Aにそれぞれ置き換えた構成である。
【0096】
給紙台21Aは、
図2に示した給紙台21に対し、サブフェンス44および支持部材45,46を省略し、着脱可能なアタッチメント90を備えるものである。
【0097】
図15は、アタッチメント90の斜視図、
図16は、アタッチメント90の平面図である。
図15、
図16に示すように、アタッチメント90は、底板91と、フェンス92と、調整バー93a〜93cと、ネジ94a〜94cとを備える。
【0098】
底板91は、アタッチメント90の土台となるものである。フェンス92は、給紙台21上において印刷媒体の前後方向の位置を規制するものである。フェンス92は、底板91の端部に立設されている。
【0099】
調整バー93a〜93cは、フェンス92と給紙台21のフロント側のサイドフェンス42との間隔を調整するためのものである。調整バー93a〜93cは、互いに長さが異なる。調整バー93a〜93cは、底板91の上面に配置されている。調整バー93a〜93cには、細長い貫通穴931a〜931cが形成されている。貫通穴931a〜931cにはネジ94a〜94cの軸が挿通される。調整バー93a〜93cは、使用される印刷媒体のサイズに応じて選択されて底板91から後側に最大限に引き出され、ネジ94a〜94cで固定される。調整バー93a〜93cの長さは、例えば、定形の封筒のサイズに応じて設定される。
【0100】
ネジ94a〜94cは、調整バー93a〜93cを底板91に固定するためのものである。ネジ94a〜94cの軸が貫通穴931a〜931cに挿通され、底板91の上面に形成されたネジ穴に螺入される。ユーザによりネジ94a〜94cを締め付けられることで、ネジ94a〜94cの座面と底板91との間で調整バー93a〜93cが挟持され、底板91に調整バー93a〜93cが固定される。
【0101】
駆動部22Aは、
図2に示した駆動部22に対し、サブフェンス44の駆動に関する部分を省略したものである。具体的には、駆動部22Aは、駆動部22に対し、ネジ歯車54、プーリ59、ベルト61、アイドラープーリ62、接続部材63、およびサブフェンス固定部材64を省略した構成である。
【0102】
給紙部2Aでアタッチメント90を用いて片側基準の給紙を行う場合、ユーザにより、例えば、印刷媒体として使用される封筒Eのサイズに応じて調整バー93bが選択されて底板91から引き出され、ネジ94bで固定される。そして、
図14に示すように、調整バー93bの先端がリア側のサイドフェンス43に当接するように配置されることで、フェンス92とフロント側のサイドフェンス42との間で封筒Eの位置が規制される。
【0103】
このように、アタッチメント90を用いることで、片側基準の給紙を行うことができる。これにより、上述した実施の形態と同様に、印刷媒体がインクジェットヘッド12のインク吐出孔に接触することを防止でき、印刷画質の低下を軽減できる。
【0104】
なお、
図14〜
図16では、アタッチメント90が3本の調整バー93a〜93cを備える構成を示したが、調整バーの数はこれに限らない。