(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806186
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】推進力伝達機構及び管路構築方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
E21D9/06 311Z
E21D9/06 311C
E21D9/06 301Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-197872(P2012-197872)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-51839(P2014-51839A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2014年7月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔発行者名〕 株式会社LSプランニング 〔刊行物名〕 月刊推進技術 〔号数及び発行年月日〕 第297号 平成24年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門口 達彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英典
(72)【発明者】
【氏名】星 智久
(72)【発明者】
【氏名】木下 茂樹
【審査官】
越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−057128(JP,A)
【文献】
特開平08−121078(JP,A)
【文献】
特開2001−200689(JP,A)
【文献】
特開平07−054577(JP,A)
【文献】
特開2008−101450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進立坑から始まる推進工法区間では推進工法によって推進管を用いて管路を構築し、前記推進工法区間から到達立坑までのシールド工法区間ではシールド工法によってセグメント管を用いて管路を構築する管路構築方法において、前記発進立坑に設置した元押しジャッキの推進力を掘削機内部のシールドジャッキに伝達するための推進力伝達機構であって、
後側面の外形が前記推進管の前後側面外形と略一致し、前側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、先頭に位置する前記推進管の前側面と後側面が当接して当該推進管と接続されるアダプタ管と、
前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、前記アダプタ管の前側面と後側面が当接して当該アダプタ管に接続され、複数に分割可能な調整管と、
一部材からなるリング状の平板から形成され、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、後側面が前記調整管の前側面に当接して当該調整管に接続される定規リングと、
前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、前記定規リングの前側面と後側面が当接して当該定規リングに接続され、前記シールドジャッキの後端部と前側面が当接して、複数に分割可能な接続管とから構成されることを特徴とする推進力伝達機構。
【請求項2】
前記接続管を構成する各ピースに、当該各ピースと前記掘削機のスキンプレートとの間隔を調整可能な間隔調整手段が設けられることを特徴とする請求項1に記載の推進力伝達機構。
【請求項3】
発進立坑から始まる推進工法区間では推進工法によって推進管を用いて管路を構築し、前記推進工法区間から到達立坑までのシールド工法区間ではシールド工法によってセグメント管を用いて管路を構築する管路構築方法であって、
前記推進工法区間では、
後側面の外形が推進管の前後側面外形と略一致し、前側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致するアダプタ管の後側面を先頭に位置する前記推進管の前側面と当接させて、前記アダプタ管と当該推進管とを接続し、
前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、複数に分割可能な調整管の後側面を前記アダプタ管の前側面と当接させて、前記調整管と前記アダプタ管とを接続し、
一部材からなるリング状の平板から形成され、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致する定規リングの後側面を前記調整管の前側面に当接させて、前記定規リングと前記調整管とを接続し、
前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、複数に分割可能な接続管の後側面を前記定規リングの前側面とが当接させて、前記接続管と前記定規リングとを接続し、
且つ、掘削機内部のシールドジャッキの後端部と前記接続管の前側面とを当接させた状態で、
前記アダプタ管、前記調整管、前記定規リング及び前記接続管からなる推進力伝達機構を介して、前記発進立坑に設置した元押しジャッキの推進力を前記シールドジャッキに伝達し、
前記推進工法を完了した後、前記接続管を除去し、
前記定規リングの前側面に複数のセグメントを接続して、前記セグメント管を構築し、
前記シールド工法区間では、
前記シールドジャッキの推進反力を先頭の前記セグメント管で受けながら、前記シールドジャッキを伸長させて前記掘削機を前進させ、その後、前記シールドジャッキを短縮させて、前記先頭のセグメント管の前側面に複数のセグメントを接続して、新たなセグメント管を構築することを特徴とする管路構築方法。
【請求項4】
前記接続管の前後方向の長さが、前記定規リングに接続される前記セグメント管の前後方向の長さと略同一であることを特徴とする請求項3に記載の管路構築方法。
【請求項5】
発進立坑から始まる推進工法区間では推進工法によって推進管を用いて管路を構築し、前記推進工法区間から到達立坑までのシールド工法区間ではシールド工法によってセグメント管を用いて管路を構築する管路構築方法であって、
前記推進工法区間では、
後側面の外形が推進管の前後側面外形と略一致し、前側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致するアダプタ管の後側面を先頭に位置する前記推進管の前側面と当接させて、前記アダプタ管と当該推進管とを接続し、
前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、複数に分割可能な調整管の後側面を前記アダプタ管の前側面と当接させて、前記調整管と前記アダプタ管とを接続し、
一部材からなるリング状の平板から形成され、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致する定規リングの後側面を前記調整管の前側面に当接させて、前記定規リングと前記調整管とを接続し、
前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、複数に分割可能な接続管の後側面を前記定規リングの前側面とが当接させて、前記接続管と前記定規リングとを接続し、
且つ、掘削機内部のシールドジャッキの後端部と前記接続管の前側面とを当接させた状態で、
前記アダプタ管、前記調整管、前記定規リング及び前記接続管からなる推進力伝達機構を介して、前記発進立坑に設置した元押しジャッキの推進力を前記シールドジャッキに伝達し、
前記推進工法を完了した後、前記シールドジャッキの推進反力を先頭の前記接続管で受けながら、前記シールドジャッキを伸長させて前記掘削機を前進させ、その後、前記シールドジャッキを短縮させて、前記接続管の前側面に複数のセグメントを接続して、前記セグメント管を構築し、
シールド工法区間では、
前記シールドジャッキの推進反力を前記先頭のセグメント管で受けながら、前記シールドジャッキを伸長させて前記掘削機を前進させ、その後、前記シールドジャッキを短縮させて、前記先頭のセグメント管の前側面に複数のセグメントを接続して、新たなセグメント管を構築することを特徴とする管路構築方法。
【請求項6】
前記調整管の前後方向の長さが、前記接続管に接続される前記セグメント管の前後方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項5に記載の管路構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進力伝達機構、詳しくは、推進工法とシールド工法とを併用したハイブリッド推進工法に適した推進力伝達機構に関する。また、本発明は、この推進力伝達機構を用いた管路構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、トンネルを形成するために、土砂を掘削し地中に管路をする構築方法として、推進工法とシールド工法とが知られている。
【0003】
推進工法は、発進立坑に推進ジャッキ(元押しジャッキ)を設置し、推進ジャッキで管体(推進管)を前進させ、管体の後端に新たな管体を設置する工法である。
【0004】
シールド工法は、掘削機本体に推進ジャッキ(シールドジャッキ)を設置し、推進ジャッキで掘削機本体を前進させ、シールドジャッキの後方と管体(セグメント管)先端の間に新たな管体を設置する工法である。掘削機内に管体を複数のセグメントに分解して搬入し、掘削機内部の組み立て装置(エレクタ)で管体を組み立てる。
【0005】
シールド工法においては、推進ジャッキは掘削機本体だけを前進させる。一方、推進工法においては、推進ジャッキは、掘削機本体、及び推進ジャッキから掘削機本体にまで至る全ての推進管を前進させる必要がある。よって、推進工法は、シールド工法と比較して、大口径や長距離の管路を構築するには不適である。そして、推進工法は、シールド工法と比較して、急曲線の管路を構築することが困難である。
【0006】
しかし、推進工法は、推進管が最初から筒状であり、推進管同士の接続も容易である。シールド工法は、掘削機本体の内部でセグメントからセグメント管を組み立てる必要がある。また、セグメント管は推進管に比較して短いので、セグメント管は推進管よりも多くの個数を必要とする。よって、シールド工法は、推進工法と比較して、工期が長く、コストが高くなる。
【0007】
このように、推進工法は、シールド工法と比較して工期及び費用の点で優れている。そのため、大口径、長距離、急曲線など、もともとシールド工法によって管路を構築することが適当である考えられる施行案件においても、推進工法の適用が検討されることがある。推進工法の改良によって推進工法にとって不利とされたきた条件はある程度まで解消できるようになったが、それでも、推進工法では掘進不能に陥るおそれがある。
【0008】
そのため、発進立坑から推進工法で所定の距離までは掘削し、その後の掘削はシールド工法に変更する「ハイブリッド推進工法」が考案されている。
【0009】
ハイブリッド推進工法では、発進立坑内の反力設備と推進ジャッキは推進工法のものを使用し、掘削機本体はシールド工法で使用する掘削機を使用する。推進工法中の推進力は掘削機内部の推進ジャッキ(シールドジャッキ)で受け、シールド工法に移行した後は通常のシールド工法と同様にして施工する。
【0010】
推進管は、掘削機の後方に位置し、その外径は掘削機本体と略同一である。これに対し、セグメント管は、掘削機本体の内部で組み立てるため、その外径は掘削機本体および推進管の外径よりも小さい。また、推進工法とシールド工法とでは、掘削機の推進時に管体にかかる反力とその制御方法に大きな違いがある。ハイブリッド推進工法ではこれら後方による差異を解消する必要がある。
【0011】
そこで、例えば、特許文献1に記載の技術では、推進管の先端部を補強リングで補強し、補強リングとセグメント管(内リング)の後端との間に接続リングを設けている。また、セグメント管は、掘削機の内部で組み立てられ、推進ジャッキ(シールドジャッキ)に当接させている。
【0012】
特許文献2に記載の技術では、推進管とセグメント管の外径差を解消するためにアダプタリングを設置し、これとシールドジャッキとの間にセグメント管と推力伝達リングを設置している。また、推力伝達リングは推進管のスキンプレートとの間にスペーサを設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第2693904号公報
【特許文献2】特開2008−057128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
推進工法における推進力は、推進管とその周囲の地盤との摩擦状態によって変化するので、微細な制御が不可能である。よって、設計値に比較して大きな推進力が推進管にかかることがある。そのため、特許文献1に記載の内リングや特許文献2に記載のアダプタリング及び推力伝達リングに、推進工法における推進力によって、それら自体又はそれらの接合部に歪み、撓み、割れ、欠けなどが生じるおそれがある。
【0015】
これらのリングに歪みなどが生じた場合、シールド工法に移行した後、これらの前側に接続されるセグメント管を真円に組み立てることができない。特にRCセグメント管の場合は、真円に組み立てられ拘束が十分な状態で本来の性能を発揮するため、歪みや撓みが生じたリングに接続した状態で大きな力が作用すると、割れや欠けが生じるおそれがある。
【0016】
本発明は、以上の点に鑑み、推進工法からシールド工法に移行したときに、セグメント管を真円に組み立てることが可能な既存建物と耐震用の補強フレームとを確実且つ安定的に連結することが可能な管路構築方法、及びこの方法に好適に用いられる推進力伝達機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の推進力伝達機構は、発進立坑から始まる推進工法区間では推進工法によって推進管を用いて管路を構築し、前記推進工法区間から到達立坑までのシールド工法区間ではシールド工法によってセグメント管を用いて管路を構築する管路構築方法において、前記発進立坑に設置した元押しジャッキの推進力を掘削機内部のシールドジャッキに伝達するための推進力伝達機構であって、後側面の外形が前記推進管の前後側面外形と略一致し、前側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、先頭に位置する前記推進管の前側面と後側面が当接して当該推進管と接続されるアダプタ管と、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、前記アダプタ管の前側面と後側面が当接して当該アダプタ管に接続され、複数に分割可能な調整管と、一部材からなるリング状の平板から形成され、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、後側面が前記調整管の前側面に当接して当該調整管に接続される定規リングと、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、前記定規リングの前側面と後側面が当接して当該定規リングに接続され、前記シールドジャッキの後端部と前側面が当接して、複数に分割可能な接続管とから構成されることを特徴とする。
【0018】
本発明の推進力伝達機構によれば、定規リングは一部材からなるので推進工法時に歪みや変形がほぼ生じない。そのため、接続管を除去して定規リングの前側面に接続させてセグメント管を組み立てたとき、歪みなどの無い正規の形状にセグメント管に組み立てることが可能となる。また、接続管は、一部材からなる定規リングの前側面に後側面が当接して当該定規リングに接続されるので、推進工法時に生じる歪みや変形が抑制される。そのため、接続管の前側面に接続させてセグメント管を組み立てたとき、歪みなどの無い正規の形状にセグメント管に組み立てることが可能となる。
【0019】
なお、本発明において、外形が略一致するとは、外形が完全に一致する他に、機能面を考慮して近似しているとみなせる場合を含む。具体的には、推進管の前後側面の外形とセグメント管の前後側面の外形との段差、即ち、これら推進管及びセグメント管の外形が円形である場合の外径段差の半分以下、好ましくは3分の1以下の範囲で近似する場合、本発明では略一致しているとみなす。
【0020】
本発明の推進力伝達機構において、前記
接続管を構成する各ピースに、当該各ピースと前記掘削機のスキンプレートとの間隔を調整可能な間隔調整手段が設けられることが好ましい。この場合、間隔調整手段で前記間隔を調整することによって、複数のピースで構成される調整管を正規の形状に保持することが容易になる。
【0021】
本発明の第1の管路構築方法は、発進立坑から始まる推進工法区間では推進工法によって推進管を用いて管路を構築し、前記推進工法区間から到達立坑までのシールド工法区間ではシールド工法によってセグメント管を用いて管路を構築する管路構築方法であって、前記推進工法区間では、後側面の外形が推進管の前後側面外形と略一致し、前側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致するアダプタ管の後側面を先頭に位置する前記推進管の前側面と当接させて、前記アダプタ管と当該推進管とを接続し、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、複数に分割可能な調整管の後側面を前記アダプタ管の前側面と当接させて、前記調整管と前記アダプタ管とを接続し、一部材からなるリング状の平板から形成され、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致する定規リングの後側面を前記調整管の前側面に当接させて、前記定規リングと前記調整管とを接続し、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、複数に分割可能な接続管の後側面を前記定規リングの前側面とが当接させて、前記接続管と前記定規リングとを接続し、且つ
、掘削機内部のシールドジャッキの後端部と前記接続管の前側面とを当接させた状態で、前記アダプタ管、前記調整管、前記定規リング及び前記接続管からなる推進力伝達機構を介して、前記発進立坑に設置した元押しジャッキの推進力を前記シールドジャッキに伝達し、前記推進工法を完了した後、前記接続管を除去し、前記定規リングの前側面に複数のセグメントを接続して、前記セグメント管を構築し、前記シールド工法区間では、前記シールドジャッキの推進反力を先頭の前記セグメント管で受けながら、前記シールドジャッキを伸長させて前記掘削機を前進させ、その後、前記シールドジャッキを短縮させて、前記先頭のセグメント管の前側面に複数のセグメントを接続して、新たなセグメント管を構築することを特徴とする。
【0022】
本発明の第1の管路構築方法によれば、定規リングは一部材からなるので推進工法時に歪みや変形がほぼ生じない。そのため、接続管を除去して定規リングの前側面に接続させてセグメント管を組み立てたとき、歪みなどの無い正規の形状にセグメント管に組み立てることが可能となる。
【0023】
本発明の第1の管路構築方法においては、接続管を除去したことにより生じたスペースにセグメント管を構築している。そのため、定規リングに接続されるセグメント管の前後方向の長さは、接続管の前後方向の長さ以下となる。そこで、施工効率を考慮すると、前記接続管の前後方向の長さが、前記定規リングに接続される前記セグメント管の前後方向の長さと略同一であることが好ましい。
【0024】
本発明の第2の管路構築方法は、発進立坑から始まる推進工法区間では推進工法によって推進管を用いて管路を構築し、前記推進工法区間から到達立坑までのシールド工法区間ではシールド工法によってセグメント管を用いて管路を構築する管路構築方法であって、前記推進工法区間では、後側面の外形が推進管の前後側面外形と略一致し、前側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致するアダプタ管の後側面を先頭に位置する前記推進管の前側面と当接させて、前記アダプタ管と当該推進管とを接続し、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、複数に分割可能な調整管の後側面を前記アダプタ管の前側面と当接させて、前記調整管と前記アダプタ管とを接続し、一部材からなるリング状の平板から形成され、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致する定規リングの後側面を前記調整管の前側面に当接させて、前記定規リングと前記調整管とを接続し、前後両側面の外形が前記セグメント管の前後側面の外形と略一致し、複数に分割可能な接続管の後側面を前記定規リングの前側面とが当接させて、前記接続管と前記定規リングとを接続し、且つ
、掘削機内部のシールドジャッキの後端部と前記接続管の前側面とを当接させた状態で、前記アダプタ管、前記調整管、前記定規リング及び前記接続管からなる推進力伝達機構を介して、前記発進立坑に設置した元押しジャッキの推進力を前記シールドジャッキに伝達し、前記推進工法を完了した後、前記シールドジャッキの推進反力を先頭の前記接続管で受けながら、前記シールドジャッキを伸長させて前記掘削機を前進させ、その後、前記シールドジャッキを短縮させて、前記接続管の前側面に複数のセグメントを接続して、前記セグメント管を構築しシールド工法区間では、前記シールドジャッキの推進反力を前記先頭のセグメント管で受けながら、前記シールドジャッキを伸長させて前記掘削機を前進させ、その後、前記シールドジャッキを短縮させて、前記先頭のセグメント管の前側面に複数のセグメントを接続して、新たなセグメント管を構築することを特徴とする。
【0025】
本発明の第1の管路構築方法によれば、定規リングは一部材からなるので推進工法時に歪みや変形がほぼ生じない。そして、接続管はこの定規リングの前側面に後側面が、調整管はこの定規リングの後側面に前側面がそれぞれ当接して当該定規リングに接続されるので、推進工法時に生じる歪みや変形が抑制される。そのため、定規リングの前側面に接続させてセグメント管を組み立てたとき、調整管の歪みや変形が少なく、さらに定規リングに接続することで歪みなどの無いセグメント管に正規の形状に組み立てることが可能となる。
【0026】
本発明の第2の管路構築方法においては、接続管を除去せずに、シールドジャッキを伸長させて掘削機を前進させたことにより生じたスペースにセグメント管を構築している。そこで、施工効率を考慮すると、前記調整管の前後方向の長さが、前記接続管に接続される前記セグメント管の前後方向の長さよりも長いことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド推進工法を示す説明図。
【
図3】(a)は接続管を取り除く場合のハイブリッド推進工法を示す説明図であり、(b)は(a)における推進管とセグメント管との接続部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態に係る推進力伝達機構10について図面を参照して説明する。
【0029】
推進力伝達機構10は、
図1に示すように、推進工法とシールド工法を併用したハイブリッド推進工法で用いられ、推進工法中において推進管20から掘削機40に推進力を伝える機能を有する。ハイブリッド推進工法において使用される推進力伝達機構10は、推進管20とセグメント管30との外形段差を解消して、推進工法における推進力を掘削機40に伝達する必要がある。
【0030】
図2に示すように、推進力伝達機構10は、先頭に位置する推進管20先端部と掘削機40内部のシールドジャッキ41とをつなぐ。推進力伝達機構10は、推進管20の先端から掘削機40に向って順に、アダプタ管11、調整管12、定規リング13、及び接続管14が互いに接続されて構成されている。
【0031】
アダプタ管11は、鋼構造の短い略円管状の部材であり、後側面の外径が推進管20の外径と略一致し、前側面の外径がセグメント管30の外径と略一致するように、その外側面が前側から後側に向って外側に広がるようにテーパ状に形成されている。アダプタ管11を介在させることによって、推進管20とセグメント管30との外径段差を解消することができる。アダプタ管11は、周方向に分割されておらず、一部材で構成されており、常に掘削機40の外側に位置する。
【0032】
アダプタ管11には、推進工法中に掘削坑と推進管20との間に滑材を注入させるための滑材注入孔11aが設けられている。滑材を注入させることにより、推進時の摩擦が減少して、推進が容易になる。また、アダプタ管11の外側面はテーパ状に形成されているので、推進時の摩擦抵抗は少ない。なお、シールド工法時には推進管20を推進させないので、滑材を注入する必要はなく、アダプタ管11は地中に存置される。
【0033】
調整管12は、鋼構造の略円管状の部材であり、その外径はセグメント管30の外径と略一致する。すなわち、調整管12の外径は、アダプタ管11の前側面の外径と略一致する。調整管12は、その後側面がアダプタ管11の前側面に当接し、アダプタ管11と図示しないボルトを用いて固定されている。調整管12は、掘削機40の外部に位置するアダプタ管11と掘削機40の内部の定規リング13及び接続管14とをつなぐ機能を有し、その外周部は掘削機40の後端に位置するテールシール42に接している。
【0034】
調整管12は、周方向に分割可能に構成されており、掘削機40の内部で組み立てられる。これは、テールシール42を破損させることなく、円筒状態の調整管12を外部から掘削機40の内部に搬入することができないためである。
【0035】
定規リング13は、鋼構造のリング状(中空円盤状)の平板部材であり、その外径はセグメント管30の外径と略一致する。すなわち、定規リング13の外径は、調整管12の外径と略一致する。定規リング13は、その後側面が調整管12の前側面に当接し、調整管12に図示しないボルトを用いて固定されている。定規リング13は、平板であるため、予め掘削機40の内部に搬入しておけば分割する必要はない。なお、定規リング13を分割して搬入した場合には、掘削機40内で溶接などによって一部材にする。定規リング13には、メッキが防錆のために施されている。
【0036】
接続管14は、鋼構造の略円管状の部材であり、その外径はセグメント管30の外径と略一致する。すなわち、接続管14の外径は、定規リング13の外径と略一致する。接続管14は、その後側面が定規リング13の前側面に当接し、定規リング13に図示しないボルトを用いて固定されている。そして、接続管14は、その前側面が掘削機40内部のシールドジャッキ41に接続されており、推進工法時での推進力を掘削機40に伝達する。
【0037】
接続管14は、調整管12と同様に、周方向に分割可能に構成されている。さらに、接続管14には、接続管14と掘削機40のスキンプレート43との間隔を調整可能な芯出しボルト15が設けられている。芯出しボルト15は、本発明の間隔調整手段に相当する。芯出しボルト15は、接続管14を構成する各ピースに設けられており、これら各ピースとスキンプレート43との間隔を調整することによって、推進中の接続管14の真円を維持することができる。
【0038】
図示しないが、アダプタ管11と調整管12、調整管12と定規リング13の間には止水シールが設置されている。なお、接続管14を除去してセグメント管30を設置する場合には、定規リング13とセグメント管30の間に、接続管14を残置する場合には、定規リング13と接続管14との間に止水シールを設置する。
【0039】
次に、掘削機40について説明する。この掘削機40は、泥水式のシールド掘削機であり、スキンプレート(シールド筒)43と、スキンプレート43に組付けた掘削ユニット44とを備えている。スキンプレート43は、前スキンプレート(前筒)43aと後スキンプレート(後筒)43bとから構成されている。後スキンプレート43bの前端には、前スキンプレート43aの後端部に内嵌する球面ジョイント部45が設けられており、前スキンプレート43aは後スキンプレート43bに対し任意の方向に屈曲自在になる。そして、前スキンプレート43aと後スキンプレート43bとを連結する中折れジャッキ46を周方向の間隔を存して複数設け、これら中折れジャッキ46により前スキンプレート43aの方向、即ち、掘削機40の掘進方向を調節することができる。
【0040】
後スキンプレート43bには、掘削済みのトンネル内壁面にセグメント31をリング状に組付けるエレクタ47が内装されると共に、設置済みのセグメント31を反力受けにしてスキンプレート43を前進させる複数のシールドジャッキ41が周方向の間隔を存して取付けられている。また、後スキンプレート43bの後端には、セグメント31との間の隙間をシールするテールシール42が取付けられている。さらに、図示しないが、外周部分の地山に裏込め材を注入充填する裏込注入装置が設けられている。
【0041】
掘削ユニット44は、隔壁48と、スキンプレート43の前端より前方で切羽を掘削する、隔壁48に支持されるカッタヘッド49とを有している。
【0042】
隔壁48の背面には、カッタヘッド49を回転駆動させる駆動ユニット51が設けられている。駆動ユニット51は駆動モータ、減速機、ギヤ等から構成され、駆動ユニット51の駆動力によって、駆動軸52を介してカッタヘッド49を高トルクで回転駆動することができる。
【0043】
カッタヘッド49は、カッタビット49aを取付けた放射状の複数のカッタスポーク49bと、各カッタスポーク49bに内蔵した図示しない伸縮ジャッキにより各カッタスポーク49bの外端部から径方向外方に出没するオーバーカッタ49cとを備えている。
【0044】
カッタヘッド49と隔壁48との間の空間が隔室53となっている。隔室53は、掘削土砂を泥水と共に充填して切羽面からの土圧に対抗させるためのものである。隔壁48の後側には、隔室53と連通する土砂搬出装置54が設けられている。この土砂搬出装置54は、送泥管54a、排泥管54b、及びこれら送泥管54a、排泥管54bと接続され、後方の発進立坑にまで到る送排出泥管54cなどから構成されている。
【0045】
以下、本発明の実施形態に係る管体構築方法について
図1を参照して説明する。
【0046】
発進立坑Aから所定の距離までの推進工法区間Cでは、推進工法で推進管20を接続することによって管体を構築する。
【0047】
まず、
図1(a)に示すように、地盤を掘削して発進立坑Aを形成し、発進立坑Aに反力受部61、元押しジャッキ62などを設置する。そして、反力受部61に作用する元押しジャッキ62の反力によって、掘削機40を前進させる。このとき、前記裏込め注入装置によって掘削機40のテール外周部分の地山に裏込め材71を注入充填する(
図3(b)参照)。
【0048】
その後、
図1(b)に示すように、アダプタ管11、調整管12、定規リング13及び接続管14から構成される推進力伝達機構10を、掘削機40内部のシールドジャッキ41と元押しジャッキ62との間に設置する。そして、元押しジャッキ62の推進力をシールドジャッキ41に伝達し、掘削機40を推進力伝達機構10と一体的に推進させる。そして、発進立坑A内においてアダプタ管11の後側面に推進管20を接続させる。なお、推進管20は、周方向に分割可能に構成してもよい。また、推進管20はヒューム管であってもよい。
【0049】
この後、推進管20、推進力伝達機構10及び掘削機40を全体として一体的に推進させる。この推進により発進立坑A内に生じたスペースに新たな推進管20を位置させて、既設の後端の推進管20と接続させる。そして、推進管20の長さが所定の距離になるまで、このような工程を繰り返す。
【0050】
推進工法時、調整管12は、共に一部材から形成されるアダプタ管11と定規リング13によって前後を固定されており、その形状が真円に保持される。そして、接続管14は、一部材から形成される定規リング13によって後方を固定され、且つ、芯出しボルト15を用いて歪みが生じないように調整されており、その形状が真円に保持される。また、調整管12や接続管14の定規リング13との接続面に予めボルト穴を形成せずに、定規リング13のボルト穴に合わせて調整管12や接続管14にボルト穴を形成することで、さらに形状を真円にすることができる。
【0051】
推進工法における推進力は、推進管20とその周囲地盤との摩擦状態によって変化する。そして、推進力を微細に調整することは困難であり、設計値と比較して大きな推進力がかかることがある。大きな推進力がかかっても、周方向に分割されたピースから構成される調整管12及び接続管14に歪みや変形などが生じることが抑制され、推進力伝達機構10が常に真円状態に保持されるため、偏った応力が掘削機40に作用しない。
【0052】
図1(c)に示すように、所定の距離まで推進工法で管路を構築した後、シールド工法に移行する。シールド工法に移行後のシールド工法区間Dは、通常のシールド工法と同様に施工する。
【0053】
シールド工法に移行するとき、アダプタ管11、調整管12及び定規リング13を存置させる。接続管14は、取り除いても、存置させてもよい。
【0054】
接続管14を取り除く場合は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、定規リング13がセグメント31の位置決め部材として機能する。この場合、詳細は図示しないが、定規リング13に形成されたボルト穴を、各セグメント31に形成されたボルト穴と合わせてボルトを用いて各セグメント31を定規リング13に固定することによって、複数のセグメント31から構成させるセグメント管30を真円に組み立てることができる。接続管14を取り除く場合、接続管14の長さはセグメント管1個分の長さと同程度である。
【0055】
接続管14を存置する場合は、
図1(d)に示すように、シールドジャッキ41を伸長して掘削機40を前進させた後、シールドジャッキ41を縮退させてセグメント管30を設置するためのスペースを確保する。そして、このスペースにセグメント31を配置し、各セグメント31をボルトで接続管14に固定することによってセグメント管30を組み立てる。このとき、接続管14の前側面の外形が真円であるので、セグメント管30を真円に組み立てることができる。接続管14を存置する場合、調整管12の長さはセグメント管1個の長さ以上であることが好ましい。これは、セグメント31を接続する前に調整管12がテールシール42の外側に押し出された場合、周囲から土圧を受けて変形することを防ぐためである。なお、この場合、接続管14の前側面に、前記とは別の定規リングを接続してもよい。
【0056】
このように、シールド工法に移行する際に、セグメント31と接合される定規リング13又は接続管14はその形状が真円であるので、セグメント管30を真円に組み立てることができる。特に、RC(鉄筋コンクリート)セグメント管は、真円に組み上げられた状態で本来の構造性能を発揮するので、真円に組み立てることができ、好ましい。ただし、セグメント管30は、鋼製セグメント管、鋳鉄(ダクタイル)セグメント管、合成セグメント管などであってもよい。また、調整管12や接続管14は、RCセグメント管以外の鋼製セグメント管、鋳鉄セグメント管、合成セグメント管などで代用してもよい。
【0057】
なお、接続管14を取り除く場合は、接続管14を構成する複数のピースをまとめて取り除くのではなく、ピース毎にセグメント31と入れ替えるほうが好ましい。具体的には、取り除くピースに当接するシールドジャッキ41を短縮させ、このピースと隣接するピース、及びこのピースと定規リング13とを結合するボルトを取外して、当該ピースを除去する。そして、ピースを除去して空いた空間にセグメント31を設置した後、対応するシールドジャッキ41を伸長させてセグメント31を押さえる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、アダプタ管11、調整管12、定規リング13、接続管14、推進管20及びセグメント管30の前後側面の外形が円形状である場合について説明した。しかし、これら前後側面の外形は、楕円形状であってもよい。また、セグメント31の平面形状は、長方形や六角形などの多角形状であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…推進力伝達機構、 11…アダプタ管、 12…調整管、 13…定規リング、 14…接続管、 15…芯出しボルト(間隔調整手段)、 20…推進管、 30…セグメント管、 31…セグメント、 40…掘削機、 41…シールドジャッキ、 43…スキンプレート、 A…発進立坑、 B…到達立坑、 C…推進工法区間、 D…シールド工法区間。