(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806393
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】ボアを検査するための多方向電磁ヨーク
(51)【国際特許分類】
G01N 27/84 20060101AFI20151021BHJP
G01N 21/91 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
G01N27/84
G01N21/91 B
【請求項の数】20
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-511372(P2014-511372)
(86)(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公表番号】特表2014-517290(P2014-517290A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】US2012033863
(87)【国際公開番号】WO2012158294
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2013年11月14日
(31)【優先権主張番号】13/109,183
(32)【優先日】2011年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】セグレッツ、デイヴィッド エス
(72)【発明者】
【氏名】ロンバルド、エリック エイ
【審査官】
松谷 洋平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−103943(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3135541(JP,U)
【文献】
特開2003−107057(JP,A)
【文献】
特開昭63−250558(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/123847(WO,A1)
【文献】
特開昭49−052688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72−27/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素のボア内の欠陥を検出するための検査システムであって、
前記ボア内に挿入されるように構成された検査装置であって、強磁性体で作成されたコア、前記コアのまわりに第1の方向に巻き付けられた第1のコイル、及び前記コアのまわりに第2の方向に巻き付けられた第2のコイルを含み、前記第1と第2の方向が互いに直交する検査装置と、
前記コア、前記第1のコイル、及び前記第2のコイルを収容する保護材料と、
前記検査装置を制御するように構成されたコントローラであって、前記検査装置が前記ボア内にあるときに前記第1のコイルと前記第2のコイルに電流を選択的に提供して、前記ボア内に直交方向の電磁界を生成して前記ボア内の欠陥を検出し、前記電流を、前記ボアに対して縦方向及び横方向の表面欠陥及び深い欠陥を検出するため選択的に提供するコントローラとを含む検査システム。
【請求項2】
前記強磁性コアが、無方向性高ケイ素電磁鋼板で作成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コアが、概略正方形の断面を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ボアからの光学信号を検出するための光学装置を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記光学装置が、カメラを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記光学装置が、有色磁性粒子を検出する、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記検査装置が、更に、前記コアに取り付けられて前記検査装置を前記ボアに手動で挿入することを可能にする細長い部材を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラが、前記第1及び第2のコイル内に交流信号又は直流信号を生成するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記構成要素が、バルブである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記バルブが、蒸気タービン用のバルブである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
バルブのボア内の欠陥を検出するための検査システムであって、
前記ボアに挿入されるように構成された検査装置であって、強磁性体で作成されたコア、前記コアのまわりに第1の方向に巻き付けられた第1のコイル、及び前記コアのまわりに第2の方向に巻き付けられた第2のコイルを含み、前記第1と第2の方向が互いに直交する検査装置と、
前記ボアから光学信号を受け取るための光学装置と、
前記検査装置を制御するように構成されたコントローラであって、前記コントローラが、前記検査装置が前記ボア内にあるときに前記第1のコイルと前記第2のコイルに電流を選択的に提供し、前記第1と第2のコイルが、前記ボア内に直交方向の電磁界を生成し、前記電磁界が、前記バルブ内で前記光学装置によって検出可能な可視信号を生成する電流を誘導し、前記電流を、前記ボアに対して縦方向及び横方向の表面欠陥及び深い欠陥を検出するため選択的に提供するコントローラとを含む検査システム。
【請求項12】
前記強磁性コアが、無方向性高ケイ素電磁鋼板で作成された、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コアが、概略正方形断面を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記光学装置が、有色磁性粒子を検出する、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記検査装置が、更に、前記コアに取り付けられて前記検査装置が前記ボアに挿入されることを可能にする細長い部材を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラが、前記第1と第2のコイル内に交流信号又は直流信号を生成するように構成された、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記バルブが、蒸気タービン用のバルブである、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
構成要素のボア内の欠陥を検出する検査装置であって、前記装置が、コア、前記コアのまわりに第1の方向に巻き付けられた第1のコイル、及び前記コアのまわりに第2の方向に巻き付けられた第2のコイルとを含み、前記第1と第2の方向が互いに直交する検査装置において、
前記コア、前記第1のコイル、及び前記第2のコイルを収容する保護材料と、
前記検査装置を制御するように構成されたコントローラであって、前記検査装置が前記ボア内にあるときに前記第1のコイルと前記第2のコイルに電流を選択的に提供して、前記ボア内に直交方向の電磁界を生成して前記ボア内の欠陥を検出し、前記電流を、前記ボアに対して縦方向及び横方向の表面欠陥及び深い欠陥を検出するため選択的に提供するコントローラとを含む検査装置。
【請求項19】
前記コアが、強磁性体で作成された、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記コアが、概略正方形断面を有する、請求項18に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ボアを検査するための電磁界を生成する検査装置、より詳細には、大型バルブ内のボアの欠陥を検査するための多方向電磁界を提供する直交巻線を備えた検査装置を含む非破壊試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、蒸気からの熱エネルギーを回転エネルギーに変換して仕事をするために多数の相互接続された部品を含む大型機械である。これらの部品の幾つかは、当業者によって理解される方式でタービン内の様々な位置における流体の流れを制御するバルブを備えた大型バルブである。バルブは、きわめて過酷な温度環境で動作するので、バルブボアは、典型的には、タービンの動作に有害な影響を及ぼす可能性のある摩耗、欠陥、及び他の裂け目(表面に生じたひび割れなど)について定期的に調査されなければならない。したがって、当技術分野では、タービンからバルブや他の構成要素を定期的に取り外し、バルブボアのそのような欠陥を検査するために実験室環境で(機械改装の際などに)種々の保守手順を行うことは既知である。
【0003】
当該技術分野では、保守手順の際に磁粉探傷検査プロセスと電磁界を使用するバルブボアの非破壊試験は既知である。1つの既知の検査プロセスでは、細長いケーブル又はロッドが、バルブのボアに挿入され、ロッドは、電流を流すことができるコイルを含む。ロッドは、一般に、ボアの周囲全体に電磁界を均一に提供するために、ボアの中心に挿入される。コイル内の電流は、コイルのまわりに、ボアが中に通る強誘電体バルブ構造と相互作用する電磁界を生成する。電磁界は、バルブ構造内のボアの近くに電流を誘導し、ボアに裂け目がある場合は、電流及び関連した磁界が、裂け目に、鉄や他の磁性粒子を引き付ける磁気ヒステリシス損失を生じさせる。バルブ本体は、典型的には、バルブ構造に電流を流すために接地線に電気的に結合される。ボアの内側面には、適切な染料と浮遊磁性粒子を含む溶液が提供される。裂け目がある場合、ヒステリシス損失の結果として磁性粒子が裂け目に集まり、その位置で染料の色が濃くなる結果、目に見えやすくなる。検査を行なう技術者が、裂け目のこの視覚的なしるしを観察できるように、カメラ、光学検出器、ミラーなどをボアに対して戦略的に配置することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の非破壊検査は、裂け目に望ましい磁気ヒステリシス損失を生成するのに必要な適切な電磁界強度をバルブ構造に提供する能力により、限界がある。特に、そのようなバルブの多くではボアがかなり大きいので、検査装置とボア壁との距離が、重要になる可能性があり、装置内のコイルによって生成された磁界強度は、バルブ構造と相互作用する前にかなり減衰する。検査装置の直径を大きくすることには、異なるサイズの多数の検査装置を備える必要性や、検査装置のサイズと重量の増加などを含む様々な欠点がある。したがって、多くの大型ボアの場合、ある特定の欠陥又は裂け目を検出する能力が制限され、場合によっては検出できないことがある。
【0005】
更に、このタイプの既知の試験システム用の検査装置は、ボアに対して単一方向の電磁界を提供する単一コイルを含む。詳細には、コイルの巻回方向は、バルブ構造内にボアの長さに沿った方向に電流を誘導する電磁界を提供する。欠陥がこの方向に垂直な場合は、電流によって磁性粒子が欠陥に集まりやすくなる。しかしながら、欠陥がボアの方向に平行な場合、電流の方向が、欠陥と実質的に平行になり、電流が磁性粒子を欠陥に集める能力が制限される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の教示によれば、バルブ内のボアの欠陥を検査するための特定用途を有する非破壊検査システムが開示される。このシステムは、強磁性コアを有する検査ヨークを含み、第1のコイルが、コアのまわりに一方向に巻き付けられ、第2のコイルが、コアのまわりに直交方向に巻き付けられて、それにより、ボア内に直交電磁界を生成することができる。コントローラは、コイルに流れる電流を提供して、ボア内の欠陥を検出する電磁界を生成する。
【0007】
本発明の更に他の特徴は、添付図面と共に行われる以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】構成要素のボアの裂け目を検出するための非破壊検査システムの平面図である。
【
図2】
図1に示された検査システムと関連付けられた検査装置の斜視図であり、複数の巻線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
非破壊検査システムを対象とする本発明の実施形態の以下の記述は、本質的に単なる例示であり、決して本発明又はその応用例又は用途を限定するものではない。例えば、本明細書の記述は、バルブが蒸気タービンの一部である場合、特に、バルブのボア内の裂け目を検出する検査システムを対象とする。しかしながら、当業者によってよく理解されるように、本発明の検査システムは、誘導された電磁界から電流を生成するよう作動する導体に提供された任意のボアにおける欠陥を検出するための用途を有する。
【0010】
図1は、ボア14が中に通る構造物構成要素12(バルブのバルブ本体など)を、非破壊検査システム16を使用して非破壊的に検査するための検査環境10の実例である。検査システム16は、本明細書の記述と一致する試験目的のために、装置18をボア14に挿入することを可能にする細長い部材20に取り付けられた検査装置18を含む。装置18は、手作業でボア14に挿入されてもよく、あるいは、装置18がボア14の中心に延在するように装置18をボア14に制御可能に挿入するために、何らかの適切な取付具(図示せず)が提供されてもよい。
【0011】
後で詳細に述べるように、検査装置18は、コアに巻き付けられ、エポキシ樹脂や他の注封材料の層22などの適切な保護材料内に収容された2つの直交巻きコイルを有する。コントローラ24は、検査装置18内の巻線に電流を提供して、検査を実現する電磁界を生成する。線28は、試験装置18をコントローラ24に接続し、装置18内のコイルに電流を提供するのに必要な配線を表わすものである。カメラ26などの適切な光学装置が、構造物構成要素12と相互作用する電磁界に応じてボア14からの放射を光学的に検出することができ、この放射は、表示されたようにコントローラ24に提供されてもよく、ボア14で視覚的に観察されてもよい。カメラ26は、本明細書で述べた検査システム16の用途を有する任意の適切な光学装置又はシステムを表わし、それらの多くは当業者に周知である。
【0012】
図2は、外側保護層22が除去された状態の検査装置18の斜視図である。装置18は、電磁界の電界強度を高める強磁性体で作成されたコア34を含む。コア34は、鉄などの任意の適切な透磁性材料で作成することができる。一実施形態では、コア34は、被覆された無方向性高ケイ素電磁鋼板であるが、他の材料も等しく適用可能である。この実施形態では、コア34は、固い縁を有するように成形されたブロックであるが、他の実施形態では、コア34は、他の形状を有してもよい。図示されたように、第1のコイル36は、コア34のまわりに一方向に巻き付けられ、第2のコイル38は、コア34のまわりに、コイル36と垂直で逆方向に巻き付けられる。
【0013】
強磁性コア34は、コイル36及び38によって生成された電磁界の磁界強度を高める。例えば、直径約6インチを有するコアの場合、コア34から伸びる電磁界を約10倍に高めることができる。コントローラ24は、コイル36及び38に流れる電流を提供し制御し、電流を生成する電力を提供する。コントローラ24は、コイル36及び38に流れる電流を選択的に断続するスイッチ40を含む。電流がコイル36に流れているとき、電磁界は、構造物12内でボア14の長さに沿った方向に電流を生成し、この電流は、ボア14に対して横方向の欠陥を検出するのによく適している。電流がコイル38に切り替えられたとき、電磁界は、構造物12内でボア14に対して横方向の電流を生成し、この電流は、ボア14の長さに対して縦方向の欠陥を検出するのに適する。
【0014】
更に、コントローラ24は、コイル36及び38に対して交流(AC)信号と直流(DC)信号の両方を生成することができる。この実施形態では、コントローラ24は、交流を直流に変換する整流回路42を含み、必要に応じて交流信号又は直流信号をコイル36及び38に選択的に提供することができる。交流信号は、ボア14内の表面の欠陥を検出するのに役立ち、直流信号は、構造物12内のもっと深い欠陥を検出するのに役立つ。更に、コントローラ24は、コイル36及び38に流れる電流を提供する電力を選択的に制御することができ、また、電磁界が構造物12にどれだけ深く浸透できるか、また大きいサイズのボア14に適しているかを制御する。
【0015】
技術者は、ボア14の内側を、有色染料と磁性粒子(鉄粒子など)が中に浮遊した適切な溶液で被覆する。技術者は、手動又は別の方法で、検査装置18を、ボア14内に制御式に適切な速度で挿入しかつ/又はボア14内の所望の位置まで挿入し、それにより、コイル36又は38の一方が活動化されている間に、電磁界によって構造物12内に誘導された電流が、溶液内の磁性粒子を裂け目に集め、カメラ26によって観察又は記録される。次に、同じプロセスを活動化された他のコイル36又は38で繰り返すことができる。
【0016】
開示された以上の記述は、本発明の単に例示的な実施形態について述べた。当業者は、そのような記述と、添付図面及び請求項から、様々な変更、修正及び変形を、添付の特許請求の範囲で定義されたような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行なうことができることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0017】
14 ボア
18 検査システム
24 コントローラ
26 カメラ
34 コア
36 第1のコイル
38 第2のコイル
42 整流回路(整流器