特許第5806106号(P5806106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5806106-日焼け止め化粧料 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806106
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/29 20060101AFI20151021BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20151021BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20151021BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20151021BHJP
   A61K 8/893 20060101ALI20151021BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   A61K8/29
   A61K8/31
   A61Q17/04
   A61K8/894
   A61K8/893
   A61K8/06
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-284950(P2011-284950)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133306(P2013-133306A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100150681
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 荘助
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100105061
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 喜博
(72)【発明者】
【氏名】渡部 敬二郎
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−155332(JP,A)
【文献】 特開2011−236182(JP,A)
【文献】 特開2001−151633(JP,A)
【文献】 特開2002−146189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソステアリン酸被覆微粒子酸化チタン、(B)炭化水素油、(C)シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンであるPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、シリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンであるラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びシリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーンであるポリグリセリル−3−ポリジメチルシロキシエチルジメチコンから選択される1種又は2種以上の変性シリコーンを含有することを特徴とする油中水型日焼け止め化粧料。
【請求項2】
炭化水素油がスクワラン、流動パラフィン、水素添加ポリイソブテン、イソドデカンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
炭化水素油の配合量が1質量%〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
イソステアリン酸被覆微粒子酸化チタンの含有量が1〜20質量%である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の油中水型日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料は、有機紫外線吸収剤を配合した化粧料と無機紫外線遮蔽剤を配合した化粧料に大きく分けられる。有機紫外線吸収剤は油相にも水相にも溶解するものであり、皮膚に塗布した際の透明性が高い。しかし、この有機紫外線吸収剤は皮膚に吸収されるため、皮膚刺激が懸念されている。このため皮膚刺激の少ない無機紫外線遮蔽剤を使用した化粧料の方が、所謂敏感肌の女性には好まれる傾向にある。
一方、無機紫外線遮蔽剤は主に平均粒子径0.1μm以下の微粒子金属酸化物であり、皮膚に吸収されず、皮膚表面で紫外線を遮蔽するため安全性が高い。しかし金属酸化物は、光の屈折率が高いために透明性が低く、これを配合した化粧料を皮膚に塗布すると白浮きしてしまうことが問題であった。
また、無機紫外線遮蔽剤として代表的な酸化チタンは、微粒子化することで透明性が向上することが知られている。しかし、微粒子化した酸化チタンを配合した化粧料を皮膚に塗布すると青白さを生じ易くなる。したがって、微粒子化した酸化チタンを配合したサンスクリーン剤を塗布すると肌が青白く、不自然な色合いになってしまう。このような欠点を補うため、その粒子を大きくすると、逆に金属酸化物の欠点である白浮きが目立つようになるという、相反する問題が指摘されている。このため、酸化チタンを配合する日焼け止め化粧料にあっては青白さがなく、かつ透明性が高い製品が望まれている。
【0003】
無機紫外線遮蔽剤を使用した化粧料の透明性を高める技術として、微粒子酸化チタンとシリカ・酸化セリウム複合体粒子とポリグリセリン脂肪酸エステルを配合した日焼け止め化粧料(特許文献1:特開2000−256157号公報)、ポリエーテル変性シリコーン、酸化チタン、酸化亜鉛、揮発性油剤、エラストマーオルガノポリシロキサン、セチルジメチコンを含有する油中水型日焼け止め化粧料(特許文献2:特開2008−208044号公報)、板状ヒドロキシアパタイトと親水性高分子からなる加圧崩壊性球状粉末および無機紫外線遮蔽剤を含有する日焼け止め化粧料(特許文献3:特開2009−155332号公報)、フッ素変性シリコーン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、アルキルアルコキシシランで表面処理された金属酸化物粉体を含有する日焼け止め化粧料(特許文献4:特開2010−111627号公報)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−256157号公報
【特許文献2】特開2008−208044号公報
【特許文献3】特開2009−155332号公報
【特許文献4】特開2010−111627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微粒子酸化チタンを配合した日焼け止め化粧料は、皮膚に塗布すると白浮きがしてしまう欠点が指摘されていた。また白浮きがしないようにすると、青みの強い不自然な青白さを肌に与えていた。本発明は、皮膚に塗布したとき、透明性が高く、青白さが抑制されて、白浮きがない日焼け止め化粧料の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)(A)イソステアリン酸被覆微粒子酸化チタン、(B)炭化水素油、(C)シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンであるPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、シリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンであるラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びシリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーンであるポリグリセリル−3−ポリジメチルシロキシエチルジメチコンから選択される1種又は2種以上の変性シリコーンを含有することを特徴とする油中水型日焼け止め化粧料。
(2)炭化水素油がスクワラン、流動パラフィン、水素添加ポリイソブテン、イソドデカンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする(1)に記載の日焼け止め化粧料。
(3)炭化水素油の配合量が1質量%〜10質量%であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の日焼け止め化粧料。
(4)イソステアリン酸被覆微粒子酸化チタンの含有量が1〜20質量%である(1)〜(3)のいずれかに記載の油中水型日焼け止め化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、微粒子酸化チタンを配合した日焼け止め化粧料であって、皮膚に塗布したとき、透明性が高いにもかかわらず青白さが抑制され、白浮きがない、安定な日焼け止め化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】皮膚に塗布した化粧料の透明度と青みの程度を、色差計を用いて測定した結果のグラフである。Δb*値が小さいほど塗布した試料の青みが少ないことを意味している。またΔE*ab値が小さいほど塗布した試料の透明性が高いことを意味している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、(A)成分のイソステアリン酸被覆微粒子酸化チタンは酸化アルミニウム又は酸化ケイ素処理を施した微粒子酸化チタンをイソステアリン酸で被覆したものである。さらに、親油性を高めるためにジメチコンによる被覆処理を施しても良い。微粒子酸化チタンとは平均粒子径が0.01〜0.1μmのものをいう。
微粒子酸化チタンは一般的に耐候性を向上させ、分散媒との親和性を向上させるために、製造時に酸化アルミニウム又は酸化ケイ素で表面処理される。酸化アルミニウムで処理した方が親油性に優れるため好ましい。
酸化アルミニウム又は酸化ケイ素処理を施した微粒子酸化チタンは、イソステアリン酸と水又はアルコール等の溶媒と混合され、サンドグラインダーミル等の混合機によって粉砕混合されることによって、イソステアリン酸による被覆がなされる。
イソステアリン酸被覆微粒子酸化チタンは市販品を用いることができ、本発明に適するものとして、三好化成株式会社製SAIS−T−053(20%)やテイカ株式会社製MT−10EX等が挙げられる。
本発明の化粧料にはイソステアリン酸被覆微粒子酸化チタンを1〜20質量%含有し、より好ましくは2〜10質量%を含有する。1質量%以下の場合紫外線遮蔽力が日焼け防止効果を発揮できない。また20質量%を超えると白浮きが強くなってしまう。
【0010】
(B)成分の炭化水素油としては、スクワラン、流動パラフィン、水素添加ポリイソブテン、水素添加ポリブテン、イソドデカン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。スクワラン、流動パラフィン、水素添加ポリイソブテン、イソドデカンが好ましく、スクワランが特に好ましい。
炭化水素油の配合量は1〜10質量%が好ましい。1質量%未満では、透明性を向上させる効果が得られにくく、10質量%を超えるとべたつきが強まるため好ましくない。
【0011】
(C)成分の一つであるシリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンは、ポリジメチルシロキサンを骨格として、これに−C−O−(CO)Hで表されるポリエーテル基が上記のポリジメチルシロキサン骨格のSi原子に側鎖として複数結合している。
すなわち、−C−(Si(CH)2O)−Si(CHで表されるシリコーン基が側鎖としてポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合した化合物である。このようなシリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンは市販品を用いることができる。例えば信越化学工業製PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF−6028P)が挙げられる。
【0012】
また、(C)成分の一つであるシリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンは、ポリジメチルシロキサンを骨格として、これに炭素数2以上のアルキル基が側鎖としてポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合したものである。側鎖として、−C−O−(CO)Hで表されるポリエーテル基が上記と同様にポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合している。このようなシリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンとして市販品を用いることができる。例えば信越化学工業製ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF−6038)が挙げられる。
【0013】
さらに(C)成分の一つであるシリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーンは、ポリジメチルシロキサンを骨格として、これに−C−O−(CHCH(OH)CHO)Hで表されるポリグリセリン基が上記のポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合したものである。このようなシリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーンとして市販品を用いることができる。例えば信越化学工業製ポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF−6104)が挙げられる。これらの変性シリコーン化合物は界面活性作用を有しており、化粧料をW/O型の乳化状態に保つ機能を有している。
なお(C)成分の変性シリコーン化合物の化粧料への配合は、それぞれを単独で配合しても良いし、2種又は3種を混合しても良い。変性シリコーンの総配合量は、化粧料あたり1〜10質量%が好ましい。(C)成分の変性シリコーンは両親媒性を有し、界面活性作用を有している。本発明の化粧料においては界面活性剤としての機能も果たす。
【0014】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内で、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム等の紫外線遮蔽効果を有する無機粉体を配合することができる。また、PMMA等のポリマービーズや球状シリカ等の粉体を配合することができる。
【0015】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料には炭化水素油以外に油剤として、シリコーン油、トリグリセライド油、ワックスエステル油、高級アルコール、高級脂肪酸等を配合することができる。
特に、シリコーン油を配合すると使用性に優れるため好ましい。シクロペンタシロキサン、シクロテトラシロキサン、シクロヘキサシロキサン等の揮発性の環状シリコーン油や、直鎖の低分子シリコーン油を用いると使用性が向上し好ましい。特に、シクロペンタシロキサンが使用性の点で好ましい。
【0016】
本発明の油中水型日焼け止め化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられる成分、例えば、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、有機紫外線吸収剤、香料、保香剤、防腐剤、pH調整剤、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤その他の美容成分、薬効成分などを配合することができる。
【0017】
本発明の日焼け止め化粧料の形態として、サンスクリーンクリーム、サンスクリーンローション、サンケアスプレー、サンスクリーンエマルジョン、サンスクリーンムース等が挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下に実施例、試験例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
試験1 変性シリコーンによる微粒子酸化チタン配合化粧料の透明化と安定性に及ぼす効果試験
表1の組成により、変性シリコーンや各種界面活性剤用いて調製した本発明の日焼け止め化粧料と比較例の保存安定性と皮膚に塗布した場合の透明性を評価した。
【0019】
[各化粧料の調製法]
無機粉体、イソステアリン酸被覆した微粒子化酸化チタン、変性シリコーン、界面活性剤、油剤を常温で撹拌混合して油相とした。この油相にあらかじめ、水、グリセリン、ブチレングリコール(BG)、塩化ナトリウム(Na)を溶解混合して調製した水相を投入しながらホモミキサーで撹拌混合し、W/O型の日焼け止め化粧料を得た。
実施例1〜3、比較例1〜3に使用した無機紫外線遮蔽剤は、イソステアリン酸で被覆された微粒子酸化チタンとして三好化成製SAIS−T−053(20%)を用いた。SAIS−T−053(20%)の組成成分は微粒子酸化チタン69.7%、水酸化アルミニウム10.3%、イソステアリン酸15%、ジメチコン5%からなり、酸化チタン粒子がイソステアリン酸で被覆されている。
【0020】
[保存安定性試験]
調製した日焼け止め化粧料を瓶に入れ密封し、25℃、40℃、50℃に保管し、分離、沈降(ケーキング)の有無を2か月後に観察し、以下の基準で評価した。
○:分離、沈降(ケーキング)のいずれもない。
△:若干沈降が認められる。
×:分離、沈降(ケーキング)のいずれかがある
【0021】
[透明性試験]
日焼け止め化粧料50mgを上腕内側部にとり、4cm×4cmに塗り伸ばして、以下の基準により目視で透明性を評価した。
○:殆ど透明である。
△:青白さが認められる。
×:白っぽく、透明性が低い。
【0022】
【表1】
【0023】
[試験結果]
保存安定性と透明性の評価結果は表1、下欄に示す通りである。
(C)の変性シリコーン化合物を配合した実施例1〜3は、保存安定性・透明性に優れ、白浮きも生じなかった。
一方油剤を変えずに、変性シリコーン化合物に代えてトリイソステアリン酸ポリグリセリル−2を配合した比較例1、PEG/PPG−19/19ジメチコンを配合した比較例2、PEG−9ジメチコンのみを配合した比較例3は、いずれも保存安定性・透明性に劣るものであった。
シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンであるPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを配合した実施例1の化粧料は、特に保存安定性に優れ、50℃で2か月保存しても分離や沈降が生じなかった。
【0024】
試験2 (シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーン(PEG−9ボリジメチルシロキシエチルジメチコン)とイソステアリン酸被覆した微粒子化酸化チタンの組み合わせ効果試験
変性シリコーンとしてシリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーン(PEG−9ボリジメチルシロキシエチルジメチコン)を用いて微粒子化酸化チタンの被覆剤との組み合わせ効果を試験した。
実施例1の処方において、イソステアリン酸被覆した微粒子化酸化チタンを、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆したもの(比較例4)、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで次に被覆したもの(比較例5)、ステアリン酸と(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆したもの(比較例6)を表2の処方により調製した。
【0025】
[調製法]
試験例1と同様の方法で日焼け止め化粧料を得た。なお比較例4は、シリカと(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された微粒子酸化チタン(岩瀬コスファ製コスメサーブWP−40TSF)を用いた。比較例5は、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された微粒子酸化チタン(チタン工業製TD3312)を用いた。また比較例6は、ステアリン酸とジメチコンで被覆された微粒子酸化チタン(三好化成製SA−TTO−S−4/D5)を用いた。
岩瀬コスファ製コスメサーブWP−40TSFの被覆微粒子酸化チタンの組成は微粒子酸化チタン76.75%、シリカ4.75%、水酸化アルミニウム13%、(ジメチコン/メチコン)コポリマー5.5%、チタン工業製TD3312の被覆微粒子酸化チタンの組成は微粒子酸化チタン81.5%、水酸化アルミニウム13%、(ジメチコン/メチコン)コポリマー5.5%、三好化成製SA−TTO−S−4/D5の被覆微粒子酸化チタンの組成は微粒子酸化チタン73%、水酸化アルミニウム9%、ステアリン酸0.08%、ジメチコン0.1%である。
また、岩瀬コスファ製コスメサーブWP−40TSF、チタン工業製TD3312、三好化成製SA−TTO−S−4/D5は、いずれもプレミックス原料であり、プレミックス原料中の各成分の濃度は、表2中の各成分の欄に記載した。
【0026】
[透明性試験]
試験例1と同様に日焼け止め化粧料50mgを上腕内側部にとり、4cm×4cmに塗り伸ばして、同様の基準により透明性を評価した。
【0027】
[色差測定]
また透明性を評価するとともに、実施例1、比較例4、比較例5、比較例6の化粧料を塗布したときに生じる皮膚の青みの程度を評価した。すなわち、コニカミノルタセンシング製分光測色計を用いて、日焼け止め化粧料を塗布する前と塗布した後の皮膚のL*a*b*値を測定した。実施例1及び比較例4〜6の日焼け止め化粧料を各50mg、上腕内側部にとり、4cm×4cmに塗り伸ばした。
各塗布部位について、日焼け止め化粧料塗布前の皮膚のL*a*b*値を測定して、L*(A)、a*(A)、b*(A)とし、日焼け止め化粧料塗布後の皮膚のL*a*b*値を測定して、L*(B)、a*(B)、b*(B)とした。以下の式により塗布後と塗布前の色差ΔE*ab及びb*値の差Δb*を求めた。
ΔE*ab=[(L*(B)−L*(A))2+(a*(B)−a*(A))2+(b*(B)−b*(A))2]1/2
Δb*=b*(B)−b*(A)
ΔE*abが小さいほど、塗布した日焼け止め化粧料の透明性が高いことを意味している。また、Δb*が小さいほど、塗布した日焼け止め化粧料の青みが少ないことを表す。
【0028】
〔試験結果〕
比較例4〜6の各化粧料の透明性試験の結果は表2に示す通りである。
透明性試験の結果、イソステアリンで被覆された微粒子酸化チタンを用いた実施例1は、試験1の結果で記載したとおり透明であるのに対して、シリカと(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された微粒子酸化チタンを用いた比較例4、(ジメチコン/メチコン)コポリマー、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された比較例5、ステアリン酸とジメチコンで被覆された微粒子酸化チタンを用いた比較例6を塗布するといずれも実施例1に比して強い青みが観察された。
【0029】
【表2】
【0030】
また実施例1、比較例4〜比較例5の各化粧品の色差測定結果は表3及び図1に示す通りである。
【0031】
【表3】
【0032】
色差測定の結果、イソステアリン酸で被覆された微粒子酸化チタンを用いた実施例1の化粧料の透明性は極めて高いと評価できた。また目視で評価した結果に対応して、Δb*値も低い、すなわち青みも低いという測定結果であった。
一方、シリカ、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された微粒子酸化チタンを用いた比較例4、(ジメチコン/メチコン)コポリマーで被覆された微粒子酸化チタンを用いた比較例5、ステアリン酸とジメチコンで被覆された微粒子酸化チタンを用いた比較例6は、いずれも実施例1と比べて透明性、Δb*値も高かった。すなわち青味の点で顕著に劣っていた。
【0033】
試験3 炭化水素油配合による透明性に対する効果試験
油剤として炭化水素油を配合した実施例4〜7及び、炭化水素油を配合していない比較例7〜10を表4の処方により調製した。
【0034】
[製法]
試験3と同様に無機粉体、変性シリコーン、界面活性剤、油剤を常温で撹拌混合して油相とする。油相に水相を投入しながら撹拌混合し、日焼け止め化粧料を得た。実施例4〜7、比較例7〜10には、イソステアリン酸で被覆された微粒子酸化チタンとして三好化成製SAIS−T−053(20%)を用いた。
【0035】
[透明性試験]
調製した各日焼け止め化粧料50mgを上腕内側部にとり、4cm×4cmに塗り伸ばして、試験1と同じ基準により透明性を評価した。
○:殆ど透明である。
△:青白さが認められる。
×:白浮きし、透明性がない。
【0036】
〔試験結果〕
透明性試験の結果を表4下欄に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
油剤として炭化水素油であるスクワラン、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、イソドデカンを用いた実施例4〜7はいずれも透明性に優れていた。一方、炭化水素油に代えてエチルヘキサン酸セチルを配合した比較例7、イソノナン酸イソトリデシルを配合した比較例8、オレイン酸オレイルを配合した比較例9並びに、炭化水素油を配合していない比較例10は何れも透明性に劣り青白さが認められるか、白浮きするものであった。
炭化水素油は微粒子化酸化チタンを配合した化粧料の透明性の向上と青みの抑制に大きく寄与することが判明した。
図1