(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガスバーナに連通するガス通路に上下方向に設けられた挿入部に、該挿入部の軸線に沿って往復移動自在に挿入され、往復移動することにより前記ガス通路の開度を調整する弁体と、
弱火力位置から強火力位置までの間を往復移動自在に設けられた火力調節レバーと、
前記火力調節レバーの往復移動操作に応じて、前記弁体を往復移動させるカム機構と
を備え、
前記火力調節レバーの操作により、前記ガスバーナへのガス供給量を調節可能とした火力調節装置において、
前記カム機構は、
前記ガス通路外で前記弁体に設けられたピンと、
前記ピンが挿通される挿通部を有し、当該挿通部の内面における下側面である摺動面で前記ピンが摺動する摺動部材と
を備え、
前記摺動面において、前記火力調節レバーが所定火力に操作されたときに対応する所定位置に非連続部が設けられたことを特徴とする火力調節装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の火力調節装置では、操作ピンはカム操作孔に対して下方から上方に挿通されている。それ故、操作ピンが摺動する摺動面はニードルの移動方向によって異なる。従って、カム操作孔には、ニードルを火力減少側に移動させるときに操作ピンが摺動する火力減少側の摺動面としての大径側内面と、ニードルを火力増大側に移動させるときに操作ピンが摺動する火力増大側の摺動面としての小径側内面とが各々設けられている。凹部は大径側内面に設けられているが、ニードルを火力増大側に移動させるときは、操作ピンは大径側内面を摺動しない。この場合、操作ピンは凹部に入り込むことができないのでクリック感は得られない。例えば火力調節操作具を一旦逆方向に戻すことで、凹部に操作ピンを入り込ませることも考えられるが、それでは調整に時間がかかってしまう。
【0007】
また、何れの摺動面にも凹部を夫々設けることが考えられるが、カム操作孔は所定幅を有するので、例えば、対向する同じ位置に凹部をそのまま設けたとしても、ニードルの位置はずれてしまい、弱火力側から合わせた場合と、強火力側から合わせた場合とで、火力にズレを生じてしまう虞があった。例えば、上記ガスコンロにて炊飯制御を行う場合、使用者が火力調節レバーを炊飯火力位置に合わせて点火操作を行った後は、ガスコンロ側の制御部が最初に合わせた炊飯火力位置の火力を基準として、炊飯の状態に応じて火力の自動調節を行う。それ故、使用者が火力調節レバーを弱火力側から操作したか、又は強火力側から操作したかによって、基準となる火力にズレを生じた場合、その後の炊飯制御を適切に行うことができない可能性があった。
【0008】
また、操作ピンが何れの摺動面の凹部に入り込んだ場合でも同じ火力となるように、各凹部の位置調整ができたとしても、量産によって生じる製造誤差により、各凹部の互いの位置関係は少なからず変化してしまうため、炊飯調理のような厳密な火力制御には適さないという問題点もあった。
【0009】
本発明の目的は、火力調節レバーを何れの方向に操作した場合でも、所定火力に操作されたときに確実にクリック感を得ることができる火力調節装置及びガス加熱調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る火力調節装置は、ガスバーナに連通するガス通路に上下方向に設けられる挿入部に、該挿入部の軸線に沿って往復移動自在に挿入され、往復移動することにより前記ガス通路の開度を調整する弁体と、弱火力位置から強火力位置までの間を往復移動自在に設けられた火力調節レバーと、前記火力調節レバーの往復移動操作に応じて、前記弁体を往復移動させるカム機構とを備え、前記火力調節レバーの操作により、前記ガスバーナへのガス供給量を調節可能とした火力調節器において、前記カム機構は、前記ガス通路外で前記弁体に設けられたピンと、前記ピンが挿通される挿通部を有し、当該挿通部の内面における下側面である摺動面で前記ピンが摺動する摺動部材とを備え、前記摺動面において、前記火力調節レバーが所定火力に操作されたときに対応する所定位置に非連続部が設けられている。
【0011】
また請求項2に係る発明の火力調節装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記カム機構は、前記ピンを前記摺動面に押し付けるように付勢する付勢手段を備えている。
【0012】
また請求項3に係る発明の火力調節装置は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記非連続部は段差であることを特徴とする。
【0013】
また請求項4に係る発明のガス加熱調理器は、請求項1から3の何れかに記載の火力調節装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明の火力調節装置では、弁体は上下方向に設けられる挿入部に、往復移動自在に挿入されているので、自重によって下方に移動する。それ故、弁体に設けられたピンの先端部を、挿通部の摺動面に常に接触させることができる。従って、ピンの先端部は摺動面から離間しないので、ピンが摺動面に設けた非連続部に位置したときに確実にクリック感を感じさせることができる。
【0015】
また請求項2に係る発明の火力調節装置では、請求項1に記載の発明の効果に加え、付勢手段によってピンは摺動面に対してさらに押し付けられる。それ故、ピンは摺動面に沿って確実に摺動することができる。
【0016】
また請求項3に係る発明の火力調節装置では、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、非連続部は段差であるので、ピンが段差に位置したときに、使用者に対して適度なクリック感を感じさせることができる。
【0017】
また請求項4に係る発明のガス加熱調理器では、記請求項1から3の何れかに記載の効果が得られるガス加熱調理器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。以下に記載されている装置の構造などは、特に特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。なお、以下説明において、
図2の左方、右方、紙面手前方向、紙面奥行き方向を、夫々、火力調節装置3の前方、後方、右方、左方とする。
図3の右方、左方、紙面手前側、紙面奥行き側を、夫々、火力調節装置3の右方、左方、前方、後方とする。
図4の左方、右方は、夫々、火力調節装置3の前方、後方とする。
【0020】
図1を参照して、ガスコンロ1の外観構造について説明する。ガスコンロ1は、略直方体状の器具2を備える。器具2の天面4右側には右バーナ5、左側には左バーナ6が設けられている。天面4の後ろ側には排気口9が設けられている。排気口9はスリット状である。排気口9は器具2内に設けられたグリル庫(図示略)内に連通する。器具2前面中央にはグリル開口(図示略)が設けられている。グリル開口はグリル庫に連通する。グリル開口にはグリル扉13が前後方向に引き出し可能に設けられている。グリル扉13を手前側に引き出すと、グリル扉13の背面下部に連結した受け皿(図示略)及び焼き網を取り出すことができる。
【0021】
器具2前面において、グリル扉13の右側には、操作ボタン15,16が各々設けられている。グリル扉13の左側には、操作ボタン17が設けられている。操作ボタン15は右バーナ5を点火又は消火する為に押下される。操作ボタン16はグリル庫内のグリルバーナ(図示略)を点火又は消火する為に押下される。操作ボタン17は左バーナ6を点火又は消火する為に押下される。
【0022】
操作ボタン15〜17の上側には、火力調節つまみ15A、16A,17Aが各々設けられている。火力調節つまみ15A〜17Aは、スライド回動操作によって火力を調節可能である。器具2前面における火力調節つまみ15Aの下側の所定位置には、炊飯火力マーク19が印刷されている。炊飯火力マーク19は、例えば右バーナ5を用いて炊飯を行う際に、炊飯火力に調節できる火力調節つまみ15Aの位置を示す目印である。なお、本実施形態では、火力調節つまみ15Aが炊飯用の火力位置を通過する際に、軽い引っかかり感、所謂クリック感が付与される。
【0023】
器具2内部の前側であって、操作ボタン15〜17に夫々対応する各位置には、火力調節装置3(
図2,
図3参照)が夫々設けられている。例えば、右バーナ5に対応する火力調節装置3は、火力調節つまみ15Aのスライド回動操作に応じて、右バーナ5に供給するガス量を調節する。
図1に示すように、操作ボタン17の左側には電池ボックス18が設けられている。電池ボックス18はガスコンロ1の電源を供給する乾電池を格納する。
【0024】
図2,
図3を参照して、火力調節装置3の構造について説明する。なお、ここでは右バーナ5に対応する火力調節装置3について説明する。火力調節装置3は、点火消火機構100、ガス量増減機構200、及び火力調節機構300を備える。点火消火機構100は、火力調節装置3の下部に設けられ、操作ボタン15の押圧操作により右バーナ5の点火消火を行う為の機構である。ガス量増減機構200は、火力調節装置3の中央に設けられ、火力調節つまみ15Aのスライド回動操作に応じて右バーナ5に供給されるガス量の増減を行う為の機構である。火力調節機構300は、火力調節装置3の上部に設けられ、ガス量増減機構200のガス量増減の調節を行い、右バーナ5の火力調節を行う為の機構である。さらに
図3に示すように、火力調節装置3は火力リセット部材90を備える。火力リセット部材90は、点火消火機構100による点火時動作において、右バーナ5の火力を点火に必要かつ安全な火力である中火力にリセットする為の部材である。
【0025】
図2を参照して、点火消火機構100について説明する。点火消火機構100は、バルブボディ25、スピンドル26、移動部材27、戻しバネ28、メイン弁29、及びマグネット式安全弁30等を備える。バルブボディ25は、火力調節装置3の下部に設けられ、前後方向に延出する略円筒状の部材である。バルブボディ25は内部にガス流路を備える。ガス流路はバルブボディ25の軸方向に延設する。スピンドル26はバルブボディ25のガス流路内に挿入され、該流路に沿って進退可能である。移動部材27は、バルブボディ25の前端部に設けられる。移動部材27は、操作ボタン15の押下操作によって、スピンドル26を後方に押す。戻しバネ28はスピンドル26を前方へ付勢する。メイン弁29はスピンドル26に固着してある。メイン弁29は、操作ボタン15による点火操作により後述する吐出口32へのガス流路を開閉する。マグネット式安全弁30は、点火操作により押下されてガス流路を開き、バーナ燃焼時の熱起電力によって開弁状態に保持する。
【0026】
マグネット式安全弁30の下部近傍には、ガス流入口31が設けられている。ガス流入口31は下方に向かって開口する。ガス流入口31は、バルブボディ25のガス流路内にガスを流入させる。メイン弁29の下流側近傍には、吐出口32が設けられている。吐出口32は上方に向かって開口する。吐出口32には、ガス量増減機構200の後述するガス供給管43が接続されている。吐出口32から吐出するガスはガス供給管43に流れる。
【0027】
バルブボディ25の前面側には、ケーシング35が設けられている。ケーシング35は、バルブボディ25と同軸上に配置され、前方に開口する略円筒状である。ケーシング35内には、移動部材27がプッシュバネ36を介して嵌め込まれている。移動部材27の下部にはプッシュプッシュ機構38が設けられている。プッシュプッシュ機構38は、点火時と消火時とで交互に移動部材27の進退位置を決定する。
【0028】
プッシュプッシュ機構38は、点火操作における操作ボタン15の押圧を開放すると、メイン弁29を開弁したまま、マグネット式安全弁30を閉弁可能状態とする位置まで後退して移動部材27を係止する。また、消火操作における操作ボタン15の押圧を開放すると、移動部材27の係止を解除し、所定ストロークだけ前方(
図2の左方向)にスピンドル26を戻してメイン弁29を閉弁させる。プッシュプッシュ機構38の後方には、移動部材27の進退と連動してオンオフする点火スイッチ(図示略)が設けられている。
【0029】
図2を参照して、ガス量増減機構200について説明する。ガス量増減機構200は、点火消火機構100と火力調節機構300との間に設けられている。ガス量増減機構200は、上下方向に機体40を備える。機体40は内部に、ニードル部41とガス供給管43を備える。ニードル部41は、火力調節つまみ15Aのスライド回動動作に連動して、右バーナ5に供給するガス流量を調節する。ガス供給管43は、ニードル部41の流入口44と、点火消火機構100の吐出口32との間に接続されている。ガス供給管43は、ニードル部41にガスを流入させる。
【0030】
図4を参照して、ニードル部41の内部構造について説明する。ニードル部41は、弁摺動部45とガス吐出部46を内部に備える。弁摺動部45は上下方向に延設された管路である。ガス吐出部46は、弁摺動部45の途中に設けられた連結部47と連結し、後方に対して斜め上方に延出する管路である。よって、弁摺動部45とガス吐出部46は、連結部47を介して互いに連通する。
【0031】
弁摺動部45には、ニードル弁51が摺動自在に挿入されている。ニードル弁51は上下方向に長い棒状であり、その下方に延びる先端側は漸次細くなっている。ニードル弁51の先端部には、弁穴51A,51Bが設けられている。弁穴51Bは、ガス吐出部46に連通している。弁穴51A,51Bは、弱火力におけるガスの最小流量を確保する。なお、ガス供給管43及び弁摺動部45が本発明のガス流路の一例である。ニードル弁51の上端部は、ニードル部41の弁摺動部45の上端の開口から突出する。ニードル弁51の上端部と、後述するブラケット70の天壁74下面との間には、圧縮バネ91が設けられている。それ故、ニードル弁51は下方に常時付勢された状態である。
【0032】
ニードル弁51の上端部には、ニードルピン52が設けられている。ニードルピン52は、ニードル弁51の軸線方向に対して直交して連結され、火力調節装置3の前方に延出している。ニードルピン52は、後述する火力調節レバー60の回動動作によって操作され、後述するブラケット70のカム溝81によって上下方向に移動される。故にニードル弁51は、ニードル部41の弁摺動部45内を上下方向に移動する。なお、ニードル弁51の外周面にはグリスが塗布されている。
【0033】
そして、ニードル弁51が弁摺動部45内を上下方向に移動すると、ガス供給管43からガス吐出部46へ流れるガスの通路面積が増減する。従って、ニードル弁51の弁開度が調節され、右バーナ5に供給されるガス量が調節される。なお、ニードル部41における具体的な弁開閉動作については後述する。
【0034】
図2,
図3を参照して、火力調節機構300について説明する。火力調節機構300は、ガス量増減機構200の上部に設けられている。火力調節機構300は、火力調節レバー60とブラケット70を備える。火力調節レバー60は左右方向におけるスライド回動動作によって右バーナ5の火力調節を行う。ブラケット70は、火力調節レバー60を回動可能に軸支し、火力調節機構300をガス量増減機構200の上部に固定する。
【0035】
図3を参照して、火力調節レバー60について説明する。火力調節レバー60は、被軸支部61、段部62、及び前方延設部63を備える。被軸支部61は、ブラケット70上面に形成された支点部96を支点に回動自在に軸支された略水平の板状部分である。段部62は被軸支部61の前端部から鉛直下方に折り返された板状部分である。前方延設部63は、段部62の下端部から前方に延設された部分である。前方延設部63の先端部には、さらに前方に突出するつまみ固定部63Aが設けられている。つまみ固定部63Aには、火力調整つまみ15Aが固定される。
【0036】
被軸支部61の左右両端部には、左右側方に夫々延出する被係止部69が各々設けられている。例えば、左側の被係止部69には、火力リセット部材90の上端部に設けられた後述する係止部92が後方から係止している。係止部92が被係止部69を前方に付勢すると、火力調節レバー60は右方に回動する。
【0037】
被軸支部61の前端部の幅方向中央部から、段部62の幅方向中央部を介して、前方延設部の後端部の幅方向中央部までの部分には、長方形状の開口65が設けられている。開口65の内側には、フォーク状部67が設けられている。フォーク状部67は、2本の突起部67A,67Bを備える。突起部67A,67Bは開口65の上縁部から下方に延設されている。これら突起部67A,67Bに挟まれる隙間には、その延設方向に沿って設けられた切り込み溝68が形成されている。切り込み溝68の内側には、ニードル弁51のニードルピン52の先端部が係合している。ニードルピン52の先端部は、切り込み溝68に沿って上下方向に往復移動可能である。
【0038】
図4,
図5を参照して、ブラケット70の構造について説明する。ブラケット70は底面と背面が開口する略直方体状の箱体である。ブラケット70は、前壁71、右側壁72、左側壁73、及び天壁74を備える。右側壁72の下端部には、右側方に向かって略直角に延出する板状の固定部75が設けられている。固定部75には、機体40の上面に螺子(図示略)で固定する為の固定穴75Aが設けられている。左側壁73の下端部には、左側方に向かって略直角に延出する板状の固定部76が設けられている。固定部76にも、機体40の上面に螺子106(
図3参照)で固定する為の固定穴76Aが設けられている。天壁74の後部には、支点部96を固定する為の固定穴74Aが設けられている。
【0039】
そして、前壁71の略中央には、カム溝81が形成されている。カム溝81は、正面視略逆三角形の切り欠き状の溝である。カム溝81の左下部分は開口している。カム溝81の下側面であって該開口から右斜め上方に傾斜する部分は、摺動面82を形成する。摺動面82の長手方向略中央部には、段差部85が設けられている。段差部85は、例えば右側から左側に向かって一段高くなった段差を形成している。なお、これとは逆に、左側から右側に向かって一段高くなった段差でもよい。このようなカム溝81の内側に、ニードルピン52の先端部が挿入される。
【0040】
上述のように、ニードル弁51は、上下方向に設けられた弁摺部45内に、該弁摺部45の軸線に沿って往復移動自在に挿入されているので、自重によって下方に移動する。さらに、ニードル弁51は圧縮バネ91(
図4参照)によって下方に付勢されている。従って、ニードルピン52の先端部は、カム溝81の摺動面82に常時押し当てられた状態である。火力調節レバー60の回動動作によってニードルピン52が操作されると、ニードルピン52は摺動面82に沿って摺動する。ニードルピン52は傾斜する摺動面82に沿って移動することで、上下方向に位置を変える。故にニードル弁51は上下方向に移動することができる。
【0041】
図3を参照して、火力リセット部材90について説明する。火力リセット部材90は、ガス量増減機構200の機体40に設けられた略水平に延出する円筒状の軸支部48の一端部に対して、螺子105を介して回動可能に軸支されている。火力リセット部材90は、上下方向に延出する板状部材である。火力リセット部材90の上端部には、係止部92が設けられている。係止部92は上方に突出している。係止部92は、火力調節レバー60の被係止部69に対して後方から係止する。火力リセット部材90の下端部には、被押下部93が設けられている。被押下部93は右側方に略直角に折り返されて形成されている。被押下部93は、点火消火機構100の移動部材27に設けられた押下部27Aに対向する位置にある。
【0042】
例えば、使用者が右バーナ5を点火する為に、操作ボタン15を押下する。移動部材27は後方に押し込まれる。移動部材27の押下部27Aは、火力リセット部材90の被押下部93を後方に押し込む。火力リセット部材90は、軸支部48を中心に、左側面視時計回りに回動する。火力リセット部材90の係止部92は前方に移動し、火力調節レバー60の被係止部69を前方に押し込む。火力調節レバー60は、支点部96を中心に右側に回動し、例えば中火力位置にリセットされる。従って、右バーナ5の点火時において、一定以上のガスを右バーナ5に供給できるので、ミスなく確実に着火させることができる。
【0043】
図3,
図4,
図6を参照して、ニードル弁51の弁開閉動作について説明する。
図3に示すように、使用者は火力調節つまみ15Aを回動する。火力調節レバー60は、支点部96を中心に回動する。このとき、火力調節レバー60のフォーク状部67は、ニードルピン52の先端部を、切り込み溝68の内側に挟持しながら一方向へ移動させる。すると、ニードルピン52の先端部は、フォーク状部67の動作によって、支点部96を中心に回動する。ここで、ニードル弁51は圧縮バネ91によって下方に常時付勢されている。よって、ニードルピン52の先端部は、カム溝81の摺動面82に押し当てられた状態である。従って、ニードルピン52の先端部は、火力調節レバー60の回動に伴い、摺動面82に沿って摺動する。
【0044】
例えば、火力調節レバー60が弱火力側から強火力側に操作される場合、
図6に示すように、ニードルピン52は、フォーク状部67(
図3参照)によって、カム溝81の摺動面82を左側から右側に上る方向に移動させられる。すると、ニードルピン52は、その摺動面82によって上方に徐々に移動する。故にニードルピン52に連結されたニードル弁51(
図4参照)は、ニードル部41の弁摺動部45の上部に向かって回転しながら移動する。よって、ニードル部41では、弁開度が広く調節される。ニードル部41のガス吐出部46から吐出されるガス量が増加する。よって、右バーナ5の火力は強火力に設定される。
【0045】
一方、火力調節レバー60が強火力側から弱火力側に操作される場合、
図6に示すように、ニードルピン52は、フォーク状部67によって、カム溝81の摺動面82を右側から左側に下る方向に移動させられる。すると、ニードルピン52は、その摺動面82によって下方に徐々に移動する。故にニードルピン52に連結されたニードル弁51(
図4参照)は、ニードル部41の弁摺動部45の下部に向かって回転しながら移動する。よって、ニードル部41では、弁開度が狭く調節される。ニードル部41のガス吐出部46から吐出されるガス量が減少する。よって、右バーナ5の火力は弱火力に設定される。
【0046】
このようにして、カム溝81では、ニードルピン52の回動量が、ニードル弁51の軸線方向の移動量に変換される。これにより、ニードル部41におけるニードル弁51の弁開度の調節が行われる。そして、ニードル弁51の弁開度が調節されることにより、ガス供給管43から、ガス吐出部46に抜けるガス通路面積が増減する。従って、使用者は、火力調節レバー60を調節することにより、右バーナ5に供給されるガス量を自由に調節できる。
【0047】
なお、ニードル部41において、弁摺動部45におけるニードル弁51の位置が、最上位置にある場合に最大開度となり、最低位置にある場合に最小開度となる。また、ニードル弁51が最低位置にあり、ニードル部41における弁開度が完全に閉塞された場合でも、ニードル弁51の弁穴51A,51Bをガスが通過する。これにより最小のガス流路が確保されるため、右バーナ5の消火を防止する。
【0048】
図6を参照して、右バーナ5の火力を炊飯用の火力(所定の火力)に調節する場合において、火力調節つまみ15Aから得られるクリック感について説明する。カム溝81の摺動面82には、段差部85を設けている。段差部85の位置は炊飯火力位置である。炊飯火力位置は、例えば炊飯の火力に必要なガス量を右バーナ5に供給する際のニードルピン52の位置である。例えば、使用者が右バーナ5において炊飯を行う為に、火力調節レバー60を強火力位置側から炊飯火力位置に操作する場合について説明する。この場合、ニードルピン52は摺動面82を右側から左側に向かって摺動する。ニードルピン52は段差部85において軽い衝撃を受ける。その衝撃はニードルピン52からフォーク状部67、火力調節レバー60、火力調節つまみ15Aの順に伝わり、使用者の指に独特なクリック感として伝わる。従って、使用者はクリック感の得られた位置が炊飯火力位置であることがわかるので、右バーナ5の火力を炊飯火力に確実かつ速やかに調節できる。なお、火力調節レバー60を弱火力位置側から炊飯火力位置に操作する場合も同様である。
【0049】
このように、ニードルピン52が段差部85を通過する際に、ニードルピン52の挙動はそれまでの挙動から突如変化する。この変化は使用者に対して軽い衝撃感として使用者に直感的に認識させる。さらに、段差部85を段差形状にしたことで、ニードルピン52が引っ掛かって動かなくなってしまうことも無い。また、ニードルピン52の径に対して段差を小さくすることで、ニードルピン52に付与する衝撃を小さくできる。それ故、自然なクリック感として火力調節つまみ15Aに伝えることができる。
【0050】
また本実施形態では特に、ニードル弁51は、ニードル部41の弁摺動部45内を上下方向に挿入されているので、自重によって下方に移動する。それ故、ニードルピン52の先端部を、カム溝81の摺動面82に常に接触させることができる。さらに、ニードル弁51を圧縮バネ91によって下方に付勢しているので、ニードルピン52の先端部を、摺動面82に確実に押し当てることができる。従って、例えば火力調節つまみ15Aの操作が素早くても、ニードルピン52の先端部は摺動面82から離間しない。よって、ニードルピン52の先端部を段差部85に確実に接触させることができるので、炊飯火力位置では確実にクリック感を得ることができる。
【0051】
例えば、ガスコンロ1にて炊飯制御を行う場合、使用者が火力調節レバー60を炊飯火力位置に合わせて点火操作を行った後は、ガスコンロ1側の制御部が最初に合わせた炊飯火力位置の火力を基準として、その後の炊飯の状態に応じて火力の自動調節を行う。本実施形態では、使用者が弱火力側及び強火力側の何れから操作した場合でも、炊飯火力位置にて確実にクリック感を得ることができる。従って、使用者がクリック感を得たときの位置に、火力調節レバー60を合わせることによって、炊飯制御の基準となる最初の火力を所定の炊飯火力に確実に合わせることができ、その後の炊飯制御を適切に行うことができる。
【0052】
また本実施形態では特に、ニードルピン52の先端部が摺動する摺動面82は1つだけであるので、段差部85を複数設ける必要がない。よって、摺動面82における段差部85の位置決めが容易である。そして、火力調節レバー60を、弱火力側及び強火力側の何れの方向から操作しても、炊飯火力位置に合わせたときの火力にずれが生じないので、その後の厳密な火力制御を適正に実行できる。
【0053】
上記説明において、弁摺動部45が本発明の「挿入部」の一例である。ニードル弁51が本発明の「弁体」の一例である。ニードルピン52が本発明の「ピン」の一例である。カム溝81が本発明の「挿通部」の一例である。ブラケット70が本発明の「摺動部材」の一例である。段差部85が本発明の「非連続部」の一例である。圧縮バネ91が本発明の「付勢手段」の一例である。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のガスコンロ1は火力調節装置3を備えている。火力調節装置3は、ガスバーナに連通するガス通路に上下方向に設けられる弁摺動部45に、弁摺動部45の軸線に沿って、ニードル弁51が往復移動自在に挿入されている。ニードル弁51は往復移動することによりガス通路の開度を調整する。火力調節レバー60は弱火力から強火力までの間を往復移動自在に設けられている。火力調節装置3のカム機構を備える。カム機構は、火力調節レバー60の往復移動操作に応じて、ニードル弁51を往復移動させる。カム機構は、ニードル弁51に設けられたニードルピン52を、ブラケット70に設けられたカム溝81に挿通させている。ニードルピン52は、カム溝81の下側面である摺動面82を摺動する。
【0055】
ニードルピン52は、ニードル弁51の自重により、カム溝81の摺動面82に押し当てられている。摺動面82には段差部85を設けている。段差部85の位置は、炊飯火力位置に対応している。従って、火力調節レバー60が例えば炊飯火力位置に達した時に、火力調節レバー60にクリック感として感じさせることができる。それ故、火力調節レバー60が炊飯火力位置に達したことを使用者に直感的に認識させることができる。従って、目印だけによるものに比べ、所定位置への位置合わせを確実かつ容易に行わせることができる。
【0056】
なお本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、摺動面82に段差部85を設けているが、段差でなく、例えば溝形状であってもよい。所定位置の前後においてニードルピン52の挙動が突如変わるような非連続部であるのが好ましい。
【0057】
また上記実施形態では、右バーナ5に対応する火力調節装置3について説明したが、左バーナ6、グリルバーナに対応する火力調節装置にも本発明は適用可能である。
【0058】
また上記実施形態では、器具2前面に、炊飯火力マーク19を目印として印刷しているが、無くてもよい。
【0059】
また上記実施形態では、炊飯火力位置に段差部85を設けているが、炊飯火力以外の所定の火力に段差部を設けてもよい。さらに段差部は複数でもよい。
【0060】
また上記実施形態では、本発明のガス加熱調理器として、テーブルコンロであるガスコンロ1を一例として説明したが、ビルトインコンロにも適用可能である。またコンロ以外のガス加熱調理器にも適用可能である。