特許第5806100号(P5806100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5806100多孔質シラザン被覆粒子、担持触媒およびこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806100
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】多孔質シラザン被覆粒子、担持触媒およびこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/28 20060101AFI20151021BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20151021BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20151021BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20151021BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20151021BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   B01J31/28 Z
   B01J35/10 301G
   B01J37/04 102
   B01J37/02 101C
   B01J37/08
   C07F7/10 F
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-275616(P2011-275616)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-123697(P2013-123697A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 武
(74)【代理人】
【識別番号】100114638
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 寛也
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 光章
(72)【発明者】
【氏名】平井 俊晴
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−276688(JP,A)
【文献】 特開平10−337473(JP,A)
【文献】 特開平09−328479(JP,A)
【文献】 特開平04−180837(JP,A)
【文献】 特開平02−004833(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/146711(WO,A1)
【文献】 特開昭59−097505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C07F 7/00−7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コア粒子と、その表面の少なくとも一部についた多孔質シラザン層とを有し、
前記多孔質シラザン層がポリシラザンを含み、
多孔質シラザン層が有する細孔の平均細孔径が0.2nm超8nm未満であり、
疎水性を備える、多孔質シラザン被覆粒子。
【請求項2】
前記多孔質シラザン層の厚さの平均値が2nm超である、請求項1に記載の多孔質シラザン被覆粒子。
【請求項3】
前記細孔の容積が0.05〜0.5ml/gである、請求項1または2に記載の多孔質シラザン被覆粒子。
【請求項4】
比表面積が100〜1000m2/gである、請求項1〜のいずれかに記載の多孔質シラザン被覆粒子。
【請求項5】
前記金属コア粒子が、第4周期遷移元素、第5周期遷移元素、白金、金、オスミウムおよびイリジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを主成分とする、請求項1〜のいずれかに記載の多孔質シラザン被覆粒子。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の多孔質シラザン被覆粒子が担体の表面に担持している担持触媒。
【請求項7】
金属コア粒子が分散したコロイド溶液を得るコロイド調整工程と、
前記コロイド溶液と、下記式(I)に示す繰り返し単位を少なくとも1つ含むシラザン化合物を含むシラザン溶液とを加温しながら混合して、シラザン被覆粒子を含む分散液(X)を得る被覆工程と、
前記分散液(X)に含まれる溶媒と固形分とを分離して、多孔質シラザン被覆粒子を得る細孔形成工程と
を備える、多孔質シラザン被覆粒子の製造方法。
【化1】
ここで、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を表す。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の多孔質シラザン被覆粒子が得られる、請求項に記載の多孔質シラザン被覆粒子の製造方法。
【請求項9】
金属コア粒子が分散したコロイド溶液を得るコロイド調整工程と、
前記コロイド溶液と下記式(I)に示す繰り返し単位を少なくとも一つ含むシラザン化合物を含むシラザン溶液とを加温しながら混合して、シラザン被覆粒子を含む分散液(X)を得る被覆工程と、
前記分散液(X)に担体を添加して分散液(Y)を得る添加工程と、
前記分散液(Y)に含まれる溶媒と固形分とを分離して、多孔質シラザン被覆粒子が担体に担持した担持触媒を得る担持工程と
を備える、担持触媒の製造方法。
【化2】
ここで、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質シラザン被覆粒子、担持触媒およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
担体に金属粒子を担持させてなる排ガス浄化等のために用いる触媒として、従来、種々のものが提案されている。例えば担体物質(例えばアルミナ、ゼオライトなど)に、活性金属と呼ばれる各種金属粒子(例えばPt(白金)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)など)を担持させてなるものが提案されている。
また、担体に金属粒子を担持させて金属粒子担持触媒を製造する方法も、従来、種々のものが提案されている。例えば担持させる金属を溶解した溶液中に担体物質を投入して、当該担体物質上に金属粒子を析出させる方法や、コロイド状の微小な粒子を分散させた金属粒子分散液に担体物質を投入して金属粒子を担持させる方法が挙げられる。
【0003】
例えば特許文献1には、金属酸化物などからなる微小な担体粒子の表面に、触媒活性をもつ微小な金属粒子を析出させる方法において、前記担体を合成する少なくとも一つの原料の吸収バンドに合致する波長を含む光を、前記原料に照射し前記担体粒子を析出させる工程と、析出した前記担体粒子と触媒活性をもつ前記金属粒子を析出するための前記原料とに、同時に、前記原料の吸収バンドに合致する波長を含む光を照射し、前記金属粒子を前記担体粒子の表面に析出させる工程と、析出した前記金属粒子を選別補収する工程とからなることを特徴とする触媒の製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、金属粒子及び/または金属化合物粒子が、該粒子を実質的に個々に且つ別々に保護する数平均分子量が3,000〜300,000の有機高分子化合物と共に固体担体に吸着担持されてなり、該高分子化合物及び該固体担体の少なくとも一方が、共有結合を形成して両者間に化学結合を作るべく作用し得る官能基を有さないことを特徴とする金属粒子及び/又は金属化合物粒子担持複合体が記載されている。また、その製造方法として、分散媒、金属粒子及び/又は金属化合物粒子及び保護コロイド粒子作用を持つ数平均分子量が3,000〜300,000の有機高分子化合物を含み、該粒子が該分散媒中に分散してコロイド粒子を形成し、且つ該高分子が該粒子に吸着して保護コロイド粒子として該粒子を実質的に個々に且つ別々に保護してなるコロイド粒子分散液を提供し、該コロイド粒子分散液と固体担体とを接触させ、該高分子化合物および該固体担体の少なくとも一方が、共有結合を形成して両者間に化学結合を作るべく作用し得る官能基を有さず、かくして、該高分子化合物で保護された該粒子が該固体担体に吸着されてなる粒子担持複合体を形成し、そして得られた複合体を該分散媒から単離することを特徴とする金属粒子及び/又は金属化合物粒子担持複合体の製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、金属含有イオン及び該金属含有イオンの還元により生成する金属粒子が担持される担体を含む溶液中にプロパルギルアルコールを加え、該金属含有イオンとプロパルギルアルコールとの反応物を該担体上に担持した後、該担体を水素ガスを含有する還元性ガス中で熱処理して、該担体上の金属含有イオンとプロパルギルアルコールとの反応物を金属含有コロイド粒子に還元することを特徴とする高分散金属含有コロイド粒子担持触媒の製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献4には、担体となる固体物質の存在下、金属の化合物またはイオンを含有した還元能を有する液体または還元物質を溶解した液体に、マイクロ波を照射させるか、或いは、金属の化合物またはイオンを含有した、還元能を有する液体または還元物質を溶解した液体に、マイクロ波を照射させた後に、担体となる固体物質を存在させることを特徴とする、金属含有コロイド粒子を表面に付着させた金属含有コロイド粒子付着担体の製造方法が記載されている。
【0007】
特許文献5には、周期表第4周期から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族、6B族及び第4周期8族の少なくとも1種の第二元素と金とを含有する金属粒子が析出担持法により担体上に担持された金属粒子担持体が記載されている。また、その製造方法として金及びその化合物の少なくとも1種ならびに第二元素及びその化合物の少なくとも1種を含む担体を熱処理することを特徴とする製造方法が記載されている。
【0008】
このような従来の金属粒子担持触媒は、使用を続けると金属粒子が融着や凝集、粒子成長を起こし、その結果、触媒活性の低下や、寿命が短くなる問題が生じていた。このような問題は、高温下で使用すると特に顕著になる。
【0009】
これに対して高分子電解質型燃料電池(PEFC)電極用触媒が提案された。特許文献6には、白金族金属を含有するナノ粒子の表面に、無機酸化物からなる多孔質物質を有していることを特徴とする表面修飾化金属ナノ粒子が記載されており、このようなナノ粒子はナノ粒子同士が凝集するなどすることが顕著に抑制され、その活性が持続し、それを利用して触媒を製造して優れた性質を持つ高分子電解質燃料電池を提供できると記載されている。
なお、特許文献6には、多孔質の孔径について、燃料が金属ナノ粒子表面に拡散できる大きさであれば特に制限はないと記載されているものの、具体的な大きさについては全く記載されていない。
また、特許文献6には、多孔質の膜厚について、金属ナノ粒子同士の接触が防止できる厚さであれば特に制限はないが、燃料の金属ナノ粒子表面への拡散や、酸化反応で生じた電子の担持体への導電を阻害しない厚さであることが好ましい、と記載されており、具体的には、おおよそ0.5〜2nmの極薄のシリカ層が記載され、さらに、2つの実施例として、多孔質の膜厚がいずれも1nm程度であったことが記載されているのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭61−268359号公報
【特許文献2】特開平5−293383号公報
【特許文献3】特開平6−31181号公報
【特許文献4】特開2003−13105号公報
【特許文献5】特開2003−053188号公報
【特許文献6】特開2005−276688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献6に記載の表面修飾化ナノ粒子について、上記のように記載されていることから判断すると、この表面修飾化ナノ粒子は高分子電解質燃料電池電極用触媒としても用いることを前提としているので、多孔質の層の厚さは、燃料が金属ナノ粒子表面へ拡散し、また、電子が導電する程度に薄くする必要があり、逆にいれば、その程度にまで多孔質の層が薄いので、多孔質の層の細孔は必須ではないと考えられる。
【0012】
また、上記のように特許文献6には多孔質の孔径の大きさについて、具体的な記載はないので、本発明者は、特許文献6の実施例1に記載されているように、金属微粒子表面をアミノシランで処理し、ついで水ガラスで処理する方法によって、金属微粒子の表面をシリカで覆った表面修飾化金属ナノ粒子を製造し、そのシリカの層を観察した。その結果、細孔はほとんど存在せず、わずかに存在する場合がある細孔についても、その孔径は著しく小さい(おおむね1nm以下)ことを確認した。また、得られた表面修飾化金属ナノ粒子の触媒活性を測定したところ、極めて低いことを確認した。
【0013】
このように特許文献6に記載の表面修飾化金属ナノ粒子における多孔質の層には細孔がほぼ存在しておらず、触媒活性も低いものであった。一方、特許文献1〜5のような触媒は、活性は高かったとしても、使用により凝集等が起こるので寿命が短かった。
このように従来、活性が高く、かつ寿命が長くて使用してもその活性が長期間維持される触媒は存在しなかった。
【0014】
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。
すなわち、活性が高く、使用してもその活性が長期間維持される担持触媒、その一部を構成し得る多孔質シラザン被覆粒子およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(10)である。
(1)金属コア粒子と、その表面の少なくとも一部についた多孔質シラザン層とを有し、
前記多孔質シラザン層がポリシラザンを含み、
多孔質シラザン層が有する細孔の平均細孔径が0.2nm超8nm未満であり、
疎水性を備える、多孔質シラザン被覆粒子。
(2)金属コア粒子と、その表面の少なくとも一部についた多孔質シラザン層とを有し、
多孔質シラザン層が有する細孔の平均細孔径が0.2nm超8nm未満であり、
疎水性を備え、
前記金属コア粒子と、下記式(I)に示す繰り返し単位を少なくとも1つ含むシラザン化合物とを溶媒中において加温しながら接触させ、その後、固形分と前記溶媒とを分離してなる、多孔質シラザン被覆粒子。
【化1】
ここで、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を表す。
(3)前記多孔質シラザン層の厚さの平均値が2nm超である、上記(1)または(2)に記載の多孔質シラザン被覆粒子。
(4)前記細孔の容積が0.05〜0.5ml/gである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔質シラザン被覆粒子。
(5)比表面積が100〜1000m2/gである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の多孔質シラザン被覆粒子。
(6)前記金属コア粒子が、第4周期遷移元素、第5周期遷移元素、白金、金、オスミウムおよびイリジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを主成分とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の多孔質シラザン被覆粒子。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の多孔質シラザン被覆粒子が担体の表面に担持している担持触媒。
(8)金属コア粒子が分散したコロイド溶液を得るコロイド調整工程と、
前記コロイド溶液と、前記式(I)に示す繰り返し単位を少なくとも1つ含むシラザン化合物を含むシラザン溶液とを加温しながら混合して、シラザン被覆粒子を含む分散液(X)を得る被覆工程と、
前記分散液(X)に含まれる溶媒と固形分とを分離して、多孔質シラザン被覆粒子を得る細孔形成工程と
を備える、多孔質シラザン被覆粒子の製造方法。
(9)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の多孔質シラザン被覆粒子が得られる、請求項8に記載の多孔質シラザン被覆粒子の製造方法。
(10)金属コア粒子が分散したコロイド溶液を得るコロイド調整工程と、
前記コロイド溶液と前記式(I)に示す繰り返し単位を少なくとも一つ含むシラザン化合物を含むシラザン溶液とを加温しながら混合して、シラザン被覆粒子を含む分散液(X)を得る被覆工程と、
前記分散液(X)に担体を添加して分散液(Y)を得る添加工程と、
前記分散液(Y)に含まれる溶媒と固形分とを分離して、多孔質シラザン被覆粒子が担体に担持した担持触媒を得る担持工程と
を備える、担持触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、活性が高く、使用してもその活性が長期間維持される担持触媒、その一部を構成し得る多孔質シラザン被覆粒子およびそれらの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明について説明する。
本発明は、金属コア粒子と、その表面の少なくとも一部についた多孔質シラザン層とを有し、前記多孔質シラザン層がポリシラザンを含み、多孔質シラザン層が有する細孔の平均細孔径が0.2nm超8nm未満であり、疎水性を備える、多孔質シラザン被覆粒子である。
このような多孔質シラザン被覆粒子を、以下では「本発明の被覆粒子」ともいう。
【0018】
また、本発明は、本発明の被覆粒子が担体の表面に担持している担持触媒である。
このような担持触媒を、以下では「本発明の担持触媒」ともいう。
本発明の担持触媒は、例えばHC(炭化水素)分解システム(例えば自動車等の排ガス浄化用の三元触媒や、揮発性有機化合物(VOC)の分解)、高濃度硝酸分解システム(例えば、硝酸性窒素を還元して窒素を生成する処理)、水素化反応システムにおいて利用する触媒として好適である。
【0019】
<金属コア粒子>
初めに、本発明の被覆粒子における金属コア粒子について説明する。
本発明の被覆粒子における金属コア粒子は触媒能を備える金属であれば特に限定されず、第4周期遷移元素、第5周期遷移元素、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)およびイリジウム(Ir)からなる群から選ばれる少なくとも1つを主成分とするものであることが好ましく、Pt、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、Cu、AuおよびAgからなる群から選ばれる少なくとも1つを主成分とするものであることがより好ましい。
ここで第4周期遷移元素とは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuを意味する。また、第5周期遷移元素とは、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、PdおよびAgを意味する。
【0020】
また、ここで「主成分」とは、含有率が70質量%以上であることを意味する。すなわち、金属コア粒子における第4周期遷移元素(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu)、第5周期遷移元素(Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag)、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)およびイリジウム(Ir)の合計含有率が70質量%以上であることが好ましい。この含有率は80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがより好ましく、100質量%である、すなわち、金属コア粒子が実質的に第4周期遷移元素、第5周期遷移元素、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)およびイリジウム(Ir)からなる群から選ばれる少なくとも1つからなることがさらに好ましい。ここで「実質的になる」とは、原料や製造過程から不可避的に含まれる不純物は含まれ得るが、それ以外は含まないことを意味する。なお、特に断りがない限り、本発明の説明において「主成分」および「実質的になる」は、このような意味で用いるものとする。
【0021】
金属コア粒子が、第4周期遷移元素、第5周期遷移元素、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)およびイリジウム(Ir)からなる群から選ばれる2つ以上の元素を含むと、金属コア粒子が化学的に安定化する傾向があるので好ましい。金属コア粒子はPd−Pt(PdおよびPtを含むことを意味する。以下、同様。)、Pd−Ag、Pd−Au、Pd−Cu、Pt−Ag、Pt−Au、Pt−Cu、Pt−Ru、Au−Ag、Au−Ruという組成であることが好ましい。また、さらにSnを含み、Ag−Pd−Sn、Pd−Cu−Snという組成であることが好ましい。
【0022】
金属コア粒子が、第4周期遷移元素、第5周期遷移元素、白金(Pt)、金(Au)、オスミウム(Os)およびイリジウム(Ir)以外に含んでもよい成分として、Sn、La、Ce、Prが挙げられる。
【0023】
本発明における金属コア粒子が含有する成分(組成)の測定方法について説明する。
金属コア粒子が含有する成分(組成)は、金属コア粒子、本発明の被覆粒子または本発明の担持触媒を600℃で焼成し、残渣をアルカリ溶融剤によって溶融した後、28質量%塩酸または硝酸水溶液によって溶解し、得られた溶解液を純水で希釈した後、ICP誘導結合プラズマ発光分光分析装置(例えば、SPS1200A、セイコー電子株式会社製)を用いて測定するものとする。また、金属コア粒子と多孔質シラザン層に同一元素が含まれる場合は、本発明の被覆粒子または本発明の担持触媒についてEDXによる面分析(元素分布分析)を行い、金属コア粒子および多孔質シラザン層におけるその元素の存在比率を求め、得られた存在比率と上記のICP誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いた各成分の組成とから、金属コア粒子を構成する成分の含有率を算出して求めるものとする。
【0024】
金属コア粒子の一次粒子の平均粒子径は特に限定されないが、0.5〜100nmであることが好ましく、1〜50nmであることがより好ましく、1〜40nmであることがより好ましく、1〜20nmであることがより好ましく、1〜15nmであることがさらに好ましい。このような範囲であると容易に製造することができ、また、粒子径が大きすぎる場合と比較して、本発明の被覆粒子を担体に担持してなる本発明の担持触媒の触媒能が高くなるからである。
【0025】
ここで、金属コア粒子の一次粒子の平均粒子径は、画像解析法によって測定される値を意味するものとする。画像解析法とは、走査型電子顕微鏡を用いて、金属コア粒子を倍率30万倍で写真撮影し、得られた写真から任意に100個の金属コア粒子を選び、各々の投影面積円相当径を測定して粒度分布を求め、それより平均粒子径(メジアン径)を算出して求める方法である。
【0026】
金属コア粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、四面体状(三角錐型)、六面体状(立方体状または直方体状。以下「角状」ともいう。)、八面体状、不定形が挙げられる。
【0027】
金属コア粒子は、上記のような平均粒子径の一次粒子が数個(例えば4〜30個)、数珠状に連結した鎖状粒子を形成していることが好ましい。
【0028】
金属コア粒子の形状や態様は、上記のように、金属コア粒子の一次粒子の平均粒子径を測定する場合と同様に、走査型電子顕微鏡を用いて金属コア粒子を倍率30万倍で写真撮影することで、確認することができる。
【0029】
<多孔質シラザン層>
次に、本発明の被覆粒子における多孔質シラザン層について説明する。
本発明の被覆粒子における多孔質シラザン層は、前記金属コア粒子の表面の少なくとも一部についている。本発明の被覆粒子は、金属コア粒子の全表面に多孔質シラザン層がついている、すなわち、金属コア粒子が多孔質シラザン層で覆われている態様であることが好ましい。
【0030】
多孔質シラザン層はポリシラザンを含むものである。また、多孔質シラザン層におけるポリシラザンの含有率は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがより好ましく、100質量%である(多孔質シラザン層はポリシラザンから実質的なる)ことがさらに好ましい(ここで「実質的になる」の意味は前述の通りである)。
【0031】
また、ここでポリシラザンとは、次に示す式(I)の繰り返し単位を1つ以上含むものを意味するものとする。繰り返し数は特に限定されないが2〜500,0000であってよく、5〜100,000であることが好ましい。また、ポリシラザンは他の繰り返し単位を含むものであってもよい。
【0032】
【化2】
【0033】
ここで、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基(フェニル基、トリル基、ナフチル基など)、アルキルシリル基(tert-ブチルジメチルシリル基など)、アルキルアミノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)を表す。
これらの中でも、R1、R2およびR3が水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0034】
また、ポリシラザンの分子量は特に限定されず、多孔質シラザン層に含まれるポリシラザンの平均分子量として500〜10,0000g/molであってよく、1,000〜5,0000g/molであることが好ましい。
【0035】
多孔質シラザン層は、このような分子量のポリシラザン分子の複数が集合したものであってよく、1つのポリシラザン分子からなるものであってもよい。
【0036】
前記ポリシラザンとしては、例えばポリカルボシラザン、ポリオルガノシラザン、ペルヒドロポリシラザン、ポリボロオルガノシラザンなどが挙げられる。
【0037】
多孔質シラザン層が前記ポリシラザン以外に含んでもよい成分としては、第3周期〜第6周期の元素からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素の酸化物が挙げられる。具体的には、例えばSiO2、Al23、TiO2、ZnOなどが挙げられる。
多孔質シラザン層における前記ポリシラザン以外の成分の含有率は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0質量%である(すなわち多孔質シラザン層は前記ポリシラザンから実質的なる)ことがさらに好ましい(ここで「実質的になる」の意味は前述の通りである)。
ここで多孔質シラザン層における各成分の含有率は、前述の本発明の金属コア粒子が含有する成分(組成)の測定方法と同様の方法で測定するものとする。
【0038】
多孔質シラザン層は主としてポリシラザンによって形成されており、多孔質シラザン層の最表面部には有機基が存在していて、これが本発明の被覆粒子を疎水性にしているものと、本発明者は推定している。
【0039】
多孔質シラザン層は、平均細孔径が0.2nm超8nm未満である細孔が形成されているものである。このような範囲内であると本発明の被覆粒子を担体に担持した本発明の担持触媒の活性が高く、使用してもその活性が長期間維持される。多孔質シラザン層に形成されている細孔の平均細孔径が大きすぎると、本発明の担持触媒の寿命が短くなる傾向があり、逆に平均細孔径が小さすぎると、本発明の担持触媒の活性が低くなる傾向がある。
平均細孔径は0.2〜7nmであることが好ましく、0.5〜5.0nmであることがより好ましく、0.8〜4.0nmであることがさらに好ましい。
【0040】
ここで、多孔質シラザン層が有する細孔径の平均(平均細孔径)は、次に示す窒素吸着法[1]で測定して得た値を意味するものとする。
窒素吸着法[1]について説明する。
まず、測定対象物を乾燥させたもの(0.2g)を試料として測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に吸着させて窒素吸着・脱着等温線を得る。そして、得られた窒素吸着・脱着等温線を用いてBJH(Barret-Joyner-Halenda)法により、試料の細孔径分布曲線を得て、その曲線に現れるメソ孔(粒子表面の細孔)側およびマクロ孔(粒子間細孔)側のピークのうち、メソ孔側のピークの細孔径を平均細孔径として求める。このような窒素吸着法は、例えば従来公知の細孔分布測定装置(例えば、日本ベル社製、BELSORP−mini(II))を用いて行うことができる。
本発明において多孔質シラザン層の細孔の径の平均値(平均細孔径)は、特に断りがない限り、ここに示した窒素吸着法[1]によって測定した値を意味するものとする。
【0041】
また、多孔質シラザン層は、細孔の容積が、本発明の被覆粒子の単位質量に対して0.05〜0.5ml/gであることが好ましく、0.08〜0.3ml/gであることがより好ましく、0.10〜0.2ml/gであることがさらに好ましい。このような範囲内であると、本発明の被覆粒子を担体に担持した本発明の担持触媒の活性がより高く、使用してもその活性がより長期間維持されるので好ましい。多孔質シラザン層に形成されている細孔の容積が大きすぎると、本発明の担持触媒の寿命が短くなる傾向があり、逆に細孔の容積が小さすぎると、本発明の担持触媒の活性が低くなる傾向がある。
【0042】
ここで、多孔質シラザン層が有する細孔の容積は、次に示す窒素吸着法[2]で測定して得た値を意味するものとする。
窒素吸着法[2]について説明する。
まず、測定対象物を乾燥させたもの(0.2g)を試料として測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に吸着させて窒素吸着・脱着等温線を得る。そして、得られた窒素吸着・脱着等温線における相対圧P/P0の値が0.4〜1.0の範囲に現れる、IUPACで規定されるIVヒステリシス曲線におけるメソ孔側部分の積算値を求め、これを細孔の容積として得る。このような窒素吸着法は、例えば従来公知の細孔分布測定装置(例えば、日本ベル社製、BELSORP−mini(II))を用いて行うことができる。
本発明において多孔質シラザン層の細孔の容積は、特に断りがない限り、ここに示した窒素吸着法[2]によって測定した値を意味するものとする。
【0043】
また、多孔質シラザン層の厚さは特に限定されないが、平均値が2nm超であることが好ましく、2.5nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることがさらに好ましい。また、多孔質シラザン層の厚さは、その平均値が50nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがより好ましく、7nm以下であることがさらに好ましい。このような範囲内であると、本発明の被覆粒子を担体に担持した本発明の担持触媒の活性がより高く、使用してもその活性がより長期間維持されるので好ましい。多孔質シラザン層の厚さが厚過ぎると、本発明の担持触媒の活性が低くなる傾向があり、逆に薄すぎると、本発明の担持触媒の寿命が短くなる傾向がある。
【0044】
ここで多孔質シラザン層の厚さは、走査型電子顕微鏡を用いて、本発明の被覆粒子を倍率30万倍で写真撮影し、得られた写真から任意に100個の本発明の被覆粒子を選び、各々の本発明の被覆粒子において多孔質シラザン層の厚さを数箇所測定し平均して、その1つの本発明の被覆粒子における多孔質シラザン層の厚さとし、それら100個のデータを単純平均することで、その試料(本発明の被覆粒子の群)における多孔質シラザン層の厚さとする。
【0045】
多孔質シラザン層は、上記のような平均径および容積の細孔を有し、上記のような厚さを有するものであることが好ましいが、多孔質シラザン層の厚さと細孔径の平均径および容積とのバランスが適していると、本発明の被覆粒子を担体に担持した本発明の担持触媒の活性がより高く、使用してもその活性がより長期間維持されることを、本発明者は見出した。
具体的には、多孔質シラザン層が有する細孔の平均細孔径が0.5〜5nmであり、細孔の容積が0.10〜0.20ml/gであり、さらに、多孔質シラザン層の厚さが2〜8nmであると、本発明の被覆粒子を担体に担持した本発明の担持触媒の活性がより高く、使用してもその活性がより長期間維持されるものになる。
【0046】
<本発明の被覆粒子>
本発明の被覆粒子は、疎水性を備える。したがって、本発明の被覆粒子を担体に担持した本発明の担持触媒は、例えば有機溶媒や樹脂の中での化学反応を促進するための触媒として好ましく用いることができる。
本発明の被覆粒子は疎水性であるので接触角が大きい。具体的には、本発明の被覆粒子における接触角は70〜110度程度となり、80〜100度となることが好ましく、90〜100度となることがより好ましい。
なお、接触角は、本発明の被覆粒子の1gを200℃で乾燥させた後、直径1cm、高さ5cmのセルに入れ、50kgfの荷重でプレスして成型物を得て、得られた成型物の表面に水を一滴たらして測定して得た値を意味するものとする。
【0047】
本発明の被覆粒子の比表面積は特に限定されないが、100〜1000m2/gであることが好ましく、130〜900m2/gであることがより好ましく、150〜800m2/gであることがより好ましく、300〜700m2/gであることがさらに好ましい。このような範囲内であると、本発明の被覆粒子を担体に担持した本発明の担持触媒の活性がより高く、使用してもその活性がより長期間維持されるので好ましい。比表面積が大きすぎると、本発明の担持触媒の活性が低くなる傾向があり、逆に小さすぎると、本発明の担持触媒の寿命が短くなる傾向がある。
なお、比表面積は、次に示す窒素吸着法[3](BET法)で測定して得た値を意味するものとする。
窒素吸着法[3]について説明する。
まず、測定対象物(ここでは本発明の被覆粒子)を乾燥させたもの(0.2g)を試料として測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、試料の比表面積を測定する。窒素吸着法[3](BET法)は、例えば従来公知の表面積測定装置を用いて行うことができる。
本発明において比表面積は、特に断りがない限り、ここに示した窒素吸着法[3](BET法)によって測定した値を意味するものとする。
【0048】
本発明の被覆粒子は、前記金属コア粒子の表面の少なくとも一部に、前記多孔質シラザン層がついたものである。
本発明の被覆粒子において、金属コア粒子および多孔質シラザン層の質量比は特に限定されないが、金属コア粒子の質量に対する多孔質シラザン層の質量の比(多孔質シラザン層の質量/金属コア粒子の質量)が、0.1〜5000であることが好ましく、0.5〜3000であることがより好ましく、1〜2000であることがより好ましく、1〜1000であることがより好ましく、1〜500であることがより好ましく、1〜100であることがより好ましく、1〜33であることがさらに好ましい。このような範囲内であると、本発明の被覆粒子を担体に担持した本発明の担持触媒の活性がより高く、使用してもその活性がより長期間維持されるので好ましい。
【0049】
ここで、本発明の被覆粒子における金属コア粒子および多孔質シラザン層の質量は、本発明の被覆粒子または本発明の担持触媒を600℃で焼成し、残渣をアルカリ溶融剤によって溶融した後、28質量%塩酸または硝酸水溶液によって溶解し、得られた溶解液を純水で希釈した後、ICP誘導結合プラズマ発光分光分析装置(例えばSPS1200A、セイコー電子株式会社製)を用いて含有率を測定し、それより算出して求めるものとする。また、金属コア粒子と多孔質シラザン層に同一元素が含まれる場合は、本発明の被覆粒子または本発明の担持触媒についてEDXによる面分析(元素分布分析)を行い、金属コア粒子および多孔質シラザン層におけるその元素の存在比率を求め、得られた存在比率と上記のICP誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いた各成分の組成とから、多孔質シラザン層に含まれる成分の含有率を算出し、それより求めるものとする。
【0050】
本発明の被覆粒子の平均粒子径(メジアン径)は特に限定されないが、1〜500nmが好ましく、2〜100nmがより好ましく、3〜50nmがさらに好ましい。
ここで本発明の被覆粒子の平均粒子径は、測定対象物(ここでは本発明の被覆粒子)をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液へ添加し、超音波分散および攪拌によって分散させて、透過率が70〜90%となるように調節した後、従来公知のレーザ散乱法(例えばHORIBA LA−950V2)を用いて粒度分布を測定し算出した値を意味するものとする。
【0051】
次に、本発明の担持触媒について説明する。
本発明の担持触媒は、本発明の被覆粒子が担体の表面に担持しているものである。
【0052】
担体は、前記金属コア粒子が担持可能なものであれば特に限定されず、例えば、Si、Al、C、Ti、ZrおよびCeからなる群から選ばれる少なくとも1つを主成分として含む無機系担体が挙げられる。
担体が含んでもよいその他の成分として、アルカリ金属、アルカリ土類、希土類、遷移金属(例えばLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo)が挙げられる。
また、担体は非晶質であっても、晶質であってもよく、合成物質、天然鉱物のいずれであってもよい。
また、Si、Al、C、Ti、ZrおよびCeからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む無機系担体は、その元素の酸化物からなること好ましく、複合酸化物であってもよい。このような無機系担体として、例えば、シリカ粒子(メソポーラスシリカ、シリカライト)、シリカ−アルミナ粒子、アルミナ粒子(活性アルミナ粒子)、カーボン粒子、活性炭(ヤシガラ系、フェノール樹脂系、塩基性など)、ゼオライト粒子(Y型、A型、モルデナイト型、ZSM−5型など、天然物でも合成物でもよい)、セリア(酸化セリウム)粒子、カオリン粒子、スメクタイト粒子、バーミキュライト粒子、雲母片、チタニアおよびジルコニアが挙げられる。
【0053】
また、担体の形状は特に限定されず、例えば球状や不定形であってよい。
【0054】
また、担体の平均粒子径(メジアン径)は特に限定されないが、10nm〜100mmが好ましく、12nm〜50mmがより好ましく、15nm〜10mmがより好ましく、20nm〜5mmがさらに好ましい。
ここで担体の平均粒子径は、測定対象物(担体)をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液へ添加し、超音波分散および攪拌によって分散させて、透過率が70〜90%となるように調節した後、従来公知のレーザ散乱法(例えばHORIBA LA−950V2)を用いて粒度分布を測定し算出した値を意味するものとする。
【0055】
また、担体の比表面積は特に限定されないが、1〜2000m2/gであることが好ましく、5〜1800m2/gであることがより好ましく、10〜1500m2/gであることがさらに好ましい。
なお、ここで担体の比表面積は、前述の本発明の被覆粒子の比表面積と同様に、窒素吸着法[3](BET法)で測定して得た値を意味するものとする。
【0056】
本発明の担持触媒は、このような担体の表面の少なくとも一部に本発明の被覆粒子が担持しているものである。
【0057】
本発明の担持触媒が含む前記金属コア粒子の量は特に限定されないが、100質量部の担体に対して、0.01〜100質量部であることが好ましく、0.1〜50質量部であることがより好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましく、1〜10質量部であることがさらに好ましい。担体に対して金属コア粒子の量が少なすぎると触媒能が低くなる傾向があり、逆に多すぎるとコストが高まる割には触媒能が高くならない傾向があるからである。
ここで、本発明の担持触媒が含む前記金属コア粒子の量は、本発明の担持触媒を600℃で焼成し、残渣をアルカリ溶融剤によって溶融した後、28質量%塩酸または硝酸水溶液によって溶解し、得られた溶解液を純水で希釈した後、ICP誘導結合プラズマ発光分光分析装置(例えばSPS1200A、セイコー電子株式会社製)を用いて金属コア粒子を構成する成分の含有率を測定して求めるものとする。また、金属コア粒子と多孔質シラザン層に同一元素が含まれる場合は、本発明の担持触媒についてEDXによる面分析(元素分布分析)を行い、金属コア粒子および多孔質シラザン層におけるその元素の存在比率を求め、得られた存在比率と上記のICP誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いた各成分の組成とから、金属コア粒子を構成する成分の含有率を算出して求めるものとする。
【0058】
また、本発明の担持触媒において、本発明の被覆粒子は、担体の単位面積(1m2)あたり、102〜1017個/m2担持していることが好ましく、103〜1015個/m2担持していることがより好ましい。担体に対して本発明の被覆粒子の量が少なすぎると触媒能が低くなる傾向があり、逆に多すぎるとコストが高まる割には触媒能が高くならない傾向があるからである。
ここで、担体に担持している本発明の被覆粒子の個数は、走査型電子顕微鏡を用いて、本発明の担持触媒を倍率30万倍で写真撮影し、得られた写真から肉眼によって、または読取装置を用いて担持個数を測定する。
【0059】
また、本発明の担持触媒の比表面積は特に限定されないが、1〜2000m2/gであることが好ましく、5〜1800m2/gであることがより好ましく、10〜1500m2/gであることがさらに好ましい。
なお、ここで本発明の担持触媒の比表面積は、前述の本発明の被覆粒子の比表面積と同様に、窒素吸着法[3](BET法)で測定して得た値を意味するものとする。
【0060】
また、本発明の担持触媒の平均粒子径(メジアン径)は特に限定されないが、10nm〜100mmが好ましく、12nm〜50mmがより好ましく、15nm〜10mmがより好ましく、20nm〜5mmがさらに好ましい。
ここで本発明の担持触媒の平均粒子径は、測定対象物(本発明の担持触媒)をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液へ添加し、超音波分散および攪拌によって分散させて、透過率が70〜90%となるように調節した後、従来公知のレーザ散乱法(例えばHORIBA LA−950V2)を用いて粒度分布を測定し算出した値を意味するものとする。
【0061】
前述のように本発明の被覆粒子が疎水性であるため、本発明の担持触媒も、その表面が疎水性になり易い。
【0062】
次に、本発明の被覆粒子の製造方法について説明する。
本発明の被覆粒子の製造方法は特に限定されないが、次に説明する本発明の被覆粒子の好適製造方法によって製造することが好ましい。
本発明の被覆粒子の好適製造方法は、金属コア粒子が分散したコロイド溶液を得るコロイド調整工程と、前記コロイド溶液と、前記式(I)に示す繰り返し単位を少なくとも1つ含むシラザン化合物を含むシラザン溶液とを加温しながら混合して、シラザン被覆粒子を含む分散液(X)を得る被覆工程と、前記分散液(X)に含まれる溶媒と固形分とを分離して、多孔質シラザン被覆粒子を得る細孔形成工程とを備える、多孔質シラザン被覆粒子の製造方法である。
【0063】
<コロイド調整工程>
初めに、本発明の被覆粒子の好適製造方法におけるコロイド調整工程について説明する。
コロイド調整工程は、金属コア粒子が分散したコロイド溶液を得る工程である。
例えば、溶液中で特定の金属イオンを還元することで、金属コア粒子が分散したコロイド溶液を得ることができる。また、溶液中で特定の金属イオンを還元する方法として、特定の金属イオンと還元剤とを溶液中で接触させる方法が挙げられる。ここで特定の金属イオンは、金属コア粒子を構成することになる金属の化合物(金属塩等)を溶媒に溶解して得ることができる。
また、特定の金属イオンと還元剤とを溶液中で接触させる場合、溶液中に、合わせて錯化安定剤を添加することが好ましい。還元後に得られる粒子が均一でかつ安定な粒子が調製できるためである。
【0064】
このような金属の化合物(金属塩等)として、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、クエン酸パラジウム、酢酸パラジウムが挙げられる。このような化合物を溶媒に溶解すると、特定の金属イオンとしてパラジウムイオンが得られ、これと還元剤とを溶液中で接触させることでパラジウムを含む金属コア粒子が分散したコロイド溶液が得られる。
また、金属の化合物(金属塩等)として、塩化白金酸、塩化白金(IV)酸カリウム、塩化白金(IV)酸ナトリウム、テトラニトロ白金(II)カリウム、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム水和物、ジニトロジアンミン白金硝酸、ジニトロジアンミン白金アンモニア、テトラアンミンジクロロ白金水和物が挙げられる。このような化合物を溶媒に溶解すると、特定の金属イオンとして白金イオンが得られ、これと還元剤とを溶液中で接触させることで白金を含む金属コア粒子が分散したコロイド溶液が得られる。
また、金属の化合物(金属塩等)として、硝酸銀、硫酸銀が挙げられる。このような化合物を溶媒に溶解すると、特定の金属イオンとして銀イオンが得られ、これと還元剤とを溶液中で接触させることで銀を含む金属コア粒子が分散したコロイド溶液が得られる。
また、金属の化合物(金属塩等)として、塩化金酸、亜硫酸金ナトリウム、シアン化金カリウム、シアン化金ナトリウムが挙げられる。このような化合物を溶媒に溶解すると、特定の金属イオンとして金イオンが得られ、これと還元剤とを溶液中で接触させることで金を含む金属コア粒子が分散したコロイド溶液が得られる。
また、金属の化合物(金属塩等)として、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅が挙げられる。このような化合物を溶媒に溶解すると、特定の金属イオンとして銅イオンが得られ、これと還元剤とを溶液中で接触させることで銅を含む金属コア粒子が分散したコロイド溶液が得られる。
さらに、金属の化合物(金属塩等)として、硫酸第二鉄、酢酸第一鉄が挙げられる。このような化合物を溶媒に溶解すると、特定の金属イオンとして鉄イオンが得られ、これと還元剤とを溶液中で接触させることで鉄を含む金属コア粒子が分散したコロイド溶液が得られる。
【0065】
また、金属イオンを得るために、金属コア粒子を構成することになる金属の化合物(金属塩等)を溶解するために用いる溶媒は、その化合物と反応しないものであれば特に限定されず、例えば、水、アルコール類、ケトン類、アミド類、エーテル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、スルホキシド類、ピロリドン類などが挙げられる。
【0066】
また、還元剤としては、アルコール、ヒドラジン、蟻酸、ホルムアルデヒド、ヒドロキノン、過塩素酸、硫酸第一鉄、水素化ホウ素ナトリウム、過酸化水素、過マンガン酸カリウムなどが挙げられる。
【0067】
このような還元剤を金属イオンを含む溶液へ添加することで、金属イオンと還元剤とを溶液中で接触させることができる。また、還元剤を予め溶媒に溶解して溶液とし、この溶液と金属イオンを含む溶液とを混合することでも、金属イオンと還元剤とを溶液中で接触させることができる。還元剤を予め溶解する溶媒は、上記の金属コア粒子を構成することになる金属の化合物(金属塩等)を溶解する溶媒と同様であってよい。
金属イオンの還元は、溶液を攪拌しながら、還元剤を前記溶液に添加することにより行うことが好ましい。
【0068】
また、ここで金属イオンと還元剤との量比は特に限定されないが、金属イオン100質量部に対して、還元剤が10質量部〜500質量部であることが好ましく、50〜300質量部であることがより好ましい。
【0069】
また、金属イオンと還元剤とを溶液中で接触させた後、必要に応じて、分散剤や界面活性剤(例えば、ポリビニルピロリドン、アミノシラン、ポリカルボン酸、有機酸など)を添加することが好ましい。金属コア粒子が凝集し難くなるからである。
【0070】
また、金属イオンと還元剤とを溶液中で接触させた後、限外濾過器などを用いて洗浄して、未反応金属イオンや還元剤を取り除くことが好ましい。
また、金属イオンと還元剤とを溶液中で接触させた後、塩酸等の酸を加えて余分な塩を溶解し、その後、イオン交換樹脂等を用いて脱塩することが好ましい。
【0071】
また、金属イオンと還元剤とを水溶液中で接触させた場合、好ましくは、上記のように、さらに限外濾過器を用いた洗浄およびイオン交換樹脂等を用いた脱塩を行った後に、溶媒(水)を有機溶媒へ置換することが好ましい。次の被覆工程において、金属コア粒子の表面にポリシラザンを含む被膜が形成され易いからである。
有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール(IPA)、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類等が挙げられる。
これらの中でもメタノール、エタノール、2−プロパノール(IPA)などのアルコール類を用いると、金属コア粒子が凝集を起こし難く安定する傾向があるので好ましい。
置換する方法としては、蒸留法、限外濾過膜法、ロータリーエバポレーター法等、従来公知の方法を採用することができる。
得られたコロイド溶液における固形分の濃度は0.5〜40質量%であることが好ましく、1.0〜30質量%であることがより好ましい。
【0072】
<被覆工程>
次に、本発明の被覆粒子の好適製造方法における被覆工程について説明する。
被覆工程では、コロイド調整工程によって得られたコロイド溶液と、下記式(I)に示す繰り返し単位を少なくとも1つ含むシラザン化合物を含むシラザン溶液とを加温しながら混合する。
【0073】
【化3】
【0074】
ここで、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基(フェニル基、トリル基、ナフチル基など)、アルキルシリル基(tert-ブチルジメチルシリル基など)、アルキルアミノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)を表す。
これらの中でも、R1、R2およびR3が水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0075】
このようなシラザン化合物は、下記式(II)に示すジシラザン化合物であることが好ましい。
【0076】
【化4】
【0077】
ここで、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基(フェニル基、トリル基、ナフチル基など)、アルキルシリル基(tert-ブチルジメチルシリル基など)、アルキルアミノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)を表す。
4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0078】
このようなジシラザン化合物として、具体的には1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン、1,3−Bis(クロロメチル)テトラメチルジシラザン、1,3−Bis(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等が挙げられる。
【0079】
シラザン溶液は、前記シラザン化合物を溶媒に添加して得ることができる。ここで溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール(IPA)、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類等を用いることができる。
シラザン溶液における固形分の濃度は0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがより好ましい。
【0080】
このような前記シラザン溶液と前記コロイド溶液とを加温しながら混合する。
また、2つの溶液を少しずつ、攪拌しながら混合することが好ましい。
例えば、前記シラザン溶液へ前記コロイド溶液を少しずつ、数時間〜数十時間(例えば1〜24時間程度)かけて、攪拌しながら添加して、混合することが好ましい。
【0081】
また、2つの溶液を加温しながら混合する。例えば、前記シラザン溶液を加温しつつ、ここへ常温の前記コロイド溶液を少しずつ加えていけば、2つの溶液を加温しながら混合することができる。
また、溶液の温度は溶媒の沸点以下の温度であれば特に限定されないが、30〜90℃程度であることが好ましく、40〜80℃程度であることがより好ましい。
【0082】
また、2つの溶液を少しずつ、攪拌しながら混合することが好ましい。
例えば、前記シラザン溶液へ前記コロイド溶液を少しずつ、数時間〜数十時間(例えば1〜24時間程度)かけて、攪拌しながら添加して、混合することが好ましい。
【0083】
2つの溶液の混合比は特に限定されないが、混合する前記コロイド溶液に含まれる固形分の質量に対する、混合する前記シラザン溶液に含まれる固形分の比(シラザン溶液に含まれる固形分の質量/コロイド溶液に含まれる固形分の質量)が、0.1〜5000であることが好ましく、0.5〜3000であることがより好ましく、1〜2000であることがより好ましく、1〜1000であることがより好ましく、1〜500であることがより好ましく、1〜100であることがより好ましく、1〜33であることがさらに好ましい。このような範囲内であると、本発明の被覆粒子を担体に担持した本発明の担持触媒の活性がより高く、使用してもその活性がより長期間維持されるので好ましい。
【0084】
このような被覆工程によって、前記コロイド溶液に含まれる金属コア粒子の表面にポリシラザンを含む被膜が形成されたシラザン被覆粒子を含む分散液(X)を得ることができる。
【0085】
<細孔形成工程>
次に、本発明の被覆粒子の好適製造方法における細孔形成工程について説明する。
細孔形成工程では、前記分散液(X)に含まれる溶媒と固形分とを分離する。
【0086】
分散液(X)から溶媒を分離する方法は特に限定されず、例えば従来公知の固液分離法を適用して行うことができる。また、例えば分散液(X)を乾燥機内に置くことで乾燥して、分散液(X)から溶媒を分離することができる。
細孔形成工程では、分散液(X)を減圧乾燥することで、分散液(X)から溶媒を分離することが好ましい。
【0087】
このようにして、分散液(X)を乾燥等して溶媒を分離すると、その過程で、金属コア粒子の表面のポリシラザンを含む被膜が収縮する。そして、その被膜には細孔が形成される。
本発明者は、分散液(X)を乾燥する際に、乾燥温度が高いと細孔の径が小さくなる傾向があり、逆に乾燥温度が低いと細孔の径が大きくなる傾向があることを見出した。そして、乾燥温度を最適化することで、得られる多孔質シラザン被覆粒子における細孔の平均細孔径を調整することを見出した。ここで乾燥温度は30〜500℃であることが好ましく、50〜400℃であることがより好ましい。
【0088】
次に、本発明の担持触媒子の製造方法について説明する。
本発明の担持触媒の製造方法は特に限定されないが、次に説明する本発明の担持触媒の好適製造方法によって製造することが好ましい。
本発明の担持触媒の好適製造方法は、金属コア粒子が分散したコロイド溶液を得るコロイド調整工程と、前記コロイド溶液と前記式(I)に示す繰り返し単位を少なくとも一つ含むシラザン化合物を含むシラザン溶液とを加温しながら混合して、シラザン被覆粒子を含む分散液(X)を得る被覆工程と、前記分散液(X)に担体を添加して分散液(Y)を得る添加工程と、前記分散液(Y)に含まれる溶媒と固形分とを分離して、多孔質シラザン被覆粒子が担体に担持した担持触媒を得る担持工程とを備える、担持触媒の製造方法である。
【0089】
このような本発明の担持触媒の好適製造方法におけるコロイド調整工程および被覆工程は、上記の本発明の被覆粒子の好適製造方法が備えるものと同様であってよい。
【0090】
<添加工程>
本発明の担持触媒の好適製造方法における添加工程について説明する。
添加工程では、被覆工程によって得られた分散液(X)に、前記担体を添加する。
前記担体の添加量は特に限定されないが、分散液(X)に含まれる前記金属コア粒子が、100質量部の担体に対して、0.01〜100質量部となる添加量であることが好ましく、0.1〜50質量部となる添加量であることがより好ましく、0.5〜20質量部となる添加量であることがより好ましく、1〜10質量部となる添加量であることがさらに好ましい。
【0091】
<担持工程>
次に、本発明の担持触媒の好適製造方法における担持工程について説明する。
この担持工程は、本発明の被覆粒子の好適製造方法における細孔形成工程と類似している。
本発明の担持触媒の好適製造方法における担持工程では、前記分散液(Y)における溶媒を固形分から分離する。
【0092】
分散液(Y)に含まれる溶媒を分離する方法は特に限定されず、例えば従来公知の固液分離法を適用して行うことができる。例えば分散液(Y)を乾燥機内に置くことで乾燥して、分散液(Y)から溶媒を分離することができる。
担持工程では、分散液(Y)を減圧乾燥することで、分散液(Y)から溶媒を分離することが好ましい。
分散液(Y)から溶媒を分離すると、固形分として、多孔質シラザン被覆粒子が担体に担持したもの(本発明の担持触媒)を得ることができる。
【0093】
このようにして、分散液(Y)を乾燥等して溶媒を分離すると、その過程で、金属コア粒子の表面のポリシラザンを主成分とする被膜が収縮する。そして、その被膜には細孔が形成される。
本発明者は、分散液(Y)を乾燥する際に、乾燥温度が高いと細孔の径が小さくなる傾向があり、逆に乾燥温度が低いと細孔の径が大きくなる傾向があるので、乾燥温度を最適化することで、得られる多孔質シラザン被覆粒子における細孔の平均細孔径を調整することを見出している。ここで乾燥温度は30〜500℃であることが好ましく、50〜400℃であることがより好ましい。
【実施例】
【0094】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0095】
<測定方法および評価方法>
実施例および比較例で行った各種測定方法および評価方法を説明する。
【0096】
[1]金属コア粒子の平均粒子径(メジアン径)の測定方法
画像解析法によって平均粒子径を測定した。すなわち、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−5500)を用いて、試料(金属コア粒子、多孔質シラザン被覆粒子または担持触媒)を倍率30万倍で写真撮影し、得られた写真から任意に100個の金属コア粒子を選び、各々の投影面積円相当径を測定して粒度分布を求め、それより平均粒子径(メジアン径)を算出した。
【0097】
[2]多孔質シラザン層の厚さの測定方法
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S−5500)を用いて、試料(多孔質シラザン被覆粒子)を倍率30万倍で写真撮影し、得られた写真から任意に100個の多孔質シラザン被覆粒子を選び、各々の多孔質シラザン被覆粒子において多孔質シラザン層の厚さを数箇所測定し平均して、その1つの多孔質シラザン被覆粒子における多孔質シラザン層の厚さとし、それら100個のデータを単純平均することで、その試料(多孔質シラザン被覆粒子の群)における多孔質シラザン層の厚さとした。
【0098】
[3]多孔質シラザン層の細孔径の平均値の測定方法
細孔分布測定装置(日本ベル社製、BELSORP mini)を用いて、窒素吸着法[1]によって、多孔質シラザン層の細孔の径の平均値(平均細孔径)を測定した。
窒素吸着法[1]は次の方法である。
まず、測定対象物を乾燥させたもの(0.2g)を試料として測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に吸着させて窒素吸着・脱着等温線を得た。そして、得られた窒素吸着・脱着等温線を用いてBJH(Barret-Joyner-Halenda)法により、試料の細孔径分布曲線を得て、その曲線に現れるメソ孔(粒子表面の細孔)側およびマクロ孔(粒子間細孔)側のピークのうち、メソ孔側のピークの細孔径を平均細孔径として求めた。
【0099】
[4]多孔質シラザン層の細孔の容積の測定方法
細孔分布測定装置(日本ベル社製、BELSORP mini)を用いて、窒素吸着法[2]によって、多孔質シラザン層の細孔の容積を測定した。
窒素吸着法[2]は次の方法である。
まず、測定対象物を乾燥させたもの(0.2g)を試料として測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に吸着させて窒素吸着・脱着等温線を得た。そして、得られた窒素吸着・脱着等温線における相対圧P/P0の値が0.4〜1.0の範囲に現れる、IUPACで規定されるIVヒステリシス曲線におけるメソ孔側部分の積算値を求め、これを細孔の容積として得た。
【0100】
[5]多孔質シラザン被覆粒子の比表面積の測定方法
表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製、マルチソーブ12型)を用いて、窒素吸着法[3](BET法)によって、多孔質シラザン被覆粒子の比表面積を測定した。
窒素吸着法[3]は次の方法である。
まず、測定対象物(多孔質シラザン被覆粒子)を乾燥させたもの(0.2g)を試料として測定セルに入れ、窒素ガス気流中、250℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させた。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、試料の比表面積を測定した。
【0101】
[6]多孔質シラザン被覆粒子のぬれ性(接触角)の測定方法
多孔質シラザン被覆粒子の1gを200℃で乾燥させた後、直径1cm、高さ5cmのセルに入れ、50kgfの荷重でプレスして成型物を得て、得られた成型物の表面に水を一滴たらして接触角を測定した。
【0102】
[7]触媒性能評価方法(触媒の活性および寿命の測定)
内径が30mmのガラス管内に、内径21mmの別のガラス管を挿通させた二重式ガラス反応管を用意し、内側のガラス管内に、その流路の一部を塞ぐように担持触媒を充填した。ここで充填した担持触媒の質量は、それに含まれる金属コア粒子の質量が0.002gとなる質量とした。
このような二重式ガラス反応管の内側のガラス管と外側のガラス管との間に40℃の温水を循環させて、内側のガラス管内の温度を一定に保った。その後、内側のガラス反応管内へ一方端部から混合ガスを422ml/minで導入した。そして、充填した担持触媒と接触した後の、他方端部から排出される排出ガスにおけるエチレン(C24)およびエタン(C26)の濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。測定は1時間に1回行い、最長で48時間行った。なお、内側のガラス反応管内へ導入した混合ガスは、N2:H2:C22=400:10:12(体積比)のものである。
そして、測定した排出ガス中のエチレン(C24)およびエタン(C26)の濃度から生成率を求めた。生成率は下記式で求め、この式から求められる当初の生成率(混合ガスの導入を始めて数分が経過して排出ガスの組成が安定した際に測定した生成率)を触媒活性とし、この触媒活性に対して生成率が3%低下した時間を寿命とした。
生成率=排出ガス中のエチレンおよびエタンの時間当たりのモル量(mol/min)の合計/混合ガス中のアセチレンの時間当たりのモル量(mol/min)×100
【0103】
<金属コア粒子の調整方法>
次に、金属コア粒子が分散したコロイド溶液の調整方法を説明する。
【0104】
[合成例1]
Pdコロイド溶液の調整方法
クエン酸水溶液(濃度30質量%)219gに、還元剤として硫酸第一鉄122gを溶解させた溶液を調製した。そして、この溶液341gを、硝酸パラジウム水溶液(濃度20質量%)39gに室温で添加し、充分に混合することによりPd粒子が分散した分散液を得た。そして得られた分散液を、限外濾過器(ADVANTEC社製、ウルトラフィルターQ0500)を用いて洗浄(脱塩等)し、濃縮し、Pd濃度が3質量%のPd分散液を得た。
得られたPd分散液を1000倍程度希釈し、その一部のPd粒子をコロジオン膜にのせ、乾燥させ、その平均粒子径、比表面積および接触角を前述の方法で測定した。その結果、平均粒子径は2nm、比表面積は273m2/g、接触角は56度であった。なお、走査型電子顕微鏡による観察により、Pd粒子は球形であることを確認した。
次に、得られたPd分散液100gに1体積%の塩酸を1g添加し、1時間攪拌後、陰イオン交換樹脂(三菱化学社製、SANUPC)を10g入れ、脱塩を行った。そして、脱塩後、遠心分離機(G=8000)を用いて粗大粒子のカットを行い、さらに限外濾過膜を用いて分散媒を水からメタノールへ置換して、Pdのコロイド溶液を得た。
その後、ICP誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS1200A(セイコー電子株式会社製)を用いてPd濃度を測定した。そして、Pd濃度が2.5質量%となるように調整したPdコロイド溶液を得た。
得られたコロイド溶液の物性等を第1表に示す。
【0105】
<実施例1>
メチルエチルケトン1000gに1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(和光純薬工業社製)4gを添加し、混合して、シラザン溶液を得た。
次に、このシラザン溶液へ、合成例1で得たPdコロイド溶液40gを少しずつ、10時間かけて添加してシラザン被覆粒子が分散した分散液(X)を得た。ここでPdコロイド溶液の少なくとも一部をシラザン溶液へ添加した溶液を反応液ともいう。シラザン溶液を添加している間、反応液は50℃に保持した。
そして、得られた分散液(X)の一部を1000倍程度希釈し、コロジオン膜にのせ、105℃で24時間、減圧乾燥させて分離し、前述の方法で、多孔質シラザン被覆粒子における多孔質シラザン層の厚さ、細孔の径の平均値(平均細孔径)および細孔容積、比表面積、接触角ならびに金属コア粒子の平均粒子径を測定した。
測定結果を第1表に示す。
【0106】
次に、分散液(X)へ、活性炭(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名:CL−K、粒度:0.5mm〜1.7mm、ヨウ素吸着量1,550mg/g)を添加し、10分間、攪拌した。そして得られた分散液(Y)を105℃で24時間、減圧乾燥を行い、担持触媒を得た。担持触媒は、多孔質シラザン被覆粒子が活性炭に担持しているものである。なお、分散液(X)への活性炭の添加量は、担持触媒における金属コア粒子の担持量(含有量)が1.0質量%となるように調整した。
また、前述の触媒性能評価方法に基づいて、得られた担持触媒の性能を評価した。また、担持触媒を500℃で3時間、焼成したものについても、同様に性能を評価した。さらに、担持触媒を500℃で3時間、焼成したものについて、金属コア粒子の平均粒子径を測定した。
測定結果を第1表に示す。
【0107】
<実施例2>
実施例1では、メチルエチルケトン1000gに1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン4gを添加し、混合して、シラザン溶液を得たが、実施例2では、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンを14g添加し、混合して、シラザン溶液を得た。
そして、その他については実施例1と同様に操作し、同様の測定を行った。
測定結果を第1表に示す。
【0108】
<実施例3>
実施例1では、メチルエチルケトン1000gに1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン4gを添加し、混合して、シラザン溶液を得たが、実施例3では、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンを33g添加し、混合して、シラザン溶液を得た。
そして、その他については実施例1と同様に操作し、同様の測定を行った。
測定結果を第1表に示す。
【0109】
<実施例4>
実施例1では、分散液(X)へ活性炭を99g添加し、攪拌して得た分散液(Y)を105℃で減圧乾燥を行って担持触媒を得たが、実施例4では分散液(Y)を400℃で減圧乾燥を行って担持触媒を得た。
そして、その他については実施例1と同様に操作し、同様の測定を行った。
測定結果を第1表に示す。
【0110】
<実施例5>
実施例1では、分散液(X)へ活性炭を99g添加し、攪拌して得た分散液(Y)を105℃で減圧乾燥を行って担持触媒を得たが、実施例5では分散液(Y)を50℃で減圧乾燥を行って担持触媒を得た。
そして、その他については実施例1と同様に操作し、同様の測定を行った。
測定結果を第1表に示す。
【0111】
<比較例1>
実施例1で用いたものと同一の活性炭99gと、合成例1で得たPdコロイド溶液40gとを、純水1000gへ添加し、10分間、攪拌した。ここで活性炭の添加量は、担持触媒における金属コア粒子の担持量(含有量)が1.0質量%となる量である。
そして得られた分散液(Y)を105℃で24時間、減圧乾燥を行い、担持触媒を得た。担持触媒は、Pd粒子が活性炭に担持しているものである。
そして、このようにして得られた担持触媒について、実施例1と同様の測定を行った。
測定結果を第1表に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
第1表の触媒性能評価結果より、すべての実施例における担持触媒は、500℃焼成後であっても活性が高く、寿命も長いことがわかる。また、500℃焼成の前後における金属コア粒子の平均粒子径を対比すると、変化がないことがわかる。
これに対して、比較例1における担持触媒は、500℃焼成前の活性は高いものの、500℃焼成後の活性は低くなった。また、寿命については、500℃焼成前であっても短く、500℃焼成後の場合は極端に短くなった。また、比較例1の場合、500℃焼成後の金属コア粒子の平均粒子径は、500℃焼成前に比べると75倍にまで大きくなった。これは比較例1が実施例1〜5の担持触媒が備える多孔質シラザン層を有さないため、金属コア粒子同士が凝集したためと考えられる。