(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806143
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 1/10 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
F24H1/10 303Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-36467(P2012-36467)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-170793(P2013-170793A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】成田 広久
【審査官】
渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−254615(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/067454(WO,A1)
【文献】
特開平10−094494(JP,A)
【文献】
特開2006−015285(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0040876(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0301577(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00− 1/16
F24H 9/00
A47K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、前記バーナに加熱される熱交換器と、前記熱交換器に接続される給水管及び出湯管と、前記バーナの燃焼を制御する制御手段と、を含み、器具内の通水により、前記制御手段が前記バーナを燃焼させて前記熱交換器を通過する水を加熱して出湯させる一方、前記制御手段は、前記出湯管に設けた温度検出手段が出湯停止後に所定の後沸き温度に達したら、配管内にスケールが析出したと判断する給湯器であって、
前記給水管側に、本水路から分岐して前記本水路の一部をバイパスするバイパス路を形成すると共に、前記本水路と前記バイパス路との分岐部に、前記制御手段により制御され、流路を前記本水路と前記バイパス路との何れか一方へ選択的に切替可能な流路切替手段を設ける一方、
前記バイパス路に、水の流入によって旋回する旋回車を収容した撹拌部と、前記撹拌部と連通し、下流側へ行くに従って縮径するテーパ状流路の加圧部と、前記加圧部と連通し、下流側へ行くに従って拡径するテーパ状流路の減圧部とを備えて微細気泡を発生させるマイクロバブル発生器を設けて、
前記制御手段は、前記スケールが析出したと判断したら、前記流路切替手段によって前記流路を前記バイパス路へ切り替えて、微細気泡を発生させた水を前記器具内に通水させることを特徴とする給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水管からの水をバーナを備えた熱交換器で加熱して出湯管から出湯させる給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器は、バーナを備えた熱交換器の入口側に、水道からの水が供給される給水管が、出口側に出湯管がそれぞれ接続されて、器具内に通水されることで、熱交換器においてバーナの燃焼ガスと水との熱交換を行って水を加熱し、出湯管から所定温度の湯を浴室等に出湯可能としている。
ところで、熱交換器においては、水の硬度の高い地区では経年使用によって内部にスケールが析出することがよく知られている。このスケールの析出により、熱交換器の伝熱効率が低下し、フィン温度が上昇して熱効率の低下に繋がる。さらにそのまま使用を続けると、スケールの析出付着が多くなり、最終的には伝熱管が割れて水漏れし、給湯器が使用できなくなる。そこで、特許文献1に開示のように、熱交換器に異常温度検出器を設けて、出湯停止後の後沸きにより、異常温度検出器が予め設定した規定温度以上を検出すると、スケールの析出により熱効率が低下して熱交換器の異常加熱が生じたと判断する発明が知られている。ここでは使用者に報知すると共に、再出湯時のバーナの最高燃焼量値を下げて修理まで使用可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−254615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明は、スケールの析出とその後の一時的な使用を可能にするのみで、給湯器自身でスケールの除去自体を行わないものであるため、スケールの除去は結局メンテナンスによる必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、スケールの除去が自動的に可能となり、スケール除去に係るメンテナンスが不要となる給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、バーナと、バーナに加熱される熱交換器と、熱交換器に接続される給水管及び出湯管と、バーナの燃焼を制御する制御手段と、を含み、器具内の通水により、制御手段がバーナを燃焼させて熱交換器を通過する水を加熱して出湯させる一方、制御手段は、出湯管に設けた温度検出手段が出湯停止後に所定の後沸き温度に達したら、配管内にスケールが析出したと判断する給湯器であって、給水管側に、本水路から分岐して本水路の一部をバイパスするバイパス路を形成すると共に、本水路とバイパス路との分岐部に、制御手段により制御され、流路を本水路とバイパス路との何れか一方へ選択的に切替可能な流路切替手段を設ける一方、バイパス路に、
水の流入によって旋回する旋回車を収容した撹拌部と、
撹拌部と連通し、下流側へ行くに従って縮径するテーパ状流路の加圧部と、
加圧部と連通し、下流側へ行くに従って拡径するテーパ状流路の減圧部とを備えて微細気泡を発生させるマイクロバブル発生器を設けて、制御手段は、スケールが析出したと判断したら、流路切替手段によって流路をバイパス路へ切り替えて、微細気泡を発生させた水を器具内に通水させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、マイクロバブルを利用してスケールの除去が自動的に可能となる。よって、スケール除去に係るメンテナンスが不要となる。
また、マイクロバブル発生器をバイパス路へ簡単に組み込めるコンパクトな構成とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、給湯器の一例を示す概略図である。ここに示す給湯器1は、器具本体内に、給気ファン3を備えた燃焼室2を形成して、燃焼室2の内部に、燃料ガスと給気ファン3からの一次空気との混合ガスを燃焼させるバーナ4,4を備えると共に、バーナ4の燃焼によって加熱され、給水管6と出湯管7とを接続した熱交換器5を備えている。バーナ4へのガス管8には、上流側から、元電磁弁9及びガス比例弁10、切替電磁弁11,11がそれぞれ設けられて、各弁が制御手段としてのコントローラ12によって制御可能となっている。13はイグナイタ、14は点火電極、15はフレームロッドである。
【0010】
また、給水管6と出湯管7との間には、熱交換器5をバイパスするバイパス管16が接続されている。給水管6におけるバイパス管16との接続位置よりも上流側には、給水管6を流れる水量を検出する水量センサ17と、給水管6の水量を制御する水量サーボ18とが設けられ、バイパス管16には、バイパス管16の水量を制御するバイパスサーボ19が設けられて、それぞれコントローラ12に電気的接続されている。一方、出湯管7には、給湯栓20と、出湯管7の上流側で燃焼室2からの出口温度を検出する温度検出手段としての第1サーミスタ21と、バイパス管16よりも下流側で出湯温度を検出する第2サーミスタ22とが設けられて、第1、第2サーミスタ21,22もコントローラ12に電気的接続されている。23は、コントローラ12に電気的接続されるリモコンで、運転スイッチや設定温度の変更ボタン、表示部等が設けられている。
【0011】
そして、給水管6において、バイパス管16との接続部よりも上流側には、マイクロバブルの切替部30が設けられている。この切替部30は、
図2に示すように、まずケーシング31の下部に、分割された上流側の給水管6が接続される水入口32が、ケーシング31の上部に、分割された下流側の給水管6が接続される水出口33がそれぞれ形成されている。また、水入口32と水出口33との間には、給水管6と繋がる本水路34が形成されていると共に、水入口32の下流側で本水路34から分岐して水出口33の上流側で再び合流して、本水路34の一部をバイパスするバイパス路35が形成されている。
【0012】
36はバルブで、ケーシング31に組み付けられてバイパス路35内に突出する左右方向の保持筒37と、その保持筒37に螺合して本水路34とバイパス路35との分岐位置に突出する弁軸38と、その弁軸38の先端に取り付けられる弁体39とを備えてなる。分岐位置におけるバイパス路35側には、第1の弁座40が形成される一方、本水路34側には、第2の弁座41が形成されて、弁体39が第1の弁座40に当接する弁軸38の第1の位置では、
図2に示すようにバイパス路35を閉塞して本水路34を開放し、弁体39が第2の弁座41に当接する弁軸38の第2の位置では、二点鎖線で示すように本水路34を閉塞してバイパス路35を開放するようになっている。弁軸38は、コントローラ12に電気的接続されたステッピングモータ42(
図2では図示略)の駆動により回転し、第1の位置と第2の位置とに選択的に前後動可能となっている。このバルブ36とステッピングモータ42とが流路切替手段となる。
【0013】
そして、バイパス路35におけるバルブ36の下流側には、マイクロバブル発生器43が設けられている。このマイクロバブル発生器43は、筒状の本体44に、水が流入する撹拌部45と、撹拌部45の下流側に連通し、下流側へ行くに従って縮径するテーパ状流路となる加圧部46と、その加圧部46の下流側に同軸で連通し、下流側へ行くに従って拡径するテーパ状流路となる減圧部47とを形成し、撹拌部45に旋回車48を収容してなる。旋回車48は、撹拌部45内で回転可能に収容されて加圧部46の上流端を閉塞する円盤状で、軸線に対して螺旋状に傾斜する複数の流入孔49,49・・が穿設されている。50は、旋回車48の軸心で加圧部46側へ突設された突起である。
【0014】
よって、このマイクロバブル発生器43においては、撹拌部45に水が流入すると、旋回車48の流入孔49,49・・を通ることで、旋回車48が回転する。この旋回車48の回転により、旋回流が発生して撹拌部45で水が撹拌されて加圧部46へ流れ込み、加圧部46で縮径するテーパ状流路によって加圧される。その後、加圧された水が減圧部47へ流入して圧力が開放されることで、水内の溶存空気がμm単位の微細気泡(マイクロバブル)として現出することになる。
【0015】
以上の如く構成された給湯器1の動作を、
図3のフローチャートに基づいて説明する。
まず、S1で給湯栓20を開いて器具内の水量が点火水量を超えると、水量センサ17でこれを検知したコントローラ12は、S2で点火制御を行う。これは、給気ファン3を回転させてプリパージを行い、元電磁弁9と切替電磁弁11及びガス比例弁10をそれぞれ開いてバーナ4にガスを供給すると共に、イグナイタ13を作動させるものである。次に、コントローラ12は、S3において、バーナ4の点火をフレームロッド15で確認した後、第2サーミスタ22で検出された出湯温度と、リモコン23で設定された設定温度との差に応じて、ガス比例弁10の開度を制御してガス量を連続的に変化させ、出湯温度を設定温度に一致させる出湯温制御を行う。
このとき、切替部30では、バルブ36の弁軸38は第1の位置にあってバイパス路35を閉塞しているため、水は本水路34を通り、マイクロバブルは発生しない。
【0016】
そして、S4で給湯栓20が閉じられて出湯が停止すると、コントローラ12は、S5で、第1サーミスタ21から得られる出湯温度を監視し、当該出湯温度が所定時間内で予め設定された後沸き温度に達したか否かを判別する。ここで後沸き温度に達すると、コントローラ12は、S6でステッピングモータ42を駆動させて弁軸38を第2の位置に移動させ、
図2に二点鎖線で示すように本水路34を閉塞してバイパス路35を開放する。
【0017】
すると、S1〜3の再出湯時には、水はバイパス路35を通って給水管6を流れるため、マイクロバブル発生器43を通過する際に、前述のようにマイクロバブルが発生する。よって、マイクロバブルを含んだ水が熱交換器5を通過することになる。マイクロバブルが熱交換器5の配管内を通過することで、析出したスケールを除去する作用を生じさせる。一方、S5の判別で出湯温度が後沸き温度に達しなければ、S7でそのまま本水路34を開放させる制御が維持される。
【0018】
再出湯後、S4で、マイクロバブルを発生させた水を給水した出湯が停止すると、コントローラ12は、S5で再び第1サーミスタ21からの出湯温度を監視する。ここで出湯温度が依然として所定時間内で後沸き温度に達すれば、S6でそのままバイパス路35を開放させる制御を維持するが、出湯温度が後沸き温度に達しなければ、コントローラ12は、S7でステッピングモータ42を駆動させて弁軸38を第1の位置に移動させ、バイパス路35を閉塞して本水路34を開放する。すると、再出湯時には、水は本水路34を通って給水管6を流れるため、マイクロバブルは発生しない。
【0019】
このように、上記形態の給湯器1によれば、給水管6側に、本水路34から分岐して本水路34の一部をバイパスするバイパス路35を形成すると共に、本水路34とバイパス路35との分岐部に、コントローラ12により制御され、流路を本水路34とバイパス路35との何れか一方へ選択的に切替可能な流路切替手段(バルブ36及びステッピングモータ42)を設ける一方、バイパス路35に、水の撹拌部45と、加圧部46と、減圧部47とを備えて微細気泡を発生させるマイクロバブル発生器43を設けて、コントローラ12は、スケールが析出したと判断したら、流路切替手段によって流路をバイパス路35へ切り替えて、微細気泡を発生させた水を器具内に通水させることで、マイクロバブルを利用してスケールの除去が自動的に可能となる。よって、スケール除去に係るメンテナンスが不要となる。
なお、マイクロバブルによるスケール除去作用は、公知文献である「材料と環境」(社団法人腐食防食協会発行)vol.58(2009),No.3 pp.99-104の「給湯用銅管の潰食現象に及ぼす気泡挙動の影響」において確認されている。
【0020】
特にここでは、撹拌部45を、水の流入によって旋回する旋回車48を収容したものとして、加圧部46を、撹拌部45と連通し、下流側へ行くに従って縮径するテーパ状流路とし、減圧部47を、加圧部46と連通し、下流側へ行くに従って拡径するテーパ状流路としたことで、マイクロバブル発生器43をバイパス路35へ簡単に組み込めるコンパクトな構成とすることができる。
【0021】
なお、流路切替手段としては電磁弁を用いたりすることができる。マイクロバブルの切替部も、ケーシング内に本水路とバイパス路とを分岐形成する形態に限らず、給水管にバイパス管を分岐接続するようにしてもよい。
その他、上記形態では、給水管と出湯管との間にバイパス管を接続した給湯器で説明しているが、バイパス管のない給湯器であっても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1・・給湯器、2・・燃焼室、4・・バーナ、5・・熱交換器、6・・給水管、7・・出湯管、12・・コントローラ、16・・バイパス管、20・・給湯栓、21・・第1サーミスタ、22・・第2サーミスタ、30・・切替部、31・・ケーシング、32・・水入口、33・・水出口、34・・本水路、35・・バイパス路、36・・バルブ、38・・弁軸、43・・マイクロバブル発生器、44・・本体、45・・撹拌部、46・・加圧部、47・・減圧部、48・・旋回車。