(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の流量制御装置が複数設置される公衆トイレ等の施設では、給水本管に設けられる水道メータの参照によって、水の使用量を把握することが可能であるが、水道メータは、便器および洗面台の双方を含む施設全体の流量を指し示しており、便器毎又は洗面台といった個々の設備で消費された流量を個別に把握することは困難であった。
【0005】
とりわけ自動止水式フラッシュ弁装置で構成される流量制御弁は、上述のごとくセンサの出力に基づくパイロット弁の自動制御によって放流すべき流量が管理されているため、流量制御弁個々の流量を正確に把握しておくことは、施工後の保守や管理を効率よく行う上で重要である。
また、放流に供された水の流量は、施設の管理に有用な情報となり、この流量の正確な把握によって、たとえば自動止水式フラッシュ弁装置の採用に伴う節水効率等を明確に把握することが可能になる。
【0006】
本発明は、このような技術的背景を考慮してなされたもので、保守や管理の容易な流量制御システムの提供を課題とする。また、洗浄水の節水状況を具体的に確認することが容易な流量制御システムを提供することを課題とする。また、節水を効率良く行える流量制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した技術的課題を解決するため、本発明では以下の構成とした。
すなわち、本発明は、トイレ内の便器に供給する洗浄水を制御するシステムであって、
トイレ使用者の排便にかかる時間を計測する計測部と、
流入口から流出口に至る経路中に設けられた制御弁と、
前記流入口から流出口に至る流体の流れの有無を電気信号に置換して出力する検知部と、
前記流出口を経て放流された流体の流量を前記検知部で取得した電気信号に基づき算出する流量算出部と、 放流を停止すべき放流停止流量に前記流量算出部で算出した流量が
達したか否かに基づき前記制御弁の開閉操作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記計測部で計測したトイレ使用者の排便にかかる時間が、所定値以上の場合に第1の水量による放流を行うよう前記制御弁を制御するとともに所定値未満の場合に第1の水量よりも少量の第2の水量による放流を行うよう前記制御弁を制御し、
さらに前記制御部は、第1の水量による放流回数と、第2の水量による放流回数を記憶する記憶部と、記憶部に記憶されたデータを出力する出力部と、を備えたことを特徴とする流量制御システムとした。
【0008】
また、前記記憶部は、前記制御弁から放流した流量と、当該流量を伴う放流がなされた時刻若しくは日付とを対応づけて記憶する流量制御システムとすることができる。
また、本発明の流量制御システムは、トイレ使用者の一回あたりのトイレ使用時間を検知する使用時間検知部を備え、前記制御部は、前記検知部により検知した時間内における前記制御弁から放流した流量及び放流回数を前記記憶部に記憶する構成とすることができる。
さらに、前記制御部は、所定期間における前記制御弁の作動回数に第1の水量を乗じて得た基準流量から、当該所定期間における前記流量算出部により算出した、制御弁から実際に放流された流量を減算し、節水データを算出する構成とすることができる。
【0009】
このように構成された本発明の流量制御システムは、算出した流量を外部に出力する出力部を備えている。すなわち、本構成では、算出した流量を制御弁の開閉操作に用いることのみならず、この算出した流量を外部に出力する出力部を備えている。よって、流量制御弁の保守や管理にあたり、この出力部を介して出力される流量データを、例えば、出力部に接続可能なテスターや出力部に設ける流量カウンタを介して把握することで流量制御弁の保守等に活用することが可能である。また、前記出力部から出力されるデータを、通信回線を介して管理センターのコンピュータに入力し、各所の流量制御システムを集中して管理できるようにしてもよい。
【0010】
そして、小用の洗浄水量である第1の水量と、大用の洗浄水量である第2の水量とを、それぞれ放流回数と共に記憶できるようにしたので、具体的な用途に応じた使用水量を正確に把握することができ、ひいては節水量を容易に把握することができる。
また、トイレ一回あたりの使用に供する洗浄水量も正確に把握することができる。
【0011】
なお、上記で「外部への出力」とは、流量算出部からの直接の出力のみならず、制御部を経由しての間接的な出力であってもよく、算出した流量を外部から取得可能な出力であれば足りる。
また、本発明で「流量」とは、流体の流れ出た量を把握することのできる数値であり、リットル等の容積を示す値の他、流量に換算可能な放流が為されていた時間等をも含む概念である。
【0012】
また、前記出力部には、出力された流量を表示するための表示装置が設けられている構成であってもよい。
この構成によれば、出力部に表示装置が設けられ、出力部に出力された流量は、この表示装置の外部に表示される。よって、この表示装置の参照によって、放流に供された流体の量の把握が可能になる。
【0013】
また、前記出力部に出力すべき流量と、当該出力を伴う放流が為された時刻若しくは日付とを対応づけて記憶する記憶部が設けられている構成では、流量の出力にあたり、当該出力を伴う放流に時刻若しくは日付が対応付けされる。したがって、流量の把握のみならず、日時等との対応付けに伴う、より正確な情報の取得が可能になる。
【0014】
また、前記出力部は、単位期間あたりに放流された流体の流量を累計して出力する構成であってもよい。この構成によれば、流量の把握において、たとえば、日数や時間等を単位等として、その単位期間あたりに放流された流体の流量を把握することが可能になる。
【0015】
また、前記制御部は、算出された流量と予め定められる目標放流量とを比較して、その流量の過不足を算出する流量差算出回路と、流量差算出回路で算出された流量に基づき放流すべき流量を補正する補正回路とを備える構成であってもよい。
ここで、目標放流量とは、便器や排水管の構造上必要とされる洗浄水量であって、例えば大用の洗浄水放流量であれば10リットル、小用の洗浄水放流量であれば6リットルという流量である。
【0016】
また、放流停止流量とは、前記制御部が制御弁の閉鎖を開始(指示)する時点の流量であり、例えば大用の放流停止流量であれば7リットル、小用の放流停止流量であれば4リットルという流量である。これは、洗浄水を制御するフラッシュ弁装置の場合、制御弁の閉鎖を行ったときに、実際に洗浄水の放流が停止されるまでに時間差があることに基づき設定したものである。すなわち、7リットルの放流を検知したときに放流停止動作を開始すれば、概ね10リットルの放流が終了した時点で洗浄水供給を停止でき、4リットルの放流を検知したときに放流停止動作を開始すれば、概ね6リットルの放流が終了した時点で洗浄水供給を停止することができるというものである。そして、流量算出部で算出した流量とは、流量制御装置から実際に供給される正確な流量を意味する。
【0017】
上記構成によれば、算出された流量と予め定められる目標放流量とを比較して、その流量の過不足を算出すると共に、その過不足に応じた補正値(流量)に基づき放流すべき流量が補正される。なお、上記で「放流すべき流量を補正する」とは、例えば、制御弁の開弁時間の補正や放流停止流量の補正であって、放流に供される流量を実質変更可能なものであれば、その補正の対象となるパラメータは適宜変更可能である。
【0018】
また、前記出力部には、放流された流体の流量に過不足があった場合にその旨を報知する報知部が設けられている構成であってもよい。
【0019】
この構成によれば、出力部には報知部が設けられ、報知部は、例えば、算出された流量と目標放流量とを比較して、その流量に過不足があった場合にその旨を報知している。よって、この報知部による報知を以て、施設管理者等は、放流に供された流体の過不足を容易に把握することが可能になる。
【0020】
なお、上記した課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明によれば、保守や管理の容易な流量制御システムを提供することができる。また、具体的な節水量を容易に把握することが可能な流量制御システムを提供することができる。また、節水を効率良く行える流量制御システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
また、本実施の形態では、便器用の止水弁としてフラッシュ弁を有する流量制御装置(以下、フラッシュ弁装置と称する)を例に挙げて説明する。
【0024】
まず、
図3の全体縦断面図に示すように、フラッシュ弁装置1は、スリーブ2によって連結された第1弁ハウジング10と第2弁ハウジング40と、第2弁ハウジン40に連結された外部ハウジング200を備えている。
【0025】
第1弁ハウジング10は入口側ブロック11と出口側ブロック12からなる。入口側ブロック11は下部にインレット13を有し、このインレット13に流入管14が連結されている。インレット13には、流入管14から供給される洗浄水の水圧によって開閉動作する逆止弁15がコイルスプリング15aによって閉方向へ付勢されて設置されている。入口側ブロック11の上部にはストレーナ80が収納されている。
【0026】
出口側ブロック12の上部には、一端にアウトレット16を有し、他端が第1弁ハウジング10に連結した外部ハウジング200が設けられている。また、アウトレット16には、便器の放流口に通じる流出管(図示略)が連結され、第1弁ハウジング10から流れ出る洗浄水は、この外部ハウジング200を通じて流出管に至り便器に放流されることになる。
【0027】
外部ハウジング200には、アウトレット16に至る経路中に設けられたインペラ201と、インペラ201の回転軸に連結された発電ロータ(発電体)、及びこの発電ロータを包囲する磁石等で構成される発電ユニット205が設けられ、発電ユニット205は、第1弁ハウジング10からアウトレット16に至る洗浄水の流れを受けて発電している。また、出口側ブロック12の下部に流量計収納室18が形成されていて、ここに流量計ユニット81が収納されている。
【0028】
流量計ユニット81は
図4に示すように、ケーシング82に回動自在に支持され洗浄水の流れに伴い回転する回転翼車83と、回転翼車83に設置されたホール素子84とから構成されており、回転翼車83と一体に回転するホール素子84の回転によって検出される磁力の変化がパルス信号として認識され、出口側ブロック12に設置されたパルスカウンタ85でパルスが計数される。また、計数されたパルスは、流量計ユニット81に電気
的に接続された制御装置100に出力されており、制御装置100は、このパルス数から換算して流量計収納室18を流れる洗浄水を計量するようになっている。
【0029】
入口側ブロック11と出口側ブロック12の連結構造は次のようになっている。入口側ブロック11の先端に設けた小径部19は、
図4に示すように出口側ブロック12の下部に挿入されており、小径部19と出口側ブロック12との間はシールリング20によってシールされている。入口側ブロック11の上部外周面と出口側ブロック12の下部外周面にはそれぞれ環状の溝21,22が形成されていて、この溝21,22には、縦断面コ字形をなし平面視半円弧状をなす左右一対の連結リング23,24が、それぞれ入口側ブロック11と出口側ブロック12に架け渡すようにして挿入されている。連結リング23,24の外側には入口側ブロック11にねじ込まれた円筒状のスリーブ25が外嵌しており、連結リング23,24の脱落を阻止している。
【0030】
この連結状態において、前記収納室18内の流量計ユニット81と前記ストレーナ80が収納室18の内壁と小径部19の先端面とによって挟持されている。なお、小径部19の先端面とストレーナ80との間に弾性を有するスペーサを介在させると、製作誤差や組み立て誤差等が吸収でき好ましい。
【0031】
前記第1弁ハウジング10の出口側ブロック12の内部には、前記アウトレット16に至る外部ハウジング200に連なる低圧室26と、この低圧室26に連なり低圧室26を包囲するように形成された主弁室27とが設けられており、低圧室26と主弁室27との間には弁座28が形成されている。なお、主弁室27は前記収納室18に連なっている。
【0032】
また、
図1に示すように、出口側ブロック12の上部外周面には段差部29が形成されており、この段差部29より上方は小径部30になっている。出口側ブロック12には、一端を前記小径部30の外周面に開口し他端を低圧室26に開口させた第1バイパス通路31が形成されている。
【0033】
一方、第2弁ハウジング40の下部外周面にも段差部41が形成され、この段差部41より下方は小径部42になっており、小径部42の下部から更に小径の筒部43が延びている。この筒部43が出口側ブロック12の小径部30にねじ込まれて、第2弁ハウジング40は第1弁ハウジング10に連結固定されている。なお、第1弁ハウジング10の小径部30と第2弁ハウジング40の筒部43との間はシールリング44によってシールされている。
【0034】
第2弁ハウジング40の筒部43内は弁摺動孔45になっていて、この弁摺動孔45に主制御弁70が図中上下方向へ移動可能に収容されている。主制御弁70の上端部には弁摺動孔45との間をシールするシールリング71が固定されていて、このシールリング71が弁摺動孔45を摺動するようになっている。この弁摺動孔45と主制御弁70によって包囲された空間が圧力室46を構成している。
【0035】
主制御弁70には前記第1弁ハウジング10の弁座28に対して着座離間するパッキン72が取り付けられており、主制御弁70は弁座28に着座して低圧室26と主弁室27との間を遮断し、弁座28から離間することにより低圧室26と主弁室27とを連通させる。主制御弁70は第2弁ハウジング40との間に設けられたコイルスプリング73によって弁座28に接近する方向(図中下方)へ付勢されており、通常は弁座28に着座している。この主制御弁70には主弁室27と圧力室46とを連通する連通路74を有している。
【0036】
第1弁ハウジング10の小径部30と第2弁ハウジング40の小径部42の外径は同一
径になっており、これら小径部30,42の外側にはスリーブ2が外嵌している。スリーブ2の両端部はそれぞれ第1弁ハウジング10の段差部29及び第2弁ハウジング40の段差部41に突き当たっている。
【0037】
小径部30,42の外周面とスリーブ2の内周面との間には隙間が設けられており、各小径部30,42とスリーブ2との間はシールリング32,47によってシールされている。なお、シールリング32は前記第1バイパス通路31よりも下側に配されている。そして、両シールリング32,47の間は第3バイパス通路3にされている。
【0038】
図5に示すように、前記第2弁ハウジング40の上部には凹部48が形成されていて、この凹部48からは圧力室46に貫通する貫通孔49と有底の摺動孔50とが下方に平行に延びている。貫通孔49の下端は下方に拡径するテーパー孔49aになっている。
【0039】
また、第2弁ハウジング40には、貫通孔49と摺動孔50とを連通する第1通路51と、一端を摺動孔50に開口し他端を小径部42の外周面に開口する第2通路52が形成されている。
【0040】
また、凹部48には可動体53が第2弁ハウジング40に接近離間する方向(図中上下方向)へ移動可能に収容されている。この可動体53はコイルスプリング54によって第2弁ハウジング40から離間する方向(図中上方)へ付勢されるとともに、第2弁ハウジング40に固定されたストッパー55によって上限位置を規制されている。
【0041】
可動体53の下面には、前記貫通孔49内に摺動可能に挿入される中空の第1筒体56と、前記摺動孔50に摺動可能に挿入される中空の第2筒体57が固定されている。第1筒体56の外周面と貫通孔49の内周面との間には、洗浄水の流通を可能にする隙間が設けられており、貫通孔49の上下部において第1筒体56と貫通孔49との間はシールリング58a,58bによりシールされている。又、第2筒体57と摺動孔50との間はシールリング59によってシールされている。
【0042】
可動体53の内部には第1筒体56の中空部56aと第2筒体57の中空部57aとを接続する通路53aが形成されており、この通路53aはパイロット弁60によって連通遮断可能にされている。パイロット弁60は可動体53の上部に固定された電磁駆動部61によって開閉制御されている。
【0043】
即ち、電磁駆動部61はソレノイドコイル62によって上下駆動されるプランジャ63を有し、このプランジャ63の先端にパイロット弁60が設けられている。通常、ソレノイドコイル62は非通電状態になっており、この時、パイロット弁60は前記通路53aを遮断している。そして、ソレノイドコイル62に通電すると、プランジャ63が上方へ引き付けられ、その結果、パイロット弁60が開いて前記通路53aを連通せしめる。
【0044】
なお、この実施例においては、テーパー孔49aと、第1筒体56の中空部56aと、可動体53の通路53aと、第2筒体57の中空部57aと、摺動孔50と、第2通路52によって第2バイパス通路64が構成されている。
【0045】
また、第2弁ハウジング40には、前記可動体53及び電磁駆動部61を覆うカバー65が固定されており、このカバー65の上部中央の孔から、電磁駆動部61の上部に固定された押ボタン66が突出している。
【0046】
次に、このフラッシュ弁装置1の作動原理を説明する。 まず、洗浄水の非放流時では、電磁駆動部61のソレノイドコイル62が非通電状態にあり、パイロット弁60が可動
体53内の通路53aを遮断している。したがって、主制御弁70の連通路74を介して主弁室27に連通している圧力室46は、主弁室27内と等圧になる。その結果、主制御弁70はコイルスプリング73の付勢力、及び低圧室26と主弁室27との圧力差に基づく力によって弁座28に着座せしめられ、低圧室26と主弁室27とを遮断する。この状態がフラッシュ弁装置1の閉状態であり、洗浄水は放流されない。又、この状態では、逆止弁15もインレット13を遮断している。
【0047】
続いて、洗浄水を放流すべきときには、前記ソレノイドコイル62が通電状態となり、パイロット弁60が開いて可動体53内の通路53aが連通し、以て第2バイパス通路64が連通する。その結果、第2バイパス通路64と第3バイパス通路3と第1バイパス通路31を介して圧力室46と低圧室26とが連通し、圧力室46内の洗浄水が低圧室26へと流れ、圧力室46内の圧力が低下する。そして、圧力室46と主弁室27との圧力差に基づく力が、コイルスプリング73の付勢力、及び低圧室26と主弁室27との圧力差に基づく力に勝り主制御弁70が上方へ押動され、弁座28から離間して、低圧室26と主弁室27とを連通する。すると、主弁室27内の洗浄水が低圧室26を通り、アウトレット16及び流出管を通って便器に流れる。
【0048】
また、洗浄水の放流により主弁室27内の圧力が低下すると、流入管14側の洗浄水の圧力によって逆止弁15がコイルスプリング15aの付勢力に抗して押動されて開状態となる。その結果、インレット13からアウトレット16に至る経路が連通し、洗浄水は、このインレット13からアウトレット16に至る経路を経て便器に放流される。
【0049】
また、このとき制御装置100は、その内部に組み込まれる流量算出回路によって、前記流量計ユニット81で取得したパルス数から洗浄水の流量を算出し、放流を停止すべき放流停止流量(例えば目標放流量の3分の2の)に達したことを受け、制御装置100に設けられる放流制御回路の働きによって電磁駆動部61のソレノイドコイル62への通電を断つ。よってパイロット弁60が可動体53内の通路53aを遮断し、結果として第2バイパス通路64が遮断されるので、圧力室46が再び主弁室27と等圧になり、主制御弁70が弁座28に着座する。よって、低圧室26と主弁室27とが遮断され洗浄水の放流が停止する。また、洗浄水の放流が停止すると、主弁室27内が流入管14内と等圧になるので、逆止弁15がコイルスプリング15aの付勢力に押動されてインレット13を遮断する。
【0050】
なお、本フラッシュ弁装置1においては、ソレノイドコイル62への通電を制御せずに、手動で洗浄水を放流させることもできる。即ち、ソレノイドコイル62の非通電時には通路53aが遮断された状態であるが、この状態のまま押ボタン66をコイルスプリング54の付勢力に抗して下方に押動すると、可動体53の下降とともに、第1筒体56及び第2筒体57がそれぞれ貫通孔49あるいは摺動孔50を下降する。そして、
図7に示すように、第1筒体56の下側のシールリング58bがテーパー孔49a内に侵入すると、テーパー孔49aが第1筒体56の外周面と貫通孔49の内周面との間の隙間を介して第1通路51に連通し、更に摺動孔50及び第2通路52を介して第3バイパス通路3に連通する。その結果、パイロット弁60を閉状態にしたまま圧力室46を低圧室26に連通せしめることができ、主制御弁70を弁座28から離間させて、主弁室27を低圧室26に連通し、洗浄水をインレット13からアウトレット16へ流出させることができる。
【0051】
そして、操作者が押ボタン66から手を離し、コイルスプリング54によって可動体53をスプリングバックさせると、シールリング58bによってテーパー孔49aと第1通路51との間が再び遮断されて、圧力室46と低圧室26とが遮断されるので、主制御弁70を弁座28に着座させて洗浄水の流出を停止せしめることができる。
【0052】
続いて、上記した制御装置100について
図8〜
図12を参照して説明する。
制御装置100は、電磁駆動部61に設けられるソレノイドコイル62の制御に要する流量算出回路や放流制御回路等の他、算出された流量と予め定められる目標放流量とを比較して、その流量の過不足を算出する流量差算出回路と、流量差算出回路で算出された流量に基づき放流すべき流量を補正する補正回路が設けられている。また、制御装置100には、流量算出回路で算出した流量を制御装置100の外部に出力する出力部100aが設けられている。
【0053】
また、制御装置100は、トイレドアのロック状態を検知するドアセンサ300と接続しており、ドアセンサ300からの信号に基づき、トイレ使用者のトイレ利用時間を計測できるように構成(計測部)されている。そして、制御装置100は、トイレ利用時間が150秒を超える場合は大用(大便の排便)と判断し、トイレ利用時間が150秒未満の場合には小用(小便の排便)と判断するようになっている。
【0054】
また、出力部100aには、洗浄水の放流毎に出力される流量を、当該放流が為された日時データ等と共に表示する流量カウンタ102、およびフラッシュ弁装置1の作動不良を報知するインジケータ103等が接続されている。
なお、制御装置100は、信号を入出力するI/O部と、各種データ処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、データを記憶するRAM(Randum Access Memory)及
びROM(Read Only Memory)と、これらを接続するバスとを備えている。
【0055】
図9は、流量カウンタ102の表示にあたり、制御装置100内で実行される制御プログラムの処理内容を示すフローチャートである。また、
図10は、ドアセンサ300の状況を監視する際に処理される制御プログラムの処理内容を示すフローチャートである。また、
図11は、フラッシュ弁装置1の作動不良を報知する際に処理される制御プログラムの処理内容を示すフローチャートである。また、
図12は、放流すべき流量を補正する際に制御装置100内で実行される制御プログラムの処理内容を示すフローチャートである。さらに、
図14は、節水結果データを算出する際に制御装置100内で実行される制御プログラムの処理内容を示すフローチャートである。
【0056】
図9に示すように、流量カウンタ102に対する流量の表示にあっては、まず、出力すべき流量データと、当該出力を伴う放流が為された日時データとの対応付けがなされ(S101)、日時データに対応付けされた流量データは、一旦制御装置100内の記憶部106に記憶される(S102)。
【0057】
一方、制御装置100は、
図10に示すように、ドアロックセンサ300からの信号を監視し(S201)、ドアロックされた場合には、ドアロックONの情報を日時データに対応付けて記憶部106に記憶する(S202)。さらに制御装置100は、ドアロックセンサ300からの信号を監視し(S203)、ドアロックが解除された場合には、ドアロックOFFの情報を日時データに対応付けて記憶部106に記憶する。
【0058】
制御装置100は、出力部100aに出力すべきデータ種別を選択すべく、制御装置100に設ける操作パネルでの操作を受け付ける(S103)。なお、本実施の形態では、出力すべきデータの種別として、単位期間に放流された洗浄水の累計データ、一人の使用者が使用した流量及び放流回数のデータ、並びに、一回の放流によって放流された流量データ(大用洗浄水量、小用洗浄水量のデータを含む)等の選択が可能になっている。
【0059】
そして、たとえば、単位期間に放流された洗浄水の累計の出力が求められる場合には、制御装置100の記憶部106に記憶されたデータのうち、累計の対象となる日時が対応付けされたデータが読み出され(S104)、制御装置100は、読み出されたデータ(
流量)を累計して(S105)、出力部100aに出力する(S106)。
また、制御装置100は、使用者により洗浄水放流の操作がなされた際、トイレ利用時間が150秒以上の場合は第1の水量としての大用の水量(例えば10リットル)を放流し、トイレ利用時間が150秒未満の場合は第2の水量としての小用の水量(例えば6リットル)を放流するよう制御弁を制御する。
【0060】
図11に示すように、フラッシュ弁装置1の作動不良を報知するには、まず、目標放流量を制御装置100の記憶部106から読み出し(S601)、算出された流量と予め定められる目標放流量とを比較してその流量差を算出する(S602)。また、算出された流量差と許容すべき許容値(誤差流量)とを比較して(S603)、許容値を超える場合には、フラッシュ弁装置1の作動不良を報知すべく出力部100aに設けられたインジケータ103を点灯する(S604)。
なお、ここで予め定められる目標放流量とは、各種仕様によって異なり、例えば、一回の放流に供される流量であってもよく、また、複数回の放流で消費される流量であってもよく、任意の期間を標本として取得した流量に関するデータと比較可能なデータであればよい。
【0061】
また、
図12に示すように放流すべき流量を補正する際には、まず、目標放流量を制御装置100の記憶部106から読み出し(S701)、算出された流量と予め定められる目標放流量とを比較してその流量差を算出する(S702)。また、算出された流量差と許容すべき許容値(誤差流量)とを比較して(S703)、許容値を超える場合には、放流すべき流量を補正すべく、たとえば制御上定められている放流停止流量を新たな値に更新する(S704)。
【0062】
すなわち、例えば目標放流量が10リットルで、放流停止流量が7リットルであり、実際に流量計ユニット81により計量した流量が11リットルであった場合、許容値が0.5リットルであれば放流超過のため、放流停止流量を6リットルに設定し直すというものである。また、例えば目標放流量が6リットルで、放流停止流量が4リットルであり、実際に流量計ユニット81により計量した流量が5リットルであった場合、許容値が0.5リットルであれば放流過小のため、放流停止流量を4.5リットルに設定し直すというものである。
【0063】
そして、放流停止流量の再設定後、さらに目標放流量と実際に計測した流量とを比較して、より目標放流量に近づくよう補正を行うことができる。ここで、許容値を小さく設定する程、放流停止流量の変動値(前回放流停止流量と更新した放流停止流量との差)を小さな値とすれば、補正回数は増加する傾向にあるものの、目標放流量と実際の流量とをきわめて近似させることが可能となる。
【0064】
次に、
図14に示すように具体的な節水データを得るには、制御部100は、入力された年月日データにより特定される任意の期間を認識し(S801)、当該期間におけるフラッシュ弁装置1の放流作動回数を記憶部106のデータに基づき集計し、この回数に第1の水量(例えば10リットル)を乗じて基準水量を算出する(S802)。次に制御部100は、当該任意期間において流量計ユニット81により実際に計測した流量を記憶部106のデータに基づき集計する(S803)。さらに制御部100は、ステップ802にて算出した基準水量から、ステップ803にて算出した実際の計測水量を減算し、節水できた水量を演算する(S804)。そして制御部100は、出力部100aから外部に節水データを出力する(S805)。
【0065】
なお、この基準水量の算出にあたっては、所謂目標放流量ではなく、本流量制御装置の初期設定における流量算出回路により算出した値を利用することとしてもよい。すなわち
、補正回路がなければ放流され続けたであろう流量(例えば目標放流量が10リットルに対して実際に放流(計測)した流量が11リットル)に作動回数を乗算して、基準水量としてもよい。
【0066】
このように本実施の形態に示す流量制御弁は、算出した流量を外部に出力する出力部100aを備えている。よって、流量制御弁の保守にあたり、この出力部100aに出力された流量を、出力部100aに設けられる流量カウンタ102の参照によって把握することで、流量制御弁のメンテナンス等に活用することが可能である。
【0067】
また、本実施の形態では、出力すべき流量と、当該出力を伴う放流が為された時刻若しくは日付とを対応づけて記憶しているため、流量の出力にあたり、流量の把握のみならず、日時等との対応付けに伴う正確な情報の取得が可能になる。
【0068】
また、出力部100aは、単位期間あたりに放流された流体の流量を累計して出力することも可能であるため、流量の把握において、たとえば、一週間や一日の時間等を単位として、その単位期間あたりに放流された流体の流量を把握することが可能になる。よって、放流量が増加する曜日や時間帯などを正確に把握することが可能になる。
【0069】
また、出力部100aには、放流された流体の流量に過不足があった場合にその旨を報知するインジケータ103が設けられているため、放流に供された流体の過不足を容易に把握することが可能になる。
【0070】
また、制御装置100には、算出された流量と予め定められる目標放流量とを比較して、その流量の過不足を算出する流量差算出回路と、流量差算出回路で算出された流量に基づき放流すべき流量を補正する補正回路とが設けられているため、流量制御弁は、多少の不具合が生じても適切量の放流を行える。
【0071】
なお、上記した実施の形態は、あくまでも一実施の形態であり、その詳細は、各種仕様に応じて適宜変更可能である。
【0072】
例えば、
図13に示すように、それぞれのフラッシュ弁装置1のインレット13から延びる流入管14を共通の給水管206に連結している構成では、フラッシュ弁装置1毎に流量を出力する、ならびに各フラッシュ弁装置1の流量を集計して出力するなどの構成も考えられる。
【0073】
また、上記した実施の形態では、目標放流量として、一度に放流される流量の数値を採用するが、必ずしもその必要はなく、たとえば、複数回の放流によって放流された流量を対象として流量差を求めるなどの構成も考えられる。より詳しくは、10回の放流に消費される流量(目標放流量×10回)と、10回の放流によって実際に消費された流量(累計データ)との比較によっても流量差を求めることができる。
【0074】
また、本実施形態の流量制御システムにおける流量の計数、表示機能においては、本流量制御弁と、洗面台等に設けられる一般的な自動給水栓との流量を合わせて計数・表示したり、個別に計数・表示することもできる。また、トイレ使用者の排便にかかる時間を計測するには、ドアセンサに基づく計測の他、便器の着座センサを利用することもできる。すなわち、便器近傍に赤外線検知装置等を備える人検知センサを設置し、便器に使用者が着座してから洗浄水供給開始までの時間を計測し、排便にかかる時間を把握する構成としてもよい。
【0075】
また、本構成の流量制御弁は、既設の施設に後付け可能であるため、給水本管に設けられた水道メータしか持たない、例えば、公衆トイレやオフィスの水回り等においても、建物完成後に本流量制御弁を新たに設けることもできる。このように本実施の形態に示す種々の構成は、適宜変更可能である。