特許第5806027号(P5806027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

<>
  • 特許5806027-タイヤ 図000002
  • 特許5806027-タイヤ 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806027
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   B60C11/03 200A
   B60C11/03 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-163358(P2011-163358)
(22)【出願日】2011年7月26日
(65)【公開番号】特開2013-23193(P2013-23193A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】武居 吾空
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−191740(JP,A)
【文献】 特開平06−234307(JP,A)
【文献】 特開平04−218410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド幅方向外側の領域においてタイヤ周方向に延びる周方向溝が形成されるとともに、トレッド幅方向の中央部からトレッド幅方向外側に延び、タイヤ周方向に対して傾斜する傾斜溝が複数形成され、
前記傾斜溝のトレッド幅方向外側端が前記周方向溝に連通したタイヤであって、
前記傾斜溝の溝幅は、トレッド幅方向外側に向かうに連れて広くなり
前記傾斜溝のトレッド幅方向内側の端部に連通するとともに、タイヤ赤道線を基準として逆側に形成されている前記傾斜溝の中間部に連通する連結溝が形成され、
前記連結溝は、タイヤ周方向に沿って延び、
前記連結溝の溝幅は、前記傾斜溝の溝幅よりも狭く、
前記傾斜溝の中間部から分岐し、タイヤ周方向に沿って延びつつ、トレッド幅方向外側に向かって湾曲する分岐周方向溝が形成され、
前記分岐周方向溝は、分岐元の傾斜溝に隣接する傾斜溝に連通するタイヤ。
【請求項2】
トレッド幅方向外側の領域においてタイヤ周方向に延びる周方向溝が形成されるとともに、トレッド幅方向の中央部からトレッド幅方向外側に延び、タイヤ周方向に対して傾斜する傾斜溝が複数形成され、
前記傾斜溝のトレッド幅方向外側端が前記周方向溝に連通したタイヤであって、
前記傾斜溝の溝幅は、トレッド幅方向外側に向かうに連れて広くなり、
前記傾斜溝のトレッド幅方向内側の端部に連通するとともに、タイヤ赤道線を基準として逆側に形成されている前記傾斜溝の中間部に連通する連結溝が形成され、
前記連結溝は、タイヤ周方向に沿って延び、
前記連結溝の溝幅は、前記傾斜溝の溝幅よりも狭く、
前記連結溝の溝幅は、前記傾斜溝のトレッド幅方向内側の端部からタイヤ赤道線を基準として逆側に形成されている前記傾斜溝の中間部に向かうに連れて狭くなるタイヤ。
【請求項3】
前記傾斜溝のトレッド幅方向内側の端部は、タイヤ赤道線上に位置する請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記周方向溝は、トレッド幅方向外側からトレッド幅方向内側に屈曲する屈曲部を有し、前記傾斜溝のトレッド幅方向外側の端部は、前記屈曲部に連通する請求項1乃至の何れか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ周方向に延びる周方向溝が形成されるとともに、タイヤ周方向に対して傾斜する傾斜溝が複数形成されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用自動車などに装着される空気入りタイヤ(以下、タイヤ)では、湿潤路及び氷雪路での性能を両立するため、様々なトレッドパターンが用いられている。例えば、トレッド幅方向外側にタイヤ周方向に延びる周方向溝が形成されるとともに、トレッド幅方向の中央部にタイヤ周方向に対して傾斜する傾斜溝が複数形成されたタイヤが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、当該傾斜溝は、周方向溝に連通している。このような周方向溝と傾斜溝との組み合わせによって、排水性を確保しつつ、雪上でのトラクションや制動力を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−161057号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の乗用自動車の性能向上に伴って、湿潤路及び氷雪路での性能をより高い次元で両立したタイヤが求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、湿潤路及び氷雪路での性能をより高い次元で両立し得るタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、トレッド幅方向(トレッド幅方向DT)外側の領域においてタイヤ周方向(タイヤ周方向DC)に延びる周方向溝(周方向溝20, 30)が形成されるとともに、トトレッド幅方向の中央部からトレッド幅方向外側に延び、タイヤ周方向に対して傾斜する傾斜溝(傾斜溝100)が複数形成され、前記傾斜溝のトレッド幅方向外側端が前記周方向溝に連通したタイヤであって、前記傾斜溝は、トレッド幅方向外側に向かうに連れてトレッド幅方向に近づくように傾斜し、前記傾斜溝のトレッド幅方向内側の端部に連通するとともに、タイヤ赤道線(タイヤ赤道線CL)を基準として逆側に形成されている前記傾斜溝の中間部に連通する連結溝(連結溝200)が形成され、前記連結溝は、タイヤ周方向に沿って延び、前記連結溝の溝幅は、前記傾斜溝の溝幅よりも狭いことを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の特徴によれば、湿潤路及び氷雪路での性能をより高い次元で両立し得るタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤ10のトレッドの一部平面展開図である。
図2】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤ10のトレッドの一部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係るタイヤ(空気入りタイヤ)の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0011】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0012】
(1)空気入りタイヤの概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10のトレッドの一部平面展開図である。図1に示すように、空気入りタイヤ10には、周方向溝20及び周方向溝30が形成される。
【0013】
空気入りタイヤ10は、降雪時の使用に耐え得るいわゆる冬用タイヤであり、自動車への装着時における回転方向が指定されるトレッドパターンを有する。ここで言う冬用タイヤとは、氷雪路での性能を重視したスタッドレスタイヤと、氷雪路及び非氷雪路での性能をバランスよく確保したオールシーズン用タイヤなどを含むタイヤのことを言う。なお、空気入りタイヤ10には、空気に代えて窒素ガスなどの不活性ガスを充填してもよい。また、図1において、細線部分は、正規内圧及び正規荷重時には、路面に接地しない領域を意味している。
【0014】
周方向溝20, 30は、トレッド幅方向DT外側の領域において、タイヤ周方向DCに延びる。周方向溝20と周方向溝30との間には、路面と接地する陸部40が設けられる。
【0015】
陸部40は、トレッド幅方向DTにおける中央部に設けられる。なお、トレッド幅方向DTの中央部とは、日本自動車タイヤ協会(JATMA)などで規定される正規内圧に設定された空気入りタイヤ10に正規荷重が付加された状態において、タイヤ赤道線CLを含むトレッド幅の60%の領域内を意味する。
【0016】
陸部40には、複数の傾斜溝100が形成される。傾斜溝100は、トレッド幅方向DT外側に向かうに連れてトレッド幅方向DTに近づくように傾斜する。傾斜溝100のトレッド幅方向DT外側端は、周方向溝20または周方向溝30に連通する。なお、空気入りタイヤ10には、図示しないサイプが形成されていてもよい。
【0017】
また、陸部40には、複数の連結溝200、及び複数の分岐周方向溝300が形成される。分岐周方向溝300のそれぞれは、タイヤ周方向DCにおいて隣接する分岐周方向溝300と、トレッド幅方向DTにおいて異なる位置に形成される。具体的には、タイヤ周方向DCにおいて、複数の分岐周方向溝300は、ジグザグ状を形成する。
【0018】
(2)陸部の形状
図2は、空気入りタイヤ10のトレッドの一部拡大平面図である。図2では、傾斜溝100について、傾斜溝110〜傾斜溝140を例として説明する。また、連結溝200について、連結溝210〜連結溝240を例として説明する。さらに、分岐周方向溝300について、分岐周方向溝310及び分岐周方向溝320を例として説明する。
【0019】
図2に示すように、例えば、傾斜溝110の溝幅は、トレッド幅方向DT外側に向かうに連れて広くなる。傾斜溝110〜140のトレッド幅方向DT内側の端部は、タイヤ赤道線CL上に位置する。
【0020】
また、連結溝210は、傾斜溝110のトレッド幅方向DT内側の端部に連通する。さらに、連結溝210は、タイヤ赤道線CLを基準として逆側に形成されている傾斜溝120の中間部に連通する。同様に、傾斜溝130に連通する連結溝230は、タイヤ赤道線CLを基準として逆側に形成されている傾斜溝140の中間部に連通する。
【0021】
また、傾斜溝120に連通する連結溝220は、タイヤ赤道線CLを基準として逆側に形成されている傾斜溝130の中間部に連通する。同様に、傾斜溝140に連通する連結溝240は、タイヤ赤道線CLを基準として逆側に形成されている傾斜溝(不図示)の中間部に連通する。
【0022】
連結溝210(〜240)は、タイヤ周方向DCに沿って延びており、連結溝210〜240の溝幅は、傾斜溝110(〜140)の溝幅よりも狭い。また、例えば、傾斜溝110の溝幅は、傾斜溝110のトレッド幅方向DT内側の端部からタイヤ赤道線CLを基準として逆側に形成されている傾斜溝120の中間部に向かうに連れて狭くなる。傾斜溝120〜140も同様の形状を有する。なお、連結溝210(〜240)は、タイヤ周方向DCに対して平行である必要はなく、タイヤ周方向DCと形成する角度が30度以下であればよい。
【0023】
例えば、分岐周方向溝310は、傾斜溝110の中間部から分岐し、タイヤ周方向DCに沿って延びつつ、トレッド幅方向DT外側に向かって湾曲する。また、分岐周方向溝310は、分岐元の傾斜溝110にタイヤ周方向において隣接する傾斜溝130に連通する。
【0024】
同様に、分岐周方向溝320は、傾斜溝120の中間部から分岐し、タイヤ周方向DCに沿って延びつつ、トレッド幅方向DT外側に向かって湾曲する。また、分岐周方向溝320は、分岐元の傾斜溝120に隣接する傾斜溝140と連通する。
【0025】
周方向溝20は、トレッド幅方向DT外側からトレッド幅方向DT内側に屈曲する屈曲部25を有する。傾斜溝120, 140のトレッド幅方向外側の端部は、屈曲部25に連通する。同様に、周方向溝30は、トレッド幅方向DT外側からトレッド幅方向DT内側に屈曲する屈曲部35を有する。傾斜溝110, 130のトレッド幅方向外側の端部は、屈曲部35に連通する。
【0026】
(3)作用・効果
空気入りタイヤ10によれば、例えば、傾斜溝110は、トレッド幅方向DT外側に向かうに連れてトレッド幅方向DTに近づくように傾斜する。また、例えば、連結溝210は、傾斜溝110のトレッド幅方向内側の端部に連通するとともに、タイヤ赤道線CLを基準として逆側に形成されている傾斜溝120の中間部に連通する。さらに、連結溝210は、タイヤ周方向DCに沿って延びるとともに、連結溝210の溝幅は、傾斜溝110の溝幅よりも狭い。
【0027】
このため、陸部40に形成されているこれらの溝部に入り込んだ雪は、逃げ場を規制されるため、結果的に雪柱せん断力が増大する。したがって、氷雪路におけるトラクションや制動力が向上する。また、傾斜溝100は、周方向溝20, 30に連通するため、陸部40に入り込んだ雨水を効率的に排水できる。
【0028】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、湿潤路及び氷雪路での性能を高い次元で両立し得る。
【0029】
本実施形態では、分岐周方向溝300は、分岐元の傾斜溝100に隣接する傾斜溝100と交差する。このため、陸部40に形成されているこれらの溝部に入り込んだ雪は、分岐周方向溝300と傾斜溝100との合流部において、さらに逃げ場を規制されるため、雪柱せん断力がさらに増大し、氷雪路におけるトラクションや制動力をさらに向上し得る。具体的には、空気入りタイヤ10は、回転方向が指定されるため、制動時には、溝部に入り込んだ雪が傾斜溝100などの先端でせき止められるようになるため、制動力が向上する。また、発進加速時には、傾斜溝100と分岐周方向溝300との交差部分などで互いぶつかるようになるため、トラクションが向上する。
【0030】
本実施形態では、傾斜溝100の溝幅は、トレッド幅方向DT外側に向かうに連れて広くなる。つまり、トレッド幅方向DT外側から傾斜溝100に入り込んだ雪は、溝幅が徐々に狭くなるとともに他の傾斜溝100と交差するため、さらに逃げ場を規制される。
【0031】
同様に、連結溝200の溝幅は、傾斜溝100のトレッド幅方向DT内側の端部からタイヤ赤道線CLを基準として逆側に形成されている傾斜溝100の中間部に向かうに連れて狭くなるため、連結溝200に入り込んだ雪は、さらに逃げ場を規制される。したがって、氷雪路におけるトラクションや制動力の更なる向上に寄与し得る。
【0032】
本実施形態では、傾斜溝100のトレッド幅方向DT内側の端部は、タイヤ赤道線CL上に位置する。このため、総合的なトラクションや制動力の増大に寄与する度合いが大きいトレッド幅方向DTにおけるセンター領域での雪柱せん断力を効果的に向上し得る。
【0033】
本実施形態では、傾斜溝100のトレッド幅方向DT外側の端部は、屈曲部25, 35に連通する。このような屈曲部25, 35によっても雪柱せん断力が増大し、氷雪路におけるトラクションや制動力の更なる向上に寄与し得る。
【0034】
(4)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、傾斜溝100のトレッド幅方向DT外側の端部は、屈曲部25, 35に連通していたが、屈曲部25, 35は、必ずしも形成されていなくても構わない。
【0036】
上述した実施形態では、傾斜溝100のトレッド幅方向DT内側の端部は、タイヤ赤道線CL上に位置していたが、当該端部は、必ずしもタイヤ赤道線CL上に位置していなくても構わない。また、傾斜溝100や連結溝200の溝幅は、変化することなく一定でも構わない。
【0037】
上述した実施形態では、分岐周方向溝300が形成されていたが、分岐周方向溝300は、形成されていなくても構わない。或いは、分岐周方向溝300は、全ての傾斜溝100間ではなく、一定の間隔毎に形成されてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、トレッド幅方向DTの中央部とは、JATMAなどで規定される正規内圧に設定された空気入りタイヤ10に正規荷重が付加された状態において、タイヤ赤道線CLを含むトレッド幅の60%の領域内を意味するものとしたが、キャンバー角が大きい自動車への装着を前提した空気入りタイヤの場合などには、正規内圧に設定された空気入りタイヤに正規荷重が付加された状態におけるトレッド幅方向の中心を基準としたトレッドの「接地幅」の60%の領域内を意味するものとしてもよい。
【0039】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0040】
10…空気入りタイヤ
20…周方向溝
25, 35…屈曲部
30…周方向溝
40…陸部
100, 110, 120, 130, 140…傾斜溝
200, 210, 220, 230, 240…連結溝
300, 310, 320…分岐周方向溝
図1
図2