特許第5806961号(P5806961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5806961-電子写真機器用導電性部材 図000018
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5806961
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月10日
(54)【発明の名称】電子写真機器用導電性部材
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20151021BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20151021BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20151021BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20151021BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20151021BHJP
【FI】
   G03G15/02 101
   G03G15/16 103
   G03G15/00 551
   G03G15/08 235
   F16C13/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-66783(P2012-66783)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-200324(P2013-200324A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智志
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−220317(JP,A)
【文献】 特開2013−61617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
G03G 15/00
G03G 15/08
G03G 15/16
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状またはミラブルシリコーンゴムと、架橋剤と、電子導電剤と、イオン液体と、を含むシリコーンゴム組成物の架橋体から形成されたゴム弾性体を有し、前記イオン液体が分子構造中にアルコキシシリル基を有するものであることを特徴とする電子写真機器用導電性部材。
【請求項2】
前記シリコーンゴム組成物は、前記液状またはミラブルシリコーンゴムおよび架橋剤の総量100質量部に対して、前記イオン液体を0.01〜5質量部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用導電性部材。
【請求項3】
前記導電性部材が転写ロールであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用導電性部材。
【請求項4】
前記導電性部材が帯電ロールであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用導電性部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用導電性部材に関し、さらに詳しくは、ゴム弾性体の材料としてシリコーンゴム組成物を用いた電子写真機器用導電性部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が広く使用されるようになってきている。電子写真機器の内部には、通常、感光ドラムが組み込まれており、その周囲には、帯電ロール、現像ロール、転写ロールなどのロール状の導電性部材や、転写ベルトなどのベルト状の導電性部材が配設されている。
【0003】
帯電ロール、現像ロール、転写ロールなどのロール状の導電性部材は、導電性軸体の外周にゴム弾性体よりなるゴム弾性層を有する構成からなる。転写ベルトなどのベルト状の導電性部材は、ゴム弾性体よりなるゴム弾性層を有する構成からなる。ゴム弾性体の材料としては、シリコーンゴム組成物が用いられることがある。
【0004】
例えば特許文献1には、軸体の外周面に沿って形成された半導電性弾性層の材料として、カーボンブラックを含有する液状シリコーンゴム組成物を用いることが記載されている。また、特許文献2には、帯電部材の導電性支持体に固定された導電性弾性体層の材料として、カーボンブラックを含有する液状シリコーンゴム組成物を用いることが記載されている。なお、特許文献3には、シリコーンゴム組成物を用いるものではないが、コア部材の周囲に設けた導電性ゴム部材のゴム状弾性体にイオン液体を含有させる点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4200625号
【特許文献2】特開平09−244348号公報
【特許文献3】特許第4193193号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2の導電性部材では、導電剤として電子導電系のカーボンブラックを用いているので、カーボンブラックの分散度によって導電性部材の抵抗均一性が左右され、良好な抵抗均一性が得られにくい。また、カーボンブラックを分散させるポリマーが絶縁性のシリコーンゴムなので、カーボンブラックとの組合わせでは分子レベルの導電経路が形成されないため、良好な電気的応答性が得られにくい。特許文献3の導電性部材では、導電性ゴム部材の導電剤としてイオン液体を用いているため、イオン液体のブリード、ブルームのおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ブリード・ブルームが生じることなく、抵抗均一性と電気的応答性に優れる電子写真機器用導電性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子写真機器用導電性部材は、液状またはミラブルシリコーンゴムと、架橋剤と、電子導電剤と、イオン液体と、を含むシリコーンゴム組成物の架橋体から形成されたゴム弾性体を有し、前記イオン液体が分子構造中にアルコキシシリル基を有するものであることを要旨とするものである。
【0009】
この場合、前記シリコーンゴム組成物は、前記液状またはミラブルシリコーンゴムおよび架橋剤の総量100質量部に対して、前記イオン液体を0.01〜5質量部の範囲内で含有することが好ましい。
【0010】
本発明に係る電子写真機器用導電性部材は、転写ロールとして好適である。
【0011】
また、本発明に係る電子写真機器用導電性部材は、帯電ロールとして好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電子写真機器用導電性部材によれば、ゴム弾性体を形成するシリコーンゴム組成物の導電剤として電子導電剤とイオン液体を併用するので、電子導電剤の分散度に起因する抵抗バラツキが緩和され、抵抗均一性が向上する。また、電子導電剤とイオン液体を併用することで、分子レベルの導電経路が形成されるため、電気的応答性も向上する。そして、用いるイオン液体が分子構造中にアルコキシシリル基を有し、シリコーンゴムとの相溶性に優れるため、イオン液体のブリード、ブルームを抑えることができる。また、シリコーンゴムとの相溶性に優れることから、他のイオン液体と比べて抵抗バラツキがより小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る導電性ロールの周方向断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る導電性ロールの周方向断面図である。
図3】電荷減衰率の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る電子写真機器用導電性部材の一例として示される導電性ロールの一実施形態を模式的に示した周方向断面図である。図1に示すように、導電性ロール10は、導電性の軸体12の外周に導電性のゴム弾性体よりなるゴム弾性層14が形成されたもので構成されている。導電性ロール10は、電子写真機器に組み込まれる転写ロール、帯電ロール、現像ロールなどの導電性ロールに用いることができる。
【0016】
導電性の軸体12は、特に限定されるものではないが、金属製の中実体からなる芯金や金属製の円筒体などが好適に用いられる。軸体12の材料としては、ステンレス、アルミニウム、鉄の表面にめっきが施されたものなどが挙げられる。
【0017】
ゴム弾性層14は、シリコーンゴム組成物の架橋体から形成される。シリコーンゴム組成物は、液状またはミラブルシリコーンゴムと、架橋剤と、電子導電剤と、特定のイオン液体と、を含むものからなる。
【0018】
シリコーンゴムは、オルガノポリシロキサンとして通常広く知られているものを用いることができる。シリコーンゴムは、液状ゴムであっても良いし、ミラブルゴムであっても良い。寸法精度等の観点からいえば、液状ゴムであることが好ましい。
【0019】
オルガノポリシロキサンは、有機基を有する。有機基は、1価の置換または非置換の炭化水素基である。非置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基などのアラルキル基などが挙げられる。置換の炭化水素基としては、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などが挙げられる。オルガノポリシロキサンとしては、一般的には、有機基としてメチル基を有するものが、合成のしやすさ等から多用される。オルガノポリシロキサンは、直鎖状のものが好ましいが、分岐状もしくは環状のものであっても良い。
【0020】
オルガノポリシロキサンは、その架橋機構(硬化機構)に応じて、所定の反応性基(官能基)を有する。反応性基としては、アルケニル基(ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基など)などが挙げられる。アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、有機過酸化物を架橋剤とする過酸化物架橋反応や、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)を架橋剤とする付加反応により架橋される。付加反応には、ヒドロシリル化触媒を組み合わせて用いることができる。
【0021】
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有することが好ましい。また、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有することが好ましい。また、シラノール基を有するオルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個のシラノール基を有することが好ましい。
【0022】
有機過酸化物としては、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルペルオキシド、クミル−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシドなどが挙げられる。これらのうちでは、特に低い圧縮永久歪を与えることから、ジクミルペルオキシド、クミル−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシドが好ましい。
【0023】
有機過酸化物の添加量は、特に限定されるものではないが、通常、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲とされる。
【0024】
ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)として、具体的には、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とから成る共重合体などが挙げられる。
【0025】
ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンの配合量は、特に限定されるものではないが、通常、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜40質量部の範囲とされる。
【0026】
ヒドロシリル化触媒としては、白金系触媒が挙げられる。白金系触媒としては、微粒子状白金、白金黒、白金担持活性炭、白金担持シリカ、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体などが挙げられる。
【0027】
ヒドロシリル化触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、白金系金属の金属量に換算して、通常、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン100質量部に対して1ppm〜1質量部の範囲とされる。
【0028】
電子導電剤としては、炭素系電子導電剤を好適に用いることができる。炭素系電子導電剤としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等を例示することができる。これらのうち、好ましくは、シリコーンゴム組成物への分散性に優れ、低抵抗化を図りやすい、コスト等の観点から、カーボンブラックを好適に用いることができる。
【0029】
電子導電剤の含有量は、シリコーンゴムおよび架橋剤の総量100質量部に対して1〜20質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは3〜10質量部の範囲内である。
【0030】
特定のイオン液体は、アルコキシシリル基を有するものである。アルコキシシリル基を有するため、シリコーンゴムとの相溶性に優れる。アルコキシシリル基は、イオン液体のカチオン構造中に含まれていても良いし、イオン液体のアニオン構造中に含まれていても良い。より好ましくは、カチオン構造中にアルコキシシリル基を有するイオン液体である。
【0031】
アルコキシシリル基を有するイオン液体としては、下記の式(1)で示されるカチオン(陽イオン)を有するものを挙げることができる。
【化1】
ただし、
:環状または直鎖の有機基
:少なくとも(CHを含む(ただし、nは整数)
:アルキル基
【0032】
式(1)中、R−Nは、アンモニウム化合物であればよい。Rが環状の有機基の場合、R−Nは、ピロール、ピロリジン、イミダゾール等の5員環、ピリジン、ピリミジン等の6員環、インドール、キノリン、イソキノリン、プリン等のピリミジン環とイミダゾール環との縮合環等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。また、これらの環構造中には、窒素以外に、酸素、硫黄等を含んでいてもよい。
【0033】
式(1)中、R−Nは、環構造ではなく、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基(不飽和結合も含む)であってもよい。具体的には、下記の式(2)で表わされる第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【化2】
式(2)において、Rは炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基(例えば、−C17)、R〜Rは炭素数1〜4のアルキル基である。
【0034】
式(1)中、Rは、少なくともメチレン基(CHを含むものである。メチレン基の数は、1〜18の範囲が好ましい。またRは、メチレン基以外に、ウレタン基、エステル基、アミド基、アミノ基、チオエーテル基、水酸基、芳香環等の官能基を含んでいてもよい。
【0035】
また、式(1)中、Rは、アルキル基である。アルキル基は直鎖のアルキル基であっても良いし、分岐のアルキル基であっても良い。アルキル基の炭素数としては、1〜4の範囲内であることが好ましい。
【0036】
アルコキシシリル基を有するカチオンの対イオンとしてのアニオンは、特に限定されるものではない。アニオンとしては、AlCl、AlCl、NO、BF、PF、CHCOO、CFCOO、CFSO、(CFSO、AsF、SbF、F(HF)n、CFCFCFCFSO、(CFCFSO、CFCFCFCOOなどの他、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CFSO〕(TFSI)が挙げられる。
【0037】
アルコキシシリル基を有するイオン液体のより具体的な構造を示した例としては、下記の式(3)〜(10)で示されるものが挙げられる。
【0038】
特定のイオン液体の含有量は、シリコーンゴムおよび架橋剤の総量100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.05〜2質量部の範囲内である。特定のイオン液体の含有量がより好ましい範囲にある場合には、電荷減衰性に優れる。
【0039】
シリコーンゴム組成物は、本発明を阻害しない範囲内で、シリコーンゴム組成物に添加される一般的な添加剤が添加されていても良い。添加可能な添加剤としては、充填剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、架橋助剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、軟化剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、防錆剤などが挙げられる。
【0040】
充填剤としては、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、湿式シリカ、ヒュームド酸化チタンなどの補強性充填剤が挙げられる。補強性充填剤は、シリコーンゴム中に分散されやすいなどの観点から、オルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザン、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジオルガノシロキサンオリゴマー、環状オルガノシロキサン等の有機珪素化合物により表面改質されていても良い。
【0041】
補強性充填剤の添加量は、特に限定されるものではないが、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンあるいはシラノール基を有するオルガノポリシロキサン100質量部に対して1〜50質量部の範囲内であることが好ましい。
【0042】
シリコーンゴム組成物は、例えば、次のようにして調製することができる。すなわち、液状シリコーンゴムを用いる場合、液状シリコーンゴムと必要に応じて添加される補強性充填剤等の各種添加剤(イオン液体、架橋剤、触媒除く)を、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ロスミキサー、ホバートミキサー、ニーダーミキサー等を用いて混合し、次いで、イオン液体、必要に応じて架橋剤、触媒を加え、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ロスミキサー、ホバートミキサー、ニーダーミキサー、ロール等により混練することにより、調製することができる。なお、上記調製方法において、イオン液体、架橋剤、触媒は、最初の混練時に添加するようにしても良い。
【0043】
一方、ミラブルシリコーンゴムを用いる場合、ミラブルシリコーンゴム、イオン液体、必要に応じて添加される補強性充填剤、触媒等の各種添加剤(架橋剤除く)等をニーダーミキサー、ロール等を用いて混練し、次いで、架橋剤、または必要に応じて1−エチニル−1−シクロヘキサノール等の遅延剤を加え、ロール等により混練することにより、調製することができる。なお、上記調製方法において、架橋剤は、最初の混練時に添加するようにしても良い。
【0044】
導電性ロール10は、調製したシリコーンゴム組成物を用いて作製される。液状シリコーンゴム組成物を用いる場合には、ロール成形用金型の中空部に、必要に応じて接着剤を塗布した軸体12を同軸にセットする。次いで、中空部の内周面と軸体12との間の成形空間に液状シリコーンゴム組成物を注入して、金型に蓋をし、これを液状シリコーンゴム組成物に最適な条件で加熱して架橋させた後、冷却、脱型する。これにより、軸体12の外周面に沿って、ゴム弾性層14を形成することができる。
【0045】
一方、ミラブルシリコーンゴム組成物を用いる場合には、クロスヘッド押出装置により、軸体12の外周面上に、直接、ミラブルシリコーンゴム組成物を押出成形することにより、軸体12の外周面にミラブルシリコーンゴム組成物よりなる円筒状の未加硫ゴム層を形成し、これをミラブルシリコーンゴム組成物に最適な条件で加熱して架橋させた後、冷却する。これにより、軸体12の外周面に沿って、ゴム弾性層14を形成することができる。
【0046】
ゴム弾性体の物性は、用途に応じて適宜設定される。転写ロールの場合には、ゴム弾性体の体積抵抗率は、10Ω・cm(10〜10Ω・cm)に設定され、硬度(アスカーC硬度)は5〜70に設定されることが好ましい。帯電ロールの場合には、ゴム弾性体の体積抵抗率は、10Ω・cm(10〜10Ω・cm)に設定され、硬度(タイプA硬度)は5〜70の範囲内に設定されることが好ましい。現像ロールの場合には、ゴム弾性体の体積抵抗率は、10Ω・cm(10〜10Ω・cm)に設定され、硬度(タイプA硬度)は5〜70の範囲内に設定されることが好ましい。
【0047】
本発明に係る導電性ロールは、ゴム弾性層の表面に、直接あるいは中間層を介して表層が形成されていても良い。中間層は、1層であっても良いし、2層以上であっても良い。図2には、ゴム弾性層14の表面に直接、表層16が形成された導電性ロールの一例(導電性ロール20)を示す。
【0048】
表層16の主材料としては、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、フッ素樹脂とフッ素ゴムとの混合物、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂等の樹脂などが挙げられる。
【0049】
表層16の主材料は、用途に応じて適宜選択される。転写ロールの場合には、ポリアミド樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、フッ素樹脂とフッ素ゴムとの混合物、フッ素変性アクリル樹脂、アクリル樹脂などが好適に用いられる。帯電ロールの場合には、ポリアミド樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが好適に用いられる。現像ロールの場合には、ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリルなどが好適に用いられる。
【0050】
表層16の材料には、主材料に対し、必要に応じて、上述したカーボンブラック等の電子導電剤、四級アンモニウム塩等のイオン導電剤、ウレタン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子等の粗さ形成用粒子、可塑剤、レベリング剤などを添加することができる。表層16の材料は、メチルエチルケトン等の溶剤に分散あるいは溶解させて塗料として用いられることが好ましい。
【0051】
表層16は、ロールコート法、スプレー法、ディッピング法等の各種の塗工法を用いて表層形成材料を塗工し、表層形成材料に最適な条件で熱処理することにより形成することができる。
【0052】
また、本発明に係る導電性ロールは、表層の形成にかえて、ゴム弾性層の表面改質を行うことにより、表層の形成と同様の効果を得ることもできる。
【0053】
表面改質用の材料としては、樹脂改質用シリコーンなどを挙げることができる。樹脂改質用シリコーンとしては、シリコーンアルコキシオリゴマーなどを挙げることができる。表面改質用の材料においては、n−ヘキサンなどの適用な溶剤を用いることができる。また、表面改質用の材料には、必要に応じて、硬化触媒等が含まれていても良い。
【0054】
ゴム弾性層の表面改質は、ゴム弾性層の表面に、ロールコート法、スプレー法、ディッピング法等の各種の方法を用いて表面改質用の材料を含浸させ、表層改質用の材料に最適な条件で硬化処理等を行うことにより施される。
【0055】
本発明に係る電子写真機器用導電性部材は、導電性ロールの他、転写ベルトなどのベルト状の導電性部材であっても良い。ベルト状の導電性部材は、導電性のゴム弾性体よりなるゴム弾性層を有するもので構成される。ゴム弾性層は、導電性ロールと同様、上記のシリコーンゴム組成物の架橋体から形成される。ベルト状の導電性部材においても、ゴム弾性層の表面に表層が形成されていても良いし、ゴム弾性層に表面改質が施されていても良い。
【0056】
本発明に係る電子写真機器用導電性部材によれば、ゴム弾性体を形成するシリコーンゴム組成物の導電剤として電子導電剤とイオン液体を併用するので、電子導電剤の分散度に起因する抵抗バラツキが緩和され、抵抗均一性が向上する。また、電子導電剤とイオン液体を併用することで、分子レベルの導電経路が形成されるため、電気的応答性(電荷減衰性)も向上する。そして、用いるイオン液体が分子構造中にアルコキシシリル基を有し、シリコーンゴムとの相溶性に優れるため、イオン液体のブリード、ブルームを抑えることができる。また、シリコーンゴムとの相溶性に優れることから、他のイオン液体と比べて抵抗バラツキがより小さくなる。
【0057】
また、ゴム弾性体がシリコーンゴム組成物の架橋体から形成されるので、導電性部材のゴム弾性層を低硬度で低ヘタリ性(弾性回復性)に優れるものとすることができる。また、電子導電剤を用いていることで、低抵抗にしやすいという利点がある。また、導電機構が主に電子導電剤を用いる電子導電であるため、湿度の影響を受けにくく、抵抗の環境依存性が小さくなる。
【0058】
抵抗バラツキが少ない(抵抗均一性に優れる)ことで、転写ロールや帯電ロール、現像ロールに用いたときには画像濃度ムラの不具合が発生しにくくなる。そして、電荷減衰性が優れることで、転写ロールにおいては、ロール表面へのトナーの付着や紙粉の付着が改善される。また、電荷減衰性が優れることで、帯電ロールにおいては、ロール表面へのトナーやトナー外添剤の付着が改善される。また、電荷減衰性が優れることで、現像ロールにおいては、クリーニング性の低下を抑えることができ、トナーフィルミングを抑制しやすくなる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0060】
実施例、比較例において用いた材料の詳細は以下の通りである。
<液状シリコーンゴム>
・ビニル基含有ジメチルポリシロキサン<1>(Gelest社製、「DMS−V41」)
・ビニル基含有ジメチルポリシロキサン<2>(Gelest社製、「DMS−V51」)
・ビニル基含有ジメチルポリシロキサン<3>(Gelest社製、「DMS−V31」)
<ミラブルシリコーンゴム>
・ビニル基含有ジメチルポリシロキサン<4>(KCC社製、「SF3901C」)
【0061】
<架橋剤>
・ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン<1>(Gelest社製、「HMS−151」)
・ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン<2>(Gelest社製、「HMS−301」)
・ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン<3>(Gelest社製、「HMS−501」)
<電子導電剤>
・カーボンブラック(電気化学工業社製「デンカブラック」)
<充填剤>
・ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、「アエロジルR972」)
・結晶性シリカ(龍森社製、「クリスタライトVX−S」)
<遅延剤>
・1−エチニル−1−シクロヘキサノール(東京化成社製、試薬)
<触媒>
・白金触媒(Gelest社製、「SIP6830.3」)
【0062】
<アルコキシシリル基を有さないイオン液体>
・イオン液体<9>
オクチルトリメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成社製、試薬)
【0063】
<アルコキシシリル基を有するイオン液体>
・イオン液体<1>
雰囲気下、3−メチルピリジン(東京化成社製試薬)を60mmolと3−クロロプロピルトリメトキシシラン(東京化成社製試薬)を55mmol混合し、90℃で72時間反応させた。冷却して析出した固体を酢酸エチルで2回洗浄した後、酢酸エチルを減圧で除去し、3−メチル−1−トリメトキシシリルプロピルピリジニウムクロリドの化合物を53mmol得た。これをアセトンで溶解し、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(東京化成社製試薬)53mmolを加えた後、24時間室温で攪拌した。溶剤を減圧除去し、析出したリチウムクロリドをろ過することで3−メチル−1−トリメトキシシリルプロピルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(イオン液体<1>)の化合物を40mmol得た。
・イオン液体<2>
上記イオン液体<1>の合成において、3−メチルピリジンを1−メチルピペリジン(東京化成社製試薬)に換えて合成した。
・イオン液体<3>
上記イオン液体<1>の合成において、3−メチルピリジンを4−メチルモルホリン(東京化成社製試薬)に換えて合成した。
・イオン液体<4>
雰囲気下、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド(東京化成社製試薬)を60mmolと3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(東京化成社製試薬)を59mmol混合し、75℃で48時間反応させた。冷却して析出した固体を酢酸エチルで2回洗浄した後、酢酸エチルを減圧で除去し、イオン液体<4>のアニオンがクロリドの化合物を55mmol得た。これをアセトンで溶解し、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(東京化成社製試薬)55mmolを加えた後、24時間室温で攪拌した。溶剤を減圧除去し、析出したリチウムクロリドをろ過することでイオン液体<4>の化合物を45mmol得た。
・イオン液体<5>
上記イオン液体<4>の合成において、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリドを1−(2−ヒドロキシエチル)ピリジニウムクロリド(CHEMICALLAND21社製)に換えて合成した。
・イオン液体<6>
雰囲気下、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド(SIGMA−ALDRICH社製)を60mmolと(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(東京化成社製試薬)を59mmol混合し、100℃で72時間反応させた。冷却して析出した固体を酢酸エチルで2回洗浄した後、酢酸エチルを減圧で除去し、イオン液体<6>のアニオンがクロリドの化合物を53mmol得た。これをアセトンで溶解し、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(東京化成社製試薬)53mmolを加えた後、24時間室温で攪拌した。溶剤を減圧除去し、析出したリチウムクロライドをろ過することでイオン液体<6>の化合物を42mmol得た。
・イオン液体<7>
上記イオン液体<6>の合成において、(3−アミノプロピル)トリメトキシシランを(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(東京化成社製試薬)に換えて合成した。
・イオン液体<8>
上記イオン液体<6>の合成において、(3−アミノプロピル)トリメトキシシランを(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(東京化成社製試薬)に、また[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドを[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド(東京化成社製試薬)に換えて合成した。
【0064】
イオン液体<1>〜<8>の構造式を以下の式(3)〜(10)に示す。
【0065】
【化3】
【0066】
【化4】
【0067】
【化5】
【0068】
【化6】
【0069】
【化7】
【0070】
【化8】
【0071】
【化9】
【0072】
【化10】
【0073】
<液状シリコーンゴムを用いた例>
(実施例1〜11)
表1に示す配合となるように、液状シリコーンゴム(ビニル基含有ジメチルポリシロキサン)、カーボンブラック、ヒュームドシリカ、結晶性シリカをプラネタリーミキサーに入れ、30分混合した後、3本ロールを1passした。これをプラネタリーミキサーに戻し、白金触媒、アルコキシシリル基を有するイオン液体を配合後、プラネタリーミキサーにて30分混合し、次いで、架橋剤(ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン)、1−エチニル−1−シクロヘキサノールを配合後、さらに30分混合し、減圧脱泡して、液状シリコーンゴム組成物を調製した。
【0074】
(比較例1、3、4)
アルコキシシリル基を有するイオン液体を配合しなかった以外は実施例1〜11と同様にして、液状シリコーンゴム組成物を調製した。
【0075】
(比較例2、5)
アルコキシシリル基を有するイオン液体に代えて、アルコキシシリル基を有さないイオン液体を用いた以外は実施例1〜11と同様にして、液状シリコーンゴム組成物を調製した。
【0076】
(シート成形)
実施例1〜11、比較例1〜5の各液状シリコーンゴム組成物を170℃×10分の条件でプレス成形し、その後、200℃×4時間の条件にて2次キュアを実施し、2mm厚のシートを作製した。
【0077】
(ゴム弾性層の作製)
実施例1〜11、比較例1〜6の各液状シリコーンゴム組成物を、軸体となる導電性シャフト(SUS304製)をセットした金型内に充填した後、170℃×10分の条件で加熱架橋を行った。その後、脱型して、200℃×4時間の条件にて2次キュアを実施し、軸体の外周面に沿ってゴム弾性層が形成されたベースロールを作製した。なお、実施例1〜4、9〜11、比較例1〜2、4〜5については、直径6mmの導電性シャフトを用い、外径12mm、厚さ3mmのゴム弾性層を形成した。実施例5〜8、比較例3については、直径18mmの導電性シャフトを用い、外径30mm、6mmのゴム弾性層を形成した。
【0078】
作製した各シートを用いて、シート物性を測定した。また、作製したベースロールを用いて、ベースロール特性を測定・評価した。
【0079】
(タイプA硬度)
実施例1〜4、9〜11、12〜13、比較例1〜2、4〜5、6で作製した各シートを用い、JISK6253に準拠し、タイプAデュロメータを用い、デュロメータ硬さを測定した。
【0080】
(アスカーC硬度)
実施例5〜8、比較例3で作製した各シートを用い、JIS K7312に準拠し、スプリング式硬さ試験機(高分子計器社製、「ゴム・プラスチック硬度計・アスカーC型」)を用い、アスカーC硬度を測定した。
【0081】
(体積抵抗率)
上記成形シートについて、JISK6271に準拠し、二重リング電極法にて、1V印加の条件にて体積抵抗率を測定した。
【0082】
(ブリード、ブルーム)
シートを50℃95%RHに2週間放置後のシート表面に、イオン液体あるいはイオン導電剤のブリード、ブルームの有無を目視にて観察した。ブリード、ブルームが認められないものを「○」とし、ブリード、ブルームが認められるものを「×」とした。
【0083】
(抵抗バラツキ)
金属ドラム上に各ベースロールを線接触させ、軸体の両端に各々500gの荷重をかけた状態で金属ドラムを回転駆動し、60rpmで各ベースロールをつれ周り回転させ、DC10V印加した状態での軸体と金属ドラム間の電気抵抗を測定し、その周方向のバラツキを求めた。
【0084】
(電荷減衰率)
図3の模式図に示すように、23℃×53%RHの環境下、回転数60rpmでベースロール1を矢印方向に回転させながら、コロナ放電線2を用いて、100μAのコロナ電流を印加してベースロール1の表面を帯電した。そして、コロナ放電線2から1/4周期分後方の位置に配した表面電位計3によりベースロール1の表面電位を測定し、印加をオフしてから1秒間の表面電位変位量から電荷減衰率を求めた。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表2から、比較例1、3,4では、導電剤としてカーボンブラックのみを用い、イオン液体を用いていないため、ベースロール特性での抵抗バラツキが大きく、電気的応答性(電荷減衰性)にも劣っている。比較例2,5では、導電剤としてカーボンブラックとともにイオン液体を用いているが、アルコキシシリル基を有するイオン液体ではない。比較例2では、シート物性評価でイオン液体のブリード、ブルームが生じた。比較例5では、実施例9〜11よりも抵抗バラツキが大きく、電気的応答性(電荷減衰性)にも劣っている。
【0088】
これに対し、表1から、実施例1〜11では、シート物性評価でイオン液体のブリード、ブルームが生じることもなく、ベースロール特性での抵抗バラツキが小さく、電気的応答性(電荷減衰性)にも優れていることが確認された。
【0089】
次いで、各用途に応じて、ベースロール特性および製品特性の評価を行った。
【0090】
(帯電ロールの作製)
実施例1〜4、比較例1〜2で作製した各ベースロールの表面に、ロールコート機を用いて下記の帯電ロールの表層形成材料を塗工し、これを120℃×50分の条件にてオーブン架橋することにより、ゴム弾性層の外周に厚さ10μmの表層を形成し、帯電ロールを作製した。
【0091】
(帯電ロールの表層形成材料)
N−メトキシメチル化ナイロン(ナガセケムテックス社製「トレジンEF30T」)100質量部と、導電性SnO60質量部と、クエン酸1質量部と、メタノール300質量部を混合して、帯電ロールの表層形成材料を調製した。
【0092】
(汚染性)
各ベースロールを感光ドラムに当接した状態で40℃95%RH環境下で1ヶ月放置後、その感光ドラムを用いて画像評価を行った。画像評価は、市販のカラーレーザープリンタ(リコー社製IPSIO SP C220)に上記感光ドラムをセットし、ハーフトーン画像出しを行い、上記ベースロール当接部に対応する位置にスジが確認されないものを「○」、スジが確認されるものを「×」とした。
【0093】
(画像ムラ)
各帯電ロールを市販のカラーレーザープリンタ(リコー社製IPSIO SP C220)のカートリッジに組み込み、LL環境(15℃×10%RH)で24h養生後、ハーフトーン画像出しを行い、画像ムラの有無を確認した。画像ムラが確認されないものを「○」、画像ムラが確認されたものを「×」とした。
【0094】
(付着性)
各帯電ロールを市販のカラーレーザープリンタ(リコー社製IPSIO SP C220)のカートリッジに組み込み、文字チャートを一万枚印刷して、印刷後の帯電ロール表面を目視にて観察した。表面にトナー、外添剤の付着が確認されないものを「○」、付着が確認されたものを「×」とした。
【0095】
【表3】
【0096】
表3から、比較例1では、抵抗バラツキが大きいため、画像ムラ(画像濃度ムラ)が生じた。また、電荷減衰性に劣っているため、トナーや外添剤の付着が確認された。比較例2では、感光ドラムの汚染が確認された。これに対し、実施例1〜4では、抵抗バラツキが小さいため、画像ムラは確認されなかった。また、電荷減衰性に優れているため、トナーや外添剤の付着は確認されなかった。さらに、感光ドラムの汚染も確認されなかった。
【0097】
(転写ロールの作製)
実施例5〜8、比較例3で作製した各ベースロールの表面に、ロールコート機を用いて下記の転写ロールの表層形成材料を塗工し、これを120℃×30分の条件にてオーブン架橋することにより、ゴム弾性層の外周に厚さ15μmの表層を形成し、転写ロールを作製した。
【0098】
(転写ロールの表層形成材料)
フッ素変性アクリル樹脂(DIC社製「ディフェンサTR230K」)50重量部と、フッ素化オレフィン樹脂(アルケマ社製「カイナー7201」)50重量部と、カーボンブラック(電気化学工業社製「デンカブラック」)20重量部と、MEK100重量部を混合して、転写ロールの表層形成材料を調製した。
【0099】
(画像ムラ)
各転写ロールを市販の複写機(リコー社製Imagio Color 2800)に組み込み、ベタ画像出しをLL環境(15℃×10%RH)で実施し、画像ムラの有無を確認した。画像ムラが確認されないものを「○」、画像ムラが確認されたものを「×」とした。
【0100】
(付着性)
各転写ロールを市販の複写機(リコー社製Imagio Color 2800)に組み込み、写真・文字混合チャートにて一万枚画出し耐久試験を実施後、ロール表面を目視にて観察した。ロール表面にトナー、紙粉の付着が確認されないものを「○」、付着が確認されたものを「×」とした。
【0101】
【表4】
【0102】
表4から、比較例3では、抵抗バラツキが大きいため、画像濃度ムラが生じた。また、電荷減衰性に劣っているため、トナーや紙粉の付着が確認された。これに対し、実施例5〜8では、抵抗バラツキが小さいため、画像ムラ(画像濃度ムラ)は確認されなかった。また、電荷減衰性に優れているため、トナーや紙粉の付着は確認されなかった。
【0103】
(現像ロールの作製)
実施例9〜11、比較例4〜5で作製した各ベースロールの表面に、ロールコート機を用いて下記の現像ロールの表層形成材料を塗工し、これを180℃×60分の条件にてオーブン架橋することにより、ゴム弾性層の外周に厚さ10μmの表層を形成し、現像ロールを作製した。なお、現像ロールの表層の表面には、表層に添加された粗さ形成粒子に起因して表面凹凸が形成されている。
【0104】
(現像ロールの表層形成材料)
ウレタン樹脂(日本ポリウレタン工業社製、「ニッポラン5196」)100質量部と、カーボンブラック(電気化学工業社製、「デンカブラックHS100」)40質量部とをメチルエチルケトンに混合、分散させた混合液を調製した。この混合液に粗さ形成用粒子としてのウレタン樹脂粒子(根上工業社製、「アートパールU−600T」)20質量部とメチルエチルケトンをさらに加えて混合した後、イソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、「コロネートL」)45質量部を加えることにより、現像ロールの表層形成材料を調製した。
【0105】
(残留電荷)
電荷減衰率の測定と同様の装置を用い、コロナ電流を印加した状態で各ベースロール1を回転させたまま、表面電位計3を各ベースロール1の一方端から他方端まで5mm/sで移動させて各ベースロール1の表面電位を測定し、その最大値を残留電荷とした。
【0106】
(濃度ムラ)
各現像ロールを市販のカラーレーザープリンタ(HP社製、Color Laser jet 3800)のカートリッジに組み込み、ベタ画像出しをLL環境(15℃×10%RH)で行い、縦5×横3の15点の画像濃度をマクベス濃度計で測定し、そのバラツキから濃度ムラを求めた。
【0107】
(フィルミング評価)
各現像ロールを市販のカラーレーザープリンタ(HP社製、Color Laser jet 3800)のカートリッジに組み込み、32.5℃×85%RHの環境下で、画像出しを通紙6000枚行ない、その後のロール外観を顕微鏡((株)キーエンス製、VK−9510)で拡大し観察した。この際、ロール表面にトナーの付着が無かった場合を「◎」、ロール表面にトナーが付着しているが、軽微で搬送量の変化や画像に影響が出なかった場合を「○」、ロール表面にトナーが付着し、搬送量の変化や画像にムラが発生した場合を「×」とした。
【0108】
【表5】
【0109】
表5から、比較例4では、抵抗バラツキが大きいため、濃度ムラ(画像濃度ムラ)が大きい。また、残留電荷が大きく、電荷減衰性に劣っているため、トナーフィルミングが確認された。比較例5では、残留電荷の低下や電荷減衰性が不十分であるため、フィルミングが確認された。これに対し、実施例9〜11では、抵抗バラツキが小さいため、濃度ムラが小さい。また、電荷減衰性に優れているため、トナーフィルミングは確認されなかった。
【0110】
<ミラブルシリコーンゴムを用いた例>
(実施例12〜13)
表6に示す配合となるように、ミラブルシリコーンゴム(ビニル基含有ジメチルポリシロキサン<4>)、カーボンブラック、ヒュームドシリカ、アルコキシシリル基を有するイオン液体、白金触媒をニーダーで15分間混練した後、2本ロールで1−エチニル−1−シクロヘキサノール、架橋剤(ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン)を練り込んで、ミラブルシリコーンゴム組成物を調製した。
【0111】
(比較例6)
アルコキシシリル基を有するイオン液体を配合しなかった以外は実施例12と同様にして、ミラブルシリコーンゴム組成物を調製した。
【0112】
(シート成形)
実施例1の液状シリコーンゴム組成物と同様にして、2mm厚のシートを作製した。
【0113】
(ゴム弾性層の作製)
実施例12〜13、比較例6の各ミラブルシリコーンゴム組成物を、クロスヘッド押出装置により、軸体(直径6mm、SUS304製)の外周面上に直接押出成形することにより、軸体の外周面にミラブルシリコーンゴム組成物よりなる円筒状の未架橋のゴム弾性層を形成した。その後、170℃×10分の条件にてオーブン架橋後、200℃×4時間の条件にて2次架橋を実施し、軸体の外周面に沿ってゴム弾性層(外径12mm、層厚さ3mm)が形成されたベースロールを作製した。
【0114】
(現像ロールの作製)
液状シリコーンゴムの場合と同様、上記の現像ロールの表層形成材料を各ベースロールの表面に塗工することにより、現像ロールを作製した。
【0115】
作製した各シートを用いて、シート物性を測定した。また、作製したベースロールを用いて、ベースロール特性を測定・評価した。さらに、作製した現像ロールを用いて、製品特性の評価を行った。測定方法および評価方法は、液状シリコーンゴムの場合と同様である。
【0116】
【表6】
【0117】
表6から、比較例6では、抵抗バラツキが大きい。また、電荷減衰性にも劣っている。このため、濃度ムラ(画像濃度ムラ)が大きい。これに対し、実施例12〜13では、抵抗バラツキが小さい。また、電荷減衰性にも優れている。このため、濃度ムラが小さい。
【0118】
以上、本発明の実施形態、実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能なものである。
【符号の説明】
【0119】
10 導電性ロール
12 軸体
14 ゴム弾性層
16 表層
図1
図2
図3