(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806338
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】少なくとも1つの超電導巻線を備え固定子に対し回転可能な回転子を有する超電導同期機
(51)【国際特許分類】
H02K 55/04 20060101AFI20151021BHJP
H02K 9/00 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
H02K55/04
H02K9/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-557036(P2013-557036)
(86)(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公表番号】特表2014-511670(P2014-511670A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】EP2012053007
(87)【国際公開番号】WO2012119858
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2014年1月17日
(31)【優先権主張番号】102011005091.4
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】フランク、ミヒァエル
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハッセルト、ペーター
【審査官】
宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−094558(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0052555(US,A1)
【文献】
特開2003−204643(JP,A)
【文献】
特開昭60−210160(JP,A)
【文献】
特開昭61−098155(JP,A)
【文献】
特開昭54−023912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 55/00−55/06
H02K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却装置(5)によって冷却される少なくとも1つの超電導巻線を備え、固定子(2)に対して相対的に回転可能な回転子(3)を有しており、前記回転子(3)の冷却領域が、少なくとも部分的に前記回転子(3)と共に回転する真空室(10)によって囲まれている、超電導同期機(1、1'、1''、1''')において、
少なくとも2つの回転シール(13a,13b)によって、前記回転子(3)とは異なり固定で前記真空室(10)を境界付ける接続領域(22)が形成され、その接続領域(23)内に、前記真空室(10)を当該真空室(10)の外側の真空ポンプ(23)に接続するポンプ導管(21)が接続されており、
前記冷却装置(5)の一部として、冷却媒体用の固定された導管部分(7)が、前記回転子(3)中を通されており、ここに
前記固定された導管部分(7)は、円筒状の外壁(19)を有する固定された部材(6)によって囲まれており、
前記回転子(3)は、前記部材(6)の外壁(19)の外周を回転するように設けられており、
前記部材(6)の軸方向に連続して前記回転シール(13a,13b)が組み付けられた前記外壁(19)の一部(20)又は前記回転シール(13a,13b)を有するユニット(24)の固定部分(25)が、前記真空室(10)を境界付けており、かつ
前記ポンプ導管(21)は、前記回転シール(13b)の下を潜るようにして前記部材(6)中を通っている、又は、前記回転シール(13b)のうちの前記部材(6)上に固定されている側の部位の中を通っている、又は、前記ユニット(24)の固定部分(25)の中を通っている
ことを特徴とする超電導同期機。
【請求項2】
請求項1記載の同期機において、
前記回転シール(13a、13b)が、磁性流体シールである
ことを特徴とする同期機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の同期機において、
前記回転子(3)が、前記固定子(2)の冷却用の水素ガスによって囲まれている
ことを特徴とする同期機。
【請求項4】
請求項1から3の1つに記載の同期機において、
前記回転子(3)の内室(8)を蒸発室として利用する、冷却装置(5)が設けられている
ことを特徴とする同期機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置によって冷却される少なくとも1つの超電導巻線を備え、固定子に対して回転可能な回転子を有し、その回転子の冷却領域が少なくとも部分的に回転子と共に回転する真空室で囲まれている、超電導同期機に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導同期機、即ち少なくとも1つの超電導巻線を有する同期機は、従来技術において既に原則的に知られている。この場合、超電導巻線とは、運転温度を保つために冷却装置を介して冷却されなければならない回転子巻線である。例えば、回転子に中空の内室を設け、この内室に導入される冷却媒体を熱伝導巻線担体で蒸発させて、巻線を冷却することが知られている。内室は、従って、蒸発室として作用する。
【0003】
回転子の冷却領域を熱絶縁するために、「冷温部分」は一般に、絶縁真空によって囲まれており、これは、回転子と共に回転する真空室が、その回転子の一部として設けられることを意味する。この場合、回転子の据え付けの際に、後に真空室となる部分を排気し閉鎖して、静的な真空を作るという方法が、提案されている。
【0004】
しかしながら、実際には、絶対的に静的な真空を得るのは極めて困難である。フランジ接続部や溶接継目の領域及び部分的に使用部材自体における漏れ率によっては、同期機の運転期間中に外室からのガスが多少とも真空室に入りこむことを、前提としなければならない。
【0005】
このため、従来技術では、幾つかの改善策が知られている。例えば、クライオポンプを用いて侵入ガスを凍結させて真空室を維持することが提案されている。極めて僅かな漏れの場合には、この方法は十分に成果があり、当該機械の運転を長時間に亘って保証する。しかしながら、クライオポンプが同期機と共に加熱されると、凍結したガスが再び蒸発して絶縁真空を崩壊させてしまうこととなる。新たな冷却は、組み込まれている回転子を再び排気することによってのみ、可能である。回転子の冷温部分の運転温度では凍結できないガス、例えば水素、ヘリウム又はネオンに対しては、他の手段を探さなければならない。水素に対しては、例えば、ガスを吸着、吸収すること、若しくは、化学的に結合するいわゆるゲッター材を用いることなどが提案されている。
【0006】
更には、静的真空手段の使用を諦めて、回転子にフランジ止めされたポンプを回転子と共に回転させることによって、回転状態の真空室を永久的にポンピングすることが提案されている。特に高い回転数では、この解決策は、ポンプに作用する遠心力が既存のポンプ構造では大き過ぎるので、結局のところ、実現不可能であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、本発明の課題は、回転子の真空室における絶縁真空を確実に維持できるように同期機を構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するため、本発明では、冒頭に述べた種類の同期機において、少なくとも2つの回転シールによって作られ、回転子に対して固定的に真空室を境界付ける接続領域内にその真空室を真空ポンプに接続するポンプ導管を設けることを、提案する。
【0009】
即ち、本発明によれば、回転シール、特に有利には磁性流体シールを用いて、固定的な接続領域を真空室の一部として実現し、以て、そこに例えば固定的なガス管、ポンプ導管を接続できるようにすることが提案される。それによって、そもそもそれ自体は回転子と共に回転させる必要のない固定的なポンプに対する固定的な接続が作られる。
【0010】
従って、更に、回転する真空室を、外室及び回転子の残りの部材、特に回転子に設けられる冷却媒体室から、例えばフランジ接続及びクライオスタット壁によって、隔離することが提案される。更に、外室に向かっては、回転シールによる隔離も行われ、その際、接続領域を囲む2つの回転シールが使用される。このようにして、真空室が継続的に密閉されるが、回転する真空室を固定的なポンプ導管を介して接続することも、可能とされる。
【0011】
従来、例えばクライオスタット壁及びフランジ接続によって残りの空間から隔離されている回転絶縁真空の真空室は、従って、回転子と共には回転しない固定的な境界を有し、その中で固定ポンプへのポンプ導管が収容できるように、トポロジー的に修正される。このようにすることにより、即ち運転中にもポンプを駆動することにより、真空の維持を保証することが可能となる。この場合、真空ポンプを連続的に駆動することができるが、十分な気密性が与えられれば、例えば時間的に制御された運転のみを行うことも考えられる。
【0012】
従って、本発明による所期の目的に合致した回転シールの利用によって、簡単かつ常時可能な、真空室の排気のための信頼性のあるコンセプトが、初めて達成される。
【0013】
本発明の特に有利な実施形態では、冷却装置の一部として、冷却媒体用の固定的な導管部分が、回転子の中に挿入され、この固定的な導管部分が、円筒状の外壁を有する部材、特に冷却口によって囲まれ、その際、軸方向に連続して設けられる回転シールが、次のように、即ち固定的な外壁の一部及び/または両回転シールを包括するユニットの固定的な部分が真空室の境界を成すように、配置される。使用すべき冷却媒体を冷却装置の固定的部分から回転子へと案内する冷却装置は、従来技術において既に原理的に知られている。例えば、回転子の内室を蒸発室として利用する冷却装置を設けるという実施形態が考えられる。その場合、導管部分は、例えば1つの管としてその内室に挿入され、液体の冷却媒体が、その管から例えば巻線担体によって形成される内室の壁部に滴下するようにできる。このような、若しくはこれに類似した実施形態では、導管部分を包括する固定部材を回転子の中へ接続するために、回転ブッシング/回転シールを使用するのが一般的である。本発明によれば、この第1の実施形態において、そもそも既に設けられていた回転シールを、固定状態のポンプ導管部への真空室の接続を可能とする別の回転シールで補完することができる。即ち、例えば回転子側に配置された回転シールが、真空室を、例えば冷却室及び利用される回転子の内室に対して密閉するのに対し、これと同時に回転子の中心点から離れている回転シールによって、真空室を外室から密閉せしめるようにすることが考えられる。この場合、以下の2つの方法が考えられる。
【0014】
一つは、部材特に冷却口の外壁自体が真空室の境界を形成し、これに、例えば開口として、または一種の短管として、ポンプ導管を接続せしめるようにすることができる。即ち、この場合、ポンプ導管は部材中を案内されることが可能である。その部材は、例えば、外壁の隣に導管部分に所属する固有の真空室を有し、この中にポンプ導管を案内せしめるようにすることができる。
【0015】
而して本発明によれば、ポンプ導管が回転シール中を案内されるようにすることも有利である。即ち、回転シールが互いに回転可能な2つの中空シリンダからなり、それら両中空シリンダ間の空隙が、例えば磁性流体で密閉されれば、ポンプ導管が例えば固定状態の中空シリンダ中に案内されるようにすることも可能となる。即ち、この場合には、回転シールだけを修正すればよいことになる。
【0016】
特に合目的なことは、両回転シールを一つの共通ユニットとして実現する、ということである。例えば、両回転シールの固定部分を形成する1つの中空シリンダが、互いに間隔をおいて両回転シールを形成する2つの別の中空シリンダに対向するように配置される。両回転シールに亘って橋掛けされるように設けられるユニット部分は、この場合、真空室の境界、従って接続領域を形成する。この場合、導管をユニットに通すと特に有利である。これは、回転ブッシング/回転シールが共通の1つのユニット内で組み込まれたポンプ導管と組み合わされるので、ポンプ導管は、例えば両回転シールに亘って設けられる固定的な中空シリンダ中に、即ち個別に1つの回転シール内に通されるようにすることが可能であることを意味する。
【0017】
本発明の更に代替的な実施形態においては、回転シールは回転子の外壁に真空室を接続領域まで拡がる開口の両側のそれぞれに1つずつ配置されることとなる。この種の形態は、特に、回転子を、その外壁または円筒状の外壁を固定子の外側にも引き出し、そこに大直径の回転シールを使用し、それぞれの回転子が真空室への開口に隣接して軸方向に回転できるようにすることが可能となる。この場合、開口は、少なくとも部分的に半径方向に回転できるように構成できるが、しかし少なくとも1つの、特に望ましくは複数の開口を回転子の外周に分布させることも、有利と考えられる。固定状態のポンプ導管が、回転子の周囲の側面に沿った1箇所に設けられるだけでも、その全周に亘って回転する開口を介して、常時に真空ポンプによって効果的な真空引きが行われ、以て、真空を維持する前提が作られることとなる。
【0018】
本発明は、回転子が固定子を冷却するための水素ガスによって囲まれる場合に用いられるのが、特に有利である。これは、例えば大型発電機に適用可能である。固定子の冷却に必要な水素ガスは、外圧が高くなり(数バール)、水素が拡散しやすく、水素の沸点が極めて低いので、回転子の真空室にとって特に臨界的な状況を生じやすくすることとなる。このような大型発電機においては、長い運転時間が要請されるので、本発明の実施形態は、侵入する水素を連続的に汲みだすことによって真空を維持するという、特に有利な合目的な可能性を提供する。
【0019】
本発明の、その他の利点及び詳細は、以下に述べる実施例から、並びに図面によって、明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明による同期機の第1の実施形態の主要部を示す。
【
図2】
図2は、本発明による同期機の第2の実施形態の主要部を示す。
【
図3】
図3は、本発明による同期機の第3の実施形態の主要部を示す。
【
図4】
図4は、本発明による同期機の第4の実施形態の主要部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明による超電導同期機1の主要な構成要素及び領域の原理簡略図である。同期機は、図示しない固定子巻線を備えた固定子2に対して回転可能な回転子3を有し、この回転子の中に、ここには図示しない超電導巻線が設けられている。回転子は、この場合、回転軸4を中心に回転可能となっている。
【0022】
超電導巻線をその運転温度に維持するために、同期機1は、更に、符号5で示した冷却装置を有し、この装置は部材6の中に組み込まれ、回転子3に対して固定されている導管部分7を介して、液体の冷却媒体を回転子3内の中空の内室8に導入し、そこにおいて冷却媒体は、巻線を冷却しながら蒸発し、導管部分7の別の領域から再び冷却装置5の凝縮器へと導かれる。その冷却媒体の搬送には、例えば熱サイフォン効果が利用され、内室8は蒸発室として作用する。
【0023】
部材6内の導管部分を絶縁するために絶縁真空領域9が設けられるように、回転子3の冷却領域も真空室10によって囲まれる。真空室10は、クライオスタット壁11とフランジ接続部とによって、内室8及び外室12から隔絶され、これにより、外室12には、例えば固定子2、具体的には固定子巻線の、冷却のための水素ガスを充填することができる。
【0024】
真空室10の連続的な排気を可能にするために、若しくは、回転子3の据え付け時にも排気を可能にするために、その真空室は、従来技術とは異なったトポロジーを有する。例えば、2つの回転シール13a,13b(しばしば回転ブッシングとも呼ばれている)が設けられ、これらは磁性流体シールとして形成されている。これらのシールは、相互回転可能な2つの中空シリンダ14a,14b,15a,15bを有しており、これらのシリンダは、ここでは暗示されているだけであるが磁性流体16によって、互いに密閉されている。この場合、中空シリンダ14a,14b,15a,15bは、回転子3と共に回転し、シールリング17を介して、回転子に接続されている。中空シリンダ15a,15bは、シールリング18を介して、部材6に、より具体的にはその外壁19に、接続されている。
【0025】
回転シール13aは、ここでは内室8を真空室10に対して密閉するのに対し、回転シール13bは、真空室10を外室12に対して密閉する。これにより、部材6の外壁19の部分20が真空室10の境界を形成するような配置が生じ、この部分は共に回転するものではなく、固定状態にある。これにより、部材6、具体的には真空領域9中を通される用に形成されたポンプ導管21が、接続領域22において真空室に接続されることが可能となる。ポンプ導管21は、真空室10をポンプ23に接続し、そのポンプは、連続的にまたは時間を制御して駆動されて、真空室10内における十分な絶縁真空を維持する。この場合、回転する真空室10への複雑な結合は不要であり、ポンプ導管21及びポンプ23は、固定状態にある。
【0026】
図2、
図3は、
図1のそれを一部変更した実施形態を示すもので、ここではまた後述する
図4に示す第3の実施形態に関しても同様に、簡略化のため、同一部材に対しては同一の符号が付与されている。
【0027】
図2は、変更された同期機1'の実施形態を示しており、ここでは、ポンプ導管21が、部材6中を通されるのではなくて、相応して変更された回転シール13bの位置固定された中空シリンダ15b中を通されている。この場合、従って、中空シリンダ15bの変更だけが必要となるのであり、部材6及び特に外壁19の壁部分20は、変更せずにそのままである。従って、簡略化された構成が可能となる。
【0028】
図3は、本発明による第3の実施形態に係る同期機1''を示しており、ここでは両回転シール13a,13b並びにポンプ導管21が、1つの共通ユニット24に纏められている。この場合、部材6の外壁19に固定された中空シリンダ15は、最終的に両回転シール13a,13bに通じており、部分25と共に、真空室10の境界、従って接続領域22を形成しており、その部分25は、中空シリンダ14a,14bの間にある。このようにして、回転シール13a,13b及びポンプ導管21を含めた全配置が、唯一の共通ユニット24として、実現されている。
【0029】
図4は、更に変更された実施形態に係る同期機1'''を示す。ここでは、接続領域22が、従来技術からの変更のない通常の回転ブッシング内を通って部材6に設けられるのではなくて、回転シール13a,13bを備えた装置が、固定子2の領域の外側で回転子3の外壁27に設けられ、回転シール13a,13bが、同様に磁性流体シールとして形成され、それぞれ外壁27の開口28に隣接して配置されているので、真空室10は、固定蓋29の領域まで延びている。ここに、ポンプ導管21が、ポンプ23と共に設置されている。
【0030】
この場合、従って、両回転シール13a,13bが、空気冷却される外室12を密閉するので、前述のとおり、本発明による同期機1、1'、1''、1'''は、特に水素ガスの環境下で有利に使用され得る。
【符号の説明】
【0031】
1 同期機
2 固定子
3 回転子
4 回転軸
5 冷却装置
6 固定部材
7 導管部分
8 蒸発室
9 真空領域
10 真空室
11 クライオスタット壁
12 外室
13 回転シール
14 中空シリンダ
15 中空シリンダ
16 磁性流体
17 シールリング
18 シールリング
19 外壁
20 外壁部分
21 ポンプ導管
22 接続領域
23 ポンプ