(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806758
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】圧縮機の流路
(51)【国際特許分類】
A47L 9/00 20060101AFI20151021BHJP
A47L 9/22 20060101ALI20151021BHJP
A47L 9/28 20060101ALN20151021BHJP
A47L 5/24 20060101ALN20151021BHJP
【FI】
A47L9/00 H
A47L9/00 A
A47L9/22
!A47L9/28 V
!A47L5/24
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-94999(P2014-94999)
(22)【出願日】2014年5月2日
(65)【公開番号】特開2014-217758(P2014-217758A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年6月20日
(31)【優先権主張番号】1308090.8
(32)【優先日】2013年5月3日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508032310
【氏名又は名称】ダイソン テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・スタンリー・ヒル
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・チャールトン・クロチーア
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
独国実用新案第202006012489(DE,U1)
【文献】
特開2010−201169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 5/00−7/08
A47L 9/00
A47L 9/22−9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、ハウジングと、前記圧縮機と前記ハウジングの間に配置された振動分離取り付け具とを備え、前記圧縮機は、インペラーと、前記インペラーの上流に配置された第1の入口と、前記インペラーの下流に配置された第1の出口と、前記第1の出口の下流に配置された第2の入口と、前記第2の入口の下流に配置された第2の出口とを備え、前記圧縮機の稼働中に、流体が前記第1の入口を通って前記圧縮機に入り、前記第1の出口を通って前記圧縮機を出、前記振動分離取り付け具は、前記圧縮機と前記ハウジングの間に、前記第1の出口を出る流体が前記第2の入口を通って前記圧縮機に再び入るようにする制限を形成する、製品。
【請求項2】
前記インペラーは遠心力による羽根車であり、流体が前記第1の入口を通って軸方向に圧縮機に入り、流体が前記第1の出口を通って径方向に圧縮機を出る、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記インペラーの出口と前記第1の出口の間に直線状の通路が確立される、請求項1又は請求項2に記載の製品。
【請求項4】
前記圧縮機は、ディフューザーと、前記ディフューザーを囲む第1の出口とを備える、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の製品。
【請求項5】
前記第1の出口は、前記圧縮機の周りに形成された環状開口を備える、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の製品。
【請求項6】
前記圧縮機は、前記インペラーを駆動するための電気モータを備え、前記第2の入口と前記第2の出口の間を流れる流体は、前記モータの1つ以上の部品を冷却する役割を果たす、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の製品。
【請求項7】
前記第2の入口と前記第2の出口の間を流れる流体は、前記モータの電気巻線又は電源スイッチを冷却する役割を果たす、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
前記振動分離取り付け具は前記圧縮機を囲み、前記ハウジングを前記モータの径方向の振動から分離する、請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の製品。
【請求項9】
前記振動分離取り付け具は、前記第1の出口を通って前記圧縮機を出る流体の全てが前記第2の入口を通って前記圧縮機に再び入るように前記圧縮機と前記ハウジングの間にシールを形成する、請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の製品。
【請求項10】
前記振動分離取り付け具は、変形して前記圧縮機からの振動を吸収する複数のリブ又はスタッドと、前記圧縮機と前記ハウジングの間に前記シールを形成するリップシールを備える、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
前記振動分離取り付け具は、径方向の振動と軸方向の振動を吸収し、前記振動分離取り付け具は、前記第1の入口と前記第1の出口の間の位置で前記圧縮機と前記ハウジングの間にシールを形成する、請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の製品。
【請求項12】
前記振動分離取り付け具は径方向の振動を吸収し、前記製品は軸方向の振動を吸収するための更なる取り付け具を備え、前記更なる取り付け具は、前記第1の入口と前記第1の出口の間の位置で前記圧縮機と前記ハウジングの間にシールを形成する、請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の製品。
【請求項13】
前記振動分離取り付け具又は前記更なる取り付け具は、前記第1の出口を出る流体を前記第2の入口に向けた方向へ転換させる、請求項11又は請求項12に記載の製品。
【請求項14】
圧縮機と、ハウジングと、前記圧縮機と前記ハウジングの間に配置された1つ以上の振動分離取り付け具とを備え、前記圧縮機は、第1の入口と、前記第1の入口の下流に配置された第1の出口と、前記第1の出口の下流に配置された第2の入口と、前記第2の入口の下流に配置された第2の出口とを備え、前記振動分離取り付け具は、前記圧縮機と前記ハウジングの間に第1のシールと第2のシールを形成し、前記第1のシールは前記第1の入口と前記第1の出口の間に配置され、前記第2のシールは前記第2の入口と前記第2の出口の間に配置され、前記圧縮機、前記ハウジング、前記第1のシール及び前記第2のシールは、前記第1の出口と前記第2の入口に対して開口し前記第1の入口と前記第2の出口に対して閉じられるチャンバを区分し、その結果、稼働中に、流体が前記第1の入口を通って前記圧縮機に入り、前記圧縮機を出て前記第1の出口を通って封止された前記チャンバに入り、封止された前記チャンバを出て前記第2の入口を通って前記圧縮機に再び入り、前記第2の出口を通って前記圧縮機を出る、製品。
【請求項15】
前記製品は電気掃除機である、請求項1乃至請求項14の何れか一項に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機(コンプレッサー)、及び圧縮機を通って流れる流体がとる経路に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機のケーシングは、インペラーを出る流体が圧縮機の内部を通って戻り、圧縮機の部品を冷却するように構成され得る。しかし、これは圧縮機の全体のサイズを大きくする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
圧縮機において、より小型の配置が達成され得る流路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は製品を提供し、製品は圧縮機と、ハウジングと、圧縮機とハウジングの間に配置された振動分離取り付け具とを含み、圧縮機は、インペラーと、インペラーの上流に配置された第1の入口と、インペラーの下流に配置された第1の出口と、第1の出口の下流に配置された第2の入口と、第2の入口の下流に配置された第2の出口とを含み、稼働中に、流体が第1の入口を通って圧縮機に入り、第1の出口を通って圧縮機を出、振動分離取り付け具は、圧縮機とハウジングの間に、第1の出口を出る流体が第2の入口を通って圧縮機に再び入るようにする制限を形成する。
【0005】
圧縮機のケーシングを使用せずに、本発明は代わりにハウジングと取り付け具を使用し流体を圧縮機の内部に戻す。その結果、より小型の配置が達成され得る。
【0006】
インペラーは、そのサイズに関連して比較的高い質量流量と効率を達成可能な、遠心力による羽根車であり得る。流体が第1の入口を通って軸方向に圧縮機に入り、流体が第1の出口を通って径方向に圧縮機を出る。流体が第1の出口を径方向に出ることを確実にすることにより、圧縮機はインペラーを出る流体を転換する必要がない。その結果、比較的小型の圧縮機が達成され得る。尚、圧縮機内の流量損失は減少され得る。
【0007】
インペラーの出口と第1の出口の間に直線状の通路が確立され得る。これは流体がインペラーと第1の出口の間で転換する必要があるならば起こる可能性のある損失を減らすという利点を有する。
【0008】
圧縮機は、ディフューザーと、ディフューザーを囲み得る第1の出口とを含み得る。実際、第1の出口はディフューザーの出口となり得る。ディフューザーを囲むことにより、出口の比較的広い表面領域が、出口の高さを比較的低く維持しながら達成され得る。尚、出口がディフューザーを囲むため、第1の出口を通って圧縮機を出る流体は、流体が圧縮機とハウジングの間の空間に拡張するにつれ更に拡散する。
【0009】
第1の出口は圧縮機の周りに形成された環状開口を含み得る。これは出口の高さが、出口の比較的広い表面領域を維持しながら、比較的低く保たれ得るという利点がある。その結果、比較的小型の圧縮機が達成され得る。尚、出口が環状のため、出口を通って圧縮機を出る流体は、流体が圧縮機とハウジングの間の空間に拡張するにつれて拡散する。
【0010】
圧縮機はインペラーを駆動するための電気モータを含み得る。圧縮機内の過度の温度はモータの部品を故障させる可能性がある。従って、第2の入口と第2の出口の間を流れる流体はモータの1つ以上の部品を冷却する役割を果たし得る。特に、流体はモータの電気巻線又は電源スイッチを冷却する役割を果たし得る。その結果、巻線及びスイッチはより大きな電流を運ぶことが出来、よってモータはより高い電力で稼働できる。
【0011】
取り付け具は圧縮機を囲み、ハウジングを圧縮機の径方向の振動から分離し得る。
【0012】
取り付け具は、第1の出口を通って圧縮機を出る流体の全てが第2の入口を通って圧縮機に再び入るように圧縮機とハウジングの間にシールを形成し得る。これは圧縮機に収容された部品の向上した冷却を提供する。
【0013】
取り付け具は、変形して圧縮機の振動からハウジングを分離する複数のリブ又はスタッドと、圧縮機とハウジングの間にシールを形成するリップシールを含んでも良い。リブ又はスタッドを設けることにより、取り付け具は、ハウジング又は圧縮機との接触が比較的狭い表面領域で達成され得るため、比較的良好な分離を達成できる。
【0014】
取り付け具は、圧縮機の径方向及び軸方向の振動からハウジングを分離し得る。更に、取り付け具は、第1の入口と第1の出口の間の位置で圧縮機とハウジングの間にシールを形成し得る。これは単一の取り付け具が径方向及び軸方向の振動を吸収し、且つ第1の入口と第1の出口の間のシール、及び第2の入口と第2の出口の間の制限を形成するのに使用され得るという利点がある。その結果、製品の組み立てが簡単になり得る。
【0015】
代替として、取り付け具は径方向の振動を吸収し得、製品は軸方向の振動を吸収するための更なる取り付け具を備え得る。更なる取り付け具は第1の入口と第1の出口の間の位置で圧縮機とハウジングの間にシールを形成する。これは2つの取り付け具が、単一の取り付け具では達成が困難と思われる特徴を有して成形され得るという利点がある。尚、2つの取り付け具に対し異なる物理的特性を有する材料が使用され得る。例えば、取り付け具が分離することが意図される特定の振動に適した弾性を各取り付け具が有するよう、2つの取り付け具は異なるショア硬度を有する材料から形成されても良い。
【0016】
取り付け具又は更なる取り付け具は第1の出口を出る流体を第2の入口に向けた方向へ転換させ得る。特に、取り付け具又は更なる取り付け具は流体を転換させる湾曲した表面を含み得る。その結果、流体は第1の出口と第2の入口の間でより滑らかな経路を流れ、よって流量損失が減少される。
【0017】
本発明は更に製品を提供し、その製品は圧縮機と、ハウジングと、圧縮機とハウジングの間に配置された1つ以上の振動分離取り付け具とを含み、圧縮機は、第1の入口と、第1の入口の下流に配置された第1の出口と、第1の出口の下流に配置された第2の入口と、第2の入口の下流に配置された第2の出口とを含み、振動分離取り付け具は圧縮機とハウジングの間に第1のシールと第2のシールを形成し、第1のシールは第1の入口と第1の出口の間に配置され、第2のシールは第2の入口と第2の出口の間に配置され、圧縮機、ハウジング、第1のシール及び第2のシールは第1の出口と第2の入口に対して開口し第1の入口と第2の出口に対して閉じられるチャンバを区分し、その結果、稼働中に、流体が第1の入口を通って圧縮機に入り、圧縮機を出て第1の出口を通って封止されたチャンバに入り、封止されたチャンバを出て第2の入口を通って圧縮機に再び入り、第2の出口を通って圧縮機を出る。
【0018】
本発明をより容易に理解可能とするため、本発明の実施形態が、例示として、添付の図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】圧縮機及び製品の振動分離取り付け具の分解図である。
【
図5】圧縮機、振動分離取り付け具及び製品のハウジングの一部の断面図である。
【
図6】
図5の断面図と同様であり、製品を流れる流体がとる経路を強調した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1の製品1は、ハウジング2と、圧縮機(コンプレッサー)3と、軸方向取り付け具4と径方向取り付け具5を備える。取り付け具4、5のそれぞれはハウジング2と圧縮機3の間に配置され、ハウジング2を圧縮機3により生じる振動から分離する役割を果たす。この特定の例では、製品1は手持ち式の電気掃除機である。
【0021】
図2及び
図3を参照し、圧縮機3は、電気モータ20と、インペラー21と、フレーム22とシュラウド(覆い)23とを備える。
【0022】
モータ20は、回転子アセンブリ30と、固定子アセンブリ31と、回路アセンブリ32とを備える。回転子アセンブリ30はシャフト34を備え、シャフトに回転子コア35と軸受アセンブリ36が取り付けられる。固定子アセンブリ31は1対の固定子コア37を備え、固定子コアの周りに電気巻線38が巻かれる、巻線38は端子コネクタを介して回路アセンブリ32に連結され、巻線はまた回路アセンブリ32を固定子アセンブリ31に固定する役割を果たす。回転子アセンブリ30と固定子アセンブリ31はそれぞれフレーム22に固定され、回転子アセンブリ30が軸受アセンブリ36によりフレーム22に固定された状態となる。
【0023】
インペラー21は遠心力を利用した羽根車であり、モータ20のシャフト34に固定される。
【0024】
シュラウド23はインペラー21及びフレーム22の一端を覆う。シュラウド23及びフレーム22はインペラー21を越えて径方向に延伸し、インペラー21を囲むディフューザー24を画定する。フレーム22は、シュラウド23の穴26を通って延伸する複数のディフューザーの羽根25を含む。環状の接着剤27がシュラウド23を羽根25に固定し、穴26を封止する。
【0025】
圧縮機3はインペラー21の上流に配置された第1の入口40と、インペラー21の下流に配置された第1の出口41と、第1の出口41の下流に配置された第2の入口42と、第2の入口42の下流に配置された第2の出口43とを備える。
【0026】
第1の入口40はシュラウド23の入り口に対応し、シュラウド23の中央に配置された円形開口を備える。第1の出口41はフレーム22とシュラウド23の周辺の間に存在する軸方向の隙間により画定される環状開口を備える。よって第1の出口41はディフューザー24を囲む。実際、第1の出口41はディフューザー24の出口と見なされても良い。第2の入口42は第1の出口41の下に配置され、フレーム22の周りに形成された複数の開口を備える。第2の出口43も同様にフレーム22の端部と回路センブリ32の間に画定される複数の開口を備える。
【0027】
軸方向取り付け具4は、天然又は合成ゴム(例えばエチレンプロピレンジエンゴム)のような弾性材料から形成される。軸方向取り付け具4は形状がシュラウド23と同様であり、円盤形状部分50と円盤形状部分50から上方に延伸する円筒形部分51を備える。円筒形部分51は円筒形部分51の外側の周りに延伸するリップシール52を含む。円盤形状部分50は下方に突出するリム53を含む。更に、リム53の自由端は僅かに外方に広がり湾曲したリップ54を画定する。以下に説明するように、このリップ54は第1の出口41から出る流体を第2の入口42に向けさせることを支援する。軸方向取り付け具4は圧縮機3のシュラウド23に取り付けられる。より詳細には、円筒形部分51はシュラウドの入口40を封止し、リム53は延伸し、シュラウド23の周辺と締まり嵌めを形成する。
【0028】
径方向取り付け具5も同様に弾性材料から形成され、スリーブ60と、リップシール61と、複数のリブ62と、複数の係止スタブ63と、複数の端部スタブ64とを備える。リップシール61はスリーブ60の一端に配置されその周りに延伸する。リブ62はスリーブ60の外側の周りに間隔を有して配置され、スリーブ60の長さに沿って軸方向に延伸する。係止スタブ63は矩形の形状であり、スリーブ60の内部の周りに間隔を有して配置される。端部スタブ64はスリーブ60の反対側の端部を越えて延伸する。尚、端部スタブ64はスリーブ60から径方向内側に突出する。
【0029】
径方向取り付け具5は圧縮機3のフレーム22に取り付けられる。スリーブ60は延伸し、フレーム22と締まり嵌めを形成する。係止スタブ63はフレーム22の外側の周りに形成された対応する凹部28と係合し、一方端部スタブ64はフレーム22の自由端と係合する。係止スタブ63は圧縮機3と径方向取り付け具5を整列させる役割を果たす。また、係止スタブ63は圧縮機3が径方向取り付け具5に対して回転することを防止する役割をし、一方係止スタブ63及び端部スタブ64は圧縮機3が径方向取り付け具5に対して軸方向に移動することを防止する役割を果たす。その結果、圧縮機3及び取り付け具4、5をハウジング2に挿入すると、圧縮機3は取り付け具4、5に対して移動しない。
【0030】
ハウジング2は前方部10と後方部11を備える。前方部10は、全体に円筒形の凹部14を画定する端部壁12及び側壁13を備え、凹部の中に圧縮機3及び取り付け具4、5が配置される。軸方向取り付け具4は端部壁12に当接し、リップシール52は端部壁12を封止する。径方向取り付け具5は側壁13に当接する。更に、リップシール61は側壁13を封止し、リブ62は側壁13により僅かに押しつぶされる。後方部11は前方部10に取り付けられ、凹部14を封止する。後方部11は、径方向取り付け具5の端部スタブ64に当接する多数のフランジ(図示せず)を備える。よって圧縮機3と取り付け具4、5は前方部10の端部壁12及び後方部11のフランジにより軸方向に制限され、前方部10の側壁13により径方向に制限される。前方部10の端部壁12は入口開口15を含み、入口開口を通して流体が圧縮機3に入り、後方部11は複数の排出開口16を備え、排出開口を通して圧縮機3からの流体が排出される。
【0031】
軸方向取り付け具4のリップシール52はハウジング2と圧縮機3の間のシールを第1の入口40と第1の出口41の間の位置で形成し、一方径方向取り付け具5のリップシール61はハウジング2と圧縮機3の間のシールを第2の入口42と第2の出口43の間の位置で形成する。2つのシール52、61、ハウジング2及び圧縮機3は共同で、第1の出口41及び第2の入口42に対して開かれ、第1の入口40及び第2の出口43に対して閉じられたチャンバ44を区切る。
【0032】
作動の間、流体は第1の入口40を経由して圧縮機3に入る。流体はインペラー21により遠心力で外側に移動し、ディフューザー24を通って流れ第1の出口41を経由して圧縮機3を出る。圧縮機3を出る際、流体はシール52、61により区切られたチャンバ44に入る。チャンバ44は第1の出口41及び第2の入口42にのみ開かれているため、流体は第2の入口42を介して圧縮機3に再び入る。流体は圧縮機3の内部を通過し、第2の出口43を経由して圧縮機3を出る。
【0033】
第2の入口42は、モータ20の様々な部品、例えば軸受アセンブリ36、回転子コア35、固定子アセンブリ31及び回路アセンブリ32等の上流に配置され、第2の出口43はそれらの部品の下流に配置される。結果として、流体は第2の入口42と第2の出口43の間を流れるため、流体はこれらの部品を冷却する役割を果たす。
【0034】
従来の圧縮機は、インペラーを出る流体が圧縮機の内部を通って戻り、モータの部品を冷却するよう構成され得る。しかし、流体は通常、インペラーを出る流体を方向転換させるための1つ以上の屈曲部を含む圧縮機の外側ケーシングにより戻る。その結果、圧縮機の全体のサイズは増加する。圧縮機のケーシングを使用する代わりに、ハウジング2及び取り付け具4、5が流体を圧縮機3の内部に戻すよう使用される。その結果、より小型の配置が達成され得る。
【0035】
第1の入口40と第1の出口41の配置により、流体は圧縮機3に軸方向(即ちインペラー21の回転軸に平行な方向)に入り、径方向(即ち、回転軸に垂直な方向)に出る。更に、直線状の経路がインペラー21の出口と第1の出口41の間に確立される。よってインペラー21を出る流体は第1の出口41を経由して出る前に圧縮機3内で軸方向に方向転換する必要がない。その結果、より小型の配置が達成され得る。尚、圧縮機3内の流動損失は減少され得る。
【0036】
第1の出口41はディフューザー24の出口を囲む又は形成する環状開口を備える。これは第1の出口41の高さが、出口41の比較的広い表面領域を維持しながら比較的低く保たれ得るという利点がある。結果として、比較的小型の圧縮機3が、第1の出口41が制限を形成又は流体の流れを妨げることなく達成され得る。尚、第1の出口41が環状のため、出口41を経由して圧縮機3を出る流体は、流体がハウジング2と圧縮機3の間でチャンバ44に拡張するにつれ更に拡散する。場合によっては、ディフューザー24が省かれても良く、第1の出口41がインペラー21の出口を形成しても良い。これは流動損失の増加を犠牲にしてより小型の配置をもたらす可能性がある。
【0037】
軸方向取り付け具4は圧縮機3の第1の出口41に配置された湾曲したリップ54を含む。湾曲したリップ54は第1の出口41を出る流体を第2の入口42に向かう方向へ転換させる役割を果たす。リップ54が湾曲しているため、流体は第1の出口41と第2の入口42の間のより円滑な経路を通り、よって流動損失を減らす。
【0038】
固定子アセンブリ31の巻線38と回路アセンブリ32の電源スイッチ39は、巻線38を通る電流の流れを制御するのに使用されるが、通常巻線により運ばれる電流の大きさのため高いレベルの熱を発生する。第2の入口42と第2の出口43は、圧縮機3の内部を通って流れる流体が巻線38と電源スイッチ39を冷却する役目を果たすよう配置される。これは巻線38と電源スイッチ39がより大きな電流を運ぶことができ、よってモータ20がより高い電力で稼働することができるという利点を有する。
【0039】
上述の実施形態では、径方向取り付け具4はハウジング2と圧縮機3の間にシールを形成し、その結果、第1の出口41を経由して圧縮機3を出る全ての流体が、第2の入口42を経由して圧縮機3に再び入ることになる。これは使用できる流体の全てが圧縮機3の内部を通って戻るため、冷却を最大化できるという利点を有する。しかし、必要な冷却を達成するため、第1の出口41を出る流体の全てを圧縮機3の内部を通して戻す必要はないかもしれない。更に、向上した性能(例えば、質量流量又は効率)が圧縮機3の内部を通る流体のほんの一部を戻すことにより達成され得る。従って、ハウジング2と圧縮機3の間のシールを形成するよりも、径方向取り付け具4は代わりに部分的なシールを形成し得る。部分的なシールは、圧縮機3のほんの一部の周りのハウジング2に接触してシールするリップ又はリムの形状をとり得る。又は、部分的なシールはハウジング2へ向けて径方向に延伸するが、必ずしもハウジング2に接触するわけではないリム又はフランジの形をとり得る。従って、より一般的な意味で、径方向取り付け具4は、第1の出口41を出る流体が第2の入口42を経由して圧縮機3に再び入るようにするハウジング2と圧縮機3の間の制限(シール又は部分的なシール)を形成すると言われても良い。部分的なシールがハウジング2と圧縮機3の間に形成される場合、第1の出口41を出る流体の一部は第2の入口42を経由して圧縮機3に再び入り、流体の一部が第2の入口42を迂回する。例えば、
図5及び
図6に示された実施形態では、第2の入口42を迂回する流体はハウジング2と圧縮機3の間を軸方向に流れ、排気開口16を経由して製品1を出る。この迂回流体は方向転換又はモータ20の部品と衝突する必要がないため、向上した性能が達成される。
【0040】
上述の実施形態では、製品1は、ハウジング2を圧縮機3の軸方向及び径方向の振動から分離するための2つの別個の取り付け具4、5を備える。これは2つの取り付け具4、5が、単一の取り付け具では達成困難な特徴を有して鋳造又は形成されるという利点を有する。尚、必要な場合、異なる物理的特性を有する材料が2つの取り付け具4、5に使用されても良い。例えば、2つの取り付け具4、5は、取り付け具4、5が分離されることを意図した特定の振動により良く適した弾性を取り付け具4、5のそれぞれが有するよう、異なるショア硬度を有する材料から形成されても良い。上述の利点に拘わらず、単一の取り付け具が代わりにハウジング2を軸方向及び径方向の両方の振動から分離するのに使用されても良い。実際、単一の取り付け具は製品1の組み立てを簡単にする可能性が高い。
【0041】
径方向取り付け具5はスリーブ60の長さに沿って軸方向に延伸するリブ62を備える。ことによると、軸方向に延伸するよりむしろ、リブ62はスリーブ60の周囲に延伸しても良い。これは、リブがハウジング2と圧縮機3の間に必要なシールを形成するため、別個のリップシール61の必要性を避けるであろう。しかし、この配置の欠点はスリーブ60の周囲がスリーブ60の長さより大きいことである。その結果、周辺のリブはより広い表面領域に亘りハウジング2と接触しやすくなり、よって圧縮機3からハウジング2へ一層多くの振動を伝達する。軸方向のリブ62は、圧縮機3と取り付け具4、5を軸方向に凹部14に挿入すると、リブ62が径方向に押しつぶされて、リブ62の径方向の弾性コンプライアンスが比較的良好に制御されるという利点を有する。対照的に、リブ62がスリーブ60の周囲に延伸するならば、リブは、圧縮機3と取り付け具4、5が凹部14内に挿入されるときに、径方向に押しつぶされるよりむしろ軸方向に引っ張られる可能性が高くなるであろう。これはリブの弾性コンプライアンス及び径方向の振動を吸収及び分離するリブの有効性に悪影響を及ぼす可能性がある。リブ62の代替として、径方向取り付け具5はスリーブ60の外側周辺に配置されたテーパ状スタッド(即ち、円錐形スタッド)を備えても良い。テーパ状スタッドを使用することにより、圧縮機3をハウジング2内により少ない接触点で取り付けられる可能性があり、よってより良い分離をもたらす可能性がある。しかし、この配置に関する可能性のある問題が、圧縮機3及び取り付け具4、5を凹部14に軸方向に挿入する際に再び起こる。例えば、スタッドは、挿入の間、径方向に押しつぶされるよりむしろ軸方向に引っ張られる可能性が高く、よってスタッドの径方向の弾性コンプライアンスについての制御が比較的不良となり得る。この問題はハウジング2の第1の部分10を、接合されて圧縮機3及び取り付け具4、5を包囲する多数の部分(例えば、2つの半円筒形の部分)に分けることにより対処され得る。
【0042】
径方向取り付け具5のリップシール61はハウジング2と圧縮機3の間のシールを形成することのみを意図する。リップシール61は圧縮機3の径方向の振動を吸収することを意図していない。結果として、リップシール61は、シールが圧縮機3の振動が伝達しにくい経路を提供するよう構成されている。特に、リップシール61の径方向の弾性コンプライアンスは、使用される場合、軸方向のリブ62又はテーパ状スタッドの弾性コンプライアンスより大きい。その結果、圧縮機3の径方向の振動はリップシール62よりもむしろリブ62又はスタッドにより対抗される。結果として、リップシール61が比較的広い領域に亘りハウジング2と接触するという事実にも拘わらず、ハウジング2は圧縮機3の振動から継続して良好に分離される。
【0043】
径方向取り付け具5はハウジング2を圧縮機3の径方向の振動から分離し、ハウジング2と圧縮機3の間に環状のシールを形成する役割を果たす。上述の実施形態では、径方向取り付け具5により生成されたシールは、圧縮機3の第1の出口41を出る流体が第2の入口42を経由して圧縮機3の内部を通って戻ることを確実にする。しかし、径方向取り付け具5は、特に流体が圧縮機を径方向に出る場合、ハウジング内に他のタイプの圧縮機を取り付けるのに使用されても良い。例えば、
図5に示された実施形態を考慮する場合、圧縮機3の第2の入口42は省かれても(即ち、閉じられても)良く、ハウジング2の排気開口16はおよそ参照番号13で示された位置に配置されても良い。径方向取り付け具5により生成されたシールは、圧縮機3を出る流体が排出開口16を経由してハウジング2から放出されることを確実にし、即ち径方向取り付け具5のシール61により区分されたチャンバ44は第1の出口41と排気開口16のみに開かれる。この代替の実施形態及び上述の実施形態の両方において、圧縮機3は軸方向の入口40と径方向の出口41を備える。軸方向の入口40は圧縮機3の一つの端部に配置され、径方向取り付け具5は径方向の出口41と圧縮機3の反対側の端部の間の位置で環状のシールを形成する。
【符号の説明】
【0044】
1 製品
2 ハウジング
3 圧縮機
4 軸方向取り付け具
5 径方向取り付け具
20 電気モータ
21 インペラー
22 フレーム
23 シュラウド