(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2開口部の内部には、前記ソース電極または前記ドレイン電極の少なくとも一部、もしくは前記ソース電極、および前記ドレイン電極と電気的に接続される配線が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の薄膜トランジスタ素子。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の一態様の概要]
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、ゲート電極と、ゲート電極の上方に積層形成され、積層方向に対して交差する方向に互いに間隔をあけて並設されたソース電極およびドレイン電極と、ゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に介挿された絶縁層と、底部にソース電極およびドレイン電極の各々の少なくとも一部を囲繞し、且つ、表面が撥液性を有する隔壁と、隔壁の囲繞により構成される第1開口部の内部において、ソース電極とドレイン電極との間の間隙、およびソース電極およびドレイン電極の上に形成され、ソース電極およびドレイン電極に対して密に接する有機半導体層と、備え、隔壁の第1開口部を臨む側面部は、その一部が、他の部分よりも、その傾斜が相対的に緩やかな斜面(以下では、「緩傾斜側面部」という。)になっている、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、有機半導体層を区画する隔壁において、側面部の一部を傾斜が他の部分よりも緩い緩傾斜側面部としている。このため、有機半導体層の形成における有機半導体インクの塗布の際に、第1開口部に隣接する領域のうち、有機半導体層を形成したくない箇所へのインクの溢れ出しを確実に抑制することができ、結果として得られる本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、高い品質を有する。
【0016】
ここで、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子のように、隔壁における第1開口部を臨む側面部の一部と他の部分とで傾斜の緩急に差異を設けた場合、有機半導体層の形成における有機半導体インクを塗布した際に、緩傾斜側面部が存在する側へと偏ったインクのプロファイルとなる。これは、隔壁の側面部とインクの接触角と、インクの表面張力との関係に起因する。
【0017】
即ち、インクの溢れ出しを抑制したい領域がある側の側面部を急傾斜側面部とし、溢れ出しても問題を生じない側の側面部を緩傾斜側面部とすることで、インクの表面プロファイルをコントロールすることができ、不所望のインクの溢れ出しを確実に抑制することができる。よって、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子では、上記のように、有機半導体層を形成したくない箇所へのインクの溢れ出しを確実に抑制し高い品質を有する。
【0018】
また、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、第1開口部の内部が、有機半導体層の形成を以ってチャネル部として機能する部分であり、隔壁において、上記第1開口部に対して間隔をあけた状態で、チャネル部ではない第2開口部があけられており、隔壁の第1開口部を臨む側面部のうち、上記緩傾斜側面部が、第2開口部側に相当する部分を除く部分に設けられている、ことを特徴とする。
【0019】
このように、チャネル部である第1開口部と、チャネル領域でない第2開口部とが隣接する場合、第2開口部に対しては有機半導体層を形成しない。その場合に、チャネル部を構成するための第1開口部において、第2開口部側に相当する側面部を急傾斜側面部とし、その他の部分を緩傾斜側面部とすることによって、有機半導体層の形成における有機半導体インクの塗布に際し、インクが第2開口部へと溢れ出すことを確実に抑制することができる。よって、高品質な薄膜トランジスタ素子となる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、隔壁において、第1開口部を臨む側面部のうち、緩傾斜側面部が、第2開口部側に相当する部分に対し、第1開口部を挟んで対向する側の部分に設けられている、ことを特徴とする。
【0021】
上記のように、チャネル部を構成するための第1開口部において、第2開口部側に相当する側面部を急傾斜側面部とし、その反対側に相当する側面部を緩傾斜側面部とすれば、有機半導体層の形成における有機半導体インクの塗布に際して、第2開口部側とは反対側にインクが偏る。このため、インクが第2開口部へと溢れ出すことを防止でき、高品質な薄膜トランジスタ素子とすることができる。
【0022】
また、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、第2開口部の内部に、ソース電極またはドレイン電極の少なくとも一部、もしくはソース電極またはドレイン電極と電気的に接続される配線が形成されている、ことを特徴とする。
【0023】
上記のように、第2開口部の内部にソース電極またはドレイン電極の少なくとも一部、もしくはソース電極またはドレイン電極と電気的に接続される配線が形成された構成、即ち、第2開口部がコンタクト部分として機能する場合においては、電極の上が有機半導体層で被覆されてしまうという事態を回避しなければならないが、上記のような側面部の傾斜の緩急をつけることで、これを達成することができる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、隔壁において、隔壁の第1開口部を臨む側面部のうち、第2開口部側に相当する部分が、他の何れの部分よりも、その傾斜が急峻な斜面である、ことを特徴とする。
【0025】
上記のように、第1開口部を臨む側面部において、傾斜角度が2種類の急傾斜側面部と緩傾斜側面部とで構成する必要は必ずしもなく、3種類以上の傾斜角度の異なる側面部で構成することもできる。この場合においても、第2開口部側に相当する側面部の傾斜を最も急峻にすることが望ましい。
【0026】
また、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、傾斜の緩急が、隔壁の側面と、隔壁が設けられる下地層の上面とのなす角度の大小を以って規定されている、ことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子は、隔壁の第1開口部を臨む側面部のうち、上記緩傾斜側面部が、他の部分(急傾斜側面部)よりも、その傾斜角度が5[deg.]以上小さい、ことを特徴とする。
【0028】
なお、上記において、「緩傾斜側面部」の傾斜角度は、例えば、25[°]以上30[°]以下の範囲内とすることが好ましい。また、上記において、「急傾斜側面部」の傾斜角度は、35[°]以上40[°]以下の範囲内とすることが好ましい。
【0029】
本発明の一態様に係る有機EL表示素子は、上記本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子と、薄膜トランジスタ素子の上方に設けられ、コンタクトホールが形成された平坦化膜と、平坦化膜上、および平坦化膜のコンタクトホールを臨む側面上に形成され、ドレイン電極またはソース電極と電気的に接続され下部電極と、下部電極の上方に形成された上部電極と、下部電極と上部電極との間に介挿された有機発光層と備える、ことを特徴とする。
【0030】
上記のように、本発明の一態様に係る有機EL表示素子では、上記本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子を構成中に含んでいるので、上記効果をそのまま得ることができ、高い発光品質を有する。
【0031】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示素子は、上記本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子と、薄膜トランジスタ素子の上方に設けられ、コンタクトホールが形成された平坦化膜と、平坦化膜上、およびコンタクトホールの側面上に沿って形成され、ドレイン電極またはソース電極と電気的に接続された下部電極と、下部電極の上方に形成された上部電極と、下部電極と上部電極との間に介挿された有機発光層とを備え、コンタクトホールが、その底部において、第2開口部と連通している、ことを特徴とする。
【0032】
上記のように、第2開口部が下部電極と薄膜トランジスタ素子との接続のためのコンタクト領域として機能する場合には、電極上への有機半導体層の形成を確実に抑制することによって、高い発光品質を備えることができる。
【0033】
本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、上記本発明の一態様に係る有機EL表示素子を備える、ことを特徴とする。
【0034】
上記のように、本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、上記本発明の一態様に係る有機EL表示素子を備えるので、上記同様に、高い発光品質を備える。
【0035】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法は、次の第1工程から第6工程を備える。
【0036】
(i) 第1工程;基板上にゲート電極を形成する。
【0037】
(ii) 第2工程;ゲート電極の上方に、絶縁層を形成する。
【0038】
(iii) 第3工程;絶縁層上に、絶縁層の層厚方向に対して交差する方向に互いに間隔をあけた状態で、ソース電極およびドレイン電極を並設する。
【0039】
(iv) 第4工程;絶縁層上において、ソース電極上およびドレイン電極上を覆う状態で、感光性レジスト材料を積層する。
【0040】
(v) 第5工程;積層された感光性レジスト材料をマスク露光してパターニングすることにより、ソース電極およびドレイン電極の各々の少なくとも一部を囲繞し、表面が撥液性を有する隔壁を形成する。
【0041】
(vi) 第6工程;隔壁の囲繞により構成される第1開口部の内部に有機半導体材料を塗布して乾燥させ、ソース電極およびドレイン電極に対して密に接する有機半導体層を形成する。
【0042】
そして、上記第5工程では、第1開口部を臨む側面部の一部が、他の部分よりも、その傾斜が相対的に緩やかな斜面(緩傾斜側面部)となるように、隔壁を形成する、ことを特徴とする。
【0043】
本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法では、第5工程において隔壁を形成するのに際して、第1開口部を臨む側面部の一部を緩傾斜側面部とするので、インク状の有機半導体材料を塗布した際に、インクは緩傾斜側面部の方へと偏った表面プロファイルを有することになる。これより、側面部における傾斜が急峻な他の部分(急傾斜側面部)とされた側へのインクの溢れ出しが確実に抑制され、高品質な薄膜トランジスタ素子を製造することができる。
【0044】
また、本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法は、上記第5工程において第1開口部を、その内部に対して有機半導体層の形成によりチャネル部として機能する部分として形成し、さらに、第1開口部に対して、間隔をあけた状態でチャネル部ではない第2開口部もあける。そして、隔壁の第1開口部を臨む側面部のうち、上記緩傾斜側面部を、第2開口部側に相当する部分を除く部分に設ける、ことを特徴とする。
【0045】
上記にように、第2開口部側へのインクの溢れ出しを抑制しようとする場合には、緩傾斜側面部を第2開口部側に相当する側面部を除く部分に設けることにより、第2開口部へのインクの溢れ出しを確実に抑制することができる。
【0046】
第1開口部を臨む側面部に、緩傾斜側面部と急傾斜側面部を設ける具体的な方法として、次のような方法を採用することができる。
【0047】
(1) 本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法は、上記第5工程において、隔壁の第1開口部を臨む側面部のうち、傾斜が相対的に急峻な斜面である上記他の部分(急傾斜側面部)を形成しようとする箇所に対する露光量を、緩傾斜側面部を形成しようとする箇所に対する露光量よりも大きくする、ことを特徴とする。
【0048】
(2) 本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法は、第5工程において、第1開口部を臨む側面部を形成しようとする箇所に対して、感光性レジスト材料を露光した後に、隔壁の第1開口部を臨む側面部のうち、上記急傾斜側面部を形成しようとする箇所に対して、露光処理を追加して行う、ことを特徴とする。
【0049】
(3) 本発明の一態様に係る薄膜トランジスタ素子の製造方法は、上記第5工程において、隔壁の第1開口部を臨む側面部のうち、上記急傾斜側面部を形成しようとする箇所の光透過率が、上記緩傾斜側面部を形成しようとする箇所の光透過率よりも大きいマスクを用い、露光を行う、ことを特徴とする。
【0050】
上記(1)から(3)の何れの方法を採用した場合においても、側面部に確実に緩急をつけることができる。
【0051】
本発明の一態様に係る有機EL表示素子の製造方法は、次の各工程を備える。
【0052】
(I) 工程A;薄膜トランジスタ素子を形成する。
【0053】
(II) 工程B;薄膜トランジスタ素子上に、コンタクトホールがあけられた平坦化膜を形成する。
【0054】
(III) 工程C;平坦化膜上および、平坦化膜のコンタクトホールを臨む側面上に、薄膜トランジスタ素子と電気的に接続される下部電極を形成する。
【0055】
(IV) 工程D;下部電極の上方に有機発光層を形成する。
【0056】
(V) 工程E;有機発光層の上方に上部電極を形成する。
【0057】
そして、本発明の一態様に係る有機EL表示素子の製造方法では、上記(I)工程Aが、次の(i)第1工程から(vi)第6工程を備える。
【0058】
(i) 第1工程;基板上にゲート電極を形成する。
【0059】
(ii) 第2工程;ゲート電極の上方に、絶縁層を形成する。
【0060】
(iii) 第3工程;絶縁層上に、絶縁層の層厚方向に対して交差する方向に互いに間隔をあけた状態で、ソース電極およびドレイン電極を並設する。
【0061】
(iv) 第4工程;絶縁層上において、ソース電極上およびドレイン電極上を覆う状態で、感光性レジスト材料を積層する。
【0062】
(v) 第5工程;積層された感光性レジスト材料をマスク露光してパターニングすることにより、底部にソース電極およびドレイン電極の各々の少なくとも一部を囲繞し、表面が撥液性を有する隔壁を形成する。
【0063】
(vi) 第6工程;隔壁の囲繞により構成される第1開口部の内部に半導体材料を塗布して乾燥させ、ソース電極およびドレイン電極に対して密に接する有機半導体層を形成する。
【0064】
本発明の一態様に係る有機EL表示素子の製造方法では、上記(v)第5工程において、第1開口部を臨む側面部の一部が、他の部分よりも、 その傾斜が緩やかな斜面(緩傾斜側面部)となるように、隔壁を形成する、ことを特徴とする。
【0065】
上記のように、本発明の一態様に係る有機EL表示素子の製造方法では、(I)工程Aの(v)第5工程で、第1開口部を臨む側面部の一部を、緩やかな傾斜の緩傾斜側面部とし、他の部分を急峻な傾斜の急傾斜側面部とするので、上述同様に、有機半導体層の形成に際して、不所望な箇所への有機半導体インクの溢れ出しを確実の抑制することができる。よって、高品質な有機EL表示素子を製造することができる。
【0066】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示素子の製造方法では、(I)工程Aの(v)第5工程において、第1開口部を、その内部に対して有機半導体層の形成によりチャネル部として機能する部分として形成し、さらに、第1開口部に対して、間隔をあけた状態でチャネル部ではない第2開口部も形成する。この場合において、隔壁の第1開口部を臨む側面部のうち、上記緩傾斜側面部を、第2開口部側に相当する部分を除く部分に設ける、ことを特徴とする。
【0067】
このような製造方法を採用する場合には、上記同様に、有機半導体層の形成を抑制したい第2開口部内へのインクの溢れ出しを確実に抑制することができ、高品質な有機EL表示素子を製造することができる。
【0068】
なお、上記において「上方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に規定されるものである。また、「上方」との用語は、間に間隔をあけた場合のみならず、互いに密着する場合にも適用するものである。
【0069】
以下では、幾つかの具体例を用い、本発明に係る態様の特徴、および作用・効果について説明する。なお、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以下の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。
【0070】
[実施の形態1]
1.有機EL表示装置1の全体構成
以下では、本発明の実施の形態1に係る有機EL表示装置1の構成について
図1を用い説明する。
【0071】
図1に示すように、有機EL表示装置1は、有機EL表示パネル10と、これに接続された駆動制御回路部20とを有し構成されている。
【0072】
有機EL表示パネル10は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルであり、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状に配列され構成されている。駆動制御回路部20は、4つの駆動回路21〜24と制御回路25とから構成されている。
【0073】
なお、本実施の形態に係る有機EL表示装置1では、有機EL表示パネル10に対する駆動制御回路部20の配置については、これに限られない。
【0074】
2.有機EL表示パネル10の構成
有機EL表示パネル10の構成について、
図2の模式断面図および
図3(a)を用い説明する。
【0075】
図2に示すように、有機EL表示パネル10は、TFT(薄膜トランジスタ)基板101を備える。TFT基板101は、基板1011の上に、ゲート電極1012a,1012bが互いに間隔をあけた状態で積層され、その上を覆うように、絶縁層1013が積層形成されている。絶縁層1013の上には、ソース電極1014a,1014bがそれぞれゲート電極1012a,1012bに対応して設けられ、また、
図3(a)に示すように、ソース電極1014a,1014bのそれぞれに対してY軸方向に間隔をあけてドレイン電極1014c,1014dが設けられている。
【0076】
また、
図2および
図3(a)に示すように、絶縁層1013上には、ソース電極1014aに対してX軸方向左側に間隔をあけて、接続配線1015が形成されている。なお、接続配線1015は、ソース電極1014aまたはドレイン電極1014cから延出形成され、あるいは、これらの一方と電気的に接続されている。
【0077】
図2および
図3(a)に示すように、絶縁層1013上には、接続配線1015、ソース電極1014aおよびドレイン電極1014c、ソース電極1014bおよびドレイン電極1014dを、それぞれ囲繞するよう隔壁1016が形成されている。換言すると、
図3(a)に示すように、隔壁1016に開けられた3つの開口部1016a,1016b,1016cのうち、接続配線1015が底部に露出するX軸方向左側の開口部1016aが、チャネル部とは異なる部分であり、アノードとのコンタクト部として機能する。一方、底部にソース電極1014aとドレイン電極1014cが露出する開口部1016b、および底部にソース電極1014bとドレイン電極1014dが露出する開口部1016cが、それぞれチャネル部として機能する部分である。
【0078】
隔壁1016で囲繞された各領域のうち、ソース電極1014aおよびドレイン電極1014cの上に相当する領域、およびソース電極1014bおよびドレイン電極1014dの上に相当する領域には、それぞれ有機半導体層1017a,1017bが積層形成されている。有機半導体層1017aは、ソース電極1014aとドレイン電極1014cとの間の間隙、およびソース電極1014a、ドレイン電極1014cの各上を充填するように形成され、これら電極1014a,1014cと密に接している。有機半導体層1017bについても、同様に、電極1014b,1014dと密に接するよう形成されている。そして、有機半導体層1017a,1017bは、隔壁1016により互いに区画されている。
【0079】
図2に示すように、有機半導体層1017a,1017bおよび絶縁層1013の上を覆うように、パッシベーション膜1018が積層形成されている。ただし、接続配線1015の上に相当する箇所は、開口されている。
【0080】
本実施の形態に係る有機EL表示パネル10のTFT基板101は、以上のような構成を有する。
【0081】
次に、
図2に示すように、TFT基板101上は、平坦化膜102で被覆されている。ただし、接続配線1015の上は、コンタクトホール102aが開けられている。そして、平坦化膜102の主面に沿ってアノード103、透明導電膜104、およびホール注入層105が順に積層形成されている。これら、アノード103、透明導電膜104、およびホール注入層105は、平坦化膜102におけるコンタクトホール102aを臨む側面に沿っても形成されており、アノード103は、接続配線1015と接触し、電気的に接続されている。
【0082】
ホール注入層105の上には、発光部(サブピクセル)に相当する箇所を囲繞するようにバンク106が形成されている。バンク106が囲繞することで形成される開口部には、ホール輸送層107、有機発光層108、および電子輸送層109が順に積層形成されている。
【0083】
さらに、電子輸送層109の上、およびバンク106の露出面を覆うように、カソード110および封止層111が順に積層形成され、封止層111に対向するようにCF(カラーフィルタ)基板113が配され、間に接着層112が充填されて互いに接合されている。CF基板113は、基板1131のZ軸方向下側主面にカラーフィルタ1132およびブラックマトリクス1133が形成され構成されている。
【0084】
3.有機EL表示パネル10の構成材料
有機EL表示パネル10では、例えば、各部位を次のような材料を用い形成することができる。
【0085】
(i) 基板1011
基板1011は、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素基などの半導体基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0086】
プラスチック基板としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルベンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂) 、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、プリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、変形ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1 種、または2 種以上を積層した積層体を用いることができる。
【0087】
(ii) ゲート電極1012a,1012b
ゲート電極1012a,1012bは、例えば、導電性を有する材料であれば特に限定されない。
【0088】
具体的な材料として、たとえば、クロム、アルミニウム、タンタル、モリブデン、ニオブ、銅、銀、金、白金、プラチナ、パラジウム、インジウム、ニッケル、ネオジウムなどの金属もしくはそれらの合金、または、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ガリウムなどの導電性金属酸化物もしくはインジウムスズ複合酸化物(以下、「ITO」と略す。)、インジウム亜鉛複合酸化物(以下、「IZO」と略す。)、アルミニウム亜鉛複合酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛複合酸化物(GZO)などの導電性金属複合酸化物、または、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性高分子もしくはそれらに、塩酸、硫酸、スルホン酸などの酸、六フッ化リン、五フッ化ヒ素、塩化鉄などのルイス酸、ヨウ素などのハロゲン原子、ナトリウム、カリウムなどの金属原子などのドーパントを添加したもの、もしくは、カーボンブラックや金属粒子を分散した導電性の複合材料などが挙げられる。また、金属微粒子とグラファイトのような導電性粒子を含むポリマー混合物を用いてもよい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0089】
(iii) 絶縁層1013
絶縁層1013は、ゲート絶縁層として機能するものであって、例えば、絶縁性を有する材料であれば特に限定されず、公知の有機材料や無機材料のいずれも用いることができる。
【0090】
有機材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂などを用い形成することができる。
【0091】
また、無機材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化コバルトなどの金属酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化セリウム、窒化亜鉛、窒化コバルト、窒化チタン、窒化タンタルなどの金属窒化物、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウムチタン酸鉛などの金属複合酸化物が挙げられる。これらは、1 種または2 種以上組み合わせて用いることができる。
【0092】
さらに、表面処理剤(ODTS OTS HMDS βPTS)などでその表面を処理したものも含まれる。
【0093】
(iv) ソース電極1014a,1014b、ドレイン電極1014c,1014d、および接続配線1015
ソース電極1014a,1014b、ドレイン電極1014c,1014d、および接続配線1015は、ゲート電極1012a,1012bを形成するための上記材料を用い形成することができる。
【0094】
(v) 有機半導体層1017a,1017b
有機半導体層1017a,1017bは、例えば、半導体特性を有し、溶媒に可溶であれば特に限定されない。例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン) (PTV)もしくはクォーターチオフェン(4T)、セキシチオフェン(6T)およびオクタチオフェンなどのα−オリゴチオフェン類もしくは2,5−ビス(5'−ビフェニル−2'−チエニル)−チオフェン(BPT3)、2,5−[2,2'−(5,5'−ジフェニル)ジチエニル]−チオフェンなどのチオフェン誘導体、ポリ(パラ−フェニレンビニレン) (PPV) などのフェニレンビニレン誘導体、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン) (PFO) などのフルオレン誘導体、トリアリルアミン系ポリマー、アントラセン、テトラセン、ペンタセンおよびヘキサセン等のアセン化合物、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)および1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)などのベンゼン誘導体、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)および鉄フタロシアニンのようなフタロシアニン誘導体、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq3)、およびファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3) のような有機金属化合物、C60、オキサジアゾール系高分子、トリアゾール系高分子、カルバゾール系高分子およびフルオレン系高分子のような高分子系化合物ならびにポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−メトキシフェニル)−ビス−N,N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン) (PFMO)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ベンゾチアジアゾール) (BT) 、フルオレン−トリアリルアミン共重合体およびポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ジチオフェン) (F8T2)などのフルオレンとの共重合体などが挙げられる。これらは、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0095】
また、溶媒に可溶な無機材料も使用することが可能である。
【0096】
(vi) パッシベーション膜1018
パッシベーション膜1018は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などの水溶性樹脂や、フッ素系樹脂などを用い形成することができる。
【0097】
(vii) 平坦化膜102
平坦化膜102は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル系樹脂材料などの有機化合物を用い形成されている。
【0098】
(viii) アノード103
アノード103は、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含む金属材料から構成されている。トップエミッション型の本実施の形態に係る有機EL表示パネル10の場合には、その表面部が高い反射性を有することが好ましい。
【0099】
(ix) 透明導電膜104
透明導電膜104は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)若しくはIZO(Indium Zinc Oxide)などを用い形成される。
【0100】
(x) ホール注入層105
ホール注入層105は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。なお、
図2に示す本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、金属酸化物からなるホール注入層105を構成することを想定しているが、この場合には、PEDOTなどの導電性ポリマー材料を用いる場合に比べて、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層108に対しホールを注入する機能を有し、大きな仕事関数を有する。
【0101】
ここで、ホール注入層105を遷移金属の酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。特に、酸化タングステン(WO
X)を用いることが、ホールを安定的に注入し、且つ、ホールの生成を補助するという機能を有するという観点から望ましい。
【0102】
(xi) バンク106
バンク106は、樹脂等の有機材料を用い形成されており絶縁性を有する。バンク106の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。バンク106は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。さらに、バンク106は、製造工程中において、エッチング処理、ベーク処理など施されることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。また、表面に撥水性をもたせるために、表面をフッ素処理することもできる。
【0103】
なお、バンク106を親液性の材料を用い形成した場合には、バンク106の表面と発光層108の表面との親液性/撥液性の差異が小さくなり、有機発光層108を形成するために有機物質を含んだインクを、バンク106が規定する開口部内に選択的に保持させることが困難となってしまうためである。
【0104】
さらに、バンク106の構造については、
図2に示すような一層構造だけでなく、二層以上の多層構造を採用することもできる。この場合には、層毎に上記材料を組み合わせることもできるし、層毎に無機材料と有機材料とを用いることもできる。
【0105】
(xii) ホール輸送層107
ホール輸送層107は、親水基を備えない高分子化合物を用い形成されている。例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどを用いることができる。
【0106】
(xiii) 有機発光層108
発光層108は、上述のように、ホールと電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。有機発光層108の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用い製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
【0107】
具体的には、例えば、特許公開公報(日本国・特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0108】
(xiv) 電子輸送層109
電子輸送層109は、カソード110から注入された電子を発光層108へ輸送する機能を有し、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。
【0109】
(xv) カソード110
カソード110は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)若しくはIZO(Indium Zinc Oxide)などを用い形成される。本実施の形態のように、トップエミッション型の本実施の形態に係る有機EL表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが必要となる。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
【0110】
カソード110の形成に用いる材料としては、上記の他に、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらのハロゲン化物を含む層の構造、あるいは、前記いずれかの層に銀を含む層とをこの順で積層した構造を用いることもできる。上記において、銀を含む層は、銀単独で形成されていてもよいし、銀合金で形成されていてもよい。また、光取出し効率の向上を図るためには、当該銀を含む層の上から透明度の高い屈折率調整層を設けることもできる。
【0111】
(xvi) 封止層111
封止層111は、発光層108などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成される。また、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0112】
封止層111は、トップエミッション型である本実施の形態に係る有機EL表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが必要となる。
【0113】
4.TFT基板101における隔壁1016の構成
有機EL表示パネル10の構成のうち、TFT基板101における隔壁1016およびその周辺の構成について、
図3を用い説明する。
【0114】
図3(a)および
図3(b)に示すように、本実施の形態に係る有機EL表示パネル10のTFT基板101では、接続配線1015の一部、ソース電極1014aとドレイン電極1014cの各一部、ソース電極1014bとドレイン電極1014dの各一部を、それぞれ囲繞するように隔壁106が形成されている。これにより、
図3(a)および
図3(b)に示すように、隔壁1016には、3つの開口部1016a,1016b,1016cがあけられている。なお、
図3(a)および
図3(b)では、TFT基板101における他のサブピクセルに相当する箇所での構成については図示していないが、同様の構成となっている。
【0115】
X軸方向の最も左側に設けられた開口部1016aの底部には、接続配線1015が露出しており、上述のように、当該接続配線1015は、ソース電極1014aまたはドレイン電極1014cの一方(本実施の形態では、ドレイン電極1014c)と接続されており、また、
図2に示すように、アノード103が接続されることになる。
【0116】
図3(a)および
図3(b)に示すように、X軸方向の中央の開口部1016bの底部には、ソース電極1014aおよびドレイン電極1014cの各一部が露出しており、X軸方向右側の開口部1016cの底部には、ソース電極1014bおよびドレイン電極1014dの各一部が露出している。
【0117】
図3(a)に示すように、各開口部1016b,1016c内では、ソース電極1014a,1014bとドレイン電極1014c,1014dとは、Y軸方向において互いに間隔をあけた状態で配置されている。開口部1016b,1016c内には、上記のように、有機半導体層1017a,1017bが形成され、当該部分がチャネル部として機能する。
【0118】
次に、
図3(b)に示すように、本実施の形態に係るTFT基板101では、隔壁1016における開口部1016a,1016b,1016cを臨む側面部のうち、一部の側面部の傾斜を他に比べて緩やかにしている。具底的には、開口部1016bを臨む側面部のうち、開口部1016c側の側面部1016eの傾斜は、開口部1016a側の側面部1016dの傾斜よりも緩やかに形成されている。
【0119】
また、開口部1016cを臨む側面部のうち、開口部1016b側の側面部1016fの傾斜は、開口部1016cを挟んで対向する側面部1016gの傾斜よりも緩やかに形成されている。
【0120】
さらに、
図3(a)に示すように、開口部1016bを臨む側面部のうち、Y軸方向に互いに対向する側面部1016h,1016iは、側面部1016dと同様に、側面部1016eよりも傾斜が急峻になっている。また、開口部1016cを臨む側面部のうち、Y軸方向に互いに対向する側面部1016j,1016kは、側面部1016gと同様に、側面部1016fよりも傾斜が急峻になっている。
【0121】
ここで、下地層である絶縁層1013、ソース電極1014aおよびドレイン電極1014cの表面に対する側面部1016dの傾斜角度を角度θdとし、同様に、側面部1016eの傾斜角度を角度θe、側面部1016hの傾斜角度を角度θh、側面部1016iの傾斜角度を角度θiとするとき、本実施の形態では、次の関係を満足する。
【0122】
[数1] θd>θe
[数2] θh>θe
[数3] θi>θe
また、下地層である絶縁層1013、ソース電極1014bおよびドレイン電極1014dの表面に対する側面部1016fの傾斜角度を角度θfとし、同様に、側面部1016gの傾斜角度を角度θg、側面部1016jの傾斜角度を角度θj、側面部1016kの傾斜角度を角度θkとするとき、次の関係も満足する。
【0123】
[数4] θg>θf
[数5] θj>θf
[数6] θk>θf
ここで、傾斜が緩やかな側面部(緩傾斜側面部)1016e,1016fの傾斜角度θe,θfが、他の側面部(急傾斜側面部)1016d,1016g,1016h,1016i,1016j,1016kの傾斜角度θd,θg,θh,θi,θj,θkに対して、5[deg.]以上小さくなっていることが好ましい。
【0124】
また、傾斜が緩やかな側面部(緩傾斜側面部)1016e,1016fの傾斜角度θe,θfは、例えば、25[°]以上30[°]以下の範囲内とすることが好ましい。さらに、傾斜が急峻な急傾斜側面部1016d,1016g,1016h,1016i,1016j,1016kの傾斜角度θd,θg,θh,θi,θj,θkは、例えば、35[°]以上40[°]以下の範囲内とすることが好ましい。
【0125】
上記のように、隔壁106において、開口部1016a,1016b,1016cを臨む各側面部1016d〜1016kの傾斜角度に差異を設けるのは、有機半導体層1017a,1017bの形成の際に、開口部1016aに有機半導体インクが溢れ出すことを抑制するためである。換言すると、開口部1016b,1016cに有機半導体インクを塗布した差異に、傾斜を緩やかにした側面部1016e,1016fの側に有機半導体インクの表面フプロファイルが偏るようにしている。これについては、後述する。
【0126】
5.有機EL表示装置1の製造方法
有機EL表示装置1の製造方法、特に、有機EL表示パネル10の製造方法について、
図2と
図4を用い説明する。
【0127】
図2および
図4に示すように、先ず、TFT基板101のベースとなる基板1011を準備する(ステップS1)。そして、当該基板1011にTFT(薄膜トランジスタ)素子を形成し、TFT基板101を形成する(ステップS2)。
【0128】
次に、
図2および
図4に示すように、TFT基板101上に絶縁材料からなる平坦化膜102を形成する(ステップS3)。
図2に示すように、平坦化膜102では、TFT基板101における接続配線1015の上方に相当する箇所にコンタクトホール102aがあけられ、その他の部分のZ軸方向上面を略平坦化されている。
【0129】
次に、平坦化膜102上にアノード103を形成する(ステップS4)。ここで、
図2に示すように、アノード103は、発光単位(サブピクセル)で区画され形成されており、コンタクトホール102aの側壁に沿って一部がTFT基板101の接続配線1015に接続される。
【0130】
なお、アノード103は、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法などにより金属膜を成膜した後、サブピクセル単位にエッチングすることで形成できる。
【0131】
次に、アノード103の上面を覆うように透明導電膜104を形成する(ステップS5)。
図2に示すように、透明導電膜104は、アノード103の上面のみならず側端面も覆っており、また、コンタクトホール102a内においてもアノード103の上面を覆っている。なお、透明導電膜104は、上記同様に、スパッタリング法や真空蒸着法などを用い成膜した後、エッチングによりサブピクセル単位に区画することにより形成される。
【0132】
次に、透明導電膜104上にホール注入層105を形成する(ステップS6)。
図2に示すように、ホール注入層105は、透明導電膜104上の全面を覆うように形成されているが、サブピクセル毎に区画した状態で形成することもできる。
【0133】
金属酸化物(例えば、酸化タングステン)からホール注入層105を形成する場合には、金属酸化膜の形成は、例えば、アルゴンガスと酸素ガスにより構成されたガスをスパッタ装置のチャンバー内のガスとして用い、当該ガスの全圧が2.7[Pa]を超え7.0[Pa]以下であり、且つ、酸素ガス分圧の全圧に対する比が50[%]以上70[%]以下であって、さらにターゲット単位面積当たりの投入電力密度が1[W/cm
2]以上2.8[W/cm
2]以下となる成膜条件を採用することができる。
【0134】
次に、各サブピクセルを規定するバンク106を形成する(ステップS7)。
図2に示すように、バンク106は、ホール注入層105の上に積層形成される。
【0135】
バンク106の形成は、先ず、ホール注入層105の上に、バンク106の材料層を積層形成する。この材料層は、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などの感光性樹脂成分とフッ素成分を含む材料を用い、スピンコート法等により形成される。なお、本実施の形態においては、感光性樹脂材料の一例として、日本ゼオン製ネガ型感光性材料(品番:ZPN1168)を用いることができる。次に、材料層をパターニングして、各サブピクセルに対応する開口部を形成する。開口部の形成には、材料層の表面にマスクを配して露光を行い、その後で現像を行うことにより形成できる。
【0136】
次に、ホール注入層105上におけるバンク106で規定された各凹部内に対し、ホール輸送層107、有機発光層108、および電子輸送層109を順に積層形成する(ステップS8〜S10)。
【0137】
ホール輸送層107は、その構成材料である有機化合物からなる膜を印刷法で成膜した後、焼成することで形成される。有機発光層108についても、同様に、印刷法で成膜した後、焼成することで形成される。
【0138】
次に、電子輸送層109上にカソード110および封止層111を順に積層する(ステップS11,S12)。
図2に示すように、カソード110および封止層111は、バンク106の頂面も被覆するように形成されており、全面に形成されている。
【0139】
次に、封止層111上に接着樹脂材を塗布し、予め準備しておいたCF(カラーフィルタ)パネルを接合する(ステップS13)。
図2に示すように、接着層112により接合されるCFパネル113は、基板1031のZ軸方向下面にカラーフィルタ1132およびブラックマトリクス1133が形成されてなる。
【0140】
以上のように、有機EL表示素子としての有機EL表示パネル10が完成する。
【0141】
なお、図示を省略しているが、有機EL表示パネル10に対して駆動制御部20を付設して有機EL表示装置1を形成した後(
図1を参照)、エージング処理を施すことにより有機EL表示装置1が完成する。エージング処理は、例えば、処理前におけるホール注入性に対して、ホールの移動度が1/10以下となるまで通電を行うことでなされ、具体的には、実際の使用時における輝度以上であって、且つ、その3倍以下の輝度となるように、予め規定された時間、通電処理を実行する。
【0142】
次に、TFT基板101の形成方法について、
図3(b)および
図4(b)を用い説明する。
【0143】
図3(b)および
図4(b)に示すように、基板1011の主面上にゲート電極1012a,1012bを形成する(ステップS21)。ゲート電極1012a,1012bの形成に関しては、上記アノード103の形成方法と同様の方法とすることができる。
【0144】
次に、ゲート電極1012a,1012bおよび基板1011の上を覆うように、絶縁層1013を積層形成する(ステップS22)。そして、絶縁層1013の主面上に、ソース電極1014a,1014bおよびドレイン電極1014c,1014d、さらには接続配線1015を形成する(ステップS23)。
【0145】
次に、ソース電極1014a,1014b、ドレイン電極1014c,1014d、接続配線1015、さらには絶縁層1013の上を覆うように、隔壁1016を形成するためのレジスト膜を堆積させる(ステップS24)。そして、堆積させたレジスト膜に対して、マスク露光およびパターニングを施し(ステップS25)、隔壁1016を形成する(ステップS26)。この部分については、具体例をあげて後述する。
【0146】
隔壁1016を形成した後、隔壁1016により規定される開口部1016b,1016cに対し、有機半導体層1017a,1017bを形成するための有機半導体インクを塗布する(ステップS27)。そして、これを乾燥させることにより(ステップS28)、有機半導体層1017a,1017bが形成できる(ステップS29)。
【0147】
最後に、開口部1016aを除く全体を覆うように、パッシベーション膜1018を形成して(ステップS30)、TFT基板101が完成する。
【0148】
6.有機半導体インクの塗布時における表面プロファイル
上記ステップS27において塗布された有機半導体インクの表面プロファイルについて、
図5を用い説明する。
【0149】
図5に示すように、開口部1016bと開口部1016cにそれぞれ塗布された有機半導体インク10170,10171は、それぞれの表面プロファイルがX軸方向に対称とはならず、開口部1016bと開口部1016cとの境界部分に偏ったプロファイルとなる。
【0150】
これは、開口部1016bを臨む側面部のうち、側面部1016eの傾斜を他の側面部よりも緩くし、開口部1016cを臨む側面部のうち、側面部1016fの傾斜を他の側面部よりも緩くしていることに起因する。即ち、隔壁1016の表面の撥液性が面内で略同一であるので、隔壁1016の表面とインク10170,10171の接触角との関係、およびインクの表面張力の関係、さらに隔壁1016の開口部1016b,1016cを臨む各側面部の傾斜角の関係に基づき、インク10170,10171の表面プロファイルが
図5に示すように規定される。
【0151】
なお、図示をしていないが、側面部1016h,1016i,1016j,1016kについても傾斜が、側面部1016e,1016fよりも急峻であるので(
図3(a)を参照)、インク10170,10171との各接触部は、側面部1016d,1016gに対するインク10170,10171の各接触形態と同様となる。
【0152】
7.奏することができる効果
本実施の形態に係る有機EL表示パネル10では、TFT基板101において、隔壁1016の開口部1016b,1016cを臨む側面部のうち、側面部1016e,1016fの傾斜を、その他の側面部1016d,1016g〜1016kよりも緩やかなものとしている。このため、
図5に示すように、有機半導体インク10170,10171を塗布した際には、緩傾斜側面部である側面部1016e,1016fの側へと偏った表面プロファイルとなる。
【0153】
本実施の形態では、開口部1016aがアノード103との接続に供される接続配線1015が底部に露出する箇所であり(チャネル部ではない箇所)、インク10170の溢れ出しを抑制したい領域である。本実施の形態では、このような事項を考慮し、上記のように、インク10170,10171の表面プロファイルを
図5に示すようにコントロールすることで、開口部1016aへの不所望のインク10170,10171の溢れ出しを確実に抑制することができる。なお、開口部1016bに対してX軸方向右側への不所望のインク10171の漏れ出しも本実施の形態では抑制しようとしている。
【0154】
よって、本実施の形態に係るTFT基板101では、上記のように、その製造時において、有機半導体層1017a,1017bを形成したくない箇所へのインク10170,10171の溢れ出しを確実に抑制することができ、高い品質を有する。そして、このような効果を有するTFT基板101を構成要素として備える有機EL表示パネル10、さらには、それを備える有機EL表示装置1も高い品質を有する。
【0155】
8.TFT基板101における隔壁1016の形成方法
TFT基板101における隔壁1016の形成方法について、
図6および
図7を用い説明する。
【0156】
先ず、
図6(a)に示すように、基板1011上にゲート電極1012a,1012b、絶縁層1013、およびソース電極1014a,1014b、ドレイン電極1014c,1014d、接続配線1015が形成された中間物を用意する。なお、
図6および
図7では、ドレイン電極1014c.1014dの図示を省略している。
【0157】
次に、
図6(b)に示すように、例えば、スピンコート法などを用い、絶縁層1013および電極1014a〜1014d,1015の上を覆うように、感光性レジスト材料膜10160を堆積する。
【0158】
次に、
図6(c)に示すように、感光性レジスト材料膜10160の上方に、隔壁1016を形成しようとする箇所に開口501a〜501dがあけられたマスク501を配する。この状態でマスク501の開口501a〜501dを通して、露光を実行する。
【0159】
次に、
図7(a)に示すように、一回目の露光が実行された感光性レジスト材料膜10161の上方に、急峻な側面部を形成しようとする箇所に開口502a〜502dがあけられたマスク502を配する。そして、この状態でマスク502の開口502a〜502dを通して、2回目の露光を実行する。ここで、急峻な側面部とは、
図3に示す側面部1016d,1016g〜1016kである。
【0160】
次に、現像およびベークを施すことによって、
図7(b)に示すように、傾斜が相対的に緩やかな側面部1016e,1016fと、傾斜が相対的に急峻な側面部1016d,1016g〜1016kを有する隔壁1016が形成できる。
【0161】
[実施の形態2]
実施の形態2に係る有機EL表示パネルの製造方法について、
図8を用い説明する。なお、本実施の形態に係る有機EL表示パネルは、その構造は上記実施の形態1と同様であり、また、TFT基板101における隔壁1016の形成方法を除く、有機EL表示パネルの製造方法についても上記実施の形態1と同様である。
【0162】
図8に示すように、堆積した感光性レジスト材料膜10160の上方に、ハーフトーンマスクであるマスク503を配する。マスク503には、光透過部503a〜503hが設けられている。このうち、光透過部503a,503d,503f,503hと光透過部503b,503c,503e,503gとは、互いに光透過率が相違する。具体的には、傾斜が急峻な側面部1016d、1016g〜1016kに対応する箇所の光透過部503b,503c,503e,503gの光透過率は、他の光透過部503a,503d,503f,503hの光透過率よりも高くなっている。
【0163】
以上のような構成を有するマスク503を配した状態で、露光・現像を実行した後、ベークすることにより、
図3(b)に示すような、隔壁1016を形成することができる。即ち、光の透過率が大きく設定された光透過部503b,503c,503e,503gを通して露光された箇所では、他の光透過部503a,503d,503f,503hを通して露光された箇所よりも、上記[数1]〜[数6]で示す関係のように、側面部1016d,1016g〜1016kの傾斜角度が大きくなる。
【0164】
なお、この後の工程は、上記実施の形態1と同様である。
【0165】
以上のような製造方法によっても、上記実施の形態1に係る有機EL表示装置1を製造することができる。
【0166】
このような製造方法を用いても、開口部1016b,1016cを臨む側面部のうち、側面部1016e,1016fを相対的に緩やかな傾斜とすることができ、上記のような効果を得ることができる。
【0167】
[実施の形態3]
次に、
図9および
図10を用い、有機EL表示装置1の製造方法の別の実施形態について説明する。
図9および
図10は、
図6(b)から
図7(b)に示す工程に対応する工程を示す。
【0168】
図9(a)に示すように、感光性レジスト材料膜10160を堆積した後、その上方にマスク504を配する。マスク504には、隔壁106を形成しようとする各箇所に対応して、開口504a〜504dがあけられている。
【0169】
そして、マスク504の開口504a〜504dを通して一回目の露光および現像をすることにより、
図9(b)に示すように、開口504a〜504dの各々に対応する箇所に感光性レジスト材料膜10162が残る。ここで、感光性レジスト材料膜10162が規定する開口部10162a〜10162cを臨む各側面部10162d〜10162g,・・は、全て同じ傾斜角となっており、
図3における側面部1016e,1016fの傾斜角と同一となっている。
【0170】
なお、本実施の形態に係る製造方法では、この時点でのベークを行わない。
【0171】
次に、
図10(a)に示すように、感光性レジスト材料膜10162上方に、マスク505を配する。マスク505には、傾斜が急な側面部1016d,1016g〜1016kを形成しようとする箇所に対応して、開口505a〜505dがあけられている。
【0172】
そして、マスク505にあけられた開口505a〜505dを通して、二回目の露光および現像を行う。その後、ベークをすることにより、
図10(b)に示すような隔壁1016が形成できる。
【0173】
この後、上記実施の形態1,2などと同様の工程を実行することにより、有機EL表示装置1を製造することができる。
【0174】
このような製造方法を用いても、開口部1016b,1016cを臨む側面部のうち、側面部1016e,1016fを相対的に緩やかな傾斜とすることができ、上記のような効果を得ることができる。
【0175】
[実施の形態4]
本発明の実施の形態4に係る有機EL表示装置の構成について、
図11を用い説明する。なお、以下では、上記実施の形態1との相違点である、TFT基板における隔壁3016の構成だけを説明する。
【0176】
図11に示すように、本実施の形態に係るTFT基板の隔壁3016では、3つの開口部3016a〜3016cがあけられている。なお、TFT基板全体では、更に多数の開口部があけられているが、図示を省略している。
【0177】
本実施の形態に係るTFT基板の隔壁3016は、上記実施の形態1と比べて、開口部3016a〜3016cの形状が相違する。具体的には、上記実施の形態1では、開口部1016a〜1016cの開口形状が長方形であったのに対し、本実施の形態では、開口部3016a〜3016cの開口形状が、各コーナー部分が曲率を以って構成されている。このため、開口部3016a〜3016cを臨む側面部は、明確に複数の側面部に分けることはできない。
【0178】
開口部3016aの底部には、上記実施の形態1と同様に、アノードとの接続に供される接続配線3015が配設されており、開口部3016b,3016cには、それぞれソース電極3014a,3014bおよびドレイン電極3014c,3014dが配設されている。そして、上記同様に、開口部3016b,3016cは、有機半導体層の形成を以ってチャネル部として機能する部分である。
【0179】
上記構成において、開口部3016b,3016cを臨む側面部のうち、領域3016e,3016fが領域3016d,3016gを含む他の領域に比べて傾斜が緩やかになっている。
【0180】
以上のような構成を採用することにより、本実施の形態に係るTFT基板の製造では、有機半導体インクの塗布に際して、開口部3016aへのインクの溢れ出しを確実に抑制することができる。よって、製造されたTFT基板は、高品質であり、これを備える有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置も高品質なものとすることができる。
【0181】
[実施の形態5]
本発明の実施の形態5に係る有機EL表示装置の構成について、
図12を用い説明する。なお、以下では、上記実施の形態1との相違点である、TFT基板における隔壁3016の構成だけを説明する。
【0182】
図12に示すように、本実施の形態に係るTFT基板の隔壁4016では、3つの開口部4016a〜4016cがあけられている。なお、TFT基板全体では、更に多数の開口部があけられているが、図示を省略している。
【0183】
本実施の形態に係るTFT基板の隔壁4016は、上記実施の形態1,5と比べて、開口部4016a〜4016cの形状が相違する。具体的には、上記実施の形態1では、開口部1016a〜1016cの開口形状が長方形であり、上記実施の形態5では、開口部3016a〜3016cの開口形状が角丸の(コーナーが曲率をもった)長方形であったのに対し、本実施の形態では、開口部4016a〜4016cの開口形状は、八角形となっている。
【0184】
開口部4016aの底部には、上記実施の形態1と同様に、アノードとの接続に供される接続配線4015が配設されており、開口部4016b,4016cには、それぞれソース電極4014a,4014bおよびドレイン電極4014c,4014dが配設されている。そして、上記同様に、開口部4016b,4016cは、有機半導体層の形成を以ってチャネル部として機能する部分である。
【0185】
なお、開口部4016b,4016cの底部においては、ソース電極4014a,4016bおよびドレイン電極4014c,4014dの全体が露出するように配設されている。
【0186】
上記において、開口部4016b,4016cを臨む側面部のうち、側面部4016e,4016fの傾斜が他の側面部に比べて最も緩やかなものとなっており、また、側面部4016h,4016i,4016j,4016kの傾斜は、それに次いで緩やかになっている。
【0187】
以上のような構成を採用することにより、本実施の形態に係るTFT基板の製造では、有機半導体インクの塗布に際して、開口部4016aへのインクの溢れ出しを確実に抑制することができる。よって、製造されたTFT基板は、高品質であり、これを備える有機EL表示パネルおよび有機EL表示装置も高品質なものとすることができる。
【0188】
なお、側面部4016h,4016i,4016j,4016kの傾斜を、側面部4016e,4016fの傾斜と側面部4016d,4016g,・・の傾斜との中間の角度となっているので、有機半導体層の表面形状が歪なものとなることを回避することができる。
【0189】
[その他の事項]
上記実施の形態1〜5では、有機EL表示パネル10に用いるTFT基板を一例としたが、適用対象はこれに限定されるものではない。例えば、液晶表示パネルや電界放出表示パネルなどに適用することもできる。さらに、電子ペーパなどにも適用することができる。
【0190】
また、上記実施の形態1〜5の各構成材料は、一例として示したものであって、適宜変更が可能である。
【0191】
また、
図2に示すように、上記実施の形態1に係る有機EL表示パネル10では、トップエミッション型の構成を一例としたが、ボトムエミッション型を採用することもできる。その場合には、各使用材料およびレイアウト設計について、適宜の変更が可能である。
【0192】
また、上記においては、TFT基板101などにおける開口部を臨む側面部の傾斜角度の定義についての説明をしなかったが、
図13(a)に示すように下地層の主面に対する側面部がなす角度θとすることができる。なお、
図13(b)に示すように、側面部の開口部底に近い部分に“ダレ”が生じている場合には(二点鎖線で囲んだ部分)、“ダレ”を除外して考えた場合の傾斜角度とすることができる。
【0193】
また、上記では、隔壁が規定する開口部の開口形状について、4つの形状を一例として示したが、これ以外にも、種々の開口形状のものを採用することができる。例えば、
図14(a)に示すように、正方形の開口形状のものや、
図14(b)に示すように、一辺が円弧状で、残りの3辺が直線であるような形状や、
図14(c)に示すように、円形あるいは長円形などとすることもできる。
【0194】
また、上記では、有機半導体インクを溢れ出させたくない開口部として、アノードなどとのコンタクトのための開口部を一例として採用したが、これ以外にも種々の開口部を採用することができる。例えば、形成したTFTに不良が発見された場合に、不良セルにのみ、新たにTFTを形成してリペアを行うリペア用の開口部を採用することができる。
【0195】
また、TFT基板における隔壁の応力が非常に大きい場合などには、穴をあけて応力を緩和する場合が生じ得る。このような場合には、当該応力緩和用の穴には、インクを溢れ出さないようにすることが好ましい。なお、応力緩和用の穴については、有機半導体層が形成されることは特に問題とはならないが、当該穴に溢れ出した分だけ、本来、有機半導体層を形成しようとする箇所へのインク量が減少することになり、有機半導体層の層厚みの制御という観点から望ましくない。即ち、インクの溢れ出しにより、TFTの性能に影響を与えてしまう場合も考えられる。このような観点から、応力緩和用の穴にもインクが溢れ出さないようにしておくことが望ましい。
【0196】
さらに、本発明は、上記有機半導体インクを溢れ出させたくない開口部を有する形態に限らず、有機半導体インクを溢れ出させたくない開口部を有しない形態にも適用することができる。具体的には、有機半導体層が形成される2以上の開口部が隣接して配置される形態において、隣接する開口部にインクを溢れ出させないように隔壁を構成することとしてもよい。この場合、各開口部ごとに有機半導体インクを分離して存在させて成膜できるので、有機半導体インクが開口部間に跨って存在した状態で成膜させる場合に比べて、各開口部ごとの有機半導体層の層厚のバラツキを低減させ易くなり、この結果、良好な半導体特性や、歩留まりの向上が見込まれる。