【0009】
本発明において、(A)成分のイソステアリン酸被覆微粒子酸化チタンは酸化アルミニウム又は酸化ケイ素処理を施した微粒子酸化チタンをイソステアリン酸で被覆したものである。さらに、親油性を高めるためにジメチコンによる被覆処理を施しても良い。微粒子酸化チタンとは平均粒子径が0.01〜0.1μmのものをいう。
微粒子酸化チタンは一般的に耐候性を向上させ、分散媒との親和性を向上させるために、製造時に酸化アルミニウム又は酸化ケイ素で表面処理される。酸化アルミニウムで処理した方が親油性に優れるため好ましい。
酸化アルミニウム又は酸化ケイ素処理を施した微粒子酸化チタンは、イソステアリン酸と水又はアルコール等の溶媒と混合され、サンドグラインダーミル等の混合機によって粉砕混合されることによって、イソステアリン酸による被覆がなされる。
イソステアリン酸被覆微粒子酸化チタンは市販品を用いることができ、本発明に適するものとして、三好化成株式会社製SAIS−T−053(20%)やテイカ株式会社製MT−10EX等が挙げられる。
本発明の化粧料にはイソステアリン酸被覆微粒子酸化チタンを1〜20質量%含有し、より好ましくは2〜10質量%を含有する。1質量%以下の場合紫外線遮蔽力が日焼け防止効果を発揮できない。また20質量%を超えると白浮きが強くなってしまう。
【実施例】
【0018】
以下に実施例、試験例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
試験1 変性シリコーンによる微粒子酸化チタン配合化粧料の透明化と安定性に及ぼす効果試験
表1の組成により、変性シリコーンや各種界面活性剤用いて調製した本発明の日焼け止め化粧料と比較例の保存安定性と皮膚に塗布した場合の透明性を評価した。
【0019】
[各化粧料の調製法]
無機粉体、イソステアリン酸被覆した微粒子化酸化チタン、変性シリコーン、界面活性剤、油剤を常温で撹拌混合して油相とした。この油相にあらかじめ、水、グリセリン、ブチレングリコール(BG)、塩化ナトリウム(Na)を溶解混合して調製した水相を投入しながらホモミキサーで撹拌混合し、W/O型の日焼け止め化粧料を得た。
実施例1〜3、比較例1〜3に使用した無機紫外線遮蔽剤は、イソステアリン酸で被覆された微粒子酸化チタンとして三好化成製SAIS−T−053(20%)を用いた。SAIS−T−053(20%)の組成成分は微粒子酸化チタン69.7%、水酸化アルミニウム10.3%、イソステアリン酸15%、ジメチコン5%からなり、酸化チタン粒子がイソステアリン酸で被覆されている。
【0020】
[保存安定性試験]
調製した日焼け止め化粧料を瓶に入れ密封し、25℃、40℃、50℃に保管し、分離、沈降(ケーキング)の有無を2か月後に観察し、以下の基準で評価した。
○:分離、沈降(ケーキング)のいずれもない。
△:若干沈降が認められる。
×:分離、沈降(ケーキング)のいずれかがある
【0021】
[透明性試験]
日焼け止め化粧料50mgを上腕内側部にとり、4cm×4cmに塗り伸ばして、以下の基準により目視で透明性を評価した。
○:殆ど透明である。
△:青白さが認められる。
×:白っぽく、透明性が低い。
【0022】
【表1】
【0023】
[試験結果]
保存安定性と透明性の評価結果は表1、下欄に示す通りである。
(C)の変性シリコーン化合物を配合した実施例1〜3は、保存安定性・透明性に優れ、白浮きも生じなかった。
一方油剤を変えずに、変性シリコーン化合物に代えてトリイソステアリン酸ポリグリセリル−2を配合した比較例1、PEG/PPG−19/19ジメチコンを配合した比較例2、PEG−9ジメチコンのみを配合した比較例3は、いずれも保存安定性・透明性に劣るものであった。
シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンであるPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを配合した実施例1の化粧料は、特に保存安定性に優れ、50℃で2か月保存しても分離や沈降が生じなかった。
【0024】
試験2 (シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーン(PEG−9ボリジメチルシロキシエチルジメチコン)とイソステアリン酸被覆した微粒子化酸化チタンの組み合わせ効果試験
変性シリコーンとしてシリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーン(PEG−9ボリジメチルシロキシエチルジメチコン)を用いて微粒子化酸化チタンの被覆剤との組み合わせ効果を試験した。
実施例1の処方において、イソステアリン酸被覆した微粒子化酸化チタンを、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆したもの(比較例4)、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで次に被覆したもの(比較例5)、ステアリン酸と(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆したもの(比較例6)を表2の処方により調製した。
【0025】
[調製法]
試験例1と同様の方法で日焼け止め化粧料を得た。なお比較例4は、シリカと(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された微粒子酸化チタン(岩瀬コスファ製コスメサーブWP−40TSF)を用いた。比較例5は、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された微粒子酸化チタン(チタン工業製TD3312)を用いた。また比較例6は、ステアリン酸とジメチコンで被覆された微粒子酸化チタン(三好化成製SA−TTO−S−4/D5)を用いた。
岩瀬コスファ製コスメサーブWP−40TSFの被覆微粒子酸化チタンの組成は微粒子酸化チタン76.75%、シリカ4.75%、水酸化アルミニウム13%、(ジメチコン/メチコン)コポリマー5.5%、チタン工業製TD3312の被覆微粒子酸化チタンの組成は微粒子酸化チタン81.5%、水酸化アルミニウム13%、(ジメチコン/メチコン)コポリマー5.5%、三好化成製SA−TTO−S−4/D5の被覆微粒子酸化チタンの組成は微粒子酸化チタン73%、水酸化アルミニウム9%、ステアリン酸0.08%、ジメチコン0.1%である。
また、岩瀬コスファ製コスメサーブWP−40TSF、チタン工業製TD3312、三好化成製SA−TTO−S−4/D5は、いずれもプレミックス原料であり、プレミックス原料中の各成分の濃度は、表2中の各成分の欄に記載した。
【0026】
[透明性試験]
試験例1と同様に日焼け止め化粧料50mgを上腕内側部にとり、4cm×4cmに塗り伸ばして、同様の基準により透明性を評価した。
【0027】
[色差測定]
また透明性を評価するとともに、実施例1、比較例4、比較例5、比較例6の化粧料を塗布したときに生じる皮膚の青みの程度を評価した。すなわち、コニカミノルタセンシング製分光測色計を用いて、日焼け止め化粧料を塗布する前と塗布した後の皮膚のL*a*b*値を測定した。実施例1及び比較例4〜6の日焼け止め化粧料を各50mg、上腕内側部にとり、4cm×4cmに塗り伸ばした。
各塗布部位について、日焼け止め化粧料塗布前の皮膚のL*a*b*値を測定して、L*(A)、a*(A)、b*(A)とし、日焼け止め化粧料塗布後の皮膚のL*a*b*値を測定して、L*(B)、a*(B)、b*(B)とした。以下の式により塗布後と塗布前の色差ΔE*ab及びb*値の差Δb*を求めた。
ΔE*ab=[(L*(B)−L*(A))2+(a*(B)−a*(A))2+(b*(B)−b*(A))2]1/2
Δb*=b*(B)−b*(A)
ΔE*abが小さいほど、塗布した日焼け止め化粧料の透明性が高いことを意味している。また、Δb*が小さいほど、塗布した日焼け止め化粧料の青みが少ないことを表す。
【0028】
〔試験結果〕
比較例4〜6の各化粧料の透明性試験の結果は表2に示す通りである。
透明性試験の結果、イソステアリンで被覆された微粒子酸化チタンを用いた実施例1は、試験1の結果で記載したとおり透明であるのに対して、シリカと(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された微粒子酸化チタンを用いた比較例4、(ジメチコン/メチコン)コポリマー、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された比較例5、ステアリン酸とジメチコンで被覆された微粒子酸化チタンを用いた比較例6を塗布するといずれも実施例1に比して強い青みが観察された。
【0029】
【表2】
【0030】
また実施例1、比較例4〜比較例5の各化粧品の色差測定結果は表3及び
図1に示す通りである。
【0031】
【表3】
【0032】
色差測定の結果、イソステアリン酸で被覆された微粒子酸化チタンを用いた実施例1の化粧料の透明性は極めて高いと評価できた。また目視で評価した結果に対応して、Δb*値も低い、すなわち青みも低いという測定結果であった。
一方、シリカ、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された微粒子酸化チタンを用いた比較例4、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された微粒子酸化チタンを用いた比較例5、ステアリン酸とジメチコンで被覆された微粒子酸化チタンを用いた比較例6は、いずれも実施例1と比べて透明性、Δb*値も高かった。すなわち青味の点で顕著に劣っていた。
【0033】
試験3 炭化水素油配合による透明性に対する効果試験
油剤として炭化水素油を配合した実施例4〜7及び、炭化水素油を配合していない比較例7〜10を表4の処方により調製した。
【0034】
[製法]
試験3と同様に無機粉体、変性シリコーン、界面活性剤、油剤を常温で撹拌混合して油相とする。油相に水相を投入しながら撹拌混合し、日焼け止め化粧料を得た。実施例4〜7、比較例7〜10には、イソステアリン酸で被覆された微粒子酸化チタンとして三好化成製SAIS−T−053(20%)を用いた。
【0035】
[透明性試験]
調製した各日焼け止め化粧料50mgを上腕内側部にとり、4cm×4cmに塗り伸ばして、試験1と同じ基準により透明性を評価した。
○:殆ど透明である。
△:青白さが認められる。
×:白浮きし、透明性がない。
【0036】
〔試験結果〕
透明性試験の結果を表4下欄に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
油剤として炭化水素油であるスクワラン、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、イソドデカンを用いた実施例4〜7はいずれも透明性に優れていた。一方、炭化水素油に代えてエチルヘキサン酸セチルを配合した比較例7、イソノナン酸イソトリデシルを配合した比較例8、オレイン酸オレイルを配合した比較例9並びに、炭化水素油を配合していない比較例10は何れも透明性に劣り青白さが認められるか、白浮きするものであった。
炭化水素油は微粒子化酸化チタンを配合した化粧料の透明性の向上と青みの抑制に大きく寄与することが判明した。