特許第5806126号(P5806126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806126
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】トラニオン軸の回転位置検出機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/42 20100101AFI20151021BHJP
   B60K 20/02 20060101ALI20151021BHJP
   F16H 59/06 20060101ALI20151021BHJP
   G05G 25/00 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   F16H61/42
   B60K20/02 Z
   F16H59/06
   G05G25/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-4508(P2012-4508)
(22)【出願日】2012年1月12日
(65)【公開番号】特開2013-143111(P2013-143111A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】池上 康弘
(72)【発明者】
【氏名】原 定広
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−252073(JP,A)
【文献】 特開2005−36921(JP,A)
【文献】 特開2005−280532(JP,A)
【文献】 特開2006−96136(JP,A)
【文献】 特開2010−151251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/42
B60K 20/02
F16H 59/06
G05G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラニオン軸の回転操作によって出力軸の回転数及び回転方向を変更可能な油圧式無段変速機におけるトラニオン軸の回転位置検出機構であって、
前記トラニオン軸に一側端部を相対回転不能に支持され、前記トラニオン軸回りの回転によって前記トラニオン軸を回転可能に構成される操作レバーと、
前記トラニオン軸に途中部を相対回転自在に支持される従動レバーと、
前記従動レバーの一側端部によって入切を切り替えられる検出スイッチと、を具備し、
前記操作レバーは、
途中部に前記操作レバーを操作するリンクが接続され、当該リンクによって所定の回転位置から一方向に回転されると他側端部が前記従動レバーの一側端部に接触して前記従動レバーを回転させて前記検出スイッチの入り切りを切り替え、前記リンクによって所定の回転位置から他方向に回転されると他側端部が前記従動レバーの一側端部から離間して前記従動レバーを回転させないトラニオン軸の回転位置検出機構。
【請求項2】
前記操作レバーの他側端部、または前記従動レバーの一側端部は、前記操作レバー、または前記従動レバーから取り外し可能に構成される請求項1に記載のトラニオン軸の回転位置検出機構。
【請求項3】
前記従動レバーの一側端部は、
接触ピンを具備し、前記接触ピンが前記操作レバーの他側端部に接触する請求項1又は請求項2に記載のトラニオン軸の回転位置検出機構。
【請求項4】
前記検出スイッチは、
押し込まれることで入り切りが切り替わる突出部を有し、
前記従動レバーは、
付勢部材によって前記突出部を押し込む方向に付勢され、前記操作レバーの回転によって前記突出部から離間する方向に回転される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のトラニオン軸の回転位置検出機構。
【請求項5】
前記検出スイッチは、
取り付け板を介して従動レバー近傍に配置されるとともに、
前記取り付け板は、
前記突出部の全てが押し込まれるまでに前記従動レバーが接触する請求項4に記載のトラニオン軸の回転位置検出機構。
【請求項6】
前記検出スイッチは、
前記突出部の押し込む方向にのみ往復移動可能に構成される押し込み部材を介して前記付勢部材に付勢される請求項4に記載のトラニオン軸の回転位置検出機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式無段変速機(HST)のトラニオン軸の回転位置検出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラニオン軸の回転操作によって出力軸の回転数及び回転方向を変更可能な油圧式無段変速機(HST)を備えた走行車両等が公知となっている。このような油圧式無段変速機を備えた走行車両においては、トラニオン軸を操作する操作具である速度変更ペダルの操作量を検出することでトラニオン軸の回転位置を検出する。具体的には、回転量に比例して一定の割合で出力値を増減させるポテンショメータを速度変更ペダルの回転支持軸に設けるものがある。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されている技術は、速度変更ペダルの操作速度が遅いとポテンショメータの単位時間当たりの出力の増減が緩慢になる。一方、ポテンショメータの単位角度当たりの出力を増幅させるとノイズ等の外乱を受けやすくなる。特に、所定の回転位置を検出する場合、速度変更ペダルの操作速度やポテンショメータの設定によっては検出の遅れや誤検出などが生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−280284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で操作具の操作状態の影響を抑制してトラニオン軸の所定の回転位置を検出することができるトラニオン軸の回転位置検出機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、請求項1においては、トラニオン軸の回転操作によって出力軸の回転数及び回転方向を変更可能な油圧式無段変速機におけるトラニオン軸の回転位置検出機構であって、前記トラニオン軸に一側端部を相対回転不能に支持され、前記トラニオン軸回りの回転によって前記トラニオン軸を回転可能に構成される操作レバーと、前記トラニオン軸に途中部を相対回転自在に支持される従動レバーと、前記従動レバーの一側端部によって入切を切り替えられる検出スイッチと、を具備し、前記操作レバーは、途中部に前記操作レバーを操作するリンクが接続され、当該リンクによって所定の回転位置から一方向に回転されると他側端部が前記従動レバーの一側端部に接触して前記従動レバーを回転させて前記検出スイッチの入り切りを切り替え、前記リンクによって所定の回転位置から他方向に回転されると他側端部が前記従動レバーの一側端部から離間して前記従動レバーを回転させない。
【0007】
請求項2においては、前記操作レバーの他側端部、または前記従動レバーの一側端部は、前記操作レバー、または前記従動レバーから取り外し可能に構成される。
【0008】
請求項3においては、前記従動レバーの一側端部は、接触ピンを具備し、前記接触ピンが前記操作レバーの他側端部に接触する。
【0009】
請求項4においては、前記検出スイッチは、押し込まれることで入り切りが切り替わる突出部を有し、前記従動レバーは、付勢部材によって前記突出部を押し込む方向に付勢され、前記操作レバーの回転によって前記突出部から離間する方向に回転される。
【0010】
請求項5においては、前記検出スイッチは、取り付け板を介して従動レバー近傍に配置されるとともに、前記取り付け板は、前記突出部の全てが押し込まれるまでに前記従動レバーが接触するストッパ部が形成される。
【0011】
請求項6においては、前記検出スイッチは、前記突出部の押し込む方向にのみ往復移動可能に構成される押し込み部材を介して前記付勢部材に付勢される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
即ち、請求項1に係る発明によれば、操作レバーと従動レバーとがトラニオン軸で支持される。このため、操作レバーや従動レバーを支持する部材を別途設ける必要がない。また、操作レバーや従動レバーの形状によって検出スイッチの入り切りが切り替わる時期や検出感度を任意に決定することができる。このため、操作レバーの操作状態や検出スイッチの取り付け位置を任意に設定することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、操作レバーの操作量に対する従動レバーの作動量を機構の構成を変更することなく容易に変更することができる。このため、メンテナンス性及び汎用性が向上する。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、操作レバーと従動レバーとが離間していても接触ピンを介して操作レバーと従動レバーとを接触させることができる。このため、操作レバーと従動レバーの配置が容易になる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、操作レバーからの力によって検出スイッチが押し込まれることがない。このため、操作レバーの操作による検出スイッチの破損が抑制される。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、付勢部材の付勢力が全て検出スイッチに加わることがない。このため、付勢部材の付勢力による検出スイッチの破損が抑制される。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、検出スイッチの突出部にモーメントが加わることがない。このため、検出スイッチの破損が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るトラニオン軸の検出機構と油圧式無段変速機(HST)との構成を示す概略図。
図2】(a)本発明の一実施形態に係るトラニオン軸の検出機構の側面図、(b)同じくトラニオン軸の検出機構の(a)におけるA矢視図、(c)同じくトラニオン軸の検出機構の従動レバーが検出スイッチを押し込んでいる状態を示す(a)におけるB矢視図。
図3】(a)本発明の一実施形態に係る前進ペダルが踏み込まれた場合のトラニオン軸の検出機構を示す側面図、(b)同じく後進ペダルが踏み込まれ、検出スイッチの入りきりが切り替わった際のトラニオン軸の検出機構を示す側面図、(c)同じく後進ペダルが踏み込まれ、検出スイッチの突出部から従動レバーが離間した状態のトラニオン軸の検出機構を示す側面図。
図4】本発明の一実施形態に係るトラニオン軸の検出機構の操作レバーと従動レバーの回転位置の関係を表す図。
図5】本発明に係る別実施形態に係るトラニオン軸の検出機構の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、油圧式無段変速機に装着されたトラニオン軸の回転位置検出機構及びトラクター等の走行車両の操作具の全体的な構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0021】
油圧式無段変速機1は、エンジン等からの回転動力を作動油を介して無段階に変速して出力する。油圧式無段変速機1は、トラニオン軸2を有する図示しない可変容量型の油圧ポンプと定容量型の油圧モータを具備する油圧式無段変速機1(HST)である(以下、単に「HST1」と記す)。
【0022】
可変容量型の油圧ポンプは、トラニオン軸2の軸回りの回転操作によって図示しない斜板の角度を変更することができる。すなわち、HST1は、トラニオン軸2の回転位置によって油圧モータ(HST1)の出力軸3の回転を一方向への回転、他方向への回転、又は回転停止に切り替え可能に構成される。なお、本実施形態において、油圧式無段変速機をHST1としたがこれに限定されるものではない。
【0023】
図1に示すように、HST1のトラニオン軸2には、操作レバー11が固定支持される。つまり、操作レバー11は、一側端部がトラニオン軸2に固定されて上方に突出され、トラニオン軸2を回転中心としてトラニオン軸2と一体的に回転可能に構成される。従って、トラニオン軸2は、操作レバー11が回転操作されることで操作レバー11と同一の方向に回転される。トラニオン軸2は、時計回りに回転されると、HST1の出力軸3が一方向(前進方向)に回転し、反時計回りに回転されると、HST1の出力軸3が他方向(後進方向)に回転される。操作レバー11は、後述するトラニオン軸の回転位置検出機構10の一部を構成する。
【0024】
走行車両の操作具は、走行車両を前進又は後進させる際に操作される。操作具は、前進ペダル4と後進ペダル6とから構成される。
【0025】
前進ペダル4は、走行車両を前進させる際に一側端部に構成される踏み込み部4aが踏み込み操作される。前進ペダル4は、他側端部が前進ペダル支持軸5によって回転自在に支持される。前進ペダル4の他側端部には、第一レバー部4bと第二レバー部4cとが前進ペダル4と一体的に形成される。第一レバー部4bは、リンク8を介してトラニオン軸2の操作レバー11と接続される。第一レバー部4bは、前進ペダル4の踏み込み部4aが踏み込まれると(図1における黒矢印方向)、前進ペダル支持軸5を回転中心として操作レバー11から離間する方向に回転するように構成される。すなわち、前進ペダル4は、踏み込み部4aが踏み込まれると操作レバー11を時計回りに回転させる。
【0026】
後進ペダル6は、走行車両を後進させる際に一側端部に構成される踏み込み部6aが踏み込み操作される。後進ペダル6は、他側端部が後進ペダル支持軸7によって回転自在に支持される。また、後進ペダル6の他側端部には、後進レバー部6bが後進ペダル6と一体的に形成される。後進レバー部6bは、前進ペダル4の第二レバー部4cと接触するように構成される。すなわち、前進ペダル4と後進ペダル6とは、第二レバー部4c及び後進レバー部6bによって連動するように構成される。後進レバー部6bは、後進ペダル6の踏み込み部6aが踏み込まれると(図1における白矢印方向)、後進ペダル支持軸7を回転中心として第二レバー部4cに近接する方向に回転するように構成される。前進ペダル4は、第二レバー部4cが後進レバー部6bによって押されることで第一レバー部4bがトラニオン軸2の操作レバー11に近接する方向に回転するように構成される。すなわち、後進ペダル6は、踏み込み部6aが踏み込まれると操作レバー11を反時計回り(図1における白矢印方向)に回転させる。
【0027】
前進ペダル4及び後進ペダル6が踏み込まれない場合、トラニオン軸2の操作レバー11は回転されない。この際、HST1の出力軸3が停止するように操作レバー11がトラニオン軸2に配置される。すなわち、前進ペダル4も後進ペダル6も踏み込まれない場合、トラニオン軸2の回転位置は、HST1の出力軸3が停止する中立位置になるように構成される。但し、操作具は前進ペダル4と後進ペダル6を一体的に構成したシーソー式のペダルで構成することも可能であり限定するものではない。
【0028】
図1及び図2に示すように、トラニオン軸の回転位置検出機構10は、トラニオン軸2の回転位置を検出する。トラニオン軸の回転位置検出機構10は、主に操作レバー11、従動レバー13、検出スイッチ17等を具備する。
【0029】
操作レバー11は、HST1のトラニオン軸2を回転する。操作レバー11は、一側端部がトラニオン軸2に一体的に支持される。操作レバー11の途中部には、走行車両の前進ペダル4と接続されるリンク8が接続される。このように構成することで、トラニオン軸2とは別に第一支持軸を設ける場合にくらべて構成を簡易にすることができる。さらに、操作レバー11の他側端部には、反リンク8側の端面に接触部12が形成される。なお、本実施形態において、操作レバー11の接触部12は、操作レバー11と一体的に形成される構成したが、これに限定されるものではなく、操作レバー11に接触部12が取り外し自在に設けられる構成としてもよい。
【0030】
操作レバー11は、走行車両の前進ペダル4が踏み込まれた場合、すなわち、前進ペダル4の回転によってリンク8が前方向に移動された場合、トラニオン軸2を回転中心として時計回りに回転されるように構成される。また、操作レバー11は、走行車両の後進ペダル6が踏み込まれた場合、すなわち、後進ペダル6の回転によってリンク8が後方向に移動された場合、トラニオン軸2回りにトラニオン軸2を回転中心として反時計回りに回転されるように構成される。
【0031】
従動レバー13は、後述の検出スイッチ17を入り切りする。従動レバー13は、途中部がトラニオン軸2に回転自在に支持される。つまり、操作レバー11と従動レバー13とは、隣り合うようにしてトラニオン軸2に配置される。従動レバー13は、トラニオン軸2をはさんで一側端が操作レバー11側に配置され、他側端が検出スイッチ17側に配置される。図2(a)及び図2(b)に示すように、従動レバー13の一側端部には、接触ピン14が操作レバー11に向けて伸びるように設けられる。接触ピン14は、その曲面の側部が操作レバー11の接触部12に接触可能な長さに構成される。従動レバー13他側端部は、リンク8が配置されている側の端面が折り曲げられて後述の検出スイッチ17等と接触可能な折り曲げ部15が形成される。従動レバー13は、付勢部材となるばねで構成される引っ張りばね16によって他側端部が検出スイッチ17に近接する方向に付勢されている。なお、本実施形態において、接触ピン14は、従動レバー13の一側端部に固定されるものに限らず従動レバー13から取り外し自在に構成してもよい。
【0032】
検出スイッチ17は、トラニオン軸2の位置を検出する。検出スイッチ17は、押し込み操作が可能な突出部17aを有する。検出スイッチ17は、突出部17aを押し込むことで入り切りが切り替わるように構成される。検出スイッチ17は、取り付け板18を介してトラニオン軸2との距離が変動しないHST1のケース等に取り付けられる。この際、検出スイッチ17は、突出部17aが取り付け板18からはみ出して配置される。検出スイッチ17は、突出部17aのはみ出し量が入り切りを切り替えるために必要な押し込み量以上であって突出部17aの最大押し込み量未満になるように配置される。
【0033】
取り付け板18は、従動レバー13の折り曲げ部15と接触可能なようにHST1のケース等に取り付けられる。つまり、取り付け板18は、従動レバー13の回動ストッパとなるように構成される。取り付け板18には、長孔18aが形成される。取り付け板18は、長孔18aにボルト等が挿入されて取り付けられている。これにより、検出スイッチ17の取り外しや従動レバー13に対する検出スイッチ17の位置調整を容易に行うことができる。つまり、検出スイッチ17の取り付け位置を調整可能とすることで、トラニオン軸2又は操作レバー11の回転位置に対する検出スイッチ17の組み立て精度及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0034】
図2(c)に示すように、検出スイッチ17及び取り付け板18は、トラニオン軸2の回転位置が中立位置である場合に従動レバー13の折り曲げ部15が取り付け板18と接触する位置に配置される。これにより、トラニオン軸2の回転位置が中立位置である場合に、検出スイッチ17の突出部17aが取り付け板18からはみ出した量だけ折り曲げ部15によって押し込まれるように構成される。この状態で検出スイッチ17は「入」(または「切」)となっている。加えて、従動レバー13は、取り付け板18と接触することで時計回りの回転が規制される。この際、検出スイッチ17は、ケーブル側が下方を向くように配置されることが望ましい。このように配置することで、結露等が生じた場合、配線部分に水分が溜まって、検出スイッチ17側に流れ、短絡等が生じることを防止することができる。
【0035】
図2(a)に示すように、従動レバー13は、操作レバー11が反時計周りに回転された場合、すなわち、操作レバー11の接触部12が従動レバー13の接触ピン14に近接する方向に移動された場合、トラニオン軸2を回転中心として反時計周りに回転されるように構成される。これにより、従動レバー13は、折り曲げ部15が取り付け板18と接触している回転位置γ0から操作レバー11の形状や従動レバー13の形状によって規定される回転位置γ2まで回転される。
【0036】
また、従動レバー13は、前記の状態から操作レバー11が時計周りに回転された場合、すなわち、操作レバー11の接触部12が従動レバー13の接触ピン14から離間する方向に移動された場合、トラニオン軸2を回転中心として時計周りに回転されるように構成される。これにより、従動レバー13は、操作レバー11の形状や従動レバー13の形状によって規定される回転位置γ2から折り曲げ部15が取り付け板18と接触する回転位置γ0まで回転される。
【0037】
図2(a)及び図2(c)に示すように、従動レバー13は、操作レバー11が回転位置θ0(中立位置)から時計周りに回転位置θ1まで(前進方向に)移動された場合、取り付け板18によって回転を規制されて回転位置γ0から移動されない。この際、従動レバー13は、引っ張りばね16の付勢力によって検出スイッチ17の突出部17aを押し込んでいる。また、従動レバー13は、取り付け板18の規制により検出スイッチ17の突出部17aを最大押し込み量まで押し込むことがない。従って、検出スイッチ17の押し壊しを抑制することができる。
【0038】
以上の如く構成されるトラニオン軸の回転位置検出機構10において、トラニオン軸2を操作する操作レバー11は、前進ペダル4によって回転位置θ0から回転位置θ1までの範囲内で回転可能に構成され、従動レバー13は、回転位置γ0から移動しないように構成される。また、操作レバー11は、後進ペダル6によって回転位置θ0から回転位置θ2までの範囲内において回転可能に構成され、従動レバー13は、回転位置γ0から回転位置γ2までの範囲内において回転可能に構成される。
【0039】
以下では、このような構成のトラニオン軸の回転位置検出機構10について、前進ペダル4及び後進ペダル6が操作された場合の動作態様を図2から図4を用いて説明する。
【0040】
前進ペダル4及び後進ペダル6が踏み込み操作されない場合、操作レバー11は、回転移動されない。この結果、図2(a)に示すように、操作レバー11は回転位置θ0に配置され、トラニオン軸2の回転位置は中立位置となる。従って、操作レバー11は、その接触部12が従動レバー13の接触ピン14に接触して停止している。
【0041】
一方、操作レバー11が回転位置θ0において停止しているので、従動レバー13は回転移動されない。この結果、従動レバー13は、図2(c)に示すように、その折り曲げ部15が取り付け板18に接触するように引っ張りばね16に付勢されて回転位置γ0に配置された状態を維持する。従って、検出スイッチ17は、その突出部17aが従動レバー13の折り曲げ部15によって押し込まれている。
【0042】
図3(a)に示すように、前進ペダル4を踏み込み操作した場合、操作レバー11は、時計回り(図3(a)における黒矢印方向)に回転移動される。この結果、操作レバー11は、回転位置θ0から回転位置θ1までの範囲内に配置される。また、トラニオン軸2の回転位置は、HST1の出力軸3を停止させる中立位置からHST1の出力軸3(図1参照)を一方向(前進方向)に回転させる回転位置となる。従って、操作レバー11は、その接触部12が従動レバー13の接触ピン14から離間する。
【0043】
一方、操作レバー11が従動レバー13から離間する方向に回転位置θ0から回転移動するので従動レバー13は回転移動されない。この結果、従動レバー13は、その折り曲げ部15が取り付け板18に接触するように引っ張りばね16に付勢されて回転位置γ0に配置された状態を維持する(図2(c)参照)。従って、検出スイッチ17は、その突出部17aが従動レバー13の折り曲げ部15によって押し込まれている。
【0044】
前進ペダル4を踏み込まない状態に戻した場合、操作レバー11は、反時計回り(図3(a)における反黒矢印方向)に回転移動される。この結果、操作レバー11は、回転位置θ0に配置される。また、トラニオン軸2の回転位置は、HST1の出力軸3(図1参照)を停止させる中立位置となる。従って、操作レバー11は、その接触部12が従動レバー13の接触ピン14に接触する。
【0045】
一方、操作レバー11が従動レバー13の接触ピン14に接触する回転位置θ0まで回転移動するので従動レバー13は回転移動されない。この結果、従動レバー13は、その折り曲げ部15が取り付け板18に接触するように引っ張りばね16に付勢されて回転位置γ0に配置された状態を維持する。従って、検出スイッチ17は、その突出部17aが従動レバー13の折り曲げ部15によって押し込まれている。
【0046】
図3(b)及び図3(c)に示すように、後進ペダル6を踏み込み操作した場合、操作レバー11は、反時計回り(図3(b)及び図3(c)における白矢印方向)に回転移動される。この結果、操作レバー11は、回転位置θ0から回転位置θ2までの範囲内に配置される。また、トラニオン軸2の回転位置は、HST1の出力軸3を停止させる中立位置からHST1の出力軸3を他方向(後進方向)に回転させる回転位置となる。従って、操作レバー11は、その接触部12が従動レバー13の接触ピン14と接触しつつ回転移動される。
【0047】
一方、操作レバー11の接触部12が従動レバー13の接触ピン14に接触された状態で従動レバー13に向かって回転位置θ0から回転移動するので、従動レバー13は反時計回り(図3(b)及び図3(c)における白矢印方向)に回転移動される。この際、従動レバー13は、図4に示すように、操作レバー11の形状や従動レバー13の形状によって設定されている操作レバー11の回転位置に対する従動レバー13の回転位置の関係に従って回転移動される。この結果、従動レバー13は、回転位置γ0から回転位置γ2までの範囲内に配置される。
【0048】
具体的には、図3(b)及び図4に示すように、操作レバー11が回転位置θ0から回転位置θ3まで回転移動する間に従動レバー13が回転位置γ0から回転位置γ3まで回転移動するように操作レバー11の形状や従動レバー13の形状が設定される。従動レバー13の回転位置γ3は、検出スイッチ17の入り切りが切り替わる位置である。
【0049】
従って、検出スイッチ17は、従動レバー13が回転位置γ0から回転位置γ3まで回転移動されたときに、入り切りが切り替えられる。つまり、操作レバー11(後進ペダル6)に対する検出スイッチ17の検出感度は、操作レバー11の形状や従動レバー13の形状によって任意に設定することができる。また、走行車両の機種に関わらず検出スイッチ17の検出感度や検出時期を任意に設定することができる。さらに、後進ペダル6の操作感を操作レバー11の形状や従動レバー13の形状によって任意に設定することができる。
【0050】
後進ペダル6を踏み込まない状態に戻した場合、操作レバー11は、時計回り(図3(b)及び図3(c)における反白矢印方向)に回転移動される。この結果、操作レバー11は、回転位置θ0に配置される。また、トラニオン軸2の回転位置は、HST1の出力軸3を停止させる中立位置となる。従って、操作レバー11は、その接触部12が従動レバー13の接触ピン14から離間する方向に回転移動する。この際、従動レバー13は、引っ張りばね16の付勢力により接触ピン14が操作レバー11の接触部12に接触した状態が維持される。つまり、操作レバー11は、その接触部12が接触ピン14と接触しつつ回転移動される。
【0051】
一方、操作レバー11の接触部12が従動レバー13の接触ピン14に接触された状態で従動レバー13から離間する方向に回転位置θ0まで回転移動するので、従動レバー13は時計回り(図3(b)及び図3(c)における反白矢印方向)に回転移動される。この際、従動レバー13は、図4に示すように、操作レバー11の形状や従動レバー13の形状によって設定されている操作レバー11の回転位置に対する従動レバー13の回転位置の関係に従って回転移動される。この結果、従動レバー13は、回転位置γ0に配置される。
【0052】
上述の通り、検出スイッチ17に作用する外力は、突出部17aが押し込まれる場合における引っ張りばね16の付勢力のみである。従って、検出スイッチ17の入り切りの切り替えが、前進ペダル4及び後進ペダル6の操作状態に影響されることがない。この結果、検出スイッチ17の押し込み操作時の誤作動を抑制することができる。また、前進ペダル4及び後進ペダル6の操作力が検出スイッチ17に加わらないので検出スイッチ17の破損を抑制することができる。
【0053】
なお、本実施形態において、トラニオン軸の回転位置検出機構10は、操作レバー11が回転位置θ3に回転移動された場合に検出スイッチ17が入り切りを切り替えるように構成されているがこれに限定するものではない。操作レバー11の接触部12の形状や操作レバー11の形状や従動レバー13の形状を変更することで検出スイッチ17の切り替え時期を所望の時期に設定することができる。
【0054】
以上の如く、トラニオン軸2の回転操作によって出力軸3の回転数及び回転方向を変更可能な油圧式無段変速機におけるトラニオン軸の回転位置検出機構10であって、トラニオン軸2に一側端部を相対回転不能に支持され、トラニオン軸2回りの回転によってトラニオン軸2を回転可能に構成される操作レバー11と、トラニオン軸2に途中部を相対回転自在に支持される従動レバー13と、従動レバー13の一側端部によって入切を切り替えられる検出スイッチ17と、を具備し、操作レバー11は、途中部に操作レバー11を操作するリンク8が接続され、リンク8によって所定の回転位置θ0から一方向に回転されると他側端部(接触部12)が従動レバー13の一側端部(接触ピン14)に接触して従動レバー13を回転させて検出スイッチ17の入り切りを切り替え、リンク8によって所定の回転位置γ0から他方向に回転されると他側端部が従動レバー13の一側端部から離間して従動レバー13を回転させない。
このように構成することで、操作レバー11と従動レバー13がトラニオン軸2で支持される。このため、操作レバー11や従動レバー13を支持する部材を別途設ける必要がない。また、操作レバー11や従動レバー13レバーの形状によって検出スイッチ17の入り切りが切り替わる時期や検出感度を任意に決定することができる。このため、操作レバー11の操作状態や検出スイッチ17の取り付け位置を任意に設定することができる。
【0055】
また、操作レバー11の他側端部(接触部12)、または従動レバー13の一側端部(接触ピン14)は、操作レバー11または従動レバー13から取り外し可能に構成される。
このように構成することで、操作レバー11の操作量に対する従動レバー13の作動量を機構の構成を変更することなく容易に変更することができる。このため、メンテナンス性及び汎用性が向上する。
【0056】
また、従動レバー13の一側端部は、接触ピン14を具備し、接触ピン14が操作レバー11の他側端部(接触部12)に接触する。
このように構成することで、操作レバー11と従動レバー13とが離間していても接触ピン14を介して操作レバー11と従動レバー13とを接触させることができる。このため、操作レバー11と従動レバー13の配置が容易になる。
【0057】
また、検出スイッチ17は、押し込まれることで入り切りが切り替わる突出部17aを有し、従動レバー13は、引っ張りばね16によって突出部17aを押し込む方向に付勢され、操作レバー11の回転によって突出部17aから離間する方向に回転される。
このように構成することで、操作レバー11からの力によって検出スイッチ17が押し込まれることがない。このため、操作レバー11の操作による検出スイッチ17の破損が抑制される。
【0058】
また、検出スイッチ17は、取り付け板18を介して従動レバー13近傍に配置されるとともに、取り付け板18は、突出部17aの全てが押し込まれるまでに従動レバー13が接触する。
このように構成することで、引っ張りばね16の付勢力が全て検出スイッチ17に加わることがない。このため、引っ張りばね16の付勢力による検出スイッチ17の破損が抑制される。
【0059】
以下では、図5を用いて、本発明に係るトラニオン軸の回転位置検出機構の別実施形態であるトラニオン軸の回転位置検出機構20について説明する。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0060】
図5に示すように、トラニオン軸の回転位置検出機構20は、主に操作レバー11、従動レバー13、検出スイッチ17、押し込みガイド21等を具備する。
【0061】
押し込みガイド21は、検出スイッチ17の突出部17aを押し込む。押し込みガイド21は、押し込み部22、案内部23、圧縮ばね24を具備する。押し込み部22は、円柱状の部材から構成される。案内部23には、押し込み部22を隙間なく摺動自在に挿入可能な孔23aが形成される。押し込み部22は、案内部23の孔23aに挿入され軸方向にのみ移動自在に支持される。
【0062】
押し込みガイド21は、押し込み部22の一側端部の軸心が検出スイッチ17の突出部17aの中心に接触するように配置される。あわせて、押し込みガイド21は、押し込み部22の軸方向が検出スイッチ17の突出部17aの押し込み方向に一致するように配置される。さらに、押し込みガイド21は、従動レバー13の折り曲げ部15が押し込み部22の他側端部に接触するように配置される。この際、押し込みガイド21は、従動レバー13の折り曲げ部15が押し込み部22の他側端部を押し込むことで検出スイッチ17の突出部17aを入り切りが切り替わる位置まで押し込むように構成される。また、押し込みガイド21は、圧縮ばね24によって押し込み部22が突出部17aから離間する方向に付勢される。
【0063】
以下では、このような構成のトラニオン軸の回転位置検出機構20について、後進ペダル6が操作された場合の動作態様を図5を用いて説明する。
【0064】
図5(a)に示すように、後進ペダル6を踏み込み操作した場合、操作レバー11は、反時計回り(図5(a)における白矢印方向)に回転移動される。従って、操作レバー11は、その接触部12が従動レバー13の接触ピン14と接触しつつ回転移動される。
【0065】
一方、操作レバー11の接触部12が従動レバー13の接触ピン14に接触された状態で従動レバー13に向かってに回転移動するので従動レバー13は反時計回り(図5(a)における白矢印方向)に回転移動される。従動レバー13は、操作レバー11の形状や従動レバー13の形状によって設定されている操作レバー11の回転位置に対する従動レバー13の回転位置の関係に従って回転移動される。
【0066】
従動レバー13は、押し込みガイド21の押し込み部22の他側端部から離間する方向に回転移動される。この結果、押し込みガイド21部の圧縮ばね24の付勢力によって、押し込み部22が検出スイッチ17の突出部17aから離間する方向に移動される。従って、検出スイッチ17は、従動レバー13が所定の回転位置まで反時計まわりに回転移動されたときに、入り切りの切り替えを検出する。
【0067】
図5(b)に示すように、後進ペダル6を踏み込まない状態に戻した場合、操作レバー11は、時計回り(図5(b)における黒矢印方向)に回転移動される。従って、操作レバー11は、その接触部12が従動レバー13の接触ピン14と接触しつつ回転移動される。
【0068】
一方、操作レバー11の接触部12が従動レバー13の接触ピン14に接触された状態で従動レバー13から離間する方向に回転移動するので、従動レバー13は時計回り(図5(b)における黒矢印方向)に回転移動される。従動レバー13は、操作レバー11の形状や従動レバー13の形状によって設定されている操作レバー11の回転位置に対する従動レバー13の回転位置の関係に従って回転移動される。
【0069】
従動レバー13は、押し込みガイド21の押し込み部22の他側端部に近接する方向に回転移動される。この結果、従動レバー13の引っ張りばね16の付勢力によって、押し込み部22が検出スイッチ17の突出部17aに近接する方向に移動される。つまり、検出スイッチ17は、押し込み部22を介して引っ張りばね16の付勢力によって突出部17aが押し込まれる、従って、検出スイッチ17は、従動レバー13が所定の回転位置まで時計回りに回転移動されたときに、入り切りの切り替えを検出する。
【0070】
押し込みガイド21は、トラニオン軸2回りに回転移動する従動レバー13によって押し込み部22が押し込まれる。このため、押し込みガイド21には、従動レバー13からのモーメントが加わる。しかし、押し込み部22は、押し込みガイド21の案内部23によってその軸方向にのみ移動自在に支持される。つまり、押し込み部22は、モーメントが加わっても検出スイッチ17の突出部17aの押し込み方向にしか移動されない。従って、押し込み部22によって押し込まれる突出部17aには、従動レバー13からのモーメントが加わらない。
【0071】
以上の如く、検出スイッチ17は、突出部17aの押し込む方向にのみ往復移動可能に構成される押し込み部22材を介して圧縮ばね24に付勢される。
このように構成することで、検出スイッチ17の突出部17aにモーメントが加わることがない。このため、検出スイッチ17の破損が抑制される。
【符号の説明】
【0072】
1 油圧式無段変速機
2 トラニオン軸
3 出力軸
8 リンク
10 トラニオン軸の回転位置検出機構
11 操作レバー
13 従動レバー
18 検出スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5