(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱源を生成する加熱コイルと該加熱コイルに配置される磁性体とを有する加熱部と、前記加熱コイルに高周波磁束を発生させるトランス部と、加熱対象部に冷却流体を放出する冷却ラインと、前記加熱部、前記トランス部及び前記冷却ラインを支持する筐体と、を備えた歪み取り装置であって、
前記加熱対象部は縦壁面を有し、
前記筐体に配置され前記縦壁面に吸着可能かつ転動可能な複数の車輪と、
前記筐体を前記縦壁面に沿って吊下げ可能な係止手段と、
前記筐体を前記縦壁面に沿って移動させる駆動手段と、を有し、
前記車輪は、前記加熱コイルと同じ鉛直方向の軸線上に配置された一対の主車輪と、該主車輪と異なる鉛直方向の軸線上に配置された補助車輪と、を有することを特徴とする歪み取り装置。
前記車輪は、磁石体と、該磁石体を挟持する一対の円形のカバー体と、を有し、前記カバー体の直径は前記磁石体よりも大きく形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の歪み取り装置。
前記係止手段は、前記縦壁面の上部に係止可能な係止部と、一端が前記係止部に接続され他端が前記筐体に接続された索条体と、を有し、前記駆動手段は、前記索条体を手繰る回転体と、該回転体接続された駆動モータと、を有することを特徴とする請求項1に記載の歪み取り装置。
前記筐体の内部に挿通されるケーブル及び前記冷却ラインを取り纏めるホースと、前記筐体に接続され前記ホースの中間部を支持するホース支持部と、を有し、前記ホースを前記ホース支持部に支持させることによって前記筐体のバランスを保持するようにした、ことを特徴とする請求項1に記載の歪み取り装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の歪み取り装置は、台車タイプの歪み取り装置であり、床面を走行することはできるものの縦壁面を走行することができない。したがって、例えば、船舶の居住区等の壁面を構成する部分の歪み取りを行うためには、対象となる壁面を台車が走行できるように、クレーン等を使用して姿勢を変更しなければならないという問題があった。特に、船舶のような大型の構造物の場合には、ブロック建造の場合であっても、姿勢を変更する行為そのものが大掛かりであるとともに、ブロックごとに姿勢を変更しなければならず、歪み取り作業の準備に多大な労力及び時間を要していた。
【0006】
また、特許文献2に記載の歪み取り装置は、ハンディタイプの歪み取り装置であり、縦壁面をそのままの状態で歪み取りを行うことができるものの、所定の加熱箇所に作業員が歪み取り装置を押し付けなければならず、作業者の負担が大きいという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、縦壁面の歪み取り作業の効率を向上することができるとともに作業員の負担を低減することができる歪み取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、熱源を生成する加熱コイルと該加熱コイルに配置される磁性体とを有する加熱部と、前記加熱コイルに高周波磁束を発生させるトランス部と、加熱対象部に冷却流体を放出する冷却ラインと、前記加熱部、前記トランス部及び前記冷却ラインを支持する筐体と、を備えた歪み取り装置であって、前記加熱対象部は縦壁面を有し、前記筐体に配置され前記縦壁面に吸着可能かつ転動可能な複数の車輪と、前記筐体を前記縦壁面に沿って吊下げ可能な係止手段と、前記筐体を前記縦壁面に沿って移動させる駆動手段と、を
有し、前記車輪は、前記加熱コイルと同じ鉛直方向の軸線上に配置された一対の主車輪と、該主車輪と異なる鉛直方向の軸線上に配置された補助車輪と、を有することを特徴とする歪み取り装置が提供される。
【0009】
前記主車輪及び前記加熱コイルは、その軸線が前記筐体の中心軸からずれるように配置されていてもよい。
【0010】
前記車輪は、例えば、磁石体と、該磁石体を挟持する一対の円形のカバー体と、を有し、前記カバー体の直径は前記磁石体よりも大きく形成されている。また、前記磁石体は、単数又は複数の板状の磁石体により構成されていてもよい。また、前記カバー体は、車輪の幅を狭めるように構成されたフランジ部を有していてもよい。
【0011】
前記係止手段は、前記縦壁面の上部に係止可能な係止部と、一端が前記係止部に接続され他端が前記筐体に接続された索条体と、を有し、前記駆動手段は、前記索条体を手繰る回転体と、該回転体接続された駆動モータと、を有していてもよい。また、前記駆動モータは、前記筐体の内部に配置され、前記索条体は、前記筐体内に収容されるようにしてもよい。
【0012】
前記係止手段は、前記筐体を前記縦壁面に吊下げたときに前記筐体の中心軸が鉛直方向を向くように配置されていてもよい。また、前記加熱部は、前記縦壁面の加熱時に前記筐体の下部に配置されるように構成されていてもよい。
【0013】
前記筐体の内部に挿通されるケーブル及び前記冷却ラインを取り纏めるホースと、前記筐体に接続され前記ホースの中間部を支持するホース支持部と、を有し、前記ホースを前記ホース支持部に支持させることによって前記筐体のバランスを保持するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明の歪み取り装置によれば、縦壁面に沿って走行可能な構成としたことにより、例えば、船舶の居住区等の壁面を構成する部分の歪み取りを行う場合であっても、歪み取り作業のために姿勢を変更する必要がなく、歪み取り作業の準備に要する労力及び時間を低減することができる。また、ハンディタイプではなく、台車タイプとしたことにより、縦壁面の加熱時に作業員が装置を押し付ける必要がない。
【0015】
したがって、縦壁面の歪み取り作業の効率を向上することができるとともに作業員の負担を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図6を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係る歪み取り装置を含む全体構成図である。
図2は、
図1に示した歪み取り装置を示す図であり、(a)は裏面図、(b)は側面図、である。
【0018】
本発明の第一実施形態に係る歪み取り装置1は、
図1及び
図2に示したように、熱源を生成する加熱コイル2aと加熱コイル2aに配置される磁性体2bとを有する加熱部2と、加熱コイル2aに高周波磁束を発生させるトランス部3と、加熱対象部に冷却流体を放出する冷却ライン4と、加熱部2、トランス部3及び冷却ライン4を支持する筐体5と、を備え、加熱対象部は縦壁面Wを有し、筐体5に配置され縦壁面Wに吸着可能かつ転動可能な複数の車輪6と、筐体5を縦壁面Wに沿って吊下げ可能な係止手段7と、筐体5を縦壁面Wに沿って移動させる駆動手段8と、を有する。なお、冷却流体には、水、空気、液体窒素、水蒸気等の流体を使用することができるが、以下の説明においては、冷却流体として水を使用した場合について説明する。
【0019】
縦壁面Wは、例えば、船舶の居住区等の壁面を構成する部材であり、平板部材Waと平板部材Waの背面に溶接された梁部材Wbとにより構成される。平板部材Waの背面に梁部材Wbを溶接することにより、平板部材Waは波を打つように変形することとなる。歪み取り装置1は、平板部材Waの所定箇所を加熱して、加熱箇所の歪みを取ることにより、平板部材Waの変形を除去して平らにする装置である。
【0020】
歪み取り装置1は、いわゆる台車タイプの歪み取り装置であり、
図2(a)に示したように、トランス部3は筐体5内に収納されており、加熱部2は縦壁面Wの加熱時に筐体5の下部に配置されるように構成されている。また、筐体5は離隔して配置される電源装置9に接続されて作動されるように構成されている。
【0021】
電源装置9は、例えば、トランス部3に送電する高周波電源91と、トランス部3及び高周波電源91の冷却水を溜める冷却水タンク92と、冷却水タンク92の冷却水を循環させるポンプ93と、冷却ライン4に送流される冷却水の流量を制御する制御弁94と、高周波電源91及び制御弁94をコントロールする制御部95と、を有する。
【0022】
高周波電源91は、整流回路、電圧制御回路、インバータ回路等を有し、ケーブル97によりトランス部3と電気的に接続されている。また、冷却水タンク92は、循環冷却ライン96に接続されている。循環冷却ライン96は、冷却水タンク92、ポンプ93、高周波電源91及びトランス部3に接続されており、高周波電源91及びトランス部3を冷却する。
【0023】
制御部95は、高周波電源91及び制御弁94の制御を行う。高周波電流の大きさは、目標加熱温度と縦壁面Wの板厚との関係によって定められる。溶接による歪みを効果的に除去するには、鋼板の板厚の適切な深さまで加熱(火入れ)することが好ましい。目標加熱温度は、板厚ごとに数秒の加熱で所定の深さまで加熱できる温度が経験的又は統計的に設定される。加熱を継続したまま目標加熱温度に達する時間よりも早い時間から冷却を開始する。そして、一定時間、加熱及び冷却を継続した後、加熱及び冷却を同時に又は加熱→冷却の順序に終了する。
【0024】
そして、制御部95は、板厚ごとに、目標加熱温度、加熱時間、冷却時間、加熱タイミング、冷却タイミング等を設定したプログラムが予め組み込まれており、歪み取り作業を行う縦壁面Wの板厚に応じて、どのプログラムを適用するか選択できるように構成されている。この選択手段(スイッチ)は、電源装置9に配置されていてもよいし、筐体5に配置されていてもよい。
【0025】
前記加熱部2は、加熱コイル2a及び磁性体2bにより構成されるが、かかる構成は従来の歪み取り装置と同じ構成である。加熱コイル2aは、例えば、
図2(a)に示したように、トランス部3から延伸され、先端部が加熱方向の軸線に沿うように配置された略U字形状をなしている。
【0026】
かかる加熱コイル2aのU字形状部に交番電流を流すと交番磁場が発生される。この交番磁場中に導体である縦壁面Wを配置すると、縦壁面Wに流れる渦電流によりジュール熱が発生し、縦壁面Wが加熱される。したがって、加熱コイル2aは非接触の熱源を生成する。加熱コイル2aは、例えば、銅管により構成され、U字形状部は断面角形に構成される。
【0027】
磁性体2bは、例えば、フェライトにより構成されており、加熱コイル2aに生じた磁束を集束させて効率的に縦壁面Wを加熱する機能を有する。磁性体2bは、加熱コイル2aが縦壁面Wと対峙する加熱面以外の部分を覆うように配置される。なお、加熱コイル2a及び磁性体2bの構成は上述したものに限定されるものではない。
【0028】
前記トランス部3は、加熱コイル2aに高周波電流を流すための整合トランスであり、一次側巻線、二次側巻線等を備え、冷却ジャケット内に収容されている。トランス部3の二次側巻線には、加熱コイル2aが接続されている。かかるトランス部3の構成は、従来のトランス部と同じ構成であるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、トランス部3には、循環冷却ライン96が接続されており、冷却ジャケット内に冷却水を供給できるように構成されている。
【0029】
前記冷却ライン4は、
図2(a)に示すように、先端は加熱部2に案内されており、後端は冷却水の供給源(例えば、工場内に供給される工業用水路)に接続されており、中間には制御弁94が配置されている。制御弁94は、電源装置9に配置されており、制御部95の作用により、冷却ライン4から冷却水を所定のタイミングで放出するようにコントロールされる。
【0030】
前記筐体5は、加熱部2を電源装置9と分離して任意の縦壁面Wの加熱箇所に移動可能にするための支持部材である。筐体5は、箱型の形状を有しており、
図2(a)に示したように、トランス部3及び駆動手段8を内蔵し、縦壁面Wと対峙する裏面には、加熱部2及び車輪6が配置されている。また、
図2(b)に示したように、筐体5の表面には、操作部51及び把手52が配置されている。操作部51は、歪み取り作業の開始を合図するスタートボタン、歪み取り作業を停止させるストップボタン、自動運転又は手動運転を切り替える運転切替ボタン、運転状態等を表示するランプ又は表示部等を有する。把手52は、筐体5の持ち運びや筐体5の走行を補助する際に使用される。
【0031】
また、
図1に示すように、筐体5は、筐体5の内部に挿通されるケーブル97、冷却ライン4及び循環冷却ライン96を取り纏めるホース98と、筐体5に接続されホース98の中間部を支持するホース支持部53と、を有し、ホース98をホース支持部53に支持させることによって筐体5のバランスを保持するようにしている。なお、
図1ではホース98の中間部を一点鎖線で表示し、
図2ではホース支持部53の図を省略してある。
【0032】
筐体5の側面には、ケーブル97、冷却ライン4及び循環冷却ライン96を筐体5の内部に案内する挿入管54が配置されている。ケーブル97、冷却ライン4及び循環冷却ライン96は、挿入管54を介して内部の機器と着脱可能に接続される。ケーブル97、冷却ライン4及び循環冷却ライン96を筐体5内の所定の機器と接続した後、ホース98を挿入管54に接続して固定する。かかるホース98によって、散乱し易いケーブル97、冷却ライン4及び循環冷却ライン96を容易に取り扱うことができる。
【0033】
ホース98は、重量物になり易いことから、そのまま筐体5から垂らした場合には、筐体5の走行を阻害する可能性がある。そこで、
図1に示したように、筐体5の下部にホース支持部53を配置して、挿入管54に接続されたホース98をホース支持部53に支持させることにより、ホース98を筐体5の下方に配置して筐体5の走行を阻害し難くしている。このとき、ホース98及び筐体5の重量バランスを考慮し、ホース98をホース支持部53に係止した状態で、筐体5の中心軸が鉛直方向を向くようにするとよい。なお、ホース支持部53は、例えば、C字形状やU字形状を有する金具であって、ボルト等によりホース98を締め付けて固定できるようにしてもよい。
【0034】
かかるホース支持部53を有しない場合には、ホース98が筐体5の走行を阻害しないように、作業員が監視し、適宜、ホース98の位置を変更するようにすればよい。勿論、ホース支持部53を有する場合であっても、筐体5の走行に影響があるようであれば、床面上のホース98の位置や筐体5に支持されたホース98の支持位置等を作業員が変更するようにすればよい。
【0035】
また、筐体5は、
図2(b)に示したように、加熱コイル2aの縦壁面Wへの接触を抑制するダンパ55と、縦壁面Wの上端部への到達を検出するセンサ56と、を有していてもよい。ダンパ55は、加熱コイル2aの近傍に配置され、筐体5を縦壁面Wに設置したときに、加熱コイル2aよりも縦壁面Wに接近した位置に配置されるように構成されている。センサ56は、例えば、縦壁面Wの上端部にアングル材等が配置されている場合に、アングル材への接触を感知して筐体5の走行を停止させる。センサ56は、感圧式であってもよいし、赤外線等による非接触式であってもよい。
【0036】
前記車輪6は、
図2(a)に示したように、加熱コイル2aと同じ鉛直方向の軸線Lc上に配置された一対の主車輪6a,6aと、主車輪6aと異なる鉛直方向の軸線Ls上に配置された補助車輪6bと、を有する。車輪6は、筐体5の安定性を確保するために、少なくとも三つの車輪(例えば、主車輪6aが二つ、補助車輪6bが一つ)が必要である。歪み取り装置1は、縦壁面Wに溶接された梁部材Wbに沿って走行することが多く、この梁部材Wbが溶接された平板部材Waの表面は平らであること多い。また、縦壁面Wの加熱箇所も梁部材Wbに沿って設定されることが多い。そこで、主車輪6aと加熱コイル2aとの軸線を一致させ、主車輪6aを梁部材Wbに沿って走行させるように構成している。
【0037】
また、梁部材Wbの両側は平板部材Waが変形していることが多く、補助車輪6bが主車輪6aから離れるほど、筐体5が傾斜することとなる。一方で、補助車輪6bを主車輪6aに近付け過ぎると筐体5の姿勢が安定しない。そこで、補助車輪6bの主車輪6aからの距離(軸線Lcと軸線Lsとの間隔)は、例えば、加熱コイル2aの幅の3〜10倍、好ましくは、5〜6倍程度に、又は、100〜300mmの範囲、好ましくは、150〜200mmの範囲に設定される。
【0038】
また、主車輪6a及び加熱コイル2aは、その軸線Lcが筐体5の中心軸Lmからずれるように配置されている。このように、軸線Lcを中心軸Lmからずらすことによって、筐体5の重量バランスを取り易くすることができる。
【0039】
ここで、
図3は、
図1に示した歪み取り装置の車輪を示す図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、を示している。
図3(a)及び(b)に示したように、車輪6(主車輪6a及び補助車輪6b)は、複数の板状の磁石体61と、磁石体61を挟持する一対の円形のカバー体62,62と、を有し、カバー体62の直径は磁石体61よりも大きく形成されている。
【0040】
図3(a)に示した車輪6の第一例において、磁石体61及びカバー体62は、中心部に貫通孔が形成されており、軸部材63に回転可能に挿通されている。軸部材63は、支持部材64に着脱可能に固定される。支持部材64は、例えば、L字形状を有するアングル材であり、筐体5の裏面にボルト等の締結部材により固定される。なお、磁石体61、カバー体62、軸部材63及び支持部材64は、分解可能に構成される。
【0041】
磁石体61は、例えば、複数の円板形状の磁石体61aにより構成されている。このように、磁石体61を複数の円板形状の磁石体61aの集合体により構成することにより、市販の永久磁石を使用して容易に所望の磁力を有する磁石体61を形成することができる。すなわち、円板形状の磁石体61aの枚数を増減することにより、磁力を増減させることができる。また、主車輪6aと補助車輪6bとで磁石体61aの枚数を変更するようにしてもよい。なお、磁石体61は、図示した構成に限定されるものではなく、単数の肉厚板状(円柱形状)の永久磁石であってもよいし、単数又は複数の多角形の板状や柱状の永久磁石であってもよいし、電磁石であってもよい。
【0042】
カバー体62は、円板形状の縁部に環状の側面部62aが立設された形状を有している。カバー体62は、蓋無しの略中空円筒部材の形状をなしていると言い換えることもできる。また、カバー体62は、一般構造用圧延鋼(SS材)等の磁性体により構成されている。側面部62aは、縦壁面Wに接触して回転する接触面を構成する。一対のカバー体62は、磁石体61を挟持するように、開口部を内側に向けて対峙した状態に配置され、カバー体62の間には一定の隙間gが形成される。磁石体61の磁力は、縦壁面Wを介して一対の側面部62aの間に集中した磁力線を形成して吸着力を発揮する。また、車輪6の走行面に付着した鉄屑は、側面部62aに吸い寄せられ、車輪6の中央部(隙間gの部分)の鉄屑を除去することができ、効率よく加熱することができる。
【0043】
図3(b)に示した車輪6の第二例は、カバー体62が、車輪6の幅dを狭めるように構成されたフランジ部62bを有するものである。かかるフランジ部62bは、縦壁面Wに接触して回転する接触面を構成する。このように、カバー体62の側面部62aの端部に拡径したフランジ部62bを形成することにより、車輪6の幅dの大きさを第一例よりも狭くすることができる。例えば、車輪6が走行する面が変形により傾斜している場合には、車輪6の幅dを狭くすることにより、車輪6の傾斜を抑制することができる。
【0044】
次に、係止手段7及び駆動手段8について、
図1、
図2、
図4及び
図5を参照しつつ説明する。ここで、
図4は、
図1に示した歪み取り装置の係止手段及び駆動手段を示す図であり、(a)は側面図、(b)は
図4(a)におけるB−B断面図、を示している。また、
図5は、
図1に示した歪み取り装置の係止手段の係止部を示す図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、(c)は第三例、を示している。
【0045】
前記係止手段7は、
図1に示したように、縦壁面Wの上部に係止可能な係止部71と、一端が係止部71に接続され他端が筐体5に接続された索条体72と、を有し、前記駆動手段8は、索条体72を手繰る回転体81と、回転体81に接続された駆動モータ82と、を有する。
【0046】
係止部71は、
図5に示したように、縦壁面Wの構造に応じて種々の形態のものを使用することができる。
図5(a)に示した第一例は、縦壁面Wの上部にアングル材Wcが溶接されている場合を示している。かかるアングル材Wcを有する縦壁面Wでは、係止部71は、アングル材Wcに係止可能なフック部材により構成される。係止部71をアングル材Wcに係止させたときの下面又は側面に索条体72が接続される。索条体72の接続位置は、筐体5を縦壁面Wに吊下げたときに筐体5の中心軸Lmが鉛直方向を向くようにしてもよい。かかる構成により、索条体72は、筐体5が縦壁面Wを走行可能に配置した状態で鉛直方向に真っ直ぐに伸び、筐体5の走行を不安定にする無駄な張力の発生を抑制することができる。
【0047】
図5(b)に示した第二例は、縦壁面Wの上部にアングル材Wc等の他の部材が溶接されていない場合を示している。かかる場合、係止部71は、縦壁面Wに直に係止可能なフック部材により構成される。また、係止部71を縦壁面Wに係止させたときの側面には、索条体72を支持する支持部材73が接続され、支持部材73に索条体72が接続される。
【0048】
図5(c)に示した第三例は、縦壁面Wの上部に平板部材Wdが溶接されている場合を示している。かかる場合、フック部材では係止することが困難であるため、係止部71は、平板部材Wdの表面に吸着可能な吸着部材により構成される。吸着部材には、粘着式、吸盤式、磁石式等、種々の形式のものを適用することができる。
【0049】
索条体72には、
図4(a)に示したように、例えば、環状のリング部材を繋ぎ合わせたリンクチェーンが使用される。索条体72には、絡まり難い構成のチェーンを使用するとよい。なお、索条体72は、リンクチェーンに限定されるものではなく、他の構成のチェーンであってもよいし、ワイヤやロープ等のように歪み取り装置1を牽引できるものであればよい。
【0050】
回転体81は、
図4(a)に示したように、歯車構造を有し、索条体72の開口部に係止して、索条体72を筐体5内に手繰り寄せることができるように構成されている。回転体81は、
図2(a)及び(b)に示したように、駆動モータ82の動力が歯車機構83を介して伝達されるように構成されている。歯車機構83は、回転体81及び駆動モータ82の配置位置や向き等によって適宜構成される歯車列であり、必要に応じて傘歯車等が使用される。
【0051】
また、索条体72の移動を安定させるために、筐体5には索条体72の案内部材84が配置されている。案内部材84は、
図4(a)に示したように、回転体81の略接線方向の前後に配置するようにしてもよい。案内部材84は、
図4(b)に示したように、筒状部材84aと、筒状部材84aの内部に配置された複数のガイド板84bと、を有する。ガイド板84bは、90°の位相をずらして配置された四枚の板部材により構成される。かかる構成により、案内部材84に進入した索条体72を、安定した状態で通過させることができ、絡まりの発生を抑制することができる。ガイド板84bの両端は、テーパ状に形成してもよい。なお、ガイド板84bは、回転体81の出入口部や案内部材84の出入口部等、駆動手段8の構成に応じて適宜配置することができる。
【0052】
案内部材84は、
図4(a)に示したように、直線状(上側の案内部材84)に形成してもよいし、屈折形状(下側の案内部材84)に形成してもよい。案内部材84を通過した索条体72は、
図2(a)に示したように、筐体5の内部に配置された索条体収容部57に落下する。回転体81の索条体72を手繰り寄せる接線方向と索条体72の落下位置とをずらしたい場合には、
図4(a)に示したように、屈折形状の案内部材84を使用すればよい。
【0053】
上述した係止手段7及び駆動手段8によれば、係止部71を縦壁面Wに係止させ、筐体5の車輪6を縦壁面Wに吸着させた状態で、駆動モータ82を駆動させることにより、回転体81を回転させることができ、索条体72を手繰り寄せて筐体5内に索条体72を収容することができる。すなわち、駆動モータ82は、筐体5の内部に配置され、索条体72は、筐体5内に収容されるように構成されている。かかる構成により、筐体5は、索条体72に沿って車輪6を回転させながら縦壁面Wを上昇することとなる。
【0054】
歪み取り装置1は、縦壁面Wを下から上に向かって走行させることが好ましい。冷却ライン4から放出される冷却水は、縦壁面Wを冷却した後、床面に落下するため、上から下に走行させた場合には、落下する冷却水が加熱予定の縦壁面Wを冷却してしまい、加熱コイル2aの温度をその分だけ上昇させなければならない。なお、冷却流体として気体や水蒸気等の縦壁面Wの加熱予定部を冷却し難い物体を使用した場合には、歪み取り装置1を上から下に走行させるようにしてもよい。
【0055】
また、歪み取り装置1を下から上に向かって走行させることを前提とする場合には、
図2(a)に示したように、加熱コイル2aは筐体5の下部に配置するようにしてもよい。かかる構成により、縦壁面Wの下端部であっても加熱することができる。なお、縦壁面Wの上部には、筐体5の長さ分だけ加熱できない部分があるが、この部分は後工程において、作業員が必要に応じて加熱バーナを使用して加熱するようにすればよい。例えば、縦壁面Wが船舶の居住区の場合には、一般に、上下反転した状態で歪み取り作業が行われることから、縦壁面Wの上部は組立時には足下に配置される。したがって、作業員の手作業であっても容易に歪み取り作業を行うことができる。
【0056】
上述した駆動手段8は、筐体5に配置した回転体81により索条体72を手繰り寄せる構成としたが、かかる構成に限定されるものではない。例えば、係止部71の近傍(すなわち、筐体5の外部)に索条体72を巻き取るウインチを配置した構成であってもよいし、車輪6を回転駆動させる構成であってもよい。
【0057】
最後に、上述した歪み取り装置1を使用して縦壁面Wを加熱する場合について説明する。ここで、
図6は、
図1に示した歪み取り装置により加熱する加熱予定部を示す図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、を示している。
【0058】
図6(a)に示した第一例は、加熱予定部Hが縦壁面Wの梁部材Wb上に沿って設定されている場合を示している。かかる場合、
図1に示したように、歪み取り装置1の加熱部2が梁部材Wb上に配置されるように筐体5を平板部材Waに設置する。そして、駆動手段8を駆動させると筐体5は梁部材Wbに沿って上昇し、筐体5の走行速度、加熱部2及び冷却ライン4を制御することにより、加熱予定部Hどおりの加熱を行うことができる。なお、破線で示した加熱予定部Hのうち、線部が加熱する箇所を示している。
【0059】
図6(b)に示した第二例は、加熱予定部Hが縦壁面Wの平板部材Waに格子状に設定されている場合を示している。かかる場合、筐体5の中心軸Lmが加熱予定部Hと平行になるように歪み取り装置1を設置する。その状態で、駆動手段8を駆動させると筐体5は加熱予定部Hに沿って略一定の速度で移動し、加熱予定部Hどおりの加熱を行うことができる。筐体5を斜めに走行させる場合には、必要に応じて作業員がサポートするようにしてもよい。なお、平板部材Waの中央部を加熱する場合には、加熱予定部Hは図示した格子状に限定されるものではなく、鉛直方向及び水平方向に配列された格子状であってもよいし、鉛直方向又は水平方向にのみ配列された列状であってもよい。
【0060】
上述した加熱予定部Hの構成は、単なる一例であり、第一例及び第二例を適宜組み合わせるようにしてもよい。なお、縦壁面Wは、床面に対して垂直に配置された壁面に限定されるものではなく、床面に対して傾斜して配置された壁面であってもよいし、上部がオーバーハングした曲面状の壁面であってもよい。
【0061】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。