(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴム、天然ゴム、及びイソプレンゴムの合計含有量がゴム成分100質量%中90質量%以上であり、上記式(1)及び/又は上記式(2)で表される非イオン界面活性剤と、硫黄とを含み、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを2〜70質量部含む。
【0018】
本発明では、特定のゴム成分と特定量のカーボンブラックと硫黄とを配合したゴム組成物において、特定の非イオン界面活性剤を配合することにより、ワックス等の析出により形成されるタイヤ表面(ブルーム層)の凸凹が平滑化され、光の乱反射が抑制される。これにより、上述の茶変色や白変色を軽減するなど、耐変色性も向上する。また、タイヤ表面に適度な黒色外観と光沢を与えるなど、タイヤ外観が改善される。また、同時に、良好な操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性を維持又は改善できる。
【0019】
また、上記ゴム組成物は、特定の非イオン界面活性剤を配合することにより、ゴム組成物と、特定の非イオン界面活性剤との相溶性が適度にコントロールされた結果、上述のように、操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性を維持又は改善しつつ、タイヤ外観を改善することができると推察される。
【0020】
本発明のゴム組成物では、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、及びイソプレンゴム(IR)からなる群より選択される少なくとも1種のゴムが使用される。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、NR、BRが好ましく、NRとBRを併用することがより好ましい。
【0021】
NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記ゴム組成物がNRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。該NRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。NRの含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0023】
IRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記ゴム組成物がIRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のIRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。該IRの含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。IRの含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0025】
BRとしては特に限定されず、例えば、JSR(株)製のBR730、BR51、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B、BR710等の高シス含量BR、日本ゼオン(株)製のBR1250H等の低シス含量BR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含有するBR(SPB含有BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、SPB含有BRが好ましい。また、本発明の効果が更に好適に得られるという理由から、SPB含有BR以外のBR(例えば、高シス含量BRや低シス含量BR)と、SPB含有BRを併用することがより好ましい。
【0026】
SPB含有BRにおいて、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)は、単にSPB含有BR中に結晶を分散させたものではなく、SPB含有BRと化学結合したうえ、無配向で分散していることが好ましい。前記結晶がゴム成分と化学結合したうえで分散することにより、クラックの発生および伝播が抑制される傾向がある。
【0027】
SPB含有BR中の1,2−シンジオタタチックポリブタジエン結晶含有率は、2.5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。2.5質量%未満では、ゴム組成物の充分な硬度(操縦安定性)が得られない傾向がある。また、該含有率は22質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。該含有率が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0028】
上記ゴム組成物がSPB含有BRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSPB含有BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。該SPB含有BRの含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。SPB含有BRの含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0029】
上記ゴム組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。該BRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。BRの含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0030】
本発明のゴム組成物では、ブタジエンゴム、天然ゴム、及びイソプレンゴムの合計含有量がゴム成分100質量%中90質量%以上、好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。90質量%未満では、耐クラック性、耐オゾン性が悪化する。
【0031】
BR、NR、IR以外に使用できるゴム成分としては、特に限定されず、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明では、下記式(1)及び/又は下記式(2)で表される非イオン界面活性剤が使用される。非イオン界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果(特に、操縦安定性、耐オゾン性)がより好適に得られるという理由から、下記式(2)で表される非イオン界面活性剤が好ましい。
【化3】
(式(1)中、R
1は、炭素数6〜26の不飽和結合を有する炭化水素基を表す。dは整数を表す。)
【化4】
(式(2)中、R
2及びR
3は、同一若しくは異なって、炭素数6〜26の炭化水素基を表す。eは整数を表す。)
【0033】
式(1)のR
1は、炭素数6〜26の不飽和結合を有する炭化水素基を表す。R
1の炭化水素基の炭素数が5以下の場合、ゴムへの浸透性が低く、ゴム表面に移行する速度が速くなりすぎる為、ゴム表面の外観が悪くなる傾向がある。またR
1の炭化水素基の炭素数が27以上の場合、原料が入手困難または高価であり、不適である。R
1の炭化水素基の炭素数が上記範囲内であると、非イオン界面活性剤のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。
【0034】
R
1の炭化水素基の炭素数は、好ましくは8〜24、より好ましくは10〜22、更に好ましくは14〜20である。
【0035】
R
1の炭素数6〜26の不飽和結合を有する炭化水素基としては、炭素数6〜26のアルケニル基、炭素数6〜26のアルキニル基が挙げられる。
【0036】
炭素数6〜26のアルケニル基としては、例えば、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、トリコセニル基、ヘキサコセニル基等が挙げられる。
【0037】
炭素数6〜26のアルキニル基としては、例えば、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基、トリデシニル基、テトラデシニル基、ペンタデシニル基、ヘプタデシニル基、オクタデシニル基、イコシニル基、トリコシニル基、ヘキサコシニル基等が挙げられる。
【0038】
R
1としては、炭素数6〜26のアルケニル基が好ましい。
【0039】
d(整数)は、大きいほど親水親油バランスを表すHLB値が高くなり、ゴム表面に移行する速度が速くなる傾向がある。本発明において、dの値は特に限定されず、使用条件・目的等に応じて適宜選択できる。なかでも、dとしては、好ましくは2〜25、より好ましくは4〜20、更に好ましくは8〜16、特に好ましくは10〜14である。
【0040】
上記式(1)で表される非イオン界面活性剤としては、エチレングリコールモノオレエート、エチレングリコールモノパルミエート、エチレングリコールモノバクセネート、エチレングリコールモノリノレート、エチレングリコールモノリノレネート、エチレングリコールモノアラキドネート、エチレングリコールモノセチルエート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、入手の容易性、コストの点から、エチレングリコールモノオレエートが好ましい。
【0041】
式(2)のR
2及びR
3は、同一若しくは異なって、炭素数6〜26の炭化水素基を表す。R
2及びR
3の炭化水素基の炭素数が5以下の場合、ゴムへの浸透性が低く、ゴム表面に移行する速度が速くなりすぎる為、ゴム表面の外観が悪くなる傾向がある。またR
2及びR
3の炭化水素基の炭素数が27以上の場合、原料が入手困難または高価であり、不適である。R
2及びR
3の炭化水素基の炭素数が上記範囲内であると、非イオン界面活性剤のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。
【0042】
R
2及びR
3の炭化水素基の炭素数は、好ましくは8〜24、より好ましくは10〜22、更に好ましくは14〜20である。
【0043】
R
2及びR
3の炭素数6〜26の炭化水素基としては、炭素数6〜26のアルケニル基、炭素数6〜26のアルキニル基、炭素数6〜26のアルキル基が挙げられる。
【0044】
炭素数6〜26のアルケニル基、炭素数6〜26のアルキニル基としては、上述のR
1の場合と同様の基が挙げられる。
【0045】
炭素数6〜26のアルキル基としては、例えば、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、トリコシル基、ヘキサコシル基等が挙げられる。
【0046】
R
2及びR
3としては、炭素数6〜26のアルケニル基、炭素数6〜26のアルキニル基が好ましく、炭素数6〜26のアルケニル基がより好ましい。
【0047】
e(整数)は、大きいほど親水親油バランスを表すHLB値が高くなり、ゴム表面に移行する速度が速くなる傾向がある。本発明において、eの値は特に限定されず、使用条件・目的等に応じて適宜選択できる。なかでも、eとしては、好ましくは2〜25、より好ましくは4〜20、更に好ましくは8〜16、特に好ましくは10〜14である。
【0048】
上記式(2)で表される非イオン界面活性剤としては、エチレングリコールジオレエート、エチレングリコールジパルミエート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジバクセネート、エチレングリコールジリノレート、エチレングリコールジリノレネート、エチレングリコールジアラキドネート、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジセチルエート、エチレングリコールジラウレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、入手の容易性、コストの点から、エチレングリコールジオレエート、エチレングリコールジラウレート、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジパルミテートが好ましい。
【0049】
ゴム成分100質量部に対して、上記式(1)で表される非イオン界面活性剤、及び上記式(2)で表される非イオン界面活性剤の合計含有量(上記非イオン界面活性剤の含有量)は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.6質量部以上、特に好ましくは1質量部以上、最も好ましくは1.2質量部以上である。0.1質量部未満では、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。また、上記合計含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。5.0質量部を超えると、操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性、耐変色性が悪化するおそれがある。
【0050】
本発明では、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成する為に、硫黄が使用される。これにより、上記非イオン界面活性剤のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果が良好に得られる。硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上である。0.1質量部未満であると、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。硫黄の含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下、特に好ましくは3.0質量部以下である。6.0質量部を超えると、操縦安定性、耐オゾン性、耐変色性、タイヤの外観が悪化するおそれがある。
【0052】
本発明では、特定量のカーボンブラックが使用される。これにより、良好な補強性が得られ、良好な操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性が得られる。また、多量のカーボンブラックを配合することにより、外観の悪化が懸念されるが、本発明では、カーボンブラックの含有量を特定量とすることにより、外観の悪化を抑制できる。また、上記非イオン界面活性剤のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果が良好に得られる。
具体的には、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上、好ましくは15質量部以上、より好ましくは25質量部以上である。2質量部未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。該含有量は、70質量部以下、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。70質量部を超えると、操縦安定性、耐オゾン性が悪化する傾向がある。
【0053】
カーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は20m
2/g以上が好ましく、50m
2/g以上がより好ましい。20m
2/g未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。該N
2SAは、180m
2/g以下が好ましく、120m
2/g以下がより好ましく、90m
2/g以下が更に好ましく、80m
2/g以下が特に好ましい。180m
2/gを超えると、分散させるのが困難となり、操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのN
2SAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0055】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、50ml/100g以上が好ましく、80ml/100g以上がより好ましい。50ml/100g未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。また、カーボンブラックのDBPは、200ml/100g以下が好ましく、135ml/100g以下がより好ましく、115ml/100g以下が更に好ましい。200ml/100gを超えると、分散させるのが困難となり、操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217−4:2001に準拠して測定される。
【0056】
本発明では、特定量のカーボンブラックと共にシリカを使用してもよい。シリカを配合することにより、タイヤの外観をより改善できる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0057】
シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、好ましくは50m
2/g以上、より好ましくは100m
2/g以上、更に好ましくは150m
2/g以上である。50m
2/g未満では、操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性が低下する傾向がある。該N
2SAは、好ましくは250m
2/g以下、より好ましくは210m
2/g以下である。250m
2/gを超えると、分散させるのが困難となり、操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのN
2SAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
【0058】
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。また、シリカの含有量は、好ましくは40質量部以下である。シリカの含有量が40質量部を超えると、耐クラック性、耐オゾン性、耐変色性、タイヤの外観が悪化する傾向がある。シリカの含有量を上記範囲内にすることにより、タイヤの外観をより改善できるとともに、補強効果も得られる。
【0059】
本発明のゴム組成物は、シリカを配合する場合、シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
【0060】
上記ゴム組成物がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性が低下する傾向がある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0061】
本発明では、オゾンによる亀裂の発生及び進行を抑制するために、ワックスを配合することが好ましい。本発明では、ワックスを配合しても上述のように、ワックス等の析出により形成されるタイヤ表面(ブルーム層)の凸凹を平滑化でき、光の乱反射が抑制されるため、上述の茶変色や白変色を軽減できる。また、タイヤ表面に適度な黒色外観と光沢を与えるなど、タイヤ外観が改善される。さらに本発明では、特定のゴム組成物であるため、良好な操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性は維持又は改善される。
【0062】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。
【0064】
上記ゴム組成物がワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。0.5質量部未満であると、充分な耐オゾン性が得られないおそれがある。また、該ワックスの含有量は、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。12質量部を超えると、それ以上の耐オゾン性の向上効果が望めず、コストが上昇するおそれがある。
【0065】
本発明のゴム組成物は、オイルを配合してもよい。オイルを配合することにより、加工性が改善され、タイヤに柔軟性を与える事ができ、本発明の効果がより良好に得られる。オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物を用いることができる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。パラフィン系プロセスオイルとして、具体的には出光興産(株)製のPW−32、PW−90、PW−150、PS−32などが挙げられる。また、アロマ系プロセスオイルとして、具体的には出光興産(株)製のAC−12、AC−460、AH−16、AH−24、AH−58などが挙げられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果が好適に得られるという理由から、パラフィン系プロセスオイルが好ましい。
【0066】
上記ゴム組成物がオイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上である。また、オイルの含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下、特に好ましくは10質量部以下、最も好ましくは8.0質量部以下である。自らもタイヤ表面にブルームするオイルの含有量を上記範囲内とすることにより、上記非イオン界面活性剤のブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。なお、オイルの含有量が60質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向が有る。
【0067】
本発明のゴム組成物は、オゾンによる亀裂の発生及び進行を抑制するために、老化防止剤を含有することが好ましい。本発明では、老化防止剤を配合しても上述のように、良好な低燃費性、耐摩耗性を維持又は改善しつつ、茶変色や白変色を軽減でき、耐変色性、タイヤの外観を向上できる。
【0068】
老化防止剤としては特に限定されず、例えば、ナフチルアミン系、キノリン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、ヒドロキノン誘導体、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、トリスフェノール系、ポリフェノール系)、チオビスフェノール系、ベンゾイミダゾール系、チオウレア系、亜リン酸系、有機チオ酸系老化防止剤などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐オゾン性能が良好であり、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、p−フェニレンジアミン系が好ましい。
【0069】
p−フェニレンジアミン系老化防止剤としては、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−4−メチル−2−ペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアリール−p−フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐オゾン性能が良好であり、本発明の効果がより好適に得られ、経済性にも優れるという理由から、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましい。
【0070】
上記ゴム組成物が老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上である。0.3質量部未満であると、充分な耐オゾン性が得られないおそれがある。老化防止剤の含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下、特に好ましくは2.5質量部以下である。10質量部を超えると、老化防止剤のブルーム量が増大し、タイヤの外観が悪化するおそれがある。
【0071】
本発明のゴム組成物は加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又はキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0072】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、TBBSが好ましい。
【0073】
上記ゴム組成物が加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。加硫促進剤の含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0074】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、粘着付与剤などを適宜配合することができる。
【0075】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0076】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(特に、タイヤの表面(外面)を構成し、良好な耐オゾン性、耐変色性、タイヤの外観が要求されるサイドウォール、クリンチ、及び/又はウイング等)に好適に使用できる。
【0077】
サイドウォールとは、ショルダー部からビード部にかけてケースの外側に配された部材であり、具体的には、特開2005−280612号公報の
図1、特開2000−185529号公報の
図1等に示される部材である。
【0078】
クリンチとは、サイドウォール下部に存在するリムとの接触部をカバーするゴム部であり、クリンチエイペックス又はラバーチェーファーともいう。具体的には、例えば、特開2008−75066号公報の
図1等に示される部材である。
【0079】
ウイングとは、ショルダー部において、トレッドとサイドウォールの間に位置する部材であり、具体的には、特開2007−176267号公報の
図1、3等に示される部材である。
【0080】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でサイドウォール、クリンチ、ウイング等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成できる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤが得られる。
【0081】
本発明の空気入りタイヤは、たとえば乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等として用いられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
【実施例】
【0082】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0083】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS#3
IR:日本ゼオン(株)製のIR2200
BR1:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量:97質量%)
BR2:宇部興産(株)製のVCR412(1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR)、1,2−シンジオタタチックポリブタジエン結晶含有率:12質量%)
BR3:日本ゼオン(株)製のBR1250H(低シス含量BR)
SBR:日本ゼオン(株)製のSBR1502
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN330(N
2SA:75m
2/g、DBP:102ml/100g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(N
2SA:175m
2/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
オイル:出光興産(株)製のプロセスオイルPW−32(パラフィン系プロセスオイル)
界面活性剤1:三洋化成工業(株)製のイオネットDO600(主成分が、式(2)のR
2及びR
3:−C
17H
33、式(2)のe:12、下式で表わされる化合物)
【化5】
界面活性剤2:三洋化成工業(株)製のイオネットPO600(主成分が、式(1)のR
1:−C
17H
33、式(1)のd:12、下式で表わされる化合物)
【化6】
界面活性剤3:関東化学(株)製のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン
界面活性剤4:関東化学(株)製のトリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン
界面活性剤5:関東化学(株)製のポリオキシエチレンドデシルエーテル
界面活性剤6:東京化成工業(株)製のエチレングリコールジブチルエーテル
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
加硫促進剤:大内新興化学社製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0084】
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を180℃になるまで混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。次に、得られた未加硫ゴム組成物を160℃で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0085】
得られた加硫ゴム組成物を下記により評価し、結果を表1に示した。
【0086】
<硬度測定>
JIS K6253に準拠し、25℃の温度で硬度計を用いて各加硫ゴム組成物の硬度を測定(ショア−A測定)し、比較例1の硬度を100とした指数(各配合の硬度/比較例1の硬度×100)を計算した。指数が大きいほど、操縦安定性に優れることを示す。
【0087】
<破断時伸び>
各加硫ゴム組成物から3号ダンベル型を用いて試験片を作成し、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、室温にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定し、比較例1のEBを100とした指数(各配合のEB/比較例1のEB×100)を計算した。指数が大きいほど、耐クラック性に優れることを示す。なお、EB指数は98以上を目標とした。
【0088】
<耐オゾン性評価>
JIS K 6259「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−耐オゾン性の求め方」に準じて、得られた加硫ゴム組成物から所定のサイズの試験片を作製し、動的オゾン劣化試験を行った。往復運動の周波数0.5±0.025Hz、オゾン濃度50±5pphm、試験温度40℃、引張歪み20±2%の条件下で、48時間試験した後の亀裂(クラックの発生の有無)の状態を観察することで、耐オゾン性を評価した。なお、指数が大きいほど亀裂の数が少なく、亀裂の大きさが小さく、耐オゾン性に優れることを示す。
【0089】
<耐変色性評価>
耐オゾン性試験を終えたサンプルを(株)ミノルタ製色彩色差度計(CR−310)を用い、a値、b値を求めた(L
*a
*b
*表色系)。指標を(a
2+b
2)
−0.5とし、比較例1の指標を100とした指数(各配合の指標/比較例1の指標×100)を計算した。指数が大きいほど、変色が少なく、耐変色性に優れることを示す。
【0090】
<外観評価>
耐オゾン性試験を終えたサンプルを屋外に持ち出し、下記指標にて外観評価を行った。
◎比較例1より黒く、光沢がある
○比較例1より黒く、やや光沢がある
△比較例1と同等の茶色
×比較例1より茶色い
【0091】
<走査型電子顕微鏡(SEM)による評価>
得られた未加硫ゴム組成物を用いて、サイドウォールの形状に合わせて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃で加硫して試験用タイヤ(実施例2、比較例1)を得た。得られた試験用タイヤについて、30日間雨のかからない屋外で日光に暴露させた後、サイドウォール部を切り取り、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM/フィリップ社製XL30 ESEM)を用いて観察した。結果を
図1(比較例1)、
図2(実施例2)に示した。
図1、2より、実施例2のサイドウォールの表面は、平面を保っていたのに対し、比較例1のサイドウォールの表面は、ワックス等による凹凸が見られた。なお、実施例2のサイドウォールは、黒く外観も良好であった。一方、比較例1のサイドウォールは茶色く外観も悪かった。
【0092】
【表1】
【0093】
ブタジエンゴム、天然ゴム、及びイソプレンゴムの合計含有量がゴム成分100質量%中90質量%以上であり、上記式(1)及び/又は上記式(2)で表される非イオン界面活性剤と、硫黄とを含み、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを2〜70質量部含む実施例では、良好な操縦安定性、耐クラック性、耐オゾン性を維持又は改善しつつ、耐変色性、ゴム(タイヤ)の外観を改善できた。