特許第5806145号(P5806145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806145
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】絶対圧測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 7/00 20060101AFI20151021BHJP
   G01L 7/14 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   G01L7/00 J
   G01L7/14
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-41929(P2012-41929)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-178154(P2013-178154A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河メータ&インスツルメンツ株式会社
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 裕和
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−131036(JP,U)
【文献】 特開2010−169665(JP,A)
【文献】 特開2010−25582(JP,A)
【文献】 特表2010−525324(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0203380(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L27/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入液が封入された本体カプセルと、
この本体カプセルの一方の側面に設けられ真空圧が封入された真空室と、
前記本体カプセルの他方の側面に設けられ測定圧が受圧される測定室と、
を具備する絶対圧測定装置において、
前記絶対圧測定装置が時間の経過と共に真空度が低下してゼロドリフトを生ずる真空度ゼロドリフト予測曲線と、前記絶対圧測定装置を傾けたことにより前記封入液に基づき生ずる傾斜角度ゼロドリフト曲線とから、時間の経過と共に連続的に前記真空度ゼロドリフト値を前記傾斜角度ゼロドリフト値により補正出来る前記絶対圧測定装置の傾斜角度値を演算する補正演算回路と、
この補正演算回路からの信号に基づき前記絶対圧測定装置を時間の経過と共に連続的に傾ける絶対圧測定装置回動手段と、
を具備したことを特徴とする絶対圧測定装置。
【請求項2】
絶対圧測定装置回動手段は、絶対圧測定装置を載置する載置ステージと、
この載置ステージの傾斜を検知する傾斜センサと、
前記載置ステージの傾斜を駆動するモータと、
前記傾斜センサの信号に基づき前記モータを制御する制御回路と、
を具備したことを特徴とする請求項1記載の絶対圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶対圧測定装置に関するものである。
更に詳述すれば、ゼロドリフトの数値を予測して、その数値をもとに連続的に補正することで、測定誤差を小さく出来、測定精度が向上出来る絶対圧測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は従来より一般に使用されている従来例の要部構成説明図、図4図6図3の動作説明図である。
図において、1は本体ボディで、円柱状の首部1Aと、首部1Aの端部外周縁部1Cにおいて溶接接続されたブロック状の受圧部1Bとよりなる。首部1Aと受圧部1Bとは、この場合は、ステンレス材よりなる。
本体ボディ1の両側に、高圧側フランジ2、低圧側フランジ3が溶接等によって固定されており、両フランジ2,3には測定せんとする高圧側圧力PHの高圧流体の導入口4、低圧側圧力PLの低圧流体の導入口5が設けられている。
【0003】
本体ボディ1内に圧力測定室6が形成されており、この圧力測定室6内にセンタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8が設けられている。
センタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8は、それぞれ別個に圧力測定室6の壁に固定されており、センタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8の両者でもって圧力測定室6を2分している。
【0004】
センタダイアフラム7と対向する圧力測定室6の壁には、バックプレ―ト6A,6Bが形成されている。センタダイアフラム7は周縁部を本体ボディ1に溶接されている。
シリコンダイアフラム8は全体が単結晶のシリコン基板から形成されている。
シリコン基板の一方の面にボロン等の不純物を選択拡散して4個のストレインゲ―ジ80を形成し、他方の面を機械加工、エッチングし、全体が凹形のダイアフラム8を形成する。
【0005】
4個のストレインゲ―ジ80は、シリコンダイアフラム8が差圧ΔPを受けてたわむ時、2個が引張り、2個が圧縮を受けるようになっており、これらがホイ―トストン・ブリッジ回路に接続され、抵抗変化が差圧ΔPの変化として検出される。
シリコンダイアフラム8は、首部1Aを2個のセンサ室81,82に分ける。
支持体9の圧力測定室6側端面に、低融点ガラス接続等の方法でシリコンダイアフラム8が接着固定されている。
【0006】
本体ボディ1と高圧側フランジ2、および低圧側フランジ3との間に、圧力導入室10,11が形成されている。
この圧力導入室10,11内に高圧側,低圧側シールダイアフラム12,13を設け、このシールダイアフラム12,13と対向する本体ボディ1の壁にシールダイアフラム12,13と類似の形状のバックプレ―ト10A,11Aが形成されている。
シールダイアフラム12,13と高圧側,低圧側バックプレ―ト10A,11Aとにより、高圧側,低圧側シールダイアフラム室12A,13Aが構成される。
【0007】
シールダイアフラム12,13は、受圧部1Bに、シールリング121,131により周縁部が溶接されている。
この場合は、シールダイアフラム12,13と、シールリング121,131とは、ステンレス材よりなる。
シールダイアフラム室12A,13Aと圧力測定室6とは、連通孔14,15を介して導通されている。
【0008】
そして、シールダイアフラム室12A,13Aにシリコンオイル等の封入液101,102が満たされ、この封入液101,102が高圧側,低圧側伝導穴16,17を介してシリコンダイアフラム8の上下面にまで至っている。
封入液101,102は、センタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8とによって2分されているが、その量が、ほぼ均等になるように配慮されている。
【0009】
ここで、絶対圧測定装置20においては、圧力導入室10,11のいずれか一方に真空が封入されて絶対圧測定装置20として使用される。
この場合は、圧力導入室11に真空が封入され、圧力導入室10に測定圧が導入される。
【0010】
以上の構成において、圧力導入室10に測定圧が導入されると、高圧側シールダイアフラム12に作用する圧力が封入液101によってシリコンダイアフラム8に伝達される。
一方、圧力導入室11の真空の圧力は、低圧側シールダイアフラム13に作用し封入液102によってシリコンダイアフラム8に伝達される。
この結果、真空の圧力と測定圧との圧力差に応じてシリコンダイアフラム8が歪み、この歪み量がストレインゲ―ジ80によって電気的に取出され、絶対圧の測定が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平05−172676号公報
【特許文献2】特開2005−049245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような装置においては、以下の問題点がある。
真空基準室である圧力導入室11の真空の圧力は、真空状態で維持できるよう設計されているが、使用している間に、真空度が低下し、図4に示す如く、圧力導入室11の真空度の低下によるゼロ点がドリフトする。
図4に示す如き、このドリフトを補正するために、定期的あるいは測定毎にゼロ点の調整を行う必要がある。
【0013】
なお、図4は、絶対圧測定装置20の圧力導入室11の真空度の低下によるゼロ点のドリフトを示すグラフである。
ゼロ点の調整は、真空ポンプと真空計等の大掛かりな装置が必要となり、調整に時間がかかる。
また、ゼロ調整直後と次のゼロ調整までの間においては、真空基準室11内の真空劣化から、測定誤差がどうしても発生する。
【0014】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、ゼロドリフトの数値を予測して、その数値をもとに連続的に補正することで、測定誤差を小さく出来、測定精度が向上出来る絶対圧測定装置を提供することにある。
【0015】
所で、封入液101,102が封入された絶対圧測定装置20においては、封入液101,102の影響により、図5に示す矢印B1の如く、絶対圧測定装置20を傾けると、図6に示すB2の範囲に示す如く、ゼロ点が変化する。
図5に示す矢印C1の如く、絶対圧測定装置20を傾けると、図6に示すC2の範囲に示す如く、ゼロ点が変化する。
なお、図6は、絶対圧測定装置20の姿勢角度の影響によるゼロ点のドリフトを示すグラフである。
【0016】
本発明は、この絶対圧測定装置20の姿勢の影響を利用して、真空度の低下によるゼロ点がドリフトする方向と逆に、絶対圧測定装置の姿勢を変化させることでゼロ点の補正をかけるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1の絶対圧測定装置においては、
封入液が封入された本体カプセルと、この本体カプセルの一方の側面に設けられ真空圧が封入された真空室と、前記本体カプセルの他方の側面に設けられ測定圧が受圧される測定室と、を具備する絶対圧測定装置において、前記絶対圧測定装置が時間の経過と共に真空度が低下してゼロドリフトを生ずる真空度ゼロドリフト予測曲線と、前記絶対圧測定装置を傾けたことにより前記封入液に基づき生ずる傾斜角度ゼロドリフト曲線とから、時間の経過と共に連続的に前記真空度ゼロドリフト値を前記傾斜角度ゼロドリフト値により補正出来る前記絶対圧測定装置の傾斜角度値を演算する補正演算回路と、この補正演算回路からの信号に基づき前記絶対圧測定装置を時間の経過と共に連続的に傾ける絶対圧測定装置回動手段と、を具備したことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項2の絶対圧測定装置においては、請求項1記載の絶対圧測定装置において、
絶対圧測定装置回動手段は、絶対圧測定装置を載置する載置ステージと、この載置ステージの傾斜を検知する傾斜センサと、前記載置ステージの傾斜を駆動するモータと、前記傾斜センサの信号に基づき前記モータを制御する制御回路と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
ゼロ調整直後から次のゼロ調整までの間において、ゼロドリフトの変化を予測し、補正を連続的にかけることで、真空劣化によるドリフト要因がキャンセルされ、より正確な測定が実現できる絶対圧測定装置が得られる。
ゼロ調整を繰り返す中で、変化予測の精度が高まる中で、調整期間を長く設定できる絶対圧測定装置が得られる。
調整期間を長く設定した場合でも、測定結果の信頼性が維持できる絶対圧測定装置が得られる。
ゼロ調整に伴う、作業負担が軽減できる絶対圧測定装置が得られる。
【0020】
本発明の請求項2によれば、次のような効果がある。
絶対圧測定装置回動手段は、絶対圧測定装置を載置する載置ステージと、載置ステージの傾斜を検知する傾斜センサと、載置ステージの傾斜を駆動するモータと、傾斜センサの信号に基づきモータを制御する制御回路とが設けられたので、精度が高いゼロドリフト補正が出来る絶対圧測定装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
図2図1の動作説明図である。
図3】従来より一般に使用されている従来例の要部構成説明図である。
図4図3の動作説明図である。
図5図3の動作説明図である。
図6図3の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図、図2図1の動作説明図である。
図において、図3と同一記号の構成は同一機能を表す。
以下、図3との相違部分のみ説明する。
【0023】
図1において、補正演算回路21は、絶対圧測定装置20が時間の経過と共に真空度が低下してゼロドリフトを生ずる真空度ゼロドリフト予測曲線と、絶対圧測定装置20を傾けたことにより、封入液101,102に基づき生ずる傾斜角度ゼロドリフト曲線とから、時間の経過と共に連続的に、真空度ゼロドリフト値を傾斜角度ゼロドリフト値により補正する絶対圧測定装置20の傾斜角度値を演算する。
【0024】
絶対圧測定装置回動手段22は、この補正演算回路21からの信号に基づき、絶対圧測定装置20を時間の経過と共に連続的に傾ける。
この場合は、絶対圧測定装置回動手段22は、絶対圧測定装置20を載置する載置ステージ221と、この載置ステージの傾斜を検知する傾斜センサ222と、載置ステージの傾斜を駆動するモータ223と、傾斜センサ222の信号に基づき、モータ223を制御する制御回路224と、を有する。
【0025】
以上の構成において、
経過時間を含めた場合、以下のようにして計算できる。
いま、
P1:T1の日時におけるゼロ点のオフセット
P2:T2の日時におけるゼロ点のオフセット
この変化は、リニアであると仮定できるので、
傾きの変化率αは、α=(P2−P1)/(T2−T1)となる。
【0026】
この式は、直線近似に拘っているわけではなく、ゼロ点の変化を予測するための近似式である。
ゼロ点の調整を繰り返すことにより、最良の近似式で、補正することが、可能となり、予測精度も高まると考えられる。

T1の日時での初期オフセット値をP0とすると、あるT3の日時でのゼロ点オフセット値Pzは、
以下のように推測できる。
Pz=P0+α・(T3−T1)
【0027】
一方、ゼロ点における姿勢変化は、傾斜であるので、sin近似として仮定し、姿勢傾斜における、ゼロ点の変化量を求める。

傾斜角θ度傾斜したときのゼロ点のオフセット値をPcとすると、ゼロ点のオフセット値Pcは、以下のように変化する。
Pc=P0+Pm・sinθ
P0:初期状態でのオフセット値、
Pm:90度傾けたとき、姿勢誤差が最大となり、そのときのゼロ点のオフセット値
θ:傾斜角度
【0028】
センサの姿勢を、真空劣化によるゼロ点変化に対し、逆相に変化させ補正する。
その時の傾斜角θは、以下のようになる。
Pz−Pc=0
α・(T3−T1)−Pm・sinθ=0
θ=sin-1(α・(T3−T1)/Pm)
【0029】
より具体的には、図2に示す如く、例えば、
姿勢特性10Pa/1.5deg、ゼロドリフトが約12Paの場合。
リニア変化として想定すると、絶対圧測定装置20を1.8deg回動傾斜させるとゼロ点のドリフトがキャンセル出来る。
図1に、矢印Dに示す如く、回動方向を示す。なお、
図2は、絶対圧測定装置20の圧力導入室11の真空度の低下によるゼロ点のドリフトを示すグラフである。
【0030】
この結果、
ゼロ調整直後から次のゼロ調整までの間において、ゼロドリフトの変化を予測し、補正を連続的にかけることで、真空劣化によるドリフト要因がキャンセルされ、より正確な測定が実現できる絶対圧測定装置が得られる。
ゼロ調整を繰り返す中で、変化予測の精度が高まる中で、調整期間を長く設定できる絶対圧測定装置が得られる。
調整期間を長く設定した場合でも、測定結果の信頼性が維持できる絶対圧測定装置が得られる。
ゼロ調整に伴う、作業負担が軽減できる絶対圧測定装置が得られる。
【0031】
絶対圧測定装置回動手段22は、絶対圧測定装置20を載置する載置ステージ221と、載置ステージ221の傾斜を検知する傾斜センサ222と、載置ステージ221の傾斜を駆動するモータ223と、傾斜センサ222の信号に基づきモータ223を制御する制御回路224とが設けられたので、精度が高いゼロドリフト補正が出来る絶対圧測定装置が得られる。
【0032】
なお、本発明は、高精度気圧計に使用されて、特に有効である。
また、本発明は、図3従来例に示す絶対圧測定装置に付いて説明したが、封入液が封入された絶対圧測定装置であれば、適用できることは勿論である。
また、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【符号の説明】
【0033】
1 本体ボディ
2 高圧側フランジ
3 低圧側フランジ
10 圧力導入室
11 圧力導入室
20 絶対圧測定装置
21 補正演算回路
22 絶対圧測定装置回動手段
221 載置ステージ
222 傾斜センサ
223 モータ
224 制御回路
図2
図3
図1
図4
図5
図6