特許第5806211号(P5806211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806211
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】グロープラグ
(51)【国際特許分類】
   F23Q 7/00 20060101AFI20151021BHJP
【FI】
   F23Q7/00 605J
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-515276(P2012-515276)
(86)(22)【出願日】2012年1月16日
(86)【国際出願番号】JP2012050708
(87)【国際公開番号】WO2012102109
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-13388(P2011-13388)
(32)【優先日】2011年1月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝照
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】波多野 岳
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−151455(JP,A)
【文献】 特表2003−527557(JP,A)
【文献】 特開2002−13736(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0989370(EP,A2)
【文献】 特開2006−112478(JP,A)
【文献】 実開平4−84863(JP,U)
【文献】 特開2012−154552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電によって発熱する発熱抵抗体を自身の先端部に有するヒータと、
自身の軸線である第1軸線に沿って延びる軸孔を有する筒状に形成され、自身の先端部において前記ヒータを直接または間接的に保持する主体金具と、
棒状に形成され、前記主体金具の前記軸孔に当該軸孔の内周面に対し間隙をおいて配置されると共に、自身の一端部が前記ヒータの後端部に接続され、自身の他端部が前記主体金具の後端から突出される中軸と、
環状に形成され、前記軸孔の後端部において前記軸孔に挿入されて、前記軸孔の内周面と前記中軸とのそれぞれに当接した状態に配置される絶縁性の弾性部材からなる当接部材と、
を備えるグロープラグであって、
グロープラグに組み付ける前の前記当接部材を、前記当接部材の軸線である第2軸線を含む平面にて切断した場合に、2つの断面のうちの一方の断面の輪郭線をみたときに、前記当接部材は、前記輪郭線を部分的に構成する輪郭部として、
前記第2軸線に沿いつつも径方向外向きに膨らむ曲率半径R1の曲線状に延びる第一輪郭部と、
前記第2軸線に沿いつつも、曲率半径R2がR1<R2を満たして径方向内向きに膨らむ曲線状または直線状に延びる第二輪郭部と、
を有することを特徴とするグロープラグ。
【請求項2】
前記当接部材は、前記一方の断面において、前記第2軸線の延伸方向に沿う長さが前記第2軸線の直交方向に沿う長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載のグロープラグ。
【請求項3】
前記中軸は、
前記主体金具の前記第1軸線の延伸方向において前記軸孔の内周面の前記後端部と向き合う位置に配置される部位であり、前記他端部よりも前記径方向に大きく形成される後端側胴部と、
前記後端側胴部と前記他端部とをテーパ状に結ぶ肩部と、
をさらに備え、
前記主体金具は、前記軸孔の前記後端部において、前記肩部の先端側の端部よりも先端側から、前記第1軸線の延伸方向の後端側へ向けてテーパ状に広がるテーパ部をさらに備え、
前記当接部材は、前記第二輪郭部が前記中軸と当接し、前記第一輪郭部が前記テーパ部よりも先端側で前記軸孔の内周面と当接して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のグロープラグ。
【請求項4】
前記当接部材の前記輪郭線をみたときに、前記当接部材は、前記輪郭部を部分的に構成する輪郭部として、一端が前記第二輪郭部に接続し、前記一端から他端にかけて前記第2軸線に沿いつつも前記径方向外向きに延び、前記他端が前記第一輪郭部に接続し、前記第一輪郭部との接続点が前記第2軸線の延伸方向における前記当接部材の端部をなす第三輪郭部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のグロープラグ。
【請求項5】
前記輪郭線は、前記第2軸線の延伸方向における中央の位置を基準に鏡像体をなすことを特徴とする請求項4に記載のグロープラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの始動の補助に用いるグロープラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの始動を補助するために使用されるグロープラグは、発熱抵抗体を自身の先端部に有するヒータを、軸孔を有する筒状の主体金具の先端部において直接または間接的に保持する。主体金具の軸孔には棒状の中軸が挿通され、主体金具とは絶縁された状態で配置される。中軸の一端部はヒータの後端部に接続され、他端部は、主体金具の後端から突出される。ヒータから取り出される2つの電極が、主体金具と中軸とのそれぞれに電気的に接続されている。
【0003】
このような構成のグロープラグでは、主体金具の軸孔を介した気密性を確保するため、軸孔の後端側において、軸孔の内周面と中軸との間にOリングが配置される。さらに、主体金具と中軸との間の絶縁を確保するための絶縁部材が、Oリングの後端側にて、軸孔の内周面と中軸との間に配置される。軸孔の内周面や中軸のOリングが配置される部位にはテーパ面が設けられている。絶縁部材の端面によってOリングがテーパ面へ向けて押圧されることによって、軸孔の内周面と中軸と絶縁部材との3つの接触面のそれぞれに対するOリングの密着性が確保されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−292444号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、軸孔の内周面と中軸と絶縁部材との3つの接触面でOリングを囲う構成では、Oリングを圧縮した場合に変形部位の逃げ場を確保しづらい。このため、Oリングに対する各接触面の配置位置を精度よく位置決めする必要がある。例えば、軸孔の内周面と中軸との間に絶縁部材を強く押し込んだ場合、Oリングを配置したときの大きさが小さくなる。Oリングが接触面間の狭い間隙に入り込むように変形し、変形部位の内部応力が高まり、Oリングが切れてしまう虞がある。一方、絶縁部材の押し込みが緩い場合、Oリングを配置したときの大きさが大きくなる。Oリングが各接触面に対して十分に密着状態を維持できず、すき間を生じ、気密性を確保できなくなる虞がある。
【0006】
また、従来のグロープラグではOリングの断面を円形状や楕円形状としている。グロープラグの組み立て過程においてOリングを軸孔の内周面と中軸との狭い間隙に配置する際に、Oリングの周方向においてねじれを生じてしまう虞があった。また、Oリングの断面が円形状であったり、3つの接触面で囲われて配置される楕円形状のOリングは配置時には断面が略円形状をなす。このため、軸方向において軸孔の内周面と中軸との間に介在する長さが短くなり、外部からの振動が中軸に加わった場合の中軸の振れを抑制する効果が得られにくい。軸方向に長いチューブ状の防振ゴム等を併用しても、このような形態の部材は軸孔の内周面と中軸との間に配置しにくく、また、コストがかかってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、主体金具の軸孔の内周面と中軸とに対する密着性を高められ、中軸の防振性を確保でき、組み付けが容易な当接部材を備えるグロープラグを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の実施態様によれば、通電によって発熱する発熱抵抗体を自身の先端部に有するヒータと、自身の軸線である第1軸線に沿って延びる軸孔を有する筒状に形成され、自身の先端部において前記ヒータを直接または間接的に保持する主体金具と、棒状に形成され、前記主体金具の前記軸孔に当該軸孔の内周面に対し間隙をおいて配置されると共に、自身の一端部が前記ヒータの後端部に接続され、自身の他端部が前記主体金具の後端から突出される中軸と、環状に形成され、前記軸孔の後端部において前記軸孔に挿入されて、前記軸孔の内周面と前記中軸とのそれぞれに当接した状態に配置される絶縁性の弾性部材からなる当接部材と、を備えるグロープラグであって、グロープラグに組み付ける前の前記当接部材を、前記当接部材の軸線である第2軸線を含む平面にて切断した場合に、2つの断面のうちの一方の断面の輪郭線をみたときに、前記当接部材は、前記輪郭線を部分的に構成する輪郭部として、前記第2軸線に沿いつつも径方向外向きに膨らむ曲率半径R1の曲線状に延びる第一輪郭部と、前記第2軸線に沿いつつも、曲率半径R2がR1<R2を満たして径方向内向きに膨らむ曲線状または直線状に延びる第二輪郭部と、を有するグロープラグが提供される。
【0009】
本実施態様において、曲率半径R2の第二輪郭部が、曲率半径R1の第一輪郭部に比べてより大きな曲率半径で、第2軸線に沿って延びる。このため、当接部材が第2軸線に沿って押し込まれる際に、第二輪郭部が、当接部材の全体を支えて曲がりや巻き込みを抑制する芯として機能することができる。このため、第二輪郭部において、当接部材に曲がりやシワを生じたりすることが抑制される。
【0010】
また、当接部材を軸孔の内周面と中軸との間に配置する際に、当接部材は第2軸線に垂直な径方向の厚みが圧縮されることになる。第一輪郭部が当接部材の径方向の外側に膨らむ曲線状を有しているので、圧縮による変形をスムーズに行うことができる。また、変形の際には、厚みの厚い部分が薄い側へ移動するような変形をすることができるので、局部的に内部応力の高い変形部分を生ずることがなく、グロープラグが外部から振動等を受けても、切れてしまうことが生じ難い。また、当接部材が接するのは軸孔の内周面と中軸の2点(2面)である。このため、当接部材による軸孔の気密性を考慮した場合に、当接部材の当接する受け側となる主体金具や中軸に複雑なシール面を形成しなくとも済むので、加工が容易でコストダウンを図ることができる。
【0011】
本実施態様において、前記当接部材は、前記一方の断面において、前記第2軸線の延伸方向に沿う長さが前記第2軸線の直交方向に沿う長さよりも長くてもよい。このようにすれば、当接部材を軸孔の内周面と中軸との間に配置した場合に、軸方向において軸孔の内周面と中軸との間に介在する長さを、より長く確保することができる。このため、軸孔内で中軸をより確実に保持することができ、外部からの振動が中軸に加わった場合の中軸の振れを、より確実に抑制することができる。
【0012】
本実施態様において、前記中軸は、前記主体金具の前記第1軸線の延伸方向において前記軸孔の内周面の前記後端部と向き合う位置に配置される部位であり、前記他端部よりも前記径方向に大きく形成される後端側胴部と、前記後端側胴部と前記他端部とをテーパ状に結ぶ肩部と、をさらに備えてもよい。前記主体金具は、前記軸孔の前記後端部において、前記肩部の先端側の端部よりも先端側から、前記第1軸線の延伸方向の後端側へ向けてテーパ状に広がるテーパ部をさらに備えてもよい。前記当接部材は、前記第二輪郭部が前記中軸と当接し、前記第一輪郭部が前記テーパ部よりも先端側で前記軸孔の内周面と当接して配置されていてもよい。
【0013】
例えば主体金具の第1軸線と中軸の軸線とに軸ずれが生じた場合でも、軸孔の内周面と中軸との間に当接部材を配置する際に、テーパ部によって当接部材を軸孔の中央に案内することができる。よって当接部材を介し、第1軸線と中軸の軸線との軸ずれを矯正することができる。また、後端側胴部の外径が当接部材の内径よりも大きくなるように規定すれば、当接部材をグロープラグに組み付ける際に、まず、肩部において、当接部材の内径を広げさせ、中軸に当接した状態にすることができる。そして当接部材は中軸に当接したままの状態(すなわち中軸との間に大きな間隙を有さない状態)でテーパ部に沿って外径が窄められることになるので、当接部材に内向きの巻き込みが生ずることがなく、周方向のねじれやシワを生じない。ゆえに、当接部材は軸孔の内周面と中軸の外周面とに確実に当接することができ、軸孔を介した気密性の確保を確実に行うことができる。
【0014】
本実施態様において、前記当接部材の前記輪郭線をみたときに、前記当接部材は、前記輪郭部を部分的に構成する輪郭部として、一端が前記第二輪郭部に接続し、前記一端から他端にかけて前記第2軸線に沿いつつも前記径方向外向きに延び、前記他端が前記第一輪郭部に接続し、前記第一輪郭部との接続点が前記第2軸線の延伸方向における前記当接部材の端部をなす第三輪郭部をさらに備えてもよい。当接部材をグロープラグに組み付ける際に、当接部材がまず肩部に当たる。その際に、肩部には、第2軸線に沿いつつも径方向外向きに延びる第三輪郭部が当接する。このため、肩部に対する摩擦が小さく、肩部に引っかかって内向きの巻き込みを生じてしまうことを防止できる。
【0015】
本実施態様において、前記輪郭線は、前記第2軸線の延伸方向における中央の位置を基準に鏡像体をなしてもよい。すなわち、当接部材が第2軸線の延伸方向において対称な形状を有しているので、当接部材をグロープラグに組み付ける際に、軸線P方向の向きを問わずに中軸の後端部に嵌めることができる。よって、組み付け時に向きを確認して揃える手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】グロープラグ1の縦断面図である。
図2】グロープラグ1の後端側を拡大して見た断面図である。
図3】グロープラグ1に組み付ける前の当接部材7を斜視および断面で示す図である。
図4】グロープラグ1に当接部材7を組み付ける過程において、グロープラグ1の後端側を拡大して見た断面図である。
図5】グロープラグ1に当接部材7を組み付ける過程において、グロープラグ1の後端側を拡大して見た断面図である。
図6】グロープラグ1に組み付ける前の当接部材107を斜視および断面で示す図である。
図7】グロープラグ1に組み付ける前の当接部材207を斜視および断面で示す図である。
図8】グロープラグ1に組み付ける前の当接部材307を斜視および断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化したグロープラグの一実施の形態について、図面を参照して説明する。図1図2を参照して、一例としてのグロープラグ1の全体の構造について説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載しているグロープラグの構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。以下の説明では、主体金具4の軸線を軸線Oとし、軸線Oを、主体金具4に組み付けられた、グロープラグ1を構成する各部品の位置関係や向き、方向を説明する上での基準とする。軸線Oの延伸方向(以下、「軸線O方向」ともいう)において、セラミックヒータ2の配置された側(図1における下側)をグロープラグ1の先端側とする。なお、この軸線Oが本発明の「第1軸線」に相当する。また、後述する軸線Pは、グロープラグ1に組み付け前の状態における当接部材7の軸線を指し、組み付けの過程および組み付け後においては軸線Oを基準に説明を行うものとする。軸線Pが本発明の「第2軸線」に相当する。
【0018】
図1に示すグロープラグ1は、例えば直噴式ディーゼルエンジンの燃焼室(図示外)に取り付けられ、エンジン始動時の点火を補助する熱源として利用される。グロープラグ1は、主体金具4と、保持部材8と、セラミックヒータ2と、中軸3と、接続端子5と、絶縁部材6と、当接部材7と、接続リング85とを備える。
【0019】
まず、セラミックヒータ2について説明する。セラミックヒータ2は丸棒状をなし、先端部22が半球状に曲面加工された絶縁性セラミックからなる基体21を有する。基体21の内部には、導電性セラミックからなる断面略U字状の発熱素子24が埋設されている。発熱素子24は、発熱抵抗体27と、リード部28,29とからなる。発熱抵抗体27はセラミックヒータ2の先端部22に配置され、先端部22の曲面にあわせて両端が略U字状に折り返されている。リード部28,29は発熱抵抗体27の両端にそれぞれ接続され、セラミックヒータ2の後端部23へ向けて互いに略平行に延設されている。発熱抵抗体27の断面積は、リード部28,29の断面積よりも小さくなるように成形されており、通電時、主に発熱抵抗体27において発熱が行われる。また、セラミックヒータ2の中央より後端側において、リード部28,29のそれぞれから電極取出部25,26が径方向に突出されている。電極取出部25,26は、軸線O方向において互いにずれた位置にて、セラミックヒータ2の外周面に露出されている。
【0020】
次に、保持部材8について説明する。保持部材8は軸線O方向に延びる円筒状の金属部材からなり、自身の筒孔84内にてセラミックヒータ2の胴部分を径方向に保持する。セラミックヒータ2の先端部22および後端部23は、保持部材8の両端からそれぞれ露出している。保持部材8の胴部81の後端側には、肉厚の鍔部82が形成されている。鍔部82の後端には、後述する主体金具4の先端部41に係合する段状の金具係合部83が形成されている。セラミックヒータ2の電極取出部25,26のうち先端側に形成された電極取出部25は、保持部材8の筒孔84内周面に接触されており、電極取出部25と保持部材8とが電気的に接続されている。
【0021】
また、保持部材8の金具係合部83から後端側に露出されたセラミックヒータ2の後端部23には、金属製で筒状の接続リング85が圧入によって嵌められている。セラミックヒータ2の電極取出部26は接続リング85の内周面に接触されており、電極取出部26と接続リング85とが電気的に接続されている。後述する主体金具4の先端部41が保持部材8の金具係合部83に接合されることによって、電極取出部25は、主体金具4と電気的に接続される。電極取出部26に接続された接続リング85は主体金具4内に配置されるが、保持部材8によってセラミックヒータ2と主体金具4とが位置決められ、接続リング85と主体金具4とは直接的には絶縁状態に維持される。
【0022】
次に、主体金具4について説明する。主体金具4は、軸線O方向に貫通する軸孔43を有する長細い筒状の金属部材である。主体金具4の先端部41は、その内周が前述した保持部材8の金具係合部83の外周に係合され、保持部材8を介してセラミックヒータ2の電極取出部25と電気的に接続されている。先端部41と金具係合部83との合わせ部位にはレーザ溶接が施されており、主体金具4と保持部材8とが一体に接合されている。主体金具4の先端部41と後端部45との間の中胴部44は軸線O方向に長く形成されており、後端側外周面に、グロープラグ1を内燃機関のエンジンヘッド(図示外)に取り付けるためのねじ山が形成された取付部42が設けられている。取付部42よりも後端側には、グロープラグ1をエンジンヘッドに取り付ける際に使用される工具が係合する工具係合部46がその断面形状を六角形状にして形成されている。図2に示すように、主体金具4の後端部45における軸孔43の内周面に、軸孔43から後端48の開口にかけてテーパ状に広がるテーパ部47が形成されている。
【0023】
次に、中軸3について説明する。図1に示すように、中軸3は軸線O方向に延びる棒状の金属部材であり、主体金具4の軸孔43に挿通される。中軸3の先端部31と後端部32との間の中胴部33は、先端部31および後端部32と比べ、外径が細く形成されている。先端部31には、その先端に、接続リング85の内周に係合するため小径のリング係合部34が形成されている。リング係合部34が接続リング85に係合することで、セラミックヒータ2と中軸3とが接続リング85を介して軸線Oに沿って一体に連結される。なお、図示しないが、先端部31と接続リング85との合わせ部位にはレーザ溶接が施されており、先端部31と接続リング85とが一体に接合されている。これにより、中軸3は、接続リング85を介し、セラミックヒータ2の電極取出部26と電気的に接続されている。上記したように、セラミックヒータ2と主体金具4とが保持部材8に位置決められるので、軸孔43で、中軸3と主体金具4とは直接的には絶縁状態に維持される。
【0024】
図2に示すように、中軸3の後端部32は、主体金具4の後端48から突出される接続端部36と、接続端部36と中胴部33との間を接続する接続基部37とを有する。接続端部36には、外周面にローレット状の表面加工を施した係止部39が形成されている。係止部39を含め、接続端部36の外径は、接続基部37の外径と比べて小さい。接続端部36と接続基部37との間には、接続端部36と接続基部37とをテーパ状に接続する肩部38が形成されている。
【0025】
中軸3の後端部32には当接部材7と絶縁部材6とが配置される。当接部材7については後述するが、当接部材7は主体金具4の軸孔43の内周面と中軸3の接続基部37との間に配置され、軸孔43で中軸3を保持して中軸3の振れを抑制するとともに、軸孔43の気密性を保つ。
【0026】
絶縁部材6は、主体金具4と中軸3および接続端子5(後述)との接触による短絡を防止するため、例えばナイロン(登録商標)等、耐熱性および絶縁性を有する部材から形成される筒体である。絶縁部材6は中軸3の後端部32を挿通し、主体金具4のテーパ部47に、自身の外周に設けられたテーパ部63が当接することで位置決めされ、主体金具4と中軸3とを絶縁状態に維持する。この状態で、絶縁部材6の後端65は主体金具4の後端48よりも後方に突出して配置され、接続端子5の鍔部51(後述)が後端65に当接した状態に配置されることで、接続端子5と主体金具4とが絶縁状態に維持される。
【0027】
中軸3の接続端部36には、接続端子5が固定される。接続端子5は、接続端部36に覆い被せるキャップ状の胴部52を有し、胴部52から後端側にピン状の突起部53が突設されている。胴部52の先端の開口端には、一周にわたって径方向に突設する鍔部51が形成されている。接続端子5を中軸3の接続端部36に被せた場合に、絶縁部材6の後端65に鍔部51が当接する。また、接続端子5を軸線O方向の先端向きに押圧した状態で、胴部52の外周から内向きに加締められ、胴部52の内周面が接続端部36の係止部39に強固に係止される。係止部39はローレット形状であるため、加締めにより圧着される胴部52の係止部39への固着力が高められ、接続端子5と中軸3とが一体に固定されると共に、両者が電気的に接続される。
【0028】
接続端子5の突起部53には、グロープラグ1がエンジンヘッド(図示外)に取り付けられる際に、プラグキャップ(図示外)が嵌められる。セラミックヒータ2の発熱素子24(図1参照)は、保持部材8および主体金具4を介してエンジンに接地される発熱抵抗体27の一端側と、接続端子5および中軸3を介してプラグキャップに接続される他端側との間に通電されることによって、発熱する。
【0029】
次に、当接部材7について説明する。上記したように、当接部材7は、主体金具4の軸孔43の内周面と中軸3の接続基部37との間に配置される部材であり、軸孔43で中軸3を保持して中軸3の振れを抑制するとともに、軸孔43の気密性を保つ。図3に示すように、当接部材7は、耐熱性、絶縁性および弾性を有する部材、例えばフッ素ゴム、アクリルゴム、シリコンゴム等を材料に、円筒状に形成される。また、当接部材7硬さは、ヌープ硬度で60〜80であることが好ましい。
【0030】
具体的に、当接部材7は、自身の軸線Pの延伸方向(以下、「軸線P方向」ともいう)に延びる筒孔76を有する円筒状をなし、グロープラグ1への組み付け前の状態において、断面形状が略D字形状をなすように形成されている。より詳細に、円筒状の当接部材7を、当接部材7の軸線Pを含む平面で2つの断片に切断(分割)した場合、各断片はそれぞれ2箇所に断面を有することとなる。本実施の形態では、断片に形成される2つの断面のうちの一方の断面75に着目し、その断面75の輪郭線70をみたときに、輪郭線70は以下の形態をなす。
【0031】
輪郭線70は、輪郭線70を部分的に構成する輪郭部(輪郭線を構成する線分)として、第二輪郭部71、第一輪郭部72および第三輪郭部73の3つの輪郭部を有する。第二輪郭部71は、軸線Pに沿って、直線状に延びる輪郭部である。第一輪郭部72は、軸線Pに沿いつつも、軸線Pと直交する径方向の外向きに膨らむ曲線状に延びる輪郭部である。第三輪郭部73は、第二輪郭部71と第一輪郭部72とを、軸線P方向で同じ側の端部においてそれぞれ接続する輪郭部であり、断面75の外方へ向けて膨らむ曲線状をなす。また、第一輪郭部72と第三輪郭部73との接続点を、軸線P方向における当接部材7の上下(先後)の両端部としている。
【0032】
また、第一輪郭部72は、第二輪郭部71よりも径方向の外側に配置されており、軸線P方向における長さが、第二輪郭部71よりも長く形成されている。よって、第三輪郭部73は、第二輪郭部71の端部から径方向の外向きに延び、第一輪郭部72の端部に接続する。さらに、輪郭線70は、軸線P方向における中央の位置(図3において二点鎖線A−Aで示す)を基準に、鏡像体をなしている。すなわち、当接部材7は、軸線P方向において対称な形状を有している。
【0033】
このような断面形状を有する当接部材7は、第二輪郭部71と第一輪郭部72の形状について、以下の規定を設けている。上記のように、第一輪郭部72は、軸線Pの径方向外向きに膨らむ曲線状の輪郭部であり、第一輪郭部72の曲率半径をR1とする。第二輪郭部71は、直線状に延びる輪郭部であるが、仮に、曲率半径がR2の曲線状の輪郭部であるとした場合に、第二輪郭部71は、R2が無限大である曲線状の輪郭部とみなすこともできる。したがって、本実施の形態では、第二輪郭部71の曲率半径R2と、第一輪郭部72の曲率半径R1との関係について、R1<R2を満たすことを規定している。言い換えると、径方向外向きに膨らむ第一輪郭部72は、直線状(上記仮定によれば径方向内向きに膨らむ)第二輪郭部71よりも、径方向の膨らみが大きい。また、当接部材7の断面形状について、軸線Pの延伸方向に沿う長さL1が直交方向(すなわち径方向)に沿う長さL2よりも長いこと(すなわちL1>L2を満たすこと)を規定している。
【0034】
このような当接部材7は、通常のOリングを製造する方法と、その金型の形状を異ならせる以外に特段の変更を要すことなく製造することが可能である。例えば、材料であるフッ素ゴムからなるシートに対して、当接部材7の外形形状に即した形状を有する型を当該シートの上下から圧縮し、当接部材7を製造する圧縮成形を利用して製造することができる。またこれに限られず、内部形状が上記の当接部材7の形状を呈するキャビティを備えた分割金型に対してフッ素ゴム等の材料を射出して成形する射出成形を利用することが可能である。あるいは、フッ素ゴム等の材料からなる環状部材(リング)を削ることによる削り出しを利用することも可能である。
【0035】
このような構造を有するグロープラグ1は、概略、以下のように組み立てられる。導電性のセラミック粉末やバインダ等を原料として射出成形によって、セラミックヒータ2の発熱素子24の原形となる素子成形体が形成される。また、絶縁性セラミック粉末を原料として金型プレス成形によって、セラミックヒータ2の基体21の原形となる基体成形体が、2分割の成形体として形成される。基体成形体で素子成形体を挟んで収容した状態で、プレス圧縮される。脱バインダ処理、ホットプレス等の焼成工程を経て、外周面の研磨によって、棒状で先端が半球状のセラミックヒータ2が形成される。なお、セラミックヒータ2の製造方法は適宜変更が可能である。例えば、基体成形体の製造方法として、一方の成形体を予め成形して金型に配置し、その上に素子成形体を載置、さらに絶縁性セラミック粉末を充填してプレス圧縮する製造方法等を適用することができる。
【0036】
ステンレス等の鋼材をパイプ状に成形した接続リング85に、セラミックヒータ2が圧入により嵌められて、接続リング85と電極取出部26とが導通される。同様に、所定の形状に成形された保持部材8に、セラミックヒータ2が圧入により嵌められて、保持部材8と電極取出部25とが導通される。一方、中軸3は、一定の寸法に切断された鉄系材料(例えば、Fe−Cr−Mo鋼)からなる棒状部材に塑性加工や切削等が施されて形成される。中軸3のリング係合部34を、セラミックヒータ2に嵌められた接続リング85に係合させた状態で、合わせ部位がレーザ溶接されて、中軸3とセラミックヒータ2とが一体に接合される。
【0037】
S45C等の鉄系素材から筒状の主体金具4が形成され、取付部42にねじ山が転造される。さらに切削加工等により、主体金具4の後端部45における軸孔43の内周面に、軸孔43から後端48の開口にかけてテーパ状に広がるテーパ部47が形成される。主体金具4の軸孔43に、セラミックヒータ2等と一体となった中軸3が挿通される。主体金具4と保持部材8との合わせ部位がレーザ溶接され、両者が一体に接合される。
【0038】
次に、主体金具4の後端48から突出する中軸3の後端部32に当接部材7が嵌められる。上記したように、当接部材7が軸線P方向において対称な形状(鏡像体)を有しているので、当接部材7を中軸3の後端部32に嵌める際に、軸線P方向の向きは問われない。また、図4に示すように、当接部材7の筒孔76の内径C1は、中軸3の接続端部36の外径C2よりも大きく形成されている。これにより、当接部材7は接続端部36を挿通する際に、筒孔76の内周面と接続端部36の係止部39とが擦れ合い、筒孔76(当接部材7の内周面)が傷付いてしまうことが防止されている。
【0039】
軸線O方向において、主体金具4のテーパ部47の先端位置B2(軸孔43におけるテーパ部47の広がりの開始位置が相当する)よりも、中軸3の肩部38の先端位置B1(肩部38と接続基部37との境目が相当する)が、後端側に配置されている。よって、接続端部36が挿通された後に、当接部材7は、主体金具4のテーパ部47と当接するよりも先に、中軸3の肩部38に達する。
【0040】
また、当接部材7の筒孔76の内径C1は、中軸3の接続基部37の外径C3よりも小さく形成されている。よって、肩部38に達した当接部材7は、軸線O方向の先端側へ向けてさらに押し込まれることにより、筒孔76が、肩部38のテーパに沿って押し広げられる。このとき、テーパ状である肩部38には、当接部材7の断面75における第三輪郭部73(図3参照)が押し付けられることとなる。第三輪郭部73が断面75の外方へ向けて膨らむ曲線状をなすので、当接部材7の内径を肩部38のテーパに沿ってスムーズに押し広げることができる。
【0041】
肩部38に筒孔76が押し広げられた当接部材7は、筒孔76の内周面が接続基部37の外周面に当接した状態で、軸線O方向の先端側へ向け押し込まれると、次に外周面側が主体金具4のテーパ部47に当接する。当接部材7を押し込むと、図5に示すように、外周面側がテーパ部47のテーパに沿って弾性変形し、テーパ部47の先端位置B2よりも先端側に挿入される。ここで、第一輪郭部72は、当接部材7の径方向の外側に膨らむ曲率半径R1の曲線状を有する。ゆえに、直線状(仮に曲線状とした場合には曲率半径R2が無限大である)の第二輪郭部71と比べて、より、当接部材7の径方向の厚みが圧縮される変形をスムーズに行うことができる。また、当接部材7は、中軸3の肩部38によって、まず、内径が広げられて、筒孔76の内周面が接続基部37の外周面に当接した状態となっている。そのままの状態(すなわち中軸3との間に大きな間隙を有さない状態)で、主体金具4のテーパ部47によって外径が窄められることになるので、当接部材7に内向きの巻き込みが生ずることがなく、周方向のねじれやシワを生じない。なお、軸孔43の内周面と接続基部37との間への当接部材7の押し込みは、治具を用いて行ってもよいし、図5のように、絶縁部材6によって行ってもよい。
【0042】
また、上記のように、当接部材7の第二輪郭部71が、当接部材7の軸線Pに沿う直線状である。ゆえに、当接部材7が軸線Oに沿って、自身の軸線Pに沿う向きを主に押し込まれる際に、第二輪郭部71が、当接部材の全体を支えて曲がりや巻き込みを抑制する芯として機能することができる。このため、第二輪郭部71において、当接部材7に曲がりやシワを生じたりすることが抑制される。
【0043】
また、当接部材7を軸孔43の内周面と接続基部37との間に配置する際に、当接部材7は、主体金具4のテーパ部47によって、軸孔43の中央に案内される。このため、例えば主体金具4の軸線Oと中軸3の軸線とに軸ずれが生じた場合でも、当接部材7を介して軸孔43の中央に中軸3が案内されるので、軸線Oと中軸3の軸線との軸ずれを矯正することができる。
【0044】
このように、当接部材7は、その断面において曲率半径がR1で径方向外向きに膨らむ第一輪郭部72を有するのでスムーズに弾性変形できる。さらに直線状の第二輪郭部71を有することによって、曲がりやシワを生ずることなく確実に軸孔43の内周面と接続基部37との間に配置される。また、組み付け前の断面の輪郭線70がD字状であった当接部材7の径方向の厚みが圧縮されて、軸線Pに沿って扁平をなすように変形する。よって、厚みの最も厚い部分(軸線P方向の中央付近)が厚みの薄い側(軸線P方向の両端側)へ移動するような変形がなされる。ゆえに、当接部材7は、局部的に内部応力の高い変形部分を生ずることがなく、グロープラグ1が外部から振動等を受けても、切れてしまうことが生じ難い。組み付け後の当接部材7は、軸線P方向における鏡像体の形態を維持しておらず、このような変形によって、軸孔43の内周面と接続基部37との双方に確実に密着する。ゆえに、接続基部37の外周面および軸孔43の内周面の内周面の双方に対し、十分な抗力が得られる。このため、当接部材7は、軸孔43で、中軸3を確実に保持することができ、グロープラグ1が外部から振動等を受けた際の中軸3の振れを抑制することができる。
【0045】
また、当接部材7は、軸線Oの周囲を取り巻いて一周する中軸3の接続基部37の外周面と、主体金具4の軸孔43の内周面との間において、径方向の2点に、接続基部37と軸孔43の内周面との接触面を有する。例えば、グロープラグ1の使用に伴う振動で、当接部材7の配置位置に位置ずれが生ずる場合がある。しかし、径方向の2点において接続基部37と軸孔43の内周面との接触面を有する当接部材7は、両者との接触位置がずれるだけで、接触面の大きさは維持することができる。そして当接部材7は、弾性変形によって軸孔43の内周面と接続基部37とに当接した状態を維持できるので、軸孔43を介した気密性の確保を確実に行うことができる。また、当接部材7が接するのは軸孔43の内周面と接続基部37の外周面との2点である。このため、当接部材7による軸孔43の気密性を考慮した場合に、当接部材7の当接する受け側となる主体金具4や中軸3に複雑なシール面を形成せずとも済み、加工が容易でコストダウンを図ることができる。
【0046】
また、当接部材7はL1>L2を満たすので、当接部材7を軸孔43の内周面と中軸3との間に配置した場合に、軸線Oに沿う方向において軸孔43の内周面と中軸3との間に介在する長さを、より長く確保することができる。このため、軸孔43内で中軸3をより確実に保持することができ、外部からの振動が中軸3に加わった場合の中軸3の振れを、より確実に抑制することができる。
【0047】
軸孔43の内周面と接続基部37との間に当接部材7が配置されたら、図2に示すように、中軸3の後端部32に絶縁部材6が嵌められる。主体金具4のテーパ部47に絶縁部材6のテーパ部63が当接して位置決めされた状態で、中軸3の後端部32に嵌められる。接続端子5の胴部52が加締められ、接続端子5が中軸3の接続端部36に固定されて、グロープラグ1が完成する。
【0048】
なお、本発明は各種の変形が可能である。上述した実施の形態では、当接部材7は自身の上下(先後)の両端部を第一輪郭部72と第三輪郭部73との接続点とする形状とした。これに限られず、例えば、第三輪郭部73が輪郭線70に占める割合をさらに多くして、軸線P方向における上下の両端部を第三輪郭部が構成するようにしてもよい。
【0049】
また、例えば、図6に示す、当接部材107のように、断面175の輪郭部170において、第三輪郭部がなく、第二輪郭部171と第一輪郭部172とが直接接続された、D字状の形状を有するものであってもよい。また、図7に示す、当接部材207のように、断面275の輪郭部270が、軸線P方向における中央位置を基準に鏡像体をなさず、すなわち軸線P方向において非対称な形状のものであってもよい。
【0050】
また、例えば、図8に示す、当接部材307のように、断面375の輪郭部370において、第二輪郭部371が、径方向内向きに膨らむ曲率半径R2の曲線状であってもよい。このとき、径方向外向きに膨らむ第一輪郭部372の曲率半径R1と、第二輪郭部371の曲率半径R2との関係が、本実施の形態と同様に、R1<R2を満たせばよい。このようにすれば、当接部材307を軸孔43の内周面と中軸3との間に配置する場合に、第二輪郭部371よりも膨らみの大きい第一輪郭部372をスムーズに弾性変形させることができる。そして、第一輪郭部372よりも膨らみが小さく、より直線状に近い、第二輪郭部371を、当接部材の全体を支えて曲がりや巻き込みを抑制する芯として機能させることができる。
【0051】
また、図6図7図8に示す当接部材107,207,307においても、図3に示す本実施の形態の当接部材7と同様である。すなわち、断面において軸線Pの延伸方向の長さL1が、直交方向(径方向)の長さL2よりも長く、すなわち径方向に短い扁平状のもの(L1>L2)が好ましい。より好ましくは、断面における径方向長さL2が軸線P方向長さL1の半分以下の長さとなる構成(L1/2≧L2)であるとよい。しかしながら、材質の選定や細部の構成によっては、この関係(軸線P方向長さの半分>径方向長さ(L1/2≧L2))を、L1>L2を満たす範囲で逸脱してもよい。
【0052】
また、グロープラグ1はセラミックヒータ2を備えたが、これに限られず、先端部が半球状に閉塞した金属製のシースチューブ内にコイル状の発熱抵抗体や制御抵抗体を配したシーズヒータを備えてもよい。また、保持部材8を有さず、主体金具4の先端部41においてセラミックヒータ2やシーズヒータを直接保持する形態のグロープラグであってもよい。また、発熱素子24が外周に位置し、その内部を基体21として構成する、所謂、表面発熱タイプとも呼称されるセラミックヒータであってもよい。
【0053】
また、中軸3の接続基部37の先端側において、若干の段差を生ずる程度の鍔状あるいは突起状のストッパを設けてもよい。このようにすれば、当接部材7が例えば振動等によって位置ずれを生じても、ストッパによって規制し、中軸3の中胴部33側へ移動してしまうことを防止できる。また、当接部材7は、軸孔43の内周面と接続基部37との間において、絶縁部材6と非接触の状態に配置されてもよい。
【0054】
なお、本実施の形態の当接部材7は、軸孔43の気密性を確保することを前提とし、中軸3を保持して中軸3の径方向への振れを抑制するものであるとよい。したがって、当接部材7が、軸孔43の内周面および中軸3の外周面のそれぞれに対し、軸線Oの周方向に一周しつつ連続して密着する形態とすると、防振性および気密性を確保することができ、好ましい。
【0055】
なお、本実施の形態においては、先端部31が「一端部」に相当し、接続端部36が「他端部」に相当する。また、接続基部37が「後端側胴部」に相当する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8