(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806722
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】磁気素子、データリーダおよびそれを備える装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/39 20060101AFI20151021BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20151021BHJP
G11B 5/31 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
G11B5/39
H01L43/08 Z
G11B5/31 Q
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-247173(P2013-247173)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-110072(P2014-110072A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2014年1月6日
(31)【優先権主張番号】13/690,204
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・エリック・マッキンレー
(72)【発明者】
【氏名】リウェン・タン
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ウォルター・シングルトン
(72)【発明者】
【氏名】モハメド・シャリア・ウッラー・パトワリ
(72)【発明者】
【氏名】ビクター・ボリス・サポツニコフ
【審査官】
斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−203063(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0087046(US,A1)
【文献】
特開2010−102817(JP,A)
【文献】
特開2004−334921(JP,A)
【文献】
特開2003−324225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31−5/39
H01L 43/00−43/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部シールドに接するとともに、空気軸受面(ABS)上のサイドシールドから分離された磁気リーダを備え、前記上部シールドは、第1の合成反強磁性体を形成する第1のカップリング層によって分離された第1および第2の強磁性体層を含み、
前記サイドシールドは、前記第2の強磁性体層とともに第2の合成反強磁性体を形成する、前記上部シールドの第2のカップリング層を介して、前記上部シールドに反強磁性的に結合され、
前記第1および第2の強磁性体層は、異なる厚さを有し、前記第1および第2の合成反強磁性体のための異なる磁気強度を与える、磁気素子。
【請求項2】
前記第1の合成反強磁性体は、ピニング層と、前記第1のカップリング層と、前記第1および第2の強磁性体層とを含む、請求項1に記載の磁気素子。
【請求項3】
前記第1および第2のカップリング層が、前記上部シールドと前記サイドシールドとの間に配置される、請求項1に記載の磁気素子。
【請求項4】
前記第2のカップリング層は遷移金属を含む、請求項3に記載の磁気素子。
【請求項5】
前記第2のカップリング層は、前記サイドシールドと磁気リーダとに接するように連続的に延在する、請求項1に記載の磁気素子。
【請求項6】
前記サイドシールドは、強磁性材料の単一層を含む、請求項1に記載の磁気素子。
【請求項7】
前記上部シールドは、前記第1の強磁性体層に接するピニング層を含む、請求項1に記載の磁気素子。
【請求項8】
前記ピニング層は、反強磁性体を含む、請求項7に記載の磁気素子。
【請求項9】
前記サイドシールドは、軟磁性材料を含む、請求項1に記載の磁気素子。
【請求項10】
前記磁気リーダは、固定基準構造を伴わない、磁気自由層の三層積層体を含む、請求項1に記載の磁気素子。
【請求項11】
前記磁気リーダは、固定磁気層および自由磁気層の磁気抵抗積層体を含む、請求項1に記載の磁気素子。
【請求項12】
空気軸受面(ABS)上の第1および第2のサイドシールドの間に配置されるとともに、前記第1および第2のサイドシールドから分離された磁気リーダと、
第1の合成反強磁性体を形成する第1のカップリング層によって分離された第1および第2の強磁性体層を含む上部シールドとを備え、前記上部シールドは、前記第1および第2のサイドシールドと前記磁気リーダとに接し、
各サイドシールドは、前記上部シールドに、前記上部シールドの第2のカップリング層を介して反強磁性的に結合することによって、第2の合成反強磁性体を形成し、前記第1および第2の強磁性体層は、異なる厚さを有し、前記第1および第2の合成反強磁性体のための異なる磁気強度を与える、データリーダ。
【請求項13】
前記第2のカップリング層は、前記第1のサイドシールドから前記第2のサイドシールドまで、前記磁気リーダを横断して連続的に延在し、前記第2の強磁性体層によって前記第1のカップリング層から分離される、請求項12に記載のデータリーダ。
【請求項14】
前記第1のカップリング層は、前記磁気リーダから分離されるとともに、前記磁気リーダから予め定められた距離に位置付けられる、請求項12に記載のデータリーダ。
【請求項15】
前記第2のカップリング層は、前記第1のカップリング層とは異なる遷移金属を含む、請求項12に記載のデータリーダ。
【請求項16】
前記第1のカップリング層は、前記上部シールドの前記第1の強磁性体層と前記第2の強磁性体層との間に配置される、請求項12に記載のデータリーダ。
【請求項17】
前記第1の強磁性体層は、ピニング層に接することによって、予め定められた磁化に固定される、請求項12に記載のデータリーダ。
【請求項18】
前記第1の強磁性体層は、前記第2の強磁性体層よりも小さい厚さを有する、請求項12に記載のデータリーダ。
【請求項19】
上部シールドに接するとともに、空気軸受面(ABS)上のサイドシールドから分離された磁気リーダと、
前記サイドシールドを前記上部シールドに第1の磁気強度で反強磁性的に結合するための手段と、
前記上部シールドの第1の強磁性体層を第2の強磁性体層に、前記第1の磁気強度と異なる第2の磁気強度で反強磁性的に結合するための手段とを備える、装置。
【請求項20】
前記サイドシールドを前記上部シールドに反強磁性的に結合するための手段は、第1のカップリング層と、前記第1の強磁性体層と、第2のカップリング層と、前記第2の強磁性体層と、ピニング層との積層体を含む、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
要約
さまざまな実施形態は、概して、データリーダとして構成される磁気素子に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】米国特許第5515221号明細書
【特許文献2】米国特許第6018443号明細書
【特許文献3】米国特許第6597546号明細書
【特許文献4】米国特許第6700760号明細書
【特許文献5】米国特許第6710982号明細書
【特許文献6】米国特許第7236333号明細書
【特許文献7】米国特許第7606007号明細書
【特許文献8】米国特許第8189303号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0253037号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2009/0279213号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2010/0027168号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2011/0279923号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
さまざまな実施形態によれば、磁気素子は、少なくとも磁気リーダを有し、磁気リーダは、上部シールドに接するとともに、空気軸受面(ABS)上のサイドシールドから分離される。サイドシールドは、上部シールドとサイドシールドとの間に配置されたカップリング層を介して上部シールドに反強磁性的に結合され得る。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】さまざまな実施形態に従う例示的なデータ記憶装置の概略図である。
【
図2】いくつかの実施形態に従って構築される例示的な磁気素子の断面ブロック図である。
【
図3】いくつかの実施形態において
図1のデータ記憶装置の部分に用いることができる磁気素子の実施形態の概略図である。
【
図4】いくつかの実施形態において
図1のデータ記憶装置に用いることができる例示的な磁気素子のブロック図である。
【
図5】いくつかの実施形態に従って構築されかつ動作する例示的な磁気素子からの動作データを示すグラフである。
【
図6】さまざまな実施形態に従って構築されかつ動作する例示的な磁気素子からのさまざまな動作データをプロットした図である。
【
図7】本発明のさまざまな実施形態に従って実行される素子製造ルーチンをマッピングするフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
詳細な説明
産業界は、高速データアクセス時間を伴う増加されたデータ記憶容量および信頼性のために継続的な努力を続けている。このような性能は、低減されたフォームファクタデータ記憶要素、および、1つ以上の磁気シールドを利用してデータ分解能を増加し得る増加されたデータ面積密度に対応し得る。しかしながら、低減されたデータトラック幅と組み合わされた磁気サイドシールドの物理サイズの低減は、近接したデータトラックからのデータビットの不測の検知に対応し、それは磁気非対称性および低減されたデータビットリードバックを生成し得る。したがって、データ分解能を維持しながら、磁気サイドシールドの物理サイズを低減することへの継続的な関心がある。
【0006】
このように、磁気素子は、データリーダが上部シールドに接する一方で、空気軸受面(ABS)上のサイドシールドから分離されるデータ検知装置として構成され得る。サイドシールドは、上部シールドと反強磁性的に結合し、データビットの不測の検知を低減し得る。上部シールドに磁気的に結合される比較的低い高磁性体材料で高飽和保持力の磁気サイドシールドを交換することによって、データリーダは、浮遊磁場感度を低減しつつ、より正確なバイアス磁化を実現し得る。サイドシールドと上部シールドとの間の結合は、最小の処理複雑性で、サイドシールドの磁化をさらに安定化し得る。
【0007】
磁気的に結合されたサイドシールドを有する磁気素子は、さまざまな非制限な環境において実現され得るが、
図1は、例示的なデータ記憶装置のデータ変換部100を概略的に
示す。変換部100は、磁気記憶媒体108に存在するプログラムされたデータビット106上に変換ヘッド104を位置付ける作動アセンブリ102を伴って構成される。磁気記憶媒体108は、スピンドルモータ110に取り付けられ、その周りを回転して空気軸受面(ABS)112を生成する。スピンドルモータ110が回転する速度は、作動アセンブリ102のスライダ部114がABS上を飛行して、変換ヘッド104を含むヘッドジンバルアセンブリ(head gimbal assembly:HGA)116を媒体108の所望の部分の上に位置付けることを可能とする。
【0008】
変換部104は、それぞれ磁気媒体108にデータを読み書きするように動作する磁気ライタや磁気応答リーダのような1つ以上の変換素子を含み得る。このようにして、作動アセンブリ102およびスピンドルモータ110の制御された動作が、記憶媒体表面上に規定された所定のデータトラック(図示せず)に沿った横方向、および媒体表面114に垂直的に測定されるような垂直方向の双方に変換ヘッドの位置を調整し、選択的に、データを書込み、読出し、および再書込みし得る。
【0009】
図2は、
図1に示されたデータ記憶装置の変換部100に用いることができる、例示的な磁気データリーダ120の断面ブロック図を示す。
図2に示される構成は必ずしも必要ではなく、またそれに限定されないが、磁気リーダ120は、空気軸受面(ABS)上の磁気シールド124の間に配置される磁気スタック122を有する。磁気スタック122は、磁気抵抗層、トンネル磁気抵抗層、スピンバルブ層、および、2つの強磁性自由層を有するとともに固定磁気基準構造を有さない「三層」センサ層のような、多くの異なるデータビット検知積層体として構成されるが、
図2に示される実施形態においては、磁気スタック122は、磁気自由層134に対して非磁気スペーサ層132とは反対の、ピニング層128とピンド層130とを含む固定基準構造によって特徴付けられる隣接接合(HMRB)スタックとして構成される。
【0010】
自由層134の磁化方向は、外部データビットに遭遇し、外部データビットが不活性状態と活性化状態との間で変化した場合にピンド層130の固定磁化に抵抗して測定されるように、測定可能な磁気抵抗効果を与えるように作用し得る。磁気スタック122は、Z方向に沿ってABSから測定されるような所定のストライプ高さ136に調整され得る。ストライプ高さ136および磁気スタック122の構造にかかわらず、特に低減されたフォームファクタの高面積密度データ記憶装置においては、ABS上の磁気スタック122の磁石サイズは大きすぎ、かつ感度が良すぎるために、隣接データトラック上のデータビットを区別することができない。
【0011】
図3は、さまざまな実施形態に従う例示的な磁気データリーダ140のABS部分のブロック図を示す。磁気データリーダ140は、非限定のさまざまなシールド構造を伴って構築され得るが、いくつかの実施形態においては、磁気リーダスタック142はサイドシールド144間に横方向に配置されるとともに、上部シールド146と下部シールド148との間に縦方向に配置される。磁気リーダスタック142は、任意のさまざまな長方形構造、正方形構造、曲線構造、および成形構造で構成され得るが、
図3においては、上部シールド146に接する低減された幅表面と比較して下部シールド148に接する増加された幅表面によって規定される台形として実質的に示される。そのような台形形状は、サイドシールド144とリーダスタック142との間に所定のギャップを生成するように、サイドシールド144の表面150に直面するリーダスタック142に平行またはそれとは異なった方向に配向され得るテーパ状の側壁を提供する。
【0012】
磁気リーダスタック142の両側に位置付けられたサイドシールド144は、個々に、固有のまたは共通の材料、積層数、および形状に調整されて、リーダスタック142における磁気非対称性を低減するとともに、浮遊磁場に対する感度を低減する。サイドシールドの一方または双方が、上部シールド146および下部シールド148に結合される高保磁力構造として構築される場合、高保磁力サイドシールド144が磁場の変化に非常に感度良く応答するので、磁気リーダスタック142は、可変な磁気バイアスを経験する。上部シールド146および下部シールド148から切り離される軟磁性材料への硬磁性材料の置換は、増加されたリーダスタック142を提供しながら浮遊磁場感度のいくらかを軽減するが、そのようなサイドシールドの磁気モーメントは、リーダスタック142における増加されたノイズに対応するクロストラック磁場に応答する非一貫性磁化を有し得る。
【0013】
このような感度および非一貫的な磁化挙動に照らして、上部シールド146は、反強磁性体(AFM)のようなピニング層152、強磁性層154、およびルテニウムなどの遷移金属のようなカップリング層の積層体として構成され、カップリング層156を介してサイドシールド144および上部シールド146とを結合しながら、上部シールド146の固有の磁気安定性を増加する。したがって、サイドシールド144が強磁性材料で構成され、カップリング層156が固定強磁性層154と固定されていないサイドシールド144との間に配置されると、サイドシールド144と上部シールド146との間に反強磁性結合が形成されて、それは合成反強磁性体158構造(SAFS)として特徴付けられる。
【0014】
サイドシールド144と磁気リーダスタックの双方が接するように連続的に延材するようなカップリング層156の構成は、簡便な処理、磁気リーダスタック142の一部にバイアスを掛けること、および個別のSAFSの形成を可能とすることに注意すべきである。これは、各個別のサイドシールド144に上部シールド146積層体が反強磁性的に結合するからである。サイドシールド144、カップリング層156、および強磁性層154についての形状、厚さ、異方性、および材料を調整する能力は、ストライプ高さ、三層積層構造、およびリーダスタック幅のような、磁気リーダスタック142の構造に応じたさまざまな結合オプションを提供する。
【0015】
図4は、さまざまな実施形態に従う磁気リーダスタック172の設計に応じて調整される例示的な磁気データリーダ170のABS部の概略を示す。
図4に示される実施形態においては、磁気リーダスタック172は、固定磁気基準層および長いストライプ高さを有する磁気抵抗(MR)積層体として構成され、ストライプ高さは、ABSにおけるリーダスタック172の幅の2倍よりも大きい、ABSからの長さとして特徴付けられる。そのようなリーダスタック172構造は、三層リーダスタックのシールドとは異なる上部シールド174およびサイドシールド176に対応し得る。三層リーダスタックは、固定磁化を有さず、後面バイアス磁石のような外部要素に依存して、デフォルト磁化に設定される。
【0016】
積層された上部シールド174によって示されるように、第1の強磁性層178および第2の強磁性層180は、第1のカップリング層182および第2のカップリング層184にそれぞれ接し、これらのカップリング層は、リーダスタック172の両側のSAFS186の形成に起因する反強磁性結合のために、上部シールド174およびサイドシールド176の増加された磁気剛性(magnetic stiffness)に応答して調整される。そのような調整は、異なる遷移金属のような類似あるいは非類似の材料、ならびに第1の強磁性層178および第2の強磁性層180の構造に対応する厚さの第1のカップリング層182および第2のカップリング層184を構築し得る。つまり、カップリング層182,184は、第1の強磁性層178および第2の強磁性層180の類似または非類似の材料と厚み188構造とを結合するように構築され、シールド174,176内の所定の磁気剛性、および上部シールド174とサイドシールド176との間の所定の反強磁性結合を提供する。
【0017】
そのような調整された構成は、MRリーダスタック172の固定された磁化によって、サイドシールド176の磁化を揃えることを促進し、それはサイドシールド176が、リーダスタック172の非固定部をABSに平行な方向に安定化することを可能とする。さまざまな実施形態は、第1の強磁性層178および第2の強磁性層180、第2のカップリング層、ならびにピンド層192を備える合成反強磁性体190を用いて、上部シールド174を調整する。合成反強磁性体190は、第1の強磁性層178の厚さ188の調整を通して、SAFS186とは異なった磁化強度を有するように調整され、それによって、上部シールド174が、結合されたサイドシールド176よりも磁気感度を有することを可能とする。
【0018】
強磁性層178,180間の非類似の厚さ188の構築は、第2のカップリング層184の配置、すなわち10nmおよび20nmのようなリーダスタック172からの所定距離194を補完してもよいし、独立であってもよい。そのため、第1の強磁性層178の厚さ188は、合成反強磁性体190の磁気強度、SAFS186の磁気強度、および、第2のカップリング層184からリーダスタック172までの距離194について調整することができ、それは、磁気劣化と磁気感度との間の所定の平衡による磁気安定性を提供する。
【0019】
さまざまな調整された層が上部シールド174の一部として示されるが、そのような構成は限定されない。なぜなら、下部シールド196は、1つ以上のサイドシールド176に結合される、または結合されない積層体として構築され得るからである。たとえば、下部シールド196は、サイドシールド176と、強磁性層とに接するカップリング層を有してもよく、強磁性層は、サイドシールド176に個別的に、もしくはサイドシールド176に反強磁性的に結合する上部シールド174との組合せで反強磁性結合の形成を通して合成反強磁性構造を形成する。いくつかの実施形態においては、一方のサイドシールド176が上部シールド174に結合され、他方のサイドシールド176は下部シールド196に結合され、反強磁性結合が、個別のサイドシールド176について、磁気剛性および安定性のような異なる磁気特性に調整されることを可能にする。
【0020】
さまざまな強磁性層およびカップリング層の材料、厚さ、および配置を調整することによって可能となるさまざまな調整機構により、隣接データトラックからの側面読出しおよび磁気ノイズが軽減されるので、より高速での高面積ビット密度データ記憶環境を正確に読み出す能力が増加する。
図5および
図6は、それぞれ、本実施に従って調整され、かつ動作する例示的な磁気データリーダの動作データをプロットしたものである。
【0021】
図5においては、磁気データリーダは、上部シールドに接する第1のルテニウムカップリング層と、リーダスタックから所定の距離に配置された第2のルテニウムカップリング層とで構成されている。実線200は、第2のカップリング層がリーダスタックからおよそ20nmの距離に配置された場合の、リーダスタックの中心線からの距離に関連した、リーダスタックからの正規化されたリードバック信号を示すグラフである。一方、破線202は、上部シールドに結合されていない永久磁石サイドシールドが用いられた場合の、リードバック信号のチャートである。
【0022】
図5における線200,202に示されるデータから、リーダスタックから20nmまでの距離へのルテニウムカップリング層の位置付けが、非結合永久磁石サイドシールドの使用と比較して、増加された磁気性能を提供することが理解され得る。そのような増加された磁気性能は、リーダスタックの中心線に関連したデータビット位置に対する最適化された信号強度によって説明され、MT10およびMT50として特徴付けられる。そのような磁気性能は、
図6によって示されるように、強磁性層厚みの調整によってさらに調整されてもよい。
【0023】
実線210および破線212は、カップリング層間に配置された層178のような強磁性層が調整されるにつれて、リードバック信号の傾きがどのように変化するかをそれぞれ示す。
図6に示されるように、実線210の性能は、およそ60nmの強磁性層に対応するが、劣化したPW50の値に影響されることなく増加される。対照的に、破線212によって表わされるようなおよそ10nmの厚みの強磁性層は、リーダスタックの中心にあるデータビットのより大きなリライアンスを示しており、それは、PW50値および高面積ビット密度環境における磁気リーダの精度を悪化させる。
【0024】
磁気データリーダの調整および構築は、さまざまな非制限プロセスで実行され得るが、
図7は、いくつかの実施に従って実行される例示的なデータリーダ製造ルーチン220を提供する。ステップ222において、軟磁性サイドシールド間に配置されたリーダスタックが与えられる。いくつかの実施形態においては、リーダスタックは下部シールド上に形成され得るが、
図3および
図4に示されるように、サイドシールドは、絶縁層によって下部シールドから磁気的におよび電気的に絶縁される。
【0025】
ステップ224においては、次に、サイドシールドおよびリーダスタックに接する連続薄膜のような第1のカップリング層の堆積が行なわれる。第1のカップリング層は、ルテニウムやタンタラムのような遷移金属で構築され、サイドシールドが上部シールドに反強磁性的に結合することを可能とする。第1のカップリング層の堆積は、ルーチン220をステップ226に進め、ステップ226においては、第1の強磁性層の少なくとも厚みについて設計され、その後その厚さで第1の強磁性層が形成される。
【0026】
判定228において、次に、上部シールドに含まれるべきカップリング層の数が評価される。上部シールド内において複数のカップリング層がどのように実現されるかを理解するために、
図3および
図4を参照することができる。1つより多くのカップリング層が配置されている場合は、ステップ230において、第1の強磁性層の上に、リーダスタックから所定の距離に、第2のカップリング層が形成される。次に、ステップ232において、第2のカップリング層上に第2の強磁性層が堆積され、上部シールドとサイドシールドとの間に二重合成反強磁性体が生成される。
【0027】
判定228において、複数のカップリング層が選択されたか否かにかかわらず、反強磁性層のようなピニング層がステップ234において堆積されて、上部シールドの磁化を固定し、これはサイドシールドの時間の安定化に対応する。ルーチン220を通して、増加された磁気安定性および磁化に対する抵抗を有するように調整されたデータリーダが生成され得る。しかしながら、さまざまな決定およびステップを省略し、変更し、追加することができるので、ルーチン220は必ずしも必要ではなく、またそれに限定されない。たとえば、サイドシールドの材料および形状が評価され、かつ非類似の構成に構築され得、それによって、リーダスタックの横側面上の異なった磁気バイアスを与えることができる。
【0028】
本開示に記載された磁気データリーダの構造および材料の特性は、トップシールドおよびサイドシールドの磁気安定性を最適化することができる調整されたシールドを可能とすることが理解され得る。上部シールドの一部とサイドシールドとを有する合成反強磁性構造を形成する能力は、最小の消磁によって、最適化された磁気安定性を可能とする。さらに、調整された強磁性層およびカップリング層を上部シールド内に位置付けることは、MT10、MT50およびPW50値のような磁気性能を低下させることなく磁気安定性をさらに最適化する、二重合成反強磁性構想を提供し得る。さらに、実施形態は磁気検出に向けられているが、主張される発明は、データ記憶装置の用途を含む、他の多くの用途に容易に利用することができることが理解されるであろう。
【0029】
本発明のさまざまな実施形態の多くの特徴および構成が、本発明のさまざまな実施形態の構造および機能の詳細とともに上述の説明に記載されていたとしても、この詳細な説明は例示的であるに過ぎず、詳細において、特に本発明の原理の範囲における部品の構造および配置の点における変更が、添付の特許請求の範囲が示している用語の広い一般的な意味によって示される全範囲に対してなされてもよいことが理解されるべきである。たとえば、特定の要素は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、特定の用途に応じて変化してもよい。
【符号の説明】
【0030】
100 データ変換部、102 作動アセンブリ、104 変換ヘッド、106 データビット、108 磁気記憶媒体、110 スピンドルモータ、114 スライダ部、120 磁気データリーダ、122 磁気スタック、124 磁気シールド、128,152 ピニング層、130 ピンド層、132 非磁気スペーサ層、134 磁気自由層、142 磁気リーダスタック、144 サイドシールド、146,174 上部シールド、148,196 下部シールド、150 表面、154,178,180 強磁性層、156,182,184 カップリング層、158,190 反強磁性体。